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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240130BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240130BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240130BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240130BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240130BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
B60N2/68
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/0245 100A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020042376
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142867
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】古閑 智貴
(72)【発明者】
【氏名】松澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 大助
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180451(JP,A)
【文献】特開2011-255743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/62
A61B 5/11
A61B 5/113
A61B 5/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記乗員の臀部に対するシート後方斜め下方側で前記シートクッションの後端部に配設されるクッション電波式センサと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記乗員の腰部に対するシート後方斜め下方側で前記シートバックの下端部に配設されるバック電波式センサを備え、
前記シートバックは、前記シートバックの下端部においてシート左右方向に延在し、前記シートバックのフレームの一部を構成するロアバックパネルを有し、
前記ロアバックパネルには、前記バック電波式センサが取り付けられる請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックは、
前記ロアバックパネルに対するシート前方斜め上方側に配置され、前記乗員の腰部をシート後方側から支持するランバーサポートプレートと、
前記ランバーサポートプレートよりもシート下方側で前記ロアバックパネルに対するシート前方側に配置され、シート左右方向に延在するリクライニングロッドと、
を有し、
前記バック電波式センサは、前記ランバーサポートプレートよりもシート下方側で且つ前記リクライニングロッドよりもシート上方側に配置される請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートクッションは、前記シートクッションの後端部においてシート左右方向に延在し、前記シートクッションのフレームの一部を構成するリヤフレームを有し、
前記リヤフレームに対するシート前方斜め下方側には、前記クッション電波式センサが配置される請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートクッションは、シート左右方向に並んで配置され、各後端部が前記リヤフレームに係止される複数のクッションバネを有し、
前記クッション電波式センサは、一又は複数の前記クッションバネに支持される請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記複数のクッションバネの各後端部をシート左右方向に連結する連結部材を備え、
前記クッション電波式センサは、前記連結部材に取り付けられる請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記クッション電波式センサは、前記シートクッションにおけるシート左右方向の中央に対してシート左右方向にずれて配置される請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイタルセンサが配設される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シートは、シートクッションを支持するシートパンと、シートパンの左右両端部を車体に固定するシートフレームとを備えている。シートパンは、シートクッションの下面に沿った面状に形成され、乗員の生体情報を検出するバイタルセンサが取り付けられる取付面部と、この取付面部よりも左右方向外側で前後方向に延設され、先端部が上方又は下方に向いた断面V字形状を有する変形部とを備えている。上記のバイタルセンサは、例えば乗員に向けて発する電波の反射波から、乗員の脈動や呼吸に伴う体表面変位を検出する電波式センサとされている。
