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特許7428522溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置及び溶接システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置及び溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B23K9/12 301M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020010042
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021115593
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英市
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066561(JP,A)
【文献】特開平05-038178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0309063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給システムで送給する溶接ワイヤの送給制御方法であって、
前記送給システムは、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正判定手段は、
前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定し、かつ、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第一判定手段と、
前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否か、かつ、前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第二判定手段を有し、
前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、前記補正値算出手段が前記補正値を算出し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接ワイヤの送給制御方法。
【請求項2】
アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給システムで送給する溶接ワイヤの送給制御方法であって、
前記送給システムは、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力し、
前記送給制御部は、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定する制御方式判定手段を有し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値以下であると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを位置決め制御方式で駆動し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値を超えると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを速度制御方式で駆動することを特徴とする溶接ワイヤの送給制御方法。
【請求項3】
前記制御値はパルス信号であり、
前記送給制御部は、前記補正値にしたがって、前記パルス信号のON期間の幅、ON期間の高さ及び前記パルス信号の周波数のうち少なくとも一つを変調させる、
請求項1又は2に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
【請求項4】
前記補正制御部は、前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、アラーム信号を発生させる、請求項1に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
【請求項5】
前記送給速度帰還信号は、前記直流ブラシモータの回転数及びトルクのうち少なくとも一方を信号とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
【請求項6】
アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給する溶接ワイヤの送給装置であって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正判定手段は、
前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定し、かつ、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第一判定手段と、
前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否か、かつ、前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第二判定手段を有し、
前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、前記補正値算出手段が前記補正値を算出し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接ワイヤの送給装置。
【請求項7】
アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給する溶接ワイヤの送給装置であって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力し、
