IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローリー株式会社の特許一覧

特許7428624硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法
<>
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図1
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図2
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図3
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図4
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図5
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図6
  • 特許-硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】硬貨選別装置、硬貨処理装置および硬貨選別方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 3/02 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
G07D3/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020165870
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057554
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】新田 侑亮
(72)【発明者】
【氏名】大地 優平
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-059568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 3/00- 3/16
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、
前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、
前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体と
を備え、
前記非突出部は、前記突出部と前記突出部との間を接続する少なくとも2つの第1辺部と第2辺部を有し、前記第1辺部が回転方向下流側の前記突出部に接続され、前記第2辺部が回転方向上流側の前記突出部に接続され、前記第1辺部と前記第2辺部とのなす角度が180°よりも小さい
を備えることを特徴とする硬貨選別装置。
【請求項2】
硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、
前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、
前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体と
を備え、
前記非突出部は、前記突出部に対して回転方向上流側に接続される第1辺部と下流側に接続される第2辺部とを有し、前記突出部を中心とする前記第1辺部の角度は前記第2辺部の角度よりも小さい
ことを特徴とする硬貨選別装置。
【請求項3】
硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、
前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、
前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体と
を備え、
前記非突出部は、前記カムの所定の第1非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第1辺部と、硬貨選別時に回転される前記カムが前記第1非突出回転位置から所定角度回転した第2非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第2辺部とを有する
ことを特徴とする硬貨選別装置。
【請求項4】
前記突出部は、少なくとも3つ以上である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の硬貨選別装置。
【請求項5】
前記突出部は、4つである
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の硬貨選別装置。
【請求項6】
基準側面を有し、この基準側面に沿って硬貨を搬送する搬送通路と、
前記基準側面に沿って搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する請求項1ないし5いずれか一記載の硬貨選別装置と
を備えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項7】
搬送通路の基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、
前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられた回転体とを備え、
