(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B60R21/264
(21)【出願番号】P 2020110852
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】川合 利明
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-69677(JP,A)
【文献】特開2013-224088(JP,A)
【文献】特開2013-212753(JP,A)
【文献】特開2020-66255(JP,A)
【文献】中国実用新案第210554657(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00
B60R 21/16,22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火部と、
前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤が配置される燃焼室と、
筒状の周壁部と、該周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、該周壁部の他端側に該第1壁部に対向するように設けられ、該周壁部及び該第1壁部と共に前記燃焼室を画定するとともに前記点火部が固定される第2壁部と、を含むハウジングであって、該燃焼室と該ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、
筒状のフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲み且つ前記ガス排出孔がその外側に位置するように前記燃焼室に配置されたフィルタと、
を備えるガス発生器であって、
前記周壁部は、前記第2壁部から所定の高さにある位置に該周壁部の周上に形成され、前記点火部の作動で生じる前記燃焼室内の圧力増加によって該周壁部の高さが高くなるように変形する変形部を有し、
前記フィルタは、その一端が前記第1壁部に当接し、且つ、その他端が前記変形部を基準として該第1壁部側に位置するように、前記ハウジング内に配置される、
ガス発生器。
【請求項2】
前記変形部は、前記周壁部の一部として形成され、更に、該周壁部の他の部分よりも壁の厚さが薄く、且つ、該周壁部の高さ方向に沿った断面において折れ曲がって形成されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記周壁部において前記変形部を基準として前記第1壁部側にある該周壁部の内壁面に対して圧入され、且つ前記第2壁部には非固定の保持部材を、更に備え、
前記フィルタの前記他端は前記保持部材により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁部の内壁面に当接された状態となる、
請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記ハウジングの内部で、折れ曲がって形成された前記変形部により支持され、且つ前記第2壁部には非固定の保持部材を、更に備え、
前記フィルタの前記他端は前記保持部材により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁部の内壁面に当接された状態となる、
請求項2に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記周壁部は、前記変形部を基準として前記第1壁部側にある該周壁部の内壁面から前記燃焼室に向けて突出した突起部を更に有し、
前記フィルタの前記他端は前記突起部により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁部の内壁面に当接された状態となる、
請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記第1壁部は、前記周壁部に接続し且つ前記フィルタの前記一端が当接する周辺部と、該周辺部に隣接する中央部と、を有し、
前記周壁部の高さ方向に沿った断面において、前記周辺部は、前記周壁部及び前記中央部のそれぞれに対して鈍角で交わるように傾斜している、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記点火部は、複数の点火装置を含み、
前記複数の点火装置は、前記第2壁部に固定され、
前記複数の点火装置の各々に対応して、それぞれの点火装置を取り囲む、複数の筒状の
内筒部材が、前記周壁部の高さ方向に沿って取り付けられている、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内に点火器とガス発生剤とを配置し、点火器を作動させることでガス発生剤を燃焼させ、その燃焼ガスをハウジングに形成されたガス排出孔から外部へ放出するガス発生器が広く用いられている。
【0003】
これに関連して、燃焼ガスの冷却及び残渣の捕集を行うために、燃焼室とガス排出孔との間に筒状のフィルタを配置したガス発生器が知られている(例えば、特許文献1)。このようなガス発生器において、ハウジングは、筒状の周壁部と、周壁部の一端を閉塞する天板部と、他端を閉塞し、点火器が固定される底板部と、を含むものが広く用いられており、フィルタは、その一端面が天板部に当接して支持され、その他端面が底板部に当接して支持される。
【0004】
ところで、ガス発生器においては、燃焼ガスの発生によりハウジングの内圧が高まり、ハウジングが膨張するように変形することがある。このとき、上述のガス発生器のように、天板部と底板部とが筒状の周壁部のみによって接続された構造とした場合、その構造上、周壁部よりも天板部や底板部の方が大きく変形し易い傾向がある。
【0005】
