(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
(21)【出願番号】P 2020022937
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一裕
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251250(JP,A)
【文献】特開2003-127844(JP,A)
【文献】特開2005-058812(JP,A)
【文献】特開2013-188806(JP,A)
【文献】特開2004-261753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体と、制御装置とを備え、
前記工作機械本体が、空気圧源から供給される加圧空気により作動する1以上の空気圧機器と、前記加圧空気内の不純物の含有量に関する情報を検出するセンサとを備え、
前記制御装置が、前記センサにより検出された前記含有量に関する情報に基づ
く前記含有量が所定の閾値よりも多い場合において、少なくとも1つの前記空気圧機器に供給する前記加圧空気の供給量を低下させ
、かつ、前記加圧空気の供給量の低下に応じて、前記工作機械本体による加工条件を調整し、または前記空気圧機器の動作時間を増大させる工作機械。
【請求項2】
前記空気圧源と前記空気圧機器との間に配置され、前記加圧空気内の前記不純物を分離するフィルタを備える請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記センサが、前記フィルタの前後における差圧を検出する請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記フィルタに、該フィルタにより分離された前記不純物を排出するドレン排出器が設けられ、
前記センサが、前記ドレン排出器により排出される前記不純物の量を検出する請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
異なる前記不純物を分離可能な複数の前記フィルタが直列に配置され、
各該フィルタに前記ドレン排出器が設けられ、
前記制御装置が、各前記ドレン排出器に対して別個の閾値により前記含有量に関する情報を判定する請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧源から供給される加圧空気に異常がある場合に機械本体を停止する工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温多湿の環境下に設置される工作機械においては、加圧空気に水分が多く含まれているため、そのまま工作機械に供給されると機構部に錆が発生する可能性がある。しかしながら、加圧空気の異常を検知して機械本体を停止させてしまったのでは、生産効率が著しく低下する。したがって、加圧空気に異常があっても、機械本体にダメージを与えず、かつ、生産効率の低下を抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、工作機械本体と、制御装置とを備え、前記工作機械本体が、空気圧源から供給される加圧空気により作動する1以上の空気圧機器と、前記加圧空気内の不純物の含有量に関する情報を検出するセンサとを備え、前記制御装置が、前記センサにより検出された前記含有量に関する情報に基づく前記含有量が所定の閾値よりも多い場合において、少なくとも1つの前記空気圧機器に供給する前記加圧空気の供給量を低下させ、かつ、前記加圧空気の供給量の低下に応じて、前記工作機械本体による加工条件を調整し、または前記空気圧機器の動作時間を増大させる工作機械である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係る工作機械を示す斜視図である。
【
図3】
図1の工作機械の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る工作機械1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械1は、
図1に示されるように、工作機械本体2と制御装置3とを備えている。
【0008】
工作機械本体2は、開閉可能な扉4を有するカバー5、カバー5の内側に配置され、加工対象となるワークWを搭載するテーブル6およびカバー5の内側に配置されワークWを加工するための工具7を装着する主軸8等の機構部9を備えている。
工作機械本体2の外部には、加圧空気を供給する空気圧源10が配置されている。
【0009】
カバー5に備えられた扉4は、図示しないエアシリンダにより駆動される。
テーブル6に備えられワークWをテーブル6に固定または固定解除するクランプ11は加圧空気により駆動される。
【0010】
また、機構部9は、内部に加圧空気が供給され、潤滑液あるいはそのミストが内部に留まることを抑制するためにエアパージが行われる。
したがって、扉4のエアシリンダ、クランプ11および機構部9は、加圧空気が供給されることにより作動する空気圧機器19を構成している。
【0011】
工作機械本体2と空気圧源10との間には空気圧回路13がエアチューブ12により接続されている。
空気圧回路13は、
図2に示されるように、空気圧源10から供給されてくる加圧空気から不純物を分離するフィルタ14およびフィルタ14により分離された不純物を排出するドレン排出器15を備えている。ここで、不純物は、例えば、加圧空気中に含有される水分である。
【0012】
ドレン排出器15は、不純物の堆積量(液位:不純物の含有量に関連する情報)を検出するセンサ16を備え、センサ16により所定量の不純物が検出された場合に、不純物を外部に排出し、排出した旨の信号を外部に出力する。
また、空気圧回路13は、フィルタ14を通過した加圧空気の流量を調節するレギュレータ17および加圧空気の供給または停止を切り替えるバルブ18を備えている。図では空気圧機器19および機構部9に対して単一のレギュレータ17およびバルブ18を図示しているが、実際には、各空気圧機器19および機構部9に個別にレギュレータ17およびバルブ18が接続されている。
【0013】
制御装置3は、ドレン排出器15から送信されてくる不純物の排出履歴を時刻とともに記憶するメモリ20を備えている。また、制御装置3は、メモリ20に記憶された排出履歴に基づいて、不純物の堆積速度を算出する堆積速度算出部21を備えている。
【0014】