前記非突出部は、前記カムの所定の第1非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第1辺部と、前記カムの前記第1非突出回転位置から所定角度回転した第2非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第2辺部とを有する硬貨選別装置の硬貨選別方法であって、
硬貨の通過時に、前記カムを前記第1非突出回転位置に配置し、
所定の硬貨を排除する硬貨選別時に、所定の硬貨の前を搬送される前の硬貨の中心が前記第2辺部の側部を搬送される際に前記カムの回転を開始させ、前の硬貨が前記第1辺部の側部に搬送される際に前記カムを第2非突出回転位置に回転させ、前記突出部を前記基準側面から通路中央側に突出させ、所定の硬貨を前記選別孔に落下させる
ことを特徴とする硬貨選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を選別する硬貨選別装置、この硬貨選別装置を備えた硬貨処理装置、およびこの硬貨選別装置による硬貨選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に排除する例えば特許文献1の硬貨選別装置が知られている。
【0003】
この硬貨選別装置では、搬送通路の基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に、基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔が設けられている。さらに、搬送通路の基準側面側で選別孔の側方位置に、カムが回転可能に設けられている。カムの周面には、基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともに、これら突出部間に基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられている。そして、カムは、突出部が基準側面から通路外に退避するとともに非突出部が基準側面に沿った回転位置にて、選別対象以外の硬貨を選別孔に落下させることなく通過させ、また、突出部が基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて、選別対象の硬貨を選別孔に落下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-59568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、硬貨の処理の高速化が求められており、これに応じて、硬貨が高速で連続して搬送され、連続して搬送される硬貨の間の距離が短くなっている。
【0006】
しかしながら、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合、選別対象以外の硬貨も誤って選別してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる硬貨選別装置、硬貨選別装置および硬貨選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬貨選別装置は、硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体とを備え、前記非突出部は、前記突出部と前記突出部との間を接続する少なくとも2つの第1辺部と第2辺部を有し、前記第1辺部が回転方向下流側の前記突出部に接続され、前記第2辺部が回転方向上流側の前記突出部に接続され、前記第1辺部と前記第2辺部とのなす角度が180°よりも小さいものである。
【0009】
本発明の硬貨選別装置は、硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体とを備え、前記非突出部は、前記突出部に対して回転方向上流側に接続される第1辺部と下流側に接続される第2辺部とを有し、前記突出部を中心とする前記第1辺部の角度は前記第2辺部の角度よりも小さいものである。
【0010】
本発明の硬貨選別装置は、硬貨を搬送通路の基準側面に沿って搬送するとともに搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する硬貨選別装置であって、前記搬送通路の前記基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられ、前記突出部が前記基準側面から通路外に退避する回転位置にて硬貨を通過させ、前記突出部が前記基準側面から通路中央側に突出する回転位置にて硬貨を前記選別孔に落下させる回転体とを備え、前記非突出部は、前記カムの所定の第1非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第1辺部と、硬貨選別時に回転される前記カムが前記第1非突出回転位置から所定角度回転した第2非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第2辺部とを有するものである。
【0011】
また、突出部は、少なくとも3つ以上である。
【0012】
また、突出部は、4つである。
【0013】
本発明の硬貨処理装置は、基準側面を有し、この基準側面に沿って硬貨を搬送する搬送通路と、前記基準側面に沿って搬送する硬貨のうちの所定の硬貨を搬送途中に選別する前記硬貨選別装置とを備えるものである。
【0014】
