(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】発光素子駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20240130BHJP
H03K 17/78 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H03K17/78 E
(21)【出願番号】P 2019198559
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堤 世那
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-335038(JP,A)
【文献】特開2005-340774(JP,A)
【文献】特開2011-199220(JP,A)
【文献】特開2019-068528(JP,A)
【文献】特開2019-135740(JP,A)
【文献】特開2002-288864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0187925(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085057(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0278017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
H03K 17/74 - 17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに共通のカソードを有する複数の半導体発光素子をそれぞれパルス駆動する複数の駆動回路を備え、
各駆動回路は、
当該駆動回路が駆動する前記半導体発光素子と並列に接続され、該半導体発光素子の非発光時には該半導体発光素子のカソード側の第1のノードからアノード側の第2のノードへ電流を流し、該半導体発光素子の発光時には電流を制限する電流制御要素と、
一方の電極が前記第1のノードと電気的に接続された第1の蓄電素子と、
制御端子及び一対の電流端子を有し、一方の前記電流端子が前記第1の蓄電素子の他方の電極と電気的に接続され、他方の前記電流端子が前記第2のノードと電気的に接続されたスイッチング素子と、
第1の電流遮断要素と、
を有し、
前記複数の駆動回路の前記第1の蓄電素子の前記他方の電極は互いに共通の第1の定電位線と電気的に接続されており、
前記複数の駆動回路の前記第2のノードは、前記第1の電流遮断要素を介して互いに電気的に接続されて互いに短絡しておらず、前記第1の電流遮断要素を介し
て、前記第1の定電位線よりも低電位であり互いに共通の第2の定電位線と電気的に接続されており、
前記第1の電流遮断要素は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくとも前記スイッチング素子がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する、発光素子駆動回路。
【請求項2】
前記複数の駆動回路それぞれは、前記共通の第1の定電位線と前記第1の蓄電素子の前記他方の電極との間に接続された第2の電流遮断要素を更に有し、
前記第2の電流遮断要素は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくとも前記スイッチング素子がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する、請求項1に記載の発光素子駆動回路。
【請求項3】
前記複数の駆動回路それぞれは、前記第1の蓄電素子の前記他方の電極と前記第2の電流遮断要素との間のノードに一方の電極が接続され、前記第2のノードに他方の電極が接続された第2の蓄電素子を更に有する、請求項2に記載の発光素子駆動回路。
【請求項4】
前記第2の蓄電素子の容量は前記第1の蓄電素子の容量よりも大きい、請求項3に記載の発光素子駆動回路。
【請求項5】
前記第1の電流遮断要素はインダクタを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光素子駆動回路。
【請求項6】
前記電流制御要素は抵抗素子を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の発光素子駆動回路。
【請求項7】
前記複数の半導体発光素子は共通の半導体基板上に集積されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光素子駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アレイ素子用電流発生回路に関する技術が開示されている。この回路は、一つの基準電圧入力と、それぞれチャネル別に定電流発生回路を構成するトランジスタとを備える。基準電圧入力は、各トランジスタのベースに受動回路を介して接続される。各トランジスタのエミッタは、抵抗を介して共通の接地ラインに接続される。各チャネルの定電流発生回路は、集積回路チップ上の特定領域に集中的に配置される。各トランジスタのコレクタ出力電流は、集積回路チップ内に分散したアレイ機能回路ブロックに個別に供給される。
【0003】
