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特許7428597光超音波測定装置、方法、プログラム、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】光超音波測定装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20240130BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20240130BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61B8/13
G01N29/06
G01N29/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020105344
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021194466
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】伊田 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 秀明
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-039809(JP,A)
【文献】特開2016-101260(JP,A)
【文献】特開2016-047109(JP,A)
【文献】特開2012-005622(JP,A)
【文献】特開2019-098049(JP,A)
【文献】特開2019-039902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15 、
G01N21/00 -21/01 、21/17 -21/61 、
29/00 -29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、
パルス光を出力するパルス光出力部と、
前記超音波パルスが測定対象の界面において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、
前記パルス光により前記測定対象の内部において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部と、
前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得部と、
前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト部と、
を備え、
前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、
前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であ
前記超音波パルスが前記界面により反射された時点と、前記パルス光が出力された時点とが同じである、
光超音波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光超音波測定装置であって、
前記第一シフト時間と前記対応時間との差が、前記測定対象における複数の部位について得られた複数の前記光音響波において等しい、
光超音波測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光超音波測定装置であって、
前記測定結果シフト部が、前記超音波パルスの出力時点に向けて、前記反射波の測定結果を第二シフト時間だけ移動させ、
前記第二シフト時間が、前記超音波パルスが前記測定対象の界面において反射されてから前記超過時点までの時間である超過時間以下である、
光超音波測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光超音波測定装置であって、
前記超過時間と前記第二シフト時間との差が、前記測定対象における複数の部位について得られた複数の前記反射波において等しい、
光超音波測定装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光超音波測定装置であって、
前記第一シフト時間と前記第二シフト時間とが等しい、
光超音波測定装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の光超音波測定装置であって、
前記超過時点と前記対応時点とが同じ時点である、
光超音波測定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光超音波測定装置であって、
前記測定結果シフト部の出力に基づき、前記測定対象の画像を表示する画像表示部を備えた光超音波測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光超音波測定装置であって、
前記超音波パルス出力部および前記パルス光出力部が、前記測定対象を走査し、
前記走査を行う方向が、前記超音波パルスおよび前記パルス光の出力される方向と直交する、
光超音波測定装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光超音波測定装置であって、
複数の前記パルス光出力部を備え、
前記パルス光出力部の各々が出力する前記パルス光の波長が異なる、
光超音波測定装置。
【請求項10】
超音波パルスを出力する超音波パルス出力工程と、
パルス光を出力するパルス光出力工程と、
前記超音波パルスが測定対象の界面において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定工程と、
