(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】清掃部材及び清掃装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240130BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2020041490
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊文
(72)【発明者】
【氏名】堀内 展雄
(72)【発明者】
【氏名】西元 美紀
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-177848(JP,A)
【文献】特開2006-167508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00- 5/04
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延び塗布液が吐出されるスリットノズルを有する塗布器に沿って移動させることにより、前記塗布器に付着した付着液を除去する清掃部材であって、
前記スリットノズルが形成されるノズル面から連続して形成される側壁傾斜面に沿う形状に形成される側壁対向部と、
前記側壁対向部に開口して形成される第1開口部と、
前記側壁対向部以外の部位に形成される第2開口部と、
前記第1開口部と第2開口部とが連通して形成される開口連通部と、
を備え、
前記第2開口部に吸引力を作用させることにより、前記開口連通部を通じて前記第1開口部に吸引力が発生し、前記側壁傾斜面に付着した付着液が除去され
ており、
前記側壁対向部は、前記第1開口部よりスリットノズルに近い部位が前記側壁傾斜面に近接して形成される先端対向部と、スリットノズルより遠い部位が前記側壁傾斜面から離れて形成される反先端対向部とを有しており、前記先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間より前記反先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする清掃部材。
【請求項2】
前記ノズル面に対向するノズル面対向部を有しており、このノズル面対向部とノズル面とで形成される隙間が、前記先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の清掃部材。
【請求項3】
前記請求項1
又は2に記載の清掃部材を備え、
前記スリットノズルを有する塗布器を清掃する清掃装置であって、
前記清掃部材を移動させる移動装置を備えており、
前記移動装置により、前記清掃部材の前記側壁対向部が前記塗布器の前記側壁傾斜面に対向させた状態で、前記第1開口部に吸引力を発生させて前記清掃部材を移動させることにより、塗布器に付着した付着液を吸引して除去することを特徴とする清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を吐出する塗布器を清掃するための清掃部材、及び、この清掃部材を備える清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、可視光透過性と電気導電性を兼ね備えた薄膜であり、液晶、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、フラットパネルディスプレイ、太陽電池等の透明電極として用いられている。この透明導電膜(単に塗布膜ともいう。)は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSSと称す)の導電性高分子材料が適用されており、塗布液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。この塗布装置は、基板を載置するステージと、一方向に延びるスリットノズルを有する塗布器とを有しており、塗布器と基板とを相対移動させることにより、基板上に均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0003】
塗布器100は、
図9(a)に示すように、スリットノズル100aが形成されるノズル面101と、このノズル面101に連続して形成される側壁傾斜面102とを有しており、これらノズル面101、側壁傾斜面102に残留塗布液や異物を含む付着物が付着した状態では、その付着物により塗布液の吐出状態が不均一化され、塗布膜に筋ムラなどの乾燥ムラが形成される原因になる。また、付着物が塗布中に基板上に落下して付着する虞もある。そのため、塗布器100は、洗浄装置により定期的に洗浄され初期化される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
