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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20240130BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G01D5/12 A
G01D5/245 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011010
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021117120
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】春日 敦史
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 将俊
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/046854(WO,A1)
【文献】実開昭55-170713(JP,U)
【文献】特開2011-13187(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021073(WO,A1)
【文献】特開2017-191092(JP,A)
【文献】特許第6336232(JP,B1)
【文献】特開2017-83393(JP,A)
【文献】特開2014-137232(JP,A)
【文献】特開2019-200101(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転を検出する回転検出装置であって、
磁界を形成し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の回転軸の周囲の軌道上を移動する少なくとも一対の磁界形成部と、
前記軌道の外周側に前記回転体の回転に伴って移動しないように配置され、磁性線材を有し、前記少なくとも一対の磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部と
前記複数の磁界検出部と前記軌道との間に配置され、前記各磁界形成部により形成される磁界の方向を制御する複数の磁界制御部とを備え、
前記少なくとも一対の磁界形成部のうち、一方の磁界形成部の外周側部分の磁極と他方の磁界形成部の外周側部分の磁極とは互いに異なり、
前記複数の磁界検出部は、前記磁性線材の伸長方向が前記回転軸と非平行となるように前記回転体の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置され、かつ前記回転軸の伸長方向において互いに異なる位置で前記回転軸とそれぞれ交わる第1の平面上と第2の平面上とに分かれて配置され
前記複数の磁界制御部は、前記複数の磁界検出部と対応するように前記第1の平面上と前記第2の平面上とに分かれて配置され、
前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記複数の磁界制御部のうち前記回転体の回転方向において隣り合う2つの磁界制御部は互いに部分的に重なり合っていることを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
回転体の回転を検出する回転検出装置であって、
磁界を形成し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の回転軸の周囲の軌道上を移動する少なくとも一対の磁界形成部と、
性線材を有し、前記少なくとも一対の磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部と
前記回転軸の伸長方向において互いに異なる位置で前記回転軸とそれぞれ交わる2つの平面上に、前記回転体の回転に伴って移動しないようにそれぞれ配置された第1の基板および第2の基板とを備え、
前記少なくとも一対の磁界形成部のうち、一方の磁界形成部の外周側部分の磁極と他方の磁界形成部の外周側部分の磁極とは互いに異なり、
前記第1の基板および前記第2の基板は前記第1の基板の裏面と前記第2の基板の表面とが互いに向かい合うように配置され、
前記複数の磁界検出部は、前記磁性線材の伸長方向が前記回転軸と非平行となるように前記軌道の外周側であって前記回転体の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置され、かつ前記第1の基板の裏面上および前記第2の基板の表面上に分かれて配置されていることを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
回転体の回転を検出する回転検出装置であって、
磁界を形成し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の回転軸の周囲の軌道上を移動する少なくとも一対の磁界形成部と、
前記軌道の外周側に前記回転体の回転に伴って移動しないように配置され、磁性線材を有し、前記少なくとも一対の磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部とを備え、
前記少なくとも一対の磁界形成部のうち、一方の磁界形成部の外周側部分の磁極と他方の磁界形成部の外周側部分の磁極とは互いに異なり、
前記複数の磁界検出部は、前記磁性線材の伸長方向が前記回転軸と非平行となるように前記回転体の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置され、かつ前記回転軸の伸長方向において互いに異なる位置で前記回転軸とそれぞれ交わる第1の平面上と第2の平面上とに分かれて配置され
前記各磁界形成部は、前記回転軸の伸長方向において、前記複数の磁界検出部のうち前記第1の平面上に配置された磁界検出部の位置から、前記複数の磁界検出部のうち前記第2の平面上に配置された磁界検出部の位置に亘って設けられ、
前記各磁界形成部は、前記回転軸の伸長方向一側の第1の磁石片と、前記回転軸の伸長方向他側の第2の磁石片とに分割され、
前記第1の磁石片の外周側部分の磁極と前記第2の磁石片の外周側部分の磁極とは互いに同一であることを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