前記送給制御部は、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定する制御方式判定手段を有し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値以下であると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを位置決め制御方式で駆動し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値を超えると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを速度制御方式で駆動することを特徴とする溶接ワイヤの送給装置。
【請求項8】
溶接ワイヤを送給しつつアーク溶接を行う溶接システムであって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正判定手段は、
前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定し、かつ、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第一判定手段と、
前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否か、かつ、前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第二判定手段を有し、
前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、前記補正値算出手段が前記補正値を算出し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接システム。
【請求項9】
溶接ワイヤを送給しつつアーク溶接を行う溶接システムであって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力し、
前記送給制御部は、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定する制御方式判定手段を有し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値以下であると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを位置決め制御方式で駆動し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値を超えると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを速度制御方式で駆動することを特徴とする溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流ブラシモータを用いて、溶接ワイヤを安定的に送給するための溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置及び溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流ブラシモータ(以下、DCブラシモータ、あるいは単にモータともいう)は、ステータ(以下、固定子ともいう)とロータからなり、ステータに永久磁石を、ロータにコイル、整流子、及びブラシを備える。DCブラシモータは、シンプルな構造で、制御が容易、かつ汎用性が高いという長所があるため、ガスシールドアーク溶接に用いられる溶接ワイヤの送給に多用されている。しかしながら、ブラシと整流子が機械的に接触するという構造上、モータの稼働時間に略比例してブラシが摩耗するという問題点があり、溶接に悪影響を及ぼしていた。
【0003】
このブラシ摩耗の問題を解決するために、特許文献1では、所定の周期内でON/OFFするパルス電圧を連続的に供給してモータを駆動する駆動方式において、過電流検出手段が予め定めた過電流を検出したときに、周期内でON状態にあるパルス電圧をOFF状態にすることにより、モータに流れる電流を、ブラシ、及び整流子の磨耗が少ない範囲で制御して、DCモータの長寿命化を図り、これにより該モータを備える装置全体の低コスト化を図ったモータ制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-275573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ブラシが摩耗した際の弊害として、摩耗が進行するほど、電気的接触が弱くなる高負荷状態が発生し易くなる。高負荷状態が頻繁に発生すると、回転に際し、より高いエネルギーが必要となる。その結果、回転開始時又は回転数変更時から指定の回転数へ移行するまでの応答時間の低下、すなわち応答時間が長くなる。また、電気的接触が都度変化することから、安定した回転を維持できない。特許文献1は、早期のブラシ摩耗を抑制してDCブラシモータの寿命を延命するものであるが、ブラシ摩耗後の課題である、設定回転数へ至るまでの応答時間の低下を抑制すること、及び安定した回転を維持することについて解決するものではない。
【0006】
溶接ワイヤの送給において、DCブラシモータの回転数の変化は溶接電流に係る重要な要素であるため、指定の回転数へ移行するための応答時間は、より短いことが求められる。また、安定した回転を維持できない場合、溶接作業性に大きく影響する。なお、ブラシの摩耗によって安定した回転を維持できないという問題は、回転による慣性が小さい低速回転で特に起こり易い。一方、ロボットを用いた自動溶接では、自動溶接の機能において低速で短時間のワイヤ送給を行うことがあり、ブラシの摩耗による指定回転数への応答時間に対する悪影響が顕著になる。このように、ブラシの摩耗に起因するこれらの問題は、溶接に対して大きな影響を及ぼす。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接ワイヤの送給において、直流ブラシモータにおいてブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転数へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置、及び溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の上記目的は、溶接ワイヤの送給制御方法に係る下記(1)の構成により達成される。