特許文献2には、光ヘッドの光源装置に関する技術が開示されている。この装置は、共通のパッケージと、このパッケージに内蔵されているシングルモード発振の半導体レーザおよびマルチモード発振の半導体レーザと、高周波発振回路とを有する。高周波発振回路は、シングルモード発振の半導体レーザをマルチモード発振に変換するために、当該半導体レーザの駆動電流に重畳する高周波電流を発生する。この装置は、高周波電流に起因する不要輻射を防止する手段を有する。この手段は、マルチモード発振の半導体レーザの給電ラインに設けられた高周波成分吸収回路を含む。高周波成分吸収回路は、バンドパスフィルタ、チョークコイル、またはフェライトビーズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-270554号公報
【文献】特開2002-288864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の半導体発光素子を個別に駆動する場合、通常であれば、半導体発光素子毎に独立した駆動回路を用いる。しかし、例えば共通の基板状にモノリシック集積された複数の半導体発光素子などにおいては、カソードが共通で設けられている場合がある。そのような場合、複数の駆動回路が共通カソードを介して互いに短絡することとなり、各半導体発光素子を個別に駆動する場合、駆動電流が共通カソードを通じて他の半導体発光素子に回り込まないための工夫が必要となる。本開示は、カソードが共通で設けられている複数の半導体発光素子を個別に駆動することが可能な発光素子駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の発光素子駆動回路は、互いに共通のカソードを有する複数の半導体発光素子をそれぞれパルス駆動する複数の駆動回路を備える。各駆動回路は、当該駆動回路が駆動する半導体発光素子と並列に接続され、該半導体発光素子の非発光時には該半導体発光素子のカソード側の第1のノードからアノード側の第2のノードへ電流を流し、該半導体発光素子の発光時には電流を制限する電流制御要素と、一方の電極が第1のノードと電気的に接続された第1の蓄電素子と、制御端子及び一対の電流端子を有し、一方の電流端子が第1の蓄電素子の他方の電極と電気的に接続され、他方の電流端子が第2のノードと電気的に接続されたスイッチング素子と、第1の電流遮断要素と、を有する。複数の駆動回路の第1の蓄電素子の他方の電極は互いに共通の第1の定電位線と電気的に接続されている。複数の駆動回路の第2のノードは、第1の電流遮断要素を介して互いに電気的に接続されて互いに短絡しておらず、第1の電流遮断要素を介して、第1の定電位線よりも低電位であり互いに共通の第2の定電位線と電気的に接続されている。第1の電流遮断要素は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくともスイッチング素子がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する。
【0007】
この発光素子駆動回路において、第1の蓄電素子の一方の電極は第1のノードと電気的に接続され、他方の電極は第1の定電位線(例えは正の電源配線)と電気的に接続されている。更に、第1のノードには電流制御要素が接続され、電流制御要素は半導体発光素子の非発光時に第1のノードから第2のノードへ電流を流す。第2のノードは、第1の定電位線よりも低電位である第2の定電位線(例えばグランド配線)と電気的に接続されている。従って、各駆動回路のスイッチング素子がオフ状態であるとき(すなわち半導体発光素子の非発光時)、第1の定電位線から各駆動回路の第1の蓄電素子に電流が供給され、第1の蓄電素子において電荷が蓄積される。
【0008】
そして、或る駆動回路のスイッチング素子がオン状態とされると、当該駆動回路の第1の蓄電素子に蓄積された電荷は、第1の蓄電素子の他方の電極から第2のノード、半導体発光素子及び第1のノードを通って第1の蓄電素子の一方の電極へ戻る。これにより、当該駆動回路の半導体発光素子が駆動されて発光する。このとき、電流制御要素は電流を制限するので、電荷は迂回することなく半導体発光素子へ流れることができる。また、仮に第1の電流遮断要素が設けられていない場合、電荷の一部は、第2のノードから他の駆動回路の第2のノードへ流れ、他の駆動回路の半導体発光素子及び共通カソードを通って当該駆動回路の第1の蓄電素子へ戻る。この場合、他の駆動回路の半導体発光素子も発光してしまい、半導体発光素子の個別駆動を実現できない。これに対し、上記の発光素子駆動回路では、複数の駆動回路の第2のノードの間に第1の電流遮断要素が介在しており、複数の駆動回路の第2のノードは互いに短絡していない。故に、電荷の一部が第2のノードから他の駆動回路の第2のノードへ流れることを遮断または抑制し、他の駆動回路の半導体発光素子が発光することを防いで個別駆動を実現することができる。
【0009】
本開示の一側面において、複数の駆動回路それぞれは、共通の第1の定電位線と第1の蓄電素子の他方の電極との間に接続された第2の電流遮断要素を更に有し、第2の電流遮断要素は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくともスイッチング素子がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制してもよい。この場合、スイッチング素子がオン状態であるときに第1の定電位線から電流がスイッチング素子を通って第2のノードに流れることを防ぎ、第2のノードの電位上昇を抑制することができる。これにより、スイッチング素子の制御端子と他方の電流端子との間の電位差(一例ではFETのゲート-ソース間電圧)を保ち、スイッチング素子のオン/オフを安定して行うことができる。
【0010】
