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特許7428585点火器組立体及びそれを備えるガス発生器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】点火器組立体及びそれを備えるガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20240130BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085501
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178595
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 篤
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3134430(JP,U)
【文献】登録実用新案第3134281(JP,U)
【文献】特開2001-165600(JP,A)
【文献】特開2002-054895(JP,A)
【文献】特開2006-234369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火薬が充填された着火部と、該着火部から延在する導電部を有する点火器本体と、
前記点火器本体の前記導電部を少なくとも囲む筒状の周壁部を有する点火器カラーと、
前記点火器本体と前記点火器カラーとの間に介在し、前記点火器本体及び前記点火器カラーを一体化する樹脂成形体と、
を備える点火器組立体であって、
前記点火器カラーは、
前記周壁部における内周部に設けられ、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に形成された第1支持部と、
前記内周部のうち、前記周壁部の中心軸に沿った方向おいて前記第1支持部よりも前記着火部から離れた位置に設けられ、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に形成され、あるいは、内部に前記樹脂成形体が充填されるように該周壁部の径方向外側に向かって凹状に形成された第2支持部と、
を有し、
前記中心軸に沿った方向における前記第1支持部の最小寸法が、該中心軸に沿った方向における前記第2支持部の最小寸法以上である、
点火器組立体。
【請求項2】
前記点火器本体の作動用信号を送信するコネクタを前記導電部に接続するためのコネクタ接続空間が、前記中心軸に沿った方向において前記第1支持部よりも該導電部の先端側に形成されており、
前記第2支持部は、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に、且つ、前記コネクタ接続空間に対向する位置に形成されている、
請求項1に記載の点火器組立体。
【請求項3】
前記第2支持部は、前記周壁部の周方向に沿って不連続的に複数形成されている、
請求項1または請求項2に記載の点火器組立体。
【請求項4】
ガス放出口を有する外殻容器と、
前記外殻容器の内部に配置された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の点火器組立体と、
を備える、ガス発生器。
【請求項5】
前記外殻容器は、第1シェルと第2シェルを組み合わせて形成されており、
前記第1シェルまたは前記第2シェルのいずれか一方の一部が前記点火器カラーであり、
前記点火器組立体は、前記樹脂成形体によって一部が前記点火器カラーである前記第1シェルまたは前記第2シェルのいずれかに固定されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気着火式の点火器本体を点火器カラーに取り付けた点火器組立体及びそれを備えるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気着火式の点火器本体を備える点火器組立体は、点火器本体が金属で形成された点火器カラーに樹脂によって固定されている。そして点火器組立体は、点火器カラーを介してエアバッグ用ガス発生器に取り付けられ広く利用されている。特許文献1には、金属製の固定部材及び下部側シェルに樹脂成形部によって点火器が固定されたガス発生器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-157586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス発生器に点火器組立体が取り付けられた場合には点火器本体が作動したときの衝撃によって、点火器組立体に力が作用する。樹脂によって点火器カラーと点火器本体とが一体化されている構成においては、樹脂で構成された部位に力が作用して当該部位に亀裂が生じると、樹脂で構成された部位の一部が点火器組立体の外部に飛び出でてしまう虞がある。
【0005】
