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特許7428618プレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材及びプレキャストコンクリート壁の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材及びプレキャストコンクリート壁の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E01D19/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020153788
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2021188492
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020090598
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 剛史
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 一治
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】小西 正伸
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123672(JP,A)
【文献】特開2003-194271(JP,A)
【文献】特開平10-160076(JP,A)
【文献】特許第3834769(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
F16L 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部において一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材であって、
円筒状本体の長手方向中間部分は、両端部分に対して凹んでいて、
上記両端部分と上記長手方向中間部分は平坦な円筒面を備えており、
上記両端部分の外周面に、上記埋設管の内周面当接した状態で膨張する水膨張性シール材が設けられている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材。
【請求項2】
現場で落とし込みにより多数のプレキャストコンクリート壁を連結する、又は、20mmを基準として-5mm~+15mmの許容差がある目地部において一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材であって、
円筒状本体の両端の外周面上記埋設管の内周面圧接するように構成されており、
上記円筒状本体の長さが、目地部領域内において該円筒状本体が長手方向に沿って移動可能な範囲内で上記円筒状本体の外周面上記一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管の両方の内周面圧接するように設定され
円筒状本体の長手方向中央部分の外周がマーキングされている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材。
【請求項3】
第1埋設管の第1拡径開口端部が第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に面一で開口し、かつ第2埋設管の第2拡径開口端部が第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に面一で開口するように第1及び第2埋設管がそれぞれ埋設された第1及び第2プレキャストコンクリート壁と、円筒状本体の両端の外周面上記第1及び第2埋設管の内周面圧接するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材とを準備し、
上記中継部材を上記第1拡径開口端部の奥側段部に当接するまで挿入し、
第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を、上記第1拡径開口端部から飛び出した上記中継部材の先端が上記第2拡径開口端部に挿入されるように、水平に移動させ、上記中継部材の外周面上記第1埋設管及び第2埋設管に圧接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項4】
請求項のプレキャストコンクリート壁の設置方法であって、
上記第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入し、上記第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部のための隙間を確保した状態で、
上記中継部材と上記第1拡径開口端部との側方から見たときに、該中継部材の上記第2拡径開口端部への突出長さが、上記目地部の幅よりも長い
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項5】
第1開口端部が側面から突出した状態の第1プレキャストコンクリート壁と、該第1開口端部に対向する位置に第2開口端部が側面から突出した状態の第2プレキャストコンクリート壁と、少なくとも円筒状本体の両端の内周面に第1及び第2開口端部の外周面に圧接する中継部材とを準備し、
上記第1開口端部の外周に、両端の内周面に水膨張性シールを設けた上記中継部材の一端を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を、上記中継部材の先端が上記第2開口端部に対向する位置に移動させ、第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項6】
請求項のプレキャストコンクリート壁の設置方法であって、
上記第2プレキャストコンクリート壁を上記第1プレキャストコンクリート壁に近付けるように移動させた後で、
上記第1開口端部に挿入されている上記中継部材を上記第2開口端部側に水平移動させる
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項7】