洗浄装置は、ディップ槽103(
図9(b)参照)と清掃装置104(
図10参照)を有しており、塗布器100のスリットノズル100a部分をディップ槽103に浸漬させて付着した付着物を溶解(半溶解含む)させた後、清掃装置104により拭き取りが行われる。具体的には、ディップ槽103内には塗布液の溶媒(洗浄液106ともいう)が貯留されており、この溶媒内に付着物が付着するノズル面101及び側壁傾斜面102を浸漬させる(
図9(b))。そして、清掃装置104には、ブレード状の清掃部材105が設けられており、
図10(b)に示すように、この清掃部材105をノズル面101及び側壁傾斜面102に接触させた状態でスリットノズル100aの延びる方向に移動させることにより(
図10(a))、ノズル面101及び側壁傾斜面102に付着した洗浄液を含む付着液が拭き取られ、塗布器100の洗浄が完了する(
図10(c))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の清掃装置104では付着液を完全には拭き取ることができないという問題があった。すなわち、通常、ディップ槽103には、洗浄液106として溶媒が用いられるところ、アルコールベースのPEDOT/PSSでは、ディップ槽103に洗浄液106として水が用いられる。洗浄液106が水である場合、従来の清掃部材105のみでは十分な拭き取りができず、清掃部材105が通過した部分であっても、ディップ槽103の水を含む付着液が残留物106aとして依然として残ってしまう。そのため、
図10(b)に示すように、製品を生産する塗布動作の際、残った残留物106a(付着液)がノズル面101まで垂れ落ちてしまい、塗布膜の品質に影響を与えるという問題があった。
【0007】
また、洗浄液106が水である場合に清掃部材105と塗布器100との接触角を変更することで付着液を残すことなく拭き取りを行えることも考えられるが、このような場合、清掃部材105を洗浄液106の成分毎に専用設計する必要があるため、清掃装置104の製造コストが非常に高くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、塗布器を洗浄した際に、塗布器に洗浄液を含む付着液が付着して残留物として残ってしまうのを抑えることができる清掃部材及び清掃装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の清掃部材は、一方向に延び塗布液が吐出されるスリットノズルを有する塗布器に沿って移動させることにより、前記塗布器に付着した付着液を除去する清掃部材であって、前記スリットノズルが形成されるノズル面から連続して形成される側壁傾斜面に沿う形状に形成される側壁対向部と、前記側壁対向部に開口して形成される第1開口部と、前記側壁対向部以外の部位に形成される第2開口部と、前記第1開口部と第2開口部とが連通して形成される開口連通部と、を備え、前記第2開口部に吸引力を作用させることにより、前記開口連通部を通じて前記第1開口部に吸引力が発生し、前記側壁傾斜面に付着した付着液が除去されており、前記側壁対向部は、前記第1開口部よりスリットノズルに近い部位が前記側壁傾斜面に近接して形成される先端対向部と、スリットノズルより遠い部位が前記側壁傾斜面から離れて形成される反先端対向部とを有しており、前記先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間より前記反先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間の方が大きくなるように形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、第2開口部に吸引力を作用させることにより、開口連通部を通じて第1開口部に吸引力を発生させることができるため、第1開口部の吸引力により側壁傾斜面に残留した洗浄液を含む付着液を吸引し、残留物を除去することができる。したがって、従来の清掃部材についてディップ槽の洗浄液に応じて専用設計することなく、洗浄液を含む付着液が塗布器に残留物として残ってしまうのを抑えることができる。また、第1開口部に発生する吸引力により、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間より反先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に大きな気流が発生するように調整することができる。通常、第1開口部に吸引力を発生させると、それぞれの隙間に気流が発生する。