本開示では、上記した問題に鑑み、点火器組立体の耐圧性能を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の点火器組立体では、点火器カラーの周壁部に、第1支持部と第1支持部よりも着火部から離れた位置に設けられた第2支持部を設けた。
【0007】
具体的には、本開示は、点火薬が充填された着火部と、該着火部から延在する導電部を有する点火器本体と、前記点火器本体の前記導電部を少なくとも囲む筒状の周壁部を有する点火器カラーと、前記点火器本体と前記点火器カラーとの間に介在し、前記点火器本体及び前記点火器カラーを一体化する樹脂成形体と、を備える点火器組立体であって、前記点火器カラーは、前記周壁部における内周部に設けられ、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に形成された第1支持部と、前記内周部のうち、前記周壁部の中心軸に沿った方向おいて前記第1支持部よりも前記着火部から離れた位置に設けられ、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に形成され、あるいは、内部に前記樹脂成形体が充填されるように該周壁部の径方向外側に向かって凹状に形成された第2支持部と、を有し、前記中心軸に沿った方向における前記第1支持部の最小寸法が、該中心軸に沿った方向における前記第2支持部の最小寸法以上である。
【0008】
点火器組立体は、点火器本体が作動したときの衝撃で、樹脂成形体の厚みが最も薄い部分で亀裂が発生し易くなる。点火器組立体は、仮に樹脂成形体に亀裂が生じても、この亀裂より着火部側の樹脂成形体を第1支持部によって支持し、この亀裂よりも導電部の先端側の樹脂成形体を第2支持部によって支持する。これにより、本開示の点火器組立体は、仮に樹脂成形体に亀裂が生じて分離してしまった場合であっても樹脂成形体の一部が点火
器組立体の外部に飛び出でてしまうのを抑制できるため、耐圧性能を向上できる。
【0009】
上記の点火器組立体において、前記点火器本体の作動用信号を送信するコネクタを前記導電部に接続するためのコネクタ接続空間が、前記中心軸に沿った方向において前記第1支持部よりも該導電部の先端側に形成されており、前記第2支持部は、前記樹脂成形体に埋没されるように前記周壁部の径方向内側に向かって凸状に、且つ、前記コネクタ接続空間に対向する位置に形成されていてもよい。点火器組立体において、コネクタ接続空間は、点火器カラーの周壁部の径方向や中心軸に沿った方向での所定寸法を確保し易い。この構成を備える点火器組立体は、コネクタ接続空間により、点火器カラーの周壁部の径方向内側への凸となる第2支持部を形成するための空間を確保しやすくなる。
【0010】
上記の点火器組立体において、前記第2支持部は、前記周壁部の周方向に沿って不連続的に複数形成されていてもよい。点火器組立体は、第2支持部が周壁部の周方向に沿って不連続的に複数形成されていることによって、樹脂成形体の樹脂硬化後に点火器カラーに対して樹脂成形体が回転することを防止できる。
【0011】
また、本開示はガス発生器であって、ガス放出口を有する外殻容器と、前記外殻容器の内部に配置された上記の点火器組立体と、を備えていてもよい。本開示の点火器組立体は、ガス発生器に用いることができる。
【0012】
上記のガス発生器において、前記外殻容器は、第1シェルと第2シェルを組み合わせて形成されており、前記第1シェルまたは前記第2シェルのいずれか一方の一部が前記点火器カラーであり、前記点火器組立体は、前記樹脂成形体によって一部が前記点火器カラーである前記第1シェルまたは前記第2シェルのいずれかに固定されていてもよい。このように、外殻容器の一部を点火器カラーとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術によれば、点火器組立体の耐圧性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る点火器組立体を含んで構成されるガス発生器の概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る点火器組立体の概略構成を示す図である。
図3図3は、実施形態2に係る点火器組立体の概略構成を示す図である。
図4図4は、実施形態2の変形例1に係る点火器組立体の概略構成を示す図である。
図5図5は、実施形態2の変形例2に係る点火器組立体の概略構成を示す図である。
図6図6は、実施形態3に係るガス発生器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る点火器組立体及び点火器組立体を備えるガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、請求項によってのみ限定される。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る点火器組立体1を用いたエアバッグ用ガス発生器(以下、「ガス発生器」と称する)100の軸方向の断面図である。図1中、ガス発生器100の中
