(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】コネクタの防水構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240130BHJP
H01R 13/504 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01R13/52 Z
H01R13/504
(21)【出願番号】P 2020214022
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 勲
(72)【発明者】
【氏名】青野 通和
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-122941(JP,A)
【文献】特開2008-288116(JP,A)
【文献】特開2006-114288(JP,A)
【文献】特開昭50-070886(JP,A)
【文献】特開2002-025685(JP,A)
【文献】特開2007-304163(JP,A)
【文献】特開平10-172621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H02G 15/00-15/196
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に接続された端子を収容する筒状の端子収容室を有するハウジングと、
前記端子収容室の後端開口と、前記端子収容室の後端から延在される電線収容溝とを一体に覆って、前記ハウジングに溶着されるカバーと、
前記電線収容溝における前記電線が導出される部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のハウジング凸部と、
前記カバーにおける前記ハウジング凸部に対応する部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のカバー凸部と、を備え、
前記カバーが前記ハウジングに溶着された際に、前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部の先端が、それぞれ前記電線の被覆に食い込んだ状態となる、
ことを特徴とするコネクタの防水構造。
【請求項2】
前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部が、それぞれ前記電線の中心線に沿って複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタの防水構造。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記電線収容溝が前記端子収容室の後端から端子挿入方向に対して交差する方向へ延在されるL字状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
防水性を向上させたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコネクタは、コネクタ側端子と、コネクタ側端子を収容するための収容空間を備えて形成されたハウジングと、を有する。
ハウジングは、第1の溶着面を有し且つコネクタ側端子が取り付けられる第1のハウジング要素と、第1の溶着面全体に対して密着しつつ接触するように形成された第2の溶着面を有する第2のハウジング要素と、を備えて構成される。
【0003】
第1のハウジング要素には、コネクタ側端子の取り付け時に挿入口として用いられる開口部が設けられており、第1の溶着面は、開口部を囲んで形成された環状領域を含んで構成されている。そして、第1の溶着面及び第2の溶着面は、溶着により接合されることで、開口部の全方向についての防水を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のコネクタでは、第1のハウジング要素が、相手側ソケットに対して嵌挿される筒状部と、筒状部の一方の端部から突出する箱状部と、を有してL字状に構成されている。そして、箱状部の内部に形成された貫通空間に密着配置されたゴム栓によって、コネクタの電線の貫通部における防水性が確保されている。
そのため、ゴム栓による部品点数の増加や、ゴム栓に電線を挿通する必要があることから組立作業が煩雑となり、コスアップを招くという問題がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ゴム栓を使わずに生産性が高く且つ防水性が高いコネクタの防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電線の端末に接続された端子を収容する筒状の端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室の後端開口と、前記端子収容室の後端から延在される電線収容溝とを一体に覆って、前記ハウジングに溶着されるカバーと、前記電線収容溝における前記電線が導出される部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のハウジング凸部と、前記カバーにおける前記ハウジング凸部に対応する部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のカバー凸部と、を備え、前記カバーが前記ハウジングに溶着された際に、前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部の先端が、それぞれ前記電線の被覆に食い込んだ状態となる、ことを特徴とするコネクタの防水構造。