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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】燃料電池用接合セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20240130BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20240130BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20240130BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M8/0273
B21D22/02 B
H01M8/0228
H01M8/0206
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019231126
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099930
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 純一
(72)【発明者】
【氏名】由井 元
(72)【発明者】
【氏名】渡部 茂
(72)【発明者】
【氏名】島添 稔大
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139218(JP,A)
【文献】特開2006-228533(JP,A)
【文献】特開2016-015207(JP,A)
【文献】特開2016-081909(JP,A)
【文献】特許第7264802(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/121623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0273
H01M 8/0228
H01M 8/0206
B21D 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状を呈するビード部を有する第1金属セパレータ及び第2金属セパレータを、前記ビード部が突出する側の面とは反対側の面同士を接合して接合セパレータを形成する接合セパレータ形成工程と、
一対の前記ビード部で形成されたビードシール部に、一対の圧盤で前記接合セパレータの厚さ方向に予備荷重を付与して、前記ビードシール部を塑性変形させる予備荷重付与工程と、を含み、
前記予備荷重付与工程では、燃料電池スタック形成後に前記ビードシール部に付与される荷重が当該ビードシール部の直線部及び曲線部において一致するように、当該ビードシール部の直線部に付与する予備荷重を、曲線部に付与する予備荷重よりも小さく設定することを特徴とする燃料電池用接合セパレータの製造方法。
【請求項2】
一対の前記圧盤の対向面に、基準部と、基準部よりも前記接合セパレータから離間する位置にある段差部とを設け、
前記予備荷重付与工程では、前記接合セパレータの前記曲線部が前記基準部に対向し、前記直線部が前記段差部に対向するように配置しつつ前記予備荷重を付与することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用接合セパレータの製造方法。
【請求項3】
一対の前記圧盤の対向面のうち、前記基準部と前記段差部との間に傾斜部を設け、
前記予備荷重付与工程では、前記ビードシール部の前記曲線部と前記直線部の間のつなぎ目部が前記傾斜部と対向するように配置しつつ前記予備荷重を付与することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用接合セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用接合セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接合セパレータを備えた燃料電池セルが知られている。当該接合セパレータは、凸状を呈するビードシール部を備えている。一対のビードシール部で電解質膜・電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の電解質膜を両側から挟むことにより、反応ガスの漏洩を防ぐシール領域を形成している。
【0003】
ここで、図9は、ビードシール部の一例を示す模式平面図である。図10は、図9のX-X断面図である。図9に示すように、ビードシール部100は、平面視矩形状を呈し、その周方向に亘ってシール領域を形成している。ビードシール部100は、4つの直線部131と、角部に形成された4つの曲線部132とを有する。図10に示すように、ビードシール部100は、反対方向に突出するビード部101,101とで構成されている。ビードシール部100の先端には、延長方向に亘ってシール部材120,120が設けられている。