本発明の硬貨選別方法は、搬送通路の基準側面から通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられ、前記基準側面に沿って搬送される硬貨が通過し、前記基準側面よりも通路中央側を搬送される硬貨が落下する選別孔と、前記搬送通路の前記基準側面側で前記選別孔の側方位置に設けられ、回転軸、およびこの回転軸を中心として回転可能とするカムを有し、前記カムの周面に前記基準側面から通路中央側に突出可能とする複数の突出部が設けられるとともにこれら突出部間に前記基準側面から通路中央側に突出しない非突出部が設けられた回転体とを備え、前記非突出部は、前記カムの所定の第1非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第1辺部と、前記カムの前記第1非突出回転位置から所定角度回転した第2非突出回転位置にて前記基準側面に沿って位置される第2辺部とを有する硬貨選別装置の硬貨選別方法であって、硬貨の通過時に、前記カムを前記第1非突出回転位置に配置し、所定の硬貨を排除する硬貨選別時に、所定の硬貨の前を搬送される前の硬貨の中心が前記第2辺部の側部を搬送される際に前記カムの回転を開始させ、前の硬貨が前記第1辺部の側部に搬送される際に前記カムを第2非突出回転位置に回転させ、前記突出部を前記基準側面から通路中央側に突出させ、所定の硬貨を前記選別孔に落下させるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す硬貨選別装置を備えた硬貨処理装置の斜視図である。
図2】同上硬貨選別装置の駆動機構を示す斜視図である。
図3】同上硬貨選別装置の回転体を(a)、(b)に示す平面図である。
図4】同上硬貨選別装置の硬貨選別動作を示す平面図であり、(a)~(d)は本実施形態の回転体による硬貨選別動作を示す平面図、(e)~(h)は比較例の回転体による硬貨選別動作を示す平面図である。
図5】同上硬貨選別装置の回転体の態様を(a)~(c)に示す平面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態を示す硬貨選別装置の回転体を(a)、(b)に示す平面図である。
図7】同上硬貨選別装置の硬貨選別動作を示す平面図であり、(a)~(d)は本実施形態の回転体による硬貨選別動作を示す平面図、(e)~(h)は比較例の回転体による硬貨選別動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図5を参照して説明する。
【0018】
図1に硬貨処理装置10の斜視図を示す。硬貨処理装置10は、例えば、所定金種の硬貨を計数する硬貨計数機に用いられる。
【0019】
硬貨処理装置10は、処理する硬貨を受け入れて1枚ずつ繰り出す繰出部11、この繰出部から1枚ずつ繰り出される硬貨を搬送する搬送通路部12、この搬送通路部12により搬送される硬貨を識別する識別部13、この識別部13で識別された硬貨のうち所定の硬貨以外の硬貨を搬送通路部12から選別する硬貨選別装置14および第2の硬貨選別装置15、および搬送通路部12から所定の硬貨を送出する送出部16を備えている。
【0020】
繰出部11は、ベース19、このベース19上に配置された供給円盤20および繰出円盤21、ベース19上で供給円盤20および繰出円盤21の周囲に配置された周壁22を備えている。供給円盤20は、上方に配置される図示しないホッパなどに投入される硬貨を受け入れ、この受け入れた硬貨を供給円盤20の回転により繰出円盤21に供給する。繰出円盤21は、供給円盤20から硬貨を受け入れ、この受け入れた硬貨を繰出円盤21の回転により1枚ずつ搬送通路部12に繰り出す。周壁22は、硬貨を供給円盤20上および繰出円盤21上に貯留する。搬送通路部12に対向する周壁22の部分は開口されている。この周壁22の開口部分には、厚み規制部材23が取り付けられている。厚み規制部材23は、繰出円盤21の上面との間に硬貨が厚み方向に1枚ずつ通過可能な間隙をあけて配置されている。
【0021】
また、搬送通路部12は、硬貨の搬送通路26、この搬送通路26に沿って硬貨を搬送する搬送部27、およびこの搬送部27が搬送通路26上の硬貨に接触するように搬送部27を押圧する押圧部28を備えている。
【0022】
搬送通路26は、繰出円盤21の接線方向に延びる第1の搬送通路部26a、およびこの第1の搬送通路部26aから繰出円盤21の側方域に向けて略直角に方向転換して延びる第2の搬送通路部26bを備えている。さらに、搬送通路26は、底板30、およびこの底板30上で搬送通路26の幅方向両側に沿って配置されるガイド部材31,32を有している。底板30の上面には、硬貨の一面が接触するとともにその硬貨を摺動させながら搬送するための搬送面33が形成されている。底板30は、識別部13の箇所の一部を除いて板金で構成されている。この板金で構成される搬送面33には、硬貨の耐焼付き用の表面処理が施されている。ガイド部材31,32は、処理対象金種の硬貨の直径よりも広い間隔で対向配置され、搬送面33上を搬送される硬貨の周縁部を案内する。一側のガイド部材31は、第1の搬送通路部26aにおいて、搬送する硬貨の一側を位置決めする基準側であり、通路内に臨んで硬貨の周面が接触する基準側面31aを有している。他側のガイド部材32は、第2の搬送通路部26bにおいて、搬送する硬貨の他側を位置決めする基準側であり、通路内に臨んで硬貨の周面が接触する基準側面32aを有している。なお、底板30およびガイド部材31,32は、搬送通路26に沿って複数に分割されていてもよいし、一体に設けられていてもよい。また、搬送通路26には、搬送通路26上の硬貨の搬送位置を検知する複数の位置検知センサが設置されている。
【0023】
搬送部27は、搬送通路26上に沿って配置される搬送ベルト35を備えている。本実施の形態では、搬送部27は、第1の搬送通路部26a上に沿って配置される第1の搬送ベルト35a、および第2の搬送通路部26b上に沿って配置される第2の搬送ベルト35bを備えている。これら搬送ベルト35a,35bは、無端状で、例えば断面円形の丸ベルトが用いられている。