本開示の一側面において、複数の駆動回路それぞれは、第1の蓄電素子の他方の電極と第2の電流遮断要素との間のノードに一方の電極が接続され、第2のノードに他方の電極が接続された第2の蓄電素子を更に有してもよい。この場合、各駆動回路のスイッチング素子がオフ状態であるとき(すなわち半導体発光素子の非発光時)、第1の定電位線から各駆動回路の第2の蓄電素子に電流が供給され、第2の蓄電素子において電荷が蓄積される。そして、半導体発光素子を発光させて第1の蓄電素子の電荷が排出された後、第2の電流遮断要素による電流の遮断または抑制にかかわらず、第2の蓄電素子に蓄積されている電荷でもって第1の蓄電素子を瞬時に再充電することができる。
【0011】
本開示の一側面において、第2の蓄電素子の容量は第1の蓄電素子の容量よりも大きくてもよい。この場合、例えば短い時間間隔でもって半導体発光素子を複数回発光させる場合に、第2の電流遮断要素による電流の遮断または抑制にかかわらず、第1の蓄電素子を発光のたびに再充電することができる。
【0012】
本開示の一側面において、第1の電流遮断要素はインダクタを含んでもよい。この場合、インダクタはローパスフィルタとして機能し、パルス駆動における高い周波数の電流を遮断または抑制することができる。従って、スイッチング素子がオン状態とされる際に通過しようとする電流を遮断もしくは抑制することができる。
【0013】
本開示の一側面において、電流制御要素は抵抗素子を含んでもよい。この場合、電流制御要素のインピーダンスが半導体発光素子の順方向のインピーダンスよりも高くなるので、半導体発光素子の発光時に電流を制限することができる。また、電流制御要素のインピーダンスが半導体発光素子の逆方向のインピーダンスよりも低くなるので、半導体発光素子の非発光時には電流を流すことができる。
【0014】
本開示の一側面において、複数の半導体発光素子は共通の半導体基板上に集積されてもよい。この場合、複数の半導体発光素子のカソードを互いに共通とすれば、半導体基板を小さくでき、発光装置の小型化に寄与できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、カソードが共通で設けられている複数の半導体発光素子を個別に駆動できる発光素子駆動回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係る発光素子駆動回路1の構成を示す回路図である。
【
図2】半導体発光素子アレイ14を概略的に示す平面図である。
【
図3】各駆動回路2A~2Dのトランジスタ3がオフ状態であるとき(すなわち発光素子4の非発光時)に流れる電流Iaを示す図である。
【
図4】駆動回路2Aのトランジスタ3がオン状態とされたときに流れる駆動電流Ibを示す図である。
【
図5】第1の比較例に係る駆動回路20Aの構成を示す回路図である。
【
図6】第2の比較例に係る駆動回路20Bの構成を示す回路図である。
【
図7】第3の比較例に係る駆動回路20Cの構成を示す回路図である。
【
図8】第4の比較例に係る駆動回路30の構成を示す回路図である。
【
図9】
図8に示された回路において、或るトランジスタ3がオン状態とされたときに流れる電流を示す図である。
【
図10】一実施形態の駆動回路1が備える電源系統を概念的に示す回路図である。
【
図11】トランジスタ3がオン状態となったとき(すなわち発光素子4の発光時)の、キャパシタ7からの電流経路を示す図である。
【
図12】2つの半導体発光素子4を個別に駆動する(すなわち駆動回路2A,2Bのみを備える)発光素子駆動回路の動作をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図13】4つの半導体発光素子4を個別に駆動する一実施形態の駆動回路1を実際に作製し、発光の様子を撮った画像である。
【
図14】一変形例に係る駆動回路1Aの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の発光素子駆動回路の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、下記の説明において、電気的に接続されるとは、特に明示がない限り、抵抗が実質的にゼロである導電線によって接続されている場合、及び、抵抗等の電子部品を介して接続されている場合の双方を含む。また、短絡するとは、実質的にゼロの電気抵抗でもって互いに接続されることをいう。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係る発光素子駆動回路1(以下、単に駆動回路1という)の構成を示す回路図である。
図1に示すように、この駆動回路1は、複数(図示例では4つ)の駆動回路2A~2Dを備える。各駆動回路2A~2Dは、互いに共通のカソードを有する複数(図示例では4つ)の半導体発光素子4(以下、単に発光素子4という)をそれぞれパルス駆動する回路である。発光素子4は、例えばレーザダイオードである。発光素子4の出力波長は、例えば近赤外域に含まれる。一実施例では、各発光素子4のピーク発振波長は905nmであり、各発光素子4のピーク出力は例えば100Wである。この場合、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)に好適な半導体発光素子アレイを提供できる。
【0019】
図2は、半導体発光素子アレイ14を概略的に示す平面図である。半導体発光素子アレイ14は、共通の半導体基板17上に複数の発光素子4が集積されたモノリシック構造を有する。出力波長が近赤外域である場合、半導体基板17の材料は例えばGaAsまたはInPなどであり、活性層を含む半導体層の材料は例えばAlGaAs、InGaAsまたはInGaAsPである。半導体基板17の裏面には共通のカソード電極が設けられ、半導体層上には互いに分離された複数のアノード電極が設けられている。半導体発光素子アレイ14は、複数のアノード電極にそれぞれ接続された複数のアノード端子15と、共通のカソード電極に接続された一つのカソード端子16とを有する。