心軸AXを一点鎖線で示している。なお、ガス発生器100は、エアバッグ用に限られず、シートベルトプリテンショナー用や、カーテンエアバッグ用に適した公知の形状であってもよいし、各種アクチュエータ等に使用されるような公知の形状であってもよい。ガス発生器100は、上部シェル101(本願でいう「第1シェル」の一例)と下部シェル102(本願でいう「第2シェル」の一例)とを備える。上部シェル101及び下部シェル102は、金属で形成され、有底略円筒状を有している。また、上部シェル101には、ガス放出口104が周方向に並んで複数形成されている。ガス発生器100においては、上部シェル101と下部シェル102が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状のハウジング103(本願でいう「外殻容器」の一例)が形成されている。このハウジング103内に、点火器組立体1が配置される。なお、点火器組立体1の作動前においては、ガス放出口104はハウジング103の内部からアルミニウム製のシールテープ114により閉塞されている。点火器組立体1の詳細については後述するが、点火器組立体1が備える点火器本体2(図2を参照)の作動によって、ハウジング103内に充填されているガス発生剤105が着火・燃焼され、例えばエアバッグ(袋体)を膨張させるための燃焼ガスを発生させる。
【0017】
ガス発生器100においては、ハウジング103内の中心に、内筒部材108が配置されている。内筒部材108の周壁には複数の伝火孔107が設けられている。内筒部材108の内側には、点火器組立体1及び伝火薬111を収容する空間109が形成されている。伝火孔107は、アルミニウム製のシールテープ113により塞がれている。これにより、内筒部材108内の気密性が確保されている。
【0018】
また、内筒部材108の半径方向外側にはガス発生剤105を収容する燃焼室110が形成されている。ガス発生剤105は、燃焼室110において略リング状に形成されたアンダープレート115によって支持されている。伝火薬111としては、着火性が良く、ガス発生剤105より燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬111の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲にあることが望ましい。このような伝火薬111としては、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む公知のものを用いることができる。あるいは、伝火薬としては公知の黒色火薬(ボロン硝石)を使用してもよい。また、ガス発生剤105としては、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用でき、例えば、ガス発生剤105の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む公知のものを用いることができる。
【0019】
そして、点火器組立体1は、内筒部材108の下部シェル102側に固定されている。具体的には、下部シェル102の底部の中央部に取付孔116が設けられており、取付孔116から内筒部材108の開口端部108aが下部シェル102の外側に露出した状態で内筒部材108内に点火器組立体1が挿入される。そして、内筒部材108の開口端部108a側をかしめることによって、点火器組立体1の点火器カラー3(図2参照)を固定することができる。そしてこの内筒部材108は、点火器組立体1が収容された側の開口端部108aの近傍で、下部シェル102に対して溶接等によって接続されている。
【0020】
燃焼室110内にはガス発生剤105が収容され、その外側にはガス発生剤105の燃焼によって発生した燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集し、また燃焼ガスを冷却するためのフィルタ106が配置されている。フィルタ106は、積層金網等を用いて筒状に形成されており、その外周面はハウジング103の内周面と対向して配置される。フィルタ106の外周面とハウジング103の内周面との間にはガス流路となる間隙112が形成され、これによりフィルタ106の全面利用が実現される。
【0021】
このように構成されるガス発生器100においては、点火器組立体1が作動すると、そ
の近傍に配置された伝火薬111が着火・燃焼し、その火炎が内筒部材108に形成された伝火孔107から燃焼室110内に噴出する。この火炎により燃焼室110内のガス発生剤105が着火・燃焼し、燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスはフィルタ106を通過する間に濾過及び冷却され、ガス放出口104を閉塞するシールテープ114を破って、該ガス放出口104から外部に放出される。
【0022】
