(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ベルト劣化診断装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
(21)【出願番号】P 2020084987
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】辻 宗克
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】西尾 慧太
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-74506(JP,A)
【文献】特開2018-122995(JP,A)
【文献】特開2020-200164(JP,A)
【文献】特開2020-154566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 7/00-G06T 7/90
G01M 13/00-G01M 13/045
G01M 99/00
B65G 43/00-B65G 43/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアのベルトの劣化を診断するベルト劣化診断装置であって、
前記ベルトのズリ搭載面に対向して配置され、前記ベルト
表面の所定箇所を撮像する撮像装置と、
画像認識に用いるための劣化状態パターンのサンプル画像と、前記撮像装置で撮像した前記ベルトの撮像画像と、撮像したベルトの位置情報と、撮像した時刻情報と、前記撮像画像と前記ベルトの位置情報と前記時刻情報を関連づけるための情報と、を格納する記憶部と、
前記撮像画像と前記サンプル画像とを比較し、前記ベルト表面の状態を検出するベルト表面状態検出部と、
前記ベルト表面状態検出部の検出結果に基づき、前記ベルト表面に摩耗または傷が発生したと判断すると、前記記憶部から同一位置の前
記撮像画像の中から時系列的に前後の
撮像画像を読み出し、前記ベルトの同一位置での
撮像画像を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断するベルト劣化判断部と、を備え、
前記ベルトの劣化状態を判別する、ベルト劣化診断装置。
【請求項2】
前記ベルト表面状態検出部の検出結果に基づき、前記ベルト表面に摩耗または傷が発生したと判断されると、前記記憶部に、前記撮像画像を撮像したベルトの位置情報と撮像した時刻情報を関連づけて格納される、請求項1に記載のベルト劣化診断装置。
【請求項3】
前記ベルトにマーカーを設け、前記ベルトに設けられた前記マーカーに基づいて、前記撮像装置が撮像している前記ベルトの位置を特定する位置算出部を備え、前記位置算出部
で特定した前記ベルトの位置と前記撮像画像を関連付けて前記記憶部に格納し、前記記憶部から同一位置での
前記撮像画像を時系列に読み出す、請求項
1または2に記載のベルト劣化診断装置。
【請求項4】
前記ベルト劣化判断部は、前記記憶部から読み出した同一位置
での前記撮像画像の
中から時系列的に前後の撮像画像を比較し、
前記ベルトの劣化の進行度を判断する請求項1
から3のいずれか1項に記載のベルト劣化診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトコンベアのベルトの劣化を診断するベルト劣化診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事の排土にはベルトコンベアが利用されている。ベルトコンベアのベルトは、主にゴムや樹脂などからなり、繰り返しの使用によってベルトの表面は摩耗して薄くなる。これを補修せずに継続して使用すると、ベルトが損傷または、破断する虞がある。このため、ベルトの損傷の検査を行い、損傷が発生したベルトは交換するなど、ベルトの切断等を未然に防ぐことが行われている。
【0003】
特許文献1には、ベルトの表面を撮像し、撮像したベルトの画像からベルトの損傷領域の有無を判定するベルトコンベア探傷装置が開示されている。
【0004】
上記したベルトコンベア探傷装置は、撮像装置をベルトのズリ搭載面に対向配置し、ベルトの所定箇所を連続的に撮像し、撮像した画像からベルトの損傷領域の有無を判定している。
【0005】
上記したベルトコンベア探傷装置は、ベルトの損傷を判定することはできる。しかし、この技術によれば、ベルトの損傷は判定することができるが、ベルトの劣化が進み、将来的なベルトの異常が発生することを予測することはできない。