これに対して特許文献1に開示のガス発生器は、ハウジングの底板部に点火器を取り付けるための点火器カラーの一部を薄肉に形成し、底板部の変形に対応して点火器カラーを変形させることで、底板部の変形により生じる歪みを吸収するように構成されている。これにより、点火器カラーとハウジングとの間に隙間が生じることやハウジングに亀裂が生じることが抑制され、以て、燃焼ガスが該隙間や該亀裂からハウジングの外部に漏れることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-114718号公報
【文献】米国特許出願公開第2016/52485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなガス発生器では、燃焼ガスの圧力によるハウジングの変形により天板部や底板部がフィルタの端面から離れることを十分に抑制することができなかった。天板部や底板部がフィルタの端面から離れ、フィルタの端面と天板部との間やフィルタの端面と底板部との間に隙間が生じると、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずに該隙間を通ってガス排出孔に至り、ハウジングから排出される、いわゆる「ショートパス」が発生する虞がある。
【0008】
本開示の技術は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス発生器において、ショートパスを抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術は、点火部と、前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤が配置される燃焼室と、
筒状の周壁部と、該周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、該周壁部の他端側に該第1壁部に対向するように設けられ、該周壁部及び該第1壁部と共に前記燃焼室を画定するとともに前記点火部が固定される第2壁部と、を含むハウジングであって、該燃焼室と該ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、筒状のフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲み且つ前記ガス排出孔がその外側に位置するように前記燃焼室に配置されたフィルタと、を備えるガス発生器であって、前記周壁部は、前記第2壁部から所定の高さにある位置に該周壁部の周上に形成され、前記点火部の作動で生じる前記燃焼室内の圧力増加によって該周壁部の高さが高くなるように変形する変形部を有し、前記フィルタは、その一端が前記第1壁部に当接し、且つ、その他端が前記変形部を基準として該第1壁部側に位置するように、前記ハウジング内に配置される、ガス発生器である。
【0010】
つまり、本開示のガス発生器は、燃焼室内の圧力増加によって周壁部の高さが高くなるように変形部が変形し、ハウジングの容積が増加するように構成されている。そのため、ハウジングは、第1壁部の全体が第2壁部に対して相対的に持ち上がるように変形する。これにより、ハウジングの膨張が変形部の変形によるハウジングの容積増加により吸収され、第1壁部及び第2壁部の変形が抑制される。更に、フィルタの一端が第1壁部に当接し且つ他端が変形部を基準として第1壁部側に位置するように、フィルタがハウジング内に配置されているため、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときには、フィルタは、第1壁部と共に持ち上がることとなる。このようなガス発生器によると、燃焼室内の圧力増加によりハウジングが変形する場合であっても、第1壁部の変形が抑制され且つフィルタが第1壁部と共に持ち上がることで、フィルタの一端と第1壁部との当接状態が維持される。その結果、本開示のガス発生器によれば、第1壁部がフィルタの一端から離れることによるショートパスを抑制できる。なお、フィルタと第1壁部との当接状態は、両者が直接接触している状態であってもよく、またガスケット等を介して両者が実質的に接触していると言い得る状態、すなわち間接的な接触状態であってもよい。
【0011】
また、本開示のガス発生器において、前記変形部は、前記周壁部の一部として形成され、更に、該周壁部の他の部分よりも壁の厚さが薄く形成されていてもよく、そして、該周壁部の高さ方向に沿った断面において折れ曲がって形成されていてもよい。
【0012】
これによれば、変形部を薄肉に形成することで、変形部を周壁部における他の部分よりも変形し易くできる。また、変形部を折れ曲がって形成することで、周壁部の高さが高くなるように変形部を変形させることができる。
【0013】
また、本開示のガス発生器は、前記周壁部において前記変形部を基準として前記第1壁部側にある該周壁部の内壁面に対して圧入され、且つ前記第2壁部には非固定の保持部材を、更に備え、前記フィルタの前記他端は前記保持部材により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁部の内壁面に当接された状態となってもよい。
【0014】
これによると、保持部材が変形部よりも第1壁部側において周壁部の内壁面に対して圧入され且つ第2壁部に対しては非固定であるから、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときには、保持部材は、第1壁部と共に持ち上がることとなる。そのため、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときでも、保持部材によるフィルタの他端の保持状態が維持される。その結果、本開示のガス発生器によれば、保持部材がフィルタの他端から離れることによるショートパスも抑制できる。
【0015】
また、本開示のガス発生器は、前記ハウジングの内部で、折れ曲がって形成された前記変形部により支持され、且つ前記第2壁部には非固定の保持部材を、更に備え、前記フィルタの前記他端は前記保持部材により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁
部の内壁面に当接された状態となってもよい。
【0016】