前記パルス光により前記測定対象の内部において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定工程と、
前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、
前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程と、
を備え、
前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、
前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であ
前記超音波パルスが前記界面により反射された時点と、前記パルス光が出力された時点とが同じである、
光超音波測定方法。
【請求項11】
超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、パルス光を出力するパルス光出力部と、前記超音波パルスが測定対象の界面において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、前記パルス光により前記測定対象の内部において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部とを有する光超音波測定装置における光超音波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記光超音波測定処理が、
前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、
前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程と、
を備え、
前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、
前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であ
前記超音波パルスが前記界面により反射された時点と、前記パルス光が出力された時点とが同じである、
プログラム。
【請求項12】
超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、パルス光を出力するパルス光出力部と、前記超音波パルスが測定対象の界面において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、前記パルス光により前記測定対象の内部において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部とを有する光超音波測定装置における光超音波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記光超音波測定処理が、
前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、
前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程と、
を備え、
前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、
前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であ
前記超音波パルスが前記界面により反射された時点と、前記パルス光が出力された時点とが同じである、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の反射波および光音響波の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光吸収体に対し特定波長のパルス光を照射すると、光エネルギーが吸収される。これにより、光吸収体において、瞬間的な断熱膨張が起き、超音波が発生する。この超音波を圧電素子などのセンサで取得し、画像化することで光吸収体の三次元的な分布を知ることができる。また、測定対象に対し超音波を与え、その反射波を測定し、測定対象内の画像を取得することも知られている(特許文献1、特許文献2および特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-038917号公報
【文献】特表2015-501175号公報
【文献】国際公開第2013/121751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術によって測定対象(例えば、皮膚)を測定しようとした場合、測定装置を測定対象に接触させる必要がある。すると、測定対象の圧力によって、測定対象の表面が盛り上がる。この測定対象の盛り上がりにより、測定対象内部の物体(例えば、血管)の深さ方向の位置が変動してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、測定対象に測定装置を接触させた際の、測定対象の表面形状の変動を補償しながら測定対象の測定を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる光超音波測定装置は、超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、パルス光を出力するパルス光出力部と、前記超音波パルスが測定対象において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、前記パルス光により前記測定対象において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部と、前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得部と、前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト部とを備え、前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であるように構成される。
