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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】転てつ機
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/06 20060101AFI20240130BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20240130BHJP
   E01B 7/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B61L5/06
F16H19/04 Z
E01B7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045012
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146744
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075889(JP,A)
【文献】特開昭62-088661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/06
F16H 19/04
E01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックおよび鎖錠固定板を有する動作かんと、
前記ラックに歯合するギヤ歯が配列された有歯部、および、前記有歯部よりも小径で前記ラックに歯合するギヤ歯が配列されていない無歯部を有する部分ピニオンギヤと、
前記鎖錠固定板と係合可能な大径部および前記鎖錠固定板と係合不可能な小径部を有し、前記部分ピニオンギヤとともに所定の回転軸に固定されて同軸回転する鎖錠回転板と、
前記回転軸に回転力を与えるモータを有し、前記モータの通電終了後に前記回転軸を余剰回転させる慣性モーメントを含む回転エネルギーが生じる駆動機構部と、
を備え、
前記有歯部の末端ギヤ歯は、中間ギヤ歯に比べて、回転方向の歯先面の長さである回転方向歯先幅が大きく、
前記ラックは、前記有歯部のギヤ歯に応じた歯数およびピッチであり、前記末端ギヤ歯に対応する末端ラック歯を有し、
前記通電終了後の前記余剰回転によって、前記部分ピニオンギヤおよび前記鎖錠回転板の回転が、転換に係る前記動作かんの移動後に継続することで、前記末端ギヤ歯の歯先の外周面が前記末端ラック歯に摺接するとともに、前記大径部の外周面が前記鎖錠固定板に摺接し、当該余剰回転の終了時において、当該摺接によって、前記鎖錠固定板と前記大径部とが係合するとともに前記末端ギヤ歯と前記末端ラック歯とが係合した転換動作終了状態にる、
転てつ機。
【請求項2】
前記末端ギヤ歯の回転方向歯先幅は前記部分ピニオンギヤの前記余剰回転に伴う歯先円の余剰回転距離よりも大きい、
請求項1に記載の転てつ機。
【請求項3】
前記鎖錠回転板は、前記大径部の外周角部が、曲面又は斜面である、
請求項1又は2に記載の転てつ機。
【請求項4】
前記末端ラック歯は、歯先と歯面との境界部が曲面又は斜面である、
請求項1~3の何れか一項に記載の転てつ機。
【請求項5】
前記末端ラック歯は、歯先と歯面との境界部が、前記末端ギヤ歯の歯先円の半径に適合する半径でなる内向きの凹曲面である、
請求項1~4の何れか一項に記載の転てつ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の分岐器を定位/反位に転換させる転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転てつ機として、動作かんの一部に歯列を設けることで形成されたラックと、歯列の一部を欠いた部分ピニオンギヤとで、動作かんを転換動作方向に直動させるラック&ピニオン機構を構成した転てつ機が知られるところである(例えば、特許文献1~特許文献3を参照)。
【0003】
特許文献1~特許文献3の転てつ機は、部分ピニオンギヤと同軸に固定された第1係合部材(鎖錠回転板)と、動作かんに設けられた第2係合部材(鎖錠固定板)とを有する。そして、ラックと部分ピニオンギヤとの噛み合いが解除されるのに相前後して、第1係合部材と第2係合部材とが当接可能な相対位置関係に配置されるに至り、両者が当接することで動作かんが逆転換方向に移動するのを規制して鎖錠状態を維持する。