ここで、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に大きな気流が発生すると、スリットノズル内に存在する塗布液が乾燥する、あるいは、気流により流れ出てノズル面から側壁傾斜面を伝って第1開口部に吸引されることにより、塗布液がノズル面及び側壁傾斜面に残ってしまう場合がある。また、塗布液が気流により流れ出ることでスリットノズル内にエアが混入してしまう虞がある。そこで、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間より反先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間を大きくすることにより、反先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に強い気流を発生させて側壁傾斜面に付着した付着液を積極的に除去し、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に弱い気流を発生させてスリットノズル内の塗布液を乾燥させず、また塗布液が流れ出ないようにしつつ、側壁傾斜面に付着した残留物(付着液)を除去することができる。
【0013】
また、前記ノズル面に対向するノズル面対向部を有しており、このノズル面対向部とノズル面とで形成される隙間が、前記先端対向部と前記側壁傾斜面とで形成される隙間より大きくなるように形成されている構成にしてもよい。
【0014】
この構成によれば、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に連続して、この隙間よりノズル面対向部とノズル面とで形成される隙間を大きく形成することにより、先端対向部と側壁傾斜面とで形成される隙間に発生する気流よりもノズル面対向部とノズル面とで形成される隙間に発生する気流を小さくすることができる。これにより、第1開口部に吸引力を発生させた場合でも、スリットノズル内の塗布液が流れ出るのを効果的に抑えることができる。
【0015】
上記課題を解決するために本発明の清掃装置は、上記いずれかの清掃部材を備え、前記スリットノズルを有する塗布器を清掃する清掃装置であって、前記清掃部材を移動させる移動装置を備えており、前記移動装置により、前記清掃部材の前記側壁対向部が前記塗布器の前記側壁傾斜面に対向させた状態で、前記第1開口部に吸引力を発生させて前記清掃部材を移動させることにより、塗布器に付着した付着液を吸引して除去することを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、第2開口部に吸引力を作用させることにより、開口連通部を通じて第1開口部に吸引力を発生させることができるため、第1開口部の吸引力により側壁傾斜面に残留した洗浄液を含む付着液が吸引されることにより、付着液を除去することができる。したがって、洗浄液が塗布器に残留物(付着液)として残ってしまう問題を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗布器を洗浄した際に、塗布器に洗浄液を含む付着液が付着して残留物として残ってしまうのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の清掃部材及び清掃装置を備える塗布装置を概略的に示す図である。
【
図3】ディップ槽を示す図であり、(a)はディップ槽上に塗布器が配置された状態を示す図、(b)はディップ槽に塗布器が浸漬された状態を示す図である。
【
図4】清掃装置を示す図であり、(a)は清掃装置上に塗布器が配置された状態を示す図、(b)は清掃部材が塗布器に当接した状態を示す図である。
【
図5】第1清掃部材が第1台座部に取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】第1清掃部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は塗布器に当接稜線が当接している状態を示す図、(c)は塗布器と側壁対向部とで形成される隙間を示す図である。
【
図7】第1清掃部材が取り付けられた第1清掃部の外観を示す図である。
【
図8】第2清掃部を示す図であり、(a)は第2清掃部材が第2台座部に取り付けられた状態を示す図、(b)は第2清掃部材を示す斜視図である。
【
図9】従来技術を示す図であり、(a)は塗布器を示す図、(b)はディップ槽を示す図である。
【
図10】従来の清掃装置を示す図であり、(a)は清掃部材が塗布器に当接した状態を示す図であり、(b)は清掃部材で拭き取った後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の清掃装置を備える塗布装置を概略的に示す斜視図、
図2は、本発明の清掃装置を概略的に示す図、
図3は、清掃装置を長手方向から見た図である。
