(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】振動情報処理装置及び振動情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240130BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020041062
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】辻 宗克
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512784(JP,A)
【文献】特開2018-206167(JP,A)
【文献】特開2019-003555(JP,A)
【文献】特開2013-044317(JP,A)
【文献】特開2010-030509(JP,A)
【文献】特開平10-197404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの振動情報と二酸化炭素の排出量との関係を示す関係データを記憶する記憶部と、
取得した振動情報と前記関係データとに基づいて前記エンジンの二酸化炭素の排出量を予測する排出量予測部と、
予測した排出量を出力する出力部と、
を備える振動情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動情報処理装置において、前記振動情報は、前記エンジンの振動の有無を示す情報である振動情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の振動情報処理装置において、前記振動情報は、前記エンジンの振動数を示す情報である振動情報処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の振動情報処理装置と、
エンジンを搭載したエンジン搭載機に装着され、前記エンジンの振動情報を無線送信する振動情報送信装置と、
前記振動情報送信装置から送信される振動情報を受信し、この受信した振動情報を前記振動情報処理装置に宛てて通信ネットワークに送出する受信処理手段と、を備える振動情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の振動情報処理システムにおいて、前記エンジン搭載機は作業現場で稼働する重機であり、前記重機から離れた地で前記重機のエンジンの二酸化炭素の排出量を予測する振動情報処理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の振動情報処理システムにおいて、前記エンジン搭載機は発電装置であり、前記発電装置から離れた地で前記発電装置のエンジンの二酸化炭素の排出量を予測する振動情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの振動情報を処理する振動情報処理装置及び振動情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築工事において二酸化炭素の排出量を事前予測する二酸化炭素の排出量予測装置が開示されている。この二酸化炭素の排出量予測装置は、工事毎に、工事に必要な重機の種類と、該重機の1単位当たりの作業量及び燃費と、を含む重機情報を記録したデータベースを備え、排出量算出手段は、演算式と、受付手段が受け付けた情報と、重機情報と、に基づいて燃料消費量を算出する。個々の重機の燃料消費量は、施工数量と単位作業量と単位燃費とを乗算した値としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置は、重機の実際の稼働状況をリアルタイムで把握することができず、二酸化炭素の排出量を的確に予測することは容易ではなかった。
【0005】
本発明は、エンジンを搭載する重機等において二酸化炭素の排出量を的確に予測することが可能な振動情報処理装置及び振動情報処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る振動情報処理装置は、エンジンの振動情報と二酸化炭素の排出量との関係を示す関係データを記憶する記憶部と、取得した振動情報と前記関係データとに基づいて前記エンジンの二酸化炭素の排出量を予測する排出量予測部と、予測した排出量を出力する出力部と、を備える。
【0007】
かかる構成であれば、エンジンの振動情報から当該エンジンの二酸化炭素の排出量を予測するので、二酸化炭素の排出量をリアルタイムで的確に予測することが可能である。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る振動情報処理システムは、前記振動情報処理装置と、エンジンを搭載したエンジン搭載機に装着され、前記エンジンの振動情報を無線送信する振動情報送信装置と、前記振動情報送信装置から送信される振動情報を受信し、この受信した振動情報を前記振動情報処理装置に宛てて通信ネットワークに送出する受信処理手段と、を備える。
【0009】
かかる構成であれば、前記振動情報送信装置によって得られた前記エンジンの振動情報を、前記通信ネットワークを介して取得するので、作業現場に導入されたエンジン搭載機について、二酸化炭素の排出量をリアルタイムで的確に予測することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンの二酸化炭素の排出量をリアルタイムで的確に予測できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の振動情報処理システムの概略構成を示した説明図である。