第1埋設管の第1拡径開口端部が第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に面一で開口し、かつ第2埋設管の第2拡径開口端部が第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に面一で開口するように第1及び第2埋設管がそれぞれ埋設された第1及び第2プレキャストコンクリート壁と、円筒状本体の両端の外周面上記第1及び第2埋設管の内周面圧接するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材とを準備し、
上記中継部材を上記第1拡径開口端部の奥側段部に当接するまで挿入し、
第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を所定の位置まで移動させ、上記第1拡径開口端部から飛び出した上記中継部材を、該中継部材の先端が上記第2拡径開口端部に挿入されるように、水平に移動させ、上記中継部材の外周面上記第1埋設管及び第2埋設管に圧接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁の設置方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材において、
上記円筒状本体の少なくとも長手方向中間部分は、充填剤との付着性をよくする粗面化処理が施されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材及びプレキャストコンクリート壁の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等のコンクリート壁高欄の内部にケーブルを収納するための通信管等を埋設することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、コンクリート内埋設輸送管であって、特に港湾施設のうち岸壁内に埋設する船舶用給水等のユーティリティ用の輸送管に好適に用いることのできる埋設構造が知られている。この埋設構造では、輸送管継目をコンクリート伸縮目地部に位置させ、この輸送管継目に伸縮管を介装し、この伸縮管を覆う外管を一方の輸送管側に配設し、外管の外径に外嵌し、外管の軸方向に摺動可能な摺動管を他方の輸送管側に配設し、輸送管をコンクリート内に埋設するようにしている。
【0004】
また、特許文献2のように、電力ケーブル、電話線、CATV用ケーブルや有線放送用ケーブルなどの電力・通信線をケーブル保護管で保護して敷設するに際し、橋梁や高速道路の高架橋などの緩衝部において、特定形状の管継手を用いてケーブル保護管を接続することが知られている。このケーブル保護管の接続構造は、両端部にケーブル保護管の受け口を有する蛇腹管と、ケーブル保護管に固定され、蛇腹管の外周辺を保護するカバー部材から構成され、カバー部材は、一端部が蛇腹管の中央外周辺において所要の間隔で相対するとともに、他端部が前記ケーブル保護管と係合する左右一対の筒状部材で形成され、各筒状部材の先端側に位置する連結部材との取付け部以外は高欄に埋設しており、相対する筒状部材同士は、柔軟性を有する連結部材で一体的に結合している。
【0005】
また、特許文献3のように、床版の橋軸に直交し、橋面に平行な方向の側端部に、地覆を介して接合されるとともに、橋軸方向に隣接する他のプレキャスト壁高欄部材と接合されるプレキャスト壁高欄部材が知られている。このプレキャスト壁高欄部材は、地覆の上方に配置され、両者のコンクリート部分の間には無収縮モルタル等の目地材が配置される。クレーン等により、プレキャスト壁高欄部材は配置すべき位置の上方まで移動され、受容孔に第1縦方向定着筋及び第2縦方向定着筋が受容され、かつ受容溝に設置済みの隣接するプレキャスト壁高欄部材の横方向定着筋が受容されるように、プレキャスト壁高欄部材を下ろしていき、所定の位置に配置するように施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-147192号公報
【文献】特許第3834769号公報
【文献】特開2018-141341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年においても、簡単な構成で確実に埋設管同士を接続したいというニーズがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、埋設管に圧接する中継部材を使用することで、目地部を充填する充填剤が埋設管に流れ込まないようにしながら埋設管同士を確実に接続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、中継部材を一方の拡径開口端部に一時的に収容できるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、目地部において一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材であって、
円筒状本体の両端の外周面又は内周面に上記埋設管の内周面又は外周面に当接した状態で膨張する水膨張性シール材が設けられている。
【0011】
上記の構成によると、目地部を充填剤であるモルタル等で充填するときに、充填剤に含まれる水分により、水膨張性シール材が膨らむので、中継部の円筒状本体の両端の外周面と、埋設管の内周面との間又は中継部の円筒状本体の両端の内周面と、埋設管の外周面との間で確実にシールでき、充填剤が第1及び第2埋設管の内部に流れ込まない。水膨張性シール材は、円筒状本体の内周面に設けられていてもよいし、外周面に設けられていてもよい。
【0012】
第2の発明では、目地部において一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材であって、
円筒状本体の両端の外周面又は内周面に上記埋設管の内周面又は外周面に圧接するように構成されており、
上記円筒状本体の長さが、目地部領域内において該円筒状本体が長手方向に沿って移動可能な範囲内で上記円筒状本体の外周面又は内周面が上記一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管の両方の内周面又は外周面に圧接するように設定されている。
【0013】
上記の構成によると、一対のプレキャストコンクリート壁を並べて目地部に隙間が確保された状態で、中継部材が軸方向に移動しても、中継部材の円筒状本体の外周面又は内周面が、両方の埋設管の内周面又は外周面に圧接した状態が保たれるので、中継部材が外れてしまうことはなく、目地部に充填剤を充填するときにも、充填剤が埋設管の内部に流れ込まない。