【0007】
上記のように構成された光超音波測定装置によれば、超音波パルス出力部が、超音波パルスを出力する。パルス光出力部が、パルス光を出力する。反射波測定部が、前記超音波パルスが測定対象において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する。光音響波測定部が、前記パルス光により前記測定対象において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する。超過時点取得部が、前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する。測定結果シフト部が、前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる。前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とする。前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下である。
【0008】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記第一シフト時間と前記対応時間との差が、前記測定対象における複数の部位について得られた複数の前記光音響波において等しいようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記測定結果シフト部が、前記超音波パルスの出力時点に向けて、前記反射波の測定結果を第二シフト時間だけ移動させ、前記第二シフト時間が、前記超音波パルスが前記測定対象の界面において反射されてから前記超過時点までの時間である超過時間以下であるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記超過時間と前記第二シフト時間との差が、前記測定対象における複数の部位について得られた複数の前記反射波において等しいようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記第一シフト時間と前記第二シフト時間とが等しいようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記超過時点と前記対応時点とが同じ時点であるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記測定結果シフト部の出力に基づき、前記測定対象の画像を表示する画像表示部を備えるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、前記超音波パルス出力部および前記パルス光出力部が、前記測定対象を走査し、前記走査を行う方向が、前記超音波パルスおよび前記パルス光の出力される方向と直交するようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる光超音波測定装置は、複数の前記パルス光出力部を備え、前記パルス光出力部の各々が出力する前記パルス光の波長が異なるようにしてもよい。
【0016】
本発明は、超音波パルスを出力する超音波パルス出力工程と、パルス光を出力するパルス光出力工程と、前記超音波パルスが測定対象において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定工程と、前記パルス光により前記測定対象において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定工程と、前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程とを備え、前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下である光超音波測定方法である。
【0017】
本発明は、超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、パルス光を出力するパルス光出力部と、前記超音波パルスが測定対象において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、前記パルス光により前記測定対象において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部とを有する光超音波測定装置における光超音波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記光超音波測定処理が、前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程とを備え、前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下であるプログラムである。
【0018】
