(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】医療装置および医療装置を動作させる方法および短絡の検出
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240130BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61M5/168 510
A61M5/168 550
A61M5/172
(21)【出願番号】P 2020506801
(86)(22)【出願日】2018-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2018072109
(87)【国際公開番号】W WO2019034685
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-20
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】フリードリ,クルト
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6075296(US,A)
【文献】国際公開第2016/040423(WO,A1)
【文献】特表2014-516281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0254025(US,A1)
【文献】特表2010-534085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置(10)であって、前記医療装置(10)は、コントローラ(3)の第1のポート(31)
に接続された第1の回路および
前記コントローラ(3)の第2のポート(31)に接続された
第2の回路を有する電子回路(4)に関連付けられたユーザインタフェース(12)を含み、前記電子回路(4)は、前記コントローラ(3)が、前記第1のポートおよび前記第2のポートからの信号によって前記ユーザインタフェース(12)の作動を検出することを可能にし、前記コントローラ(3)は、以下の一連のステップ、すなわち、
- 前記第1のポート(31)を出力ポートとして構成し(S4)、第1の信号を前記第1のポートに印加する(S5)第1のステップと、
- 前記第2のポート(32)からの第2の信号を取得する(S6)第2のステップと、
- 前記第2の信号に基づいて、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に短絡が発生したか否かを判断し(S8)、該当する場合、短絡警告信号を生成する(S81)、第3のステップと、
を実行するように構成される、医療装置(10)。
【請求項2】
前記コントローラ(3)は、前記第1のステップの前に、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されていないかどうかを検出し(S2、S3)、少なくとも前記ユーザインタフェース(12)の一部が作動されていない場合にのみ、前記一連のステップを実行するように構成される、請求項1に記載の医療装置(10)。
【請求項3】
前記コントローラ(3)は、前記第1のステップの前に、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されているか否かを検出し、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されている場合に、所定の待機時間にわたって待機し(S31)、任意選択で、所定の待機時間にわたって繰り返し待機し、最大総待機時間に達した後、警告信号を生成する(S32、S33)ように構成される、請求項1または2に記載の医療装置(10)。
【請求項4】
前記コントローラ(3)は、前記第3のステップに続いて、前記第1のポート(31)を入力ポートとして構成する(S7)ように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項5】
前記コントローラ(3)は、前記第1のステップにおいて、グランド電圧が前記第1のポート(31)に印加され、前記第3のステップにおいて、前記第2の信号が供給電圧に等しくない場合に前記短絡警告信号が生成されるように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項6】
前記コントローラ(3)は、前記一連のステップが、以下のもの、すなわち、所定の時点、所定の時間間隔の終了時、ランダムな時点、医療用流体送達装置のアイドル時、医療用流体送達装置の電源オン時、およびユーザ要求時のうちの少なくとも1つに従って実行されるように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項7】
前記ユーザインタフェース(12)は、第1のユーザボタン(1)および第2のユーザボタン(2)を含み、前記コントローラ(3)は、前記第1のユーザボタン(1)および前記第2のユーザボタン(2)が実質的に同時に作動する場合に、前記医療装置(10)の所定の動作モードを始動するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項8】
前記電子回路(4)は、前記コントローラ(3)の前記第1のポート(31)を第1のパッド(43)に接続する第1の線路と、前記コントローラの前記第2のポート(31)を第2のパッド(44)に接続する第2の線路とを含み、前記第1のパッド(43)は第1の抵抗器(45)を介して供給電圧に接続され、前記第1のパッド(43)は、第1のユーザボタン(1)に関連付けられた第1のスイッチ(41)を介してグランド電圧に接続され、前記第2のパッド(44)は、第2の抵抗器(46)を介して前記供給電圧に接続され、前記第2のパッド(44)は、第2のユーザボタン(2)に関連付けられた第2のスイッチ(42)を介してグランド電圧に接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項9】