【0014】
第3の発明では、目地部において一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材であって、
円筒状本体の両端の外周面又は内周面が上記埋設管の内周面又は外周面に圧接するように構成されており、
上記円筒状本体の長手方向中間部分は、両端部分に対して凹んでいる又は突出している。
【0015】
上記の構成によると、中継部材の長手方向中央部分は凹んでいるので、充填剤を流し込むときに、この凹部にも充填剤が流れ込んで中継部材がしっかり固定される。あるいは、中継部材の長手方向中央部分は突出しているので、中継部材の位置決めの効果が発揮され、中継部材が確実に固定される。このため、その後のケーブル等の通線作業する際に中継部材が移動することはない。一方、充填剤を充填する前にケーブル等の通線作業をする場合には、この凹部に止め輪を取り付けることで、中継部材が移動しないようにすることもできる。また、中継部材の円筒状本体の外周面又は内周面が、埋設管の内周面又は外周面に圧接するので、目地部に充填剤を充填するときに充填剤が埋設管の内部に流れ込まない。
【0016】
第4の発明のプレキャストコンクリート壁の設置方法では、第1埋設管の第1拡径開口端部が第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ第2埋設管の第2拡径開口端部が第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように第1及び第2埋設管がそれぞれ埋設された第1及び第2プレキャストコンクリート壁と、円筒状本体の両端の外周面又は内周面が上記第1及び第2埋設管の内周面又は外周面に圧接するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材とを準備し、
上記中継部材を上記第1拡径開口端部の奥側に当接するまで挿入し、
第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を、上記第1拡径開口端部から飛び出した上記中継部材の先端が上記第2拡径開口端部に挿入されるように、水平に移動させ、上記中継部材の外周面又は内周面が上記第1埋設管及び第2埋設管に圧接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、第1及び第2プレキャストコンクリート壁を製造する際に、第1及び第2拡径開口端部を埋設しておき、第1拡径開口端部側に中継部材を第1拡径開口端部の奥側内面に当接するまで挿入した状態で、第1プレキャストコンクリート壁に対して第2プレキャストコンクリート壁を水平に移動させ、第2拡径開口端部を中継部材の先端に接続する。一対のプレキャストコンクリート壁を並べて目地部に隙間が確保された状態で、中継部材の円筒状本体の外周面又は内周面が、両方の埋設管に圧接しているので、中継部材が外れてしまうことはなく、目地部に充填剤を充填するときにも、充填剤が埋設管の内部に流れ込まない。
【0018】
第5の発明では、第4の発明において、
上記第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入し、上記第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部のための隙間を確保した状態で、
上記中継部材と上記第1拡径開口端部との側方から見たときに、該中継部材の上記第2拡径開口端部への突出長さが、上記目地部の幅よりも長い構成とする。
【0019】
上記の構成によると、第1拡径開口端部の段部までの距離、第2拡径開口端部の段部までの距離、中継部材の長さ、目地部の幅等を適切に保って中継部材の第2拡径開口端部への突出長さを目地部の幅よりも長くすることにより、中継部材のシール部が第1拡径開口端部及び第2拡径開口端部との圧接を保つことができる。このため、充填剤が第1埋設管及び第2埋設管に流れ込むのを確実に防止することができる。
【0020】
第6の発明では、第1開口端部が側面から突出した状態の第1プレキャストコンクリート壁と、該第1開口端部に対向する位置に第2開口端部が側面から突出した状態の第2プレキャストコンクリート壁と、少なくとも円筒状本体の両端の内周面に第1及び第2開口端部の外周面に圧接する中継部材とを準備し、
上記第1開口端部の外周に上記中継部材の一端を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を、上記中継部材の先端が上記第2開口端部に対向する位置に移動させ、第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する構成とする。
【0021】
上記の構成においても、中継部材の内周面が、両方の埋設管の外周面に圧接しているので、目地部に充填剤を充填するときにも、充填剤が埋設管の内部に流れ込まない。
【0022】
第7の発明では、第6の発明において、
上記第2プレキャストコンクリート壁を上記第1プレキャストコンクリート壁に近付けるように移動させた後で、
上記第1開口端部に挿入されている上記中継部材を上記第2開口端部側に水平移動させる構成とする。
【0023】
上記の構成によると、第2プレキャストコンクリート壁の移動後に中継部材を移動させるので、第2開口端部と中継部材とが第2プレキャストコンクリート壁の移動時に接触せず、損傷しにくい。
【0024】
第8の発明のプレキャストコンクリート壁の設置方法では、第1埋設管の第1拡径開口端部が第2プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口し、かつ第2埋設管の第2拡径開口端部が第1プレキャストコンクリート壁の側面と対向する側面に開口するように第1及び第2埋設管がそれぞれ埋設された第1及び第2プレキャストコンクリート壁と、円筒状本体の両端の外周面又は内周面が上記第1及び第2埋設管の内周面又は外周面に圧接するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材とを準備し、
上記中継部材を上記第1拡径開口端部の奥側に当接するまで挿入し、