【0003】
この車両用シートでは、車両の側面衝突時にシートパンに対して左右方向の荷重が入力された場合、変形部が左右方向に圧縮変形することで荷重を吸収する。これにより、バイタルセンサが取り付けられる取付面部の潰れ変形や傾斜変形を抑制し、バイタルセンサの取付位置の移動を抑制することにより、バイタルセンサの検出精度の低下を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-68841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術では、バイタルセンサ(電波式センサ)の取付位置がシートパンの前後方向中央よりも若干後方で且つ左右方向中央部に設定されているため、乗員の腰部及び臀部の真下に電波式センサが配置されることになる。腰部及び臀部は車両走行時の上下振動により上下動するため、腰部及び臀部と電波式センサとの距離が大きく変化し、電波式センサによる体表面変位の検出精度が低下する原因となる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、電波式センサによる体表面変位の検出精度を従来よりも向上させることができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の車両用シートは、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記乗員の腰部に対するシート後方斜め下方側で前記シートバックの下端部に配設されるバック電波式センサ、及び、前記乗員の臀部に対するシート後方斜め下方側で前記シートクッションの後端部に配設されるクッション電波式センサのうちの少なくとも一方と、を備えている。
【0008】
第1の態様の車両用シートは、バック電波式センサ及びクッション電波式センサのうちの少なくとも一方を備えている。バック電波式センサは、乗員の腰部に対するシート後方斜め下方側でシートバックの下端部に配設され、クッション電波式センサは、乗員の臀部に対するシート後方斜め下方側でシートクッションの後端部に配設される。これにより、乗員の腰部及び臀部の真下に電波式センサが配設される場合と比較して、腰部及び臀部が上下に振動した際の上記少なくとも一方の電波式センサと腰部及び臀部との距離の変化が小さくなる。よって、電波式センサによる体表面変位の検出精度を従来よりも向上させることができる。
【0009】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記シートバックは、前記シートバックの下端部においてシート左右方向に延在し、前記シートバックのフレームの一部を構成するロアバックパネルを有し、前記ロアバックパネルには、前記バック電波式センサが取り付けられる。
【0010】
第2の態様の車両用シートでは、シートバックの下端部においてシート左右方向に延在するロアバックパネルに、バック電波式センサが取り付けられる。このロアバックパネルは、シートバックのフレームの一部を構成するものであるため、バック電波式センサの不用意な変位を防止することができる。
【0011】
第3の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記シートバックは、前記ロアバックパネルに対するシート前方斜め上方側に配置され、前記乗員の腰部をシート後方側から支持するランバーサポートプレートと、前記ランバーサポートプレートよりもシート下方側で前記ロアバックパネルに対するシート前方側に配置され、シート左右方向に延在するリクライニングロッドと、を有し、前記バック電波式センサは、前記ランバーサポートプレートよりもシート下方側で且つ前記リクライニングロッドよりもシート上方側に配置される。
【0012】
第3の態様の車両用シートでは、シートバックのロアバックパネルに取り付けられるバック電波式センサは、ランバーサポートプレートよりもシート下方側で且つリクライニングロッドよりもシート上方側に配置される。これにより、バック電波式センサから乗員側へ向けて発信される電波が、ランバーサポートプレート及びリクライニングロッドに干渉することを防止又は抑制できる。
【0013】
第4の態様の車両用シートは、第1の態様第3の態様の何れか1つの態様の車両用シートにおいて、前記シートクッションは、前記シートクッションの後端部においてシート左右方向に延在し、前記シートクッションのフレームの一部を構成するリヤフレームを有し、前記リヤフレームに対するシート前方斜め下方側には、前記クッション電波式センサが配置される。
【0014】
