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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】構造部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 33/00 20060101AFI20240130BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B23K33/00 Z
B23K20/12 360
B23K20/12 340
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020091867
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021186817
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】今村 美速
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真三樹
(72)【発明者】
【氏名】泊 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 智恵子
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/016417(WO,A1)
【文献】実開昭62-188673(JP,U)
【文献】特開2002-346767(JP,A)
【文献】特開昭62-279079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 33/00
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の構造部材の被接合面に沿って摩擦撹拌加工工具を回転させながら移動させる摩擦撹拌加工を施すことにより、前記被接合面に沿ってフランジを成形するフランジ成形工程と、
第一の構造部材の被接合面に摩擦撹拌加工を施すことにより、前記被接合面にフランジを成形するフランジ成形工程と、
前記第一の構造部材に対して第二の構造部材を、前記摩擦撹拌加工によって前記被接合面に形成された改質部に対向させながら少なくとも一部を前記フランジに当接させて位置決めする位置決め工程と、
前記フランジを接合材として前記第一の構造部材に対して前記第二の構造部材を接合させる接合工程と、
を含む、
構造部材の接合方法。
【請求項2】
前記フランジ成形工程において、予め前記第一の構造部材を治具に装着させておく、
請求項1に記載の構造部材の接合方法。
【請求項3】
前記接合工程において、前記第一の構造部材と前記第二の構造部材とを溶接して接合させる、
請求項1または請求項2に記載の構造部材の接合方法。
【請求項4】
前記接合工程において、前記第一の構造部材と前記第二の構造部材とを摩擦撹拌接合させる、
請求項1または請求項2に記載の構造部材の接合方法。
【請求項5】
前記第一の構造部材及び前記第二の構造部材は、それぞれ押出材であり、
前記押出材からなる前記第一の構造部材の側面を前記被接合面として前記フランジを成形し、前記押出材からなる前記第二の構造部材の端部を前記フランジに当接させて位置決めして接合させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の構造部材の接合方法。
【請求項6】
前記第一の構造部材は、押出材であり、前記第二の構造部材は、面板であり、
前記押出材からなる前記第一の構造部材の側面を前記被接合面として前記フランジを成形し、前記面板からなる前記第二の構造部材の縁部を前記フランジに当接させて位置決めして接合させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の構造部材の接合方法。
【請求項7】
前記フランジ成形工程において前記被接合面に前記フランジを成形する前記摩擦撹拌加工工具は、
前記被接合面に押圧されて前記被接合面に沿って移動されることにより、移動方向に沿って前記第一の構造部材を摩擦撹拌させる回転ツールと、
前記回転ツールが挿通される挿通孔を有し、前記被接合面に当接されて前記回転ツールとともに前記移動方向に移動される当接ブロックと、
を備え、
前記回転ツールは、
先端に設けられた小径のピン部と、
前記ピン部の根元に設けられ、前記ピン部によって摩擦撹拌されて塑性流動する前記被接合面から生じた塑性流動物を外周側へ送り出すショルダ部と、
を有し、
前記当接ブロックは、
前記被接合面に当接される当接面と、
前記当接面に形成され、前記挿通孔の周方向の一か所に連通して前記回転ツールの回転方向前方側へ向かう接線方向に延在する一つのフランジ成形溝と、
を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の構造部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力により駆動する車両(電気自動車、ハイブリッド自動車等を含む)の開発が、進展している。このような車両に搭載する電池システムは、一般的に、多数のバッテリー(電池、電池セル)を所定のフレーム等により構成した部材に収納した構成を有している。
【0003】