第1拡径開口端部の奥側に上記中継部材を挿入した状態で、上記第2プレキャストコンクリート壁を所定の位置まで移動させ、上記第1拡径開口端部から飛び出した上記中継部材を、該中継部材の先端が上記第2拡径開口端部に挿入されるように、水平に移動させ、上記中継部材の外周面又は内周面が上記第1埋設管及び第2埋設管に圧接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁と第2プレキャストコンクリート壁との間に目地部用の隙間を確保する構成とする。
【0025】
上記の構成によると、第1及び第2プレキャストコンクリート壁を製造する際に、第1及び第2拡径開口端部を埋設しておき、第1拡径開口端部側に中継部材を第1拡径開口端部の奥側内面に当接するまで挿入した状態で、第1プレキャストコンクリート壁に対して第2プレキャストコンクリート壁を所定の位置まで移動させ、第1拡径開口端部から飛び出した中継部材を水平移動させ、この中継部材の先端を、第2拡径開口端部を中継部材の先端に接続する。一対のプレキャストコンクリート壁を並べて目地部に隙間が確保された状態で、中継部材の円筒状本体の外周面又は内周面が、両方の埋設管に圧接しているので、中継部材が外れてしまうことはなく、目地部に充填剤を充填するときにも、充填剤が埋設管の内部に流れ込まない。また、第2プレキャストコンクリート壁の移動後に中継部材を移動させるので、第2開口端部と中継部材とが第2プレキャストコンクリート壁の移動時に接触せず、損傷しにくい。
【0026】
第9の発明において、第1~第3のいずれか1つの発明において、
上記円筒状本体の少なくとも長手方向中間部分は、充填剤との付着性をよくする粗面化処理が施されている。
【0027】
上記の構成によると、長手方向中間部分に大きな凹凸を設けなくても、粗面化レベルの凹凸を設けておけば、充填剤との付着性が良好となるので有利である。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、埋設管に圧接する中継部材を使用することで、目地部を充填する充填剤が埋設管に流れ込まないようにしながら埋設管同士を確実に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁の中継部材挿入工程を示す分解断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁の落とし込み工程を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁のモルタル充填工程を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材を含む継手構造を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係るプレキャストコンクリート壁を示し、(a)が鋼板ジベル側の側面を示し、(b)が溝側の側面を示す。
図6】一対のプレキャストコンクリート壁を落とし込みにより接続する様子を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態2に係る図1相当断面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る図2相当断面図である。
図9A】本発明の実施形態2に係る図3相当断面図である。
図9B】本発明の実施形態2の変形例1に係る図3相当断面図である。
図9C】本発明の実施形態2の変形例2に係る図3相当断面図である。
図9D】本発明の実施形態2の変形例3に係る図3相当断面図である。
図10】本発明の実施形態3に係る図2相当断面図である。
図11】本発明の実施形態3に係る図3相当断面図である。
図12】本発明の実施形態3の変形例に係る図2相当断面図である。
図13】本発明の実施形態3の変形例に係る図3相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(実施形態1)
図4は、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’の内部に埋設される埋設管4,4’を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材を含む継手構造1を示す。プレキャストコンクリート壁2,2’及び埋設管4,4’は、図4に示すように、全体として基本的に同じ形状をしているが、図1に示すように、1カ所の接合面に着目したときに、理解しやすいように名称を変えている。
【0032】
例えば、図5及び図6に示すように、プレキャストコンクリート壁2,2’は、例えば、高さ900mm程度で、幅(厚さ)は250~450mm程度で、長さは2~3mある。プレキャストコンクリート壁2,2’の一方側側面には、鉛直方向に延びる鋼板ジベル40が埋設されており、他方側側面には、この鋼板ジベル40が嵌まり込む溝部41が形成されている。詳しくは後述するが、このプレキャストコンクリート壁2,2’内に第1及び第2埋設管4,4’等を埋設した状態で、プレキャストコンクリート壁2,2’を多数製造しておき、現場で落とし込みにより多数のプレキャストコンクリート壁2,2’を連結する。
【0033】
図1図3に拡大して示すように、この継手部材は、一方の第1プレキャストコンクリート壁2の内部の第1埋設管4の一端に第1直管部11が接続される円筒状の第1埋設管接続部10と、他方の第2プレキャストコンクリート壁2’の内部の第2埋設管4’の一端に第2直管部21が接続される円筒状の第2埋設管接続部20とを備えている。第1及び第2埋設管4,4’は、例えば、汎用の硬質塩化ビニル電線管よりなる。本実施形態では、高速道路などの高欄の内部に埋設する埋設管4,4’を対象としている。また、第1埋設管接続部10と第2埋設管接続部20とは、例えば異なる形状を有する硬質塩化ビニルなどの樹脂成形品よりなる。第1直管部11と第1埋設管4は、第1ソケット16で連結されている。第2直管部21と第2埋設管4’は、第2ソケット26で連結されている。なお、第1直管部11及び第2直管部21の内径を埋設管4,4’の外径よりも若干大きくして、直管部11,直管部21に埋設管4,4’を挿入するようにしてもよい。
【0034】