【0020】
再び
図1を参照する。各駆動回路2A~2Dは、互いに同一の回路構成を有する。各駆動回路2A~2Dは、トランジスタ3と、キャパシタ5(第1の蓄電素子)と、電流制御要素6と、キャパシタ7(第2の蓄電素子)と、電流遮断要素8(第1の電流遮断要素)と、電流遮断要素9(第2の電流遮断要素)と、抵抗素子13とを有する。
【0021】
トランジスタ3は、本実施形態におけるスイッチング素子の例であって、各発光素子4を個別に駆動するための選択手段である。トランジスタ3は、例えば電界効果トランジスタ(FET)である。以下においては、トランジスタ3がエンハンスメント型のnチャネルMOSFETである場合を例示するが、トランジスタ3はこれに限られるものではない。また、トランジスタ3はFETに限られず、例えばバイポーラトランジスタであってもよい。トランジスタ3は、制御端子及び一対の電流端子を有する。トランジスタ3がFETである場合、制御端子はゲートであり、一対の電流端子はソース及びドレインである。トランジスタ3がバイポーラトランジスタである場合、制御端子はベースであり、一対の電流端子はコレクタ及びエミッタである。なお、
図1には、トランジスタ3が内部に有する寄生ダイオード12が明示されている。
【0022】
電流制御要素6は、該電流制御要素6が属する駆動回路が駆動する発光素子4と並列に接続されている。具体的には、発光素子4のカソード側のノードN1(第1のノード)と、アノード側のノードN2(第2のノード)との間において、電流制御要素6と発光素子4とが互いに並列に接続されている。電流制御要素6は、発光素子4の非発光時にはノードN1からノードN2へ電流を流し、発光素子4の発光時にはノードN2からノードN1への電流を制限する。電流制御要素6は、例えば抵抗素子またはダイオードといった様々な電子部品を個別に又は複合して含むことができる。図では、電流制御要素6として抵抗素子を例示する。この場合、ノードN1からノードN2への電流方向に関しては、発光素子4の逆方向になるため抵抗素子を介して電流が流れ、ノードN2からノードN1への電流方向に関しては、発光素子4の順方向になるため発光素子4を介して電流が流れる。電流制御要素6が抵抗素子である場合、その抵抗値は例えば5Ω以上1kΩ以下である。なお、電流制御要素6がダイオードである場合、該ダイオードの接続方向は、発光素子4とは逆向き(ノードN1がアノード側、ノードN2がカソード側)となる。なお、電流制御要素6の抵抗値が小さいほど、後述するキャパシタ5への蓄電速度を速めることができる。
【0023】
キャパシタ5は、例えば回路基板上に実装されたチップコンデンサである。キャパシタ5は、一対の電極を有し、該一対の電極間に電荷を蓄積する。キャパシタ5の容量値は、例えば500pF以上1500pF以下である。なお、キャパシタ5の容量値は、発光素子4から出力されるパルス光のピーク出力及びパルス幅に影響する。キャパシタ5の容量値が大きいほど、パルス光のピーク出力及びパルス幅が大きくなる。キャパシタ5の一方の電極は、ノードN1と電気的に接続されている。キャパシタ5の他方の電極は、トランジスタ3の一方の電流端子(例えばドレイン)と、実質的にゼロの抵抗でもって電気的に接続されている。トランジスタ3の他方の電流端子(例えばソース)は、ノードN2と、実質的にゼロの抵抗でもって電気的に接続されている。なお、ノードN2の電位は、トランジスタ3の制御端子に印加される電圧の基準電位とされる。
【0024】
キャパシタ5の他方の電極は、互いに直列に接続された抵抗素子13及び電流遮断要素9を介して、電源線10(第1の定電位線)と電気的に接続されている。電源線10は、駆動回路2A~2Dに対して共通に設けられた正電位の電源線である。電源線10は、電源線10よりも低電位である基準電位線11(第2の定電位線)との間に所定の電源電圧を供給する。基準電位線11もまた、駆動回路2A~2Dに対して共通に設けられている。
【0025】
電流遮断要素8は、ノードN2と基準電位線11との間に電気的に接続されている。具体的には、電流遮断要素8の一端がノードN2と電気的に接続され、他端が基準電位線11と電気的に接続されている。すなわち、駆動回路2A~2DのノードN2は、電流遮断要素8を介して互いに電気的に接続されており、互いに短絡していない。また、駆動回路2A~2DのノードN2は、必ず電流遮断要素8を介して基準電位線11と電気的に接続されている。ノードN2と電流遮断要素8との間、及び電流遮断要素8と基準電位線11との間の抵抗は、実質的にゼロである。
【0026】
電流遮断要素8は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素である。ここでいう特定周波数とは、パルス駆動電流の立ち上がり及び立ち下がりの周波数であり、特定期間とは、パルス駆動電流の立ち上がりから立ち下がりまでの期間をいう。すなわち、電流遮断要素8は、少なくともトランジスタ3がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する。特定周波数の電流を遮断または抑制する要素としては、例えばフェライトビーズなどのインダクタ、または抵抗素子が挙げられる。特定期間の電流を遮断または抑制する要素としては、例えばトランジスタが挙げられる。電流遮断要素8は、これらの電子部品を個別に又は複合して含むことができる。