第4の態様の車両用シートでは、シートクッションの後端部においてシート左右方向に延在し、シートクッションのフレームの一部を構成するリヤフレームに対して、シート前方斜め下方側に、クッション電波式センサが配置される。このクッション電波式センサが配置される位置は、一般的に、シートクッションのパッド材に対して下側の位置であるため、シートクッションのパッド材の形状変更が不要となる。
【0015】
第5の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、前記シートクッションは、シート左右方向に並んで配置され、各後端部が前記リヤフレームに係止される複数のクッションバネを有し、前記クッション電波式センサは、一又は複数の前記クッションバネに支持される。
【0016】
第5の態様の車両用シートでは、シートクッションは、シート左右方向に並んで配置され、各後端部がリヤフレームに係止される複数のクッションバネを有しており、これらのクッションバネのうちの一又は複数によってクッション電波式センサが支持される。これにより、クッション電波式センサを支持するための特別なブラケット等をリヤフレーム等に設ける必要がなくなる。
【0017】
第6の態様の車両用シートは、第5の態様の車両用シートにおいて、前記複数のクッションバネの各後端部をシート左右方向に連結する連結部材を備え、前記クッション電波式センサは、前記連結部材に取り付けられる。
【0018】
第6の態様の車両用シートでは、複数のクッションバネの各後端部が連結部材によってシート左右方向に連結される。これにより、乗員からの荷重が複数のクッションバネに分散され易くなり、シートクッションによる乗員の臀部の支持が安定する。この連結部材がクッション電波式センサの取付用として兼用されるので、構成を簡素化することができる。
【0019】
第7の態様の車両用シートは、第1の態様第6の態様の何れか1つの態様の車両用シートにおいて、前記少なくとも一方は、前記シートクッション及び前記シートバックにおけるシート左右方向の中央に対してシート左右方向にずれて配置される。
【0020】
第7の態様の車両用シートでは、バック電波式センサ及びクッション電波式センサのうちの少なくとも一方が、シートクッション及びシートバックにおけるシート左右方向の中央に対してシート左右方向にずれて配置される。これにより、上記少なくとも一方の電波式センサが、乗員の腰部及び臀部の左右方向の中央に対して乗員の左右方向にずれて配置される。腰部及び臀部の左右方向の中央は、腰椎や仙骨が存在し、皮膚が薄い部位であるのに対し、腰部及び臀部の左右方向の中央から左右方向にずれた部位は、皮膚が厚くなっている。このため、上記のように少なくとも一方の電波式センサがずれて配置されることにより、乗員の体表面変位を検出し易くなる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、電波式センサによる体表面変位の検出精度を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2図1に示される構成の一部を拡大して示す斜視図である。
図3】実施形態に係る車両用シートに乗員が着座している状態を示す側面図である。
図4】車両用シートに着座中の乗員の骨盤周辺を示す側面図である。
図5】車両用シートに着座中の乗員を示す正面図である。
図6】配設位置が異なる電波式センサで心拍数の検出精度を比較した際に用いたシートバックのフレームを示す斜視図である。
図7A】上記心拍数の検出精度の比較方法について説明するためのグラフである。
図7B】上記心拍数の検出精度の比較結果を示すグラフである。
図8】実施形態の変形例を示す図2に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図3を参照して本発明の実施の形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図においては、図面を見易くするために、一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜示される矢印FR、LH、UPは、車両用シート10の前方、左方、上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0024】
(構成)
図1図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、当該車両用シート10に着座した乗員P(図3参照)の臀部H及び大腿部Fを支持するシートクッション12と、乗員Pの背部Bを支持するシートバック34と、乗員Pの頭部Hを支持するヘッドレスト54とを備えている。さらに、この車両用シート10は、乗員Pの腰部(ウエスト)Wに対する後方斜め下方側でシートバック34の下端部に配設されたバック電波式センサ70と、乗員Pの臀部Hに対する後方斜め下方側でシートクッション12の後端部に配設されたクッション電波式センサ72とを備えている。
【0025】