前記医療装置(10)は、インスリンポンプ、グルコースメータまたは遠隔制御装置である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療装置(10)。
【請求項10】
医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置(10)を動作させる方法であって、前記医療装置(10)は、コントローラ(3)の第1のポート(31)
に接続された第1の回路および
前記コントローラ(3)の第2のポート(32)に接続された
第2の回路を有する電子回路(4)に関連付けられたユーザインタフェース(12)を含み、前記電子回路(4)は、前記コントローラ(3)が、前記第1のポート(31)および前記第2のポート(32)からの信号によって前記ユーザインタフェースの作動を検出することを可能にし、前記方法は、前記コントローラ(3)により行われ、以下の一連のステップ、すなわち、
- 前記第1のポート(31)を出力ポートとして構成し(S4)、第1の信号を前記第1のポート(31)に印加する第1のステップと、
- 前記第2のポート(32)からの第2の信号を取得する(S6)第2のステップと、
- 前記第2の信号に基づいて、
前記第1の回路と前記第2の回路との間に短絡が発生したか否かを判断し(S8)、該当する場合、短絡警告信号を生成する(S81)、第3のステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1のステップの前に、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されていないか否かを検出し(S2、S3)、少なくとも前記ユーザインタフェース(12)の一部が作動されていない場合にのみ、前記一連のステップを実行することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のステップの前に、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されているか否かを検出し、前記ユーザインタフェース(12)のうちの少なくとも一部が作動されている場合に、所定の待機時間にわたって待機し(S31)、任意選択で、所定の待機時間にわたって繰り返し待機し、最大総待機時間に達した後、警告信号を生成する(S32、S33)ことを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のステップに続いて、前記第1のポート(31)を入力ポートとして構成すること(S7)を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のステップにおいて、グランド電圧を前記第1のポート(31)に印加することと、前記第3のステップにおいて、前記第2の信号が供給電圧に等しくない場合に前記短絡警告信号を生成することとを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記一連のステップを、以下のもの、すなわち、所定の時点、所定の時間間隔の終了時、ランダムな時点、医療用流体送達装置のアイドル時、医療用流体送達装置の電源オン時、およびユーザ要求時のうちの少なくとも1つに従って実行することを含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置に関する。本発明は、更に、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置を動作させる方法に関する。本発明は、医療装置における短絡の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術において、或る量のインスリンを送達するためのインスリンポンプ、グルコースレベルを特定するためのグルコースメータ、医療用流体を送達するための医療装置を制御するための遠隔制御装置等の、医療用流体を送達するかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置が広く用いられている。これらの医療装置は、患者または医療従事者が医療装置を制御することを可能にするユーザインタフェースを含む。例えば、糖尿病の患者はインスリンポンプのユーザインタフェース、グルコースメータまたは遠隔制御装置の要素を作動させ、所定の量のインスリンの送達、グルコースレベルの特定等を始動することができる。そのようなユーザインタフェースの要素は、ノブ、ボタン、スイッチ、スライダ、表示ユニット、オーディオユニット等を含む。
【0003】
医療装置は、医療装置の誤った動作が患者の健康に重大な負の影響を有し得ることに起因して、信頼性、安全性等に関する非常に高い水準に準拠しなくてはならない。医療装置のいくつかの実施形態において、例えば、ボーラスの投与または別の重要動作の場合、患者は、ボーラスの送達を始動するか、または重要動作を実行するために、第1および第2のユーザボタンを同時に押下することを必要とされ得る。第1のおよび第2のユーザボタンは、互いから十分遠くに離間され、それにより、不注意によるまたは偶発的な、ボーラスの送達または重要動作の始動を防ぐことができる。このため、医療デバイスのいくつかの実施形態は、第1のユーザボタンを医療装置のコントローラに接続する第1の制御線と、第2のユーザボタンを医療装置のコントローラに接続する第2の制御線とを含む。コントローラは、第1のユーザボタンおよび第2のユーザボタンが同時に押下されているか否かを検出し、押下されている場合、ボーラスの投与または重要動作等の対応する制御動作を始動するように構成される。
【0004】