図1は、電流遮断要素8としてインダクタのみからなる回路を例示する。その場合、電流遮断要素8はローパスフィルタとして機能する。
【0027】
電流遮断要素9は、電源線10と、キャパシタ5の上記他方の電極(すなわち電源線10側の電極)との間に接続されている。言い換えると、キャパシタ5の他方の電極は、電流遮断要素9を介して電源線10と電気的に接続されている。電流遮断要素9は、電流遮断要素8と同様に、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくともトランジスタ3がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する。特定周波数の電流を遮断または抑制する要素としては、例えばインダクタまたは抵抗素子が挙げられる。特定期間の電流を遮断または抑制する要素としては、例えばトランジスタが挙げられる。電流遮断要素9は、これらの電子部品を個別に又は複合して含むことができる。
図1は、電流遮断要素9としてインダクタのみからなる回路を例示する。その場合、電流遮断要素9はローパスフィルタとして機能する。なお、電流遮断要素8,9がローパスフィルタである場合、それらのカットオフ周波数は互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。また、電流遮断要素8,9が共にインダクタである場合、それらのインダクタンスは互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。
【0028】
キャパシタ7は、例えば回路基板上に実装されたチップコンデンサである。キャパシタ7は、一対の電極を有し、該一対の電極間に電荷を蓄積する。キャパシタ7の容量値は、キャパシタ5の容量値よりも大きく、例えば0.1μF以上である。言い換えると、キャパシタ7の容量値は、例えばキャパシタ5の容量値の100倍以上である。キャパシタ7の一方の電極は、ノードN3と電気的に接続されている。ノードN3は、キャパシタ5の電源線10側の電極と電流遮断要素9との間(本実施形態では、抵抗素子13と電流遮断要素9との間)のノードである。キャパシタ7の他方の電極は、ノードN2と電気的に接続されている。
【0029】
以上に説明した駆動回路1において、キャパシタ5の一方の電極はノードN
1と電気的に接続され、他方の電極は電源線10と電気的に接続されている。更に、ノードN
1には電流制御要素6が接続され、電流制御要素6は発光素子4の非発光時にノードN
1からノードN
2へ電流を流す。ノードN
2は、電源線10よりも低電位である基準電位線11と電気的に接続されている。従って、各駆動回路2A~2Dのトランジスタ3がオフ状態であるとき(すなわち発光素子4の非発光時)、
図3に示すように、電源線10から各駆動回路2A~2Dのキャパシタ5に電流Iaが供給され、キャパシタ5において電荷が蓄積される。
【0030】
そして、或る駆動回路(ここでは駆動回路2Aとして説明する)のトランジスタ3がオン状態とされると、当該駆動回路2Aのキャパシタ5に蓄積された電荷は、
図4に示すように、駆動電流Ibとしてキャパシタ5の電源線10側の電極からトランジスタ3、ノードN
2、発光素子4及びノードN
1を通って瞬時に流れ、キャパシタ5の逆側の電極に戻る。これにより、当該駆動回路2Aの発光素子4がパルス駆動されて発光する。このとき、電流制御要素6は電流を制限するので、駆動電流Ibは迂回することなく発光素子4へ流れることができる。また、抵抗素子13は、キャパシタ7に蓄積された電荷がトランジスタ3へ流れることを阻害する。なお、同様の動作は駆動回路2B,2C,2Dのいずれにおいても可能である。
【0031】
ここで、本実施形態に係る駆動回路1によって得られる作用効果について、比較例とともに説明する。
図5は、第1の比較例に係る駆動回路20Aの構成を示す回路図である。この駆動回路20Aは、単一の発光素子4Aを駆動するための回路であって、発光素子4Aのカソードと基準電位線11との間に直列に接続されたトランジスタ21と、電源線10と基準電位線11との間に直列に接続され、且つ互いに直列に接続された抵抗素子23及びキャパシタ22とを有する。発光素子4のアノードは、抵抗素子23とキャパシタ22との間のノードに接続されている。
【0032】
この駆動回路20Aにおいて、トランジスタ21がオフ状態であるときには、電源線10からの電流がキャパシタ22に供給され、キャパシタ22に電荷が蓄積される。そして、トランジスタ21がオン状態になると、キャパシタ22に蓄積された電荷は、発光素子4A及びトランジスタ21を通って基準電位線11へ瞬時に流れる。これにより、発光素子4Aがパルス駆動されて発光する。
【0033】
図6は、共通カソードを有する4つの発光素子4を駆動するための第2の比較例に係る駆動回路20Bの構成を示す回路図である。この駆動回路20Bは、発光素子4毎に設けられた抵抗素子23及びキャパシタ22と、4つの発光素子4に対して共通に設けられたトランジスタ21とを備える。各発光素子4と抵抗素子23及びキャパシタ22との接続態様は、
図5と同様である。トランジスタ21は、4つの発光素子4の共通カソードと基準電位線11との間に直列に接続されている。電源線10は、各発光素子4に対して共通である。
【0034】
この駆動回路20Bにおいて、トランジスタ21がオフ状態であるときには、電源線10からの電流が各キャパシタ22に供給され、各キャパシタ22に電荷が蓄積される。そして、トランジスタ21がオン状態になると、各キャパシタ22に蓄積された電荷は、各発光素子4及びトランジスタ21を通って基準電位線11へ瞬時に流れる。これにより、4つの発光素子4が同時にパルス駆動されて発光する。従って、この駆動回路20Bでは4つの発光素子4を個別に駆動することはできない。