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタの防水構造によれば、ハウジングにおける端子収容室の後端開口と電線収容溝とを一体に覆うカバーが、レーザー溶着等によりハウジングに溶着される。そこで、カバーをハウジングに強固に固定することができる。
また、カバーがハウジングに溶着された際に、ハウジングにおける電線が導出される部分とカバーにおけるハウジング凸部に対応する部分とにより区画形成された電線引き出し部よって、電線が引き出された状態となる。そして、この電線引き出し部では、ハウジング凸部及びカバー凸部の先端が、それぞれ電線の被覆に食い込んだ状態となっており、電線引き出し部での水の浸入が防止される。
その結果、本構成のコネクタの防水構造によれば、ゴム栓を必要としない防水コネクタを構成することができ、部品点数を削減でき、組み立て作業性を向上させることができる。
【0009】
(2) 前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部が、それぞれ前記電線の中心線に沿って複数設けられている、ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタの防水構造。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタの防水構造によれば、電線引き出し部では、複数のハウジング凸部及びカバー凸部の先端が、それぞれ電線の被覆に食い込んだ状態となる。そこで、電線引き出し部での防水性をより向上させることができる。
【0011】
(3) 前記ハウジングは、前記電線収容溝が前記端子収容室の後端から端子挿入方向に対して交差する方向へ延在されるL字状に形成されている、ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のコネクタの防水構造。
【0012】
上記(3)の構成のコネクタの防水構造によれば、電線の引き出し方向を端子収容室に対して直交する方向へ規制することができる。
これにより、L字状に形成されたハウジングに、電線の端末に接続された端子を収容する防水コネクタを容易に構成することができる。その結果、全長に亘って連続的に完全な筒形を維持しつつ略L字形に屈曲させる形成の困難な端子を用いる必要がなくなる。
【0013】
(4) 前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部が、前記電線の被覆に溶着される、ことを特徴とする上記(1)~(3)の何れか一つに記載のコネクタの防水構造。
【0014】
上記(4)の構成のコネクタの防水構造によれば、ハウジングとカバーの溶着部に加え、電線引き出し部におけるハウジング凸部及びカバー凸部と電線の被覆とが、例えばレーザー透過溶着法により溶着される。そこで、より防水性が高い防水コネクタを構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコネクタの防水構造によれば、ゴム栓を使わずに生産性が高く且つ防水性が高いコネクタを提供することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るコネクタの防水構造を備えたコネクタを前方から見た斜視図及び後方から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示したコネクタを相手側コネクタに嵌合した状態における芯線に沿う方向の断面図である。
【
図4】
図3に示したシールドアッセンブリの分解斜視図である。
【
図5】シールドアッセンブリを収容したハウジングにカバーを取り付ける前の状態を示すコネクタの斜視図である。
【
図6】ハウジングにカバーを溶着する工程を説明する斜視図である。
【
図7】本発明の変形例に係るコネクタの防水構造を備えたコネクタの芯線に沿う方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1の(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るコネクタの防水構造を備えたコネクタ23を前方から見た斜視図及び後方から見た斜視図である。
図2は、
図1に示したコネクタ23を相手側コネクタ21に嵌合した状態における芯線13に沿う方向の断面図である。
図3は、
図1に示したコネクタ23の分解斜視図である。
【0019】
本実施形態のコネクタ23は、電線11の端末に取り付けられる高周波コネクタであり、高周波コネクタ付き電線として使用される。電線11としては、例えば同軸ケーブルが用いられる。
【0020】