上記の乗員Pは、例えばHybrid-3のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)のダミー人形であり、正規の着座姿勢で車両用シート10に着座しているものとする。この乗員Pの腰部Wは、上記ダミー人形の胴体において、皮膚に相当する樹脂部材を上下に分割する分割ラインの部位であり、上記の乗員Pが生身の人間である場合には、肋骨と骨盤との間の括れた部分である。また、本実施形態においては、車両用シート10の前後左右上下の方向は、当該車両用シート10が搭載される車両の前後左右上下の方向と一致するものとする。以下、先ずシートクッション12及びシートバック34の全体構成の概略について説明し、その後に本実施形態の要部について説明する。
【0026】
(シートクッションの全体構成)
図1に示されるように、シートクッション12は、フレーム(骨格)であるクッションフレーム14と、クッションフレーム14に支持されたパッド材である図示しないクッションパッドと、クッションパッドを覆った表皮材であるクッション表皮32とを有している。クッションフレーム14は、シートクッション12の左右の側部において前後方向に延在した左右一対のサイドフレーム16と、左右のサイドフレーム16の前部における上端部間に架け渡されたフロントフレーム18と、左右のサイドフレーム16の後端部間に架け渡されたリヤフレーム20とを備えている。
【0027】
左右のサイドフレーム16は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向が前後方向に沿い且つ厚さ方向が左右方向に沿う姿勢で配置されている。これらのサイドフレーム16は、リフタ機構22及びスライド機構24を介して車体の床部に連結されている。スライド機構24は、車両の床部VF(図3参照)に対する車両用シート10の前後方向の位置を調節するためのものであり、左右のスライドレール26を含んで構成されている。リフタ機構22は、床部VFに対するシートクッション12の上下方向の位置を調節するためのものである。
【0028】
フロントフレーム18は、例えば板金によって略矩形状に形成され、厚さ方向が上下方向に沿う姿勢で配置されており、左右方向の両端部が左右のサイドフレーム16の前部に溶接等の手段で固定されている。リヤフレーム20は、金属製のパイプによって形成され、軸線方向が左右方向に沿う姿勢で配置されており、左右方向の両端部が左右のサイドフレーム16の後端部に回転可能に連結されている。このリヤフレーム20は、リフタ機構22の一部を構成しており、リフタ機構22の作動時に軸線回りに回転される構成になっている。
【0029】
リヤフレーム20とフロントフレーム18との間には、複数(ここでは4つ)のクッションバネ28が架け渡されている。これらのクッションバネ28は、所謂Sバネであり、左右方向に並んで配置されており、図示しない各前端部がフロントフレーム18に係止されている。各クッションバネ28の後端部28Rは、リヤフレーム20に係止されている。具体的には、各クッションバネ28の後端部28Rには、左右方向視で前方斜め下方側が開放された略C字状に曲げられた引掛部28R1が形成されており、当該引掛部28R1がリヤフレーム20に対して後方側から引っ掛けられて係止されている。
【0030】
また、各クッションバネ28の後端部28Rには、上記の引掛部28R1から前方斜め下方側に延びる傾斜部28R2が設けられている。各クッションバネ28の傾斜部28R2は、連結部材30によって左右方向に連結されている。この連結部材30は、例えば樹脂材料によって長尺板状に形成されたものであり、長手方向が左右方向に沿い、且つ長手方向及び板厚方向と直交する幅方向が各傾斜部28R2に沿う姿勢で配置されている。この連結部材30は、爪嵌合、ビス止め等の手段で各クッションバネ28に固定されており、乗員Pからの荷重を複数のクッションバネ28に分散する機能を有している。
【0031】
クッションパッドは、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されており、クッションフレーム14に対して上方側から取り付けられている。このクッションパッドは、クッションフレーム14及び複数のクッションバネ28によって下方側から支持されると共に、後端部が上記の連結部材28によっても下方側から支持されている。つまり、この連結部材28は、クッションパッドを下方側から支持する機能も有している。このクッションパッドに被せられたクッション表皮32は、例えば布、皮革、合成皮革、PVC等からなる複数の布片が縫製されて袋状に形成されている。
【0032】
(シートバックの全体構成)
図1に示されるように、シートバック34は、フレーム(骨格)であるバックフレーム36と、バックフレームに支持されたパッド材である図示しないバックパッドと、バックパッドを覆った表皮材であるバック表皮66とを含んで構成されている。バックフレーム36は、シートバック34の左右の側部において上下方向(シートバック34の高さ方向)に延在した左右一対のサイドフレーム38と、左右のサイドフレーム38の上端部間に架け渡されたアッパフレーム40(図示省略)と、アッパフレーム40の背面側に固定されたアッパバックパネル42と、左右のサイドフレーム38の下端部の背面側に固定されたロアバックパネル44とを備えている。