【
図2】実施形態の振動情報処理装置の概略構成を示した説明図である。
【
図3】実施形態の振動情報処理装置の記憶部に格納されるデータ例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、振動情報処理装置10を備える振動情報処理システム100の概略構成を示している。この振動情報処理システム100では、作業現場に導入された重機1A、1A及び発電装置1Bが、エンジンを搭載したエンジン搭載機1となる。また、一例として、振動情報処理装置10は、作業現場の近くに仮設された仮設ハウスに設置されたコンピュータ4によって構成されている。
【0013】
エンジン搭載機1には、振動情報送信装置2が装着される。振動情報送信装置2をエンジン自体に取り付けることが容易でない場合は、振動情報送信装置2をエンジンの周囲側のボディー部分に装着してもよい。現場で複数のエンジン搭載機1を稼働させる場合は、各々のエンジン搭載機1に振動情報送信装置2が装着される。そして、このように複数の振動情報送信装置2が存在する場合、各振動情報送信装置2には、個々を特定するための識別番号が付与される。一例として、第1の識別番号は、重機1Aである第1のバックホーに取り付けられた振動情報送信装置2に付与され、第2の識別番号は、重機1Aである第2のバックホーに取り付けられた振動情報送信装置2に付与され、第3の識別番号は、発電装置1Bであるディーゼル発電機に取り付けられた振動情報送信装置2に付与される。なお、このような識別番号の割付処理は、現場に重機等を導入する際の振動情報処理システム100のいわゆるアクティベート作業において行うことができる。
【0014】
振動情報送信装置2は、例えば、振動センサ、無線通信部、電源部等を備えており、前記エンジンの振動情報を無線送信する。
【0015】
一例として、前記振動センサは、加速度センサからなり、1秒間に1回等の所定間隔で振動検知を行う。前記振動センサが出力する信号が、エンジン搭載機1のエンジンの振動情報となる。この振動情報は、例えば、振動有り又は振動無し、を示す。なお、前記振動有りは、エンジン搭載機1が稼働中であることを示し、振動無しはエンジン搭載機1が停止中であることを示すといえる。さらには、前記振動有りは、エンジン搭載機1におけるエンジンのオン状態を示しているのであり、エンジン搭載機1が作業中或いは移動中であるかどうかを検知するものではないといえる。さらには、前記振動センサは、エンジン搭載機1の動作状況を検知するための多軸センサである必要はなく、低価格の1軸振動センサでよい。また、前記振動センサは、マイクのような空気振動を検知する振動センサでもよい。空気振動を検知する振動センサは、例えば、エンジン音の音域とは異なる音域の音をカットするフィルタを備えてもよい。
【0016】
前記無線通信部は、例えば、技術標準化機関で定められた通信規格に従って、前記振動情報をパケット化して無線送信する。前記無線通信部における情報の無線送信範囲は、例えば、半径200mである。
【0017】
前記電源部は、例えば、電池からなり、前記振動センサ及び前記無線通信部に電力を供給する。
【0018】
振動情報処理システム100は、受信処理装置(受信処理手段)3を備える。受信処理装置3は、現場で作業するエンジン搭載機1に装着された振動情報送信装置2の送信範囲内の場所に配置される。
【0019】
受信処理装置3は、振動情報送信装置2が送信する前記振動情報を無線受信する。受信処理装置3は、例えば、IoT(モノのインターネット:Internet of Things)におけるゲートウェイ(GW)の機能を備える。具体的には、受信処理装置3は、振動情報送信装置2が、通信ネットワーク(有線又は無線のローカルエリアネットワーク、公衆通信ネットワーク等)5を介して、コンピュータ4に、前記振動情報を送信する際の中継を担う。すなわち、受信処理装置3は、エンジン搭載機1に装着された振動情報送信装置2から送信される振動情報を受信し、さらに、この受信した振動情報を振動情報処理装置10(コンピュータ4)に宛てて通信ネットワーク5に送出する。なお、
図1に示す例では、通信ネットワーク5は、ローカルエリアネットワークであり、この通信ネットワーク5とコンピュータ4との間には、ハブ(HUB)51が介装されている。
【0020】
また、振動情報処理装置10として機能するコンピュータ4は、エンジン搭載機1のエンジンの二酸化炭素の排出量を予測する。コンピュータ4は、
図2に示すように、ネットワーク通信部41と、記憶部42と、排出量予測部43と、出力部44と、を備える。
【0021】
ネットワーク通信部41は、通信ネットワーク5或いは他の通信ネットワークを介して各種端末と通信する。
【0022】
記憶部42は、エンジンの振動情報と二酸化炭素の予測排出量との関係を示す関係データを記憶する。この実施形態では、前記関係データは、エンジンの振動無しを示す振動情報に対しては、二酸化炭素の排出量がゼロであることを示す。一方、前記関係データは、エンジンの振動有りを示す振動情報に対しては、二酸化炭素の排出量を示す。例えば、この振動有りを示す場合の二酸化炭素の排出量として、対象エンジンの実際の振動数に関わらず、一律に、前記対象エンジンにおける例えば毎分2000回転時の二酸化炭素の排出量を用いるようにしてもよい。
【0023】