【0021】
図1~
図3に示すように、塗布装置1は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット3とを備えている。
【0022】
なお、以下の説明では、塗布ユニット3が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0023】
ステージ21は、ロボットハンド等により搬入された基板Wを載置するものである。このステージ21には、基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板Wが保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の表面に形成された複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板Wをステージ21の表面に吸着させて保持できるようになっている。
【0024】
また、塗布ユニット3は、基板W上に塗布液を吐出して塗布膜を形成するものである。この塗布ユニット3は、
図1、
図2に示すように、塗布液を吐出する塗布器30と、この塗布器30を保持するガントリ部35とを有しており、X軸方向に移動可能に形成されている。すなわち、塗布ユニット3を移動させる駆動ユニットが設けられており、この駆動ユニットを制御することによりガントリ部35をX軸方向に移動させることができるようになっている。具体的には、駆動ユニットは、ステージ21のY軸方向端部に設けられるX軸方向に延びるレールと、脚部35aに取り付けられたガントリ部35を駆動させるリニアモータとを有しており、ガントリ部35がレールにスライド自在に取り付けられている。そして、このリニアモータを駆動制御することにより、塗布ユニット3がX軸方向に移動し、任意の位置で停止することができる。本実施形態では、ステージ21と、ステージ21の外側に設置される洗浄装置5とに移動できるようになっている。
【0025】
また、ガントリ部35には、塗布器30を昇降させる昇降機構が設けられている。具体的には、昇降機構を作動させることにより、塗布器30が基板Wに対して接離できるようになっている。これにより、塗布動作中には、ステージ21上の基板Wに対して適切な高さ位置に位置することができる。また、後述の洗浄装置5に対しても昇降動作できるようになっており、昇降機構を作動させることにより、洗浄装置5に対して接離できるようになっている。
【0026】
また、塗布器30は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜を形成するものである。この塗布器30は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット3の走行方向(X軸方向)とほぼ直交するように設けられている。この塗布器30は、基板Wと対向するノズル面31と、基板Wに対して所定角度を有する側壁傾斜面32とを有しており、ノズル面31にスリットノズル30aが形成されている。具体的には、ノズル面31は、基板Wに対向しY軸方向に延びる平坦面に形成されており、この平坦面のX軸方向端部から連続して側壁傾斜面32が所定角度で形成されている。すなわち、塗布器30は、側壁傾斜面32、ノズル面31と連続するように基板Wに向かって先細りの形状に形成されている。また、ノズル面31には、僅かな隙間で形成されるスリットノズル30aがY軸方向に延びるように形成されている。そして、塗布器30に塗布液が供給されると、塗布液がスリットノズル30aを通じて長手方向(Y軸方向)に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル30aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット3をX軸方向に走行させることにより、基板W上に一定厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0027】
また、塗布装置1は、塗布器30を保守、初期化するための洗浄装置5を備えている。この洗浄装置5は、ステージ21のX軸方向端部側に設けられており、塗布器30のスリットノズル30a部分を洗浄液中に浸漬させることにより付着した付着物を溶解(半溶解含む)させた後、付着した洗浄液の拭き取りが行われることにより、塗布器30が洗浄され、塗布器30の保守、初期化が行われるようになっている。
【0028】
洗浄液中に塗布器30を浸漬させることにより、塗布器30に付着した塗布液を溶解(半溶解含む)するものである。
【0029】
洗浄装置5は、