[電線]
電線11は、中心側より、芯線13、絶縁体15、編組17、および被覆19より構成される(
図2,4参照)。導電性を有する芯線13は、単線、複数の素線を撚った撚り線のいずれであってもよい。絶縁体15は、電気絶縁性を有して芯線13を覆う。編組17は、導電性を有して絶縁体15の外周を覆う。被覆19は、電気絶縁性を有して編組17の外周を覆う。
なお、本実施形態において、電線11は、絶縁体15及び編組17を有する同軸ケーブルであるが、芯線13の外周を覆う被覆19を有する電線であればその他の構成は限定されない。
【0021】
[コネクタ]
図2及び
図3に示すように、コネクタ23は、アウタハウジング(ハウジング)49と、雌シールドアッセンブリ53と、カバー46とにより構成される。
アウタハウジング49は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形された略L字形状のハウジングであり、シールドアッセンブリ収容室36が形成されている。シールドアッセンブリ収容室36は、前後方向で貫通する端子収容室35と、端子収容室35の後端から前後方向に対して交差する下方へ延在される電線収容溝58とでL字状に形成されており、後端開口56を介して外部と連通している。
【0022】
アウタハウジング49には、端子収容室35に突出するように、弾性係止片37(可撓ランス)が形成されている。端子収容室35の内壁には、後述する雌シールド本体75に切り起こし形成された起立片89を挿入案内するガイド溝(図示せず)が形成されている。
【0023】
端子収容室35の前端には、後述する相手側コネクタ21の嵌合部42が嵌合される嵌合空間40が形成されている。嵌合空間40内には、防水パッキン27が組み付けられている。防水パッキン27は、嵌合空間40の内周面と嵌合部42の外周面との間を水密にシールする。
【0024】
なお、防水パッキン27を嵌合空間40内に組み付けず、相手側コネクタ21の嵌合部42の外周面に取付けることで、嵌合空間40の内周面と嵌合部42の外周面との間を水密にシールすることもできる。
【0025】
更に、アウタハウジング49は、ロック突起55が設けられた弾性変形可能なロックアーム57と、相手側アウタハウジング25との正規嵌合を検知して保証する嵌合検知部材65(CPA:Connector Position Assurance)と、を備える。
嵌合検知部材65は、アウタハウジング49の側面にコネクタ嵌合方向で、仮係止位置と本係止位置に移動自在に取り付けられる。嵌合検知部材65は、アウタハウジング49と相手側アウタハウジング25が嵌合完了したときに、すなわち、コネクタ23と相手側コネクタ21が嵌合完了したときに、仮係止位置から本係止位置(嵌合保証位置)に移動が可能となる。
【0026】
[相手側コネクタ]
相手側コネクタ21は、
図2に示すように、相手側アウタハウジング25と、雄シールドアッセンブリ29とを備えている。尚、相手側コネクタ21は、筐体の一部である。
相手側アウタハウジング25は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形され、コネクタ23の嵌合空間40に嵌合される嵌合部42を有する。相手側アウタハウジング25は、被ロック部31(
図2参照)が設けられたフード部33を有している。
【0027】
相手側コネクタ21における雄シールドアッセンブリ29は、雄インナ端子41と、雄インナハウジング43と、雄シールドアウタ端子45とにより構成される。雄インナ端子41は、導電性を有する金属によりタブ状或いはピン状に形成されている。雄インナハウジング43は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雄シールドアウタ端子45は、導電性を有する金属により筒状或いは一対の挟持片状に形成されている。雄シールドアッセンブリ29は、筐体内の図示しない基板に接続されている。
【0028】
[コネクタと相手側コネクタの嵌合]
上記のコネクタ23と相手側コネクタ21とは、
図2に示すように、嵌合されることになる。相手側コネクタ21のフード部33に、コネクタ23が挿入されて、相手側コネクタ21とコネクタ23が嵌合されると、ロックアーム57のロック突起55が、被ロック部31と係合する。これにより、相手側コネクタ21とコネクタ23とは、嵌合状態が維持される。
【0029】
嵌合状態において、アウタハウジング49に設けられる嵌合検知部材65は、仮係止位置から
図2に示す本係止位置へ移動される。嵌合検知部材65は、被ロック部31に係合しているロック突起55に、検知アーム67の先端に設けられている検知部69が係合することにより、相手側コネクタ21とコネクタ23との正規嵌合を検知する。また、嵌合検知部材65は、相手側コネクタ21とコネクタ23との正規嵌合を検知した本係止位置に移動される。すると、ロックアーム規制部71が、ロックアーム57のロック解除片73の解除空間に挿入され、ロックアーム57のロック解除を不能とする。つまり、嵌合検知部材65は、正規嵌合を検知するとともに、その正規嵌合を保証するように作動する。
【0030】