第1埋設管接続部10の他端側、すなわち第1プレキャストコンクリート壁2の側面側の第1拡径開口端部12には、被係合部としての差し込み孔14,15が形成されている。本実施形態では、上側差し込み孔14は、半径方向外側へ拡がる突出部13に、第1プレキャストコンクリート壁2の側面と同じ表面から内部に向かって斜めに貫通されている。下側差し込み孔15は、上側差し込み孔14の真下に上下真っ直ぐに貫通されている。そうすることで、第1拡径開口端部12の表面の高さと第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の側面の高さとを揃えながらも、抜け防止部材30の差し込み及び抜き出しを滑らかに行うことができるようになっている。
【0035】
第2埋設管接続部20の他端側の第2拡径開口端部22は、第1埋設管接続部10の第1拡径開口端部12よりも軸方向長さが短くなっている。第1及び第2拡径開口端部12,22は、それぞれ第1及び第2直管部11,21よりも内径が大きくなっている。
【0036】
図1に示すように、継手構造1は、第1拡径開口端部12の内部に全体が収容可能な中継部材6を備えている。中継部材6は、例えば、円筒状の樹脂成形品で構成されている。中継部材6の長さは、第1拡径開口端部12の内部に全体が入り込む長さとなっており、両端には面取が施されている。このため、第1拡径開口端部12及び第2拡径開口端部22に滑らかに挿入できる。また、中継部材6の外周は、特にこの長手方向中央部分が、赤色に着色されるなどにより、マーキングされている。中継部材6の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布8が巻かれている。このため、充填剤であるモルタル3を充填する際に、モルタル3の水分で水膨張性不織布8が膨らんでモルタル3が第1及び第2埋設管4,4’内に流れ込まないようになっている。シール材は、水膨張性不織布8に限定されず、水膨張性能を有さず、単に水密性を有するシール材でもよい。図2及び図3に示すように、中継部材6の一端が第1埋設管接続部10内に収容されているときに第1拡径開口端部12のテーパ部に当接し、図3に示すように抜け防止部材30が取り除かれたときに、他端が第2拡径開口端部22のテーパ部に当接するようになっている。中継部材6の長手方向中央部分は凹んでいるので、モルタル3を流し込むときに、この凹部にもモルタル3が流れ込んで中継部材6がしっかり固定される。このため、その後のケーブル等の通線作業する際に中継部材6が移動することはない。一方、モルタル3を充填する前にケーブル等の通線作業をする場合には、この凹部に止め輪を取り付けることで、中継部材6が移動しないようにしてもよい。なお、中継部材6の両端内面に面取を設けると、電線等を通線作業する際に、電線等が中継部材6に引っかかりにくくなり、滑らかに挿入できる。
【0037】
また、継手構造1は、第1埋設管接続部10の内部における中継部材6の奥側に全体が収容可能な筒状の付勢部材としての圧縮コイルバネ7を備えている。圧縮コイルバネ7は、例えばバネ用ステンレス鋼線よりなる。圧縮コイルバネ7を、防錆コーティングしたバネ用鋼線で構成してもよい。図2に示すように、この圧縮コイルバネ7は、圧縮された状態で中継部材6と共に第1埋設管接続部10の内部に収まる大きさで、埋設後にケーブル等が引っかからないような滑らかな内周面を有するのが望ましい。圧縮コイルバネ7の外径は、第1埋設管接続部10の第1拡径開口端部12の内径より若干小さく、中継部材6の内径よりも大きい。
【0038】
なお、圧縮コイルバネ7の内側に内面が滑らかな円筒状カバーを設けてもよい。また、圧縮コイルバネ7を筒状のビニルやフィルムで包んで圧縮コイルバネ7と共に伸縮できるようにしてもよい。いずれの場合も、電線等を通線作業する際に、電線等が圧縮コイルバネ7の内周面に引っかかりにくくなる。
【0039】
第2埋設管接続部20の第2拡径開口端部22の内径は、中継部材6の外径よりも若干大きく、奥行きは、第1拡径開口端部12よりも短い。
【0040】
そして、継手構造1は、中継部材6が圧縮コイルバネ7を押し込んで第1埋設管接続部10に収容された状態で、上下の差し込み孔14,15に係合し、中継部材6及び圧縮コイルバネ7が抜け出すのを防止する、棒状部材よりなる抜け防止部材30を備えている。この抜け防止部材30は、例えば細長い針金状のものよりなり、圧縮コイルバネ7の付勢力に抗する程度の剛性を有するものが望ましい。
【0041】
この抜け防止部材30には、引っ張られることで、差し込み孔14,15から抜け出し防止部材30を引き出す引張部材31が連結されている。例えば、この引張部材31は、抜け防止部材30の上端に結ばれた、適度な引張張力を有する紐よりなる。
【0042】
そして、図3に示すように、第1埋設管接続部10から飛び出した中継部材6の先端側が第2埋設管接続部20の第2拡径開口端部22に嵌まり込んだ状態で、第1埋設管4と第2埋設管4’とを接続可能に構成されている。
【0043】
なお、本実施形態におけるプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材は、第1埋設管接続部10、第2埋設管接続部20、中継部材6、圧縮コイルバネ7、抜け防止部材30及び引張部材31よりなる。
【0044】
図3に示すように、本実施形態のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造1は、第1埋設管4に接続された第1埋設管接続部10の第1拡径開口端部12が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面の間の目地部に開口し、中継部材6が圧縮コイルバネ7で第2プレキャストコンクリート壁2’側へ付勢された状態で第1埋設管接続部10と第2埋設管接続部20とを跨ぐように配設され、目地部及び中継部材6の外周面と第1及び第2拡径開口端部12,22の内周面との間に充填剤としてのモルタル3が充填されている。
【0045】
-プレキャストコンクリート壁の設置方法-
次いで、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造及びプレキャストコンクリート壁の設置方法について説明する。
【0046】
準備工程において、上述した第1及び第2埋設管4,4’、第1埋設管接続部10と第2埋設管接続部20、中継部材6、抜け防止部材30,引張部材31等を準備する。
【0047】
まず、型枠組立工程において、工場内等で、木製等の型枠を配置する。
【0048】
次いで、鉄筋組立工程において、型枠内に棒状及び環状の鉄筋51を配筋する。また、一方側側面に鋼板ジベル40も設けておく。
【0049】
