(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】麦芽原料液又はビールテイスト飲料の製造方法、及び、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の香味を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
C12C 7/01 20060101AFI20240130BHJP
C12C 1/18 20060101ALI20240130BHJP
C12C 7/04 20060101ALI20240130BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20240130BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240130BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
C12C7/01
C12C1/18
C12C7/04
C12G3/04
A23L2/00 B
A23L2/38 J
(21)【出願番号】P 2019206733
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯牟礼 隆
(72)【発明者】
【氏名】七森 理仁
(72)【発明者】
【氏名】梅村 威一郎
(72)【発明者】
【氏名】時園 佳朗
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513744(JP,A)
【文献】特開2005-102690(JP,A)
【文献】特開2008-017759(JP,A)
【文献】特開2017-070232(JP,A)
【文献】特開平09-098765(JP,A)
【文献】ビールの香味劣化を防ぐ麦芽製造法を開発「ビールの美味しさ」を持続させるビール製造技術研究の一環明年より順次、ビール原料に使用し、品質の高いビールの提供をすすめる,アサヒビール株式会社 ニュースリリース,2003年10月30日,pp.1-4,retrieved on 2023.11.27, retrieved from the internet,https://www.asahibeer.co.jp/news/2003/1030.html
【文献】砂糖類・でん粉情報,2018年,pp.2-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00-13/10
C12G 3/00-3/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下であ
り、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%以上である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、
前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、麦芽原料液を得ること、及び、
前記麦芽原料液を使用してビールテイスト飲料を得ること、
を含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項2】
前記焙燥処理において、前記75℃以上での加熱の時間に対する
87℃以上での加熱の時間の割合が
45%以上である、
請求項1に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項3】
前記焙燥処理により調製された前記焙燥麦芽に代えて、加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%超であり、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%未満である焙燥処理により調製された麦芽を使用したこと以外は同一の条件で製造されたビールテイスト飲料に比べて、4-ビニルグアイアコール含有量が低減された前記ビールテイスト飲料を得る、
請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項4】
麦芽原料液を使用するビールテイスト飲料の製造において、
75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下であ
り、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%以上である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、
前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ることにより、
前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法。
【請求項5】
ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造方法であって、
75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下であ
り、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%以上である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、及び、
前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ること、
を含む、
麦芽原料液の製造方法。
【請求項6】
ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造において、
75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下であ