特許文献1は、車両水平方向に並んで配置され、車体下部の骨格の一部を構成する複数の車体骨格部材と、各々が複数の電池セルを含んで構成されると共に、各々が複数の車体骨格部材間に直接又は別部材を介して挟まることで車体に拘束された複数の電池スタックと、を備えた電池搭載構造を開示している。
【0004】
特許文献2は、トレイベースプレートと、トレイベースプレートの周囲に配置された取付ビームとを含み、動力バッテリーを搭載可能な自動車トレイコンポーネントであって、トレイベースプレートが、上プレート部、中プレート部、及び下プレート部を含み、冷却空洞が、上プレート部と中プレート部との間に配置され、緩衝空洞が、中プレート部と下プレート部との間に配置される構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-202946号公報
【文献】特表2019-531955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1,2に記載のバッテリーを収容する構造体は、押出材や板材などの構造部材同士を高い精度で接合して作製することが望まれるが、現状の技術においては、構造部材自体の歪み等により、高い精度での接合が困難であった。
【0007】
そこで本発明は、構造部材同士を高精度に接合させることが可能な構造部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記構成からなる。
第一の構造部材の被接合面に摩擦撹拌加工を施すことにより、前記被接合面にフランジを成形するフランジ成形工程と、
前記第一の構造部材に対して第二の構造部材を、前記摩擦撹拌加工によって前記被接合面に形成された改質部に対向させながら少なくとも一部を前記フランジに当接させて位置決めする位置決め工程と、
前記フランジを接合材として前記第一の構造部材に対して前記第二の構造部材を接合させる接合工程と、
を含む、
構造部材の接合方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構造部材の接合方法によれば、構造部材同士を高精度に接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る接合方法で作製されるバッテリートレイの斜視図である。
図2】バッテリートレイを構成するフレーム組立体及びフロアパネルの斜視図である。
図3】フレーム組立体を構成するサイドメンバとクロスメンバとの接合方法における治具配置工程を説明する斜視図である。
図4】サイドメンバに対するクロスメンバの接合方法における各工程を説明する図であって、(A)はフランジ成形工程を示すサイドメンバの平面図、(B)は位置決め工程を示すクロスメンバを断面視したサイドメンバの平面図、(C)は接合工程を示すクロスメンバを断面視したサイドメンバの平面図である。
図5】サイドメンバに対するクロスメンバの接合方法における各工程を説明する図であって、(A)は図4の(A)におけるA-A断面図、(B)は図4の(B)におけるB-B断面図、(C)は図4の(C)におけるC-C断面図である。
図6】サイドメンバの被接合面に対するクロスメンバの端部の位置決め状態を示す位置決め箇所の断面図である。
図7】サイドメンバの被接合面に対するクロスメンバの端部の位置決め状態を示す位置決め箇所の断面図である。
図8】フランジ成形工程に用いられる摩擦撹拌加工装置を示す斜視図である。
図9】摩擦撹拌加工装置の先端側から視た斜視図である。
図10】摩擦撹拌加工装置の軸方向に沿う断面図である。
図11】フレーム組立体とフロアパネルとの接合方法における治具配置工程を説明する斜視図である。
図12】フレーム組立体に対するフロアパネルの接合方法における各工程を説明する図であって、(A)はフランジ成形工程を示すフレーム組立体の断面図、(B)は位置決め工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの位置決め箇所の断面図、(C)は接合工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの接合箇所の断面図である。
図13】フレーム組立体に対するフロアパネルの他の接合例を説明する図であって、(A)はフランジ成形工程を示すフレーム組立体の断面図、(B)は位置決め工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの位置決め箇所の断面図、(C)は接合工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの接合箇所の断面図である。
図14】フレーム組立体に対するフロアパネルの他の接合例を説明する図であって、(A)はフランジ成形工程を示すフレーム組立体の断面図、(B)は位置決め工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの位置決め箇所の断面図、(C)は接合工程を示すフレーム組立体及びフロアパネルの接合箇所の断面図である。
図15】参考例1を説明するサイドメンバに対するクロスメンバの位置決め箇所の断面図である。
図16】参考例2を説明するフレーム組立体に対するフロアパネルの位置決め箇所の断面図である。