【0009】
(1) アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給システムで送給する溶接ワイヤの送給制御方法であって、
前記送給システムは、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、溶接ワイヤを送給する直流ブラシモータにおいて、ブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転速度へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる。
【0010】
また、溶接ワイヤの送給制御方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(6)に関する。
【0011】
(2) 前記制御値はパルス信号であり、
前記送給制御部は、前記補正値にしたがって、前記パルス信号のON期間の幅、ON期間の高さ及び前記パルス信号の周波数のうち少なくとも一つを変調させる、(1)に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、直流ブラシモータの回転速度を精度よく制御できる。
【0012】
(3) 前記補正判定手段は、
前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定し、かつ、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第一判定手段と、
前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否か、かつ、前記モータ電流信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間が、あらかじめ定めた期間を満たすか否かを判定する第二判定手段を有し、
前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、前記補正値算出手段が前記補正値を算出する、(1)又は(2)に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、補正値を算出するための判定条件である信号値及びその期間を複数設けることで、補正値算出手段がより正確に補正値を算出することができる。
【0013】
(4) 前記補正制御部は、前記第一判定手段及び前記第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、アラーム信号を発生させる、(3)に記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、ブラシの摩耗をアラーム信号により作業者に警告できる。
【0014】
(5) 前記送給速度帰還信号は、前記直流ブラシモータの回転数及びトルクのうち少なくとも一方を信号とする、(1)~(4)のいずれかに記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、直流ブラシモータの回転数及びトルクのいずれか一方の信号を検出することで溶接ワイヤの送給速度を制御できる。
【0015】
(6) 前記送給制御部は、前記送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下であるか否かを判定する制御方式判定手段を有し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値以下であると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを位置決め制御方式で駆動し、
前記送給速度帰還信号の信号値が、前記あらかじめ定めた信号値を超えると判定された場合、前記モータ駆動部は前記直流ブラシモータを速度制御方式で駆動する、(1)~(5)のいずれかに記載の溶接ワイヤの送給制御方法。
この構成によれば、送給速度帰還信号に基づいて、直流ブラシモータを位置決め制御方式及び速度制御方式のいずれかに切り替えて駆動することができる。
【0016】
また、本発明の上記目的は、溶接ワイヤの送給装置に係る下記(7)の構成により達成される。
【0017】
(7) アーク溶接に用いられる溶接ワイヤを送給する溶接ワイヤの送給装置であって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接ワイヤの送給装置。
この構成によれば、溶接ワイヤを送給する直流ブラシモータにおいて、ブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転速度へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる。
【0018】
さらに、本発明の上記目的は、溶接システムに係る下記(8)の構成により達成される。
【0019】
(8) 溶接ワイヤを送給しつつアーク溶接を行う溶接システムであって、
前記溶接ワイヤを送給するための直流ブラシモータと、
前記直流ブラシモータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部への入力信号である制御値を制御するための送給制御部と、
前記制御値の補正要否を判定、又は、前記制御値を補正する補正値を算出するための補正制御部と、
前記直流ブラシモータの状態を検出する送給速度検出部と、