【0024】
押圧部28は、搬送ベルト35a,35bの搬送方向上流側と下流側の端部をそれぞれ回動可能に支持する端部プーリ37,38を備えている。搬送方向下流側の端部プーリ38が図示しないモータによって回転駆動される。さらに、押圧部28は、複数の押圧プーリ39を備えている。押圧プーリ39は、端部プーリ37,38間に張設された搬送ベルト35a,35bの下側ベルト部位(以下、単に搬送ベルト35a,35bという)上に回転可能に配置され、その搬送ベルト35a,35bを搬送面33上の硬貨に接触するように押圧する。
【0025】
そして、第1の搬送通路部26aでは、一側のガイド部材31の基準側面31aが延びる方向と第1の搬送ベルト35aの張設方向との相対関係から、搬送面33上の硬貨を基準側面31aに片寄せするように搬送する。また、第2の搬送通路部26bでは、他側のガイド部材32の基準側面32aが延びる方向と第2の搬送ベルト35bの張設方向との相対関係から、搬送面33上の硬貨を基準側面32aに片寄せするように搬送する。
【0026】
また、識別部13は、磁気センサ部41、イメージセンサ部42、および汚損センサ部(カラーセンサ)43を有している。
【0027】
磁気センサ部41は、搬送通路26を搬送される硬貨の材質を磁気的に検知する。磁気センサ部41が配置される搬送面33の箇所は、磁気センサ部41による磁気的な検知を可能とするために例えばジルコニアなどの非磁性材料の識別面44に形成されている。
【0028】
イメージセンサ部42は、搬送面33に埋め込み設置されたガラス板45、およびこのガラス板45の下面側に対向するように配置されたイメージセンサ46を有している。ガラス板45は、例えばサファイアガラスなどの透明なガラス製で、硬貨の直径よりも大きくかつ搬送通路26の幅よりも大きい直径の円板状に形成されている。ガラス板45は、底板30に形成された開口部47に嵌合固定され、上面が搬送面33と面一となって搬送面33の一部として構成される識別面48に形成されている。イメージセンサ46は、例えばCMOSやCCDなどの固体撮像素子が用いられている。そして、イメージセンサ46は、ガラス板45を通じて、ガラス板45上を通過する硬貨の面を撮像する。
【0029】
汚損センサ部43は、硬貨の汚損具合を検知する。
【0030】
また、硬貨選別装置14は、識別部13で例えば処理対象外や識別不能等と識別されたリジェクト硬貨を選別し、搬送通路26から排除する。硬貨選別装置14は、底板30に開口された選別孔50、および一側のガイド部材31側である基準側面31a側に配置された回転体51を有している。
【0031】
選別孔50は、搬送通路の基準側面31aから通路中央側に所定の距離だけ離れた位置に設けられている。そして、基準側面31aに沿って搬送される硬貨は、硬貨の両側縁が底板30上に載った状態で選別孔50上を通過し、また、基準側面31aよりも通路中央側を搬送される硬貨は、硬貨の一側縁が底板30上から外れて選別孔50に落下するように構成されている。
【0032】
回転体51は、一側のガイド部材31に形成された溝部31b内に回転可能に配置されている。溝部31bは、円形で、搬送通路26内に寄った位置に設けられていて搬送通路26内に連通開口されている。回転体51は、搬送通路26(底板30)に対して垂直方向を軸方向として回転可能とする回転軸52、およびこの回短軸52を中心として一体に回転するカム53を有している。カム53は、断面略四角形状に形成され、溝部31bに回転可能に配置されている。そして、カム53が搬送通路26外に退避している回転位置で、基準側面31aに沿って搬送される硬貨が選別孔50上を通過し、また、カム53が搬送通路26内に突出する回転位置で、基準側面31aよりも通路中央側に硬貨を移動させて選別孔51に落下させる。
【0033】
硬貨選別装置14の搬送方向上流側には、硬貨選別装置14で選別する硬貨よりも搬送方向上流側の硬貨の搬送を一時停止させるストッパ部54が配置されている。ストッパ部54は、通路幅方向に開閉可能に設けられた一対のストッパ54aを有している。
【0034】
また、第2の硬貨選別装置15は、識別部13で例えば処理対象金種であるが硬貨面の刻印などに異常が検知された異常硬貨を分岐する。第2の硬貨選別装置15は、底板30に開口された選別孔56、およびこの選別孔56に配置された選別ローラ57を有している。選別ローラ57は偏心回転する。そして、選別ローラ57が偏心回転して選別孔56内に位置することにより、他側のガイド部材32の基準側面32aに沿って搬送される硬貨の両側が底板30と選別ローラ57とに載った状態で選別孔56上を通過する。選別ローラ57が偏心回転して選別孔56の下方に移動することにより、基準側面32aに沿って搬送される硬貨の他側を選別孔56に落下させる。
【0035】
また、送出部16は、底板30に開口された送出口59、および搬送通路26の末端に搬送される硬貨を送出口59に導く送出ガイド60を有している。
【0036】
送出部16の搬送方向上流側には、送出部16から送出される硬貨をカウントするカウントセンサ部61が配置されている。
【0037】
次に、図2に硬貨選別装置15の駆動機構63の構成を示す。
【0038】
駆動機構63は、回転体51を回転可能に支持し、回転体51の回転および所定の停止位置での停止を行う。駆動機構63は、回転体51を回転可能に支持する支持部64を有している。支持部64の下面側に、回転体51のカム53が突出配置されているとともに、伝達体65の伝達ギヤ66が回転可能に軸支されている。回転体51が有する図示しないギヤ部と伝達ギヤ66とが噛合され、回転体51と伝達ギヤ66(伝達体65)とが連動して一体的に回転するように構成されている。