図3に示すディップ槽50が設けられており、このディップ槽50に塗布器30を浸漬させることにより塗布器30に付着した付着物等が洗浄される。ディップ槽50は、一定量の洗浄液を溜める液体収容器であり、本実施形態では、洗浄液として水が貯留されている。このディップ槽50は、一方向に延びる形状を有しており、一方向に延びる長手方向寸法がスリットノズル30aの長手方向寸法よりも大きくなるように形成されている。したがって、塗布ユニット3を洗浄装置5の位置で停止させ塗布器30を下降させると、ディップ槽50の洗浄液にスリットノズル30aを浸漬させることができるようになっている。また、ディップ槽50の底面部には、振動子51(超音波振動子)が設けられている。この振動子51を作動させると、ディップ槽50内の洗浄液に超音波振動が付与される。これにより、ディップ槽50に浸漬されたスリットノズル30aに対して超音波洗浄を行うことができるようになっている。
【0030】
また、洗浄装置5には、清掃装置4(
図4参照)が設けられている。清掃装置4は、ディップ槽50で浸漬された後の塗布器30の拭き取りを行うことにより、洗浄液を含む塗布液(合わせて付着物とも呼ぶ)を除去するためのものである。清掃装置4は、塗布器30に対して拭き取りを行う清掃ユニット40と、この清掃ユニット40を塗布器30の長手方向に移動させる移動装置と、除去した付着物を受けるトレイ部6とを有しており、清掃ユニット40が塗布器30に当接した状態で移動させられることにより、塗布器30に付着した付着液を含む付着物が除去されるようになっている。
【0031】
清掃装置4は、保守、初期化動作時(清掃時という)には、トレイ部6上に塗布器30が移動し、トレイ部6上で保守、初期化処理(清掃処理という)が行われるようになっている。トレイ部6は、一方向に延びる形状を有しており、Y軸方向に沿う姿勢で配置されている。すなわち、トレイ部6は、塗布器30を覆う程度に塗布器30よりも大きく形成されており、トレイ部6上で清掃処理が行われた際に除去された付着液を含む付着物を受けることができる程度に形成されている。
【0032】
また、トレイ部6内には、清掃ユニット40と、移動装置とが設けられており、移動装置を駆動制御することにより、清掃ユニット40がトレイ部6の長手方向に沿って移動できるように形成されている。移動装置は、本実施形態では、スライダ61と、このスライダ61を移動させるリニアモータ(不図示)を有しており、リニアモータが制御装置(不図示)で制御されるようになっている。すなわち、清掃時には、トレイ部6上に塗布器30が配置された状態で、制御装置によりリニアモータが駆動制御されると、スライダ61が塗布器30の長手方向一方端部から他方端部に向かって移動するように構成されている。そして、このスライダ61上には、清掃ユニット40が設けられており、リニアモータが駆動制御されることにより、スライダ61上の清掃ユニット40が塗布器30のスリットノズル30aに沿って移動できるようになっている。なお、本発明では、清掃ユニット40の清掃時にスライダ61を移動させる方向を特に清掃移動方向と呼ぶ。
図4の例では清掃ユニット40が左側に向かって走行して清掃を行うため、
図4における左側が清掃移動方向である。
【0033】
清掃ユニット40は、スライダ61上に配置されており、第1清掃部41と第2清掃部42とを有している。これら第1清掃部41と第2清掃部42は、塗布器30に当接させて付着物を除去するものであり、第1清掃部41が第2清掃部42よりも清掃移動方向前側に配置されている。そして、これら第1清掃部41及び第2清掃部42が塗布器30に当接した状態で、スライダ61を移動させることにより第1清掃部41及び第2清掃部42が当接した状態で移動し、塗布器30に付着した付着物が掻き取られるとともに拭き取りが行われる。すなわち、第1清掃部41により付着した洗浄液(水)が除去されるとともに付着物が掻き取られ、第2清掃部42により残留した付着物が拭き取られることにより、塗布器30から洗浄液を含む付着物が除去されるようになっている。
【0034】
第1清掃部41は、
図5に示すように、塗布器30に当接する第1清掃部材7と、この第1清掃部材7を支持する第1台座部43とを有しており、第1清掃部材7が第1台座部43よりも上方に突出した状態で第1台座部43に固定されている。第1台座部43は、第1清掃部材7を取り付ける台座であり、スライダ61上に取り付けられている。本実施形態では、第1台座部43は、第1清掃部材7を取り付ける清掃取付部44を有するブロック体に形成されており、バネ62を介してスライダ61に取り付けられている。すなわち、第1台座部43は、このバネ62により鉛直方向に付勢力を受けるように構成されている。また、第1台座部43の清掃取付部44は、傾斜した平面を有しており、この傾斜平面に第1清掃部材7を清掃部材固定部47(本実施形態ではボルト45)で固定できるようになっている。すなわち、第1清掃部材7が清掃取付部44に取り付けられた状態では、第1清掃部材7の先端部分が清掃移動方向に向く傾斜姿勢に固定され、その先端部分が第1台座部43よりも上方に突出した状態で固定されるようになっている。したがって、第1台座部43に第1清掃部材7を取り付けた状態で、上方に配置される塗布器30に第1清掃部材7を当接させると、第1清掃部材7が傾斜姿勢で塗布器30に当接し、さらに当接させた状態から上方に変位させることによりバネ62が収縮することにより、バネ62の付勢力が第1清掃部材7に作用し、第1清掃部材7を所定の押圧力で塗布器30に押し当てることができるようになっている。
