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  • 特許-水晶デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】水晶デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
H03H9/19 E
H03H9/19 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020056089
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158493
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】窪田 正積
(72)【発明者】
【氏名】古座野 敏也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 勇樹
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188599(JP,A)
【文献】特開2002-198776(JP,A)
【文献】特開2004-235757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
H03H 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極に接続された水晶片と、
を有し、
前記水晶片における前記第1電極及び前記第2電極の側の第1面に、前記水晶片における前記第1電極と前記第2電極との中央位置に対して前記第1電極の側に設けられた第1電極パターンと、前記中央位置に対して前記第2電極の側に設けられており前記第1電極パターンと分離されている第2電極パターンと、が形成されており、
前記第1面と反対側の第2面に、前記第1面及び前記第2面と直交する方向から見た場合に、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンと重なっており、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンと電気的に結合する第3電極パターンが形成されており、
前記第1電極パターンと前記第3電極パターンとが電気的に結合して生じる振動モードの位相と、前記第2電極パターンと前記第3電極パターンとが電気的に結合して生じる振動モードの位相とは逆の位相であり、前記水晶片が斜対称振動モードで振動する、水晶デバイス。
【請求項2】
前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンは、前記第1電極と前記第2電極とを結ぶ前記水晶片の短手方向に直交する長手方向における辺が、前記短手方向における辺よりも長い長方形の領域を有する、
請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記第1電極パターンと前記第2電極パターンとの距離は、0.05mm以上、0.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記第3電極パターンは長方形であり、
前記第1面及び前記第2面と直交する方向から見た場合に、前記第3電極パターンの各辺は、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンの辺の少なくとも一部と重なっている、
請求項に記載の水晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振信号を生成するための水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶片の厚みすべり振動モードを利用して発振信号を発生する水晶振動子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-207306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水晶デバイスにおいては、厚みすべり振動モード以外に、温度変化に伴う水晶片の形状変化に起因して生じる不要な振動モードが生じる場合がある。厚みすべり振動モードによる振動波と不要な振動モードによる振動の高調波とが結合すると、厚みすべり振動モードによる振動の周波数が変化するとともに、クリスタルインピーダンス(CI)が大きくなるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、不要な振動モードを抑制することができる水晶デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水晶デバイスは、第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に接続された水晶片と、を有し、前記水晶片における前記第1電極及び前記第2電極の側の第1面に、前記水晶片における前記第1電極と前記第2電極との中央位置に対して前記第1電極の側に設けられた第1電極パターンと、前記中央位置に対して前記第2電極の側に設けられており前記第1電極パターンと分離されている第2電極パターンと、が形成されており、前記第1面と反対側の第2面に、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンと電気的に結合する第3電極パターンが形成されている。