図17】サイドメンバに対する摩擦撹拌加工のパターンを示す図であって、(A)~(K)は、それぞれ摩擦撹拌加工を施したサイドメンバの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る接合方法で作製されるバッテリートレイの斜視図である。図2は、バッテリートレイを構成するフレーム組立体及びフロアパネルの斜視図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る構造部材の接合方法は、例えば、車載用のバッテリートレイ1などの構造体を作製する際に採用される。バッテリートレイ1は、複数のバッテリーを収納可能であって、電力により駆動する車両(電気自動車、ハイブリッド自動車等を含む)の車体フロアの下側に配置されて車体に固定される。
【0013】
バッテリートレイ1は、外枠を形成するフレーム組立体3と、底面を形成するフロアパネル5とを備えている。バッテリートレイ1は、フロアパネル5を下側に配置した状態で車体に取り付けられる。バッテリートレイ1には、フロアパネル5の奥側であって、フレーム組立体3で取り囲まれた空間に、複数のバッテリー(図示略)が収納される。
【0014】
フレーム組立体3は、サイドメンバ(構造部材)10と、クロスメンバ(構造部材)20とを備えている。サイドメンバ10は、互いに間隔をあけて平行に配置されている。クロスメンバ20は、その両端が、それぞれのサイドメンバ10の一側面に接合されている。
【0015】
サイドメンバ10及びクロスメンバ20は、押出成形により成形された部材である。具体的には、サイドメンバ10及びクロスメンバ20は、厚みが2~5mm程度の矩形の中空断面を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金を素材とした中空押出形材から構成される。これらのサイドメンバ10及びクロスメンバ20の中空断面内部には縦リブが形成されていても良い。
【0016】
サイドメンバ10及びクロスメンバ20として使用されるアルミニウム合金の種類は、強度が優れて、より薄肉化が可能である点で、JIS乃至AAで言う5000系、6000系、7000系などのアルミ合金が適用される。これらアルミニウム合金の中空押出形材は、鋳造(DC鋳造法や連続鋳造法)、均質化熱処理、熱間押出、溶体化および焼入れ処理、必要により人工時効処理、などの調質処理を適宜組み合わせて製造される。サイドメンバ10及びクロスメンバ20は、アルミニウム合金による押出成形により製造することにより、軽量化を図ることができる。
【0017】
フロアパネル5は、バッテリートレイ1の底面を構成する部材であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から形成された板材である。フロアパネル5は、その周縁部が、フレーム組立体3を構成するサイドメンバ10の側面及び外側に配置されたクロスメンバ20の側面に接合されている。
【0018】
次に、本実施形態に係る構造部材の接合方法について説明する。
まず、サイドメンバ10にクロスメンバ20を接合させる場合について説明する。
図3は、フレーム組立体を構成するサイドメンバとクロスメンバとの接合方法における治具配置工程を説明する斜視図である。図4及び図5は、サイドメンバに対するクロスメンバの接合方法における各工程を説明する図である。図6及び図7は、サイドメンバの被接合面に対するクロスメンバの端部の位置決め状態を示す位置決め箇所の断面図である。
【0019】
(治具配置工程)
図3に示すように、サイドメンバ10を治具30に配置させる。この治具30は、例えば、ステンレス等によって形成されたもので、平板部31と、平板部31の両側部に設けられた側壁部33とを有している。サイドメンバ11は、治具30の両側壁部33に沿うように配置させる。
【0020】
(フランジ成形工程)
図4の(A)及び図5の(A)に示すように、サイドメンバ10におけるクロスメンバ20を接合する一側面を被接合面41とし、この被接合面41にフランジ43を成形する。このフランジ43は、サイドメンバ10の被接合面41におけるクロスメンバ20を接合させる接合位置に摩擦撹拌加工工具100を用いて摩擦攪拌プロセス(FSP:Friction Stir Processing)による摩擦撹拌加工を施すことによって成形する。具体的には、サイドメンバ10の被接合面41におけるクロスメンバ20の接合位置に沿って摩擦撹拌加工工具100を回転させながら移動させることによって摩擦撹拌加工する。すると、サイドメンバ10の被接合面41には、摩擦撹拌加工工具100によって摩擦撹拌されて塑性流動が生じて改質部45が形成されるとともに、移動する摩擦撹拌加工工具100のリトリーティングサイドに、サイドメンバ10の塑性流動物が隆起したフランジ43が形成される。
【0021】
(位置決め工程)
図4の(B)及び図5の(B)に示すように、フランジ43を成形したサイドメンバ10の被接合面41に、クロスメンバ20の端部47を位置決めする。具体的には、図6に示すように、クロスメンバ20の端部47をサイドメンバ10の被接合面41に宛がい、クロスメンバ20の端部47における外周面にフランジ43を当接させる。このようにすると、クロスメンバ20は、その端面が被接合面41に形成された改質部45に対向されるとともに、フランジ43によってサイドメンバ10の被接合面41に位置決めされる。このときクロスメンバ20の端面を改質部45に当接させる。なお、フランジ43は、被接合面41から突出している。したがって、図7に示すように、クロスメンバ20の端面が改質部45から僅かに離間していても、外周面にフランジ43が当接されることで位置決めされる。