【0006】
ところで、ベルトコンベアのベルトは、走行速度、累積走行時間に応じて劣化が進む。そこで、ベルトコンベアの走行速度、累積時間に基づいて、ベルトの劣化を予測する方法が考えられる。しかし、ベルトコンベアのベルトの劣化は、走行速度、累積時間だけで進むのではなく、排土等の被運搬物の投入時の衝撃や突起等の形状に起因して助長される。
【0007】
特許文献2には、劣化の予測が可能なベルト及びベルトの劣化予測システムが開示されている。
【0008】
特許文献2のベルトの劣化予測システムは、ベルトに歪みセンサを設け、歪みセンサの出力によりベルトの伸びを検出する。予めベルトの伸びと劣化の関係を記憶しておき、ベルトの伸びに基づき劣化を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-46852号公報
【文献】特開2019-56627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ベルトの劣化は、ベルトの伸びが発生する前にベルトの表面の状態変化が起こる。ベルトの劣化は、ベルトの伸びだけでなくベルトのゴムや樹脂などからなるベルト表面の摩耗や傷なども起因する。
【0011】
上記の特許文献2においては、ベルトの表面の状態変化に起因する劣化を予測することはできない。
【0012】
さらに、上記特許文献2においては、歪みセンサを設けた特殊なベルトを用いる必要があり、汎用性がなく、コストが高くなるなどの問題がある。
【0013】
そこで、この発明は、特殊なベルトを用いることなく、汎用性あるベルトの劣化を診断するベルト劣化診断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の実施形態に係るベルト劣化診断装置は、前記ベルトのズリ搭載面に対向して配置され、前記ベルト表面の所定箇所を撮像する撮像装置と、画像認識に用いるための劣化状態パターンのサンプル画像と、前記撮像装置で撮像した前記ベルトの撮像画像と、撮像したベルトの位置情報と、撮像した時刻情報と、前記撮像画像と前記ベルトの位置情報と前記時刻情報を関連づけるための情報と、を格納する記憶部と、前記撮像画像と前記サンプル画像とを比較し、前記ベルト表面の状態を検出するベルト表面状態検出部と、前記ベルト表面状態検出部の検出結果に基づき、前記ベルト表面に摩耗または傷が発生したと判断すると、前記記憶部から同一位置の前記撮像画像の中から時系列的に前後の撮像画像を読み出し、前記ベルトの同一位置での撮像画像を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断するベルト劣化判断部と、を備え、前記ベルトの劣化状態を判別する。
また、この発明の実施形態に係るベルト劣化診断装置は、前記ベルト表面状態検出部の検出結果に基づき、前記ベルト表面に摩耗または傷が発生したと判断されると、前記記憶部に、前記撮像画像を撮像したベルトの位置情報と撮像した時刻情報を関連づけて格納されるように構成することができる。
【0015】
また、この発明の実施形態に係るベルト劣化診断装置は、前記ベルトにマーカーを設け、前記ベルトに設けられた前記マーカーに基づいて、前記撮像装置が撮像している前記ベルトの位置を特定する位置算出部を備え、前記位置算出部で特定した前記ベルトの位置と前記撮像装置で撮像した撮像データを関連付けて前記記憶部に格納し、前記記憶部から同一位置の撮像データを時系列に読み出すように構成することができる。
【0016】
また、この発明の実施形態に係るベルト劣化診断装置の前記ベルト劣化判断部は、前記記憶部から読み出した同一位置での前記撮像画像の中から時系列的に前後の撮像画像を比較し、前記ベルトの劣化の進行度を判断するように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るベルト劣化診断装置によれば、ベルトの同一位置において、時系列的に前後の画像を読み出し、ベルトの同一位置での画像を判定することにより、ベルトの劣化が進んでいるかどうかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の第1実施形態に係るベルトコンベア装置とベルト劣化診断装置を示した側面図である。
【
