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特許7428603ゲート構造及びそれに用いられるシール部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ゲート構造及びそれに用いられるシール部材
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/26 20060101AFI20240130BHJP
   E02B 7/54 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E02B7/26 Z
E02B7/54 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020113091
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011750
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 廣治
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-21862(JP,A)
【文献】特開2003-120817(JP,A)
【文献】実開平5-12844(JP,U)
【文献】特開平9-3860(JP,A)
【文献】米国特許第4832527(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00-13/02
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられるゲート構造であって、
上下にスライド移動して流路内に流れる流体を止水可能なスライド式ゲートと、
上記スライド式ゲートの上流側に配置され、上流側開口を有する第1部材と、
上記スライド式ゲートの下流側に配置され、下流側開口を有し、上記第1部材との第1合わせ面において密閉状に結合される第2部材と、
上記第1部材と上記第2部材とを結合させて形成される上記スライド式ゲートのゲート用出入口を第2合わせ面で覆う第3部材と、
上記第1合わせ面及び上記第2合わせ面に形成された連続する溝部に嵌め込まれるシール部材とを備え、
上記シール部材は、
上記第1合わせ面に配置されるU字状の第1部分と、
上記第1部分の端部に連結され上記ゲート用出入口を囲む枠状の第2部分とが一体に設けられ、
上記第1部分と上記第2部分とが交わるT字状部分の第1部分における、上記第2部分から所定距離離れた位置には、該第1部分の他の部分よりも幅広な幅広部が一体に設けられ、
上記第1合わせ面の溝部には、上記幅広部に対応する幅広溝部が設けられている
ことを特徴とするゲート構造。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート構造であって、
上記シール部材は、断面円形であり、上記幅広部は、上記第1合わせ面に垂直な方向から見て矩形状である
ことを特徴とするゲート構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゲート構造であって、
上記第2部材における上記第1合わせ面には、U字状の第1溝部が形成され、
上記第2部材における上記第2合わせ面には、上記第1溝部に連続するU字状の第2溝部が形成され、
上記第1部材における上記第2合わせ面には、上記第2溝部に連続するU字状の第3溝部が形成され、
上記幅広溝部は、上記第1溝部に形成されている
ことを特徴とするゲート構造。
【請求項4】
請求項3に記載のゲート構造であって、
上記第1部材は、上流側ケーシングで、
上記第2部材は、下流側ケーシングで、
上記第3部材は、上記スライド式ゲートが出入りするゲート用開口を有するボンネットである
ことを特徴とするゲート構造。
【請求項5】
ゲート構造に用いられるシール部材であって、
第1部材と第2部材との第1合わせ面のU字状の溝部に収容される第1部分と、
上記第1部分の端部に垂直に連結され、上記第1合わせ面に垂直な、第3部材との第2合わせ面に設けられた枠状の溝部に収容される第2部分とが一体に設けられ、