【0004】
図11は、燃料電池セルのセル厚みとシール圧力との関係を示すグラフである。例えば、特許文献1に係るビードシール部では、外部荷重に対する塑性変形の影響が大きいため、ビードシール部に予め予備荷重を付与する技術が開示されている。荷重特性線L4は、ビードシール部に予備荷重を付与した状態を示している。荷重特性線L4のように、予備荷重を付与することにより、燃料電池スタックの運転時の外乱(温度変化や衝突等)によって荷重変動が発生しても塑性変形することがなく、荷重を加えた場合と荷重を抜いた場合とで同一の荷重特性線L4上を移動することができる。つまり、予備荷重を付与することにより、運転範囲が拡大し、外乱に耐え得る広い荷重特性が得られ、所望のシール面圧を得ることができる。なお、図11の荷重特性線La,Lb,Lcでは、予備荷重が付与されていないため、所望のシール面圧を維持するための運転範囲が狭小になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-139218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9及び図10に示すビードシール部100の反力は、主に断面形状によって決まるが、その平面形状(面外方向から見た形状)の影響もある。ビードシール部100が同一断面であっても、直線部131と曲線部132とでは予備荷重付与後のスプリングバック量が異なるため、直線部131と曲線部132とでビードの高さが異なる場合がある。図12は、ビードシール部の一例に係るビードシール部の圧縮量と面圧との関係を示すグラフである。図12に示すように、同じ圧縮量であっても、曲線部132に比べて直線部131の面圧が低下するため、ビード反力がばらつくおそれがある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために発明されたものであり、接合セパレータのビードシール部の面圧のばらつきを低減することができる燃料電池用接合セパレータの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、凸状を呈するビード部を有する第1金属セパレータ及び第2金属セパレータを、前記ビード部が突出する側の面とは反対側の面同士を接合して接合セパレータを形成する接合セパレータ形成工程と、一対の前記ビード部で形成されたビードシール部に、一対の圧盤で前記接合セパレータの厚さ方向に予備荷重を付与して、前記ビードシール部を塑性変形させる予備荷重付与工程と、を含み、前記予備荷重付与工程では、燃料電池スタック形成後に前記ビードシール部に付与される荷重が当該ビードシール部の直線部及び曲線部において一致するように、当該ビードシール部の直線部に付与する予備荷重を、曲線部に付与する予備荷重よりも小さく設定することを特徴とする。
【0009】
かかる製造方法によれば、ビードシール部の直線部と曲線部の高さ寸法のばらつきを低減することができる。これにより、ビードシール部の面圧のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料電池用接合セパレータの製造方法によれば、接合セパレータのビードシール部の面圧のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の直前の状態を示すシールラインに沿う断面図である。
図4A】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の直前の状態を示す図3のA-A断面図である。
図4B】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の直前の状態を示す図3のB-B断面図である。
図4C】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の直前の状態を示す図3のC-C断面図である。
図5A】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の荷重を付与している状態を示す図3のA-A断面図である。
図5B】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の荷重を付与している状態を示す図3のB-B断面図である。
図5C】実施例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法の予備荷重付与工程の荷重を付与している状態を示す図3のC-C断面図である。
図6】比較例に係るビードシール部の高さと荷重との関係を示すグラフである。