本発明は、超音波パルスを出力する超音波パルス出力部と、パルス光を出力するパルス光出力部と、前記超音波パルスが測定対象において反射された反射波を、時間に対応付けて測定する反射波測定部と、前記パルス光により前記測定対象において発生した光音響波を、時間に対応付けて測定する光音響波測定部とを有する光超音波測定装置における光超音波測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記光超音波測定処理が、前記反射波の測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点を取得する超過時点取得工程と、前記パルス光の出力時点に向けて、前記光音響波の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる測定結果シフト工程とを備え、前記光音響波の測定結果において前記超過時点に対応する時点を対応時点とし、前記第一シフト時間が、前記パルス光の出力時点から前記対応時点までの時間である対応時間以下である記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態にかかる光超音波測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2】何も接触させていない場合の測定対象(皮膚)2の断面図である。
図3】光超音波測定装置1を測定対象2に接触させた場合の測定対象2の拡大断面図である。
図4】測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した時の、測定ユニット100近傍の測定対象2の拡大断面図である。
図5】測定ユニット100が血管24aの真上に移動したときの、反射波USの波形(図5(a))、光音響波AW1(またはAW2)の波形(図5(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図5(c))を示す図である。
図6図5(a)にかかる反射波USの波形を移動させたもの(図6(a))、図5(b)にかかる光音響波AW1(またはAW2)の波形を移動させたもの(図6(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図6(c))を示す図である。
図7】測定ユニット100が血管24bの真上に移動したときの、反射波USの波形(図7(a))、光音響波AW1(またはAW2)の波形(図7(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図7(c))を示す図である。
図8図7(a)にかかる反射波USの波形を移動させたもの(図8(a))、図7(b)にかかる光音響波AW1(またはAW2)の波形を移動させたもの(図8(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図8(c))を示す図である。
図9】画像表示部114の表示する画像を示す図である。
図10】測定ユニット100による測定対象2の走査の一例を示す斜視図である。
図11】光超音波測定装置1を測定対象(皮膚)2に接触させた場合の光超音波測定装置1および測定対象(皮膚)2の断面図であり、測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した状態(図11(a))、測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した状態(図11(b))を示す。
図12】測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した時の、測定ユニット100近傍の測定対象2の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかる光超音波測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の実施形態にかかる光超音波測定装置1は、測定対象2(例えば、皮膚であるが、それに限定されない)を測定するためのものであり、測定ユニット100、超過時点取得部110、測定結果シフト部112、画像表示部114を備える。なお、以後、測定対象2が皮膚である場合について、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図2は、何も接触させていない場合の測定対象(皮膚)2の断面図である。図11は、光超音波測定装置1を測定対象(皮膚)2に接触させた場合の光超音波測定装置1および測定対象(皮膚)2の断面図であり、測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した状態(図11(a))、測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した状態(図11(b))を示す。
【0023】
図2を参照して、測定対象(皮膚)2に何も接触させていない場合、測定対象2の界面(皮膚の表面)22は水平であり、測定対象2内にある血管24a、24b、24cは、いずれも、界面22から深さD0にあるものとする。なお、血管24aは、血管24bおよび血管24cの間にある。
【0024】
図11を参照して、光超音波測定装置1は、測定ユニット100、ケース120、液体130、筐体140を備える。ケース120は、測定ユニット100を収容し、その内部は液体130(例えば、水)で満たされている。ケース120の底面には、薄膜120aが配置されている。薄膜120aは界面22に接している。すると、界面22が湾曲し、上に凸となる。筐体140は、測定ユニット100およびケース120の上部に配置され、超過時点取得部110、測定結果シフト部112および画像表示部114を収容する。なお、測定ユニット100と、界面22の最高点と間の高さの差をd0とする。
【0025】
図3は、光超音波測定装置1を測定対象2に接触させた場合の測定対象2の拡大断面図である。界面22が湾曲し、上に凸となっているため、血管24aが、血管24bおよび血管24cよりも上に移動している。ただし、血管24a、24b、24cの界面22から深さは、いずれも、D0のままである。ここで、界面22の最上部から見た、血管24bおよび血管24cの深さをD1とする。
【0026】