前記直流ブラシモータに流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記送給速度検出部で検出された送給速度帰還信号と、前記モータ電流検出部で検出されたモータ電流信号に基づいて、前記制御値の補正の要否を判定する補正判定手段と、
前記補正判定手段が前記制御値の補正を要と判定した場合に、前記補正値を算出する補正値算出手段とを有し、
前記補正値が算出された場合には、前記補正値を前記送給制御部に入力して前記制御値を補正し、補正された前記制御値を前記モータ駆動部へ入力することを特徴とする溶接システム。
この構成によれば、溶接ワイヤを送給する直流ブラシモータにおいて、ブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転速度へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置及び溶接システムによれば、溶接ワイヤを送給する直流ブラシモータのブラシ摩耗の状態を判定し、該判定結果にしたがって、モータ駆動部へ入力する制御値を補正することで、ブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転速度へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係るアーク溶接システムの一構成例を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る溶接ワイヤの送給システムの第1実施形態を示すブロック図である。
図3図3の(a)は、送給速度帰還信号の大きさと時間との関係を示す一例のグラフであり、図3の(b)は、モータ電流信号の大きさと時間との関係を示す一例のグラフであり、図3の(c)は、図3の(a)及び図3の(b)における補正値の出力タイミングを示すグラフである。
図4図4の(a)は、送給速度帰還信号の大きさと時間との関係を示す他の例のグラフであり、図4の(b)は、モータ電流信号の大きさと時間との関係を示す他の例のグラフであり、図4の(c)は、図4の(a)及び図4の(b)における補正値の出力タイミングを示すグラフである。
図5図5は、本発明に係る溶接ワイヤの送給システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は溶接ロボットを用いた場合の一例であり、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0023】
(第1実施形態)
<アーク溶接システムの概要>
図1は、本実施形態に係るアーク溶接システムの構成例を示す概略図である。アーク溶接システム50は、溶接ロボット100と、送給装置300と、溶接電源400と、シールドガス供給装置500と、ロボット制御装置600と、を備えている。
【0024】
溶接電源400は、プラスのパワーケーブル410を介して、消耗式電極である溶接ワイヤ211に接続され、マイナスのパワーケーブル430を介して、被溶接物であるワークWと接続されている。この接続は、逆極性で溶接を行う場合であり、正極性で溶接を行う場合、溶接電源400は、プラスのパワーケーブルを介してワークWに接続され、マイナスのパワーケーブルを介して溶接ワイヤ211に接続される。
【0025】
また、溶接電源400と溶接ワイヤ211の送給装置300のそれぞれが信号線によって接続され、溶接ワイヤ211の送り速度を、送給装置300に内蔵する、後述の送給システム10(図2参照)で制御することができる。
【0026】
溶接ロボット100は、エンドエフェクタとして、溶接トーチ200を備えている。溶接トーチ200は、溶接ワイヤ211に通電させる通電機構、すなわちコンタクトチップを有している。溶接ワイヤ211は、コンタクトチップからの通電により、先端からアークを発生し、その熱で溶接の対象であるワークWを溶接する。
【0027】
さらに、溶接トーチ200は、シールドガスを噴出する機構となるシールドガスノズル210を備える。シールドガスは、炭酸ガス、アルゴンガス、又は例えばアルゴン+COといった混合ガスのいずれでもよい。シールドガスは、シールドガス供給装置500から供給される。
【0028】
ロボット制御装置600は、溶接ロボット100の動作を制御する。ロボット制御装置600は、あらかじめ溶接ロボット100の動作パターン等を定めた教示データを保持し、溶接ロボット100に対してこれらを指示して溶接ロボット100の動作を制御する。また、ロボット制御装置600は、教示データに従い、溶接作業中の溶接電流、溶接電圧、送給速度等の溶接条件を溶接電源400に与える。
【0029】
溶接電源400は、ロボット制御装置600からの指令により、溶接ワイヤ211及びワークWに電力を供給することで、溶接ワイヤ211とワークWとの間にアークを発生させる。また、溶接電源400は、図2を参照して、ロボット制御装置600からの指令により、送給装置300に内蔵する送給システム10に対して、溶接ワイヤ211の送給を開始するための送給起動信号Fs、及び溶接ワイヤ211の送給速度を制御するための送給速度指令値Wfrを出力する。
なお、後述する送給システム10に含まれる送給制御部EA、補正制御部BC、モータ駆動部DR、モータ電流検出部CD等の制御回路または検出回路は、送給装置300に内蔵される場合に限定されず、独立して配設することもでき、さらにロボット制御装置600や溶接電源400などに内蔵されてもよい。
【0030】
<送給システムの機能構成>
第1実施形態の送給システム10は、図2に示すように、溶接ワイヤ211を送給するための直流ブラシモータMと、モータ駆動部DRと、送給速度検出部FVCと、モータ電流検出部CDと、モータ過電流判定部OCと、送給制御部EAと、補正制御部BCと、を備える。なお、本実施形態に係る送給システム10は、モータ駆動部DRが、直流ブラシモータMを速度制御方式で駆動する場合の例である。
【0031】
直流ブラシモータMは、モータ駆動部DRの指令に基づいて不図示のローラを回転させ、該ローラが挟持する溶接ワイヤ211を溶接トーチ200に送給する。また、直流ブラシモータMの回転軸には、ロータリーエンコーダEが配設されて、直流ブラシモータMの回転をモータ回転信号Epに変換して出力する。モータ駆動部DRは、直流ブラシモータMへ電力を供給して直流ブラシモータMを回転駆動する。