嵌合状態において、電線11の端末に接続された雌シールドアッセンブリ53と、不図示の基板に接続された雄シールドアッセンブリ29が電気的に接続されることになる。すなわち、雌インナ端子59と雄インナ端子41が電気的に接続され、電線11と不図示の基板の回路が導通して通信回路が形成される。同時に、雌シールドアウタ端子63と雄シールドアウタ端子45が電気的に接続され、電線11の編組17と不図示の基板の回路が導通してシールド回路が成形される。
【0031】
[雌シールドアッセンブリ]
コネクタ23における雌シールドアッセンブリ53は、
図4に示すように、雌インナ端子59と、雌インナハウジング61と、雌シールドアウタ端子63とにより構成されている。雌シールドアウタ端子63は、雌シールド本体75、雌シールドスリーブ77および加締め部材79の3部品より構成されている。
【0032】
雌インナ端子(端子)59は、導電性を有する金属により筒状に形成されている。雌インナ端子59は、電線11の芯線13に加締めにより、電気的に接続される。雌シールド本体75は、略円筒状である。雌シールド本体75は、前方から後方にかけて、前方円筒接続部81と、拡径された拡径部83とを有して成形される。雌シールド本体75には、前後方向で貫通するインナハウジング収容室85が成形されている。なお、本明細書中、前方とは、コネクタが嵌合方向に進む方向を言い、後方とはその反対の方向を言う。
【0033】
なお、前方円筒接続部81には、弾性変形可能な接触片87が切り起こしにより成形されている。接触片87は、相手側コネクタ21が嵌合された状態で、雄シールドアウタ端子45(
図2参照)と弾性的に接触し、電気的に接続する機構を構成するものである。また、雌シールド本体75は、拡径部83の後部に、一対の平行な起立片89が切り起こしにより成形されている。起立片89は、アウタハウジング49の端子収容室35の内壁にコネクタ嵌合方向に沿って形成された図示しないガイド溝に挿入されることにより、雌シールドアッセンブリ53の挿入姿勢を定めるスタビライザを構成するものである。
【0034】
雌シールドスリーブ77は、円筒を略L字状に屈曲して形成される。雌シールドスリーブ77は、導電性を有する金属からなり、前方から後方にかけて、嵌入部91と、編組覆われ部93とが連続するL字形の筒状に形成される。嵌入部91は、編組覆われ部93よりも大径の筒状となって、編組覆われ部93と直交する交差軸上に成形される。雌シールドスリーブ77には、直交方向で貫通する、挿入空間が成形される。
【0035】
加締め部材79は、導電性を有する金属からなり、U字状に形成される。加締め部材79には、連結部95を介して、編組加締め片97と被覆加締め片99とが前後方向に接続して一体で形成される。
【0036】
電線11の端末に接続された雌シールドアッセンブリ53は、雌シールドスリーブ77を貫通した雌インナ端子59が、雌インナハウジング61のインナ端子収容室101に収容される。雌インナ端子59を収容した雌インナハウジング61は、雌シールド本体75のインナハウジング収容室85に収容される。雌インナハウジング61は、挿入方向の中央部が大径部103となり、大径部103を挟んで前方と後方が、大径部103よりも小径の前方円筒部105と後方円筒部107となる。
【0037】
また、雌シールド本体75の拡径部83には、雌シールドスリーブ77の嵌入部91が嵌め込まれる。雌シールド本体75と雌シールドスリーブ77とは、一体化され、拡径部83と嵌入部91は、圧入された上で、はんだで接合され、保持される。
なお、拡径部83と嵌入部91は、圧入のみ、はんだ接合のみ、または係止機構等で保持させるようにしてもよい。
【0038】
また、雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93には、編組覆われ部93の外周を覆うように、電線11の編組17が配置される。加締め部材79は、編組加締め片97が編組17の外周を覆うように加締められる。編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間は、はんだ109(
図2参照)により、はんだ接合される。
なお、加締め部材79の被覆加締め片99は、電線11の被覆19に外周から加締められる。つまり、雌シールドアッセンブリ53は、加締め部材79が編組17と被覆19との双方に固定される。
編組覆われ部93、編組17および編組加締め片97と、これらを接合しているはんだ109とは、編組加締め部111を構成する。
【0039】
[アウタハウジングへの雌シールドアッセンブリの組付け]
図5は、雌シールドアッセンブリ53を収容したアウタハウジング49にカバー46を取り付ける前の状態を示すコネクタ23の斜視図である。
そして、
図5に示すように、アウタハウジング49の後端開口56からシールドアッセンブリ収容室36に収容された雌シールドアッセンブリ53は、雌シールド本体75が端子収容室35に収容され、加締め部材79及び電線11の端末が電線収容溝58に収容される。
アウタハウジング49の端子収容室35に挿入された雌シールド本体75は、係止突起47が端子収容室35の弾性係止片37に係止されることにより、端子収容室35に保持される(
図2参照)。