【0004】
具体的には、第1係合部材は、部分ピニオンギヤと同軸に設けられた部分異径板であって、部分ピニオンギヤの歯の欠けた無歯部側には歯先円よりも大径な部分(大径部)を有し、部分ピニオンギヤの歯が有る有歯部側では歯先円よりも小径の部分(小径部)を構成する。そして、第1係合部材の回転面は、動作かんの移動にともなう第2係合部材の移動線上にある。
【0005】
転換動作中、すなわち部分ピニオンギヤの有歯部がラックと噛み合って動作かんを移動させている間、第1係合部材では、小径部が第2係合部材側を向いている状態となる。小径部は、第2係合部材に当接するには径が不足するために、第1係合部材と第2係合部材とは係合しない。転換動作が終了、すなわち部分ピニオンギヤの有歯部とラックとの噛み合いが解かれて動作かんの移動が停止状態になると、第1係合部材の大径部が、第2係合部材の移動線上、逆転換側(逆転換するために動作かん及び第2係合部材が移動する側)に位置する。この状態になると、逆転換させようとする外力が動作かんに作用し、動作かんが動き出そうとすると、第2係合部材が第1係合部材の大径部に当接して動作かんの移動が規制される。つまり、鎖錠状態が維持される。
【0006】
特許文献2と特許文献3の転てつ機では、更に、第1係合部材と第2係合部材との係合部の摩耗に起因する、部分ピニオンギヤとラックのギヤ歯の「かじり(囓り)」を防止する仕組みが盛り込まれている。
【0007】
具体的には、特許文献1の転てつ機を、動作かんが線路方向と交差するように配置・使用すると、動作かんは、鉄道車両が分岐点を通過するたびに逆転換方向への荷重を受ける。そして、当該荷重が繰り返されることで、第1係合部材と第2係合部材との係合部が摩耗する。この摩耗が一因となって、部分ピニオンギヤとラックとの噛合位置に当初の正しい位置関係からのズレが生じ、部分ピニオンギヤとラックのギヤ歯との間で「かじり(囓り)」を生み出す。特許文献2及び特許文献3の転てつ機では、転換が完了する直前に、ラックを転換方向へ僅かに押すことで、部分ピニオンギヤとラックとの最後に噛み合っているギヤ歯を乖離させることで「かじり(囓り)」の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-157448号公報
【文献】特開2011-88454号公報
【文献】特開2012-112115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2及び特許文献3の転てつ機は、部分ピニオンギヤとラックのギヤ歯との間で生じ得る「かじり(囓り)」を効果的に抑制できる。しかし、特許文献2の転てつ機では、特許文献1の転てつ機に対して、第2係合部材にローラを追加する必要がある。また、特許文献3の転てつ機では、特許文献1の転てつ機に対して付勢カムやローラを追加する必要がある。転てつ機に対する小型軽量化への要望は強く、小型軽量化を優先する転てつ機では、特許文献2や特許文献3の転てつ機のように構成要素を追加することは困難である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、構成要素の追加を伴わずに、部分ピニオンギヤとラックのギヤ歯との間で生じ得る「かじり(囓り)」を抑制できる技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の形態は、ラック及び鎖錠固定板を有する動作かんと、前記ラックに歯合するギヤ歯が配列された有歯部、及び、前記有歯部よりも小径で前記ラックに歯合するギヤ歯が配列されていない無歯部を有する部分ピニオンギヤと、前記鎖錠固定板と係合可能な大径部及び前記鎖錠固定板と係合不可能な小径部を有し、前記部分ピニオンギヤとともに同軸回転する鎖錠回転板と、を備え、前記有歯部の末端ギヤ歯は、中間ギヤ歯に比べて、回転方向の歯先面の長さである回転方向歯先幅が大きく、前記ラックは、前記有歯部のギヤ歯に応じた歯数及びピッチであり、前記鎖錠固定板と前記大径部とが係合した転換動作終了時の状態において、前記末端ギヤ歯と当該末端ギヤ歯に対応するラック歯とが係合した状態にある、転てつ機である。
【0012】
より好適には、第2の形態として、前記末端ギヤ歯の回転方向歯先幅が、転換動作終了の際の前記部分ピニオンギヤの余剰回転に伴う歯先円の余剰回転距離よりも大きい第1の形態の転てつ機を構成することができる。