り、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%以上である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、
前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ることにより、
前記麦芽原料液の香味を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の製造方法、及び、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の香味を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、麦芽アルコール飲料に使用する麦芽の製造方法において、緑麦芽を乾燥させる焙燥工程における吹込み温風の絶対湿度を、0.010kg/kg以下とすることを特徴とする麦芽の製造方法、麦芽アルコール飲料に使用する麦芽の製造方法において、緑麦芽を乾燥させる焙燥工程における吹込み温風の風量を麦芽1トンあたり4500立方メートル/時間以上とすることを特徴とする麦芽の製造方法、及び、麦芽アルコール飲料に使用する麦芽の製造方法において、緑麦芽を乾燥させる焙燥初期工程の少なくとも、その1/3以上の工程期間にて、吹込み温風の温度を40℃以下とすることを特徴とする麦芽の製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、麦芽を40℃以上で加熱することを含む麦芽の加工方法が記載されている。特許文献3には、発芽穀物を水蒸気と接触させることにより、前記発芽穀物中の酵素活性を低減する発芽穀物加工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-102690号公報
【文献】特開2008-017759号公報
【文献】特開2014-236746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明の発明者らは、麦芽を使用して製造されるビールテイスト飲料の香味を向上させるための技術的手段について鋭意検討を行った。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、香味が効果的に向上した麦芽原料液又はビールテイスト飲料の製造方法、及び、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、麦芽原料液を得ること、及び、前記麦芽原料液を使用してビールテイスト飲料を得ること、を含む。本発明によれば、香味が効果的に向上したビールテイスト飲料の製造方法が提供される。
【0008】
前記方法の前記焙燥処理においては、前記75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合が60%以上であることとしてもよい。また、前記方法の前記焙燥処理においては、前記75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合が50%以上であることとしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の香味を向上させる方法は、麦芽原料液を使用するビールテイスト飲料の製造において、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ることにより、前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法である。本発明によれば、ビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る麦芽原料液の製造方法は、ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造方法であって、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、及び、前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ること、を含む。本発明によれば、香味が効果的に向上した麦芽原料液の製造方法が提供される。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る麦芽原料液の香味を向上させる方法は、ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造において、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する前記75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、前記焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、前記第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ることにより、前記麦芽原料液の香味を向上させる方法である。本発明によれば、麦芽原料液の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、香味が効果的に向上した麦芽原料液又はビールテイスト飲料の製造方法、及び、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、麦芽原料液の4-ビニルグアイアコール含有量を評価した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0015】
本方法の一側面は、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する当該75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、当該焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、麦芽原料液を得ること、及び、当該麦芽原料液を使用してビールテイスト飲料を得ること、を含む、ビールテイスト飲料の製造方法である。