【0022】
(接合工程)
図4の(C)及び図5の(C)に示すように、サイドメンバ10の被接合面41とクロスメンバ20の端部47との隅部を接合させる。すると、サイドメンバ10の被接合面41とクロスメンバ20の端部47との隅部に接合部49が形成され、サイドメンバ10に対してクロスメンバ20が強固に接合される。
【0023】
この接合は、例えば、ミグ、ティグあるいはレーザなどによる溶接で接合してもよく、または、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)によって接合してもよい。溶接によって接合させる場合、フランジ43は、溶加材となり、摩擦撹拌接合によって接合させる場合、フランジ43は、塑性流動物となる。つまり、いずれの接合の場合においても、フランジ43は、接合部49を形成する接合材として用いられることとなる。
【0024】
ここで、フランジ43の成形に好適な摩擦撹拌加工工具100について説明する。
図8は、摩擦撹拌加工工具によってフランジを成形している状態を示す斜視図である。図9は、摩擦撹拌加工工具の斜視図である。図10は、摩擦撹拌加工工具の軸方向に沿う断面図である。
【0025】
図8図10に示すように、摩擦撹拌加工工具100は、図示しない摩擦撹拌加工装置に装着されて用いられる。摩擦撹拌加工工具100は、回転ツール111と、当接ブロック131とを備えている。
【0026】
回転ツール111は、棒状に形成されており、一方向である回転方向αに回転される。回転ツール111は、本体部113と、この本体部113の先端に形成された小径のピン部115とを有している。このピン部115には、その外周に、螺旋状突起117が形成されている。
【0027】
また、回転ツール111は、小径のピン部115の根元部分にショルダ部121を有している。ショルダ部121は、本体部113よりも小径に形成され、ピン部115よりも大径に形成されている。ショルダ部121は、ピン部115との間の面が、ピン部115から径方向外方へ向かって次第に先端側へ傾斜されている。これにより、このショルダ部121には、ピン部115の根元部分に、凹みが形成され、この凹みが保持凹部123とされている。
【0028】
当接ブロック131は、略立方体形状に形成されている。この当接ブロック131は、表裏に貫通する挿通孔133を有している。この挿通孔133には、当接ブロック131の上方側から回転ツール111が挿し込まれる。挿通孔133には、下縁に、内周方向へ環状に張り出す環状係止部135が形成されている。この環状係止部135は、その内径が、回転ツール111のショルダ部121の外径よりも僅かに大きくされている。
【0029】
当接ブロック131は、その下面が当接面141とされており、この当接面141は、被接合面41に対する加工時に、被接合面41に当接される。当接ブロック131には、当接面141に、一つのフランジ成形溝143が形成されている。このフランジ成形溝143は、直線状に形成されている。このフランジ成形溝143は、一端が挿通孔133の周方向の一か所に連通され、他端が当接ブロック131の一側面に達している。このフランジ成形溝143は、回転ツール111の回転方向αの前方側へ向かう接線方向に延在されている。そして、このフランジ成形溝143が挿通孔133に連通されることにより、環状係止部135には、その周方向の一か所に切欠き部137が形成されている。
【0030】
この当接ブロック131の挿通孔133に、その上方から挿し込まれた回転ツール111は、ショルダ部121が環状係止部135の内周側に通され、本体部113とショルダ部121との段部が環状係止部135に係止される。これにより、回転ツール111は、当接ブロック131の当接面141からピン部115及びショルダ部121の一部が突出された状態に配置される。この当接ブロック131は、図示しない固定手段によって摩擦撹拌加工装置に固定される。これにより、摩擦撹拌加工工具100は、固定された当接ブロック131に対して回転ツール111だけが回転方向αに回転される。
【0031】
この摩擦撹拌加工工具100によって、被接合面41にフランジ43を成形するには、まず、フランジ成形溝143の延在方向が回転方向αの前方側へ向かう接線方向となるように回転ツール111を回転させる。次に、摩擦撹拌加工工具100をサイドメンバ10の被接合面41へ向かって移動させ、回転させた回転ツール111を被接合面41に押圧する。これにより、回転ツール111のピン部115を被接合面41に食い込ませ、さらに、当接ブロック131の当接面141を被接合面41に当接させる。
【0032】
この状態において、サイドメンバ10に対して摩擦撹拌加工工具100を、フランジ成形溝143の延在方向と反対方向へ移動させる。すると、サイドメンバ10の被接合面41には、摩擦撹拌加工工具100によって摩擦撹拌されて塑性流動が生じて改質部45が形成されるとともに、移動する摩擦撹拌加工工具100のリトリーティングサイドに、サイドメンバ10の塑性流動物が隆起したフランジ43が形成される。
【0033】