【0032】
送給速度検出部FVCは、ロータリーエンコーダEで検出されたモータ回転信号Epを溶接ワイヤ211の送給速度帰還信号Wfbに変換する。なお、検出方法としては、直流ブラシモータMの回転を検出するロータリーエンコーダEを用いた方法に限定されない。例えば、モータの逆起電圧を用いる検出方法が挙げられる。これは、モータの電圧を入力とする別の回転検出回路を用いて検出する方法である。
【0033】
また、モータ電流検出部CDは、モータ駆動部DRから直流ブラシモータMに供給される電流をモータ電流信号Cdとして検出する。モータ電流信号Cdは、ブラシ摩耗が発生したときや、ブラシ及び整流子が酸化したときなど、抵抗値の上昇により低下するため、ブラシ摩耗や酸化の検出が可能となる。
【0034】
モータ過電流判定部OCは、モータ電流検出部CDで検出されたモータ電流信号Cdが所定の電流値より大きい場合、モータ過電流信号Ocを送給制御部EAに送出して直流ブラシモータMの過負荷を防止する。
【0035】
送給制御部EAは、溶接電源400から出力される送給起動信号Fs及び送給速度指令値Wfr、送給速度検出部FVCから出力される送給速度帰還信号Wfb、モータ電流検出部CDから出力されるモータ電流信号Cd、モータ過電流判定部OCから出力されるモータ過電流信号Oc、及び補正制御部BCから出力される補正値Bcが入力され、それぞれの信号に基づいてモータ駆動部DRへの入力信号である制御値Eaを制御する。
【0036】
制御値Eaは、例えばパルス信号であり、送給制御部EAは、補正値Bcにしたがって、パルス信号のON期間の幅、ON期間の高さ及びパルス信号の周波数のうち少なくとも一つを変調させて直流ブラシモータMの回転を制御する。制御値Eaをパルス信号とすることで、回転制御の精度が向上する。
【0037】
補正制御部BCは、補正判定手段20及び補正値算出手段30を備える。補正判定手段20は、送給速度帰還信号Wfbと、モータ電流信号Cdに基づいて、制御値Eaの補正の要否を判定する。補正値算出手段30は、補正判定手段20において、制御値Eaの補正が必要と判定された場合、補正値Bcを算出し、該補正値Bcを送給制御部EAに入力して制御値Eaを補正し、補正された制御値Eaをモータ駆動部DRへ入力する。
【0038】
なお、補正判定手段20は、第一判定手段と第二判定手段とを備える。図3及び図4を参照しつつ、第一判定手段は、送給速度帰還信号Wfbの信号値rが、あらかじめ定めた信号値rth以下であり、かつ、該信号値rが、あらかじめ定めた信号値rth以下を満たす期間TRthが、あらかじめ定めた期間TRを満たすか否かを判定する。
【0039】
また、第二判定手段は、モータ電流信号Cdの信号値iが、あらかじめ定めた信号値ith以下であり、かつ、該信号値iが、あらかじめ定めた信号値ith以下を満たす期間TIthが、あらかじめ定めた期間TIを満たすか否かを判定する。
【0040】
そして、第一判定手段及び第二判定手段の判定条件を共に満たす場合にのみ、補正値算出手段30が補正値Bcを算出して送給制御部EAに出力する。また、補正判定手段20は、第一判定手段及び第二判定手段の判定条件が共に満たされた場合、アラーム信号を発生し、ブラシの摩耗をアラームにより作業者に警告することもできる。
【0041】
<補正判定手段による判定例(1)>
図3に示す判定例(1)は、直流ブラシモータMの回転速度が長時間低速状態(停止状態も含む)で維持された場合の例である。具体的には、図3の(a)に示すように、送給速度帰還信号Wfbの信号値rが、あらかじめ定めた信号値rth以下であり、かつ、あらかじめ定めた信号値rth以下を満たす期間である、その期間TRthが、あらかじめ定めた期間TRより長い。したがって、第一判定手段は、時刻tr1において、信号値r及び期間TRの両条件を満したと判定する。
【0042】
また、同時に、図3の(b)に示すように、モータ電流信号Cdの信号値iが、あらかじめ定めた信号値ith以下であり、かつ、あらかじめ定めた信号値ith以下を満たす期間である、その期間TIthが、あらかじめ定めた期間TIより長くなっている。したがって、第二判定手段は、時刻ti1において、信号値i及び期間TIの両条件を満したと判定する。
【0043】
補正値算出手段30は、第一判定手段及び第二判定手段の判定結果に基づいて、図3の(c)に示すように、時刻ti1において補正値Bcを算出して送給制御部EAに出力し、直流ブラシモータMに印加する電圧を増大させ、より大きなモータ電流を直流ブラシモータMに供給して回転速度を上げるように制御する。また、モータ電流信号Cdの大きさからブラシ-整流子間の抵抗値を算出し、該抵抗値の変化からブラシ摩耗の程度を知ることもできる。
【0044】
<補正判定手段による判定例(2)>
図4に示す判定例(2)は、直流ブラシモータMの回転速度が不安定な場合の例である。具体的には、図4の(a)に示すように、直流ブラシモータMの回転は、立ち上がり後の時刻tr1において、送給速度帰還信号Wfbの信号値rが、あらかじめ定めた信号値rthを上回ったが、時刻tr2~時刻tr3の間は、信号値rth以下となる場合である。ただし、その期間TRthは、あらかじめ定めた期間TRより短いため、第一判定手段の判定条件を満たしていない。その後、時刻tr4において再び、送給速度帰還信号Wfbの信号値rが、あらかじめ定めた信号値rth以下となり、時刻tr5において時刻tr4からの期間があらかじめ定めた期間TRより長くなる場合である。この場合において、第一判定手段は、時刻tr5において両条件を満したと判定する。
【0045】
また、図4の(b)に示すように、モータ電流信号Cdの信号値iが安定せず、あらかじめ定めた信号値ithを境に上下しており、時刻ti2~時刻ti3の間であらかじめ定めた信号値ith以下となったが、その期間TIthは、あらかじめ定めた期間TIより短いため、この時点では第二判定手段の判定条件を満たしていない。その後、モータ電流信号Cdの信号値iは、あらかじめ定めた信号値ithを上回ったものの、その後、時刻ti4において再び、モータ電流信号Cdの信号値iが信号値ith以下となり、時刻ti5において時刻ti4からの期間があらかじめ定めた期間TIより長くなる場合である。この場合において、第二判定手段は、時刻ti5において両条件を満したと判定する。