電線収容溝58における電線11が導出される部分には、半環状のハウジング凸部である半環状リブ38が、電線11の中心線に沿って複数設けられている。
【0040】
カバー46は、電気絶縁性を有する合成樹脂により略板状に成形されており、後端開口56を覆うように、アウタハウジング49の後方側から取付けられる。カバー46の内面には、アウタハウジング49の後端開口56に嵌合する円柱形凸部50と、加締め部材79に対向する押え部51とが、設けられている。
更に、カバー46は、アウタハウジング49の半環状リブ38に対応する部分に、半環状のカバー凸部である半環状リブ48が、電線11の中心線に沿って複数設けられている。そこで、カバー46がアウタハウジング49に取り付けられる際には、円柱形凸部50が後端開口56に嵌合し、押え部51が加締め部材79を押さえると共に、半環状リブ38及び半環状リブ48の先端が、それぞれ電線11の被覆19に食い込み、電線11を水密に挟持することができる。
【0041】
そして、カバー46がアウタハウジング49に取り付けられた際には、これら半環状リブ38が設けられた部分と半環状リブ48が設けられた部分とにより区画形成された電線引き出し部100によって、電線11がコネクタ23から引き出された状態となる。
【0042】
図6は、アウタハウジング49にカバー46を溶着する工程を説明する斜視図である。
端子収容室35の後端開口56と、端子収容室35の後端から延在される電線収容溝58とを一体に覆ったカバー46は、アウタハウジング49に取り付けられた状態を維持しながら、レーザー溶着により溶着される。
なお、アウタハウジング49とカバー46の間には、カバー46が後端開口56を塞いだ状態を維持するために、係止部と被係止部からなる図示しない係止機構を設けてもよい。
【0043】
図6に示すように、レーザー照射装置110によりレーザー光をカバー46の外形部に沿ってアウタハウジング49との当接箇所に当てることで、カバー46の外形部とアウタハウジング49との当接部が溶融され、溶着部80が成形される。アウタハウジング49とカバー46が溶着部80で溶着されることにより、カバー46はアウタハウジング49に対して強固に固定された状態となる。また、カバー46の外形部とアウタハウジング49との当接部が溶着部80で溶着されることにより、アウタハウジング49とカバー46との隙間が塞がれて水の浸入が防止される。
【0044】
ここで、カバー46をアウタハウジング49に溶着する際には、レーザー透過溶着法により溶着することもできる。
レーザー透過溶着法は、光透過性樹脂部品と光吸収性樹脂部品とを重ねた状態で、光透過性樹脂部品側からレーザー光を照射する。すると、レーザー光は、光透過性樹脂部品を透過し、光吸収性樹脂部品のうち光透過性樹脂部品の境界近傍部分を発熱させる。そこで、この熱によって、両樹脂部品を溶融・接合する方法である。
従って、カバー46を光透過性樹脂部品で形成し、アウタハウジング49を光吸収性樹脂部品で形成することで、カバー46の合わせ面とアウタハウジング49の合わせ面とを溶融・接合することもできる。
【0045】
更に、アウタハウジング49にカバー46が溶着された状態において、電線引き出し部100からは電線11が引き出された状態となっている。そして、電線引き出し部100では、アウタハウジング49とカバー46のそれぞれに設けられている複数の半環状リブ38及び半環状リブ48の先端が、それぞれ電線11の被覆19に食い込んだ状態となっている。そして、半環状リブ38と半環状リブ48とは、カバー46がアウタハウジング49に溶着されると、それぞれ周方向に連続した円環状リブを構成することができる。従って、本実施形態のコネクタ23は、ゴム栓を用いることなく、電線引き出し部100からの水の浸入が防止される。
【0046】
次に、上記した構成のコネクタの防水構造の作用を説明する。
本実施形態に係るコネクタ23におけるコネクタの防水構造によれば、アウタハウジング49における端子収容室35の後端開口56と電線収容溝58とを一体に覆うカバー46が、レーザー溶着によりアウタハウジング49に溶着される。そこで、カバー46をアウタハウジング49に強固に固定することができる。
【0047】
また、カバー46がアウタハウジング49に溶着された際に、アウタハウジング49における電線11が導出される部分と、カバー46における半環状リブ38に対応する部分とにより区画形成された電線引き出し部100には、電線11が引き出された状態となる。そして、この電線引き出し部100では、半環状リブ38及び半環状リブ48の先端が、それぞれ電線11の被覆19に食い込んだ状態となっており、電線引き出し部100での水の浸入が防止される。
その結果、本構成のコネクタの防水構造を備えたコネクタ23によれば、ゴム栓を必要としない防水コネクタを構成することができ、部品点数を削減でき、組み立て作業性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るコネクタ23におけるコネクタの防水構造では、半環状リブ38及び半環状リブ48が、それぞれ電線11の中心線に沿って複数設けられている。