これによると、保持部材が変形部に支持され且つ第2壁部に対しては非固定であるから、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときには、保持部材は、第1壁部と共に持ち上がることとなる。そのため、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときでも保持部材によるフィルタの他端の保持状態が維持される。その結果、本開示のガス発生器によれば、保持部材がフィルタの他端から離れることによるショートパスも抑制できる。
【0017】
また、本開示のガス発生器において、前記周壁部は、前記変形部を基準として前記第1壁部側にある該周壁部の内壁面から前記燃焼室に向けて突出した突起部を更に有し、前記フィルタの前記他端は前記突起部により保持され、且つ該フィルタの前記一端は前記第1壁部の内壁面に当接された状態となってもよい。
【0018】
これによると、突起部が変形部を基準として第1壁部側に形成されていることから、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときには、突起部は、第1壁部と共に持ち上がることとなる。そのため、変形部が変形して周壁部の高さが高くなるときでも突起部によるフィルタの他端の保持状態が維持される。その結果、本開示のガス発生器によれば、突起部がフィルタの他端から離れることによるショートパスも抑制できる。
【0019】
また、本開示のガス発生器において、前記第1壁部は、前記周壁部に接続し且つ前記フィルタの前記一端が当接する周辺部と、該周辺部に隣接する中央部と、を有し、前記周壁部の高さ方向に沿った断面において、前記周辺部は、前記周壁部及び前記中央部のそれぞれに対して鈍角で交わるように傾斜していてもよい。
【0020】
ここで、鈍角とは、直角よりも大きく平角よりも小さい角のことをいう。上記ガス発生器によると、周辺部は、フィルタの一端に対してフィルタの径方向外側から当接することとなる。これにより、フィルタの一端は周辺部によって、ガス発生剤の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。これにより、ガス発生剤の燃焼によりフィルタに作用する径方向外側への荷重によってフィルタがずれることが規制され、フィルタの一端と第1壁部との当接状態を維持することができる。その結果、本開示のガス発生器によれば、より好適にショートパスを抑制できる。
【0021】
また、本開示のガス発生器において、前記点火部は、複数の点火装置を含み、前記複数の点火装置は、前記第2壁部に固定され、前記複数の点火装置の各々に対応して、それぞれの点火装置を取り囲む、複数の筒状の内筒部材が、前記周壁部の高さ方向に沿って取り付けられていてもよい。本開示の技術は、例えば、点火装置を一つのみ備えた、所謂シングルタイプのガス発生器や、点火装置を二つ備えた所謂デュアルタイプのガス発生器にも適用できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、ガス発生器において、ショートパスを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図2】実施形態1に係る下部シェルの斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るガス発生器が作動した状態を示す図である。
【
図4】実施形態1の変形例1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図5】実施形態1の変形例1に係るガス発生器が作動した状態を示す図である。
【
図6】実施形態1の変形例2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図7】実施形態1の変形例2に係るガス発生器が作動した状態を示す図である。
【
図8】実施形態1の変形例3に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図9】実施形態2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0025】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るガス発生器100の軸方向断面図である。
図1では、ガス発生器100の作動前の状態が示されている。ガス発生器100は、例えばエアバッグ用に使用されるエアバッグ用ガス発生器である。
【0026】
[全体構成]
図1に示すように、ガス発生器100は、第1点火装置4Xと、第2点火装置4Yと、第1内筒部材5Xと、第2内筒部材5Yと、フィルタ6と、リテーナ7と、伝火薬110と、第1ガス発生剤120Xと、第2ガス発生剤120Yと、これらを収容するハウジング1と、を備えている。ガス発生器100は、点火装置を2つ備えた、いわゆるデュアルタイプのガス発生器として構成されている。第1点火装置4X及び第2点火装置4Yを含む構成は、本開示に係る「点火部」に相当する。ガス発生器100は、第1点火装置4Xの作動により第1ガス発生剤120Xを燃焼させ、第2点火装置4Yの作動により第2ガス発生剤120Yを燃焼させることで、比較的多量の燃焼ガスをガス排出孔11から放出するように構成されている。
【0027】
[ハウジング]
ハウジング1は、それぞれが有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の高さ方向(上下方向)と定義し、上部シェル2側(即ち、
図1における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(即ち、
図1における下側)をガス発生器100の下側とする。
【0028】
上部シェル2は、筒状の上側周壁部21と、該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22と、を有し、これらにより内部空間を形成する。上側周壁部21の下端部によって上部シェル2の開口部が形成されている。下部シェル3は、筒状の下側周壁部31と、該下側周壁部31の下端を閉塞する底板部32と、を有し、これらにより内部空間を形成する。底板部32には、第1点火装置4X及び第2点火装置4Yが固定されている。