図7】実施例に係るビードシール部の高さと荷重との関係を示すグラフである。
図8】変形例に係る接合セパレータの平面図である。
図9】ビードシール部の一例を示す模式平面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11】燃料電池セルのセル厚みとシール圧力との関係を示すグラフである。
図12】ビードシール部の一例に係るビードシール部の圧縮量と面圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法及び燃料電池用接合セパレータについて、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池用接合セパレータ(以下、単に「接合セパレータ」とも言う)1は、ビードシール部10と、シール部材11とを有する。また、ビードシール部10は、直線状を呈する直線部2と、曲線状を呈する曲線部3と、直線部2と曲線部3との間のつなぎ目部4とを有する。つなぎ目部4は、曲線部3に差し掛かる手前の部分であって、曲線部3よりも曲率が小さい部位を意味する。
【0013】
図2に示すように、ビードシール部10は、第1金属セパレータ21と、第2金属セパレータ22とを接合して形成されている。第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とは同じ形状になっている。
【0014】
第1金属セパレータ21は、平坦な基部30と、凸状を呈するビード部31とを有する。ビードシール部10は、反対方向に突出するビード部31,31で構成されており、断面6角形の中空部を有する。ビードシール部10の先端部には、その延長方向に沿ってシール部材11がそれぞれ設けられている。
【0015】
燃料電池用接合セパレータの製造方法では、セパレータ成形工程と、接合セパレータ形成工程と、予備荷重付与工程と、を行う。予備荷重付与工程では、ビードシール部10の直線部2に付与する予備荷重を、曲線部3に付与する予備荷重よりも小さく設定する。これにより、ビードシール部10の直線部2と曲線部3の高さのばらつきを低減することができ、ひいては、ビードシール部10の延長方向の面圧のばらつきを低減することができる。以下、実施例について詳細に説明する。
【0016】
[実施例]
図1及び図2に示すように、接合セパレータ1は、燃料電池セル(図示省略)に用いられるセパレータである。燃料電池セルは、アノード側より供給される水素(燃料ガス)、カソード側より供給される酸素(酸化剤ガス)との化学反応により発電する部材である。燃料電池スタックは、燃料電池セルを複数個積層させ、隣り合う燃料電池セル所定の荷重で圧縮することで形成される。
【0017】
燃料電池セルに設けられた電解質膜・電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の電解質膜を一対の接合セパレータ1,1のビードシール部10,10で挟持することにより燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの漏洩を防ぐシール領域が形成される。一対の接合セパレータ1,1で挟持する部位は、樹脂フィルム(樹脂枠部材)である場合もある。
【0018】
図1に示すように、本実施例に係る接合セパレータ1のビードシール部10は、周方向に閉ループとなるように形成されている。ビードシール部10の平面形状は、特に制限されないが、本実施例では長丸状になっている。ビードシール部10は、対向する2つの直線部2と、対向する2つの曲線部3と、直線部2と曲線部3の間に形成される4つのつなぎ目部4とを有する。
【0019】
次に、本実施例の燃料電池セルの製造方法について説明する。燃料電池セルの製造方法では、セパレータ成形工程と、接合セパレータ形成工程と、圧盤準備工程と、予備荷重付与工程と、組付け工程と、圧縮工程とを行う。燃料電池用接合セパレータの製造方法は、燃料電池セルの製造方法に含まれる。
【0020】
セパレータ成形工程は、図2に示すように、第1金属セパレータ21及び第2金属セパレータ22を成形する工程である。第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22は同じ形状、大きさになっている。セパレータ成形工程では、平板状の厚さ0.03~0.3mm程度の金属薄板(素材)をプレス成形して第1金属セパレータ21及び第2金属セパレータ22を成形する。第1金属セパレータ21は、平坦な基部30と、単一のビード部31とを備えている。なお、本実施例では、ビード部31を一つ設けた場合を例示しているが、ビード部31は複数あってもよいし、ビード部31の他に高さの異なるビード部を設けてもよい。
【0021】