【0016】
また、本方法の他の側面は、ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造方法であって、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する当該75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用すること、及び、当該焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、前記麦芽原料液を得ること、を含む、麦芽原料液の製造方法である。
【0017】
すなわち、本方法の発明者らは、麦芽を使用して製造されるビールテイスト飲料の香味を向上させるための技術的手段について鋭意検討を行った結果、当該麦芽として、特定の加熱条件の焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、当該焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず特定の範囲内の温度で加熱して麦芽原料液を得ることにより、当該麦芽原料液の香味、及び、当該麦芽原料液を使用して製造されるビールテイスト飲料の香味が効果的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
したがって、本方法は、その一側面として、麦芽原料液を使用するビールテイスト飲料の製造において、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する当該75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、当該麦芽原料液を得ることにより、当該ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法をも包含する。
【0019】
また、本方法は、他の側面として、ビールテイスト飲料の製造に使用される麦芽原料液の製造において、75℃以上での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する当該75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である焙燥処理により調製された焙燥麦芽を使用し、且つ、当該焙燥麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液を、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持して、当該麦芽原料液を得ることにより、当該麦芽原料液の香味を向上させる方法をも包含する。
【0020】
本方法において特徴的なことの一つは、麦芽原料液の調製に使用する麦芽の少なくとも一部として、75℃以上という比較的高い温度での加熱を含み且つ加熱の総時間に対する当該75℃以上の温度での加熱の時間の割合が比較的小さい焙燥処理により調製された焙燥麦芽(以下、「S麦芽」という。)を使用することである。
【0021】
焙燥処理は、緑麦芽を加熱する処理である。焙燥処理は、緑麦芽を比較的低い温度で加熱する乾燥処理、及び、乾燥した当該緑麦芽を比較的高い温度で加熱する焙焦処理を含む。なお、緑麦芽は、浸麦処理及び発芽処理により調製される。
【0022】
S麦芽を構成する麦類は、本発明の効果が得られる範囲内のものであれば特に限られないが、当該S麦芽は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上の焙燥麦芽であることが好ましく、大麦及び小麦からなる群より選択される1以上の焙燥麦芽であることがより好ましく、大麦の焙燥麦芽であることが特に好ましい。
【0023】
S麦芽の調製で実施される焙燥処理(以下、「S焙燥処理」という。)においては、緑麦芽に熱風を送風することにより、当該緑麦芽を加熱する。熱風としては、ヒーター等の加熱装置により加熱された空気が好ましく使用される。なお、本発明において、熱風は、人為的に加熱した空気であり、放冷は熱風の送風に含まれない。
【0024】
S焙燥処理は、75℃以上での加熱を含む。すなわち、S焙燥処理は、75℃未満での加熱と、75℃以上での加熱とを含む。S焙燥処理において、75℃以上での加熱を行うタイミングは特に限られないが、例えば、まず75℃未満の加熱を行い、次いで75℃以上の加熱を行うことが好ましく、また、75℃以上での加熱を最後に行うことが好ましい。
【0025】
S焙燥処理においては、加熱の総時間に対する、75℃以上での加熱の時間の割合が27%以下である。すなわち、例えば、S焙燥処理において、まず75℃未満の温度での加熱を行い、次いで、75℃以上の温度での加熱を行う場合、当該75℃未満の温度での加熱の時間と当該75℃以上の温度での加熱の時間との合計に対する、当該75℃以上の温度での加熱の時間の割合が27%以下となるように、加熱温度を調節する。
【0026】
なお、S焙燥処理における加熱の総時間は、緑麦芽に対する熱風の送風を開始した時点から、当該熱風の送風を終了した時点までの時間である。また、S焙燥処理における特定の温度での加熱(例えば、75℃以上での加熱)の時間は、当該特定の温度の熱風の送風を開始した時点から、当該特定の温度の熱風の送風を終了した時点までの時間である。
【0027】
S焙燥処理における加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合は、26%以下であることが特に好ましい。S焙燥処理における加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合の下限値は、本発明による効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、当該割合は、例えば、5%以上であってもよく、10%以上であることが好ましく、15%以上であることが特に好ましい。S焙燥処理における加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0028】