【0035】
なお、第2清掃部42の第2台座部46も同様の構成を有しており、第2台座部46に第2清掃部材9を取り付けた状態で、上方に配置される塗布器30に第2清掃部材9を当接させると、第2清掃部材9が傾斜姿勢で塗布器30に当接し、さらに当接させた状態から上方に変位させることによりバネ62が収縮することにより、バネ62の付勢力が第2清掃部材9に作用し、清掃部材を所定の押圧力で塗布器30に押し当てることができるようになっている。
【0036】
このように、第1清掃部41、第2清掃部42で、それぞれ第1台座部43、第2台座部46をバネ62を介してスライダ61から独立させて設けているため、第1清掃部材7、第2清掃部材9が塗布器30に塗布器30に押し当てる力を独立して得ることができるため、第1清掃部材7、第2清掃部材9の拭き取り性能を安定させることができる。
【0037】
第1清掃部材7は、塗布器30に当接して洗浄液を含む付着物を除去するものである。第1清掃部材7は、本実施形態ではゴムで形成されており、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム等、弾性変形しやすい材料が使用される。すなわち、第1清掃部材7が塗布器30に当接した場合には、当接する塗布器30の相手面に沿って弾性変形するようになっている。
【0038】
第1清掃部材7は、1枚の板状部材であり、その先端部分にはV字状の溝が形成されている。すなわち、V字溝74が塗布器30のスリットノズル30aに当接させると、塗布器30の側壁傾斜面32にV字溝74が沿うように形成されている。
【0039】
具体的には、第1清掃部材は、長辺部分を有する長辺平面部71と、長辺平面部71に対向する短辺平面部72と、これらを連結する傾斜面部73とを有しており、傾斜面部73にV字溝74が形成されている。すなわち、傾斜面部73と長辺平面部71とで形成される稜線(当接稜線75)が塗布器30の側壁傾斜面32に沿う形状に形成されている。すなわち、第1台座部46には、短辺平面部72が当接した状態で取り付けられるようになっており、第1清掃部材9が第1台座部46に取り付けられた状態では、第1清掃部材9が清掃移動方向に傾斜する傾斜姿勢で第1清掃部材7のV字溝74が第1台座部46よりも上方に突出した状態で固定されるようになっている。したがって、第1台座部46に第1清掃部材7を取り付けた状態で、上方に配置される塗布器30に第1清掃部材を当接させると、第1清掃部材7の当接稜線75が塗布器30の側壁傾斜面32に当接し、さらに当接させた状態から上方に変位させることによりバネ62が収縮することにより、バネ62の付勢力が当接稜線75に作用し、当接稜線75を所定の押圧力で塗布器30の側壁傾斜面32に押し当てることができるようになっている。そして、第1清掃部材7は、ゴムで形成されていることにより、当接稜線75を所定の押圧力で側壁傾斜面32に当接させると、V字溝74が弾性変形し、当接稜線75が側壁傾斜面32に密着するようになっている。
【0040】
また、第1清掃部材7は、当接稜線75から短辺平面部72に向かってV字状を維持しつつ側壁傾斜面32に対向する側壁対向部77を有している。この側壁対向部77は、側壁傾斜面32に対向しつつ、側壁傾斜面32から離間するように形成されている。すなわち、側壁対向部77は、当接稜線75が側壁傾斜面32に当接する位置から短辺平面部72に向かって拡幅するように形成されており、側壁対向部77と側壁傾斜面32との間には一定の隙間が形成されるように形成されている。すなわち、塗布器30の側壁傾斜面32と、側壁対向部77との位置関係は、当接稜線75では、
図6(b)に示すように、当接稜線75が側壁傾斜面32に当接し、当接稜線75よりも短辺平面部72側では、
図6(c)に示すように、側壁対向部77と側壁傾斜面32との間には一定の隙間が形成される。
【0041】
また、第1清掃部材7には、塗布器30に付着した洗浄液を吸引する吸引機能を有している。すなわち、第1清掃部材7には、側壁対向部77に開口する第1開口部81が形成されており、この第1開口部81から吸引力を発生させることができるようになっている。具体的には、第1清掃部材7は、その側面部79に開口して形成される第2開口部82を有している。そして、第1台座部43には、