接合セパレータ形成工程は、接合セパレータを形成する工程である。図2に示すように、接合セパレータ形成工程では、第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とを、ビード部31が突出する側の面とは反対側の面同士を接合して接合セパレータを形成する。第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とはロウ付け、かしめ、溶接等で一体化する。
【0022】
ビード部31,31で構成されたビードシール部10は、中空部を備えている。ビードシール部10の延長方向に連続させつつ、ビードシール部10の先端にシール部材11,11をそれぞれ取り付ける。シール部材11は、弾性を有する材料で形成すればよく、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、ポリイソブチレン(PIB)、樹脂等を用いることができる。
【0023】
圧盤準備工程は、図3に示すように、圧盤61,61を用意する工程である。圧盤61は、接合セパレータ1に予備荷重を付与する部材である。圧盤61は、接合セパレータ1を挟んで一対配置され、同じ形状・大きさで形成されている。圧盤61は、高強度の金属又は樹脂で形成されており、板状を呈する。圧盤61は、対向面に、基準部62と、段差部63と、傾斜部64とを有する。
【0024】
基準部62は、圧盤61の基準となる面であって、何も挟まずに圧盤61,61同士を突き合わせる(接触させる)と互いに接触する平坦な面である。段差部63は、基準部62よりも接合セパレータ1から離間した位置に形成される平坦な面である。何も挟まずに圧盤61,61同士を突き合わせる(接触させる)と段差部63,63同士は離間する。
【0025】
傾斜部64は、基準部62と段差部63との間に形成される傾斜面である。傾斜部64は、基準部62から離間するにつれて接合セパレータ1から離間するように傾斜している。何も挟まずに圧盤61,61同士を突き合わせる(接触させる)と傾斜部64,64同士は離間する。
【0026】
図3に示すように、圧盤61,61で接合セパレータ1を挟持した状態(無負荷状態)において、対向する基準部62,62間の高さ寸法をH1とし、対向する段差部63,63間の高さ寸法をH2とし、対向する傾斜部64,64間の高さ寸法をH3とすると、H2>H3>H1となっている。
【0027】
予備荷重付与工程は、図3図4及び図5に示すように、接合セパレータ1に予備荷重を付与する工程である。予備荷重工程では、接合セパレータ1の厚さ方向の両側から圧盤61,61を平行状態を保持しつつ互いに近接させて荷重を付与する。このとき、ビードシール部10の直線部2を段差部63に対向させるとともに、曲線部3を基準部62に対向させ、さらに、つなぎ目部4を傾斜部64に対向させる。この状態で圧盤61,61を互いに近接させることによりビードシール部10に荷重を付与し、各部位をそれぞれ塑性変形させる。
【0028】
より詳しくは、図4Aに示すように、荷重を付与する直前では、ビードシール部10の直線部2と圧盤61の段差部63とは隙間Saで離間している。その後、予備荷重付与工程で荷重を付与すると、図5Aに示すように、ビードシール部10の直線部2が圧盤61,61の段差部63,63によって所定の荷重で圧縮されて塑性変形する。
【0029】
図4Bに示すように、荷重を付与する直前では、ビードシール部10のつなぎ目部4と圧盤61の傾斜部64とは隙間Sbで離間している。隙間Sbは、隙間Saよりも小さくなっている。その後、予備荷重付与工程で荷重を付与すると、図5Bに示すように、ビードシール部10のつなぎ目部4が圧盤61,61の傾斜部64,64によって所定の荷重で圧縮されて塑性変形する。
【0030】
図4Cに示すように、荷重を付与する直前では、ビードシール部10の曲線部3と圧盤61の基準部62と当接するか、わずかな隙間をあけて対向している。その後、予備荷重付与工程で荷重を付与すると、図5Cに示すように、ビードシール部10の曲線部3が圧盤61,61の基準部62,62によって所定の荷重で圧縮されて塑性変形する。
【0031】
図5A図5B及び図5Cに示すように、圧盤61,61の対向面には、高さの異なる基準部62、段差部63及び傾斜部64がそれぞれ形成されているため、ビードシール部10に付与される荷重も異なっている。つまり、ビードシール部10に付与される荷重は、曲線部3、つなぎ目部4、直線部2の順番で小さくなっている。換言すると、予備荷重付与工程では、ビードシール部10の直線部2に付与する予備荷重が、曲線部3に付与する予備荷重よりも小さく設定される。予備荷重付与工程を終え、圧盤61,61を離間させて接合セパレータ1から荷重を解放した時、ビードシール部10の高さ寸法h(図2参照)は、ビードシール部10の延長方向においてこの時点では一定になっていない。
【0032】
組付け工程は、一対の接合セパレータ1で、電解質膜・電極構造体(図示省略)を挟持して電池セルを形成する工程である。