図2】この発明の第1実施形態に係るベルト劣化診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】この発明の第1実施形態に係るベルト劣化診断装置の撮像装置部分を示す説明図である。
【
図5A】ベルトの劣化の初期状態を示す模式図である。
【
図5B】ベルトの劣化の中期状態を示す模式図である。
【
図5C】ベルトの劣化の後期状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明に係るベルト劣化診断装置10について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、この発明に係るベルト劣化診断装置の第1実施形態を示している。
図2は、この発明の第1実施形態に係るベルト劣化診断装置の構成を示すブロック図である。
図1~
図2を参照して、この発明の第1の実施形態に係るベルト劣化診断装置について説明する。
【0021】
この発明の第1実施形態に係るベルト劣化診断装置10は、地盤の掘削時に発生するズリ(被搬送物)5を搬送するベルトコンベア20の運転中にベルト29の劣化を診断する。すなわち、ズリ搭載面であるベルト29表面の撮像画像を時系列に記憶部に記憶させ、ベルト29の表面の撮像画像を時系列的に判別し、ベルト29の摩耗、傷などの進行状態を判別し、劣化を診断する。
【0022】
このベルト劣化診断装置10及びベルトコンベア20は、トンネル掘削工事の際等に利用される。トンネル掘削工事においては、シールドマシン等の掘削機が用いられる。シールドマシンを用いたシールド工法にこのベルト劣化診断装置10を用いた場合を例にとり、説明する。
【0023】
シールド工法においては、シールドマシン1によって切羽2を掘削しつつ、シールドマシン1を逐次前進させ、シールドマシン1の後方にセグメントを組み立てることによって、シールドトンネル3を構築する。
【0024】
切羽2の掘削により発生したズリ5は、ベルトコンベア20のズリ搭載面29aに搭載され、ベルトコンベア20によりシールドトンネル3の坑口4まで搬送される。坑口4においては、ベルトコンベア20によって搬送されたズリ5がベルトコンベア9に載せ換えられ、ズリ5がベルトコンベア9によって立杭等を通って地上まで搬出される。
【0025】
なお、ベルト劣化診断装置10は、シールド工法以外の地盤掘削工法又は鉱石などの搬送に用いるベルトコンベア装置に適用することができる。
【0026】
ベルト劣化診断装置10は、ベルトコンベア20のベルト29の表面(ズリ搭載面29a)を撮像する撮像装置30と、制御装置100等を備える。さらに、ベルト29の劣化が進み、損傷が発生すると判断した時に、動作する警報装置を備えてもよい。
【0027】
このベルト劣化診断装置10は、ベルト29に設けられたマーカー85に基づいて、撮像装置30が撮像しているベルト29の位置を特定する位置算出部102(
図2参照)が設けられている。撮像装置30で撮像した
撮像画像を位置情報と時刻情報を関連づけて記憶部110に格納する(
図2参照)。
【0028】
ベルト劣化診断装置10は、撮像装置30で撮像した
撮像画像によりベルト
29の表面の状態を判断するベルト表面状態検出部104、同一位置のベルト
29を撮像した
撮像画像を記憶部に記憶し、記憶した画像から時系列的に前後の画像を読み出し、ベルト
29の同一位置での画像を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断するベルト劣化判断部105を備える(
図2参照)。後述するように、ベルト表面状態検出部104、ベルト劣化判断部105は、例えば、パーソナルコンピュータ等からなる制御装置100により構成される。
【0029】
制御装置100は、プログラムにより、ベルト表面状態検出部104、ベルト劣化判断部105の機能を動作させる。ベルト表面状態検出部104は、撮像した撮像画像を認識することにより、ベルト29の表面状態を判定し、ベルト29の劣化に関係する撮像画像と認識した画像データを位置データと時刻情報とを関連づけて記憶部110のベルト位置情報及び時刻情報格納部110aとベルト表面画像情報格納部110bにそれぞれ格納する。
【0030】
ベルト劣化判断部105は、ベルト表面画像情報格納部110bに格納された撮像画像からベルト29の同一位置において、時系列的に前後の撮像画像を読み出し、ベルト29の同一位置での撮像画像を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断するように構成されている。