【0033】
左右のサイドフレーム38は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向が上下方向に沿い且つ厚さ方向が左右方向に沿う姿勢で配置されている。左右のサイドフレーム16の下端部は、クッションフレーム14が有する左右のサイドフレーム16の後端部に、リクライニング機構46を介して連結されている。リクライニング機構46は、シートクッション12に対するシートバック34のリクライニング角度を調節するためのものである。このリクライニング機構46は、シートバック34の下端部において左右方向に延在するリクライニングロッド48を含んで構成されている。このリクライニングロッド48は、左右方向を軸線方向とする円筒状をなしており、左右のサイドフレーム38の下端部間に架け渡されている。
【0034】
アッパフレーム40は、例えば金属製のパイプが略逆U字状に曲げ加工されて形成されたものであり、左右方向に延在する横延部40Aと、横延部40Aの左右方向両端部から下方側へ延びる左右一対の脚部40Bとを有している。左右の脚部40Bは、左右のサイドフレーム38の上端部に溶接等の手段で固定されており、横延部40Aの左右方向中間部には、左右一対のヘッドレストサポートブラケット50が固定されている。これらのヘッドレストサポートブラケット50には、ヘッドレスト54のフレームを構成するヘッドレストフレーム56がヘッドレストサポート52を介して取り付けられている。
【0035】
アッパバックパネル42は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向が左右方向に沿い且つ厚さ方向が前後方向に沿う姿勢で配置され、長手方向両端部が溶接等の手段で左右の脚部40Bの背面側に固定されている。ロアバックパネル44は、例えば板金によって長尺状に形成されており、長手方向が左右方向に沿い且つ厚さ方向が前後方向に沿う姿勢で配置され、長手方向両端部が溶接等の手段で左右のサイドフレーム16の下端部の背面側に固定されている。
【0036】
ロアバックパネル44に対するシート前方斜め上方側には、ランバーサポート57の一部であるランバーサポートプレート58が配置されている。このランバーサポートプレート58は、例えば板金によって長尺矩形状に形成されており、長手方向が左右方向に沿い且つ厚さ方向が前後方向に沿う姿勢で配置されている。このランバーサポートプレート58は、例えば図示しないトーションバーを介して左右のサイドフレーム38に支持されており、上記のトーションバーが手動又は電動で回転されることにより、前後方向に変位する。このランバーサポートプレート58は、バックパッド及びバック表皮66を介して乗員Pの腰部Wをシート後方側から支持する構成になっている。このランバーサポートプレート58の下方側でロアバックパネル44の下端部に対する前方側には、前述したリクライニングロッド48が配置されている。
【0037】
また、上記のランバーサポートプレート58とアッパバックパネル42との間には、スプリングマット60が架け渡されている。スプリングマット60は、フラットマットとも称されるものであり、左右のサイドフレーム38の間に配置されている。このスプリングマット60は、アッパバックパネル42とランバーサポートプレート58との間に架け渡された左右一対のサイドワイヤ62と、左右のサイドワイヤ62間に架け渡された複数のメインワイヤ64とを有している。
【0038】
バックパッドは、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されており、バックフレーム36に対して上方側から取り付けられている。このバックパッドは、バックフレーム36、ランバーサポートプレート58及びスプリングマット60によって後方側から支持されている。このバックパッドに被せられたバック表皮66は、例えば布、皮革、合成皮革、PVC等からなる複数の布片が縫製されて袋状に形成されている。
【0039】
(本実施形態の要部)
本実施形態に係る車両用シート10は、前述したように、乗員Pの腰部Wに対する後方斜め下方側(後方側かつ下方側)でシートバック34の下端部に配設されたバック電波式センサ70と、乗員Pの臀部Hに対する後方斜め下方側(後方側かつ下方側)でシートクッション12の後端部に配設されたクッション電波式センサ72とを備えている。
【0040】
バック電波式センサ70は、シートバック34の下端部において、左右方向の中央に配置されている。詳細には、このバック電波式センサ70は、バックフレーム36の一部であるロアバックパネル44の前面における左右方向の中央にビス止め等の手段で取り付けられており、ランバーサポートプレート58よりも下方側で且つリクライニングロッド48よりも上方側に配置されている。このバック電波式センサ70は、乗員Pの主に腰部Wに向けて発する電波の反射波から、乗員Pの脈動や呼吸に伴う体表面変位を検出する非接触式のバイタルセンサ(電波式心拍数センサ)とされている。
【0041】