S焙燥処理における75℃以上での加熱は、例えば、75℃以上、100℃以下での加熱であってもよく、75℃以上、95℃以下での加熱であってもよく、75℃以上、92℃以下での加熱であってもよく、75℃以上、90℃以下での加熱であってもよい。
【0029】
S焙燥処理における75℃以上での加熱は、80℃以上の加熱を含んでもよい。この場合、S焙燥処理において、75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、60%以上であることとしてもよい。
【0030】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより一層好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
【0031】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0032】
S焙燥処理における75℃以上での加熱は、85℃以上の加熱を含んでもよい。この場合、S焙燥処理において、75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、50%以上であることとしてもよい。
【0033】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがより一層好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
【0034】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、95%以下であってもよく、90%以下であってもよく、85%以下であってもよく、80%以下であってもよい。S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0035】
S焙燥処理における75℃以上での加熱は、87℃以上の加熱を含んでもよい。この場合、S焙燥処理において、75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、45%以上であることとしてもよい。
【0036】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより一層好ましく、65%以上であることが特に好ましい。
【0037】
S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、例えば、90%以下であってもよく、85%以下であってもよく、80%以下であってもよく、75%以下であってもよい。S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0038】
本方法においては、S麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液に特定の加熱処理を施して麦芽原料液を得る。混合液の調製において湯と混合する原料は、その少なくとも一部として、S麦芽を含む。すなわち、混合液の原料は、麦芽を含み、当該麦芽は、その少なくとも一部として、S麦芽を含む。
【0039】
具体的に、混合液の原料は、麦芽として、S麦芽のみを含んでもよいし、又は、S麦芽と、当該S麦芽以外の麦芽とを含んでもよい。また、混合液の原料は、麦類原料として、麦芽のみを含んでもよいし、又は、麦芽と、当該麦芽以外の麦類原料(例えば、未発芽の麦類)を含んでもよい。
【0040】
また、副原料(例えば、麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でん粉、糖類、苦味料、着色料(例えば、カラメル)、果実(果実を乾燥させ又は煮つめたものや、濃縮した果汁を含む。)、コリアンダー又はその種、及びその他の香味料(例えば、飲料に香り又は味を付けるために使用する、こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料、カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ、かんしょ、かぼちゃその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)、そば、ごま、蜂蜜その他の含糖質物、食塩、みそ、花、茶、コーヒー、ココア又はこれらの調製品、かき、こんぶ、わかめ、及びかつお節からなる群より選択される1以上)からなる群より選択される1以上)をさらに使用してもよい。
【0041】
原料に含まれる麦芽の総重量に対する、当該麦芽に含まれるS麦芽の重量の割合は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、5重量%以上(5重量%以上、100重量%以下)であってもよく、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがより一層好ましく、25重量%以上であることが特に好ましい。
【0042】
原料の総重量に対する、当該原料に含まれるS麦芽の重量の割合は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、2重量%以上(2重量%以上、100重量%以下)であってもよく、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがより一層好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。
【0043】
本方法において特徴的なことの他の一つは、焙燥麦芽を含む混合液に、まず52℃以上、63℃以下の第一加熱温度で維持し、次いで、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持する加熱処理を施して、麦芽原料液を得ることである。