【0013】
更には、第3の形態として、前記鎖錠回転板の前記大径部の外周角部が、曲面又は斜面である、第1又は第2の形態の転てつ機を構成することができる。
【0014】
また、第4の形態として、前記末端ギヤ歯に対応するラック歯が、歯先と歯面との境界部が曲面又は斜面である、第1~第3の何れかの形態の転てつ機を構成することができる。
【0015】
更には、第5の形態として、前記末端ギヤ歯に対応するラック歯が、歯先と歯面との境界部が、前記末端ギヤ歯の歯先円の半径に適合する半径でなる内向きの凹曲面である、第1~第4の何れかの形態の転てつ機を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の形態によれば、転換動作が終了すると、鎖錠回転板の大径部と鎖錠固定板とが係合して鎖錠が維持され、更に、末端ギヤ歯と当該末端ギヤ歯に対応するラック歯(末端ラック歯)とが係合した状態が維持される。この状態で、動作かんに逆転換方向への荷重が作用すると、当該荷重は、鎖錠回転板の大径部と鎖錠固定板とによる第1の係合箇所と、末端ギヤ歯と当該末端ギヤ歯に対応するラック歯とによる第2の係合箇所と、で分散されることになる。つまり、構成要素を追加しなくとも、部分ピニオンギヤとラックのギヤ歯との間で生じ得る「かじり(囓り)」を抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における転てつ機の使用形態を説明するための鉄道線路用ポイントの周辺を示す平面図。
図2】転換動作中の転換機構部を選択的に示す上面視拡大図。
図3図2におけるIII-III断面図。
図4】部分ピニオンギヤの上面図。
図5】鎖錠が開始された状態を示す転換機構部周りの上面視部分拡大図。
図6図5に続く鎖錠中の状態を示す転換機構部周りの上面視部分拡大図。
図7図6に続く鎖錠完了状態を示す転換機構部周りの上面視部分拡大図。
図8】転換機構部の変形例を示す上面視拡大図(その1)。
図9】転換機構部の変形例を示す上面視拡大図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0019】
図1は、本実施形態における転てつ機の使用形態を説明するための鉄道線路用ポイントの周辺を示す平面図である。なお、転てつ機のケースの上蓋を一部カットして、ケース内部が見えるように表している。
【0020】
本実施形態における転てつ機100は、鉄道用線路のポイント2の分岐器4に対して所定位置に固定され、分岐器4に接続して使用される。
分岐器4は、連結板8により一体に連結された可動レール10を、基本レール6の間で、枕木12に固定した床板14の上で枕木長手方向に横スライド自在に支持している。可動レール10の先端部付近の枕木は、通常の枕木12よりも長尺な転てつ機用枕木12Bとされ、基本レール6の外側に延びた部分には床板14に連結された鉄製の敷板18が設置されている。転てつ機100は、この敷板18に固定される。そして、動作かん102には、転てつ棒16を介して連結板8が連結され、鎖錠かん104には接続かん20を介して可動レール10の先端部が連結される。
【0021】
転てつ機100は、開閉式のケース101内に、回路制御器110と、制御リレー112と、外部端子板114と、減速機構部120と、転換機構部140と、鎖錠機構部(不図示)との各機構部を内蔵する。そして、ケース101の側部には、ブレーキ260、モータ250、クラッチ部210の3つを一体化した駆動機構部200を備える。
【0022】
電源や外部装置(例えば連動装置等)との信号に必要なケーブル類は外部端子板114に集約されたのちケーブル束109としてケース101から纏めて引き出される。
連動装置から転換指令信号を受信すると、制御リレー112からモータ250に電力が供給され、モータ250の回転力がクラッチ部210、減速機構部120、転換機構部140へと伝わり、転換機構部140によって転てつ機100の解錠、転換、鎖錠の一連の動作が行われる。
【0023】
図2は、転換動作中の転換機構部140を選択的に示す上面視拡大図である。図3は、図2におけるIII-III断面図である。