クッション電波式センサ72は、シートクッション12の後端部において、左右方向の中央に配置されている。詳細には、このクッション電波式センサ72は、クッションフレーム14の一部であるリヤフレームに対する前方斜め下方側で且つ左右方向の中央に配置されており、前述した連結部材30を介して複数のクッションバネ28の後端部28Rに支持されている。連結部材30の左右方向の中央には、矩形状の開口31が形成されており、当該開口31の内側にクッション電波式センサ72が配置されている。このクッション電波式センサ72は、例えばビス止め等の手段で連結部材30に取り付けられており、クッションパッドの後端部の下面に対して下方側から対向又は接触して配置されている。このクッション電波式センサ72は、乗員Pの主に臀部Hに向けて発する電波の反射波から、乗員Pの脈動や呼吸に伴う体表面変位を検出する非接触式のバイタルセンサ(電波式心拍数センサ)とされている。
【0042】
バック電波式センサ70及びクッション電波式センサ72は、例えば車両に搭載される図示しない制御装置と電気的に接続される。この制御装置は、バック電波式センサ70及びクッション電波式センサ72の検出結果に基づいて車両の各種制御などを実施する構成になっている。上記の制御としては、例えば車両用シート10に搭載される振動装置の作動制御や、車両用空調装置の作動制御、音響装置の作動制御などが挙げられる。この音響装置は、例えば音声警告のために用いられる。
【0043】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
上記構成の車両用シート10は、バック電波式センサ70及びクッション電波式センサ72を備えている。バック電波式センサ70は、乗員Pの腰部Wに対するシート後方斜め下方側でシートバック34の下端部に配設されており、クッション電波式センサ72は、乗員Pの臀部Hに対するシート後方斜め下方側でシートクッション12の後端部に配設されている。これにより、乗員Pの腰部W及び臀部Hの真下に電波式センサが配設される場合と比較して、腰部W及び臀部Hが上下に振動した際の上記各電波式センサ70、72と腰部W及び臀部Hとの距離の変化が小さくなる。よって、上記各電波式センサ70、72による体表面変位の検出精度を従来よりも向上させることができる。
【0045】
特に、バック電波式センサ70は、乗員Pの仙骨付近の部位に対して前後方向に互いに対向する配置関係となるため、車両が悪路を走行しているときの乗員Pの身体の上下振動や左右の揺れの影響によって上記部位との間の距離が変化し難い。よって、乗員Pの体表面変位を路面状況によらずに安定して検出(測定)することができる。
【0046】
上記の効果について、図4図7を用いて補足説明する。図4には、車両用シートに着座中の乗員Pにおける骨盤PEの周辺が側面図にて示されている。なお、図4図6においては、本実施形態と同様の構成に同符号を付している。
【0047】
乗員Pの着座中は、乗員Pの荷重の大部分をシートクッション12の座面で受け止めており、図4に示されるように、特に座骨SBの下端周辺を主な支持点SPとして乗員Pの身体が支持される。このため、図5に示されるように、乗員Pの身体が左右方向に揺動する際には、上記の支持点SPから離れた上体上部の胸部Cなどは左右方向に大きく動き(図5の矢印A1参照)、支持点SPに腰部Wや臀部Hなどは動きが小さい(図5の矢印A2参照)。そのため電波式センサ70、72によって腰部Wや臀部Hなど比較的体の動きが小さい部位の体表面変位を検出することにより、同じ車両の挙動に対して検出精度の低下を抑制することができる。
【0048】
図6には、本願の発明者が実施した試験に用いられたバックフレーム36が図示されている。この試験では、バックフレーム36の上部においてアッパバックパネル42に取り付けられた電波式センサ70Aと、ロアバックパネル44に取り付けられた電波式センサ70Bとを用いて、着座乗員の心拍数の検出精度を比較した。この比較では、心電計を用いて測定した心拍数を基準(100%)とし、各電波式センサ70A、70Bによって測定した心拍数のうち、基準となる心拍数に対して±3bpmの範囲内のデータの割合を調べた。つまり、図7Aに示されるように、電波式センサ(電波式センサ70A、70B)によって測定した心拍数のうち、基準心拍数に対して±3bpmの範囲内のデータをOKとする一方、範囲外のデータをNGとし、OKのデータの割合を調べた。その結果、図7Bに示されるグラフが得られた。この図7Bに示されるように、本実施形態に係るバック電波式センサ70と同様にロアバックパネル44に取り付けられた電波式センサ70Bでは、アッパバックパネル42に取り付けられた電波式センサ70Aと比較して、基準に近い心拍数が検出された。これにより、本実施形態では、体表面変位の検出精度が向上することが確認された。
【0049】
また、このバック電波式センサ70は、シートバック34の下端部において左右方向に延在するロアバックパネル44に取り付けられている。このロアバックパネル44は、バックフレーム36の一部を構成するものであるため、バック電波式センサ70の不用意な変位を防止することができる。
【0050】