WO2009013736は、携帯型治療液送達装置を開示する。治療液送達装置は、患者の身体に固定可能なハウジングと、ハウジングに結合された容器と、治療液分注機構と、患者の身体内への治療液の送達を始動するようにコントローラにシグナリングするように構成されたボーラス送達ボタンとを含む。不注意始動防止機構が、患者がボーラス送達ボタンを作動させることを防ぐように適合される。実装態様において、治療液送達装置は、2つ以上のボーラス送達ボタンを含み、不注意始動防止機構は、患者が2つ以上の送達ボタンを実質的に同時にまたは作動シーケンスに従って作動させない限り、コントローラが患者の身体内への治療液の送達を始動させることを防ぐ。実装態様において、送達ボタンに対応するスイッチの電子回路は、一方の端部においてグランドに接続され、他方の端部において電源およびCPUの入口ポートに接続される。
【0005】
短絡が医療装置の制御線、電子回路、コントローラまたはCPUにおいて生じる場合、単一のボタンのみの起動が、第1および第2のユーザボタンの同時作動として誤って検出され、それによって医療装置が、ユーザまたは患者が意図しない動作モード、例えばボーラスの送達または別の重要動作モードに入る場合がある。したがって、信頼性、安全性等に関する非常に高い水準への準拠が損なわれ、これが患者の健康に対し重大な負の影響を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置を提供し、ならびにそのような医療装置を動作させる方法を提供することであり、この医療装置および方法は、従来技術の不利点のうちの少なくともいくつかを有していない。特に、本発明の目的は、医療装置において短絡が発生した場合に短絡回路警告信号の生成を可能にする、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置を提供し、さらにそのような医療装置を動作させる方法を提供することである。特に、本発明の目的は、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置を提供し、さらにはそのような医療装置を動作させる方法を提供することであり、この医療装置は、コントローラの第1のポートおよび第2のポートに接続された電子回路に関連付けられたユーザインタフェースを含み、電子回路は、コントローラがユーザインタフェースの作動を検出することを可能にし、短絡警告信号は、短絡が発生した場合に生成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、独立請求項の特徴は、これらの目的を達成する。加えて、更なる有利な実施形態が、従属請求項および明細書から得られる。
本発明によれば、上述した目的は、医療装置が医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計され、医療装置は、コントローラの第1のポートおよび第2のポートに接続された電子回路に関連付けられたユーザインタフェースを含み、電子回路は、コントローラが、ユーザインタフェースの作動を検出することを可能にし、コントローラは、以下の一連のステップ、すなわち、第1のポートを出力ポートとして構成し、第1の信号を第1のポートに印加する第1のステップと、第2のポートからの第2の信号を取得する第2のステップと、第2の信号に基づいて、短絡が発生したか否かを判断し、該当する場合、短絡警告信号を生成する、第3のステップとを実行するように構成される点において特に達成される。コントローラは、ユーザインタフェースの作動を検出するための第1および第2のポートを含む。ユーザインタフェースの作動を検出するために、第1および第2のポートは入力ポートとして構成される。コントローラによって実行されるシーケンスにおいて、ポートの一方、一実施形態では第1のポートが出力ポートとして構成され、それによって、第1の信号が第1のポートに印加され得ることが可能になる。第1の信号は電子回路に送信される。ポートの他方、本実施形態では第2のポートにおいて、第2の信号が取得される。第2の信号は電子回路に依拠する。第2の信号に基づいて、短絡が発生したか否かが判断される。短絡は、電子回路、コントローラ等において発生した可能性がある。短絡が発生したと判断される場合、短絡警告信号が生成される。短絡警告信号は、コントローラの対応する信号線の電圧を変更すること、コントローラのメモリ内の対応する格納場所の値を変更すること等によって生成され得る。医療装置の動作モードは、例えば、重要動作モード、例えばボーラスの送達がもはや可能でないように短絡警告信号に従って変更され得る。
【0008】
一実施形態において、電子回路は、コントローラの複数のポートに接続される。第1のステップにおいて、複数のポートのうちの1つまたは複数が出力ポートとして構成され、1つまたは複数の第1の信号がこれらのポートに印加される。第2のステップにおいて、1つまたは複数の第2の信号が、1つまたは複数の他のポート、特に、出力ポートとして構成されていない1つまたは複数のポートにおいて取得される。第3のステップにおいて、1つまたは複数の第2の信号に基づいて、短絡が発生したか否かが判断され、該当する場合、短絡警告信号は生成される。
【0009】
一実施形態において、コントローラは、第1のステップの前に、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されていないか否かを検出し、少なくともユーザインタフェースの一部が作動されていない場合にのみ、一連のステップを実行するように構成される。ユーザインタフェースが作動されている場合、一連のステップの結果として短絡が誤って検出される場合がある。
【0010】