本来は、血管24a、24b、24cは同じ高さに位置するはずであるのに(図2参照)、光超音波測定装置1を測定対象2に接触させると、上記のように(図3参照)、血管24a、24b、24cが異なる高さに位置することとなる。このまま、血管24a、24b、24cの位置を測定し、画像に表示させてみても、本来の位置を把握することができない。
【0027】
図1を参照して、測定ユニット100は、超音波パルス出力部102、パルス光出力部104a、104b、反射波測定部106、光音響波測定部108を有する。
【0028】
超音波パルス出力部102は、超音波パルスを出力する。複数のパルス光出力部104a、104bは、パルス光を出力する。なお、パルス光出力部104a、104bの各々が出力するパルス光の波長は異なる。ただし、パルス光出力部は3個以上あってもよいし、1個だけでもよい。
【0029】
反射波測定部106は、超音波パルスが測定対象2において反射された反射波USを、時間に対応付けて測定する。光音響波測定部108は、パルス光により測定対象2において発生した光音響波AW1、AW2を、時間に対応付けて測定する。ただし、光音響波AW1は、パルス光出力部104aが出力したパルス光P1により測定対象2において発生した光音響波である。また、光音響波AW2は、パルス光出力部104bが出力したパルス光P2により測定対象2において発生した光音響波である。反射波測定部106および光音響波測定部108は、例えば、圧電素子である。
【0030】
測定ユニット100の超音波パルス出力部102およびパルス光出力部104a、104bが、測定対象2を走査する。
【0031】
図10は、測定ユニット100による測定対象2の走査の一例を示す斜視図である。ただし、図10において、ケース120、液体130および筐体140は図示省略する。測定ユニット100の超音波パルス出力部102およびパルス光出力部104a、104bからパルス光P1、P2および超音波パルスが出力され、その出力方向と直交する方向(X方向およびY方向)に走査が行われる。これにより、測定ユニット100は、血管24a、血管24bまたは血管24cのほぼ真上に移動する。
【0032】
以後、(1)測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した場合と、(2)測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した場合とに分けて、本発明の実施形態を説明する。なお、測定ユニット100が血管24cの真上に移動したときは、血管24bのほぼ真上に移動した場合と同様であるので説明を省略する。
【0033】
(1)測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した場合(図11(a)参照)
図4は、測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動した時の、測定ユニット100近傍の測定対象2の拡大断面図である。
【0034】
超音波パルス出力部102から出力された超音波パルスは、主に界面22により反射され、反射波USとして、反射波測定部106によりその強度が測定される。超音波パルス出力部102および反射波測定部106と、界面22との距離はd0である。なお、パルス光出力部104a、104bおよび光音響波測定部108と、界面22との距離もまたd0である。
【0035】
パルス光出力部104a(または104b)から出力されたパルス光P1(またはP2)によって測定対象2の血管24aにおいて発生した光音響波AW1(またはAW2)の強度が、光音響波測定部108により測定される。界面22からの血管24aの深さはD0である。
【0036】
図5は、測定ユニット100が血管24aの真上に移動したときの、反射波USの波形(図5(a))、光音響波AW1(またはAW2)の波形(図5(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図5(c))を示す図である。
【0037】
図5(a)においては、縦軸に信号強度、横軸に時間をとり、超音波パルスが界面22により反射された時点を原点としている。超音波パルスPaが測定ユニット100の反射波測定部106により受信された時点ta1において、反射波USの測定結果(すなわち、超音波パルスPaの信号強度)が所定の閾値を超えている。なお、所定の閾値は、(1)反射波USが界面22により反射されたものであれば、その強度が所定の閾値を超える、(2)反射波USが界面22により反射されたものでなければ、その強度が所定の閾値を超えない、ように定められている。超過時点取得部110は、反射波USの測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点ta1を取得する。
【0038】
超音波パルスPaの信号強度は所定の閾値を超えているので、超音波パルスPaが受信された時点(超過時点ta1)で、界面22による反射を反射波測定部106により検出できたことが分かる。よって、超音波パルスが測定対象2の界面22において反射されてから超過時点ta1までの時間(超過時間という)に、音速Vsを乗じると、反射波測定部106と界面22との距離d0となる(Vs・ta1=d0)(ただし、超過時間はta1である)。
【0039】
図5(b)においては、縦軸に信号強度、横軸に時間をとり、パルス光P1(またはP2)が出力された時点を原点としている。パルス光P1(またはP2)が出力されると、出力とほぼ同時に、血管24aに到達する。よって、パルス光P1(またはP2)が出力された時点と、光音響波AW1(またはAW2)が出力された時点とは、同じとみなすことができる。ここで、図5(b)における原点(パルス光P1(またはP2)が出力された時点)と、図5(a)における原点(超音波パルスが界面22により反射された時点)とが同じ時点である。血管24aにおいて生成された光音響波AW1(またはAW2)の光音響波パルスPbが測定ユニット100の光音響波測定部108により受信された時点をta2とする。すると、Vs・ta2=d0+D0となる。