この摩擦撹拌加工工具100を用いれば、例えば、サイドメンバ10の側面からなる被接合面41の中央部分の任意の位置において、位置決め用として好適な形状のフランジ43を容易に成形することができる。したがって、被接合面41に成形したフランジ43にクロスメンバ20の端部を位置決めして接合させて作製するフレーム組立体3等の構造体の設計の自由度を高めることができる。
【0034】
また、回転ツール111には、ピン部115の外周に螺旋状突起117が形成されている。したがって、螺旋状突起117によって塑性流動物をより良好に流動させることができ、フランジ成形溝143においてフランジ43をより円滑に成形させることができる。
【0035】
しかも、回転ツール111は、ショルダ部121に、塑性流動物を保持する保持凹部123を有している。これにより、ピン部115によって塑性流動されたサイドメンバ10の塑性流動物がショルダ部121の保持凹部123で一旦保持されてフランジ成形溝143へ送り出される。したがって、フランジ成形溝143へ塑性流動物を安定的に送り出すことができ、長手方向に均一な形状のフランジ43をサイドメンバ10の被接合面41に成形することができる。
【0036】
次に、フレーム組立体3にフロアパネル5を接合させる場合について説明する。
図11は、フレーム組立体とフロアパネルとの接合方法における治具配置工程を説明する斜視図である。図12は、フレーム組立体に対するフロアパネルの接合方法における各工程を説明する図である。
【0037】
(治具配置工程)
図11に示すように、サイドメンバ10にクロスメンバ20を接合させたフレーム組立体3を治具30に配置させる。なお、フレーム組立体3の作製に引き続いてフロアパネル5を接合させる場合は、フレーム組立体3は治具30に配置されていることとなる。
【0038】
(フランジ成形工程)
図12の(A)に示すように、フレーム組立体3を構成するサイドメンバ10及びクロスメンバ20からなる外枠部分の側面を被接合面51とし、この被接合面51におけるフロアパネル5を接合させる接合位置に、摩擦撹拌加工工具100を用いて摩擦撹拌加工を施すことによってフランジ53を成形する。フレーム組立体3における接合位置は、このフレーム組立体3のサイドメンバ10及びクロスメンバ20からなる外枠部分における内縁部分となる。つまり、この外枠部分における内縁部分に沿って摩擦撹拌加工工具100を回転させながら移動させることによって摩擦撹拌加工する。すると、フレーム組立体3の被接合面51には、摩擦撹拌加工工具100によって摩擦撹拌されて塑性流動が生じて改質部55が形成されるとともに、移動する摩擦撹拌加工工具100のリトリーティングサイドに、フレーム組立体3の塑性流動物が隆起したフランジ53が成形される。このとき、摩擦撹拌加工工具100が押し当てられて加圧される位置には、フレーム組立体3を構成するサイドメンバ10またはクロスメンバ20の内側の側壁52が配置されることとなる。したがって、摩擦撹拌加工工具100からの押圧力が側壁52によって受け止められ、加圧による被接合面51の変形が抑制される。なお、サイドメンバ10及びクロスメンバ20の中空断面内部に縦リブが形成されている場合は、その上部に改質部55を形成するとともに、移動する摩擦撹拌加工工具100のリトリーティングサイドに、フランジ53を成形しても良い。このときも、前述した回転ツール111と当接ブロック131とを有する摩擦撹拌加工工具100を用いるのが好ましい。
【0039】
(位置決め工程)
図12の(B)に示すように、フランジ53を成形したフレーム組立体3の被接合面51にフロアパネル5の縁部57を位置決めする。具体的には、フレーム組立体3にフロアパネル5を重ね合わせ、フロアパネル5の縁部57をフレーム組立体3の被接合面51に宛がってフランジ53に当接させる。このようにすると、フロアパネル5は、その縁部57が被接合面51に形成された改質部55に対向されるとともに、フランジ53によってフレーム組立体3の被接合面51に位置決めされる。
【0040】
(接合工程)
図12の(C)に示すように、フレーム組立体3の被接合面51とフロアパネル5の縁部57との隅部を接合させる。すると、フレーム組立体3の被接合面51とフロアパネル5の縁部57との隅部に接合部59が形成され、フレーム組立体3に対してフロアパネル5が強固に接合される。
【0041】
この接合も、例えば、ミグ、ティグあるいはレーザなどによる溶接で接合してもよく、または、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)によって接合してもよい。溶接によって接合させる場合、フランジ53は、溶加材となり、摩擦撹拌接合によって接合させる場合、フランジ53は、塑性流動物となる。つまり、いずれの接合の場合においても、フランジ53は、接合部59を形成する接合材として用いられることとなる。なお、図12の(C)では、溶接によって接合した場合の断面形状を示している。
【0042】
次に、フレーム組立体3の外枠部分にフロアパネル5を接合させる他の例を説明する。
図13及び図14は、フレーム組立体に対するフロアパネルの他の接合例をそれぞれ説明する工程図である。
【0043】
(フレーム組立体3の外枠部分における外縁部分を接合位置とする場合)