【0007】
前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンは、前記第1電極と前記第2電極とを結ぶ前記水晶片の短手方向に直交する長手方向における辺が、前記短手方向における辺よりも長い長方形の領域を有してもよい。
【0008】
前記第1電極パターンと前記第2電極パターンとの距離は、0.05mm以上、0.5mm以下であってもよい。
【0009】
前記水晶デバイスの高さ方向において、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンの少なくとも一部は、前記第3電極パターンの少なくとも一部と重なっていてもよい。
【0010】
前記第3電極パターンは長方形であり、前記水晶デバイスの高さ方向において、前記第3電極パターンの各辺は、前記第1電極パターン及び前記第2電極パターンの辺の少なくとも一部と重なっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水晶デバイスにおいて不要な振動モードを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水晶発振器の構成を示す図である。
図2】水晶片の構成を示す図である。
図3】水晶片の振動モードについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[水晶発振器1の構成]
図1は、水晶発振器1の構成を示す図である。水晶発振器1は、水晶デバイスの一例である。図1(a)は、水晶発振器1の内部構造を模式的に示す平面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA-A断面図である。
【0014】
水晶発振器1は、筐体10と、水晶片20と、導電性接着剤31と、導電性接着剤32と、第1電極41と、第2電極42と、電子デバイス50と、外部端子60と、を有する。筐体10は、例えば中空の直方体形状をしたセラミックパッケージであり、水晶片20及び電子デバイス50を収容する。
【0015】
水晶片20は、電気信号が印加されることにより振動し、発振信号を発生する。水晶片20は、例えばATカット水晶片又はSCカットに代表される2回回転カットの水晶片である。図1水晶片20の表面には、導電パターンが形成されており、導電パターンは、導電性接着剤31及び第1電極41、並びに導電性接着剤32及び第2電極42を介して電子デバイス50に接続されている。
【0016】
導電性接着剤31及び導電性接着剤32は、それぞれ第1電極41及び第2電極42に塗布されており、水晶片20の裏面に形成された電極が第1電極41及び第2電極42と電気的に接続された状態で水晶片20の一端側を固定する。
【0017】
第1電極41及び第2電極42は、それぞれ導電性接着剤31及び導電性接着剤32が塗布される領域であり、例えば導電性を有する電極である。第1電極41及び第2電極42は、電子デバイス50に接続されるとともに、ビア配線(不図示)を介して外部端子60に接続されている。
【0018】
電子デバイス50は、水晶片20を発振させるための電子回路を有する。電子デバイス50は、1つの集積回路により構成されていてもよく、複数の電子部品により構成されていてもよい。
【0019】
[水晶片20の構成]
図2は、水晶片20の構成を示す図である。図2(a)は、水晶片20の第1面の構成を示しており、図2(b)は、水晶片20の第2面の構成を示している。水晶片20の第1面は、水晶片20における第1電極41及び第2電極42の側の面であり、水晶片20の第2面は、水晶片20における第1電極41及び第2電極42の側と反対側の面である。
【0020】
水晶片20の第1面には、第1電極パターン21と、第2電極パターン22と、第1配線23と、第2配線24と、第1裏面電極25と、第2裏面電極26と、が形成されている。第1電極パターン21は、水晶片20における第1電極41と第2電極42との中央位置に対して第1電極41の側に設けられた導電性のパターンである。第2電極パターン22は、中央位置に対して第2電極42の側に設けられており第1電極パターン21と分離されている導電性のパターンである。
【0021】
第1電極パターン21及び第2電極パターン22は、第1電極41と第2電極42とを結ぶ水晶片20の短手方向に直交する長手方向における辺が、水晶片20の短手方向における辺よりも長い長方形の領域を有する。すなわち、第1電極パターン21及び第2電極パターン22の長手方向は、水晶片20の長手方向と一致している。
【0022】
第1配線23は、第1電極パターン21を第1裏面電極25に接続するための配線である。第2配線24は、第2電極パターン22を第2裏面電極26に接続するための配線である。
【0023】
第1裏面電極25は、導電性接着剤31を介して第1電極41に接続される。第2裏面電極26は、導電性接着剤32を介して第2電極42に接続される。第1電極41及び第2電極42に電圧が印加されることにより、第1電極パターン21及び第2電極パターン22に互いに逆位相の電圧が印加され、第1電極パターン21と第2電極パターン22との中央位置を中心にして、水晶片20が、第1電極パターン21と第2電極パターン22とを結ぶ方向に振動する。
【0024】