図7に示すように、吸引源に接続される吸引配管83が設けられており、第1清掃部材7が第1台座部43に取り付けられた状態では、吸引配管83と第2開口部82とが接続されるようになっている。そして、第1清掃部材7は、第1開口部81と第2開口部82と連通接続される開口連通部84(
図6(c)参照)を有しており、第2開口部82に吸引力を作用させると、開口連通部84を通じて第1開口部81に吸引力が発生する。これにより、塗布器30の側壁傾斜面32に側壁対向部77を対向させた状態で第1開口部81に吸引力を発生させることにより、側壁傾斜面32に付着した洗浄液が第1開口部81に吸引されるようになっている。
【0042】
また、
図6(c)に示すように、側壁対向部77は、第1開口部81を基準に下側(スリットノズル30aに近い部位)に位置する先端対向部77aと、上側(スリットノズル30aから遠い部位)に位置する反先端対向部77bとを有している。そして、塗布器30の側壁傾斜面32に対向した状態では、
図7に示すように、先端対向部77aと側壁傾斜面32とで形成される隙間αより反先端対向部77bと前記側壁傾斜面32とで形成される隙間βの方が大きくなるように形成されている。これにより、第1開口部81に発生させた吸引力がスリットノズル30aに作用し、スリットノズル30aに滞留する塗布液が乾燥するのを抑え、また吸引力で引き出されるのを抑えることができるようになっている。すなわち、第1開口部81に吸引力を発生させると、先端対向部77a、反先端対向部77bで形成されるそれぞれの隙間α、隙間βに第1開口部81に向かう気流が発生する。ところが、側壁傾斜面32と先端対向部77aとで形成される隙間αよりも、側壁傾斜面32と反先端対向部77bとで形成される隙間βの方が大きく形成されているため、圧損の関係により側壁傾斜面32と反先端対向部77bとで形成される隙間βの方に大きな気流が発生し、側壁傾斜面32と先端対向部77aとで形成される隙間αに発生する気流を小さくすることができる。これにより、先端対向部77a、反先端対向部77b、それぞれで形成される隙間α、隙間βが同じ場合に比べて、スリットノズル30aに滞留する塗布液が乾燥するのを抑え、塗布液が引き出される問題を抑えることができる。
【0043】
また、第1清掃部材7は、ノズル面31に対向するノズル面対向部78を有しており、このノズル面対向部78は、ノズル面31とで形成される隙間γが先端対向部77aと側壁傾斜面32とで形成される隙間αより大きくなるように形成されている。
図6(a)~
図6(c)の例では、断面が矩形状でありノズル面31から離間するように形成されている。これよりスリットノズル30a内の塗布液が乾燥したり、塗布液が流れ出る問題をさらに抑えることができる。すなわち、上述の通り、先端対向部77aと側壁傾斜面32とで形成される隙間αに発生する気流は有効に抑えられ、さらに、ノズル面31とノズル面対向部78とで形成される隙間γが、先端対向部77aと側壁傾斜面32とで形成される隙間αに連続して形成され、先端対向部77aと側壁傾斜面32とで形成される隙間αより大きく形成されているため、ノズル面31とノズル面対向部78とで形成される隙間γに発生する吸引力がさらに弱められる。したがって、スリットノズル30a内の塗布液が乾燥したり、塗布液が流れ出る問題をさらに抑えることができる。
【0044】
このように第1清掃部材7は、清掃移動方向に移動させることにより、塗布器30の側壁傾斜面32に付着した洗浄液を第1開口部81により吸引して除去しつつ、当接稜線75により付着物を掻き取ることにより塗布器30を清掃することができる。
【0045】
また、第2清掃部42は、
図8(a)、
図8(b)に示すように、塗布器30に当接する第2清掃部材9と、この第2清掃部材9を支持する第2台座部46とを有しており、清掃部材が第2台座部46よりも上方に突出した状態で第2台座部46に固定されている。この第2台座部46は、上述の通り、第1台座部43と同様の構成を有しているので、その説明を省略する。
【0046】
第2清掃部材9は、塗布器30に当接して付着物を除去するものであり、板状部材で形成されている。第1清掃部材7は、本実施形態ではゴムで形成されており、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム等、弾性変形しやすい材料が使用される。すなわち、第2清掃部材9が塗布器30に当接した場合には、当接する塗布器30の相手面に沿って弾性変形するようになっている。
【0047】