図13の(A)に示すように、治具30に配置させたフレーム組立体3の外枠部分の側面からなる被接合面51に摩擦撹拌加工工具100を回転させながら押し当てて移動させる。これにより、外枠部分の外縁に沿ってフランジ53を成形させる(フランジ成形工程)。このとき、摩擦撹拌加工工具100が押し当てられて加圧される外枠部分の外縁位置には、フレーム組立体3を構成するサイドメンバ10またはクロスメンバ20の外側の側壁52が配置されることとなる。したがって、摩擦撹拌加工工具100からの押圧力が側壁52によって受け止められ、加圧による被接合面51の変形が抑制される。
【0044】
その後、図13の(B)に示すように、フレーム組立体3にフロアパネル5を重ね合わせ、フロアパネル5の縁部57をフレーム組立体3の被接合面51に宛がってフランジ53に当接させる(位置決め工程)。そして、図13の(C)に示すように、フレーム組立体3の被接合面51とフロアパネル5の縁部57との隅部を接合させる(接合工程)。
【0045】
(サイドメンバ10及びクロスメンバ20の中空断面内部に縦リブを有する場合)
図14の(A)に示すように、治具30に配置させたフレーム組立体3の外枠部分の側面からなる被接合面51に摩擦撹拌加工工具100を回転させながら押し当てて移動させる。これにより、外枠部分の内縁と外縁との間にフランジ53を成形させる(フランジ成形工程)。このとき、摩擦撹拌加工工具100が押し当てられて加圧される内縁と外縁との間の中間位置には、サイドメンバ10及びクロスメンバ20の中空断面内部に設けられた縦リブ54が配置されることとなる。したがって、摩擦撹拌加工工具100からの押圧力が縦リブ54によって受け止められ、加圧による被接合面51の変形が抑制される。このとき、少なくとも改質部55の一部が縦リブ54の上部に形成されるように摩擦撹拌加工工具100の少なくとも一部が縦リブ54の上部にかかるように配置されていれば良い。なお、改質部55を形成する摩擦撹拌加工工具100は、縦リブ54の上部における縦リブ54の全幅に配置されているのが好ましく、中心位置が縦リブ54の幅方向の中央に配置されているのがより好ましい。
【0046】
その後、図14の(B)に示すように、フレーム組立体3にフロアパネル5を重ね合わせ、フロアパネル5の縁部57をフレーム組立体3の被接合面51に宛がってフランジ53に当接させる(位置決め工程)。そして、図14の(C)に示すように、フレーム組立体3の被接合面51とフロアパネル5の縁部57との隅部を接合させる(接合工程)。
【0047】
ここで、参考例について説明する。
図15は、参考例1を説明するサイドメンバに対するクロスメンバの位置決め箇所の断面図である。図16は、参考例2を説明するフレーム組立体に対するフロアパネルの位置決め箇所の断面図である。
【0048】
図15に示すように、この参考例1では、サイドメンバ10の被接合面41に溝部61を形成し、この溝部61にクロスメンバ20の端部47を配置させる。そして、このクロスメンバ20の端部47における外周面を溝部61の外側の内面に当接させて位置決めする。
【0049】
図16に示すように、この参考例2では、フレーム組立体3の被接合面51に切欠き部65を形成し、この切欠き部65にフロアパネル5の縁部57を配置させる。そして、このフロアパネル5の縁部57を切欠き部65の段差部分に当接させて位置決めする。
【0050】
これらの参考例1,2では、いずれも被接合面41,51に対して切削加工によって溝部61及び切欠き部65を形成する。このため、被接合面41,51の肉厚が薄くなり、強度低下を招いてしまう。また、肉厚が薄くなることによる強度低下を抑えるためには、サイドメンバ10及びクロスメンバ20の肉厚を予め厚くしておかなければならず、重量が嵩んでしまう。しかも、これらの参考例1,2では、接合工程で溶接によって接合させる際に、溶加材が必要となり、コストアップを招いてしまう。
【0051】
以上、説明したよう、本実施形態に係る構造部材の接合方法によれば、サイドメンバ10及びフレーム組立体3からなる第一の構造部材の被接合面41,51に摩擦撹拌加工によって成形したフランジ43,53に、クロスメンバ20及びフロアパネル5からなる第二の構造体を当接させて位置決めして接合する。これにより、第一の構造部材及び第二の構造部材を高い精度で接合し、フレーム組立体3やバッテリートレイ1などの構造体を作製することができる。
【0052】
また、参考例1,2のように、切削加工によって被接合面41,51に位置決め用の溝部61や切欠き部65を形成する場合と比べ、被接合面41,51が薄肉化されて強度低下を招くようなことなく接合させることができる。
【0053】
しかも、摩擦撹拌加工によって形成される被接合面41,51の改質部45,55は靭性が高められる。したがって、この改質部45,55にクロスメンバ20やフロアパネル5を対向させて接合させることにより、衝撃が付与された際のダメージを抑制できる。これにより、耐衝撃性にすぐれた構造体を作製することができる。
【0054】
さらに、サイドメンバ10及びフレーム組立体3からなる第一の構造部材を治具30に装着した状態で、被接合面41,51に摩擦撹拌加工工具100によってフランジ43,53を成形するので、第一の構造部材に捻じれや歪みがあったとしても、高精度にフランジ43,53を成形してクロスメンバ20及びフロアパネル5からなる第二の構造部材との接合精度を高めることができる。
【0055】