上記第1部分と上記第2部分とが交わるT字状部分の第1部分における、上記第2部分から所定距離離れた位置には、該第1部分の他の部分よりも幅広な幅広部が一体に設けられている
ことを特徴とするゲート構造に用いられるシール部材。
【請求項6】
請求項5に記載のゲート構造に用いられるシール部材において、
上記シール部材は、断面円形であり、上記幅広部は、上記第1合わせ面に垂直な方向から見て矩形状である
ことを特徴とするゲート構造に用いられるシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート構造及びそれに用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ダム用水門設備等に高圧スライド式ゲート構造が用いられている。高圧スライド式ゲートのケーシング及びボンネットを構成する各分割ブロックのうち、ケーシング部の下流側はスライド式ゲートと接触して、スライド式ゲートに作用する水圧荷重を支持すると共に、スライド式ゲートとの接触面では金属同士が密着して止水をする、最も重要な部位である。高圧スライド式ゲート構造では、ボンネット内も高圧となる。
【0003】
そして、金属接触で止水性能を確保するために、ケーシング部の下流側に設ける水密面は高精度で機械加工仕上げを行う必要があり、工作機械の加工工具(切削刃物等)がケーシング部下流側の加工対象面(水密面)に届くようにする必要がある。
【0004】
また、この種の高圧スライド式ゲート構造は、比較的大きな構造物であり、施工現場に運搬するために、輸送可能な寸法及び質量の部材で構成される必要がある。
【0005】
このため、ケーシング部の上流側と下流側を別のブロックで製作し、機械加工時には、水密面が開放された状態で加工できるようにしている。
【0006】
なお、ゲート構造ではないが、ガスケット構造として、突起形状を設けるものは知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-204941号公報
【文献】特許第4144208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上流側ケーシング、下流側ケーシング及びボンネットの3つのブロック(部材)に分割される場合、これら3つの部材の分割線がT字状に交差する部分から漏水が生じやすいという問題が生じている。
【0009】
このT字状に交差する部分は、従来、T字型に一体成形した丸ゴムパッキンを用いて部材間の水密を行っていた。
【0010】
このT字型の丸ゴムパッキンは、上流側ケーシングと下流側ケーシングとを結合した際にT字型の上辺部分が押し上げられ、ボンネットを結合したときに、丸ゴムパッキンと溝底との間で当たりの弱い部分が生じ、そこから漏水が発生するという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゲート構造の各部品の合わせ面に設けられるシール部材における漏水を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、シール部材の一部にシール部材の移動を規制する幅広部を設けた。
【0013】
具体的には、第1の発明では、流路に設けられるゲート構造を対象とし、
上記ゲート構造は、
上下にスライド移動して流路内に流れる流体を止水可能なスライド式ゲートと、
上記スライド式ゲートの上流側に配置され、上流側開口を有する第1部材と、
上記スライド式ゲートの下流側に配置され、下流側開口を有し、上記第1部材との第1合わせ面において密閉状に結合される第2部材と、
上記第1部材と上記第2部材とを結合させて形成される上記スライド式ゲートのゲート用出入口を第2合わせ面で覆う第3部材と、
上記第1合わせ面及び上記第2合わせ面に形成された連続する溝部に嵌め込まれるシール部材とを備え、
上記シール部材は、
上記第1合わせ面に配置されるU字状の第1部分と、
上記第1部分の端部に連結され上記ゲート用出入口を囲む枠状の第2部分とが一体に設けられ、
上記第1部分と上記第2部分とが交わるT字状部分の第1部分における、上記第2部分から所定距離離れた位置には、該第1部分の他の部分よりも幅広な幅広部が一体に設けられ、
上記第1合わせ面の溝部には、上記幅広部に対応する幅広溝部が設けられている。
【0014】