前記対象エンジンにおける毎分2000回転時の二酸化炭素の排出量は、対象のエンジン搭載機1のエンジンの回転数と二酸化炭素の排出量を示す既知データを利用して求めることができる。そして、前記関係データは、例えば、エンジンAについては、毎分2000回転時の二酸化炭素の排出量が1秒当たりWWmg、エンジンBについては、毎分2000回転時の二酸化炭素の排出量が1秒当たりYYmgのように示される。なお、エンジン搭載機1がどのエンジンを搭載し、このエンジンの振動情報がどの振動情報送信装置2によって送信されるかの関係付けは、前記アクティベート作業において行うことができる。
【0024】
前記既知データは、エンジン搭載機1の製造メーカから提示されるエンジンの試験データであってもよいし、エンジン搭載機1のエンジンを実際に動作させて二酸化炭素の排出量を計測したデータであってもよい。
【0025】
排出量予測部43は、取得した振動情報と前記関係データとに基づいてエンジン搭載機1のエンジンの二酸化炭素の排出量を予測する。排出量予測部43が取得する振動情報は、作業現場の複数の振動情報送信装置2から送信される。
【0026】
排出量予測部43は、以下のようにして、二酸化炭素の排出量を予測する。例えば、第1のバックホー及び第2のバックホーがエンジンAを搭載しており、振動有りの状態が共に3時間継続したとすると、3×60×60×WWmg×2が、2台のバックホーが3時間の作業で排出した二酸化炭素の予測排出量となる。また、ディーゼル発電機がエンジンBを搭載しており、振動有りの状態が3時間継続したとすると、3×60×60×YYmgが、1台のディーゼル発電機が3時間の発電で排出した二酸化炭素の予測排出量となる。
【0027】
出力部44は、排出量予測部43が予測した二酸化炭素の予測排出量を出力する。一例として、出力部44は、複数のエンジン搭載機1におけるトータルの二酸化炭素の予測排出量を示す数値、グラフ等を、モニタに1分間隔で更新して表示する表示出力を行う。
【0028】
このように、実施形態の振動情報処理装置10及び振動情報処理システム100であれば、エンジンの振動情報から当該エンジンの二酸化炭素の排出量を予測するので、当該エンジンを搭載する重機等の二酸化炭素の排出量をリアルタイムで的確に予測することが可能である。また、このように、リアルタイムで二酸化炭素の排出量を予測できるので、二酸化炭素の排出量を、時間情報又は時刻情報と関連付けて提示することもできる。
【0029】
コンピュータ4は、出力部44の処理によって、排出量予測部43が予測した二酸化炭素の予測排出量を、ネットワーク通信部41を介してネットワーク上の他の機器に送信出力してもよい。例えば、コンピュータ4は、作業現場に導入されたエンジン搭載機1の二酸化炭素の予測排出量の調査を依頼した依頼者側のコンピュータに宛てて、二酸化炭素の予測排出量を示す数値を、通信ネットワーク5或いは他の通信ネットワークに出力する。
【0030】
一方、前記依頼者のコンピュータを振動情報処理装置として機能させることもできる。この場合、現場のコンピュータは、排出量予測部43等を備えず、例えば、複数のエンジン搭載機1における振動情報を、依頼者のコンピュータに逐次送信する機能を有すればよい。また、この構成では、依頼者のコンピュータ(振動情報処理装置)が、現場のエンジン搭載機1における振動情報を現場のコンピュータから受け取って、現場の二酸化炭素の排出量を予測することになる。すなわち、この構成の振動情報処理装置は、前記振動情報の取得を、現場のコンピュータ経由で行う。また、この場合、前記振動情報を依頼者のコンピュータ(振動情報処理装置)に宛てて通信ネットワークに送出する受信処理手段は、受信処理装置3と現場のコンピュータとにより構成されることになる。
【0031】
前記振動情報は、前記エンジンの振動の有無を示す情報に限らない。前記振動情報は、前記エンジンの振動数を示す情報でもよい。この場合、記憶部42は、前記エンジンの振動数と二酸化炭素の予測排出量との関係を示す関係データとして、
図3に示すように、振動数に応じた二酸化炭素の排出量を示すデータを保持する。この関係データによれば、例えば、エンジンAについて、エンジンの振動数が毎分3000回転であるときには、当該時点の二酸化炭素の予測排出量は、ZZmgであることが分かる。なお、前記関係データは、各振動数に対応する二酸化炭素排出量を記憶したデータテーブルでもよいし、振動数を入力することによって二酸化炭素排出量が算出される関数でもよい。関数は、一次関数に単純化されたものでもよい。
【0032】
また、前記関係データは、前記エンジンの振動数から当該エンジンの二酸化炭素の排出量を直接的に示すデータでなくてもよい。例えば、前記関係データは、前記エンジンの振動数と当該エンジンの燃料消費量の関係を示す第1データと、燃料消費量と二酸化炭素の排出量の関係を示す第2データとからなっていてもよい。
【0033】
また、前記振動情報処理装置は、コンピュータネットワークで繋がる複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0034】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0035】
1 :エンジン搭載機
1A :重機
1B :発電装置
2 :振動情報送信装置
3 :受信処理装置
4 :コンピュータ
5 :通信ネットワーク
10 :振動情報処理装置
41 :ネットワーク通信部
42 :記憶部
43 :排出量予測部
44 :出力部
100 :振動情報処理システム
A :エンジン
B :エンジン