【0031】
マーカー85として磁気マーカーを用いる場合には、ベルトコンベア20に基準位置を示すための磁気マーカーとこの磁気マーカーに対して所定間隔毎に設けた磁気マーカーで構成し、磁気マーカーを磁気検出部で構成されたマーカー検出部120(
図2参照)で検出し、位置算出部102に与える。位置算出部102は、磁気マーカーの位置とベルトコンベア20の搬送速度によりベルト29の位置を算出し、撮像装置30が撮像する位置を特定する。
【0032】
また、マーカーとして、RFID(radio frequency identifier)技術を用いる場合には、ベルトコンベア20にRFIDタグを所定間隔毎に設け、RFIDタグを読み取るためのリーダーで構成したマーカー検出部120を設け、撮像装置30が撮像する位置を特定するように構成できる。
【0033】
次に、ベルトコンベア20についての構成について説明する。
ベルトコンベア20は、プーリー23、24、モーター28及びベルト29を有する。プーリー23が切羽2近傍に設けられ、プーリー24が坑口4に設けられている。
【0034】
モーター28はプーリー24を回転させる。モーター28は、モータードライバー101(
図2参照)によって駆動される。
【0035】
ベルト29は無端ベルトであり、モーター28が作動すると、ベルト29が循環する。ベルト29が循環している時に、切羽2で発生したズリ5をプーリー23の位置でベルト29のズリ搭載面29aに載せ、そのズリ5をベルト29によってプーリー23からプーリー24へと搬送する。
【0036】
ベルトコンベア9がプーリー24の下方から地上にまで配されており、ベルト29がプーリー24で折り返されることによって、ズリ5がベルト29からベルトコンベア9へ載せ換えられる。
【0037】
プーリー24の下流側に撮像装置30が配置される。撮像装置30は、ベルト29のズリ搭載面29aの表面を撮像する。
【0038】
次に、撮像装置30について説明する。
撮像装置30は、プーリー24よりも下流側且つプーリー23よりも上流側において、ベルト29のズリ搭載面29aに対向配置されている。この撮像装置30は、ベルト29の所定箇所を連続的に撮像し、ベルト29の撮像画像(静止画)を順次、ベルト劣化診断装置10の制御装置100に出力する。
【0039】
制御装置100は、後述する位置算出部102で算出したベルト29の位置と撮像装置30で撮像した撮像画像を関連づける。さらに、制御装置100は、撮像装置30で撮像した時刻情報も撮像画像に関連づける。制御装置100は、撮像画像を位置情報及び時刻情報と関連づけて記憶部110に格納する。
【0040】
制御装置100は、時刻が異なった時、すなわち、時系列的にベルト29の同一位置で撮像した撮像画像を得て、記憶部110に与える。この時系列的に撮像した撮像画像に基づいて、ベルト劣化判断部105は、ベルト29の劣化状態を判断することができる。
【0041】
この撮像装置30は、ベルト表面を撮像するカメラ30aと、このカメラ30aを挟むように設けられた一対の照明装置30bで構成されている。照明装置30bは制御装置100の照明駆動装置103(
図2参照)により、駆動制御され、ベルト29の表面を照射する。
【0042】
例えば、カメラ30aは、エリア型の固体撮像素子と、ベルト29の一部の像を固体撮像素子に結像する光学レンズと、固体撮像素子によって撮像(光電変換)されたベルト29の一部の像をデジタルの撮像画像に変換する画像処理部と、を備える。撮像装置30による撮像のインターバル(フレームレート)は、或る撮像タイミングの撮像範囲と次の撮像タイミングの撮像範囲が部分的に重なるように設定されているか、それらの撮像範囲が途切れずに連なるように設定されていることが好ましい。この実施形態においては、
図3に示すように、ベルトの移動方向に対して1mの領域を撮像可能に構成している。
【0043】
この1mの領域を撮像した画像データが制御装置100に与えられる。制御装置100のベルト表面状態検出部104は、撮像された撮像画像を画像認識し、ベルトの表面状態を検出する。全ての画像データを記憶部110に格納するとデータ量が多くなるので、この実施形態では、制御装置100が、表面状態がある程度摩耗又は傷が発生したと判断すると、その撮像画像を、位置算出部102によるベルト29の位置と撮像画像を撮像した時刻情報とを関連づけて記憶部110に格納させる。言い換えれば、ベルト29の表面がある程度劣化したと判断された時に、制御装置100は、記憶部110に、ベルト29の同一位置に対して、運転回数毎のベルト29の表面の撮像画像のデータを記憶部110に格納させる。