上記の構成によると、第1部材と第2部材とを結合する際に押し付けられた第1部分が、溝部内で、その長手方向に延びようとすると、幅広部が幅広溝部の壁面によって移動が規制される。このため、実質的には、幅広部よりも上側の第1部分の延び量のみが第2合わせ面へ影響を及ぼすことから、第2合わせ面でのシール部材の飛び出し量が効果的に抑えられる。このため、第3部材で第2合わせ面を閉じたときには、シール部材と溝部の底面との間での当たりの弱い部分が生じにくくなり、漏水が確実に防止される。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、
上記シール部材は、断面円形であり、上記幅広部は、上記第1合わせ面に垂直な方向から見て矩形状である。
【0016】
上記の構成によると、矩形状の幅広な形状に成形された幅広部が、幅広溝部の壁面に当たって、その移動が確実に規制される。また、幅広溝部は、溝部を成形するときに用いるエンドミルなどの工具で容易に加工できる。
【0017】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記第2部材における上記第1合わせ面には、U字状の第1溝部が形成され、
上記第2部材における上記第2合わせ面には、上記第1溝部に連続するU字状の第2溝部が形成され、
上記第1部材における上記第2合わせ面には、上記第2溝部に連続するU字状の第3溝部が形成され、
上記幅広溝部は、上記第1溝部に形成されている。
【0018】
上記の構成によると、第2部材の第1溝部を加工する際に、幅広溝部を容易に加工できる。また、第2部材の第1溝部にシール部材の第1部分を嵌め込んで、第1部材と第2部材とを結合した際に、幅広部が幅広溝部内で移動規制され、その後、第2合わせ面の第2溝部にシール部材の第2部分を嵌め込む際に、シール部材と溝部の底面との間での当たりの弱い部分が生じにくくなり、漏水が確実に防止される。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、
上記第1部材は、上流側ケーシングで、
上記第2部材は、下流側ケーシングで、
上記第3部材は、上記スライド式ゲートが出入りするゲート用開口を有するボンネットである。
【0020】
上記の構成によると、スライド式ゲートの戸当たりが形成される水密板の役割を果たす下流側ケーシングに機械加工を施し、第1溝部を形成する際に、幅広溝部も形成できる。このため、幅広溝部の形成が極めて容易である。
【0021】
第5の発明では、ゲート構造に用いられるシール部材を対象とし、
上記シール部材は、
第1部材と第2部材との第1合わせ面のU字状の溝部に収容される第1部分と、
上記第1部分の端部に垂直に連結され、上記第1合わせ面に垂直な、第3部材との第2合わせ面に設けられた枠状の溝部に収容される第2部分とが一体に設けられ、
上記第1部分と上記第2部分とが交わるT字状部分の第1部分における、上記第2部分から所定距離離れた位置には、該第1部分の他の部分よりも幅広な幅広部が一体に設けられている。
【0022】
上記の構成によると、上述した第1の発明の作用効果を発揮できるシール部材が容易に得られる。
【0023】
第6の発明では、第5の発明において、
上記シール部材は、断面円形であり、上記幅広部は、上記第1合わせ面に垂直な方向から見て矩形状である。
【0024】
上記の構成によると、矩形状の幅広な形状に成形された幅広部が、第2部材の幅広溝部で確実に移動規制される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、第1合わせ面及び上記第2合わせ面に形成された連続する溝部に嵌め込まれるシール部材に、T字状部分の第1部分における、第2部分から所定距離離れた位置に、第1部分の他の部分よりも幅広な幅広部を一体に設け、第1合わせ面の溝部に、幅広部に対応する幅広溝部を設けたことにより、第1部分の第2合わせ面側への延びを抑え、ゲート構造の各部品の合わせ面に設けられるシール部材における漏水を確実に防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高圧スライド式ゲートを示す分解斜視図である。
図2】高圧スライド式ゲートを示す斜視図である。