次いで、埋設管設置工程において、型枠内において、図1に拡大して示すように、第1埋設管4の一端に第1埋設管接続部10の第1直管部11を、第1ソケット16を用いて接続し、第2埋設管4’の一端に第2埋設管接続部20の第2直管部21を、第2ソケット26を用いて接続する。なお、図4の中央に示す1本の第1埋設管4全体で言えば、右側端部に第1埋設管接続部10が接続され、左側端部に第2埋設管接続部20が接続される。
【0050】
そして、第1埋設管接続部10の第1拡径開口端部12が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面に開口するように、かつ第2埋設管接続部20の第2拡径開口端部22が第1プレキャストコンクリート壁2の側面と対向する側面に開口するように、第1及び第2埋設管4,4’を型枠内に配置する。
【0051】
そして、コンクリート打設工程において、型枠内にコンクリートを打設する。
【0052】
次いで、型枠離型工程において、型枠を離型し、図1に示すように、プレキャストコンクリート壁2,2’が完成する。
【0053】
次いで、図1に示すように、中継部材挿入工程において、第1埋設管接続部10に圧縮コイルバネ7を挿入した後、中継部材6を、この圧縮コイルバネ7を押し付けながら挿入して保持する。このとき、中継部材6の外周端部が面取され、また、第1拡径開口端部12の内周面にテーパ面が設けられているので、挿入しやすい。
【0054】
次いで、図2に示すように、中継部材保持工程において、引張部材31が基端側に結ばれた抜け防止部材30の先端を上側差し込み孔14に挿入した後、下側差し込み孔15に差し込んで、保持していた中継部材6から手を離す。図2に示すように、中継部材6が第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の側面から飛び出さない。
【0055】
このプレキャストコンクリート壁2,2’を多数製造しておき、高速道路などの工事現場に運搬する。
【0056】
そして、工事現場において、図6に示すように、落とし込み工程において、抜け防止部材30を差し込み孔14,15に係合させて中継部材6を抜け止めした状態で、一対のプレキャストコンクリート壁2,2’を鋼板ジベル40が溝部41に嵌まり込むようにしながら、クレーン等を用いて落とし込みにより並べ、図2の状態にする。このとき、引張部材31は、作業者が引っ張れる位置に配置しておく。一対のプレキャストコンクリート壁2,2’間の隙間が目地部となる。
【0057】
次いで、抜け防止部材抜き出し工程において、抜け防止部材30を、引張部材31を引っ張って差し込み孔14,15から抜き出す。
【0058】
すると、図3に示すように、圧縮コイルバネ7に付勢された中継部材6により、第1拡径開口端部12と第2拡径開口端部22とが接続される。その結果、埋設管4,4’同士が密閉状に接続される。このとき、中継部材6の外周端部が面取され、また、第2拡径開口端部22の内周面にテーパ面が設けられているので、飛び出したときに奥まで入り込みやすい。
【0059】
このとき、中継部材6の外周がマーキングされているので、そのマーキングを第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’間の隙間から確認することで、確実に中継部材6が飛び出したのを確認できる。
【0060】
確認後、図3に示すように、モルタル充填工程において、第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’間の目地部並びに中継部材6の外周面及び拡径開口端部12,22の内周面の間にモルタル3を充填する。このとき、中継部材6の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布8が巻かれているので、この水膨張性不織布8がモルタルの水分で膨らみ、第1拡径開口端部12及び第2拡径開口端部22との間で確実にシールできる。このため、モルタル3が第1及び第2埋設管4,4’内部に流れ込まない。なお、このとき、第1及び第2拡径開口端部12,22やシール材によっては、第1拡径開口端部12及び第2拡径開口端部22の内周面側までモルタル3は流れ込まない。
【0061】
次いで、充填剤3が乾いた後、埋設管4内に電線等を配線する。第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の接続後は、抜け防止部材30及び引張部材31は、取り除かれ、圧縮コイルバネ7と中継部材6は残るが、これらは筒状であるので、第1及び第2埋設管4,4’にケーブル等を挿入するときに邪魔にならない。なお、埋設管4,4’内に挿入するのは、電線等に限定されない。
【0062】
したがって、本実施形態に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の、水膨張性不織布8を有する中継部材6を使用することで、目地部を充填するモルタル3が第1及び第2埋設管4,4’の内部に流れ込まないように埋設管4,4’同士を接続できる。
【0063】
(実施形態2)
図7図9Aは本発明の実施形態2に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手構造101を示し、主として圧縮コイルバネ7等を用いない点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各実施形態及び変形例では、図1から図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態の中継部材106も、目地部3において一対のプレキャストコンクリート壁2,2’の内部に埋設される埋設管4,4’を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の中継部材106であり、上記実施形態1と同様に、円筒状本体106aの両端の外周面に埋設管4,4’の内周面に圧接する水膨張性不織布108が設けられている。シール材は、水膨張性不織布108に限定されず、水膨張性能を有さず、単に水密性を有するシール材でもよい。
【0065】
本実施形態でも、上記実施形態1と同様にまず、中継部材106と、第1埋設管接続部10を有する第1埋設管4及び第2埋設管接続部20を有する第2埋設管4’とを準備する。具体的には、上記実施形態1と同様に、1つの目地部3に注目したときに、第1埋設管4に第1埋設管接続部10が接続され、第2埋設管4’に第2埋設管接続部20が接続されている。