【0044】
上述したように、
図1及び
図3に示すように、照明装置30bは、撮像装置のカメラ30aを挟むようにして、ベルト29のズリ搭載面29aに対向して配置されている。この照明装置30bはベルト29のズリ搭載面29aに光(例えば可視光)を照射するものであり、照明装置30bの光出射面が例えば矩形状に形成されている。
【0045】
照明装置30bは、例えば、LED(Light Emitting Diode)を設けたLED照明装置が用いられ、複数のLED素子の前面に拡散板が設けられ、拡散板から面状に拡散光がズリ搭載面29aに照射される。照明装置30bは、カメラ30aを挟むようにベルト29の上流側、下流側に配置される。
【0046】
照明装置30bがベルト29のズリ搭載面29aに対向するので、ズリ搭載面29aの照明される部位は広い範囲で明るい上、照度分布の均一性が高くなる。なお、照明装置30bの光出射面における輝度分布が均一であることが好ましい。
【0047】
撮像装置30は、ベルトコンベア20の運転中に周期的に撮像処理を実行する。撮像装置30による撮像処理の周期は、或る撮像処理による画像中のベルト29の撮像範囲と次の撮像処理による画像中のベルト29の撮像範囲が部分的に重なるように設定されているか、それらの撮像範囲が途切れずに連なるように設定されている。
【0048】
撮像装置30の撮像処理により得られた撮像画像は、制御装置100のベルト表面状態検出部104と後述する記憶部110に与えられる。
【0049】
図2は、この発明の第1実施形態にかかるベルト劣化診断装置10の構成を示したブロック図である。
【0050】
制御装置100は、CPU、GPU、ROM、RAM等を有するパーソナルコンピュータで構成される。この制御装置100には、撮像装置30、モータードライバー101、マーカー検出部120、記憶部110が接続されている。
【0051】
記憶部110は、半導体メモリー又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置である。記憶部110は、制御装置100によって読み書き可能なものである。記憶部110は制御装置100の筐体に内蔵されてもよいし、外付けであってもよい。この記憶部110には、制御装置100によって実行可能なプログラムが格納されている。なお、プログラムは、制御装置100のROMに格納されていてもよい。
【0052】
また、記憶部110は、画像認識に用いるための種々の劣化状態パターンのサンプル画像データを格納している。ベルト表面状態検出部104は、撮像装置30で撮像した撮像画像のデータと記憶部110に格納されたサンプル画像パターンを比較し、劣化判断を行うベルト29の表面か否かを判断し、その結果、劣化判断を行うベルト29の表面と判断するとそのベルト29の表面の撮像画像を記憶部110のベルト表面画像情報格納部110bに格納する。
【0053】
ベルト位置情報及び時刻情報格納部110aには、ベルト表面画像情報格納部110bに格納した撮像画像と、その撮像した位置情報と、撮像した時刻情報を関連づけるための情報が格納される。
【0054】
ベルト劣化判断部105は、ベルト表面画像情報格納部110bからベルト29の同一位置において、撮像した撮像画像を時系列的に前後の撮像画像を読み出し、同一位置での撮像画像の変化を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断する。
【0055】
ベルトコンベア20のベルト29は、例えば、
図4に示すように、構成されている。ベルト29は、補強材としての芯体290を挟むように、上カバーゴム291、下カバーゴム292が設けられている。芯体290は、ポリエステルやナイロンを素材とする帆布を補強材とした帆布ベルト、スチールコードを補強材としたスチールコードベルトがある。
【0056】
カバーゴムは、ゴムを主成分としている。前記ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0057】
上記したように、繰り返しの使用によってベルト29の上カバーゴム291の表面は摩耗して薄くなる。上カバーゴム291の表面が薄くなると、色、形、模様などが変化する。この実施形態においては、予め劣化状況に応じた色、形、模様などのサンプル画像を記憶部110に参考画像として格納しておき、撮像装置30で撮像した撮像画像を上記サンプル画像とリアルタイムに比較し、劣化状態の診断を開始するように構成し、記憶部110へ格納する情報を限定するように構成している。また、ベルト29の表面に傷が発生した場合も劣化診断を行うように構成している。