図3】下流側ケーシングの第1合わせ面、第2合わせ面及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
図4】下流側ケーシングの溝部にシール部材を嵌め込んだ後、上流側ケーシングを重ねる状態を拡大して示す斜視図である。
図5】下流側ケーシングの溝部にシール部材を嵌め込み、上流側ケーシングを重ねた状態を拡大して示す斜視図である。
図6】シール部材の成形手順を示す斜視図であり、(a)がT字状部分を第1部分に接着する様子を示し、(b)がT字状部分を第2及び第3部分にそれぞれ接着した状態を示す。
図7】シール部材の全体を示す斜視図である。
図8】従来技術に係るシール部材の施工手順を示す斜視図であり、(a)が第1部分を第1合わせ面で挟み込んだ状態を示し、(b)が第1部分の余分な部位を切削した状態を示し、(c)が第2及び第3部分を第1部分に接着した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る、流路に設けられるゲート構造1を示す。このゲート構造1は、ボンネット内に高水圧が作用する高圧スライド式ゲートであり、上下にスライド移動して流路内に流れる流体を止水可能なスライド式ゲート8を備えている。
【0029】
スライド式ゲート8の上流側には、矩形状の上流側開口2aを有する第1部材としての上流側ケーシング2が配置されている。
【0030】
スライド式ゲート8の下流側には、下流側開口3aを有し、上流側ケーシング2の第1合わせ面2bとの第1合わせ面3bにおいて密閉状に結合される第2部材としての下流側ケーシング3が配置されている。第1合わせ面3bは、下辺と左右両辺とからなるU字状である。ゲート構造1の各ケーシング及びボンネットを構成する各分割ブロックのうち、下流側ケーシング3は、スライド式ゲート8と接触して、スライド式ゲート8に作用する水圧荷重を支持すると共に、スライド式ゲート8との接触面(水密面3e)では金属同士が密着して止水をする、最も重要な部位である。
【0031】
そして、金属接触で止水性能を確保するために、下流側ケーシング3に設ける水密面3eは高精度で機械加工仕上げを行う必要があり、工作機械の加工工具(切削刃物等)が下流側ケーシング3の加工対象面(水密面3e)に届くようにする必要がある。
【0032】
このため、ケーシング部の上流側及び下流側をそれぞれ別々の上流側ケーシング2と下流側ケーシング3で製作し、機械加工時には、水密面3eが開放された状態で加工できるようにしている。下流側ケーシング3の製作の最終段階では、下流側ケーシング3の水密面3eを上に向けて置き、その上にスライド式ゲート8を載せて隙間を光明丹で着色することで「接触度合」を確認しながら「擦り合わせ調整」で修正を行い、高度な水密性を確保している。このときの下流側ケーシング3は、上流側ケーシング2との第1合わせ面3bが上を向いている。
【0033】
そして、この状態から引き続いて、上流側ケーシング2及び中間ボンネット4を接合するためには、下流側ケーシング3の上に上流側ケーシング2を載せてボルト接合する手順が合理的であり、シール部材20の位置がずれないように、第1溝部10は組立時に下になる側に設けることが通例である。このことから、本実施形態を含め、ほとんどの設備において、下流側ケーシング3側に第1溝部10が設けられている。
【0034】
そして、上流側ケーシング2と下流側ケーシング3とを結合させて形成されるスライド式ゲート8のゲート用出入口2d,3dを第2合わせ面2c,3cで覆う第3部材としての中間ボンネット4が設けられている。第2合わせ面2c,3cは、矩形状のゲート用出入口2d,3dを囲む矩形枠状であり、上流側が上流側ケーシング2に形成され、下流側が下流側ケーシング3に形成されている。下流側ケーシング3における第1合わせ面3bには、U字状の第1溝部10が形成され、下流側ケーシング3における第2合わせ面3cには、第1溝部10に連続するU字状の第2溝部11が形成されている。一方、上流側ケーシング2の第2合わせ面2cには、第2溝部11に連続するU字状の第3溝部12が形成されている。これら第2溝部11と第3溝部12とが上流側ケーシング2と下流側ケーシング3が結合されたときに矩形枠状に連続するように形成されている。
【0035】