前記磁性線材は大バルクハウゼン素子であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して回転体の回転を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータのシャフト等の回転体の回転を検出する装置として、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材を利用した磁気式回転検出装置が知られている(特許文献1を参照)。この回転検出装置は、方向が互いに異なる磁界をそれぞれ形成する少なくとも一対の磁石と、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材の周囲にコイルを設けた磁気センサとを備えている。一対の磁石は例えば回転体の外周部に固定され、回転体の回転に伴って回転体の回転軸の周囲の円軌道上を移動する。磁気センサは、磁石が移動する円軌道の近傍に、回転体の回転に伴って移動しないように配置されている。回転体の回転に伴って一対の磁石が円軌道上を移動すると、一対の磁石が磁気センサの近傍を交互に通過する。その結果、回転体の回転に伴い、磁気センサの磁性線材に作用する磁界の方向が変化する。磁性線材は、それに作用する磁界の方向が変化すると、その磁化方向が急激に反転する性質、すなわち、大バルクハウゼン効果を生じる性質を有している。したがって、回転体の回転に伴って磁性線材に作用する磁界の方向が変化する度に、磁性線材の磁化方向が急激に反転し、電磁誘導によりコイルからパルス信号が出力される。このパルス信号により回転体の回転数または回転角度を検出する。
【0003】
また、回転体の回転を検出する他の装置として、光学式エンコーダが知られている。光学式エンコーダは、例えば発光素子、受光素子および円板状のコードホイールを備えている。コードホイールは、回転体に固定され、回転体と共に回転する。発光素子および受光素子は、コードホイールの近傍に、回転体と共に回転しないように配置されている。コードホイールには透過型のコードホイールと、反射型のコードホイールがある。透過型のコードホイールには、回転時に発光素子から発せられた光が照射される部分に、多数のスリットが配列されている。反射型のコードホイールには、回転時に発光素子から発せられた光が照射される部分に、多数の反射領域および非反射領域が交互に配列されている。回転体と共にコードホイールが回転し、発光素子からコードホイールへ光が照射されると、コードホイールが有するスリットの配列、または反射領域および非反射領域の配列によりパルス状の検出光が形成され、その検出光が受光素子に入力される。このパルス状の検出光により回転体の回転数または回転角度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-200101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記磁気式回転検出装置は無電源で動作するという特徴を有する。また、光学式エンコーダは回転体の回転角度を細かく検出することができるという特徴を有する。上記磁気式回転検出装置と光学式エンコーダとを組み合わせて例えばモータ等の被検出装置に取り付けることによって、電源オフ時には上記磁気式回転検出装置により回転体の回転を検出し、電源オン時には上記磁気式回転検出装置および光学式エンコーダにより回転体の回転を高精度に検出することが可能になる。
【0006】
しかしながら、この場合、上記磁気式回転検出装置および光学式エンコーダの双方を被検出装置に取り付けるため、上記磁気式回転検出装置、光学式エンコーダおよび被検出装置を合わせた装置全体が大型化するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、磁性線材を利用した回転検出装置であって、当該回転検出装置を他の装置と組み合わせて被検出装置に取り付けた場合に、当該回転検出装置、他の装置および被検出装置を合わせた装置全体が大型化することを抑制することができる回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の回転検出装置は、回転体の回転を検出する回転検出装置であって、磁界を形成し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の回転軸の周囲の軌道上を移動する少なくとも一対の磁界形成部と、前記軌道の外周側に前記回転体の回転に伴って移動しないように配置され、磁性線材を有し、前記少なくとも一対の磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部とを備え、前記少なくとも一対の磁界形成部のうち、一方の磁界形成部の外周側部分の磁極と他方の磁界形成部の外周側部分の磁極とは互いに異なり、前記複数の磁界検出部は、前記磁性線材の伸長方向が前記回転軸と非平行となるように前記回転体の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置され、かつ前記回転軸の伸長方向において互いに異なる位置で前記回転軸とそれぞれ交わる第1の平面上と第2の平面上とに分かれて配置されていることを特徴とする。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記複数の磁界検出部のうち前記回転体の回転方向において隣り合う2つの磁界検出部は互いに部分的に重なり合っていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記複数の磁界検出部のうち前記回転体の回転方向において隣り合う2つの磁界検出部の前記磁性線材は互いに部分的に重なり合っていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記各磁界形成部により形成される磁界の方向を制御する複数の磁界制御部を備え、前記複数の磁界制御部は、前記複数の磁界検出部と対応するように前記第1の平面上と前記第2の平面上とに分かれて配置され、かつ前記複数の磁界検出部と前記軌道との間にそれぞれ配置され、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記複数の磁界制御部のうち前記回転体の回転方向において隣り合う2つの磁界制御部は互いに部分的に重なり合っていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記複数の磁界検出部は、第1の磁界検出部、第2の磁界検出部および第3の磁界検出部を含み、前記第1の磁界検出部は、前記第1の平面および前記第2の平面のうちの一方の平面上に配置され、前記第2の磁界検出部および前記第3の磁界検出部は、前記第1の平面および前記第2の平面のうちの他方の平面上に配置され、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