一実施形態において、コントローラは、第1のステップの前に、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されているか否かを検出し、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されている場合に、所定の待機時間にわたって待機し、任意選択で、所定の待機時間にわたって繰り返し待機し、最大総待機時間に達した後、警告信号を生成するように構成される。所定の待機時間後、一連のステップを実行することが試行され得る。最大待機時間に達した場合、警告信号が生成され得、これを用いてユーザまたは患者に、ユーザインタフェースがユーザまたは患者によって現在作動されていることに起因して、短絡が発生したか否かを現在検出できないことを通知することができる。
【0011】
一実施形態において、コントローラは、第3のステップに続いて、第1のポートを入力ポートとして構成するように構成される。第1のポートは通常動作のために準備される。
一実施形態において、コントローラは、第1のステップにおいて、グランド電圧が第1のポートに印加され、第3のステップにおいて、第2の信号が供給電圧に等しくない場合に短絡警告信号が生成されるように構成される。
【0012】
一実施形態において、コントローラは、一連のステップが、所定の時点、所定の時間間隔の終了時、ランダムな時点、医療用流体送達装置のアイドル時、医療用流体送達装置の電源オン時、および/またはユーザ要求時に実行されるように構成される。
【0013】
一実施形態において、ユーザインタフェースは、第1のユーザボタンおよび第2のユーザボタンを含み、コントローラは、第1のユーザボタンおよび第2のユーザボタンが実質的に同時に作動する場合に、医療装置の所定の動作モードを始動するように構成される。
【0014】
一実施形態において、電子回路は、コントローラの第1のポートを第1のパッドに接続する第1の線路と、コントローラの第2のポートを第2のパッドに接続する第2の線路とを含み、第1のパッドは第1の抵抗器を介して供給電圧に接続され、第1のパッドは、第1のユーザボタンに関連付けられた第1のスイッチを介してグランド電圧に接続され、第2のパッドは、第2の抵抗器を介して供給電圧に接続され、第2のパッドは、第2のユーザボタンに関連付けられた第2のスイッチを介してグランド電圧に接続される。
【0015】
一実施形態において、医療装置は、インスリンポンプ、グルコースメータまたは遠隔制御装置である。
医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置に加えて、本発明は、医療用流体を送達するように設計されるかまたは医療用流体の送達を制御するように設計された医療装置を動作させる方法であって、医療装置は、コントローラの第1のポートおよび第2のポートに接続された電子回路に関連付けられたユーザインタフェースを含み、電子回路は、コントローラが、ユーザインタフェースの作動を検出することを可能にし、方法は、以下の一連のステップ、すなわち、第1のポートを出力ポートとして構成し、第1の信号を第1のポートに印加する第1のステップと、第2のポートからの第2の信号を取得する第2のステップと、第2の信号に基づいて、短絡が発生したか否かを判断し、該当する場合、短絡警告信号を生成する、第3のステップとを含む、方法に関する。
【0016】
一実施形態において、方法は、第1のステップの前に、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されていないか否かを検出し、少なくともユーザインタフェースの一部が作動されていない場合にのみ、一連のステップを実行することを含む。
【0017】
一実施形態において、方法は、第1のステップの前に、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されているか否かを検出し、ユーザインタフェースのうちの少なくとも一部が作動されている場合に、所定の待機時間にわたって待機し、任意選択で、所定の待機時間にわたって繰り返し待機し、最大総待機時間に達した後、警告信号を生成することを含む。
【0018】
一実施形態において、方法は、第3のステップに続いて、第1のポートを入力ポートとして構成することを含む。
一実施形態において、方法は、第1のステップにおいて、グランド電圧を第1のポートに印加することと、第3のステップにおいて、第2の信号が供給電圧に等しくない場合に短絡警告信号を生成することとを含む。
【0019】
一実施形態において、方法は、一連のステップを、以下のもの、すなわち、所定の時点、所定の時間間隔の終了時、ランダムな時点、医療用流体送達装置のアイドル時、医療用流体送達装置の電源オン時、およびユーザ要求時のうちの少なくとも1つに従って実行することを含む。
【0020】
本明細書に記載の発明は、本明細書において以下に与えられる詳細な説明、および添付の図面からより完全に理解されるが、これらは添付の特許請求の範囲に記載される発明に対する限定とみなされるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】医療装置の例示的な実施形態としてインスリンポンプを概略的に示す。
【
図2】ユーザインタフェースの第1のユーザボタンおよび第2のユーザボタンが実質的に同時に作動されたか否かを判断するための、コントローラに接続された電子回路に関連付けられたユーザインタフェースを概略的に示す。
【
図3】短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最新技術において、医療用流体を送達するかまたは医療用流体の送達を制御するための医療装置が広く用いられ、或る量のインスリンを送達するためのインスリンポンプ、グルコースレベルを特定するためのグルコースメータ、医療用流体を送達するための医療装置を制御するための遠隔制御装置等を含む。
【0023】
そのような医療装置の例示的な例として、
図1はインスリンポンプ10を示す。しかしながら、以下の開示は、グルコースレベルを特定するためのグルコースメータ、医療用流体を送達するための医療装置を制御するための遠隔制御装置等のような任意の医療装置に等しく良好に適用され得る。