また、接合工程において、サイドメンバ10及びフレーム組立体3からなる第一の構造部材とクロスメンバ20及びフロアパネル5からなる第二の構造部材とを溶接して接合させる場合では、位置決め用のフランジ43,53を溶加材として溶接することができる。したがって、別個の溶加材を用いずに容易にかつ低コストで溶接することができる。
【0056】
さらに、接合工程において、サイドメンバ10及びフレーム組立体3からなる第一の構造部材とクロスメンバ20及びフロアパネル5からなる第二の構造部材とを摩擦撹拌接合させる場合では、位置決め用のフランジ43,53が塑性流動物となって良好に接合される。しかも、フランジ成形工程と接合工程とを摩擦撹拌加工で行うことができるので、摩擦撹拌加工工具を交換するだけでフランジ成形工程及び接合工程の作業を同一設備によって容易に行うことができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、サイドメンバ10に対してクロスメンバ20を接合させる際に、サイドメンバ10の側面における幅方向にわたって矩形状に摩擦撹拌加工を行ってフランジ43を形成したが、摩擦撹拌加工は、接合するクロスメンバ20の断面形状等に応じたパターンで加工される。
【0058】
次に、サイドメンバ10にフランジ43を成形する際の摩擦撹拌加工のパターンについて説明する。
図17は、サイドメンバに対する摩擦撹拌加工のパターンを示す図である。
【0059】
図17の(A)は、サイドメンバ10の幅寸法よりも小さい幅寸法を有する矩形状のクロスメンバ20を接合させる場合のパターンであり、この場合、サイドメンバ10の幅寸法よりも小さい矩形状のパターンで摩擦撹拌加工を行う。
【0060】
図17の(B)は、中央に板部を有する断面形状のクロスメンバ20を接合させる際のパターンであり、この場合、クロスメンバ20の断面形状に合わせて中央部分にも線状のフランジ34及び改質部45を有する日形のパターンで摩擦撹拌加工を行う。
【0061】
図17の(C)は、サイドメンバ10に対してクロスメンバ20を、例えば、傾き角度45度で傾けて接合させる場合のパターンであり、この場合、サイドメンバ10には、菱形のパターンで摩擦撹拌加工を行う。
【0062】
図17の(D)は、U字状の断面形状のクロスメンバ20を接合させる際のパターンであり、この場合、クロスメンバ20の断面形状に合わせてU字状のパターンで摩擦撹拌加工を行う。
【0063】
図17の(E)は、サイドメンバ10の幅寸法よりも小さい幅寸法を有し、かつ、U字状の断面形状を有するクロスメンバ20を接合させる際のパターンであり、この場合、クロスメンバ20の断面形状に合わせて幅寸法の小さいU字状のパターンで摩擦撹拌加工を行う。なお、この場合、断面矩形状のクロスメンバ20の端部をU字状のパターンで形成したフランジ34によって部分的に位置決めしてもよい。
【0064】
図17の(F)は、サイドメンバ10の幅方向及び長手方向に、互いに平行に摩擦撹拌加工を行うパターンである。この場合、摩擦撹拌加工工具100の向きを変えながら連続して加工する場合と比べ、矩形状部分の角部を直角にすることができる。
【0065】
図17の(G)は、サイドメンバ10に対して矩形状のクロスメンバ20の角部を配置させる4箇所に摩擦撹拌加工を行うパターンである。このように、クロスメンバ20の端部47を部分的に位置決めしてもよい。
【0066】
図17の(H)は、サイドメンバ10の長さ方向に間隔をあけて互いに平行に摩擦撹拌加工を行うパターンである。この場合、クロスメンバ20の端部47における両側部を位置決めすることができる。
【0067】
図17の(I)は、サイドメンバ10の幅方向に間隔をあけて互いに平行に摩擦撹拌加工を行うパターンである。この場合、クロスメンバ20の端部47における上下部分を位置決めすることができる。
【0068】
図17の(J)は、円形状のクロスメンバ20を接合させる際のパターンであり、この場合、クロスメンバ20の断面形状に合わせて円形状のパターンで摩擦撹拌加工を行う。
【0069】
図17の(K)は、円形状のクロスメンバ20を接合させる際のパターンであり、クロスメンバ20の端部47の一部に沿う円弧状に摩擦撹拌加工を行う。この場合、円形状のクロスメンバ20を部分的に位置決めする。
【0070】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0071】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 第一の構造部材の被接合面に摩擦撹拌加工を施すことにより、前記被接合面にフランジを成形するフランジ成形工程と、
前記第一の構造部材に対して第二の構造部材を、前記摩擦撹拌加工によって前記被接合面に形成された改質部に対向させながら少なくとも一部を前記フランジに当接させて位置決めする位置決め工程と、
前記フランジを接合材として前記第一の構造部材に対して前記第二の構造部材を接合させる接合工程と、
を含む、構造部材の接合方法。
【0072】
この構造部材の接合方法によれば、第一の構造部材の被接合面に成形したフランジに第二の構造部材を当接させて位置決めして接合するので、第一の構造部材及び第二の構造部材を高い精度で接合して構造体を作製することができる。
また、切削加工によって第一の構造部材の被接合面に、第二の構造部材を嵌め込んで位置決めさせる位置決め用の溝部や切欠き部を形成する場合と比べ、被接合面が薄肉化されて強度低下を招くようなことなく接合させることができる。