【0066】
本実施形態では、特に図9Aに示すように、円筒状本体106aの長さが、目地部3の領域内において円筒状本体106aが長手方向に沿って移動可能な範囲内で水膨張性不織布108が一対のプレキャストコンクリート壁2,2’に埋設された第1及び第2埋設管接続部10,20の第1及び第2拡径開口端部12,22の両方の内周面に常に当接するように設定されている。
【0067】
次いで施工方法について説明すると、まず、上記実施形態1と同様に、第1埋設管4の第1拡径開口端部12が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面に開口し、かつ第2埋設管4’の第2拡径開口端部22が第1プレキャストコンクリート壁2の側面と対向する側面に開口するように第1及び第2埋設管4,4’を型枠内に配置する。
【0068】
次いで、上記実施形態1と同様に、型枠内にコンクリートを打設して第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’を形成する。
【0069】
次いで、図7及び図8に示すように、第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の埋設管4,4’の第1及び第2拡径開口端部12,22(第1及び第2埋設管接続部10,20)同士を接続する中継部材106を第1拡径開口端部12の奥側に当接するまで挿入する。
【0070】
次に、図9Aに示すように、第1拡径開口端部12の奥側段部17に中継部材106を挿入した状態で、第2プレキャストコンクリート壁2’を、第1拡径開口端部12から飛び出した中継部材106の先端が第2拡径開口端部22に挿入されるように、水平に移動させ、中継部材106の水膨張性不織布108が第1埋設管4及び第2埋設管4’の両方に当接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁2と第2プレキャストコンクリート壁2’との間に目地部3用の隙間を確保する。目地部3は、例えば、20mmを基準として、-5mm~+15mmの許容差がある。
【0071】
この第1拡径開口端部12の奥側に中継部材106を挿入し、第1プレキャストコンクリート壁2と第2プレキャストコンクリート壁2’との間に目地部3用の隙間を確保した状態で、図9Aに示すように、側方から見たときの、中継部材106の第2拡径開口端部22への突出長さbが、目地部3の幅aよりも長くなっている(b>a)。
【0072】
次いで、その状態で、目地部3と中継部材106の外周面との間にモルタルなどの充填剤を充填する。
【0073】
このように、本実施形態では、第1拡径開口端部12の奥側段部17までの距離、第2拡径開口端部22の奥側段部27までの距離、中継部材106の長さ、目地部3の幅aを適切に保って中継部材106の第2拡径開口端部22への突出長さbを目地部3の幅aよりも長くすることにより、中継部材106の水膨張性不織布108が、第1拡径開口端部12及び第2拡径開口端部22との圧接を常に保つことができる。このため、中継部材106が軸方向に移動しても、確実に充填剤が第1埋設管4及び第2埋設管4’に流れ込むのを防止することができる。
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、水膨張性不織布108を設けた中継部材106を使用することで、目地部3を充填する充填剤が埋設管4,4’に流れ込まないように埋設管4,4’同士を接続できる。
【0075】
-変形例1-
上記実施形態2では、中継部材106の円筒状本体106aの長手方向中央に凹部を設けたが、図9Bのように、円筒状本体406aの長手方向中央に突部406bを設けてもよい。
【0076】
こうすれば、突部406bが中継部材406の位置決め効果を発揮し、中継部材406が確実に固定される。
【0077】
-変形例2-
上記変形例1に加え、図9Cに示すように、さらに円筒状本体406aにC型止め輪406cを固定するようにしてもよい。
【0078】
C型止め輪406cを設けることで、目地部3が広いときにも対応でき、中継部材406が確実に固定される。
【0079】
-変形例3-
上記実施形態2では、第1拡径開口端部12及び第2拡径開口端部22の目地部3側端部外周は平坦であるが、図9Dに示すように、その外径を徐々に拡げて第1拡径開口端部512及び第2拡径開口端部522をフレア状端部512a,522aにしてもよい。そうすると、中継部材506が挿入されやすくなる。
【0080】
また、上記実施形態2では、第2プレキャストコンクリート壁2’を水平移動させて第1プレキャストコンクリート壁2側に近付けるようにしているが、本変形例では、第2プレキャストコンクリート壁2’を上下方向に降ろした後、中継部材506の方を水平移動させて第2拡径開口端部522側に挿入できる。このように、第2プレキャストコンクリート壁2’の移動後に中継部材506を水平移動させるので、第2拡径開口端部522と中継部材506とが第2プレキャストコンクリート壁2’の移動時に接触せず、損傷しにくい。この場合も、フレア形状であれば中継部材506の挿入作業がさらに容易となって有利である。
【0081】
(実施形態3)
図10及び図11は本発明の実施形態3に係る中継部材206を示し、円筒状本体206aの内周面にシール材が設けられている点で上記実施形態1及び2と異なる。
【0082】
本実施形態では、円筒状本体206aの両端の内周面に第1及び第2埋設管4,4’の外周面に当接した状態で膨張するシール材としての水膨張性不織布208が設けられている。シール材は、水膨張性不織布208に限定されず、水膨張性能を有さず、単に水密性を有するシール材でもよい。本実施形態では、円筒状本体206aの長手方向中央部分には、水膨張性不織布208が設けられていない部分があってもよい。
【0083】
本実施形態では、上記実施形態1及び2のように第1及び第2拡径開口端部12,22が設けられておらず、第1及び第2埋設管4,4’が第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’の側面から所定長さ突出した形態となっている。
【0084】
本実施形態における目地部3は、上記実施形態1及び2よりも開口端部210,220の分だけ広くなっている。
【0085】