第2清掃部材9は、1枚の板状部材であり、その先端部分にはV字状の溝が形成されている。すなわち、V字溝91が塗布器30のスリットノズル30aに当接させると、塗布器30の基板対向面31、傾斜側面32にV字溝91が沿うように形成されている。そして、第2清掃部材9は、第1台座部43と同様に、第2台座部46の清掃部材固定部47に取り付けられるようになっており、第2台座部46の清掃取付部44にボルト45で固定できるようになっている。すなわち、第2清掃部材9が第2台座部46に取り付けられた状態では、清掃移動方向に傾斜する傾斜姿勢を維持し、第2清掃部材9のV字溝91が第2台座部46よりも上方に突出した状態で固定されるようになっている。したがって、第2台座部46に第2清掃部材9を取り付けた状態で、上方に配置される塗布器30に第2部材を当接させると、第2清掃部材9のV字溝91が傾斜姿勢で塗布器30のスリットノズル30aに当接し、さらに当接させた状態から上方に変位させることによりバネ62が収縮することにより、バネ62の付勢力が第2清掃部材9に作用し、第2清掃部材9を所定の押圧力で塗布器30に押し当てることができるようになっている。そして、第2清掃部材9は、ゴムで形成されているため、V字溝74にスリットノズル30aが当接すると、V字溝74が弾性変形し、基板対向面31、傾斜側面32に密着するように変形することができる。このように、第1清掃部材7で塗布器30に付着した洗浄液を除去しつつ、付着物を掻き取った後、塗布器30に残留した付着物を仕上げるように第2清掃部材9で拭き取りすることができる。これにより、第2清掃部材9は、第1清掃部材7により洗浄液が除去された後に拭き取りを行えるため、すなわち、従来の拭き取り環境と同様に塗布器30に水分が付着していない環境で拭き取りを行えるため、従来の第2清掃部材9をそのまま使用することができ、拭き取り環境に応じた専用の清掃部材に作り替えることなく塗布器30の清掃を行うことができる。
【0048】
このように、上記実施形態よれば、第2開口部82に吸引力を作用させることにより、開口連通部84を通じて第1開口部81に吸引力を発生させることができるため、第1開口部81の吸引力により側壁傾斜面32に残留した洗浄液を含む付着液を吸引し、除去することができる。したがって、従来の清掃部材についてディップ槽50の洗浄液に応じて専用設計することなく、洗浄液が塗布器30に付着液が残留物として残ってしまうのを抑えることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、第1清掃部材7、第2清掃部材9が同じ清掃ユニット40内で、それぞれ別の台座部46に取り付けられる例について説明したが、共通の1つの台座部にそれぞれ取り付けられるものであってもよい。1つの台座部に設ける方が、第1清掃部材7、第2清掃部材9の高さ方向の位置決めの調節を容易にすることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、ノズル面対向部78を設ける例について説明したが、スリットノズル30a内の塗布液に影響がない場合は、ノズル面対向部78を省略してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、先端対向部77aと反先端対向部77bとで、側壁傾斜面32に対する隙間α、隙間βを異なるように設定する例について説明したが、スリットノズル30a内の塗布液に影響がない場合は、それぞれの隙間α、隙間βを同じ寸法に設定してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第2開口部82を側面部79に形成される例について説明したが、側壁対向部77以外の面であれば、どの位置に形成してもよい。側壁対向部77に対向する位置の側面部79に形成した方が開口連通部84を形成しやすく、第1清掃部材の製造コストを抑えることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、清掃ユニット40に第1清掃部材7及び第2清掃部材9がそれぞれ設けられる例について説明せいたが、第1清掃部材7のみで付着液を含む付着物の拭き取りが十分に行われる場合には、第1清掃部材7のみ搭載された清掃装置4であってもよい。また、上記実施形態では、清掃ユニット40に第1清掃部材7及び第2清掃部材9がそれぞれ1枚ずつ設けられる例について説明したが、第1清掃部材7及び第2清掃部材9がそれぞれ複数枚用いられるものであってもよく、それぞれの枚数については特に限定しない。
【符号の説明】
【0054】
1 塗布装置
3 塗布ユニット
4 清掃装置
5 洗浄装置
7 第1清掃部材
9 第2清掃部材
30 塗布器
30a スリットノズル
31 ノズル面
32 側壁傾斜面
40 清掃ユニット
41 第1清掃部
42 第2清掃部
50 ディップ槽
77 側壁対向部
77a 先端対向部
77b 反先端対向部
78 ノズル面対向部
81 第1開口部
82 第2開口部
84 開口連通部