【0035】
そこで、共通カソードを有する4つの発光素子4を個別に駆動するための改良を検討する。
図7は、改良した第3の比較例に係る駆動回路20Cを示す回路図である。この駆動回路20Cは、
図6の駆動回路20Bの構成に加えて、4つのトランジスタ24、4つのトランジスタ25、及び抵抗素子26を更に備える。
【0036】
トランジスタ24,25は、発光素子4毎に設けられたスイッチング回路を構成する。トランジスタ24は、共通の電源線10とキャパシタ22及び発光素子4との間に直列に接続され、キャパシタ22へ供給される電流を制御する。トランジスタ25は、抵抗素子27と直列回路を構成し、該直列回路の抵抗素子27側の一端は電源線10に接続され、他端は基準電位線11に接続されている。トランジスタ25と抵抗素子27との間のノードはトランジスタ24の制御端子に接続されており、該ノードの電位がトランジスタ24の制御端子に印加される。すなわち、トランジスタ25のオン/オフに対応してトランジスタ24のオン/オフが切り替えられる。トランジスタ24は例えばpチャネルMOSFETであり、トランジスタ25は例えばnチャネルMOSFETである。このような構成によれば、高耐圧のスイッチング回路を構成することができる。抵抗素子26は、4つのキャパシタ22と共通の基準電位線11との間に直列に接続されている。
【0037】
この駆動回路20Cにおいては、まず、発光させたい発光素子4に対応するキャパシタ22に電荷を蓄積するために、当該発光素子4に対応するトランジスタ25をオン状態とする。これにより、当該発光素子4に対応するトランジスタ24がオン状態となり、当該キャパシタ22に電荷が蓄積される。その後、トランジスタ21をオン状態にすると、当該キャパシタ22から当該発光素子4に電流が瞬時に供給され、当該発光素子4がパルス駆動されて発光する。
【0038】
しかしながら、この駆動回路20Cには次の問題がある。すなわち、発光させたい発光素子4に対応するキャパシタ22に電荷を蓄積すると、当該キャパシタ22の両端電圧が上昇する。トランジスタ21がオフ状態である間、この両端電圧は、当該発光素子4を介して他の3つの発光素子4のカソードに逆バイアスとして印加され、この逆バイアスに比例した大きさの逆電流が、発光素子4を流れて他の3つのキャパシタ22に供給される。これにより、他の3つのキャパシタ22にも電荷が蓄積されてしまう。従って、トランジスタ21をオン状態にすると、各キャパシタ22から各発光素子4に電流が瞬時に供給され、4つの発光素子4が同時にパルス駆動されて発光することとなる。すなわち、この駆動回路20Cでも、4つの発光素子4を個別に駆動することは難しい。
【0039】
そこで、本発明者は、共通カソードを有する4つの発光素子4を個別に駆動するための回路について更に検討を重ねた。
図8は、第4の比較例に係る駆動回路30を示す回路図である。この駆動回路30は、各発光素子4毎に設けられたトランジスタ3、キャパシタ5、及び電流制御要素6を備える。なお、トランジスタ3、キャパシタ5、及び電流制御要素6の相互接続関係は
図1に示した本実施形態と同様である。但し、駆動回路30では、キャパシタ5の電源線10側の電極は抵抗素子13のみを介して共通の電源線10と接続されており、ノードN
2は基準電位線11に短絡している。また、キャパシタ7(
図1を参照)は設けられていない。
【0040】
この駆動回路30において、各トランジスタ3がオフ状態であるとき(すなわち発光素子4の非発光時)、電源線10から各キャパシタ5に電流が供給され、キャパシタ5において電荷が蓄積される。そして、或るトランジスタ3(例として左端のトランジスタ3)がオン状態とされると、当該トランジスタ3に接続されたキャパシタ5に蓄積された電荷は、
図9に示すように、駆動電流Ibとしてトランジスタ3、ノードN
2、発光素子4及びノードN
1を通って瞬時に流れ、キャパシタ5に戻る。これにより、当該発光素子4がパルス駆動されて発光する。このとき、電流制御要素6は電流を制限するので、駆動電流Ibは迂回することなく発光素子4へ流れることができる。
【0041】
しかしながら、
図9に示すように、駆動電流Ibの一部Ibaは、ノードN
2から他の発光素子4のノードN
2へ流れ、他の発光素子4及び共通カソードを通って元のキャパシタ5へ戻る。この場合、他の発光素子4も発光してしまい、発光素子4の個別駆動を実現できない。
【0042】
これに対し、
図1に示す本実施形態の駆動回路1では、駆動回路2A~2DのノードN
2の間に電流遮断要素8が介在しており、駆動回路2A~2DのノードN
2は互いに短絡していない。電流遮断要素8は、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくともトランジスタ3がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する。故に、駆動電流Ibの一部がノードN
2から他の駆動回路のノードN
2へ流れることを遮断または抑制し、他の駆動回路の発光素子4が発光することを防いで個別駆動を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態のように、駆動回路2A~2Dそれぞれは、共通の電源線10とキャパシタ5の電源線10側の電極との間に接続された電流遮断要素9を有してもよい。電流遮断要素9は、電流遮断要素8と同様に、少なくとも特定周波数もしくは特定期間の電流を遮断または抑制する要素であって、少なくともトランジスタ3がオン状態であるときに電流を遮断もしくは抑制する。この場合、トランジスタ3がオン状態であるときに電源線10から電流がトランジスタ3を通ってノードN2に流れることを防ぐ。故に、該電流が電流遮断要素8を通過することによるノードN2の電位上昇を抑制することができる。これにより、トランジスタ3の制御端子(例えばゲート)と他方の電流端子(例えばソース)との間の電位差(ゲート-ソース間電圧)を保ち、トランジスタ3のオン/オフを安定して行うことができる。