次いで、施工方法について説明すると、まず、第1埋設管4の拡径されていない第1開口端部210が第2プレキャストコンクリート壁2’の側面と対向する側面から突出した状態で開口し、かつ第2埋設管4’の拡径されていない第2開口端部220が第1プレキャストコンクリート壁2の側面と対向する側面から突出した状態で開口するように第1及び第2埋設管4,4’を型枠内に配置する。
【0086】
次いで、このように第1開口端部210及び第2開口端部220が突出した状態で、型枠内にコンクリートを打設し、脱型して第1及び第2プレキャストコンクリート壁2,2’を形成する。
【0087】
次いで、図10に示すように、中継部材206の一端を第1開口端部210に差し込み、水膨張性不織布208を第1開口端部210の外周に当接させる。
【0088】
次いで、図11に示すように、第1開口端部210の外周に中継部材206を挿入した状態で、第2プレキャストコンクリート壁2’を、第1開口端部210から飛び出した中継部材206の先端が第2開口端部220に挿入されるように、水平に移動させ、中継部材206の水膨張性不織布208が第2埋設管4’の第2開口端部220の外周面に圧接するようにしながら第1プレキャストコンクリート壁2と第2プレキャストコンクリート壁2’との間に目地部3用の隙間を確保する。
【0089】
次いで、その状態で、目地部3と中継部材206の外周面との間にモルタルなどの充填剤を充填する。
【0090】
本実施形態では、目地部3を充填剤であるモルタル等で充填するときに、充填剤に含まれる水分により、水膨張性不織布208が膨らむので、円筒状本体206aの両端内周面と、埋設管4,4’の第1及び第2開口端部210,220の外周面との間で確実にシールでき、充填剤が第1及び第2埋設管4,4’の内部に流れ込まない。
【0091】
なお、上記中継部材206は、中央部分に凹部が設けられていないが、中央部分に凹部を設けてもよい。
【0092】
-変形例-
また、図12及び図13に示すように、本実施形態の変形例に係る中継部材306として、円筒状本体306aの内面全体に水膨張性不織布308が設けられている。
【0093】
この場合、目地部3の幅は、上記実施形態1及び2よりも広くなる。このため、充填剤については、モルタル以外のものでもよい。
【0094】
なお、上記中継部材306は、中央部分に凹部が設けられていないが、中央部分に凹部を設けてもよい。
【0095】
本変形例では、図12に示すように、中継部材306の一端を第1開口端部310に差し込むときに、例えば、他端が第1埋設管4の先端と揃う程度のところまで差し込んでおき、その状態で水膨張性不織布308を第1開口端部310の外周に当接させる。
【0096】
次いで、図12に示すように、第1開口端部310の外周に中継部材306を挿入した状態で、第2プレキャストコンクリート壁2’を、第1開口端部310と対向する位置に第2開口端部320が来るように、水平に移動させ、目地部3用の隙間を確保する。
【0097】
次いで、図13に示すように、中継部材306を第2開口端部320側へスライド移動させ、内周面の水膨張性不織布308を第2埋設管4’の第2開口端部320の外周面に当接させる。
【0098】
次いで、その状態で、目地部3と中継部材206の外周面との間にモルタルなどの充填剤を充填する。
【0099】
本変形例では、第2プレキャストコンクリート壁2’の移動後に中継部材306を移動させるので、第2開口端部320と中継部材306とが第2プレキャストコンクリート壁2’の移動時に接触せず、損傷しにくい。
【0100】
本変形例においても、目地部3を充填剤であるモルタル等で充填するときに、充填剤に含まれる水分により、水膨張性不織布308が膨らむので、円筒状本体306aの両端内周面と、埋設管4,4’の第1及び第2開口端部310,320の外周面との間で確実にシールでき、充填剤が第1及び第2埋設管4,4’の内部に流れ込まない。
【0101】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0102】
すなわち、上記各実施形態では、図4に示すように、1本の埋設管4,4’を1つのプレキャストコンクリート壁2,2’に配置しているが、1つのプレキャストコンクリート壁2,2’に2本以上の埋設管4,4’を上下に並べるように配置してもよい。その場合、下側の抜け防止部材30から抜き出すようにすればよい。上側から行うと、下側の中継部材6,206,306の状況を確認し辛いためである。また、上側の中継部材6と下側の中継部材6とでマーキングの色を変えるとよい。そうすると、遠くから覗いたときにいずれの中継部材6の飛び出しが不十分かわかりやすくなる。
【0103】
上記実施形態1及び2では、中継部材6の外周面側に水膨張性不織布8を設けているが、その代わりに又はそれに加え、第1及び第2埋設管接続部10,20の内周面側に水膨張性不織布8を設けてもよい。
【0104】
また、図示しないが、円筒状本体106aの少なくとも長手方向中間部分に、モルタル3との付着性をよくする粗面化処理が施されていてもよい。こうすれば、長手方向中間部分に大きな凹凸を設けなくても、モルタル3との付着性が良好となるので有利である。
【0105】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0106】
1 継手構造
2 第1プレキャストコンクリート壁
2’ 第2プレキャストコンクリート壁
3 モルタル(充填剤、目地部)
4 第1埋設管
4’ 第2埋設管
6 中継部材
7 圧縮コイルバネ(付勢部材)
8 水膨張性不織布
10 第1埋設管接続部
11 第1直管部
12 第1拡径開口端部
13 突出部
14,15 差し込み孔(被係合部)
16 第1ソケット
20 第2埋設管接続部
21 第2直管部
22 第2拡径開口端部
26 第2ソケット
30 抜け防止部材
31 引張部材
40 鋼板ジベル
41 溝部
51 鉄筋
101 継手構造
106 中継部材
106a 円筒状本体
108 水膨張性不織布
206 中継部材
206a 円筒状本体
208 水膨張性不織布
210 第1開口端部
220 第2開口端部
306 中継部材
306a 円筒状本体
308 水膨張性不織布
310 第1開口端部
320 第2開口端部
406 中継部材
406a 円筒状本体
406b 突部
406c C型止め輪
506 中継部材
512 第1拡径開口端部
512a,522a フレア状端部
522 第2拡径開口端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13