【0044】
第一加熱温度は、調製された混合液を加熱下で最初に維持する温度である。すなわち、第一加熱温度は、混合液の調製において原料に含まれる麦芽の全量を湯と混合し終えた時点における当該混合液の温度である。換言すれば、混合液は、麦芽の全量を湯と混合し終えた時点における当該混合液の温度が第一加熱温度となるように加熱されながら調製される。
【0045】
具体的に、例えば、混合液の調製、当該混合液の第一加熱温度での維持、及び当該混合液の第二加熱温度での維持を単一の容器で行う場合(例えば、混合液の加熱処理をインフュージョン法で行う場合)、第一加熱温度は、当該容器内で麦芽の全量を湯と混合し終えた時点における混合液の加熱温度である。
【0046】
また、例えば、第一の容器で混合液を調製し、その後、当該混合液の一部を第二の容器に移送し、当該第一の容器内で残りの混合液を加熱するとともに、当該第二の容器内で当該移送された一部の混合液を当該第一の容器における加熱温度より高い温度で加熱し、その後、当該第二の容器内で加熱された当該一部の混合液を、当該第一の容器に移送して当該第一の容器内で当該残りの混合液と混合する場合(例えば、混合液の加熱処理をデコクチオン法で行う場合)、第一加熱温度は、当該混合液の一部を当該第一の容器から当該第二容器に移送する前における混合液の加熱温度である。
【0047】
なお、この場合、第一の容器で調製した混合液の一部を第二の容器に移送した後、当該第二の容器内で加熱された当該一部の混合液を当該第一の容器に移送するまでの間、当該第一の容器で残りの混合液を加熱する温度は、第一加熱温度と同一の温度であってもよい。
【0048】
また、副原料を使用する場合、当該副原料は、第一の容器に入れることなく、第二の容器内において、湯と混合するとともに、当該第一の容器から移送されてきた一部の混合液と混合して加熱することとしてもよい。
【0049】
第一加熱温度は、52℃以上、63℃以下の範囲内であれば特に限られないが、例えば、53℃以上であってもよく、54℃以上であってもよく、55℃以上であってもよい。また、第一加熱温度は、例えば、62℃以下であってもよく、61℃以下であってもよく、60℃以下であってもよい。第一加熱温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。混合液を第一加熱温度で維持する時間は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られない。
【0050】
混合液を第一加熱温度で維持する間、当該第一加熱温度は、ほぼ一定温度に維持されてもよい。すなわち、混合液は、上述した第一加熱温度の範囲内の所定温度±1℃(例えば、55℃±1℃、又は、60℃±1℃)に維持されてもよく、所定温度±0.5℃(例えば、55℃±0.5℃、又は、60℃±0.5℃)に維持されてもよい。この場合、上述した混合液を第一加熱温度で維持する時間は、当該混合液を、上述した第一加熱温度の範囲内の所定温度±1℃、又は、所定温度±0.5℃に維持する時間である。
【0051】
なお、混合液を第一加熱温度で維持する目的の一つは、当該混合液に含まれるタンパク分解酵素(例えば、S麦芽に含まれるタンパク分解酵素)を、当該混合液に含まれるタンパク質(例えば、S麦芽に含まれるタンパク質)に作用させることである。
【0052】
本方法においては、混合液を第一加熱温度に維持した後、当該混合液を、当該第一加熱温度より高い第二加熱温度で維持する。すなわち、混合液を第一加熱温度に維持した後、当該混合液をさらに加熱して、当該混合液の温度を当該第一加熱温度から第二加熱温度まで上昇させて、その後、当該混合液を当該第二加熱温度で維持する。
【0053】
混合液を第二加熱温度で維持する目的の一つは、当該混合液に含まれる多糖類分解酵素(例えば、S麦芽に含まれる多糖類分解酵素(例えば、α-アミラーゼ及び/又はβ-アミラーゼ))を、当該混合液に含まれる多糖類(例えば、S麦芽に含まれる多糖類(例えば、デンプン))に作用させることである。すなわち、混合液の第二加熱温度での維持は、糖化であることとしてもよい。
【0054】
第二加熱温度は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、混合液に含まれる多糖類分解酵素が作用する温度であることが好ましい。具体的に、第二加熱温度は、例えば、63℃超、70℃以下であることとしてもよい。
【0055】
この場合、第二加熱温度は、例えば、64℃以上であってもよく、65℃以上であってもよい。また、第二加熱温度は、例えば、68℃以下であってもよく、67℃以下であってもよい。第二加熱温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。混合液を第二加熱温度で維持する時間は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られない。
【0056】
混合液を第二加熱温度で維持する間、当該第二加熱温度は、ほぼ一定温度に維持されてもよい。すなわち、混合液は、上述した第二加熱温度の範囲内の所定温度±1℃に(例えば、65℃±1℃)維持されてもよく、所定温度±0.5℃(例えば、65℃±0.5℃)に維持されてもよい。この場合、上述した混合液を第二加熱温度で維持する時間は、当該混合液を、上述した第二加熱温度の範囲内の所定温度±1℃、又は、所定温度±0.5℃に維持する時間である。
【0057】
本方法においては、混合液を第二加熱温度に維持した後、当該混合液を、当該第二加熱温度より高い第三加熱温度で維持して、麦芽原料液を得てもよい。すなわち、この場合、混合液を第二加熱温度に維持した後、当該混合液をさらに加熱して、当該混合液の温度を当該第二加熱温度から第三加熱温度まで上昇させて、その後、当該混合液を当該第三加熱温度で維持する。
【0058】