中間ボンネット4は、スライド式ゲート8が出入りする平面視矩形状の中間ゲート用開口4aが開口されており、下端部4bには、中間ゲート用開口4aの周縁に、第2合わせ面に当接する平坦面が形成されている。
【0036】
本実施形態では、中間ボンネット4の上側は、同様に上部ゲート用開口5aを有する上部ボンネット5で覆われている。中間ゲート用開口4a及び上部ゲート用開口5aにより、スライド式ゲート8が上方に移動したときに、その全体が収容可能となっている。
【0037】
さらに上部ボンネット5の上側がボンネットカバー6で密閉状に覆われている。ボンネットカバー6には、スライド式ゲート8を上下スライド移動させる油圧シリンダ7のシリンダロッド7aが出入りする円形のロッド用開口6aが設けられている。
【0038】
油圧シリンダ7の上部には、作業用のシリンダデッキ7bが設けられている。スライド式ゲート8は、シリンダロッド7aの先端に連結された矩形板状の扉体であり、その下流側平坦面が上記水密面3eに密着するように構成されている。
【0039】
ゲート構造1は、図7に示すように、上流側ケーシング2と下流側ケーシング3が結合されたときに、第1合わせ面3b及び第2合わせ面2c,3cに形成された連続する溝部10,11,12に嵌め込まれるシール部材20を備えている。
【0040】
図6にも示すように、シール部材20は、第1合わせ面3bの第1溝部10に嵌め込まれるU字状の第1部分21と、第1部分21の端部に連結されゲート用出入口2d,3dの周囲に形成された第2溝部11及び第3溝部12に嵌め込まれる枠状の第2部分22,23とが一体に設けられている。第1部分21と第2部分22,23とが交わるT字状部分25の垂直部分21aにおける、第2部分22,23から所定距離離れた位置には、第1部分21の他の部分よりも幅広な幅広部24が一体に設けられ、第1合わせ面3bの溝部には、幅広部24に対応する幅広溝部13が設けられている。すなわち、幅広部24は、U字状の第1部分21の一対の上端部側に設けられ、幅広溝部13は、U字状の第1溝部10の一対の上端部側に形成されている。
【0041】
シール部材20は、例えば、断面円形であり、幅広部24は、第1合わせ面3bに垂直な方向から見て矩形状である。
【0042】
-ゲート構造の施工手順-
施工手順(1)
まず、工場など上流側ケーシング2と下流側ケーシング3を接合した状態で吊り上げできるクレーンなどがある場合について説明する。
【0043】
最初に、図3に示すように、第1合わせ面3b、第2合わせ面3c、水密面3e、第1溝部10及び第2溝部11が形成された下流側ケーシング3を、第1合わせ面3bを上にして水平に設置する。本実施形態では、スライド式ゲート8の戸当たりが形成される、水密板の役割を果たす下流側ケーシング3に機械加工を施して第1溝部10を形成する際に、幅広溝部13も同じエンドミル等の工具で形成できるので、幅広溝部の形成が極めて容易である。
【0044】
次いで、下流側ケーシング3の第1溝部10に、シール部材20のU字状の第1部分21を嵌める。
【0045】
次いで、図4に示すように、下流側ケーシング3の第1合わせ面3b側の第1溝部10に、予めゴム成型メーカ等でT字形に成型したT字状部分25の下端部21aを嵌める。このとき、幅広部24が幅広溝部13に嵌まり込むようにする。
【0046】
次に、図6(a)に示すように、T字状部分25の先端に合わせて、第1部分21の上端を切断し、図6(b)に示すように、T字状部分25の下端部21aと接着剤で接合する。例えば、切断面は斜めにする。
【0047】
T字状部分25に成形した第3溝部12に嵌まる部分23aを、次に載せる上流側ケーシング2に挟まないように仮止めする。
【0048】
次に、図5に示すように、下流側ケーシング3の上に上流側ケーシング2を載せて、上流側ケーシング2及び下流側ケーシング3間をボルトで接合する。
【0049】
次いで、上流側ケーシング2及び下流側ケーシング3を接合したブロックをクレーンで吊り上げ、姿勢を回転させ、正規の姿勢で組立架台上に設置する。
【0050】
T字状部分25形に成形した第3溝部12に嵌まる部分23aの仮止めを外して、中間ボンネット4との第2合わせ面2cに設けた第3溝部12に嵌める。
【0051】