次に、図2を用いて本実施形態に係る点火器組立体1について説明する。図2は、本実施形態に係る点火器組立体1の軸方向の断面図である。図2中、点火器組立体1の中心軸BXを一点鎖線で示している。なお、図1に示すように、点火器組立体1をガス発生器100に取り付けた状態において、点火器組立体1の中心軸BXとガス発生器100の中心軸AXは一致している。以降の説明において、点火器組立体1の中心軸BXに沿った方向を点火器組立体の上下方向とし、図2の紙面上方を点火器組立体1の上側とし、その反対側である図2の紙面下方を点火器組立体1の下側とする。
【0023】
図2に示すように、点火器組立体1は、点火器本体2を備える。点火器本体2は、点火薬が充填された着火部21と、着火部21から延在する導電ピン22、23(本願でいう「導電部」の一例)とを有する。点火器本体2は、導電ピン22、23から供給される着火電流により、着火部21内の点火薬を燃焼させる電気点火式である。
【0024】
着火部21は、カップを有し、内部に点火薬を収容する空間が画定される。着火部21は、カップの底部に相当する部位が点火器本体2の作動時における点火薬の燃焼生成物の放出方向側に位置するように配置されている。例えば、点火器組立体1は、図1に示すように、カップの底部に相当する部位が伝火薬111の充填位置に向くようにハウジング103内に配置される。これにより、点火器組立体1の点火器本体2が作動した場合に、点火薬からの燃焼生成物が伝火薬111に向かって放出されて伝火薬111を着火・燃焼させることができる。
【0025】
導電ピン22、23は、互いに電気的絶縁状態が保たれた上で、着火部21内においてブリッジワイヤ(図示せず)が連架されている。着火部21内に充填されている点火薬が導電ピン22、23同士に連架されたブリッジワイヤ(不図示)に接触している。点火薬はブリッジワイヤの発熱によって着火され燃焼し、これによって燃焼生成物が生成される。このように、点火器本体2は、点火薬を燃焼させて、その燃焼生成物を放出する。
【0026】
また、点火器組立体1は、金属製の点火器カラー3を備える。点火器カラー3は、点火器本体2を囲む筒状の周壁部31を有する。周壁部31の中心軸は、点火器組立体1の中心軸BXと一致する。また、周壁部31の内径は、点火器本体2の着火部21の外径よりも大きく形成されている。本実施形態では、周壁部31の中心軸(中心軸BX)に沿った方向において、点火器カラー3の周壁部31は、着火部21の中程より下側から導電ピン22、23の先端側に亘って点火器本体2を囲んでいる。なお、周壁部31は、導電ピン22、23を少なくとも囲むことができる寸法で形成され、導電ピン22、23を少なくとも囲むように配置されていればよい。
【0027】
また、点火器組立体1は、点火器本体2と点火器カラー3との間に介在し、点火器本体2及び点火器カラー3を一体化する樹脂成形体4を備える。樹脂成形体4は、点火器組立体1の製造工程において、樹脂材料を射出成形することで点火器本体2と点火器カラー3との間に連続的に介在するように形成される。樹脂成形体4の樹脂材料には、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を好適に利用することができる。このような樹脂材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が例示される。なお、樹脂
成形体4は、着火部21の周囲全体を覆うように形成されていてもよい。
【0028】
点火器カラー3は、周壁部31における内周部31aに設けられ、樹脂成形体4に埋没されるように周壁部31の径方向内側に向かって凸状に形成された第1支持部32を有する。点火器カラー3は、鋳造によって第1支持部32と一体的に形成されている。また、第1支持部32は、周壁部31の周方向に沿って連続的に形成されている。中心軸BXに沿った方向に見て、第1支持部32は、点火器本体2の着火部21の下方で着火部21に重なる位置まで延在している。すなわち、着火部21の外径が第1支持部32の内径よりも大きい。このような第1支持部32を設けることにより、点火器組立体1は、点火器本体2の着火部21が第1支持部32の下方に通過できないように構成されている。このため、点火器本体2が作動して点火器組立体1の上側(図1に示す内筒部材108内)の圧力と温度が上昇し、樹脂成形体4が軟化するとともに点火器組立体1に対して下向きの力が作用した場合であっても、着火部21が第1支持部32を通過して点火器カラー3の下方から飛び出てしまうのを抑制できる。なお、第1支持部32は、着火部21の通過を抑制できれば、当該周方向に沿って不連続的に複数形成されていてもよい。
【0029】
また、点火器カラー3は、内周部31aのうち、周壁部31の中心軸に沿った方向おいて第1支持部32よりも着火部21から離れた位置に設けられ、樹脂成形体4に埋没されるように周壁部31の径方向内側に向かって凸状に形成された第2支持部33を有する。周壁部31の径方向において、第2支持部33は、第1支持部32よりも短く形成されている。すなわ、第2支持部33は、周壁部31の径方向内側に凸となる長さが第1支持部32よりも短く形成されている。第2支持部33は、点火器カラー3の下側から点火器カラー3を削り取るように金型を押し込むことによって点火器カラー3と一体的に形成される。また、第2支持部33は、周壁部31の周方向に沿って不連続的に複数形成されている。点火器組立体1は、第2支持部33が周壁部31の周方向に沿って不連続的に複数形成されていることによって、樹脂成形体4の樹脂硬化後に点火器カラー3に対して樹脂成形体4が回転することを防止できる。