【0039】
駆動機構63は、例えばモータやアクチュエータなどの駆動部67を有している。この駆動部67には駆動部67で回転駆動する駆動プーリ68が設けられ、駆動プーリ68と伝達体65に設けられた伝達プーリ69とに亘って例えばタイミングベルトなどのベルト70が掛け回されている。ベルト70はテンションプーリ71により所定のテンションが付与されている。
【0040】
伝達体65にはカム53の所定の停止位置に対応して被回転位置検知部72が設けられ、支持部64には被回転位置検知部72を検知する回転位置検知センサ73が設けられている。カム53の所定の停止位置が複数あるのに対応して、複数の被回転位置検知部72が設けられている。
【0041】
そして、駆動部67は、駆動プーリ68、ベルト70および伝達体65を介して、所定の停止位置に位置するカム53が所定の回転方向(図2矢印方向)に回転させるとともに次の所定の停止位置で停止させる。
【0042】
なお、駆動機構63は、このような伝達機構を備えた構成に限らず、例えばステッピングモータやロータリーソレノイドなどにより、回転体51の直接的に回転、停止させるように構成してもよい。
【0043】
次に、図3に硬貨選別装置15の回転体51の構成を示す。
【0044】
回転体51のカム53は、回転軸52の軸方向に直交する方向の断面(周面形状)が略四角形状に形成されている。カム53の周面の四隅には、基準側面31aから通路中央側に突出可能とする4つの突出部75が設けられている。4つの突出部75は、カム53の周方向に90°毎に設けられている。さらに、カム53の周面で隣り合う突出部75の間には、カム53の所定の非突出回転位置A1,A2(図3(a)の位置および図4(b)の位置)にて、基準側面31aから通路中央側に突出しない非突出部76が設けられている。そして、カム53は、突出部75が基準側面31aから通路外に退避する非突出回転位置A1,A2にて硬貨を通過させ、突出部75が基準側面31aから通路中央側に突出する突出回転位置B(図3(b)および図4(c)の位置)にて硬貨を選別孔50に落下させる。
【0045】
カム53の周面で隣り合う突出部75の間には、少なくとも2つの第1辺部77と第2辺部78が設けられている。なお、例えば、第1辺部77と第2辺部78との間に、これら第1辺部77と第2辺部78を接続する第3辺部などが設けられていてもよい。
【0046】
そして、非突出部76は、突出部75と突出部75との間を接続する少なくとも2つの第1辺部77と第2辺部78を有している。第1辺部77は回転方向下流側(図3矢印方向)の突出部75に接続され、第2辺部78は回転方向上流側(図3矢印方向に対して反対側)の突出部75に接続され、第1辺部77と第2辺部78とのなす角度θは180°よりも小さく設けられている。
【0047】
あるいは、非突出部76は、突出部75に対して回転方向上流側に接続される第1辺部77と回転方向下流側に接続される第2辺部とを有している。突出部75を中心とする第1辺部77の角度α1は第2辺部78の角度α2よりも小さい関係を有している。例えば、突出部75を中心とする第1辺部77の角度α1は約45°、第2辺部78の角度α2は約55°となっている。突出部75の中心は、カム53(回転軸52)の中心と、このカム53の中心からの距離(半径)が最も大きい突出部75の最大突出位置とを結ぶ中心線a上にある。
【0048】
突出部75は、カム53の中心からの距離(半径)が非突出部76よりも大きい。突出部75は、突出する先端側が回転方向に対して曲面状に設けられている。突出部75の近傍の第1辺部77および第2辺部78の一部はカム53の突出回転位置Bへの回転時に基準側面31aから通路中央側に突出されるため、カム53の突出回転位置Bにおいては、突出部75の近傍の第1辺部77および第2辺部78の一部も突出部75に含まれる。
【0049】
第1辺部77は、突出部75の中心線aを中心として約45°の角度にあり、カム53の周面の対向する非突出部76の第1辺部77が互いに平行状に設けられている。
【0050】
第2辺部78は、カム53の外形が四角形状であった場合に一部(図3の2点鎖線部分)を切り欠いた形状あるいは窪んだ形状に設けられている。第2辺部78の回転方向上流側の端部は、突出部75の最大突出位置(中心線a)に接続されている。
【0051】
第1辺部77と第2辺部78とが交わる交点(頂点)79は、突出部75と突出部75との間の中間位置であって、両側の突出部75から同じ距離の中間位置に設けられている。
【0052】
なお、第1辺部77と第2辺部78は、直線状でもよいし、外面側に凹状または凸状などの曲面でもよい。
【0053】
そして、カム53は、図3(a)に示すように、第1辺部77が基準側面31aに沿って位置される位置が停止位置であり、硬貨選別時にカム53の回転した際には回転方向上流側の次の第1辺部77が基準側面31aに沿って位置する停止位置にてカム53が停止される。
【0054】
第1辺部77が基準側面31aに沿って平行に位置される停止位置はカム53の第1非突出回転位置A1であり、硬貨選別時に回転されるカム53が第1非突出回転位置A1から所定角度βだけ回転して基準側面31aに沿って平行に位置される位置が第2非突出回転位置A2(図3(b)の位置)である。
【0055】
したがって、非突出部76は、カム53の所定の第1非突出回転位置A1にて基準側面31aに沿って位置される第1辺部77と、硬貨選別時に回転されるカム53が第1非突出回転位置A1から所定角度βだけ回転した第2非突出回転位置A2にて基準側面31aに沿って位置される第2辺部78とを有している。
【0056】
次に、硬貨処理装置10の処理動作を説明する。