【0033】
圧縮工程では、複数の電池セルを積層させて、電池セルの厚さ方向に所定の圧縮荷重を付与して燃料電池スタックを形成する工程である。燃料電池スタックが形成され、対向する接合セパレータ1,1同士の隙間が所定の締結隙間になった時、ビードシール部10の高さ寸法h(図2参照)は周方向に亘って同一又は概ね同一の高さになっている。
【0034】
次に、本実施例の作用効果について説明する。図6は、比較例に係るビードシール部の高さと荷重との関係を示すグラフである。図6の締結隙間Gは、燃料電池スタックが形成された時のビードシール部の高さである。当該比較例では、予備荷重付与工程において、平坦な対向面を備えた一対の圧盤(対向面の高さ位置は一定)を準備して、予備荷重を付与する。
【0035】
比較例の場合、前記したように、ビードシール部に周方向に亘って一定の予備荷重を付与しても、直線部及び曲線部の予備荷重付与後のスプリングバック量が異なるため、直線部と曲線部のビードシール部の高さ寸法が異なる。図6の符号αで示した線は、比較例の予備荷重付与工程における圧盤間の距離を示している。図6の締結隙間Gでは、直線部と曲線部とで面圧のギャップが生じている。つまり、比較例では、ビードシール部の延長方向において面圧のばらつきが発生している。
【0036】
これに対し、本実施例では、段差部63を備えた圧盤61,61で予備荷重を付与するため、直線部2に作用する予備荷重を曲線部3より小さくすることができ、燃料電池スタックを形成した時に、ビードシール部10の直線部2における高さ寸法hの低下を防ぐことができる。図7の符号βで示した線は、実施例の予備荷重付与工程における段差部63,63間の距離を示している(β>α)。つまり、圧盤61に段差部63を設けることにより、押し込む力を部位ごとに変えることができるため、ビードシール部10の高さ寸法を局所的に制御することができる。これにより、ビードシール部10の面圧のばらつきを低減することができるため、図7に示すように締結隙間Gにおいて直線部2と曲線部3とでビードシール部10に作用する荷重を一致させることができる。
【0037】
また、本実施例では、圧盤61につなぎ目部4に対応する傾斜部64を備えているため、つなぎ目部4においてビードシール部10の座屈が生じ難くなり、シール性の悪化を防ぐことができる。
【0038】
また、本実施例の接合セパレータ1によれば、ビードシール部10の全体に予備荷重が付与されて予め塑性変形されているため、運転範囲が拡大し、外乱(温度変化や衝突等)に耐え得る広い荷重特性が得られ、所望のシール面圧を得ることができる。
【0039】
直線部2、曲線部3及びつなぎ目部4の各高さ寸法H1,H2,H3の設定方法については、例えば、様々な段差部を備えた圧盤を作成し、当該圧盤を用いて接合セパレータに予備荷重を付与して、その都度、ビードシール部の高さと荷重との関係性を示した荷重特性のグラフを取得する。そして、本実施例のように、締結隙間Gにおいて、ビードシール部に付与される荷重が直線部2及び曲線部3とで一致もしくは概ね一致するように段差部を決定する。さらには、締結隙間Gにおいて、ビードシール部に付与される荷重が直線部2、曲線部3及びつなぎ目部4で一致もしくは概ね一致するように段差部及び傾斜部を決定する。
【0040】
[実施例2]
次に、実施例2に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法及び燃料電池用接合セパレータについて説明する。図8は、変形例に係る接合セパレータの平面図である。図8に示すように、変形例に係る接合セパレータ1Aには、ビードシール部10の他に、反応ガス用マニホールド又は冷媒用マニホールドをシールするビードシール部10Aが形成されている。接合セパレータ1Aのように、ビードシール部10,10Aは複数本設けてもよい。また、ビードシール部10,10Aは同じ形状の断面でもよいし、異なる断面でもよい。
【0041】
変形例に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法では、実施例と同じ要領で各工程を行う。このとき、圧盤の段差部及び傾斜部の高さ寸法は、ビードシール部10、各ビードシール部10Aに応じて適宜設定することができる。
【0042】
以上実施例及び変形例について説明したが、適宜設計変更が可能である。例えば、シール部材11は省略してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料電池用接合セパレータ(接合セパレータ)
2 直線部
3 曲線部
4 つなぎ目部
10 ビードシール部
21 第1金属セパレータ
22 第2金属セパレータ
31 ビード部
61 圧盤
62 基準部
63 段差部
64 傾斜部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12