記第1の磁界検出部、前記第2の磁界検出部および前記第3の磁界検出部は、前記第1の磁界検出部の一方の隣側に前記第2の磁界検出部が位置し、前記第1の磁界検出部の他方の隣側に前記第3の磁界検出部が位置するように前記軌道の外周側に並んで配置され、前記第1の磁界検出部の一端部と前記第2の磁界検出部の一端部とが互いに重なり合い、前記第1の磁界検出部の他端部と前記第3の磁界検出部の一端部とが互いに重なり合っていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記複数の磁界検出部は、前記回転軸と交わる平面上に配置された基板の表面および裏面に分かれて配置されていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記回転軸の伸長方向において互いに異なる位置で前記回転軸とそれぞれ交わる2つの平面上にそれぞれ配置された第1の基板および第2の基板を備え、前記第1の基板および前記第2の基板は前記第1の基板の裏面と前記第2の基板の表面とが互いに向かい合うように配置され、前記複数の磁界検出部は前記第1の基板の裏面上および前記第2の基板の表面上に分かれて配置されていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記各磁界形成部は、前記回転軸の伸長方向において、前記複数の磁界検出部のうち前記第1の平面上に配置された磁界検出部の位置から、前記複数の磁界検出部のうち前記第2の平面上に配置された磁界検出部の位置に至るまで伸長していることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記各磁界形成部は、前記回転軸の伸長方向一側の第1の磁石片と、前記回転軸の伸長方向他側の第2の磁石片とに分割され、前記第1の磁石片の外周側部分の磁極と前記第2の磁石片の外周側部分の磁極とは互いに同一であることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記複数の磁界検出部は、当該複数の磁界検出部のそれぞれの前記磁性線材の軸線が、前記回転軸を中心とし前記軌道の外周側に位置する単一の円の円周と接するように配置されていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記回転体を備えた被検出装置には、前記回転体の回転を検出する光学式エンコーダが設けられ、前記光学式エンコーダは、前記回転体の回転に伴って回転し、検出光を生成するエンコード板と、前記回転体の回転に伴って移動しないように配置され、前記検出光を検出する光検出部とを備え、前記回転軸の伸長方向から見たとき、前記基板は2つの領域に分けられ、前記複数の磁界検出部は前記基板の前記2つの領域のうちの一方の領域内に配置され、前記光検出部は前記基板の前記2つの領域のうちの他方の領域内に配置されていることとしてもよい。
また、上記本発明の回転検出装置において、前記磁性線材は大バルクハウゼン素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁性線材を利用した回転検出装置を他の装置と組み合わせて被検出装置に取り付けた場合に、当該回転検出装置、他の装置および被検出装置を合わせた装置全体が大型化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の回転検出装置、光学式エンコーダおよびモータを示す説明図である。
図2図1中の回転検出装置、光学式エンコーダおよびモータを回転軸の方向(図1における上方)から見た状態を示す説明図である。
図3図1中の回転検出装置およびシャフトの切断線III-IIIの断面を回転軸の方向(図1における下方)から見た状態を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態の回転検出装置における磁石の配置およびその変形例を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサを示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態の回転検出装置の動作を示す説明図である。
図7】光学式エンコーダを示す説明図である。
図8】本発明の実施形態の回転検出装置における基板の使用状態を示す説明図である。
図9】本発明の他の実施形態の回転検出装置、光学式エンコーダおよびモータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の磁気式の回転検出装置1、光学式エンコーダ51、および被検出装置としてのモータ61を示している。図1に示すように、モータ61は回転体としてのシャフト62を有している。回転検出装置1および光学式エンコーダ51はシャフト62の周囲に設けられ、シャフト62の回転をそれぞれ検出する。なお、図1中のAはシャフト62の回転軸を示している。回転検出装置1、光学式エンコーダ51およびモータ61を備えた図1に示す複合装置71によれば、電源オフ時には回転検出装置1を用いてシャフト62の回転を検出することができ、電源オン時には回転検出装置1および光学式エンコーダ51を用いてシャフト62の回転を高精度に検出することができる。
【0012】
図2は、図1中の回転検出装置1、光学式エンコーダ51およびモータ61を回転軸Aの方向(図1における上方)から見た状態を示している。図3は、図1中の回転検出装置1およびシャフト62の切断線III-IIIの断面を回転軸Aの方向(図1における下方)から見た状態を示している。図4(A)は、本実施形態の回転検出装置1における磁石11~14が配置されたシャフト62を示している。図4(B)は回転検出装置1の磁石の配置に関する変形例を示している。図5は磁気センサ21を示している。
【0013】
回転検出装置1は、4つの磁石11、12、13、14(2対の磁界形成部)、3つの磁気センサ21、22、23(3つの磁界検出部)、3つのヨーク対31、32、33(3つの磁界制御部)、および基板41を備えている。
【0014】
磁石11~14はそれぞれ永久磁石であり、図1に示すようにシャフト62の外周面に固定されている。また、図2に示すように、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁石11~14は回転軸Aの周囲に90度の間隔を置いて配列されている。磁石11~磁石14は、シャフト62の回転に伴って回転軸Aの周囲の軌道B上を移動する。
【0015】