【0057】
まず、図1を参照して硬貨処理装置10の全体の処理動作を説明する。
【0058】
供給円盤20の上方のホッパから投入される硬貨を供給円盤20上に受け入れる。
【0059】
硬貨処理装置10の処理開始により、供給円盤20および繰出円盤21が回転するとともに、各搬送ベルト35a,35bが回転する。
【0060】
供給円盤20の回転により、受け入れた硬貨を繰出円盤21に供給する。繰出円盤21の回転により、受け入れた硬貨を1枚ずつ搬送通路26に繰り出す。
【0061】
搬送通路26では、繰出円盤21から1枚ずつ繰り出される硬貨を第1の搬送ベルト35aの下側に咥え込み、硬貨を搬送通路26の搬送面33に押圧しながら搬送方向下流側へ向けて搬送する。第1の搬送通路部26aでは、一側のガイド部材31の基準側面31aが延びる方向と第1の搬送ベルト35aの張設方向との相対関係から、搬送面33上の硬貨を基準側面31aに片寄せするように搬送する。
【0062】
第1の搬送ベルト35aによって搬送する硬貨を識別部13で識別する。識別部13では、磁気センサ部41の位置を硬貨が通過する際に硬貨の材質を磁気的に検知し、イメージセンサ部42の位置を硬貨が通過する際にイメージセンサ46によって硬貨を撮影する。イメージセンサ46によって撮影された硬貨の画像は、図示しない演算装置によって刻印などの異常がないか確認する。
【0063】
そして、識別部13で正常と識別された硬貨つまりリジェクト硬貨ではないと識別された硬貨は、硬貨選別装置14を通過し、第1の搬送通路部26aから第2の搬送通路部26bに搬送される。また、識別部13の識別で識別不能などと判断されたリジェクト硬貨は、硬貨選別装置14で選別して搬送通路26から分岐する。このとき、リジェクト硬貨のみを硬貨選別装置14で選別する。
【0064】
第2の搬送通路部26bでは、第1の搬送通路部26aから1枚ずつ送り込まれる硬貨を第2の搬送ベルト35bの下側に咥え込み、硬貨を搬送通路26の搬送面33に押圧しながら搬送方向下流側へ向けて搬送する。第2の搬送通路部26aでは、他側のガイド部材32の基準側面32aが延びる方向と第2の搬送ベルト35bの張設方向との相対関係から、搬送面33上の硬貨を基準側面32aに片寄せするように搬送する。
【0065】
識別部13で硬貨面の刻印などに異常がないと判断された硬貨は、第2の硬貨選別装置15を通過し、カウントセンサ部61でカウントされて送出部16から送出する。また、識別部13で硬貨面の刻印などに異常があると判断された異常硬貨は、第2の硬貨選別装置15で選別して搬送通路26から分岐する。
【0066】
このように、硬貨処理装置10では、投入された硬貨を識別し、正常硬貨のみを計数して送出する。
【0067】
次に、硬貨選別装置14の硬貨選別動作について説明する。
【0068】
図4に硬貨選別動作を示し、図4(a)~(d)は本実施の形態のカム53であり、図4(e)~(h)は比較例のカム53である。図4(a)と(e)、図4(b)と(f)、図4(c)と(g)、図4(d)と(h)は、それぞれ、硬貨選別装置14に搬送されてくる硬貨の搬送タイミングが同じとする。比較例のカム53は、第2辺部78を備えない断面形状が略四角形状に設けられている。なお、比較例についても、本実施の形態と同じ符号を用いて説明する。
【0069】
図4(a)は、カム53の所定の停止位置であって、カム53が第1非突出回転位置A1に停止している。カム53が停止位置である第1非突出回転位置A1に位置する場合、第1辺部77が基準側面31aに沿って平行に位置し、突出部75は基準側面31aよりも通路外に位置する。そして、搬送通路26内を基準側面31aに沿って搬送される硬貨C1,C2を選別しない場合には、第2辺部48および第1辺部77で硬貨C1,C2が溝部31b内に入り込むのを規制しながら硬貨C1,C2が搬送方向の下流側に搬送されるのをガイドし、硬貨C1,C2がカム53の側部および選別孔50上を通過するようにする。
【0070】
一方、図4(e)に示す比較例においても、カム53の隣り合う突出部75間の辺が基準側面31aに沿って平行に位置し、突出部75は基準側面31aよりも通路外に位置する。そして、カム53の辺で硬貨C1,C2が溝部31b内に入り込むのを規制しながら硬貨が搬送方向の下流側に搬送されるのをガイドし、硬貨C1,C2がカム53の側部および選別孔50上を通過するようにする。
【0071】
また、硬貨C2を選別する場合の硬貨選別時には、図4(a)に示すように、硬貨C1の中心または基準側面31aに対向する最大径部分がカム53の第2辺部78に対向する位置に搬送された時点で、カム53が停止位置である第1非突出回転位置A1から回転を開始する。硬貨C1の搬送位置は、搬送通路26上に設置された複数の位置検知センサの検知に基づいて判断する。
【0072】
一方、同搬送タイミングの図4(e)に示す比較例においては、硬貨C1の中心または基準側面31aに対向する最大径部分がカム53の辺の回転方向上流側に対向する位置に搬送された時点で、カム53の回転を開始してしまうと、カム53の辺が硬貨C1に接触し、硬貨C1を基準側面31aから離して選別孔50に選別してしまう虞があるので、この時点ではカム53の回転を開始しない。
【0073】
続いて、図4(b)に示すように、カム53が第1非突出回転位置A1から所定角度βだけ回転して第2非突出回転位置A2に回転すると、第2辺部78が基準側面31aに沿って平行に位置し、第2辺部78で硬貨C1が溝部31b内に入り込むのを規制しながら硬貨が搬送方向下流側に搬送されるのをガイドする。このときも、突出部75は基準側面31aよりも通路外に位置しているため、搬送通路26内を基準側面31aに沿って搬送される硬貨C1は選別孔50上を通過可能とする。