【0044】
本実施形態のように、駆動回路2A~2Dそれぞれは、キャパシタ5の電源線10側の電極と電流遮断要素9との間のノードN3に一方の電極が接続され、ノードN2に他方の電極が接続されたバイパスコンデンサとしてのキャパシタ7を有してもよい。この場合、トランジスタ3がオフ状態であると(すなわち発光素子4の非発光時)、電源線10からキャパシタ7に電流が供給され、キャパシタ7において電荷が蓄積される。そして、発光素子4を発光させてキャパシタ5の電荷が排出された後、電流遮断要素9による電流の遮断または抑制にかかわらず、キャパシタ7に蓄積されている電荷でもってキャパシタ5を瞬時に再充電することができる。従って、短時間で再び発光素子4を発光させることができ、各発光素子4の高速駆動が可能となる。
【0045】
ここで、
図10は、本実施形態の駆動回路1が備える電源系統を概念的に示す回路図である。
図10には、説明の簡単化のため、駆動回路2A~2Dのうち2つの駆動回路2A,2Bが有する、キャパシタ7と、電流遮断要素8としてのインダクタと、電流遮断要素9としてのインダクタとが示されている。また、
図10には、共通の電源線10と、共通の基準電位線11とが併せて示されている。駆動回路1では、電流遮断要素8,9を構成する複数のインダクタによってフィルタ回路が構成されており、各駆動回路2A,2Bの電源系統は、このフィルタ回路によって互いに仮想的に分離されている。図中には、駆動回路2Aに電源電圧を供給する仮想的な電源線10a及び基準電位線11aと、駆動回路2Bに電源電圧を供給する仮想的な電源線10b及び基準電位線11bとが示されている。
【0046】
このフィルタ回路において、各インダクタは、パルス駆動電流の立ち上がり及び立ち下がりの周波数を含む高周波数域を遮断するローパスフィルタとして機能する。また、キャパシタ7は、当該周波数における電源インピーダンス(負荷が接続されている箇所から見た電源側のインピーダンス)を下げるためのバイパスコンデンサとして機能する。
【0047】
図11は、トランジスタ3がオン状態となったとき(すなわち発光素子4の発光時)の、キャパシタ7からの電流経路を示す図である。
図11に示すように、キャパシタ7の電源線10側の電極から出力された電流Icは、トランジスタ3を通ったのち、ノードN
2を経てキャパシタ7の基準電位線11側の電極へ戻る。このように、発光素子4の発光時、キャパシタ7から出力された電流Icは全てキャパシタ7へ戻り、電流遮断要素8へは向かわないので、ノードN
2の電位を上昇させる要因にはならない。
【0048】
図12は、2つの発光素子4を個別に駆動する(すなわち駆動回路2A,2Bのみを備える)発光素子駆動回路の動作をシミュレーションした結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、一方の発光素子4を発光させ、その間、他方の発光素子4を消光状態で維持した。
図12の横軸は時間(単位:ナノ秒)を表し、縦軸は発光素子4を流れる電流の大きさを表す。同図に示すように、一方の発光素子4の電流(グラフG1)はパルス状に変化しており、一方の発光素子4にはパルス駆動電流Ibが供給されたことがわかる。また、他方の発光素子4の電流(グラフG2)は全く変化しておらず、他方の発光素子4にはパルス駆動電流Ibが殆ど供給されないことがわかる。すなわち、本実施形態の駆動回路1によれば、発光させる発光素子4の光出力Paと、発光させない発光素子4の光出力Pbとの比(Pb/Pa)を極めて小さくすることができる。
【0049】
図13は、4つの発光素子4を個別に駆動する本実施形態の駆動回路1を実際に作製し、発光の様子を撮った画像である。同図には、発光する一つの発光素子4に対応する領域A
2と、その両隣に隣接する発光しない2つの発光素子4に対応する領域A
1,A
3とが示されている。同図に示されるように、発光する明るい領域A
2と比較して、発光しない領域A
1,A
3の暗さの度合いが極めて高いことがわかる。
【0050】
本実施形態のように、キャパシタ7の容量はキャパシタ5の容量より大きくてもよい。この場合、例えば短い時間間隔でもって発光素子4を複数回発光させる場合に、電流遮断要素9による電流の遮断または抑制にかかわらず、キャパシタ5を発光のたびに再充電することができる。
【0051】
本実施形態のように、電流遮断要素8はインダクタを含んでもよい。この場合、インダクタはローパスフィルタとして機能し、パルス駆動における高い周波数の電流を遮断または抑制することができる。従って、トランジスタ3がオン状態とされる際に通過しようとする電流を遮断もしくは抑制することができる。
【0052】
本実施形態のように、電流制御要素6は抵抗素子を含んでもよい。この場合、電流制御要素6のインピーダンスが発光素子4の順方向のインピーダンスよりも高くなるので、発光素子4の発光時に電流を制限することができる。また、電流制御要素6のインピーダンスが発光素子4の逆方向のインピーダンスよりも低くなるので、発光素子4の非発光時には電流を流すことができる。故に、発光素子4の非発光時にはノードN1からノードN2へ電流を流し、発光素子4の発光時には電流を制限する電流制御要素6を容易に実現することができる。また、抵抗素子の抵抗値を(より好ましくは、抵抗素子13の抵抗値と併せて)適切に選択することにより、キャパシタ5に電荷が蓄積される速度を制御することができる。