【0030】
また、導電ピン22、23の下側(先端側)は露出しており、導電ピン22、23に点火器本体2の作動用信号を送信するコネクタ(不図示)を接続可能なコネクタ接続空間5が樹脂成形体4によって形成されている。コネクタ接続空間5を形成する部位の樹脂成形体4は、第1支持部32よりも上側で着火部21を取り囲む部位の樹脂成形体4と一体に形成されている。コネクタ接続空間5にコネクタが挿入されることによって、当該コネクタと導電ピン22、23が接続される。コネクタ接続空間5は、周壁部31の中心軸に沿った方向において第1支持部32よりも導電ピン22、23の先端側に形成されている。第2支持部33は、コネクタ接続空間5に対向する位置に形成されている。点火器組立体1において、コネクタ接続空間5は、周壁部31の径方向や中心軸に沿った方向での所定寸法を確保し易い。このため、本実施形態に係る点火器組立体1は、コネクタ接続空間5により、周壁部31の径方向内側への凸となる第2支持部33を形成するための空間を確保しやすくなる。
【0031】
このように構成された点火器組立体1は、コネクタ接続空間5を形成する樹脂成形体4の部位に厚さの薄い部分が存在する場合に、点火器本体2が作動したときの衝撃で、樹脂成形体4の厚みが最も薄い部分で亀裂が発生し易くなる。図2中、樹脂成形体4の厚みが最も薄い部分を点線で示す仮想線Lで表す。仮に、仮想線Lで示す部位に亀裂が発生すると、仮想線Lを境界として樹脂成形体4は上下に分離する。仮想線Lより上側の樹脂成形体4は、第1支持部32によって支持されているため、点火器組立体1の下方に移動するのが抑制される。また、仮想線Lよりも下側の樹脂成形体4は第1支持部32よりも下方に配置された第2支持部33によって支持されているため、点火器組立体1の下方に移動することが抑制される。これにより、本実施形態に係る点火器組立体1は、仮に樹脂成形
体4に亀裂が生じて分離してしまった場合であっても樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できる。
【0032】
また、図2に示すように、周壁部31の中心軸に沿った方向における第1支持部32の最小寸法をAとし、当該中心軸に沿った方向における第2支持部33の最小寸法をBとする。本実施形態では、第1支持部32の最小寸法Aは、第2支持部33の最小寸法Bより大きい。なお、好ましくは、第1支持部32の最小寸法Aは、第2支持部33の最小寸法B以上である。このような第1支持部32と第2支持部33を点火器カラー3が有することによって、点火器組立体1は、点火器本体2の飛び出しを第1支持部32によって抑制するとともに、樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを第2支持部33によって抑制できる。特に、点火器本体2を構成する材質の大部分が金属であり、点火器本体2の飛び出し抑制には第1支持部32の最小寸法を厚くして変形などを生じさせないようにする必要がある。第1支持部32の最小寸法Aを第2支持部33の最小寸法B以上とすることで、点火器本体2の飛び出し抑制の効果を高めることができる。
【0033】
また、上記特許文献1に開示されたガス発生器では、ハウジング内の圧力上昇時に金属製の固定部材が変形してしまうと、樹脂成形部に亀裂が生じ、樹脂成部の一部がガス発
生器の外部に飛び出してしまう。
【0034】
一方、本実施形態に係る点火器組立体は、樹脂成形体4に亀裂が生じた場合であっても樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できる。このように、本実施形態に係る点火器組立体1によれば、耐圧性能を向上できる。
【0035】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る点火器組立体1について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る点火器組立体1の軸方向の断面図である。なお、図3において、上述した実施形態1と実質的に同一の構成については同じ符号を付してその説明は省略する。図3に示す本実施形態に係る点火器組立体1は、図2に示す上記実施形態1に係る点火器組立体1に対して第2支持部の構成が異なっている以外は、基本的に同じ構造を有している。本実施形態に係る点火器組立体1の点火器カラー3は、内部に樹脂成形体4が充填されるように周壁部31の径方向外側に向かって凹状に形成された第2支持部34を有する。例えば、第2支持部34は、点火器カラー3の内周部31a側からドリルによって形成された孔である。
【0036】