また、磁石11および磁石13は、回転軸Aから見て径方向外側の面がN極となるようにシャフト62に固定されている。また、磁石12および磁石14は、回転軸Aから見て径方向外側の面がS極となるようにシャフト62に固定されている。また、磁石11~14は、シャフト62の周方向において隣り合う磁石の極性が逆になるように、例えば周方向に磁石11、12、13、14の順番に配置されている。
【0016】
また、図4(A)に示すように、各磁石11~14は、回転軸Aの方向(図4における上下方向)に長い。各磁石11~14は、図1に示すように、基板41の貫通孔42内を通り、各磁石11~14の上部が基板41よりも上側に位置し、各磁石11~14の下部が基板41よりも下側に位置している。その結果、基板41の表面41Aに配置された磁気センサ21、および基板41の裏面41Bに配置された2つの磁気センサ22、23はいずれも、磁石11~14が移動する軌道Bと対向している。なお、図4(A)において、磁石12の上部と下部とで、回転軸Aから見た径方向外側の面の磁極の極性は等しく、いずれもS極である。磁石14についても同様である。また、磁石13の上部と下部とで、回転軸Aから見た径方向外側の面の磁極の極性は等しく、いずれもN極である。磁石11についても同様である。
【0017】
なお、図4(B)の変形例に示すように、磁石12を2つの磁石片12A、12Bに、磁石13を2つの磁石片13A、13Bにそれぞれ上下に分割してもよい。磁石11および磁石14についても同様である。
【0018】
磁気センサ21~23は、磁石11~14によりそれぞれ形成された磁界を、大バルクハウゼン効果を利用して検出するセンサである。図2に示すように、磁気センサ21は基板41の表面41Aに配置され、図3に示すように、磁気センサ22、23は基板41の裏面41Bに配置されている。なお、磁気センサ21は第1の磁界検出部の具体例であり、磁気センサ22は第2の磁界検出部の具体例であり、磁気センサ23は第3の磁界検出部の具体例である。
【0019】
磁気センサ21は、図5に示すように、磁性線材25、コイル26およびボビン27を有している。磁性線材25は大バルクハウゼン素子である。具体的には、磁性線材25は、大バルクハウゼン効果を生じる線状の強磁性体であり、一軸異方性を有する。磁性線材25は複合磁気ワイヤと呼ばれるものである。磁性線材25は、例えば鉄およびコバルトを含む半硬質磁性線材に捻りを加えることにより形成することができる。磁性線材25は、例えば樹脂等の非磁性材料により形成されたボビン27の軸部の内部に配置されている。コイル26は磁性線材25の外周側に設けられている。例えば、コイル26は、内部に磁性線材25が配置されたボビン27の軸部の外周側にエナメル線を巻回することにより形成されている。磁気センサ22および磁気センサ23も磁気センサ21と同じ構成を有している。
【0020】
また、磁性線材25の長さは例えばおよそ10mm~20mmである。各磁気センサ21~23において、ボビン27の内部には、磁性線材25が直線状に伸長した状態で配置されている。磁性線材25の長さに応じ、各磁気センサ21~23の長さは、例えばおよそ10mm~20mmである。
【0021】
磁気センサ21~23は、回転軸Aの周囲に、シャフト62の回転に伴って移動しないように配置されている。具体的は、図2および図3に示すように、磁気センサ21~23は基板41にそれぞれ固定されている。基板41は回転軸Aと直交する平面上に配置されている。これにより、基板41の表面41Aおよび裏面41Bは、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと直交する2つの平面上にそれぞれ配置されている。基板41は例えば円板状に形成され、その中央に貫通孔42が設けられ、貫通孔42にはシャフト62が挿入されている。貫通孔42の内径はシャフト62の外径よりも大きく、シャフト62は基板41に接触していない。また、基板41は図示しない支持用ブラケットを介して例えばモータ61の筐体63に固定されている。
【0022】
また、磁気センサ21~23は、磁性線材25の伸長方向が回転軸Aと非平行となるように配置されている。具体的には、磁気センサ21~23は、磁性線材25の軸線を含む平面が回転軸Aと直交するように配置されている。なお、磁性線材25の軸線とは、磁性線材25の横断面の中心を磁性線材25の伸長方向に貫く直線をいう。
【0023】
また、図2および図3に示すように、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21~23は、磁性線材25の軸線のその伸長方向における中央部が、回転軸Aを中心とする円Cの円周と接するように配置されている。また、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21~23は、磁石11~磁石14が移動する軌道Bの外周側に配置されている。また、磁気センサ21~23は、シャフト62の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置されている。具体的には、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21~23は、シャフト62の周囲に60度の間隔を置いて配置されている。
【0024】
また、磁気センサ21~23は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる2以上の平面上に分かれて配置されている。具体的には、磁気センサ21は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる第1の平面および第2の平面のうちの第1の平面上に配置され、磁気センサ22および磁気センサ23は第2の平面上に配置されている。より具体的に述べると、本実施形態において、磁気センサ21は、図2に示すように、基板41の表面41Aに配置され、磁気センサ22および磁気センサ23は、図3に示すように、基板41の裏面41Bに配置されている。すなわち、本実施形態においては、基板41の表面41Aおよび裏面41Bが上記2以上の平面に相当し、また、基板41の表面41Aが上記第1の平面に相当し、基板41の裏面41Bが上記第2の平面に相当する。なお、本実施形態において、基板41の表面41Aとは、基板41が有する互いに反対方向を向いた2つの広い面のうち、モータ61から遠い方の面であり、基板41の裏面41Bとは、基板41が有する上記2つの広い面のうち、モータ61に近い方の面である。
【0025】