混合液を第三加熱温度で維持する目的の一つは、当該混合液に含まれるタンパク質分解酵素及び多糖類分解酵素の作用を低減させることである。このため、第三加熱温度は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、混合液に含まれるタンパク質分解酵素及び多糖類分解酵素の作用が低減する温度であることが好ましい。
【0059】
具体的に、第三加熱温度は、例えば、73℃以上、80℃以下であることとしてもよい。この場合、第三加熱温度は、例えば、74℃以上であってもよく、75℃以上であってもよい。また、第三加熱温度は、例えば、78℃以下であってもよく、76℃以下であってもよい。第三加熱温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。混合液を第三加熱温度で維持する時間は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られない。
【0060】
混合液を第三加熱温度で維持する間、当該第三加熱温度は、ほぼ一定温度に維持されてもよい。すなわち、混合液は、上述した第三加熱温度の範囲内の所定温度±1℃(例えば、75℃±1℃)に維持されてもよく、所定温度±0.5℃(例えば、75℃±0.5℃)に維持されてもよい。この場合、上述した混合液を第三加熱温度で維持する時間は、当該混合液を、上述した第三加熱温度の範囲内の所定温度±1℃、又は、所定温度±0.5℃に維持する時間である。
【0061】
本方法においては、混合液を第三加熱温度に維持した後、当該混合液を、当該第三加熱温度より高い第四加熱温度で維持して、麦芽原料液を得てもよい。すなわち、この場合、混合液を第三加熱温度に維持した後、当該混合液をさらに加熱して、当該混合液の温度を当該第三加熱温度から第四加熱温度まで上昇させて、その後、当該混合液を当該第四加熱温度で維持する。
【0062】
混合液を第四加熱温度で維持する目的としては、例えば、水分を蒸発させることや、殺菌することが挙げられる。第四加熱温度は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られないが、例えば、95℃以上であってもよく、98℃以上であってもよい。また、混合液を第四加熱温度で維持することは、当該混合液を煮沸することであってもよい。混合液を第四加熱温度で維持する時間は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に限られない。
【0063】
本方法においては、S麦芽及びホップを使用して、麦芽原料液を調製することとしてもよい。この場合、ホップが添加された混合液を第四加熱温度で維持することとしてもよく、当該ホップが添加された混合液を煮沸することとしてもよい。
【0064】
なお、本方法において使用するホップは、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、ホップパウダー、ホップペレット、プレスホップ、生ホップ、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0065】
本方法においては、S麦芽を含む原料を湯と混合して調製された混合液に、少なくとも第一加熱温度による維持及び第二加熱温度による維持を含む加熱処理を施して、麦芽原料液を得る。麦芽原料液は、ビール等の製造における冷麦汁に相当する。
【0066】
本方法においては、こうして調製された麦芽原料液を使用して、ビールテイスト飲料を製造する。すなわち、本方法においては、麦芽原料液のアルコール発酵を行って、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。
【0067】
この場合、上記加熱処理後の麦芽原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。具体的に、まず冷却された麦芽原料液に酵母を添加して発酵液を調製し、次いで、当該発酵液を、所定の発酵温度で所定時間維持することにより、アルコール発酵を行う。
【0068】
アルコール発酵開始時の発酵液中の酵母の密度は、特に限られないが、例えば、1×106個/mL以上、3×109個/mL以下であることが好ましい。酵母は、アルコール発酵を行う酵母であれば特に限られないが、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1以上であることが好ましい。アルコール発酵は、例えば、酵母を含む発酵液を、0℃以上、40℃以下の温度で、1日以上、14日以下の時間維持することにより行う。
【0069】
アルコール発酵後に熟成を行って、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。なお、本実施形態において、アルコール発酵は、ビールや発泡酒の製造における主発酵又は前発酵に相当し、熟成は、当該ビールや発泡酒の製造における貯酒又は後発酵に相当する。
【0070】
本方法においては、アルコール発酵を行うことなく、麦芽原料液を使用して、ビールテイスト飲料を得ることとしてもよい。この場合、例えば、麦芽原料液と、他の成分と混合して、ビールテイスト飲料を得る。麦芽原料液と混合する他の成分としては、例えば、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料及び甘味料からなる群より選択される1以上が好ましく使用される。
【0071】
本方法により製造されるビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する飲料である。ビールテイスト飲料は、その製造時の条件(例えば、ホップの使用の有無や、アルコール発酵の有無)に関わらず、ビール様の香味を有する飲料であれば特に限られない。
【0072】
ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であることとしてもよい。アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であることとしてもよい。なお、本方法において、アルコール発酵を行わない場合、例えば、原料液にエタノール、スピリッツ、発酵液等のアルコール含有組成物を添加することにより、アルコール飲料を得ることができる。