転換機構部140は、減速機構部120で減速された回転動力を、動作かん102の直動運動に変換する。具体的には、転換機構部140は、(1)減速機構部120の最終ギヤと同軸の回転軸122と、(2)回転軸122に固定された部分ピニオンギヤ150と、(3)回転軸122に部分ピニオンギヤ150より上面側(図2に向かって手前側)で固定された鎖錠回転板160と、(4)動作かん102に部分的に設けられた歯列で成るラック170と、(5)ラック170の上面に歯列と並んで固定された鎖錠固定板180と、を有する。あえて特許文献1の構成と比較すると、鎖錠回転板160が特許文献1の第1係合部材に相当し、鎖錠固定板180が特許文献1の第2係合部に相当する。
【0024】
図4は、部分ピニオンギヤ150の上面図である。
部分ピニオンギヤ150は、ラック170に歯合するギヤ歯が配列された有歯部152と、有歯部152よりも小径でラック170に歯合するギヤ歯が配列されていない無歯部154と、を有する。
【0025】
有歯部152は、歯列のそれぞれの末端にある末端ギヤ歯153と、両端の末端ギヤ歯153の間にある中間ギヤ歯155とを有する。
回転方向(図4中の黒太矢印)の歯先面の長さである回転方向歯先幅に着目すると、末端ギヤ歯153の回転方向歯先幅W3は、中間ギヤ歯155の回転方向歯先幅W5よりも大きい。具体的には、末端ギヤ歯153の回転方向歯先幅W3は、転換動作が終了する際の部分ピニオンギヤ150の余剰回転(鎖錠に係る回転および駆動機構部200の慣性モーメントに起因する回転を含み得る。)に伴う歯先円の余剰回転距離よりも大きくなるように設定されている。
【0026】
無歯部154は、例えば、有歯部152の歯底円と同じ又は歯底円よりも小径とされる。或いは、有歯部152のピッチ円より小径と言うこともできる。
【0027】
図2及び図3に戻って、鎖錠回転板160は、円板を部分的に小径にした部分異径板であって、鎖錠固定板180と係合可能な大径部162と、鎖錠固定板180と係合不可能な小径部164とを有し、部分ピニオンギヤ150とともに同軸回転する。
【0028】
具体的には、大径部162は、部分ピニオンギヤ150の有歯部152の歯先円よりも大径で上面視略半月状の外観を有する。小径部164は、部分ピニオンギヤ150の有歯部152の歯底円よりも小径である。部分ピニオンギヤ150の有歯部152及び無歯部154に対する相対位置関係に着目すると、大径部162は、(上面視すると)両端が部分ピニオンギヤ150の有歯部152の末端ギヤ歯153にかかり(重なり)、部分ピニオンギヤ150の無歯部154全体に跨がっている。
【0029】
ラック170は、部分ピニオンギヤ150とラック&ピニオン機構を構成する。すなわち、ラック170は、部分ピニオンギヤ150の有歯部152のギヤ歯に応じた歯数及びピッチを有する。
【0030】
鎖錠固定板180は、鎖錠回転板160と同じかやや薄い板厚の板部材であって、動作かん102の移動方向のそれぞれの隅に、鎖錠回転板160の大径部162と同じ曲率の凹曲面182を備える。より具体的には、鎖錠固定板180は、凹曲面182が、ラック170の末端ラック歯172の歯末から2本目のギヤ歯の間に重なるようにして動作かん102の上面に配置されている。すなわち、鎖錠固定板180は、鎖錠回転板160の回転面とほぼ同じ面に配置されている(図3参照)。
【0031】
次に、本実施形態における転てつ機100の転換機構部140周りの動作について詳細に説明する。
図2は動作かん102を図の右方(X1方向)へ移動させている転換動作中の様子を示している。転換動作中、転換機構部140は、部分ピニオンギヤ150の有歯部152の歯列とラック170の歯列とが噛み合ってラック&ピニオン機構として機能し、回転軸122の回転力が直動運動に変換されて動作かん102が転換方向(図2では右方向)へ移動する。
【0032】
図5は、転換動作の最後の段階である鎖錠が開始された状態を示す転換機構部140周りの上面視部分拡大図である。図5の状態では、駆動機構部200のモータ250(図1参照)への通電は終了しているが、駆動機構部200の回転エネルギーによって、部分ピニオンギヤ150及び回転軸122は余剰回転している。
【0033】
部分ピニオンギヤ150とラック170との係合関係は、部分ピニオンギヤ150の末端ギヤ歯153がラック170の末端ラック歯172に噛み合っていた状態から、末端ギヤ歯153の歯先の外周面が、末端ラック歯172の歯面と歯先との境界部に摺接する状態へと移行する。従って、回転軸122の余剰回転により動作かん102が移動されることはなく、転換に係る動作かん102の移動は終了している。