図2(b)に示すように、水晶片20の第1面と反対側の第2面には、第1電極パターン21及び第2電極パターン22と電気的に結合する第3電極パターン27が形成されている。水晶発振器1の高さ方向において、第1電極パターン21及び第2電極パターン22の少なくとも一部は、第3電極パターン27の少なくとも一部と重なっている。図2に示す例においては、第3電極パターン27が長方形であり、水晶発振器1の高さ方向において、第3電極パターン27の各辺は、第1電極パターン21及び第2電極パターン22の辺の少なくとも一部と重なっている。
【0025】
第1電極パターン21及び第2電極パターン22の少なくとも一部が第3電極パターン27と重なっていることで、第1電極パターン21と第2電極パターン22とが、第3電極パターン27を介して電気的に結合した状態になる。第1電極パターン21と第3電極パターン27とが電気的に結合して生じる振動モードの位相と、第2電極パターン22と第3電極パターン27とが電気的に結合して生じる振動モードの位相とは逆になり、その結果、斜対称振動モードで水晶片20が振動する。第1電極パターン21と第2電極パターン22とが逆位相で振動することで、第1電極パターン21と第2電極パターン22とを結ぶ方向(図2における短手方向)に生じる不要な振動モードに起因する振動を打ち消すことができる。
【0026】
なお、第1電極パターン21と第2電極パターン22との距離は、例えば0.05mm以上、0.5mm以下である。第1電極パターン21と第2電極パターン22との距離が十分に小さいことにより、第1電極パターン21に基づく振動と第2電極パターン22に基づく振動とが同期するので、斜対称振動モードで水晶片20が振動する。
【0027】
図3は、水晶片20の振動モードについて説明するための図である。図3は、第1裏面電極25及び第2裏面電極26の側から水晶片20を視認した状態を示す模式図であり、破線の曲線は、厚みすべりによる対称振動モードを示しており、実線の曲線は、斜対称振動モードを示しており、水晶片20は、これらの2つの振動モードが合成された状態で振動する。
【0028】
第1電極パターン21と第2電極パターン22との間の位置においては、斜対称振動モードでの振動が生じず、対称振動モードでの振動の振幅が最大になっている。水晶片20が斜対称振動モードでも振動することにより、水晶片20の表面と裏面での電極の位置のずれに起因する不要な振動モード(例えば水晶片20の短手方向における非対称の振動モード)の発生を防げるので、水晶発振器1の周波数安定度が向上する。
【0029】
なお、水晶片20においては、第1裏面電極25及び第2裏面電極26が、導電性接着剤31及び導電性接着剤32を介して、第1電極41及び第2電極42に接続されている。したがって、図2に示す水晶片20の第2面には、水晶片20の側面を介して第1裏面電極25と結合した第1表面電極28と、水晶片20の側面を介して第2裏面電極26と結合した第2表面電極29とが設けられているが、第1表面電極28及び第2表面電極29が設けられていなくてもよい。
【0030】
また、以上の説明においては、水晶デバイスの一例として水晶発振器1を例示したが、水晶デバイスは水晶振動子であってもよい。
【0031】
[水晶発振器1による効果]
以上説明したように、水晶発振器1においては、第1面に、水晶片20における第1電極41と第2電極42との中央位置に対して第1電極41の側に設けられた第1電極パターン21と、中央位置に対して第2電極42の側に設けられており第1電極パターン21と分離されている第2電極パターン22と、が形成されている。また、第2面に、第1電極パターン21及び第2電極パターン22と電気的に結合する第3電極パターン27が形成されている。
【0032】
水晶片20がこのように構成されていることにより、水晶片20が斜対称振動モードで振動することにより、水晶片20の表面と裏面での電極の位置のずれに起因する不要な振動モード(例えば水晶片20の短手方向における非対称の振動モード)の発生を防げるので、水晶発振器1の周波数安定度が向上する。
【0033】
特に、使用温度範囲の全域(例えば-40℃から85℃までの範囲)において、不要な振動モードとの結合を抑制する必要があるTCXO(温度補償水晶発振器)で使用される水晶振動子において、本実施形態の水晶片20の構成は有効である。TCXOの周波数安定度は一般的には±0.3ppm程度であるが、本実施形態の水晶片20を用いることで、さらに周波数安定度を向上させることができる。
【0034】
さらに、従来の水晶片においては、表面の電極と裏面の電極とを接続するために、水晶片の側面に金属を蒸着する必要があったが、蒸着材料の厚みが小さい場合、リフロー時の熱により導通不良が生じる場合があった。本実施形態に係る水晶発振器1の構成によれば、第1面(裏面)に設けられた第1裏面電極25及び第2裏面電極26が第1電極41及び第2電極42と接続するので、水晶片20の側面に金属を蒸着することが必須ではない。したがって、水晶発振器1は、熱による導通不良を防ぐという効果も奏する。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0036】
1 水晶発振器
10 筐体
20 水晶片
21 第1電極パターン
22 第2電極パターン
23 第1配線
24 第2配線
25 第1裏面電極
26 第2裏面電極
27 第3電極パターン
28 第1表面電極
29 第2表面電極
31 導電性接着剤
32 導電性接着剤
41 第1電極
42 第2電極
50 電子デバイス
60 外部端子
図1
図2
図3