【0040】
図5(c)においては、横軸が図示されており、超過時点ta1に対応する位置(界面22の位置を表す)を0としたときに、光音響波パルスPbが受信された時点ta2に対応する位置(血管24aの深さを表す)がD0(=Vs・(ta2-ta1))であることが図示されている。
【0041】
測定結果シフト部112は、パルス光の出力時点に向けて、光音響波AW1、AW2の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる(図5(b)参照)。ここで、光音響波AW1(またはAW2)の測定結果において超過時点ta1に対応する時点を対応時点とする。すると、第一シフト時間は、パルス光の出力時点から対応時点までの時間である対応時間以下である。なお、図5(b)における原点と、図5(a)における原点とが同じ時点であるため、対応時点は、超過時点ta1と同じく、ta1である。対応時間は、ta1となる。
【0042】
測定結果シフト部112は、超音波パルスの出力時点に向けて、反射波USの測定結果を第二シフト時間だけ移動させる(図5(a)参照)。なお、超音波パルスの出力時点は、超音波パルスが界面22により反射された時点よりも前である。このため、反射波USの測定結果を、超音波パルスの出力時点に向けて移動させると、超音波パルスが界面22により反射された時点に向けて移動させることになる。なお、第二シフト時間は、超過時間ta1以下である。
【0043】
なお、第一シフト時間と第二シフト時間とは等しい。また、対応時間ta1と第一シフト時間との差t0は、超過時間ta1と第二シフト時間との差t0と等しい(オフセットという)。
【0044】
図6は、図5(a)にかかる反射波USの波形を移動させたもの(図6(a))、図5(b)にかかる光音響波AW1(またはAW2)の波形を移動させたもの(図6(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図6(c))を示す図である。
【0045】
図6(a)を参照して、測定結果シフト部112は、超音波パルスPaをオフセットt0に移動させる。図6(b)を参照して、測定結果シフト部112は、光音響波パルスPbを時間t0+(ta2-ta1)に移動させる。図6(c)においては、横軸が図示されており、オフセットt0に対応する位置(界面22の位置を表す)を0としたときに、光音響波パルスPbが移動した時点t0+(ta2-ta1)に対応する位置(血管24aの深さを表す)がD0(=Vs・(t0+(ta2-ta1)-t0)=Vs・(ta2-ta1))であることが図示されている。
【0046】
画像表示部114は、測定結果シフト部112の出力に基づき、測定対象2の画像を表示する。
【0047】
図9は、画像表示部114の表示する画像を示す図である。画像の上端は、図6(a)および図6(b)の原点に対応する。ここで、超音波パルスPaが存在するオフセットt0に対応する位置が、界面22の位置を示す。すると、界面22の画像は、画像の上端からVs・t0だけ離れた位置に存在する。さらに、光音響波パルスPbが存在する時点t0+(ta2-ta1)に対応する位置が、血管24aの位置を示す。すると、血管24aの画像は、界面22の画像からD0だけ離れた位置に存在する。
【0048】
(2)測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した場合(図11(b)参照)
図12は、測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動した時の、測定ユニット100近傍の測定対象2の拡大断面図である。
【0049】
超音波パルス出力部102から出力された超音波パルスは、主に界面22により反射され、反射波USとして、反射波測定部106によりその強度が測定される。超音波パルス出力部102および反射波測定部106と、界面22との距離はd0+(D1-D0)である。なお、パルス光出力部104a、104bおよび光音響波測定部108と、界面22との距離もまたd0+(D1-D0)である。
【0050】
パルス光出力部104a(または104b)から出力されたパルス光P1(またはP2)によって測定対象2の血管24bにおいて発生した光音響波AW1(またはAW2)の強度が、光音響波測定部108により測定される。界面22からの血管24bの深さはD0である。
【0051】
図7は、測定ユニット100が血管24bの真上に移動したときの、反射波USの波形(図7(a))、光音響波AW1(またはAW2)の波形(図7(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図7(c))を示す図である。
【0052】
図7(a)においては、縦軸に信号強度、横軸に時間をとり、超音波パルスが界面22により反射された時点を原点としている。超音波パルスPaが測定ユニット100の反射波測定部106により受信された時点tb1において、反射波USの測定結果(すなわち、超音波パルスPaの信号強度)が所定の閾値を超えている。なお、所定の閾値は、(1)反射波USが界面22により反射されたものであれば、その強度が所定の閾値を超える、(2)反射波USが界面22により反射されたものでなければ、その強度が所定の閾値を超えない、ように定められている。超過時点取得部110は、反射波USの測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点tb1を取得する。
【0053】