【0073】
ビールテイスト飲料は、ノンアルコール飲料であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。なお、本方法において、アルコール発酵を行う場合、例えば、当該アルコール発酵後の原料液に、アルコール含有量を低減する処理を施すことにより、ノンアルコール飲料を得ることができる。
【0074】
ビールテイスト飲料は、発泡性飲料であることとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料であることが好ましい。なお、本方法において、アルコール発酵を行うことなく発泡性飲料を製造する場合、例えば、炭酸ガスの吹き込み及び炭酸水の使用からなる群より選択される1以上により、発泡性を付与することができる。
【0075】
発泡性飲料は、そのNIBEM値が50秒以上であってもよく、80秒以上であることが好ましく、150秒以上であることがより好ましく、200秒以上であることが特に好ましい。発泡性飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡-NIBEM-Tを用いた泡持ち測定法-」に記載の方法により測定される。
【0076】
発泡性飲料は、その炭酸ガス圧が1.0kg/cm2以上であってもよく、2.0kg/cm2以上であることとしてもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、3.0kg/cm2以下であってもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.21 ガス圧」に記載の方法により測定される。
【0077】
ビールテイスト飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよい。この場合、ビールテイスト飲料は、ビール、発泡酒、及び、発泡酒と他のアルコール成分(例えば、焼酎、ウォッカ、ウイスキー、ブランデー、その他のスピリッツ、清酒、果実酒、甘味果実酒、雑酒及び粉末酒からなる群より選択される1以上)とを含有する発泡性アルコール飲料、からなる群より選択される発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0078】
ビールテイスト飲料は、苦味を有する飲料であることとしてもよい。すなわち、ビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、5以上であることとしてもよく、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましい。ビールテイスト飲料のBUの上限値は特に限られないが、当該BUは、例えば、50以下であることとしてもよく、40以下であることが好ましく、30以下であることが特に好ましい。ビールテイスト飲料のBUは、上記下限値のいずれか一つと、上記上限値のいずれか一つとを任意に組み合わせて特定してもよい。なお、ビールテイスト飲料のBUは、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.15 苦味価(IM)」に記載の方法により測定される。
【0079】
ビールテイスト飲料の色度は、特に限られないが、例えば、3.0EBC単位以上であってもよく、4.0EBC単位以上であることが好ましく、5.0EBC単位以上であることが特に好ましい。また、ビールテイスト飲料の色度は、例えば、30.0EBC単位以下であってもよく、20.0EBC単位以下であることが好ましく、15.0EBC単位以下であることがより好ましく、10.0EBC単位以下であることが特に好ましい。ビールテイスト飲料の色度は、上記下限値のいずれか一つと、上記上限値のいずれか一つとを任意に組み合わせて特定してもよい。なお、ビールテイスト飲料の苦味価は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.8 色度」の「8.8.2 吸光度法(IM)」に記載の方法により測定される。
【0080】
本方法によれば、香味が効果的に向上した麦芽原料液及びビールテイスト飲料を実現することができる。すなわち、例えば、麦芽原料液及びビールテイスト飲料に好ましくない香味を付与する成分の含有量を効果的に低減することができる。
【0081】
具体的に、本方法によれば、例えば、S麦芽に代えて、加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合が27%超である焙燥処理により調製された麦芽(以下、「対照麦芽」という。)を使用したこと以外は同一の条件で製造された麦芽原料液又はビールテイスト飲料に比べて、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の4-ビニルグアイアコール(4-vinylguaiacol:4VG)含有量を低減することができる。
【0082】
より具体的に、本方法においては、例えば、麦芽原料液又はビールテイスト飲料の4VG含有量を、S麦芽に代えて対照麦芽を使用したこと以外は同一の条件で製造された麦芽原料液又はビールテイスト飲料のそれに対して、5重量%以上、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、特に好ましくは8重量%以上、低減することができる。
【0083】
なお、4VGに由来するクローブ様の特徴香は、その含有量が多い場合や、他の香気、特にフルーティな香気とのバランスによっては、薬品臭や消毒臭と称される好ましくないフェノリックな香気が強調され、ビールテイスト飲料の嗜好性や、ドリンカビリティー(飽きずに何杯も飲み続けられる性質)が低下するといった問題がある。
【0084】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0085】
[S麦芽の調製]