また、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21~23のうち、シャフト62の回転方向において隣り合う2つの磁気センサは互いに部分的に重なり合っている。具体的には、磁気センサ21~23は、磁気センサ21の一方の隣側に磁気センサ22が位置し、磁気センサ21の他方の隣側に磁気センサ23が位置するように回転軸Aの周囲に並んで配置されている。そして、磁気センサ21の一端部と磁気センサ22の一端部とが互いに重なり合い、磁気センサ21の他端部と磁気センサ23の一端部とが互いに重なり合っている。なお、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たときに、一の部分と他の部分とが「重なり合っている」とは、ここでは、一の部分と他の部分とが回転軸Aの方向(回転軸Aと平行な方向)において基板41を挟んで互いに対向していることを意味する。
【0026】
また、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21~23のうち、シャフト62の回転方向において隣り合う2つの磁気センサの磁性線材25は互いに部分的に重なり合っている。具体的には、磁気センサ21の磁性線材25の一端部と磁気センサ22の磁性線材25の一端部とが互いに重なり合い、磁気センサ21の磁性線材25の他端部と磁気センサ23の磁性線材25の一端部とが互いに重なり合っている。
【0027】
ヨーク対31、32、33は、各磁石11~14により形成される磁界の方向を制御する機能を有している。各ヨーク対31、32、33は一対のヨーク片35を有している。各ヨーク片35は、例えば純鉄、ケイ素鋼、パーロマイまたはアモルファス金属等の軟質磁性材料により板状に形成されている。
【0028】
ヨーク対31、32、33は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる2以上の平面上に、磁気センサ21、22、23とそれぞれ対応するように分かれて配置されている。具体的には、ヨーク対31は基板41の表面41Aに配置され、ヨーク対32およびヨーク対33は基板41の裏面41Bに配置されている。
【0029】
ヨーク対31は、図2に示すように、磁気センサ21と、磁石11~14が移動する軌道Bとの間に配置されている。具体的には、ヨーク対31の一方のヨーク片35は、磁気センサ21の一端部と軌道Bとの間に配置され、他方のヨーク片35は、磁気センサ21の他端部と軌道Bとの間に配置されている。また、これら2つのヨーク片35は互いに離れている。また、ヨーク対31の各ヨーク片35は、基板41の表面41Aから当該表面41Aと直交する方向(図1において上方)に立ち上がっている。
【0030】
ヨーク対32は、図3に示すように、磁気センサ22と軌道Bとの間に配置されている。具体的には、ヨーク対32の一方のヨーク片35は、磁気センサ22の一端部と軌道Bとの間に配置され、他方のヨーク片35は、磁気センサ22の他端部と軌道Bとの間に配置されている。また、これら2つのヨーク片35は互いに離れている。また、ヨーク対32の各ヨーク片35は、基板41の裏面41Bから当該裏面41Bと直交する方向(図1において下方)に立ち上がっている。ヨーク対33は、磁気センサ22と、磁石11~14が移動する軌道Bとの間に配置されている。また、ヨーク対33の一対のヨーク片35は、図3に示すように、ヨーク対32の一対のヨーク片35と同様に配置されている。
【0031】
また、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、ヨーク対31~33のうち、シャフト62の回転方向において隣り合う2つのヨーク対は互いに部分的に重なり合っている。具体的には、図2に示すように、ヨーク対31の一方のヨーク片35は、ヨーク対32の一方のヨーク片35と部分的に重なり合っている。また、ヨーク対31の他方のヨーク片35は、ヨーク対33の一方のヨーク片35と部分的に重なり合っている。
【0032】
図6は回転検出装置1の動作を示している。図6には、図1において上方から見た回転検出装置1の6通りの状態が描かれている。すなわち、図6においてはシャフト62が時計回りに回転しており、図6中の左上の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が0°に達したときの状態を示し、その右隣の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が30°に達したときの状態を示し、その右隣の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が60°に達したときの状態を示している。さらに、図6中の左下の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が90°に達したときの状態を示し、その右隣の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が120°に達したときの状態を示し、その右隣の回転検出装置1は、シャフト62の回転角度が150°に達したときの状態を示している。また、図6中のW1は磁気センサ21から出力された検出信号の波形を示し、W2は磁気センサ22から出力された検出信号の波形を示し、W3は磁気センサ23から出力された検出信号の波形を示している。
【0033】
各磁気センサ21~23が有している磁性線材25は、当該磁性線材25に作用する外部磁界の方向が変化し、その外部磁界の強さがある閾値に達したとき、大バルクハウゼン効果により磁化方向が瞬時に反転する性質を有している。磁性線材25の磁化方向が瞬時に反転すると、磁性線材25の外周側に設けられたコイル26から電磁誘導により鋭いパルスが出力される。また、磁性線材25に作用する外部磁界が一方向から他方向に変化して、その外部磁界の強さがある閾値に達したとき、磁性線材25の磁化方向が一方向から他方向に反転して、コイル26から例えば正のパルスが出力される。また、磁性線材25に作用する外部磁界が他方向から一方向に変化して、その外部磁界の強さがある閾値に達したとき、磁性線材25の磁化方向が他方向から一方向に変化して、コイル26から例えば負のパルスが出力される。
【0034】