【0074】
一方、同搬送タイミングの図4(f)に示す比較例においては、硬貨C1の中心または基準側面31aに対向する最大径部分がカム53の辺の中央に対向する位置に搬送された時点で、カム53の回転を開始する。したがって、本実施の形態は、比較例よりも、カム53の回転を先に開始し、カム53が所定角度βだけ先行して回転している。
【0075】
続いて、図4(c)に示すように、カム53が第2非突出回転位置A2から継続してさらに回転することにより、第2辺部78の回転方向上流側に位置する突出部75が基準側面31aから通路中央側に突出していくとともに、硬貨C1と硬貨C2との間に突出していく。
【0076】
このとき、カム53に第2辺部78が設けられていなければ、カム53の辺が硬貨C1に接触し、硬貨C1を基準側面31aから離して選別孔50に選別してしまう虞がある。カム53に第2辺部78が設けられているため、カム53が硬貨C1に接触するのを防止でき、またはカム53が硬貨C1に接触しても基準側面31aから離す量を低減でき、硬貨C1が選別孔50に選別してしまうのを防止できる。
【0077】
カム53は、初期の停止位置から90°回転した次の突出回転位置Bにて停止する。この時点では、突出部75は、硬貨C1との間の距離よりも硬貨C2との間の距離が大きく、硬貨C2の到達する搬送タイミングに対して十分な余裕をもって突出が完了する。
【0078】
一方、同搬送タイミングの図4(g)に示す比較例においては、本実施の形態よりも、カム53の回転の開始が遅いために、突出部75の突出が完了するまでにはカム53の回転が所定角度βだけ残っており、カム53の回転を継続する。
【0079】
続いて、図4(d)に示すように、突出回転位置Bにて停止しているカム53の突出部75の回転方向上流側(第1辺部77の回転方向下流側を含む)に硬貨C2が接触し、硬貨C2を基準側面31aから通路中央側に離して選別孔50に落下させる。
【0080】
したがって、本実施の形態では、例え、高速で連続して搬送される硬貨C1,C2の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨C2のみを確実に選別することができる。
【0081】
一方、同搬送タイミングの図4(h)に示す比較例においては、この時点でカム53が突出回転位置Bに回転して停止する。この場合、高速で連続して搬送される硬貨C1,C2の間の距離が短い場合には、例えばカム53による硬貨C2の選別に遅れが生じて選別できない虞がある。また、硬貨C2の選別に遅れが生じないように、カム53の回転の開始タイミングを速くすると、先行する硬貨C1を誤って選別してしまう虞がある。
【0082】
そして、本実施の形態と比較例とでカム53の突出部75の突出動作にかかる時間を比較した場合、カム53の回転速度をω[deg/s]とすると、比較例は45°/ω[s]、本実施の形態は(45°-β)/ω[s]となり、本実施の形態のカム53の形状ではより短時間で突出部75の突出動作を完了させることができる。
【0083】
さらに、カム53の回転時の硬貨の移動距離をx[mm]とすると、比較例はxω/45°[mm]、本実施の形態はxω/(45°-β)[mm]となり、本実施の形態のカム53の形状ではより速い搬送速度に対応することができる。
【0084】
また、図4(d)において、硬貨C2に続けて搬送される硬貨も選別対象の場合には、カム53は突出回転位置Bに停止したまま続けて搬送される硬貨を選別する。また、硬貨C2に続けて搬送される後続の硬貨が選別対象外で通過させる場合には、硬貨C2の中心または基準側面31aに対向する最大径部分がカム53の突出部75の側部を通過したら、カム53を回転させ、突出していた突出部75の回転方向上流側の第1辺部77が基準側面31aに沿って平行に位置する第1非突出回転位置A1である停止位置(図4(a)に示す位置)に停止させ、続けて搬送される硬貨を通過させる。また、カム53を突出回転位置Bから第1非突出回転位置A1に回転させる際、突出部75が硬貨の搬送方向と同じ方向に回転するため、カム53が選別対象外の後続の硬貨に接触して誤選別してしまうのを防止できる。
【0085】
また、図5において、カム53の第1辺部77と第2辺部78の長さの割合について考察する。
【0086】
図5(a)に示すように、第2辺部78の長さの割合が第1辺部77よりも大きい場合、カム53が第1非突出回転位置A1に位置するとき、硬貨が第2辺部78の部分で溝部31bに入り込みやすくなり、硬貨が基準側面31a側に移動する移動量xが大きいことで、基準側面31a側とは反対側の硬貨の縁部が底板30上から選別孔50に外れて落下する虞がある。
【0087】
図5(b)(c)に示すように、第2辺部78の長さの割合が第1辺部77よりも小さい場合、カム53が第1非突出回転位置A1から第2非突出回転位置A2に先行して回転できる角度βが小さくなり、硬貨が高速で連続して搬送される場合の選別に対応できなくなる虞がある。
【0088】
そのため、カム53の第1辺部77と第2辺部78の長さの割合は、均等であることが好ましい。
【0089】
このように、本実施の形態の硬貨選別装置14によれば、非突出部76は、突出部75と突出部75との間を接続する少なくとも2つの第1辺部77と第2辺部78を有し、第1辺部77が回転方向下流側の突出部75に接続され、第2辺部78が回転方向上流側の突出部75に接続され、第1辺部77と第2辺部78とのなす角度θは180°よりも小さく設けられているため、
高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる。
【0090】