【0029】
ハウジング1は、上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とが嵌合することで形成されている。より具体的には、上側周壁部21の内壁面に対して下側周壁部31の上端部が圧入され、レーザ溶接等によってこれらが接合されることで、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状のハウジング1が形成されている。これら上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部12が形成されている。つまり、ハウジング1は、筒状の周壁部12と、周壁部12の一端側に設けられた天板部22と、他端側に設けられた底板部32と、を含んで構成されている。これら天板部22と底板部32と周壁部12とによって、第1ガス発生剤120Xが配置される第1燃焼室10Xが画定されている。天板部22は
、本開示に係る「第1壁部」に相当し、底板部32は、本開示に係る「第2壁部」に相当する。また、第1燃焼室10Xは、本開示に係る「燃焼室」に相当する。
図1に示すように、上部シェル2の上側周壁部21には、第1燃焼室10Xとハウジング1の外部空間とを連通するガス排出孔11が、周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔11は、第1点火装置4Xが作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0030】
ここで、
図1に示すように、周壁部12は、底板部32から所定の高さにある位置に該周壁部12の周上に形成された、変形部D1を有する。変形部D1は、周壁部12の一部として形成されている。より詳細には、下側周壁部31のうち、上側周壁部21との嵌合部分を除いた部分の一部として変形部D1が形成されている。更に、変形部D1は、周壁部12の高さ方向に沿った断面において、周壁部12の他の部分よりも変形し易いように形成されている。具体的には、変形部D1は、周壁部12の他の部分よりも壁の厚さが薄く形成されており、更には折れ曲がって形成されている。変形部D1は、薄肉に形成されることで、周壁部12における他の部分よりも変形し易くなっている。
図2は、下部シェル3の斜視図である。
図2に示すように、ガス発生器100に係る変形部D1は、周壁部の周上に環状に形成されており、周壁部の径方向内側へ(つまり、第1燃焼室10Xに向かって)突出するように折れ曲がっている。なお、本開示の技術はこれに限定されず、変形部D1は、周壁部の径方向外側へ突出するように折れ曲がっていてもよいし、環状に形成されていなくともよい。例えば、変形部は、周壁部の周上に断続的に形成されていてもよい。つまり、本開示において「変形部D1が形成されている」とは、作動したときに周壁部12の変形が発生するように形成されているという意味である。
【0031】
また、
図1に示すように、天板部22は、周壁部12に接続する周辺部221と、周辺部221に隣接する中央部222と、を有する。ここで、周辺部221と周壁部12とがなす角をC1とし、周辺部221と中央部222とがなす角をC2とする。このとき、周辺部221は、周壁部12の高さ方向に沿った断面において、C1及びC2が何れも鈍角となるように傾斜している。なお、鈍角とは、直角よりも大きく平角よりも小さい角のことをいう。
【0032】
[点火装置]
第1点火装置4X及び第2点火装置4Yは、下部シェル3の底板部32に固定されている。各点火装置は、着火電流の供給により作動することで内部に収容された点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物を外部に放出する。これにより、各点火装置の周囲のガス発生剤が燃焼する。
【0033】
[内筒部材]
第1内筒部材5X及び第2内筒部材5Yは、一端(上端)が閉塞し他端(下端)が開口した筒状に形成されている。第1内筒部材5Xは第1点火装置4Xを、第2内筒部材5Yは第2点火装置4Yを、それぞれ取り囲むように高さ方向に沿って取り付けられている。第1内筒部材5Xと第1点火装置4Xとの間には、伝火薬110が配置される空間である伝火室51が形成されている。一方、第2内筒部材5Yと第2点火装置4Yとの間には、第2ガス発生剤120Yが配置される空間である第2燃焼室10Yが形成されている。また、第1内筒部材5X及び第2内筒部材5Yには、その内部空間と外部空間とを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、各点火装置が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)や他の閉塞部材など、公知の方法により閉塞されている。
【0034】
[リテーナ]
リテーナ7は、フィルタ6を支持する部材である。
図1に示すように、リテーナ7は、環状部71と筒状部72とを有する。環状部71は、環状に形成されており、周壁部12
の内壁面に対して圧入されている。より詳細には、周壁部12において変形部D1を基準として天板部22側(即ち上側)にある周壁部12の内壁面に対して環状部71が圧入されている。筒状部72は、環状部71の内周縁から下側に延びる筒状に形成されており、その下端が底板部32の内壁面に当接している。筒状部72は、底板部32に固定されていない。これにより、リテーナ7は、周壁部12において変形部D1を基準として天板部22側にある周壁部12の内壁面に対して圧入され、且つ底板部32に非固定となっている。リテーナ7は、本開示における「保持部材」に相当する。なお、筒状部72が変形部D1に接触して変形しないように、環状部71の径方向の幅寸法が設定されている。また、リテーナ7において、環状部71の外周縁から上側に延在する筒部を一体に形成することで、圧入の際におけるリテーナ7と周壁部12の内壁面との接触面積を増やしてもよい。