【0053】
本実施形態のように、複数の発光素子4は共通の半導体基板17上に集積されてもよい。この場合、複数の発光素子4のカソードを互いに共通とすれば、半導体基板17を小さくでき、発光装置の小型化に寄与できる。
【0054】
(変形例)
図14は、上記実施形態の一変形例に係る駆動回路1Aを示す回路図である。この変形例では、駆動回路2A~2Dのうち一の駆動回路(例えば駆動回路2D)のノードN
2が、電流遮断要素8を介することなく直接に(実質的にゼロの抵抗にて)基準電位線11と電気的に接続されている。また、駆動回路2A~2DのノードN
2は、互いに短絡することなく電流遮断要素8を介して互いに接続されている。従って、駆動回路2CのノードN
2は1つの電流遮断要素8を介して基準電位線11と電気的に接続されており、駆動回路2BのノードN
2は2つの電流遮断要素8を介して基準電位線11と電気的に接続されており、駆動回路2AのノードN
2は3つの電流遮断要素8を介して基準電位線11と電気的に接続されている。
【0055】
駆動回路2A~2DのノードN
2と基準電位線11との接続態様は
図1に示された形態に限られず、例えば本変形例のような形態であってもよい。本変形例においても、駆動回路2A~2DのノードN
2が互いに短絡することなく電流遮断要素8を介して互いに接続されており、且つ、電流遮断要素8を介して又は直接に基準電位線11と電気的に接続されているので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
本開示による発光素子駆動回路は、上述した実施形態及び変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、
図1では電流遮断要素8,9を構成するフィルタとしてインダクタを例示しているが、電流遮断要素8,9を構成するフィルタとしては、パルス駆動における高い周波数(例えばGHz帯)のAC電流を遮断または抑制し、低い周波数(例えばDC~kHz帯)の電流を通すローパスフィルタまたはバンドパスフィルタであれば、例えばチップフェライトビーズ、RCフィルタ回路など他の様々な要素を適用することができる。特に、チップフェライトビーズは各駆動回路毎に単一のチップで済み、駆動回路1を簡易に構成できる。
【0057】
また、電流遮断要素8,9のうち少なくとも一方は、必ずしもフィルタである必要はない。前述したように、
図1の電流遮断要素8,9は、少なくとも特定周波数の電流を遮断または抑制する要素として、インダクタに代えて(或いはインダクタに加えて)抵抗素子を含んでもよい。特に、発光素子4の駆動周期が比較的長い場合には、電流遮断要素8,9は抵抗素子のみによって構成されてもよい。この場合、電流遮断要素8としての抵抗素子の一端がノードN
2と電気的に接続され、他端が基準電位線11と電気的に接続される。また、キャパシタ5の他方の電極は、電流遮断要素9としての抵抗素子を介して電源線10と電気的に接続される。但しこの場合、全ての周波数帯域において電流を抑制するので、電力損失が大きくなり、また、キャパシタ5の再充電に時間を要する。これに対し、電流遮断要素8,9がフィルタにより構成される場合、電力損失を小さくでき、また、キャパシタ5の再充電を短時間で行うことができる。
【0058】
また、前述したように、
図1の電流遮断要素8,9のうち少なくとも一方は、少なくとも特定期間の電流を遮断または抑制する要素として、インダクタに代えて(或いはインダクタに加えて)トランジスタ等のスイッチング素子を含んでもよい。この場合、トランジスタ3がオン状態である期間(すなわち発光素子4の発光中)を含む一定の期間、スイッチング素子をオフ状態とし、他の期間においてはスイッチング素子をオン状態とするとよい。このような場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。但し、駆動回路の個数分のスイッチング素子と、それらのスイッチング素子を駆動するための制御回路などが更に必要となる。これに対し、電流遮断要素8,9がフィルタにより構成される場合、制御回路が必要なく、またスイッチング素子よりも安価に構成できるので、製造コストの削減や装置の小型化の点で有利である。
【0059】
また、
図1では各駆動回路2A~2Dがそれぞれ1個の発光素子4を駆動する場合を例示しているが、各駆動回路2A~2Dはそれぞれ2個以上の発光素子4を駆動してもよい。言い換えると、発光素子4の個数は、駆動回路2A~2Dの個数より多くてもよい。その場合、
図1に示される各発光素子4は、互いに並列または直列に接続された2個以上の発光素子4にそれぞれ置き換えられる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A…発光素子駆動回路、2A~2D…駆動回路、3…トランジスタ、4,4A…半導体発光素子、5…キャパシタ、6…電流制御要素、7…キャパシタ、8…(第1の)電流遮断要素、9…(第2の)電流遮断要素、10…電源線、10a,10b…仮想的な電源線、11…基準電位線、11a,11b…仮想的な基準電位線、12…寄生ダイオード、13…抵抗素子、14…半導体発光素子アレイ、15…アノード端子、16…カソード端子、17…半導体基板、20A,20B,20C…駆動回路、21…トランジスタ、22…キャパシタ、23…抵抗素子、24,25…トランジスタ、26,27…抵抗素子、30…駆動回路、N1…(第1の)ノード、N2…(第2の)ノード、N3…ノード。