左右2箇所に取り付けたT字状部分25の間に、中間ボンネット4との第2合わせ面3c,2c用の第2部分22,23を、円環状に閉じるように現物で長さを合わせて切断し、図6(b)に示すように、T字状部分25の水平部22a,23aと接着剤で接合する。これにより、第1~第3溝部10~12に連続した図7に示すシール部材20が装着される。
【0052】
そして、上下流を一体化した上流側ケーシング2及び下流側ケーシング3の上に中間ボンネット4を載せて、上流側ケーシング2及び下流側ケーシング3と中間ボンネット4の間をボルトで接合する。
【0053】
施工手順(2)
次いで、施工現場などで、上流側ケーシング2と下流側ケーシング3を接合した状態で吊り上げできるクレーンなどがない場合について説明する。
【0054】
次に、詳しくは図示しないが、下流側ケーシング3を、正規の姿勢で図示しない組立架台上に設置し、転倒防止のサポートを設ける。
【0055】
次いで、下流側ケーシング3の第1合わせ面3bの第1溝部10に、線状の第1部分21を嵌める。
【0056】
次に、下流側ケーシング3の第1溝部10上端側に、予めT字形に成形したT字状部分25の下端部21aを嵌める。
【0057】
次いで、T字状部分25の先端に合わせて、第1部分21の上端を切断し、接着剤で接合する。
【0058】
次に、T字状部分25の上流側ケーシング2上面に嵌まる部分23aを、次に吊り込む上流側ケーシング2に挟まないように仮止めする。
【0059】
次いで、下流側ケーシング3の上流側に上流側ケーシング2を吊り込み、第1合わせ面3bが一致するように引き寄せて組立架台上に設置し、上流側ケーシング2及び下流側ケーシング3の間をボルトで接合する。
【0060】
次に、T字形に成型したT字状部分25の上流側ケーシング2上面に嵌まる部分23aの仮止めを外して、中間ボンネット4との第2合わせ面2cに設けた第3溝部12に嵌める。
【0061】
次いで、左右2箇所のT字形部の間に、中間ボンネット4との第2合わせ面3c,2c用の線状の第2及び第3部分22,23を、円環状に閉じるように現物で長さを合わせて切断し、接着剤で接合する。
【0062】
最後に、上下流を一体化した上下流ケーシング2,3の上に中間ボンネット4を載せて、上下流ケーシング2,3と中間ボンネット4の間をボルトで接合する。
【0063】
従来技術の施工手順(1)
まず、下流側ケーシング103を、第1合わせ面を上にして水平に設置する。
【0064】
次いで、下流側ケーシング103の第1合わせ面の第1溝部にシール部材120の第1部分121を嵌める。このとき、第1部分121の余長分は、図8(a)に示すように、下流側ケーシング103の左右2箇所の上端(第2合わせ面103c)から突出させておく。
【0065】
次に、下流側ケーシング103の上に上流側ケーシング102を載せて、上流側ケーシング102及び下流側ケーシング103間をボルトで接合する。
【0066】
次いで、上下流を接合したブロックをクレーンで吊り上げ、姿勢を回転させ、正規の姿勢で図示しない組立架台上に設置する。
【0067】
次に、上流側ケーシング102及び下流側ケーシング103の接合部から中間ボンネット4接合側へ上方向に突出している左右2箇所の第1部分121の余長分を切断し、第2合わせ面102c,103cに円環状に配置する第2部分122と接合できるように切断部121aを成形する。
【0068】
上記切断部121aに、中間ボンネットとの第2合わせ面102c,103c用の線状の第2部分122を合わせて接着剤で接合し、さらに、第2部分122が円環状に閉じるように第2部分122の長さを調節して切断し、接着剤で接合する。
【0069】
上下流を一体化した上下流ケーシング102,103の上に中間ボンネットを載せて、上下流ケーシング102,103と中間ボンネットの間をボルトで接合する。
【0070】
従来技術の施工手順(2)
下流側ケーシング103を、正規の姿勢で組立架台上に設置し、転倒防止のサポートを設ける。
【0071】
下流側ケーシング103の第1合わせ面の第1溝部に第1部分121を嵌める。
【0072】
このとき、第1部分121の余長分は、下流側ケーシング103の第2合わせ面103cから突出させておく。
【0073】
下流側ケーシング103の上流側に上流側ケーシング102を吊り込み、第1合わせ面が一致するように引き寄せて組立架台上に設置し、上流側ケーシング102及び下流側ケーシング103の間をボルトで接合する。