【0035】
[フィルタ]
図1に示すように、フィルタ6は、筒状に形成されており、ガス発生剤120を取り囲み、且つ、その径方向においてガス排出孔11がその外側に位置するように、燃焼室10に配置されている。つまり、フィルタ6は、ガス発生剤120を取り囲むように、ガス発生剤120とガス排出孔11との間に配置されている。フィルタ6は、軸方向の両端のうち、一端(符号61で示す上端面)が上部シェル2の天板部22に当接され、且つ他端(符号62で示す下端面)がリテーナ7の環状部71に保持された状態となっている。つまり、フィルタ6は、上端面61が天板部22に当接し、且つ、下端面62が変形部D1を基準として天板部22側に位置するように、ハウジング1内に配置されている。フィルタ6と周壁部12との間には、間隙13が形成されている。このフィルタ6は、各燃焼室10に配置されたガス発生剤の燃焼ガスがフィルタ6を通過する際に、燃焼ガスの熱を奪い取ることで当該燃焼ガスを冷却する。また、フィルタ6は、燃焼ガスの冷却機能に加え、燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集することで当該燃焼ガスを濾過する機能を有する。なお、
図1中、符号63はフィルタ6の内周面を示し、符号64はフィルタ6の外周面を示す。本例では、フィルタ6の上端面61と天板部22とが直接当接し、下端面62と環状部71とが直接当接しているが、これらの間にガスケットなどのシール部材が介在していてもよい。
【0036】
[伝火薬]
伝火薬110としては、公知の黒色火薬の他、着火性が良く、第1ガス発生剤120X及び第2ガス発生剤120Yよりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬110の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲に設定することができる。このような伝火薬としては、例えば、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む、公知のものを用いることができる。また、伝火薬110には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0037】
[ガス発生剤]
第1ガス発生剤120X及び第2ガス発生剤120Yには、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用することができ、その燃焼温度は、1000~1700℃の範囲に設定することができる。このようなガス発生剤としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、第1ガス発生剤120X及び第2ガス発生剤120Yには、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0038】
[動作]
以下、
図1を参照しながら、実施形態1に係るガス発生器100の動作について説明する。まず、センサ(図示せず)が衝撃を感知すると、第1点火装置4Xに着火電流が供給され、第1点火装置4Xが作動する。これにより、伝火室51に配置された伝火薬110
が燃焼し、燃焼ガスが発生する。伝火薬110の燃焼ガスは、第1内筒部材5Xの連通孔52を閉塞していたシールテープを破って当該連通孔52から伝火室51の外部へ放出される。そうすると、伝火薬110の燃焼ガスが第1ガス発生剤120Xと接触し、第1ガス発生剤120Xが着火される。第1ガス発生剤120Xが燃焼することで、第1燃焼室10Xに高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがフィルタ6を通過することで、燃焼ガスが冷却され、燃焼残渣が捕集される。フィルタ6によって冷却及び濾過された第1ガス発生剤120Xの燃焼ガスは、間隙13を通り、ガス排出孔11を閉塞していたシールテープを破ってガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。次に、第2点火装置4Yが作動し、第2燃焼室10Yに配置された第2ガス発生剤120Yが燃焼し、その燃焼ガスが発生する。第2ガス発生剤120Yの燃焼ガスは、第2内筒部材5Yの連通孔52を閉塞していたシールテープを破って第1燃焼室10Xへ流れ込み、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。第1ガス発生剤120X及び第2ガス発生剤120Yの燃焼ガスは、ハウジング1の外部へ放出された後に、エアバッグ(図示せず)内に流入する。エアバッグが膨張することで、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0039】
ところで、ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して燃焼室に燃焼ガスが発生することにより、燃焼室を形成するハウジングの内圧が上昇すると、ハウジングが膨張するように変形する場合がある。つまり、ハウジングがその内容積を増大させるように変形する場合がある。ここで、一般的に、天板部と底板部とを筒状の周壁部のみによって接続した構造のハウジングでは、周壁部以外に天板部と底板部とを接続又は固定する部材が存在しないため、周壁部よりも天板部や底板部の方が大きく変形し易い傾向がある。ハウジングの内圧が上昇することで、天板部や底板部には、天板部や底板部をフィルタの端面から離そうとする方向に圧力が作用するが、仮に、内圧の上昇によるハウジングの膨張により天板部や底板部が変形し、フィルタの端面と天板部又は底板部との間に隙間が形成されると、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずに当該隙間を通ってガス排出孔に至ることが懸念される。つまり、いわゆる「ショートパス」が発生する虞がある。
【0040】
ここで、
図3は、ガス発生器100が作動した状態を示す図である。実施形態1に係るガス発生器100は、燃焼ガスの圧力によりハウジング1が膨らむように変形した場合であってもショートパスを抑制できるように構成されている。以下、詳細に説明する。