本実施形態に係る点火器組立体1において、仮想線Lよりも下側の樹脂成形体4は第1支持部32よりも下方に配置された第2支持部34によって支持されているこれにより、本実施形態に係る点火器組立体1は、仮に樹脂成形体4において仮想線Lに沿って亀裂が生じて分離してしまった場合であっても樹脂成形体4の一部(コネクタ接続空間を形成する部位の樹脂成形体4)が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できるため、耐圧性能を向上できる。
【0037】
また、図3に示すように、周壁部31の中心軸に沿った方向における第1支持部32の最小寸法をAとし、当該中心軸に沿った方向における第2支持部34の最小寸法をBとする。本実施形態では、第1支持部32の最小寸法Aは、第2支持部34の最小寸法Bより大きい。なお、好ましくは、第1支持部32の最小寸法Aは、第2支持部34の最小寸法B以上である。このような第1支持部32と第2支持部34を点火器カラー3が有することによって、点火器組立体1は、図2に示す上記実施形態1に係る点火器組立体1と同様に点火器本体2の飛び出しを第1支持部32によって抑制するとともに、樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを第2支持部34によって抑制できる。
【0038】
なお、凹状に形成された第2支持部34は、周壁部31を貫通する孔であってもよい。貫通孔は、点火器カラー3の周壁部31にパンチによって形成されてもよい。点火器組立体1は、貫通孔で構成される第2支持部34によっても樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できる。なお、非貫通の孔または貫通孔のいずれの構成においても、第2支持部34は周壁部31の周方向に沿って不連続的に複数形成されていてもよい。これによって、樹脂成形体4の樹脂硬化後に点火器カラー3に対して樹脂成形体4が回転することを防止できる。
【0039】
<変形例1>
次に本実施形態の変形例1に係る点火器組立体1について図4を用いて説明する。図4は、本変形例に係る点火器組立体1の軸方向の断面図である。図4に示すように、本変形例では、第2支持部34が周壁部31を貫通する貫通孔によって構成されている。そして、樹脂成形体4は周壁部31の外周部31bから径方向の外側に三角形状に突出した突出部40を有する。突出部40は、図1に示すガス発生器100の内筒部材108に挿入した後の開口端部108aをかしめる工程時に、点火器組立体1が内筒部材108に対して回転しないように摩擦力を高める機能を有する。本変形例では、突部40が点火器組立体1の最大径を形成しており、点火器組立体1を内筒部材108に挿入しても金属製の点火器カラーが内筒部材108と干渉するのを防ぎ、ガス発生器100に対する点火器組立体1の回転防止や保持を充分に行える。
【0040】
<変形例2>
次に本実施形態の変形例に係る点火器組立体1について図5を用いて説明する。図5は、本変形例に係る点火器組立体1の軸方向の断面図である。図5に示すように、本変形例では、第2支持部34が周壁部31を貫通する貫通孔によって構成されている。そして、樹脂成形体4は周壁部31の外周部31bから径方向の外側に突出した突出部41を有する。突出部41は、外周部31bの全体を覆うように形成されている。また、突出部41は、点火器組立体1が内筒部材108に挿入し易くするために、上側の径が小さくなるテーパー形状を有している。突出部41は、変形例1における突出部40と同様に、図1に示すガス発生器100の内筒部材108に挿入した後の開口端部108aをかしめる工程時に、点火器組立体1が内筒部材108に対して回転しないように摩擦力を高める機能を有する。本変形例では、突出部41が点火器組立体1の最大径を形成しており、点火器
組立体1を内筒部材108に挿入しても金属製の点火器カラーが内筒部材108と干渉するのを防ぎ、ガス発生器100に対する点火器組立体1の回転防止や保持を充分に行える。
【0041】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るガス発生器100について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るガス発生器100の軸方向の断面図である。なお、図6において、上述した実施形態1と実質的に同一の構成については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0042】
本実施形態に係るガス発生器100は、上述した実施形態1と同様に、ハウジング103が上部シェル101(本願でいう「第1シェル」の一例)と下部シェル120(本願でいう「第2シェル」の一例)を組み合わせて形成されている。下部シェル120は、実施形態1における下部シェル102と同様に、金属で形成され、有底略円筒状を有している。
【0043】