しかも、摩擦撹拌加工によって形成される第一の構造部材の被接合面の改質部は靭性が高められる。したがって、この改質部に第二の構造部材を対向させて接合させることにより、第一の構造部材と第二の構造部材との間に衝撃が付与された際のダメージを抑制できる。これにより、耐衝撃性にすぐれた構造体を作製することができる。
【0073】
(2) 前記フランジ成形工程において、予め前記第一の構造部材を治具に装着させておく、(1)に記載の構造部材の接合方法。
【0074】
この構造部材の接合方法によれば、第一の構造部材を治具に装着した状態で、この第一の構造部材の被接合面に摩擦撹拌加工工具によってフランジを成形するので、第一の構造部材に捻じれや歪みがあったとしても、高精度にフランジを成形して第二の構造部材との接合精度を高めることができる。
【0075】
(3) 前記接合工程において、前記第一の構造部材と前記第二の構造部材とを溶接して接合させる、(1)または(2)に記載の構造部材の接合方法。
【0076】
この構造部材の接合方法によれば、第一の構造部材と第二の構造部材とを溶接によって高精度に接合させることができる。このとき、位置決め用のフランジを溶加材として溶接することができるので、別個の溶加材を用いずに容易にかつ低コストで溶接することができる。
【0077】
(4) 前記接合工程において、前記第一の構造部材と前記第二の構造部材とを摩擦撹拌接合させる、(1)または(2)に記載の構造部材の接合方法。
【0078】
この構造部材の接合方法によれば、第一の構造部材と第二の構造部材とを摩擦撹拌によって高精度に接合させることができる。このとき、位置決め用のフランジが塑性流動物となって良好に接合される。また、フランジ成形工程と接合工程とを摩擦撹拌加工で行うことができるので、摩擦撹拌加工工具を交換するだけでフランジ成形工程及び接合工程の作業を同一設備によって容易に行うことができる。
【0079】
(5) 前記第一の構造部材及び前記第二の構造部材は、それぞれ押出材であり、
前記押出材からなる前記第一の構造部材の側面を前記被接合面として前記フランジを成形し、前記押出材からなる前記第二の構造部材の端部を前記フランジに当接させて位置決めして接合させる、(1)~(4)のいずれか一つに記載の構造部材の接合方法。
【0080】
この構造部材の接合方法によれば、押出材からなる第一の構造部材の側面に押出材からなる第二の構造部材の端部を接合し、例えば、バッテリートレイを構成する外枠などの構造体を容易にかつ高精度に作製することができる。
【0081】
(6) 前記第一の構造部材は、押出材であり、前記第二の構造部材は、面板であり、
前記押出材からなる前記第一の構造部材の側面を前記被接合面として前記フランジを成形し、前記面板からなる前記第二の構造部材の縁部を前記フランジに当接させて位置決めして接合させる、(1)~(4)のいずれか一つに記載の構造部材の接合方法。
【0082】
この構造部材の接合方法によれば、押出材からなる第一の構造部材の側面に面板からなる第二の構造部材の縁部を接合し、例えば、外枠にパネルが接合されたバッテリートレイなどの構造体を容易にかつ高精度に作製することができる。
【0083】
(7) 前記フランジ成形工程において前記被接合面に前記フランジを成形する摩擦撹拌加工工具は、
前記被接合面に押圧されて前記被接合面に沿って移動されることにより、移動方向に沿って前記第一の構造部材を摩擦撹拌させる回転ツールと、
前記回転ツールが挿通される挿通孔を有し、前記被接合面に当接されて前記回転ツールとともに前記移動方向に移動される当接ブロックと、
を備え、
前記回転ツールは、
先端に設けられた小径のピン部と、
前記ピン部の根元に設けられ、前記ピン部によって摩擦撹拌されて塑性流動する前記被接合面から生じた塑性流動物を外周側へ送り出すショルダ部と、
を有し、
前記当接ブロックは、
前記被接合面に当接される当接面と、
前記当接面に形成され、前記挿通孔の周方向の一か所に連通して前記回転ツールの回転方向前方側へ向かう接線方向に延在する一つのフランジ成形溝と、
を有する、(1)~(6)のいずれか一つに記載の構造部材の接合方法。
【0084】
この構造部材の接合方法によれば、摩擦撹拌加工工具の当接ブロックの当接面を被接合面に当接させ、回転させた回転ツールを被接合面に押圧してピン部を食い込ませる。そして、被接合面に対して摩擦撹拌加工工具を、フランジ成形溝の延在方向と反対方向へ移動させる。これにより、被接合面の中央部分の任意の位置において、位置決め用として好適な形状のフランジを容易に成形することができる。したがって、被接合面に成形したフランジに第二の構造部材を位置決めして接合させて作製する構造体の設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0085】
3 フレーム組立体(第一の構造部材)
5 フロアパネル(第二の構造部材)
10 サイドメンバ(第一の構造部材)
20 クロスメンバ(第二の構造部材)
30 治具
41,51 被接合面
43,53 フランジ
45,55 改質部
100 摩擦撹拌加工工具
111 回転ツール
115 ピン部
121 ショルダ部
131 当接ブロック
133 挿通孔
141 当接面
143 フランジ成形溝
α 回転方向
X 移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17