【0074】
上流側ケーシング102及び下流側ケーシング103の接合部から第2合わせ面103c側へ上方向に突出している左右2箇所の第1部分121の余長分を切断し、第2合わせ面102c,103cに円環状に配置する第2部分122と接合できるように切断部121aを成形する。
【0075】
上記切断部121aに、中間ボンネットとの第2合わせ面102c,103c用の線状の第2部分122を合わせて接着剤で接合し、さらに、第2部分122が円環状に閉じるように第2部分122の長さを調節して切断し、接着剤で接合する。
【0076】
上下流を一体化した上下流ケーシング102,103の上に中間ボンネットを載せて、上下流ケーシング102,103と中間ボンネットの間をボルトで接合する。
【0077】
このような従来の方法では、シール部材120のT字部分と上下流ケーシング102,103の溝部を確実に沿わせることができるが、丸ゴムパッキンの接合を行う作業者の技量が水漏れ品質に大きく影響するという問題がある。また、シール部材120の切り合わせ接合後は、直ちに次工程であるボンネットを積み重ねなければ、時間経過に伴い、圧縮されているU字状の第1部分121が徐々にはみ出してくると言う問題がある。
【0078】
しかしながら、上述した本実施形態に係るスライド式ゲート構造1では、上流側ケーシング2と下流側ケーシング3とを結合する際に押し付けられた第1部分21が、第1溝部10内で、その長手方向に延びようとすると、幅広部24が幅広溝部13の壁面によって、その移動が規制される。このため、実質的には、幅広部24よりも上側の第1部分21の延び量のみが第2合わせ面2c,3cへ影響を及ぼすことから、第2合わせ面2c,3cでのシール部材20の飛び出し量が効果的に抑えられる。このため、中間ボンネット4で第2合わせ面2c,3cを閉じたときには、シール部材20と第2及び第3溝部11,12の底面との間での当たりの弱い部分が生じにくくなり、漏水が確実に防止される。
【0079】
したがって、本実施形態に係るゲート構造1によると、ゲート構造1の各部品2,3,4の合わせ面に設けられるシール部材20における漏水を確実に防止することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0081】
すなわち、上記実施形態では、第1部材は、上流側ケーシング2で、第2部材は、下流側ケーシング3で、第3部材は、中間ボンネット4の例を示したが、例えば、第1部材が上流ケーシング兼ボンネットで、第2部材が下流側ケーシング兼ボンネットで、第3部材がボンネットカバーであったり、第1部材が上流側ケーシングで、第2部材が下流側ケーシングで、第3部材がそれらを密閉状に押さえる矩形枠状の板部材であったりしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ボンネット内に高水圧が作用する高圧スライド式ゲートについて説明したが、リングシールゲート、ボンネット内が比較的低圧なジェットフローゲート、開き状態で戸溝がなくて流量係数が高いリングホロワゲート、スルースバルブ等に用いるシール部材20について適用可能である。
【0083】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0084】
1 ゲート構造
2 上流側ケーシング(第1部材)
2a 上流側開口
2b,3b 第1合わせ面
2c,3c 第2合わせ面
2d,3d ゲート用出入口
3 下流側ケーシング(第2部材)
3a 下流側開口
3e 水密面
4 中間ボンネット(第3部材)
4a 中間ゲート用開口
4b 下端部
5 上部ボンネット
5a 上部ゲート用開口
6 ボンネットカバー
6a ロッド用開口
7 油圧シリンダ
7a シリンダロッド
7b シリンダデッキ
8 スライド式ゲート
10 第1溝部
11 第2溝部
12 第3溝部
13 幅広溝部
20 シール部材
21a T字状部分の下端部(21と接合する側)
22,23 第2部分
22a,23a T字状部分の水平部(22,23と接合する側)
24 幅広部
25 T字状部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8