あるいは、非突出部76は、突出部75に対して回転方向上流側に接続される第1辺部77と下流側に接続される第2辺部とを有し、突出部75を中心とする第1辺部77の角度α1は第2辺部78の角度α2よりも小さい関係を有しているため、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる。
【0091】
あるいは、非突出部76は、カム53の所定の第1非突出回転位置A1にて基準側面31aに沿って位置される第1辺部77と、硬貨選別時に回転されるカム53が第1非突出回転位置A1から所定角度βだけ回転した第2非突出回転位置A2にて基準側面31aに沿って位置される第2辺部78とを有しているため、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる。
【0092】
また、カム53は、4つの突出部75を有しているため、1回の硬貨選別動作あたりのカム53の回転量が少なくて済み、短時間での突出部75の突出、退避が可能となり、この点においても、高速で連続して搬送される硬貨の間の距離が短い場合でも、所定の硬貨のみを確実に選別することができる。
【0093】
さらに、突出部75は硬貨と接触するために摩耗が生じるが、カム53は複数の突出部75を有しているため、突出部75が1つの場合に比べて、各突出部75の摩耗を低減してカム53の寿命を長くできる。
【0094】
さらに、カム53を突出回転位置Bから第1非突出回転位置A1に回転させる際、突出部75が硬貨の搬送方向と同じ方向に回転するため、選別対象外の硬貨を誤って選別してしまうのを防止できる。
【0095】
次に、図6および図7に、第2の実施の形態を示す。
【0096】
カム53は、断面略三角形状で、3つの突出部75と3つの非突出部76を有している。突出部75は、カム53の周方向に120°毎に設けられている。
【0097】
そして、第1の実施の形態と同様に、非突出部76は、突出部75と突出部75との間を接続する少なくとも2つの第1辺部77と第2辺部78を有し、第1辺部77は回転方向下流側の突出部75に接続され、第2辺部78は回転方向上流側の突出部75に接続され、第1辺部77と第2辺部78とのなす角度θは180°よりも小さく設けられている。
【0098】
あるいは、非突出部76は、突出部75に対して回転方向上流側に接続される第1辺部77と下流側に接続される第2辺部とを有している。突出部75を中心とする第1辺部77の角度α1は第2辺部78の角度α2よりも小さい関係を有している。
【0099】
あるいは、非突出部76は、カム53の所定の第1非突出回転位置A1にて基準側面31aに沿って位置される第1辺部77と、硬貨選別時に回転されるカム53が第1非突出回転位置A1から所定角度βだけ回転した第2非突出回転位置A2にて基準側面31aに沿って位置される第2辺部78とを有している。
【0100】
第2辺部78は、カム53の外形が三角形状であった場合に一部(図6の2点鎖線部分)を切り欠いた形状あるいは窪んだ形状に設けられている。第2辺部78の回転方向上流側の端部は、突出部75の最大突出位置(中心線a)に接続されている。
【0101】
そして、図7に硬貨選別動作を示し、図7(a)~(d)は本実施の形態のカム53であり、図7(e)~(h)は比較例のカム53である。図7(a)と(e)、図7(b)と(f)、図7(c)と(g)、図7(d)と(h)は、それぞれ、硬貨選別装置14に搬送されてくる硬貨の搬送タイミングが同じとする。比較例のカム53は、第2辺部78を備えない略三角形状のカム形状である。
【0102】
図7(a)~(d)に示す本実施の形態のカム53による選別動作は、上述した図4(a)~(d)に示す略四角形状のカム53による選別動作と同様であり、また、図7(e)~(h)に示す比較例のカム53による選別動作は、上述した図4(e)~(h)に示す略四角形状のカム53による選別動作と同様である。
【0103】
したがって、略三角形状のカム53を用いた場合にも、上述した略四角形状のカム53を用いた場合と同様の作用効果を期待できる。
【0104】
なお、カム53の形状は、突出部75および非突出部76の数が多いほど、1回の硬貨選別動作あたりのカム53の回転量が少なくて済み、短時間での突出部75の突出、退避が可能となるとともに、各突出部75の摩耗を低減してカム53の寿命を長くできるが、一方で、カム53の外形が大きくなり、設置スペースの制約の問題が生じたり、駆動機構63の負荷を増加する。また、突出部75および非突出部76の数が少ないほど、カム53の外形が小さくなり、設置スペースの制約が軽減されるとともに、駆動機構63の負荷も軽減されるが、一方で、1回の硬貨選別動作あたりのカム53の回転量が増し、突出部75の突出、退避の時間が増加するとともに、各突出部75の摩耗が増加してカム53の寿命が短くなる。そのため、カム53の突出部75および非突出部76の数は、硬貨選別装置14の寸法や用途などに応じて適宜設定され、例えば3つ以上でかつ5つまたは6つ以内の範囲が好ましく、3つまたは4つがより好ましい。
【0105】
なお、硬貨処理装置10は、所定の金種のみを計数する硬貨計数機に用いる場合に限らず、複数金種を計数する硬貨計数機に用いてもよい。さらに、硬貨処理装置は、硬貨計数機に限らず、硬貨入金機や硬貨入出金機、あるいは硬貨包装機などに用いてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 硬貨処理装置
14 硬貨選別装置
26 搬送通路
31a 基準側面
50 選別孔
51 回転体
52 回転軸
53 カム
75 突出部
76 非突出部
77 第1辺部
78 第2辺部
A1 第1非突出回転位置
A2 第2非突出回転位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7