回転検出装置1においては、シャフト62の回転に伴って磁石11~14が軌道B上を移動することにより、磁気センサ21~23のそれぞれの磁性線材25に作用する磁界が変化する。例えば、シャフト62が図6において時計回り方向に回転している間、シャフト2の回転角度が0度に達したとき、磁石11および磁石14が磁気センサ21に接近する。このとき、磁石11および磁石14によりそれぞれ形成された磁界(磁石11により形成された磁界と磁石14により形成された磁界とが合わさった磁界)により、磁気センサ21の磁性線材25には図6において右方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ21の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ21から例えば正のパルスP1が出力される。また、磁石11から磁石14へ向かう磁力線が磁気センサ21の磁性線材25中を右方向に通るようにヨーク対31により磁界が制御されることにより、パルスP1のレベルを大きくすることができる。
【0035】
次に、シャフト2の回転角度が30度に達したとき、磁石11および磁石12が磁気センサ22に接近する。このとき、磁石11および磁石12によりそれぞれ形成された磁界により、磁気センサ22の磁性線材25には図6において左斜め下方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ22の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ22から例えば負のパルスP2が出力される。また、磁石11から磁石12へ向かう磁力線が磁気センサ22の磁性線材25中を左斜め下方向に通るようにヨーク対32により磁界が制御されることにより、パルスP2のレベルを大きくすることができる。
【0036】
次に、シャフト2の回転角度が60度に達したとき、磁石11および磁石14が磁気センサ23に接近する。このとき、磁石11および磁石14によりそれぞれ形成された磁界により、磁気センサ23の磁性線材25には図6において右斜め下方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ23の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ23から例えば正のパルスP3が出力される。また、磁石11から磁石14へ向かう磁力線が磁気センサ23の磁性線材25中を右斜め下方向に通るようにヨーク対33により磁界が制御されることにより、パルスP3のレベルを大きくすることができる。
【0037】
次に、シャフト2の回転角度が90度に達したとき、磁石11および磁石12が磁気センサ21に接近する。このとき、磁石11および磁石12によりそれぞれ形成された磁界により、磁気センサ21の磁性線材25には図6において左方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ21の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ21から例えば負のパルスP4が出力される。また、ヨーク対31による磁界の制御によってパルスP4のレベルを大きくすることができる。
【0038】
次に、シャフト2の回転角度が120度に達したとき、磁石12および磁石13が磁気センサ22に接近する。このとき、磁石12および磁石13によりそれぞれ形成された磁界により、磁気センサ22の磁性線材25には図6において右斜め上方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ22の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ22から例えば正のパルスP5が出力される。また、ヨーク対32による磁界の制御によってパルスP5のレベルを大きくすることができる。
【0039】
次に、シャフト2の回転角度が150度に達したとき、磁石11および磁石12が磁気センサ23に接近する。このとき、磁石11および磁石12によりそれぞれ形成された磁界により、磁気センサ23の磁性線材25には図6において左斜め上方向の磁界が作用する。これにより、磁気センサ23の磁性線材25の磁化方向が反転し、磁気センサ23から例えば負のパルスP6が出力される。また、ヨーク対33による磁界の制御によってパルスP6のレベルを大きくすることができる。
【0040】
磁気センサ21~23から出力されたパルスP1~P6は、例えば基板41に設けられた磁気検出用の検出回路(図示せず)に出力され、この検出回路によりシャフト62の回転量および回転方向等が算出される。このシャフト62の回転量および回転方向等の算出方法として、例えば、国際公開第2016/002437号に記載された方法を用いることができる。
【0041】
図7は光学式エンコーダ51を示している。図7に示すように、光学式エンコーダ51は、シャフト62の回転に伴って回転し、検出光を生成するエンコード板としてのコードホイール52、および検出光を検出する光検出部56を有している。
【0042】
コードホイール52は、例えば樹脂等の非磁性材料により円板状に形成されている。また、コードホイール52の中心部には、コードホイール52をシャフト62に取り付けるための挿入孔53が設けられている。挿入孔53にはシャフト62が挿入される。また、コードホイール52の表面52Aには、複数の反射部54および複数の非反射部55が設けられている。反射部54と非反射部55とは交互に配置され、コードホイール52の中心Q(回転軸A)を中心とした円を描くように配列されている。
【0043】
光検出部56は発光素子57および受光素子58を備えたユニットである。発光素子57は例えば発光ダイオードである。受光素子58は例えばフォトトランジスタであり、光電変換を行う。
【0044】
図1に示すように、コードホイール52は、基板41とモータ61の筐体63との間に配置され、反射部54および非反射部55が設けられた表面52Aが基板41の裏面41Bと対向するようにシャフト62に取り付けられている。また、コードホイール52はシャフト62に固定されており、シャフト62と共に回転する。
【0045】
また、コードホイール52は、図2に破線(隠れ線)で示したように、ヨーク対32およびヨーク対33との間に配置されている。また、コードホイール52の表面52Aは、図1に示すように、ヨーク対32およびヨーク対33のそれぞれのヨーク片35の先端面35A(図1における下端面)よりも上方に位置している。すなわち、コードホイール52は、ヨーク対32とヨーク対33とにより挟まれた空間内に入っている。この構成により、基板41とコードホイール52との間隔を小さくすることができ、シャフト62の周囲に設けられた回転検出装置1と光学式エンコーダ51とを組み合わせた構造物の回転軸A方向における寸法を小さくすることができる。
【0046】
また、光検出部56は基板41の裏面41Bに固定されている。それゆえ、光検出部56はシャフト62の回転に伴って移動しない。光検出部56は、コードホイール52における反射部54および非反射部55の配列と対向するように配置されている。