【0041】
第1点火装置4X及び第2点火装置4Yが作動すると、燃焼ガスの発生により第1燃焼室10Xの内圧が上昇する。このとき、上述のように、周壁部12には、周壁部12における他の部分よりも変形し易い変形部D1が形成されている。そのため、第1燃焼室10X内の圧力増加によりハウジング1が膨張するように変形する場合には、変形部D1が周壁部12における他の部分よりも優先して変形する。このとき、
図1及び
図3に示すように、変形部D1は、折れ曲がった状態から伸びるように変形する。これにより、変形部D1が変形した状態の周壁部12の高さは、変形部D1が変形する前の状態よりも高くなる。つまり、ハウジング1は、天板部22の全体が底板部32に対して相対的に持ち上がるように変形する。これにより、ハウジング1の容積が増加する。
【0042】
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るガス発生器100は、第1燃焼室10X内の圧力増加により変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるように構成されている。これにより、第1燃焼室10X内の圧力増加による影響が天板部22及び底板部32に及び難くなっている。つまり、ハウジング1の膨張が変形部D1の変形によるハウジング1の容積増加により吸収されることで、天板部22及び底板部32の変形が抑制されている。更に、ガス発生器100では、上端面61が天板部22に当接し且つ下端面62が変形部D1を基準として天板部22側に位置するように、フィルタ6がハウジング1内に配置されて
いる。つまり、フィルタ6を変形部D1よりも天板部22側に配置することで、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときには、フィルタ6は、天板部22と共に持ち上がることとなる。このように、第1燃焼室10X内の圧力増加によりハウジング1が変形する場合でも、天板部22の変形が抑制され且つフィルタ6が天板部22と共に持ち上がることで、
図3に示すように、フィルタ6の上端面61と天板部22との当接状態が維持される。その結果、実施形態1に係るガス発生器100によると、天板部22がフィルタ6の上端面61から離れることによるショートパスを抑制できる。
【0043】
更に、実施形態1に係るガス発生器100は、周壁部12において変形部D1を基準として天板部22側にある該周壁部12の内壁面に対して圧入され、且つ底板部32には非固定のリテーナ7を備えている。そして、ガス発生器100は、フィルタ6の下端面62がリテーナ7により保持され、且つフィルタ6の上端面61が天板部22の内壁面に当接した状態となるように構成されている。これによると、リテーナ7が変形部D1よりも天板部22側において周壁部12に圧入され且つ底板部32に対しては非固定であるから、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときには、リテーナ7は、圧入した位置から移動することなくフィルタ6と共に天板部22の側へ持ち上がることとなる。そのため、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときでも、リテーナ7によるフィルタ6の下端面62の保持状態が維持される。その結果、実施形態1に係るガス発生器100では、リテーナ7がフィルタ6の下端面62から離れることによるショートパスも抑制できる。なお、本実施形態に係るリテーナ7は、周壁部12に圧入された環状部71から下方に延びる筒状部72を有するが、筒状部72は必須の構成ではない。
【0044】
また、実施形態1に係るガス発生器100では、変形部D1は、周壁部12の一部として形成され、更に、該周壁部12の他の部分よりも壁の厚さが薄く、且つ、該周壁部12の高さ方向に沿った断面において折れ曲がって形成されている。これによると、変形部D1を薄肉に形成することで、変形部D1を周壁部12における他の部分よりも変形し易くでき、変形部D1を折れ曲がって形成することで、周壁部12の高さが高くなるように変形部D1を変形させることができる。
【0045】
更に、実施形態1に係るガス発生器100では、天板部22は、周壁部12に接続し且つフィルタ6の上端面61が当接する周辺部221と、該周辺部221に隣接する中央部222と、を有する。そして、周壁部12の高さ方向に沿った断面において、周辺部221は、周壁部12及び中央部222のそれぞれに対して鈍角で交わるように傾斜している。そのため、
図1及び
図3に示すように、周辺部221は、フィルタ6の上端面61に対してフィルタ6の径方向外側から当接する。これにより、フィルタ6の上端面61は周辺部221によって、ガス発生剤の燃焼による径方向外側への荷重に対して当接して支持される。これにより、ガス発生剤の燃焼によりフィルタ6に作用する径方向外側への荷重によってフィルタ6がずれることが規制され、フィルタ6の上端面61と天板部22との当接状態を維持することができる。その結果、より好適にショートパスを抑制できる。
【0046】
[実施形態1の変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るガス発生器について説明する。変形例の説明では、
図1~
図3で説明したガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0047】
[実施形態1の変形例1]
図4は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器100Aの軸方向断面図である。
図4では、ガス発生器100Aの作動前の状態が示されている。
図5は、ガス発生器100Aが作動した状態を示す図である。
図4に示すように、ガス発生器100Aでは、フィルタ6の下端面62がリテーナ7Aにより保持され、且つフィルタ6の上端面61は天板部2