さらに、制御装置3は、堆積速度が所定の閾値を超えているか否かを判定する判定部22と、判定の結果、堆積速度が所定の閾値を超えている場合に、レギュレータ17を制御して加圧空気の供給量を低下させる処理部23とを備えている。
堆積速度算出部21、判定部22および処理部23は、ハードウェアを含む1つ以上のプロセッサを備えている。
【0015】
また、処理部23は、加圧空気の供給量を低下させた場合には、対応する空気圧機器19の動作時間を増大させる。
具体的には、扉4を開閉するエアシリンダに供給する加圧空気の供給量を低下させると、扉4の開閉速度が低下するので、処理部23が開検出および閉検出を確認するための待機時間を含めた動作時間を増大させる。
【0016】
また、ワークWをテーブル6に固定または固定解除するクランプ11に供給する加圧空気の供給量を低下させると、クランプ11の動作速度が低下するので、処理部23が、クランプまたはアンクランプが完了したことを確認するための待機時間を含む動作時間を増大させる。
また、機構部9をエアパージする場合に、機構部9に供給する加圧空気の供給量を低下させると、機構部9から除去される水分量が低下するので、処理部23が加圧空気の供給時間を増大させる。
【0017】
また、制御装置3は、予め教示されたプログラムに従ってワークWに対する加工を行う。この場合に、クランプ11に供給する加圧空気の供給量を低下させると、クランプ11の固定力が低下するので、処理部23が、加工条件を調整する。例えば、テーブル6に水平な方向に工具7を移動させながらワークWを加工する場合には、工具7の送り速度を低下させてワークWに作用する力を軽減する。
【0018】
このように構成された本実施形態に係る工作機械1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械1によれば、空気圧源10から加圧空気が供給されると、ワークWがクランプによってテーブル6に固定され、扉4が閉じられることにより、機構部9によるワークWの加工が行われる。
【0019】
空気圧源10から供給されてきた加圧空気は、工作機械本体2に備えられた空気圧回路13に供給され、フィルタ14を通過することにより、不純物が除去された状態で、レギュレータ17あるいはバルブ18を通過して空気圧機器19に供給される。
【0020】
フィルタ14によって除去された不純物はドレン排出器15に堆積し、不純物の堆積量が所定の閾値を超えた時点でドレン排出器15により外部に排出される。ドレン排出器15により排出が行われる都度にドレン排出器15から制御装置3に対し、排出した旨の信号が送られ、制御装置3において排出履歴として信号の受信時刻とともにメモリ20に記憶される。
【0021】
制御装置3は、堆積速度算出部21により、メモリ20に記憶されている排出履歴に基づいて、不純物の堆積速度を算出する。そして、判定部22において、不純物の堆積速度が所定の閾値を超えたか否かが判定され、超えている場合には、処理部23によりレギュレータ17が調整され、空気圧機器19に送られる加圧空気の供給量が低下させられる。
【0022】
また、制御装置3は、処理部23により加圧空気の供給量が低下させられたときには、動作プログラムによって動作している機構部9による加工条件を調整する。また、制御装置3は、クランプ11の動作確認のための待機時間および扉4の開閉動作確認のための待機時間を増大させ、機構部9のエアパージにおける加圧空気の供給時間を増大させる。
【0023】
このように、本実施形態に係る工作機械1によれば、不純物の堆積速度が高くなってきた場合には、空気圧機器19に供給する加圧空気の供給量を低下させて、フィルタ14の目詰まりを抑制することができる。そして、供給量が下げられた加圧空気により空気圧機器19の動作速度が低下した状態であっても、待機時間あるいは供給時間の増大により、工作機械1を停止させることなく動作させ続けることができる。
【0024】
また、クランプ11による固定力が低下した状態であっても、機構部9によるワークWの加工条件を調整することにより、加工時に工具7からワークWに作用する力を低減して、ワークWのずれを防止しつつ加工し続けることができるという利点がある。
【0025】
なお、本実施形態においては、不純物の含有量に関する情報として、不純物の堆積量をセンサ16により検出したが、これに代えて、フィルタ14の前後の差圧を検出してもよい。これにより、フィルタ14の目詰まりの度合いを検出することができる。
【0026】
また、ドレン排出器15に堆積している不純物の量をカメラによって撮影し取得された画像から求めてもよい。カメラはドレン排出器15に固定されていてもよいし、ワークWを搬送するロボットに取り付けられていてもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、単一のフィルタ14により除去する不純物の量を検出したが、これに代えて、
図3に示されるように、異なる不純物を分離可能な複数種のフィルタ(第1フィルタおよび第2フィルタ)24,25を直列に配置し、不純物毎に量を検出してもよい。例えば、加圧空気内に水分と油分が含有されている場合には、水分を除去する第1フィルタ24と油分を除去する第2フィルタ25とを直列に配置し、第1フィルタ24および第2フィルタ25にそれぞれ設けられたドレン排出器15に貯留される水および油の量を個別に検出してもよい。具体的には、制御装置3が、センサ16によって各ドレン排出器15から排出される不純物の堆積量を検出し、検出された不純物の堆積量を別個の閾値により判定する。
【0028】
また、加圧空気に含有される不純物が多い場合に、加圧空気の供給量を低下させる空気圧機器19として、扉4のエアシリンダ、クランプ11および機構部9を例示した。これらすべての空気圧機器19の加圧空気の供給量を低下させてもよいし、少なくとも1つについて低下させてもよい。
【0029】
また、これに加えて、テーブル6の角度変更あるいは鉛直軸線回りの回転を行う付加軸を備え、付加軸にエアブレーキが使用されている場合には、エアブレーキを空気圧機器19としてもよい。この場合にも、加圧空気の供給量が低下すると、付加軸を制動状態あるいは制動解除状態にするための動作時間が長くなるので、動作確認のための待機時間を増大させることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 工作機械
2 工作機械本体
3 制御装置
9 機構部(空気圧機器)
10 空気圧源
11 クランプ(空気圧機器)
14 フィルタ
15 ドレン排出器
16 センサ
19 空気圧機器
24 第1フィルタ(フィルタ)
25 第2フィルタ(フィルタ)