【0047】
図7において、シャフト62が回転している間に、発光素子57から発せられた照射光L1は、反射部54および非反射部55の配列上に照射される。これにより、パルス状の検出光L2が生成される。生成された検出光L2は受光素子58に入力される。受光素子58は検出光L2をパルス信号に変換して出力する。受光素子58から出力されたパルス信号は、例えば基板41に設けられた光検出用の検出回路(図示せず)に出力され、この検出回路によりシャフト62の回転数および回転角度等が算出される。
【0048】
図8(A)は基板41の表面41Aの使用状態を示し、図8(B)は基板41の裏面41Bの使用状態を示している。図8(A)に示すように、基板41の表面41Aは2つの領域R1、R2に分けられている。基板41の表面41Aにおいて、細かいハッチングを付した領域R1は、回転検出装置1の使用領域であり、粗いハッチングを付した領域R2は、光学式エンコーダ51、およびモータ61に取り付けられた他の装置の使用領域である。領域R1内には、回転検出装置1の構成要素、具体的には磁気センサ21およびヨーク対31が配置されている。
【0049】
また、図8(B)に示すように、基板41の裏面41Bは2つの領域R3、R4に分けられている。基板41の裏面41Bにおいて、細かいハッチングを付した領域R3は、回転検出装置1の使用領域であり、粗いハッチングを付した領域R4は、光学式エンコーダ51、およびモータ61に取り付けられた他の装置の使用領域である。領域R3内には、回転検出装置1の構成要素、具体的には2つの磁気センサ22、23および2つのヨーク対32、33が配置されている。領域R4内には光学式エンコーダ51の構成要素、具体的には光検出部56が配置されている。
【0050】
以上説明した通り、本実施形態の回転検出装置1において、磁気センサ21~23は、磁性線材25の伸長方向が回転軸Aと非平行となるように配置されている。具体的には、磁気センサ21~23は、磁性線材25の軸線を含む平面が回転軸Aと直交するように配置されている。この構成により、磁気センサ21~23を、磁性線材25の伸長方向が回転軸Aと平行となるように配置した場合と比較して、回転検出装置1の回転軸Aの方向における寸法(図1における上下方向の寸法)を小さくすることができる。
【0051】
さらに、磁気センサ21~23は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる2以上の平面上に分かれて配置されている。具体的には、磁気センサ21~23は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる第1の平面および第2の平面に分かれて配置されている。より具体的には、磁気センサ21~23は、基板41の表面41Aおよび裏面41Bに分かれて配置されている。この構成により、磁気センサ21~23のうち、シャフト62の回転方向において隣り合う2つの磁気センサを、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たときにそれらが互いに部分的に重なり合うように配置することができる。したがって、図8に示すように、磁気センサ21~23を基板41の一部に集約して配置することができ、基板41の表面41Aおよび裏面41Bにおいて磁気センサ21~23の配置に使用する領域R1、R3の面積を小さくすることができる。その結果、基板41の表面41Aおよび裏面41Bに、光学式エンコーダ51および他の装置の配置に使用可能な領域R2、R4を十分に確保しながら、基板41の表面41A(裏面41B)の面積を全体的に小さくすることができる。
【0052】
このように、本実施形態の回転検出装置1によれば、回転検出装置1の回転軸Aの方向における寸法を小さくすることができ、かつ、基板41上に光学式エンコーダ51および他の装置の配置に使用可能な領域を十分に確保しながら基板41の面積を小さくすることができるので、回転検出装置1、光学式エンコーダ51およびモータ61を含む複合装置71を全体的に小型化することができる。すなわち、回転検出装置1を光学式エンコーダ51等と組み合わせてモータ61に取り付けた場合に、回転検出装置1、光学式エンコーダ51およびモータ61を合わせた装置全体が大型化することを抑制することができる。
【0053】
特に、本実施形態の回転検出装置1では、磁気センサ21~23のうち、シャフト62の回転方向において隣り合う2つの磁気センサの磁性線材25が、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たときに、互いに部分的に重なり合っている。このように、隣り合う磁気センサ同士が重なり合う部分を大きくすることにより、磁気センサ21~23の配置の集約度を高めることができ、基板41の表面41Aおよび裏面41Bにおいて磁気センサ21~23の配置に使用する領域R1、R3の面積を一層小さくすることができる。
【0054】
また、本実施形態の回転検出装置1において、磁気センサ21~23は、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21の一方の隣側に磁気センサ22が位置し、磁気センサ21の他方の隣側に磁気センサ23が位置するように回転軸Aの周囲に並んで配置され、磁気センサ21の一端部と磁気センサ22の一端部とが互いに重なり合い、磁気センサ21の他端部と磁気センサ23の一端部とが互いに重なり合っている。磁気センサ21~23をこのように配置することにより、シャフト62の回転の十分な検出精度を確保しつつ、磁気センサ21~23の配置の集約度を高めることができる。すなわち、シャフト62の回転の十分な検出精度を確保するためには、磁気センサ21~23をシャフト62の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置する必要がある。本実施形態の回転検出装置1では、磁気センサ21~23がシャフト62の回転方向においてそれぞれ異なる位置に配置され、隣り合う磁気センサ21、22の端部同士が重なり合い、かつ隣り合う磁気センサ21、23の端部同士が重なり合っているので、シャフト62の回転の十分な検出精度を確保することができる範囲で、磁気センサ21と磁気センサ22とを接近させ、かつ磁気センサ21と磁気センサ23とを接近させることができ、磁気センサ21~23の配置の集約度を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態の回転検出装置1によれば、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、ヨーク対31~33のうちシャフト62の回転方向において隣り合う2つのヨーク対が互いに部分的に重なり合っているので、ヨーク対31~33を基板41の一部に集約して配置することができ、基板41の表面41Aおよび裏面41Bにおいてヨーク対31~33を含む回転検出装置1の構成要素の配置に使用する領域R1、R3の面積を小さくすることができる。