2の内壁面に当接された状態となっている。ガス発生器100Aに係るリテーナ7Aは、周壁部12の内壁面に対して圧入されており、更に変形部D1の上に載置されることでハウジング1の内部で変形部D1により支持されている。そして、リテーナ7Aは、底板部32に非固定となっている。
【0048】
ガス発生器100Aにおいても、上述のガス発生器100と同様の効果を得ることができる。即ち、ガス発生器100Aによると、第1燃焼室10X内の圧力増加によりハウジング1が変形する場合でも、周壁部12の高さが高くなるように変形部D1が変形することで、天板部22の変形が抑制され且つフィルタ6がリテーナ7Aと共に天板部22の側に持ち上がることとなる。そのため、
図5に示すように、フィルタ6の上端面61と天板部22、およびフィルタ6の下端面62とリテーナ7Aとの当接状態が維持される。その結果、ガス発生器100Aによると、フィルタ6の上端面61および下端面62で発生するショートパスを抑制できる。
【0049】
[実施形態1の変形例2]
図6は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bの軸方向断面図である。
図6では、ガス発生器100Bの作動前の状態が示されている。
図7は、ガス発生器100Bが作動した状態を示す図である。
図6に示すように、ガス発生器100Bに係る周壁部12は、変形部D1を基準として天板部22側にある該周壁部12の内壁面から第1燃焼室10Xに向けて突出した突起部121を有する。突起部121は、周壁部12の周上に断続的に形成されている。但し、本開示に係る突起部は、周壁部の周上に連続して環状に形成されてもよい。ガス発生器100Bは、上述のリテーナ7やリテーナ7Aを備えずに突起部121によってフィルタ6の下端面62を保持する構成となっている。
図6に示すように、ガス発生器100Bでは、フィルタ6の下端面62が突起部121により保持され、且つフィルタ6の上端面61が天板部22の内壁面に当接された状態となっている。
【0050】
ガス発生器100Bにおいても、上述のガス発生器100と同様に、天板部22がフィルタ6の上端面61から離れることによるショートパスを抑制できる。また、突起部121が変形部D1を基準として天板部22側に形成されていることから、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときには、突起部121は、天板部22と共に持ち上がることとなる。そのため、
図7に示すように、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときでも突起部121によるフィルタ6の下端面62の保持状態が維持される。その結果、ガス発生器100Bによると、突起部121がフィルタ6の下端面62から離れることによるショートパスも抑制できる。なお、突起部121を周壁部12において断続的に形成する場合は、フィルタ6の下端部近傍での燃焼ガスのショートパス防止の点から、フィルタ6の下端面62と突起部121との間に環状のシール部材を配置する構造としてもよい。シール部材を使用しない場合は、フィルタ6の下端面62側の外周面64を下側周壁部31に圧入する構造としてもよい。
【0051】
[実施形態1の変形例3]
図8は、実施形態1の変形例3に係るガス発生器100Cの軸方向断面図である。
図8では、ガス発生器100Cの作動前の状態が示されている。
図8に示すように、実施形態1の変形例3に係るハウジング1は、ハウジング1の内部空間を第1燃焼室10Xと第2燃焼室10Yとに隔てると共にフィルタ6の下端面62を当接して支持する、隔壁部14を有する。隔壁部14は、周壁部12の高さ方向において、天板部22と底板部32との間に設けられている。隔壁部14には、貫通孔14aが形成されている。ガス発生器100Cに係る第1内筒部材5Xは、第1点火装置4Xを取り囲むように周壁部12の高さ方向に沿って取り付けられると共に隔壁部14の貫通孔14aを貫通しており、その上端部が開口している。ガス発生器100Cに係る第2内筒部材5Yは、第2点火装置4Yを取り囲むように周壁部12の高さ方向に沿って取り付けられると共に隔壁部14を貫通せず
に上端部が閉塞している。なお、第2内筒部材5Y内に伝火薬110が充填されていてもよい。ガス発生器100Cでは、天板部22と底板部32と周壁部12と隔壁部14と第1内筒部材5Xによって、第1燃焼室10Xが画定されている。第1内筒部材5Xの内部空間は、第1燃焼室10Xに含まれる。また、隔壁部14と周壁部12と底板部32と第2内筒部材5Yとによって、第2燃焼室10Yが画定されている。第1燃焼室10Xには、第1点火装置4Xの作動により燃焼する第1ガス発生剤120Xが配置され、第2燃焼室10Yには、第2点火装置4Yの作動により燃焼する第2ガス発生剤120Yが配置される。
【0052】
第1内筒部材5Xの内側には、その内部空間を上下に仕切る、仕切部材P1が配置されている。これにより、第1内筒部材5Xの内部空間のうち、仕切部材P1よりも下側(第1点火装置4X側)の空間は、伝火薬110が配置される伝火室51として形成されている。また、第1内筒部材5Xには、その内部空間(即ち第1燃焼室10X)と第2燃焼室10Yとを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、第2点火装置4Yが作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)などにより閉塞されている。
【0053】
図8に示すように、ガス発生器100Cでは、周壁部12において隔壁部14を基準とした天板部22側の所定の高さの位置に、変形部D1が該周壁部12の一部として該周壁部12の周上に形成されている。変形部D1は、周壁部12の高さ方向に沿った断面において、周壁部12の他の部分よりも壁の厚さが薄く、且つ、折れ曲がって形成されている。また、ガス発生器100Cに係るリテーナ7は、周壁部12において変形部D1を基準として天板部22側にある周壁部12の内壁面に対して圧入されており、且つ隔壁部14に非固定となっている。また、ガス発生器100Cのフィルタ6は、下端面62がリテーナ7に保持され、且つ上端面61が天板部22の内壁面に当接された状態となっている。