【0034】
そして、鎖錠回転板160と鎖錠固定板180に着目すると、大径部162の端が凹曲面182に掛かり始める。つまり、鎖錠状態に移行しつつある。
【0035】
図6は、図5に続く鎖錠中の状態を示す転換機構部140周りの上面視部分拡大図である。図6の状態では、部分ピニオンギヤ150及び回転軸122の余剰回転は継続し、末端ギヤ歯153の歯先の外周面が、末端ラック歯172の歯面と歯先との境界部に摺接した状態が継続する。また、大径部162の外周面と凹曲面182とは、摺接しながら両者の摺接長が増しつつある。
【0036】
図7は、図6に続く鎖錠完了状態を示す転換機構部140周りの上面視部分拡大図であって、転換動作終了時の状態を示している。図7の状態では、部分ピニオンギヤ150及び回転軸122の余剰回転は終了しているが、末端ギヤ歯153の歯先の外周面が、末端ラック歯172の歯面と歯先との境界部に接触した状態が維持されている。これは、末端ギヤ歯153の回転方向歯先幅W3は、転換動作終了の際の部分ピニオンギヤ150の余剰回転に伴う歯先円の余剰回転距離よりも大きく設定されているためである。また、大径部162の外周面と凹曲面182とは、十分な摺接長が確保されて鎖錠が確実なものになっている。
【0037】
転換動作の最後の段階である鎖錠が完了した図7の状態において、鉄道車両がポイント2を通過し、直近に転換した転換方向とは逆向きの逆転換方向への荷重F(図7中、X2方向を向いた太い黒色の矢印)が動作かん102へ作用すると、荷重Fは、末端ギヤ歯153の歯先の外周面と、末端ラック歯172の歯面と歯先との境界部とが接触する第1の係合箇所と、大径部162の外周面と凹曲面182とが接触する第2の係合箇所とで、分担される。
【0038】
第2の係合箇所における接触圧に着目すると、特許文献1の転てつ機が、同じように荷重Fを受けた場合と比べて、本実施形態の転てつ機100の方が小さくなる。従って、本実施形態の転てつ機100によれば、大径部162の外周面と凹曲面182との係合箇所の摩耗が従来よりも軽減され、部分ピニオンギヤ150とラック170のギヤ歯との間で生じ得る「かじり(囓り)」を効果的に抑制できる。しかも、その実現に、特段の構成要素の追加を必要としない。
【0039】
以上、本発明を適用した実施形態の一例について説明したが、本発明の適用形態はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0040】
例えば、図8に示す転換機構部140Bのように、鎖錠回転板160Bの大径部162の外周角部を曲面(図8中の矢印R2で示す曲面)とすることができる。又は当該部位を斜面としてもよい。当該構成によれば、鎖錠開始の際に(図5参照)、大径部162の外周角部と凹曲面182とが接触する状況が起きても、角あたりしないようにして双方に「かじり(囓り)」が生じるのを防ぐことができる。
【0041】
同様に、末端ギヤ歯153に対応するラック170Bの末端ラック歯172の歯先と歯面との境界部を曲面(図8中の矢印R1で示す曲面)とすることができる。又は当該部位を斜面としてもよい。当該構成によれば、末端ギヤ歯153と末端ラック歯172とが噛み合う際に、角あたりしないようにして双方に「かじり(囓り)」が生じるのを防ぐことができる。
【0042】
また、図9に示す転換機構部140Cのように、末端ギヤ歯153に対応するラック170Cの末端ラック歯172の歯先と歯面との境界部を、末端ギヤ歯153の歯先円の半径Reに適合する半径Rsでなる内向きの凹曲面173としてもよい。当該構成によれば、末端ギヤ歯153と末端ラック歯172との係合を面接触とするができ、荷重Fの分担による末端ギヤ歯153と末端ラック歯172との接触圧を点接触状態よりも低くして、双方に「かじり(囓り)」が生じるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0043】
100…転てつ機
140…転換機構部
150…部分ピニオンギヤ
152…有歯部
153…末端ギヤ歯
154…無歯部
160…鎖錠回転板
162…大径部
170…ラック
172…末端ラック歯
173…凹曲面
180…鎖錠固定板
182…凹曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9