【0056】
また、本実施形態の回転検出装置1によれば、磁気センサ21~23およびヨーク対31~33が1つの基板41の表面41Aおよび裏面41Bに分かれて配置されているので、磁気センサ21~23およびヨーク対31~33を複数の基板に分けて配置した場合と比較して、回転検出装置1の回転軸Aの方向における寸法を小さくすることができる。
【0057】
また、本実施形態の回転検出装置1によれば、各磁気センサ21~23の磁性線材として、大バルクハウゼン素子を用いたことにより、シャフト62の回転の検出精度の高い無電源の回転検出装置を容易に実現することができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、磁気センサ21~23およびヨーク対31~33を1つの基板41の表面41Aおよび裏面41Bに分けて配置したが、図9に示す本発明の他の実施形態の回転検出装置81のように、磁気センサ21~23およびヨーク対31~33を2つの基板91、92に分けて配置してもよい。この回転検出装置81においては、2つの基板91、92は、回転軸Aの方向において互いに異なる位置で回転軸Aと交わる2つの平面上にそれぞれ配置されている。また、これら基板91、92は、シャフト62の周囲にそれぞれ配置されており、基板91は基板92よりもモータ61の筐体63から離れている。また、基板91、92はそれぞれ、回転検出装置1の基板41と同様に、中央に貫通孔を有する円板状に形成され、例えば、支持用ブラケットを介してモータ61の筐体63に固定されている。また、磁気センサ21およびヨーク対31は基板91の裏面91Bに配置され、2つの磁気センサ22、23および2つのヨーク対32、33は基板92の表面92Aに配置されている。なお、回転検出装置81を回転軸Aの方向から見たときの磁気センサ21~23およびヨーク対31~33の位置関係、およびこれらの構成要素の重なり合いの態様は、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たときの磁気センサ21~23およびヨーク対31~33の位置関係、およびこれらの構成要素の重なり合いの態様と同じである。
【0059】
また、上記実施形態において、磁気センサ21および磁気センサ22は、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、互いに部分的に重なり合うように基板41の表面41Aおよび裏面41Bにそれぞれ配置され、また、磁気センサ21および磁気センサ23は、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、互いに部分的に重なり合うように基板41の表面41Aおよび裏面41Bにそれぞれ配置されている。しかしながら、磁気センサ21と磁気センサ22とは互いに重なり合っていなくてもよく、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21および磁気センサ22を、基板41の同一面上に配置することが困難な程度に互いに接近するように、基板41の表面41Aおよび裏面41Bにそれぞれ配置してもよい。また、磁気センサ21と磁気センサ23とは互いに重なり合っていなくてもよく、回転検出装置1を回転軸Aの方向から見たとき、磁気センサ21および磁気センサ23を、基板41の同一面上に配置することが困難な程度に互いに接近するように、基板41の表面41Aおよび裏面41Bにそれぞれ配置してもよい。2つの磁気センサを、基板41の同一面上に配置することが困難な程度に互いに接近するように配置するとは、例えば、2つの磁気センサを、各磁気センサを基板に実装するのに要する部分や領域(各磁気センサを基板に半田付けするための領域等)が互いに干渉するほどに接近するように配置することや、2つの磁気センサを、各磁気センサへの配線に要する領域が互いに干渉するほどに接近するように配置すること等である。
【0060】
また、上記実施形態では、二対の磁石11~14、および3つの磁気センサ21~23を有する回転検出装置1を例にあげたが、磁石の個数および磁気センサの個数はこれに限定されない。本発明の回転検出装置における磁石は一対でもよく、三対以上でもよい。また、磁気センサの個数は2つでもよいし、4つ以上でもよい。また、磁石11~14の間隔は90度に限定されず、磁気センサ21~23の間隔は60度に限定されない。
【0061】
また、上記実施形態において、磁気センサ21~23は、磁性線材25の軸線を含む平面が回転軸Aと直交するように配置され、基板41は回転軸Aと直交する平面上に配置されている。しかしながら、磁気センサ21~23を、磁性線材25の軸線を含む平面が回転軸Aと約45度~約135度の角度で交わるように配置し、基板41を回転軸Aと約45度~約135度の角度で交わるように配置してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、磁気センサ21およびヨーク対31を基板41の表面41Aに配置し、磁気センサ22、23およびヨーク対32、33を基板41の裏面41Bに配置したが、磁気センサ21およびヨーク対31を基板41の裏面41Bに配置し、磁気センサ22、23およびヨーク対32、33を基板41の表面41Aに配置してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、反射部54および非反射部55を有する反射型のコードホイール52を備えた光学式エンコーダ51を例にあげたが、スリットを有する透過型のコードホイール52を備えた光学式エンコーダ51を用いてもよい。この場合には、発光素子57および受光素子58を、コードホイール52を挟んで対向するように配置する。
【0064】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1、81 回転検出装置
11~14 磁石(磁界形成部)
21~23 磁気センサ(磁界検出部)
25 磁性線材
26 コイル
31~33 ヨーク対(磁界制御部)
35 ヨーク片
41、91、92 基板
41A、92A 表面
41B、91B 裏面
61 モータ(被検出装置)
62 シャフト(回転体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9