そこで、電線引き出し部100では、複数の半環状リブ38及び半環状リブ48の先端が、それぞれ電線11の被覆19に食い込んだ状態となる。そして、これら半環状リブ38及び半環状リブ48は、カバー46がアウタハウジング49に溶着されると、それぞれ周方向に連続した複数の円環状リブを構成することができる。そこで、電線引き出し部100での防水性をより向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係るコネクタ23におけるコネクタの防水構造では、アウタハウジング49は、電線収容溝58が端子収容室35の後端から端子挿入方向に対して交差する方向へ延在されるL字状に形成されている。
そこで、電線11の引き出し方向を端子収容室35に対して直交する方向へ規制することができる。
これにより、L字状に形成されたアウタハウジング49に、電線11の端末に接続された雌インナ端子(端子)59を有する雌シールドアッセンブリ53を収容した防水コネクタとしてのコネクタ23を容易に構成することができる。その結果、全長に亘って連続的に完全な筒形を維持しつつ略L字形に屈曲させる形成の困難な端子を用いる必要がなくなる。
【0050】
従って、本実施形態に係るコネクタの防水構造によれば、ゴム栓を使わずに生産性が高く且つ防水性が高いコネクタ23を提供することができる。
【0051】
図7は、本発明の変形例に係るコネクタの防水構造を備えたコネクタ23Aの芯線13に沿う方向の断面図である。なお、上記コネクタ23と同様のコネクタ23Aの構成には、同符号を付して重複する説明は省略する。
【0052】
本変形例に係るコネクタ23Aは、
図7に示すように、半環状リブ38及び半環状リブ48が、レーザー光により溶融されて溶着部80Aを形成することで、電線11の被覆19に溶着されている。
ここで、半環状リブ38及び半環状リブ48は、レーザー透過溶着法により電線11の被覆19に溶着される。即ち、アウタハウジング49及びカバー46を光透過性樹脂部品で形成し、被覆19を光吸収性樹脂部品で形成することで、半環状リブ38及び半環状リブ48と被覆19とをレーザー光により溶融・接合する。
【0053】
本変形例に係るコネクタの防水構造によれば、アウタハウジング49とカバー46の溶着部80に加え、電線引き出し部100における半環状リブ38及び半環状リブ48と電線11の被覆19とが、溶着部80Aにより溶着される。そこで、より防水性が高い防水コネクタとしてのコネクタ23Aを構成することができる。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、本発明のハウジングは、L字状に形成された上記実施形態のアウタハウジング49に限らず、真っ直ぐな筒状に形成されたハウジングでもよい。この場合、ハウジングの後端縁に後端開口を切欠き形成し、この後端開口と、端子収容室の後端から延在される電線収容溝とを一体に覆うように、カバーが溶着される。
【0055】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの防水構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(11)の端末に接続された端子(雌インナ端子59)を収容する筒状の端子収容室(35)を有するハウジング(アウタハウジング49)と、
前記端子収容室の後端開口(56)と、前記端子収容室の後端から延在される電線収容溝(58)とを一体に覆って、前記ハウジングに溶着されるカバー(46)と、
前記電線収容溝における前記電線が導出される部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のハウジング凸部(半環状リブ38)と、
前記カバーにおける前記ハウジング凸部に対応する部分に設けられて、前記電線の外周面に圧接される半環状のカバー凸部(半環状リブ48)と、を備え、
前記カバーが前記ハウジングに溶着された際に、前記ハウジング凸部及び前記カバー凸部の先端が、それぞれ前記電線の被覆(19)に食い込んだ状態となる、
ことを特徴とするコネクタの防水構造。
[2] 前記ハウジング凸部(半環状リブ38)及び前記カバー凸部(半環状リブ48)が、それぞれ前記電線(11)の中心線に沿って複数設けられている、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタの防水構造。
[3] 前記ハウジング(アウタハウジング49)は、前記電線収容溝(58)が前記端子収容室(35)の後端から端子挿入方向に対して交差する方向へ延在されるL字状に形成されている、
ことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のコネクタの防水構造。
[4] 前記ハウジング凸部(半環状リブ38)及び前記カバー凸部(半環状リブ48)が、前記電線(11)の被覆(19)に溶着される、
ことを特徴とする上記[1]~[3]の何れか一つに記載のコネクタの防水構造。
【符号の説明】
【0056】
11…電線
19…被覆
21…相手側コネクタ
23…コネクタ
35…端子収容室
38…半環状リブ(ハウジング凸部)
46…カバー
48…半環状リブ(カバー凸部)
49…アウタハウジング(ハウジング)
56…後端開口
58…電線収容溝
59…雌インナ端子(端子)
80…溶着部