本実施形態では、下部シェル120の一部が点火器組立体1の点火器カラーである。図6に示すように、下部シェル120は、取付孔116から中心軸AXの上側(上部シェル101側)に延在するように点火器カラー130が設けられている。点火器カラー130は、内筒部材108の内側に嵌る寸法で形成されており、内筒部材108の内周面に溶接
等によって取り付けられてる。これにより、内筒部材108が点火器カラー130に対して固定される。なお、内筒部材108を点火器カラー130にかしめや圧入によって内筒部材108が点火器カラー130に固定されてもよい。また、下部シェル120の一部が点火器カラー130である構成においては、点火器組立体1は、樹脂成形体4によって点火器カラー130に固定されている。
【0044】
本実施形態では、実施形態1と同様に、点火器カラー130の周壁部131における内周部に設けられ、樹脂成形体4に埋没されるように周壁部131の上端において径方向内側に向かって凸状に形成された第1支持部132を有する。第1支持部132は、実施形態1における第1支持部32と同様な形状や機能を有する。
【0045】
また、点火器カラー130は、当該内周部のうち、周壁部131の中心軸に沿った方向おいて第1支持部132よりも着火部から離れた位置に設けられ、樹脂成形体4に埋没されるように周壁部131の径方向内側に向かって凸状に形成された第2支持部133を有する。第2支持部133は、点火器カラー130と別体で設けられ、溶接やスナップフィットによって周壁部131に固定されている。点火器カラー130に第2支持部133が固定された状態において、樹脂成形体4が射出成形されることによって第2支持部133が樹脂成形体4に埋設される。第2支持部133は、実施形態1における第2支持部33と同様に機能する。
【0046】
なお、第2支持部133は、実施形態1における第2支持部33と同様に点火器カラー130と一体的に形成されていてもよいし、実施形態2における第2支持部34と同様に内部に樹脂成形体4が充填されるように周壁部131の径方向外側に向かって凹状に形成された孔であったり、貫通孔であってもよい。
【0047】
このように、下部シェル120の一部を点火器カラー130とした構成においても、点火器カラー130に第1支持部及び第2支持部を設けることができる。このため、本実施形態に係るガス発生器100によれば、樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できるため、耐圧性能を向上できる。
【0048】
また、本実施形態においても周壁部131の中心軸に沿った方向における第1支持部132の最小寸法は、第2支持部133の最小寸法より大きい。なお、好ましくは、第1支持部132の最小寸法は、第2支持部133の最小寸法以上である。このような第1支持部32と第2支持部33を下部シェル120の一部である点火器カラー130が有することによって、点火器組立体1は、樹脂成形体4の一部が点火器組立体1の外部に飛び出でてしまうのを抑制できる。
【0049】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。例えば、上記実施形態におけるガス発生器は、高さ方向の長さが上面視における外径よりも短いディスク形状を有するものであったが、例えば、軸方向の長さが上面視における外径よりも長いシリンダ型形状を有するガス発生器に本開示の技術を適用してもよい。また、上記実施形態におけるガス発生器はガス源としてガス発生剤を備えていたがこれに限られず、ガス発生器はガス源として圧縮ガスを備えていてもよい。圧縮ガスが充填されたガス発生器においても、上記実施形態の点火器組立体を用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態において、第2支持部33、34、133は、点火器カラーの周壁部の周方向に沿って連続的に形成されていてもよい。また、上記実施形態3において、上部シェル101の一部が点火器カラー130であり、点火器組立体1は、樹脂成形体4に
よって一部が点火器カラー130である上部シェル101に固定されていてもよい。
【0051】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :点火器組立体
2 :点火器本体
3 :点火器カラー
4 :樹脂成形体
5 :コネクタ接続空間
21 :着火部
22 :導電ピン
23 :導電ピン
31 :周壁部
31a :内周部
31b :外周部
32 :第1支持部
33 :第2支持部
100 :ガス発生器
101 :上部シェル
102 :下部シェル
103 :ハウジング
104 :ガス放出口
105 :ガス発生剤
106 :フィルタ
107 :伝火孔
108 :内筒部材
109 :空間
110 :燃焼室
111 :伝火薬
112 :間隙
113 :シールテープ
114 :シールテープ
115 :アンダープレート
116 :取付孔
120 :下部シェル
130 :点火器カラー
131 :周壁部
132 :第1支持部
133 :第2支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6