【0058】
次に、制御装置100の処理について説明する。
ベルトコンベア20の運転中に、すなわち、モーター28がモータードライバー101によって駆動されている時に、制御装置100がプログラムに基づいて実行する処理について以下に具体的に説明する。
【0059】
撮像装置30から制御装置100に画像が転送される度に、制御装置100が撮像装置30から転送された撮像画像を取得して、ベルト表面状態検出部104と記憶部110に与える。記憶部110は、画像認識に用いるための種々の劣化状態パターンのサンプル画像データを格納している。
【0060】
ベルト表面状態検出部104は、撮像された撮像画像とサンプル画像とをリアルタイムに比較し、ベルトの表面状態を検出する。この実施形態では、制御装置100は、ベルト表面状態検出部104の検出結果に基づき、ベルト29の表面状態がある程度摩耗又は傷が発生したと判断すると、そのベルト29の表面の撮像画像を記憶部110のベルト表面画像情報格納部110bに格納させる。
【0061】
さらに、ベルト位置情報及び時刻情報格納部110aに、ベルト表面画像情報格納部110bに格納した撮像画像と、その撮像したベルト29の位置情報と、撮像した時刻情報を関連づけるための情報を格納させる。
【0062】
さらに、ベルト劣化判断部105は、ベルト表面画像情報格納部110bから同一位置においてベルト29を撮像した撮像画像の中で時系列的に前後の撮像画像を読み出し、画像認識を行い、同一位置での撮像画像の変化を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断する。
【0063】
ベルト劣化判断部105の判断結果により、制御装置100は、劣化が進行していると判断すると、図示しない警報器を作動させるように構成してもよい。これにより、作業者に警告を報知することができる。
【0064】
また、警報器の作動に併せて、制御装置100がモータードライバー101をオフにして、モーター28を停止させる。これにより、ベルトコンベア20が停止する。位置算出部102は、撮像した領域とベルト29との位置関係を算出している。この位置算出部102のデータからベルト29の劣化が進んだ部位を把握することができる。作業者は、特定されたベルト29の劣化が進んだ部位にベルト29を移動させ、ベルト29の劣化が進行した部位を確認することができる。そして、ベルト29の劣化進行程度に応じてベルトを交換することで、ベルトの破損を未然に防ぐことができる。
【0065】
次に、マーカー85として、RFタグを用いた場合について説明する。
【0066】
ベルト29には、複数のRFタグからなるマーカー85がベルト29の搬送方向に沿って一定間隔で配列されている。好ましくは、これらRFタグからなるマーカー85がベルト29の縁部に設けられている。
【0067】
RFタグからなるマーカー85にはメモリー、制御回路及び送信機等が内蔵されており、そのメモリーにはRFタグごとに個別に与えられた識別子(識別番号、識別符号等)が格納されている。好ましくは、RFタグは、電源を内蔵するとともにその電源の電力を利用して識別子を発信するアクティブ型タグである。そのため、後述のリーダーからなるマーカー検出部120とRFタグからなるマーカー85の交信距離が長くなり、リーダーによるRFタグの識別子の読み取りミスを防止することができる。
【0068】
リーダー80からなるマーカー検出部120について説明する。リーダー80からなるマーカー検出部120は、プーリー24よりも下流側且つ撮像装置30よりも上流側に設けられるとよい。
【0069】
リーダーからなるマーカー検出部120は、アンテナ及び制御回路等を有する。そして、リーダーからなるマーカー検出部120の近傍をRFタグからなるマーカー85が通過する時に、リーダーからなるマーカー検出部120がRFタグによって発信された識別子を読み取る。そして、リーダーからなるマーカー検出部120が読み取った識別子を制御装置100の位置算出部102に転送する。リーダーとRFタグの交信方式は、電波方式又は電磁誘導方式である。
【0070】