超音波パルスPaの信号強度は所定の閾値を超えているので、超音波パルスPaが受信された時点(超過時点tb1)で、界面22による反射を反射波測定部106により検出できたことが分かる。よって、超音波パルスが測定対象2の界面22において反射されてから超過時点tb1までの時間(超過時間という)に、音速Vsを乗じると、反射波測定部106と界面22との距離d0+(D1-D0)となる(Vs・tb1=d0+(D1-D0))(ただし、超過時間はtb1である)。
【0054】
図7(b)においては、縦軸に信号強度、横軸に時間をとり、パルス光P1(またはP2)が出力された時点を原点としている。パルス光P1(またはP2)が出力されると、出力とほぼ同時に、血管24bに到達する。よって、パルス光P1(またはP2)が出力された時点と、光音響波AW1(またはAW2)が出力された時点とは、同じとみなすことができる。ここで、図7(b)における原点(パルス光P1(またはP2)が出力された時点)と、図7(a)における原点(超音波パルスが界面22により反射された時点)とが同じ時点である。血管24bにおいて生成された光音響波AW1(またはAW2)の光音響波パルスPbが測定ユニット100の光音響波測定部108により受信された時点をtb2とする。すると、Vs・tb2=d0+(D1-D0)+D0=d0+D1となる。
【0055】
図7(c)においては、横軸が図示されており、超過時点tb1に対応する位置(界面22の位置を表す)を0としたときに、光音響波パルスPbが受信された時点tb2に対応する位置(血管24bの深さを表す)がD0(=Vs・(tb2-tb1))であることが図示されている。
【0056】
測定結果シフト部112は、パルス光の出力時点に向けて、光音響波AW1、AW2の測定結果を第一シフト時間だけ移動させる(図7(a)参照)。ここで、光音響波AW1(またはAW2)の測定結果において超過時点tb1に対応する時点を対応時点とする。すると、第一シフト時間は、パルス光の出力時点から対応時点までの時間である対応時間以下である。なお、図7(b)における原点と、図7(a)における原点とが同じ時点であるため、対応時点は、超過時点tb1と同じく、tb1である。対応時間は、tb1となる。
【0057】
測定結果シフト部112は、超音波パルスの出力時点に向けて、反射波USの測定結果を第二シフト時間だけ移動させる(図7(b)参照)。なお、超音波パルスの出力時点は、超音波パルスが界面22により反射された時点よりも前である。このため、反射波USの測定結果を、超音波パルスの出力時点に向けて移動させると、超音波パルスが界面22により反射された時点に向けて移動させることになる。なお、第二シフト時間は、超過時間tb1以下である。
【0058】
なお、第一シフト時間と第二シフト時間とは等しい。また、対応時間tb1と第一シフト時間との差t0は、超過時間tb1と第二シフト時間との差t0と等しい(オフセットという)。
【0059】
なお、第一シフト時間と対応時間との差(オフセット)が、測定対象2における複数の部位(血管24aおよび血管24b)について得られた複数の光音響波AW1(またはAW2)において等しい。すなわち、測定対象2における血管24aについて得られた光音響波AW1(またはAW2)における第一シフト時間と対応時間ta1との差(図5(b)参照)と、測定対象2における血管24bについて得られた光音響波AW1(またはAW2)における第一シフト時間と対応時間tb1との差(図7(b)参照)とは、共にt0に等しい。
【0060】
また、超過時間と第二シフト時間との差(オフセット)が、測定対象2における複数の部位(血管24a直上の界面22および血管24b直上の界面22)について得られた複数の反射波USにおいて等しい。すなわち、測定対象2における血管24a直上の界面22について得られた反射波USにおける第二シフト時間と超過時間ta1との差(図5(a)参照)と、測定対象2における血管24b直上の界面22について得られた反射波USにおける第二シフト時間と超過時間tb1との差(図7(a)参照)とは、共にt0に等しい。
【0061】
なお、オフセットt0を0とすることも考えられる。
【0062】
図8は、図7(a)にかかる反射波USの波形を移動させたもの(図8(a))、図7(b)にかかる光音響波AW1(またはAW2)の波形を移動させたもの(図8(b))、波形の横軸(時間)を距離に換算したもの(図8(c))を示す図である。
【0063】
図8(a)を参照して、測定結果シフト部112は、超音波パルスPaをオフセットt0に移動させる。図8(b)を参照して、測定結果シフト部112は、光音響波パルスPbを時間t0+(tb2-tb1)に移動させる。図8(c)においては、横軸が図示されており、オフセットt0に対応する位置(界面22の位置を表す)を0としたときに、光音響波パルスPbが移動した時点t0+(tb2-tb1)に対応する位置(血管24bの深さを表す)がD0(=Vs・(t0+(tb2-tb1)-t0)=Vs・(tb2-tb1))であることが図示されている。
【0064】
図9を参照して、画像の上端は、図8(a)および図8(b)の原点に対応する。ここで、超音波パルスPaが存在するオフセットt0に対応する位置が、界面22の位置を示す。すると、界面22の画像は、画像の上端からVs・t0だけ離れた位置に存在する。さらに、光音響波パルスPbが存在する時点t0+(tb2-tb1)に対応する位置が、血管24bの位置を示す。すると、血管24bの画像は、界面22の画像からD0だけ離れた位置に存在する。
【0065】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0066】
測定ユニット100により、測定対象(皮膚)2の走査が行われる。
【0067】
まず、測定ユニット100が血管24aのほぼ真上に移動する(図11(a)および図4参照)。
【0068】
超音波パルス出力部102が出力した超音波パルスは、測定対象2において反射され、反射波測定部106により測定される(反射波US)(図5(a)参照)。