【0054】
このようなガス発生器100Cが作動する場合、まず、第1点火装置4Xが作動し、第1燃焼室10Xの伝火室51に配置された伝火薬110が燃焼し、その燃焼ガスが発生する。伝火薬110の燃焼ガスによって仕切部材P1が燃焼し、除去されることで、該燃焼ガスが第1ガス発生剤120Xと接触し、第1ガス発生剤120Xが着火される。第1ガス発生剤120Xが燃焼することで、第1燃焼室10Xに燃焼ガスが生成される。第1ガス発生剤120Xの燃焼ガスは、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。次に、第2点火装置4Yが作動し、第2燃焼室10Yに配置された第2ガス発生剤120Yが燃焼し、その燃焼ガスが発生する。第2ガス発生剤120Yの燃焼ガスは、第1内筒部材5Xの連通孔52を閉塞していたシールテープを破って第1燃焼室10Xへ流れ込み、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。
【0055】
ガス発生器100Cにおいても、上述のガス発生器100と同様の効果を得ることができる。即ち、ガス発生器100Cによると、第1燃焼室10X内の圧力増加によりハウジング1が変形する場合でも、周壁部12の高さが高くなるように変形部D1が変形することで、天板部22の変形が抑制され且つフィルタ6が天板部22と共に持ち上がることとなる。そのため、フィルタ6の上端面61と天板部22との当接状態が維持され、天板部22がフィルタ6の上端面61から離れることによるショートパスを抑制できる。また、リテーナ7が変形部D1よりも天板部22側において周壁部12に圧入され且つ隔壁部14に対しては非固定であるから、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときには、リテーナ7は、天板部22と共に持ち上がることとなる。そのため、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときでもリテーナ7によるフィルタ6の下端面62の保持状態が維持され、リテーナ7がフィルタ6の下端面62から離れることによるショートパスも抑制できる。
【0056】
<実施形態2>
図9は、実施形態2に係るガス発生器200の軸方向断面図である。
図9では、ガス発生器200の作動前の状態が示されている。ガス発生器200は、点火装置を1つのみ備えた、いわゆるシングルタイプのガス発生器として構成されている。上述の実施形態1では、点火部が第2壁部に固定された複数の点火装置を含み、複数の点火装置の各々に対応して、それぞれの点火装置を取り囲む複数の筒状の内筒部材が、周壁部の高さ方向に沿って取り付けられている構成のガス発生器について説明したが、本開示に係る技術はシングルタイプのガス発生器にも適用できる。以下、実施形態2に係るガス発生器200について、ガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0057】
図9に示すように、実施形態2に係るガス発生器200は、点火装置4と、内筒部材5と、フィルタ6と、リテーナ7と、伝火薬110と、ガス発生剤120と、これらを収容するハウジング1と、を備えている。ハウジング1の天板部22と底板部32と周壁部12とによって、ガス発生剤120が配置される燃焼室10が画定されている。また、内筒部材5は、一端(上端)が閉塞し他端(下端)が開口した筒状に形成されており、点火装置4を取り囲むように高さ方向に沿って取り付けられている。内筒部材5と点火装置4との間には、伝火室51が形成され、伝火薬110が配置されている。ガス発生器200では、点火装置4が本開示に係る「点火部」に相当する。
【0058】
ガス発生器200では、変形部D1が周壁部12の一部として形成されている。変形部D1は、周壁部12の高さ方向に沿った断面において、周壁部12の他の部分よりも壁の厚さが薄く、且つ、折れ曲がって形成されている。また、リテーナ7は、周壁部12において変形部D1を基準として天板部22側にある周壁部12の内壁面に対して圧入されており、且つ底板部32に非固定となっている。また、ガス発生器200のフィルタ6は、下端面62がリテーナ7に保持され、且つ上端面61が天板部22の内壁面に当接された状態となっている。
【0059】
ガス発生器200においても、実施形態1に係るガス発生器100と同様の効果を得ることができる。即ち、ガス発生器200によると、燃焼室10内の圧力増加によりハウジング1が変形する場合でも、周壁部12の高さが高くなるように変形部D1が変形することで、天板部22の変形が抑制され且つフィルタ6が天板部22と共に持ち上がることとなる。そのため、フィルタ6の上端面61と天板部22との当接状態が維持され、天板部22がフィルタ6の上端面61から離れることによるショートパスを抑制できる。また、が変形部D1よりも天板部22側において周壁部12に圧入され且つ底板部32に対しては非固定であるから、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときには、リテーナ7は、天板部22と共に持ち上がることとなる。そのため、変形部D1が変形して周壁部12の高さが高くなるときでもリテーナ7によるフィルタ6の下端面62の保持状態が維持され、リテーナ7がフィルタ6の下端面62から離れることによるショートパスも抑制できる。
【0060】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
100,200 ガス発生器
1 ハウジング
11 ガス排出孔
12 周壁部
121 突起部
2 上部シェル
22 天板部(第1壁部の一例)
3 下部シェル
32 底板部(第2壁部の一例)
4,4X,4Y 点火装置(点火部の一例)
5,5X,5Y 内筒部材
6 フィルタ
61 上端面(フィルタの一端)
62 下端面(フィルタの他端)
7,7A リテーナ(保持部材の一例)
10,10X,10Y 燃焼室
120,120X,120Y ガス発生剤
D1 変位部