しかも、このバック電波式センサ70は、ランバーサポートプレート58よりも下方側で且つリクライニングロッド48よりも上方側に配置されている。これにより、バック電波式センサ70から乗員P側へ向けて発信される電波が、ランバーサポートプレート58及びリクライニングロッド48に干渉することを防止又は抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、シートクッション12の後端部には、クッションフレーム14の一部を構成するリヤフレーム20が左右方向に延在しており、当該リヤフレーム20に対して前方斜め下方側にクッション電波式センサ72が配置されている。このクッション電波式センサ72が配置された位置は、シートクッション12のパッド材であるクッションパッドに対して下側の位置であるため、クッションパッドの形状変更が不要となる。
【0052】
つまり、背景技術の欄で説明した車両用シートのように、シートパン上に電波式センサが取り付けられる構成では、クッションパッドの形状をセンサ搭載用に変更する必要があるため、新規設計や金型設計による開発費用が増加することになる。また、センサの搭載箇所において、クッションパッドの上下の厚さ寸法が薄くなるため、乗員の乗り心地が悪化する原因となるが、本実施形態では上記のような問題を回避することができる。
【0053】
しかも、本実施形態では、シートクッション12は、左右方向に並んで配置され、各後端部28Rがリヤフレーム20に係止される複数のクッションバネ28を有している。そして、複数のクッションバネ28の各後端部28Rが連結部材30によって左右方向に連結されており、当該連結部材30を介してクッション電波式センサ72が複数のクッションバネ28に支持されている。これにより、クッション電波式センサ72を支持するための特別なブラケット等をリヤフレーム20等に設ける必要がなくなる。
【0054】
また、上記の連結部材30によって複数のクッションバネ28の各後端部28Rが連結部材30によってシート左右方向に連結されることにより、乗員Pからの荷重が複数のクッションバネ28に分散され易くなる。しかも、この連結部材30によってクッションパッドの後端部が支持されるので、クッションパッドの後端部の支持が安定する。これらのことにより、シートクッション12による乗員Pの臀部Hの支持が安定する。そして、この連結部材30がクッション電波式センサ72の取付用として兼用されているので、構成を簡素化することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、クッション電波式センサ72及びバック電波式センサ70が、シートクッション12及びシートバック34における左右方向の中央に配置された構成にしたが、これに限るものではない。すなわち、図8に示される変形例のように、クッション電波式センサ72及びバック電波式センサ70が、シートクッション12及びシートバック34における左右方向の中央に対してシート左右方向にずれて配置された構成にしてもよい。これにより、上記各電波式センサ70、72が、乗員Pの腰部W及び臀部Hの左右方向の中央に対して乗員Pの左右方向にずれて配置される。腰部W及び臀部Hの左右方向の中央は、腰椎や仙骨が存在し、皮膚が薄い部位であるのに対し、腰部W及び臀部Hの左右方向の中央から左右方向にずれた部位は、皮膚が厚くなっている。このため、上記のように各電波式センサ70、72がずれて配置されることにより、乗員Pの体表面変位を検出し易くなる。
【0056】
また、上記実施形態に係る車両用シート10は、クッション電波式センサ72及びバック電波式センサ70の両方を備えた構成にしたが、これに限るものではない。クッション電波式センサ72及びバック電波式センサ70のうちの一方を備えない構成にしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、バック電波式センサ70がロアバックパネル44に取り付けられた構成にしたが、これに限るものではない。例えば、バック電波式センサ70がブラケット等を介して左右のサイドフレーム38のうちの一方に取り付けられる構成にしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、クッション電波式センサ72が連結部材30を介してクッションバネ28に支持された構成にしたが、これに限るものではない。例えば、クッション電波式センサ72がブラケット等を介してリヤフレーム20に支持される構成にしてもよい。
【0059】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 クッションフレーム(シートクッションのフレーム)
20 リヤフレーム
28 クッションバネ
28R 後端部
30 連結部材
34 シートバック
36 バックフレーム(シートバックのフレーム)
44 ロアバックパネル
48 リクライニングロッド
58 ランバーサポートプレート
70 バック電波式センサ
72 クッション電波式センサ
P 乗員
H 臀部
F 大腿部
W 腰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8