【0069】
パルス光出力部104a、104bが出力したパルス光により測定対象2において発生した光音響波AW1、AW2が、光音響波測定部108により測定される(図5(b)参照)。
【0070】
超音波パルスPaの信号強度は、所定の閾値を超えている。反射波USの測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点ta1が、超過時点取得部110により取得される。光音響波AW1、AW2の測定結果は、測定結果シフト部112によって、パルス光の出力時点に向けて、第一シフト時間(対応時間ta1よりもオフセットt0だけ短い)だけ移動される(図5(b)および図6(b)参照)。また、反射波USの測定結果は、超音波パルスの出力時点に向けて、第二シフト時間(第一シフト時間と同じ)だけ移動される(図5(a)および図6(a)参照)。
【0071】
測定結果シフト部112の出力(図6(a)および図6(b)参照)に基づき、画像表示部114が測定対象2の画像(図9参照)を表示する。
【0072】
すると、図6(a)および図6(b)の原点が、図9の画像の上端に対応する。超音波パルスPaが存在するオフセットt0に対応する位置(画像の上端からVs・t0だけ離れた位置)が、図9における界面22の位置を示す。光音響波パルスPbが存在する時点t0+(ta2-ta1)に対応する位置(界面22の画像からD0だけ離れた位置(図6(c)参照))が、図9における血管24aの位置を示す。
【0073】
次に、測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動する(図11(b)および図12参照)。
【0074】
超音波パルス出力部102が出力した超音波パルスは、測定対象2において反射され、反射波測定部106により測定される(反射波US)(図7(a)参照)。
【0075】
パルス光出力部104a、104bが出力したパルス光により測定対象2において発生した光音響波AW1、AW2が、光音響波測定部108により測定される(図7(b)参照)。
【0076】
超音波パルスPaの信号強度は、所定の閾値を超えている。反射波USの測定結果が所定の閾値を超えた時点である超過時点tb1が、超過時点取得部110により取得される。光音響波AW1、AW2の測定結果は、測定結果シフト部112によって、パルス光の出力時点に向けて、第一シフト時間(対応時間tb1よりもオフセットt0だけ短い)だけ移動される(図7(b)および図8(b)参照)。また、反射波USの測定結果は、超音波パルスの出力時点に向けて、第二シフト時間(第一シフト時間と同じ)だけ移動される(図7(a)および図8(a)参照)。
【0077】
測定結果シフト部112の出力(図8(a)および図8(b)参照)に基づき、画像表示部114が測定対象2の画像(図9参照)を表示する。
【0078】
すると、図8(a)および図8(b)の原点が、図9の画像の上端に対応する。超音波パルスPaが存在するオフセットt0に対応する位置(画像の上端からVs・t0だけ離れた位置)が、図9における界面22の位置を示す。光音響波パルスPbが存在する時点t0+(tb2-tb1)に対応する位置(界面22の画像からD0だけ離れた位置(図8(c)参照))が、図9における血管24bの位置を示す。
【0079】
測定ユニット100が血管24cのほぼ真上に移動したときの動作は、測定ユニット100が血管24bのほぼ真上に移動したときと同様であり、説明を省略する。
【0080】
本発明の実施形態によれば、測定対象(皮膚)2に光超音波測定装置1を接触させた際の、測定対象2の表面形状の変動(盛り上がり)を補償しながら測定対象2の測定を行うことができる。
【0081】
すなわち、測定対象2に何も接触させていない場合、測定対象2の界面22は水平であり、血管24a、24b、24cの深さはいずれもD0である(図2参照)。しかし、光超音波測定装置1を測定対象2に接触させると、測定対象2の界面22が盛り上がり(図3および図11参照)、それに伴い、血管24aが、血管24bおよび血管24cよりも上に移動してしまう。
【0082】
しかし、超音波パルスが、血管24a、24b(24cも同様)の直上の界面22により反射されることにより得られた超音波パルスPaは、いずれもオフセットt0に移動されるため(図6(a)および図8(a)参照)(第二シフト時間だけ移動)、界面22が水平に表示される(図9参照)。しかも、血管24a、24b(24cも同様)により得られた光音響波AW1(またはAW2)の光音響波パルスPbも同じ時間(第一シフト時間(第二シフト時間と等しい))だけ移動されるため(図6(b)および図8(b)参照)、血管24a、24b(24cも同様)の深さはいずれもD0として表示される(図9参照)。
【0083】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば、超過時点取得部110、測定結果シフト部112、画像表示部114を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0084】
1 光音響波測定装置
100 測定ユニット
102 超音波パルス出力部
104a、104b パルス光出力部
106 反射波測定部
108 光音響波測定部
110 超過時点取得部
112 測定結果シフト部
114 画像表示部
120 ケース
130 液体
140 筐体
2 測定対象(皮膚)
22 界面
24a、24b、24c 血管
US 反射波
AW1、AW2 光音響波
Pa 超音波パルス
Pb 光音響波パルス
D0 深さ
ta1、tb1 超過時点
ta1、tb1 超過時間
ta1、tb1 対応時点
ta1、tb1 対応時間
t0 オフセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12