【0046】
補正値算出手段30は、第一判定手段及び第二判定手段の判定結果に基づいて、図4の(c)に示すように、第一、及び第二判定手段の判定条件を共に満たす時刻tr5において補正値Bcを算出して送給制御部EAに出力する。
【0047】
送給制御部EAは、補正値Bcに基づいて制御値Eaを補正し、補正された制御値Eaをモータ駆動部DRへ出力し、直流ブラシモータMの回転速度を制御する。通常、補正制御部BCは、直流ブラシモータMが停止していたり、低速で回転している場合、より大きなモータ電流を直流ブラシモータMに供給して回転速度を上げるように補正値Bcを算出する。これにより、ブラシの摩耗が発生していても、停止状態又は低速回転状態から設定された回転速度に達するまでの応答時間の低下、すなわち応答遅れを抑制することができる。また、安定した回転を維持することが可能となる。なお、直流ブラシモータMの回転速度を増加させるように制御する場合、直流ブラシモータMの過回転を防止するため、制御値Eaが段階的に増加するように、補正値Bcを時間と共に増大させるように制御することが好ましい。
【0048】
以上、本実施形態の溶接ワイヤの送給制御方法、溶接ワイヤの送給装置及び溶接システムによれば、溶接ワイヤ211の送給において、直流ブラシモータMのブラシの摩耗状態を判定し、該判定結果にしたがって、モータ駆動部DRへ入力する制御値Eaを補正することで、ブラシの摩耗が生じたとしても、設定回転速度へ至るまでの応答時間の低下を抑制し、かつ安定した回転を維持することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る送給システムについて、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第2実施形態である送給システムのブロック図である。
【0050】
図5に示す送給システム10は、基本的には、第1実施形態に係る送給システム10と同じであり、送給制御部EA’に制御方式判定手段40が付加されると共に、ロータリーエンコーダEで検出されたモータ回転信号Epが、送給制御部EA’にも入力されている点で異なる。その他の部分については、第1実施形態に係る送給システム10と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0051】
本実施形態の制御方式判定手段40は、送給速度指令値Wfrが、あらかじめ定めた値Wfr_low以下であるか否かを判定する。すなわち、送給速度指令値Wfrが、あらかじめ定めた値Wfr_low以下であると判定された場合、送給制御部EA’は制御値Eaを位置決め制御方式で算出し、送給速度指令値Wfrが、あらかじめ定めた値Wfr_lowを超えると判定された場合、送給制御部EA’は制御値Eaを速度制御方式で算出する。
【0052】
制御方式判定手段40が速度制御方式を選択した場合、第1実施形態に係る送給システム10と同様に、送給速度検出部FVCから出力される送給速度帰還信号Wfb、及びモータ電流検出部CDから出力されるモータ電流信号Cdに基づいて、補正制御部BCが補正の要否を判定すると共に、必要に応じて補正値Bcを算出して、該補正値Bcを送給制御部EA’に入力して制御値Eaを補正する。補正された制御値Eaは、モータ駆動部DRへ入力されて、モータ駆動部DRが直流ブラシモータMを駆動する。
【0053】
一方、制御方式判定手段40が位置決め制御方式を選択した場合、送給制御部EA’は、送給制御部EA’に入力されるロータリーエンコーダEからのモータ回転信号Epに基づいて直流ブラシモータMの回転数を算出して加算し、直流ブラシモータMの累積回転数が、必要とされる溶接ワイヤ211の送給長さを送給可能な回転数となるように制御値Eaを算出する。補正された制御値Eaは、モータ駆動部DRへ入力されて、モータ駆動部DRが直流ブラシモータMを駆動する。
【0054】
直流ブラシモータMの速度制御方式による駆動は、溶接中において溶接ワイヤ211の消耗量に応じて溶接ワイヤ211を送給する場合に効果的に使用可能である。また、直流ブラシモータMの位置決め制御方式による駆動は、溶接開始に先立って溶接ワイヤ211を所定の長さ(例えば、数ミリメートル)だけ送給して溶接トーチ200の先端から突き出す場合などに効果的に使用可能である。なお、速度制御方式及び位置決め制御方式のいずれの駆動方式においても、補正制御部BCの補正判定手段20及び補正値算出手段30による補正制御を行う。
【0055】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 送給システム
20 補正判定手段
30 補正値算出手段
40 制御方式判定手段
50 アーク溶接システム
100 溶接ロボット
200 溶接トーチ
211 溶接ワイヤ
300 送給装置
400 溶接電源
500 シールドガス供給装置
600 ロボット制御装置
BC 補正制御部
Bc 補正値
CD モータ電流検出部
Cd モータ電流信号
DR モータ駆動部
E ロータリーエンコーダ
EA、EA’ 送給制御部
Ea 制御値
Ep モータ回転信号
Fs 送給起動信号
FVC 送給速度検出部
M 直流ブラシモータ
OC モータ過電流判定部
Oc モータ過電流信号
Wfb 送給速度帰還信号
Wfr 送給速度指令値
ワーク
i モータ電流信号の信号値
th あらかじめ定めた信号値
r 送給速度帰還信号の信号値
th あらかじめ定めた信号値
TI あらかじめ定めた期間
TIth あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間
TR あらかじめ定めた期間
TRth 送給速度帰還信号の信号値が、あらかじめ定めた信号値以下を満たす期間
図1
図2
図3
図4
図5