大麦の緑麦芽にS焙燥処理を施して、大麦のS麦芽を調製した。S焙燥処理における加熱の総時間は、31時間10分であった。また、S焙燥処理における75℃以上での加熱の時間は、8時間であった。すなわち、S焙燥処理において、加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合は、25.7%であった。
【0086】
また、S焙燥処理においては、まず75℃未満での加熱を行い、次いで、75℃以上での加熱を行った。75℃以上での加熱においては、75℃未満での加熱後、75℃から90℃まで3時間かけて昇温し、最後に90℃で5時間の加熱を行った。
【0087】
すなわち、75℃以上での加熱の時間に対する90℃での加熱の時間の割合は、62.5%であった。また、75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、70.0%であった。
【0088】
また、75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、75.0%であった。また、75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、87.5%であった。
【0089】
一方、比較の対照として、焙燥条件が異なること以外は上述のS麦芽と同様にして、対照麦芽を調製した。対照麦芽の焙燥処理において、加熱の総時間に対する75℃以上での加熱の時間の割合は、28.5%であった。また、対照麦芽の焙燥処理において、75℃以上での加熱の時間に対する90℃での加熱の時間の割合、及び、75℃以上での加熱の時間に対する87℃以上での加熱の時間の割合は、0(ゼロ)%であった。また、対照麦芽の焙燥処理において、75℃以上での加熱の時間に対する85℃以上での加熱の時間の割合は、47.2%であり、75℃以上での加熱の時間に対する80℃以上での加熱の時間の割合は、55.2%であった。
【0090】
[麦芽原料液の調製]
上述のようにして調製されたS麦芽又は対照麦芽を使用して、麦芽原料液を調製した。すなわち、まず、S麦芽又は対照麦芽を湯と混合して混合液を調製した。混合液の調製において湯と混合する麦類原料としては、S麦芽又は対照麦芽のみを使用した。また、S麦芽又は対照麦芽の全量と湯とを混合し終えた時点の混合液の温度が所定の第一加熱温度となるように加熱温度を調整した。
【0091】
そして、例1においては、調製された混合液を、まず50℃の第一加熱温度で30分維持した。同様にして、例2においては、調製された混合液を、まず55℃の第一加熱温度で30分維持した。同様にして、例3においては、調製された混合液を、まず60℃の第一加熱温度で30分維持した。同様にして、例4においては、調製された混合液を、まず64℃の第一加熱温度で30分維持した。
【0092】
次いで、各例において、第一加熱温度での加熱後の混合液を、65℃の第二加熱温度で60分維持した。さらに、第二加熱温度での加熱後の混合液を、75℃の第三加熱温度で3分維持した。その後、ろ過された混合液にホップを添加して、90分間煮沸処理した。煮沸後の混合液を冷却して、麦芽原料液(冷麦汁)として得た。
【0093】
[成分分析]
上述のようにして得られた麦芽原料液の4VG含有量を測定した。4VGの含有量は、固相マイクロ抽出-質量分析計付きガスクロマトグラフィー(Solid Phase MicroExtraction-Gas Chromatography-Mass Spectrometry:SPME-GC-MS)法により以下の要領で測定した。
【0094】
3gの塩化ナトリウムを入れたSPME用バイアルに試料8mLを入れ密栓した。検量線は標準添加法にて作成した。各バイアルを40℃で15分間振盪した後、SPME用ファイバー(Polydimethylsiloxane/Divinylbenzene65μm:スペルコ社製)をバイアル中のヘッドスペースに露出させた。40℃で15分間、揮発性成分をファイバーに吸着させた後、注入口で3分間脱着させ、GC/MSにより分析を行った。
【0095】
GC/MSの分析条件は次のとおりであった。分析機器:Agilent GC-MS5973N。カラム:HP-1MS 30m×0.25mm、膜厚1.0μm。注入法:スプリットレス注入。コンスタントフロー:1.1mL/min。キャリアガス:He。注入口温度:260℃。トランスファーライン温度:320℃。オーブン温度:40℃(3min)→5℃/min→200℃(0min)→10℃/min→ 320℃(0min)。
【0096】
[結果]
図1には、例1~例4の各々において調製された麦芽原料液について、その調製において採用された第一加熱温度(℃)、4VGの含有量、及び、対照麦芽を使用した場合に対するS麦芽を使用した場合の4VG含有量の低減割合(重量%)を示す。
【0097】
なお、
図1に示す4VG含有量の低減割合は、次の式により算出した:低減割合(重量%)=(対照麦芽を使用して調製された麦芽原料液の4VG含有量-S麦芽を使用して調製された麦芽原料液の4VG含有量)÷(対照麦芽を使用して調製された麦芽原料液の4VG含有量)×100。
【0098】
図1に示すように、第一加熱温度が50℃であった例1において、4VG含有量の低減割合は4.7重量%であった。なお、予備的検討において、第一加熱温度として50℃以下の温度を採用して麦芽原料液を調製した場合、当該麦芽原料液を使用して製造されるビールテイスト飲料の泡特性は十分でないとの結果が得られた。また、第一加熱温度が64℃であった例4において、4VG含有量の低減割合は3.8重量%であった。
【0099】
これらに対し、第一加熱温度が55℃であった例2おいては、4VG含有量の低減割合は8.7重量%であった。また、第一加熱温度が60℃であった例3おいては、4VG含有量の低減割合は10.7重量%であった。
【0100】
すなわち、50℃超、64℃未満(具体的には、55℃以上、60℃以下)の第一加熱温度を採用することにより、5.0重量%以上、より具体的には8.0重量%以上という4VG含有量の低減割合が達成された。