制御装置100は、画像取得処理により取得した撮像画像を記憶部110に記録する。この際、制御装置100は、一時的に記憶した最新の識別子を撮像画像に対応づけて記憶部110に記録する。そのため、或るRFタグがリーダーを通過してそのRFタグの識別子が制御装置100に一時的に記憶されてから、次のRFタグがリーダーを通過するまでの間は、先のRFタグの識別子が撮像画像に対応づけられて記憶部110に記録される。
【0071】
以上のように記憶部110に記録された識別子からベルト29の撮像位置を特定することができる。
【0072】
次に、この発明のベルト劣化診断装置10を用いたベルトコンベア装置の劣化診断方法について、
図5Aから
図5Cを参照して説明する。
図5Aは、ベルトの劣化の初期状態、
図5Bは、ベルトの劣化の中期状態、
図5Cは、ベルトの劣化の後期状態を示している。
【0073】
図5Aから
図5Cにおいては、ベルト29表面に傷がつき、その傷が大きくなって劣化が進行していることを判断する場合を示している。
【0074】
撮像装置30で撮像した撮像画像が制御装置100に与えられる。制御装置100のベルト表面状態検出部104は、撮像された撮像画像を画像認識する。
【0075】
ベルト表面状態検出部104は、
図5Aに示すように、ベルト29の表面に小さな傷a、bが発生していることを画像認識により判別する。そして、傷a、bから僅かな縦割れcも発生していることも判別する。
【0076】
制御装置100は、
図5Aに示すように、傷が発生したと判断すると、その撮像画像を、位置算出部102によるベルト29の位置と画像を撮像した時刻情報とを関連づけて記憶部110に格納させる。
【0077】
続いて、ベルトコンベア20の運転を継続する。そして、撮像装置30で撮像した撮像画像が制御装置100に与えられる。制御装置100のベルト表面状態検出部104は、撮像された画像を画像認識する。運転を何回か繰り返すと、ベルト29表面から
図5Bに示すような
撮像画像が得られる。
【0078】
ベルト劣化判断部105はベルト表面画像情報格納部110bから、同一位置において、ベルト29を撮像した撮像画像の中から時系列的に前後の撮像画像を読み出し、同一位置での撮像画像の変化を判定し、劣化が進んでいるかどうかを判断する。
【0079】
図5Bに示すように、ベルト29の表面に小さな傷a、bが発生している。そして、傷a、bから縦割れcが伸びている。
【0080】
ベルト劣化判断部105は、
図5Aの撮像画像と
図5Bの撮像画像と比較し、劣化の度合を判定する。この例では、縦割れCが伸びていることが分かる。ベルト劣化判断部105は、劣化が進んでいることが判断できる。
【0081】
さらに、ベルトコンベア20の運転を続けていくと、ベルト29表面から
図5Cに示すような
撮像画像が得られる。
【0082】
図5Cに示すように、ベルト29の表面の傷a、bが大きくなっている。そして、傷a、bに連なるように縦割れcも伸びている。
【0083】
ベルト劣化判断部105は、
図5Bの撮像画像と
図5Cの撮像画像と比較し、劣化の度合を判定する。この例では、縦割れCがさらに大きく伸びていることが分かる。ベルト劣化判断部105は、劣化がさらに進んで、ベルト29を交換する時期に近づいていることを判断することができる。
【0084】
図5A~
図5Cは、傷に基づいて劣化を診断しているが、この発明では、傷に限らず、色、模様、色又は模様が変化している箇所の形や面積を時系列で古い画像と新しい画像を比較して、劣化を判断するように構成してもよい。
【0085】
また、この実施形態においては、記憶部110に記憶する撮像データを少なくするために、ベルト表面状態検出部104で劣化が進行するような表面状態を検出した後の画像を特定して記憶させるように構成しているが、ベルト表面状態検出部104を用いずに、撮像した画像全てを格納し、時系列で古い画像と新しい画像を比較して、劣化を判断するように構成してもよい。
【0086】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0087】
上記実施形態では、ベルト29によって搬送される被搬送物がズリであったが、ズリに限るものではない。つまり、ベルトコンベア20の用途は排土に限るものではない。
【符号の説明】
【0088】
5 :ズリ
10 :ベルト劣化診断装置
20 :ベルトコンベア
29 :ベルト
29a :ズリ搭載面
30 :撮像装置
30a :カメラ
30b :照明装置
110 :記憶部
102 :位置算出部
104 :ベルト表面状態検出部
105 :ベルト劣化判断部