【0024】
インスリンポンプ10は、ユーザインタフェース12と、インスリンポンプ10の動作モードを制御するためのコントローラ3と、或る量のインスリンを格納するための容器13と、所定の量のインスリンを送達するための送達機構14とを配置したハウジング11を備える。
【0025】
図1に示されるように、ユーザインタフェース12は、電子回路4に関連付けられる。電子回路4は、コントローラ3の第1のポート31および第2のポート32に接続される。
【0026】
一実施形態において、電子回路は、コントローラ3の更なるポート(
図1には示されていない)に接続される。
図1に示されるように、ユーザインタフェース12は、第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2を含む。以下でより詳細に説明されるように、コントローラ3は、電子回路4を介して、第1のユーザボタン1の作動および/または第2のユーザボタン2の作動等のユーザインタフェース12の作動を検出することを可能にされる。
【0027】
ハウジング11は、例えばプラスチック等の材料を含む。実施形態において、ハウジング11は、モジュラ設計を有することができる。例えば、ハウジング11は、第1の部分および第2の部分を含むことができる。ハウジング11の第1の部分は、例えばユーザインタフェース12、電子回路4およびコントローラ3を配置した再利用可能な設計を有することができる。ハウジング11の第2の部分は、例えば容器13および送達機構14を配置した使い捨て設計を有することができる。他の設計も可能である。
【0028】
ユーザインタフェース12は、ノブ、ボタン、スイッチ、スライダ、表示ユニット、タッチスクリーン、オーディオユニット等を含むことができる。
図1に示されるように、ユーザインタフェース12は、第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2を含む。第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2は、例えば、
図1に示すように互いから十分大きな距離に配置し、第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2の不注意によるまたは偶発的同時作動が、不可能であるかまたは生じる可能性が極めて低くなるようすることができる。
【0029】
図1に示されるように、ユーザインタフェース12は、例えば、所定の量のインスリンのユニット、ボーラスのユニット等のようなステータス情報を表示するための表示ユニット121を含むことができる。
【0030】
コントローラ3は、プログラマブルマイクロプロセッサ、論理回路、デジタル/アナログ変換器、アナログ/デジタル変換器、増幅器等を含むことができる。
電子回路4は、電線路、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、グランドへの接続、供給電圧への接続、供給電流への接続等を含むことができる。
【0031】
電子回路4は、ユーザインタフェース12に関連付けられる。例えば、電子回路4は、ユーザインタフェースの特定の作動時に電子回路4における接続状態を変更するスイッチに接続される。例えば、第1のユーザボタン1の作動時に、第1のユーザボタン1に関連付けられたスイッチが、電子回路における特定のポイント間の特定の接続を閉じることができ、第1のユーザボタン1の解放後、特定の接続は中断される。
【0032】
コントローラ3は、電子回路4に接続された第1のポート31と、電子回路4に接続された第2のポート32とを含む。第1のポート31および第2のポート32への電子回路4の接続は、コントローラ3が、第1のユーザボタン1の作動および第2のユーザボタン2の作動等のユーザインタフェースの作動を検出することを可能にする。
【0033】
コントローラ3は、第1のユーザボタン31および第2のユーザボタン32の実質的に同時の作動等の、ユーザインタフェース12の特定の作動の検出時にインスリンポンプ1の所定の動作モードを始動するように構成される。インスリンポンプ10の所定の動作モードは、例えば、所定の量のインスリンの送達、ボーラスの送達等を含む。
【0034】
容器13は、枯渇後に容器の再充填により再利用することができるように、再利用可能設計を有することができる。代替的に、容器13は、容器が枯渇後に廃棄されるように使い捨て設計を有してもよい。
【0035】
送達機構14は、容器13から、容器13に接続された流体線路を介して、所定の量の医療用流体、すなわちインスリンを送達するように設計された送達チューブに或る量のインスリンをポンピングするためのポンプ機構を含むことができる。
【0036】
コントローラ3、ユーザインタフェース12、送達機構14等の動作のために、インスリンポンプ10は、バッテリ、再充電可能バッテリ等のようなエネルギー源を含む。
図2は、ユーザインタフェース12の第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2が実質的に同時に作動されたか否かを判断することを可能にした、インスリンポンプ10のコントローラ3、電子回路4およびユーザインタフェース12をより詳細に概略的に示す。
【0037】
図2に示されるように、動作エネルギーをコントローラ3に送達するために、コントローラ3は、供給電圧Vccおよびグランド電圧に接続される。コントローラ3は、第1のポート31および第2のポート32を含む。
【0038】
ユーザインタフェース12は、ユーザによって作動させることができる第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2を含む。
ユーザインタフェース12は、
図2において点線で示される電子回路4に関連付けられる。特に、ユーザインタフェース12の第1のユーザボタン1は、
図2において破線で示される電子回路4の第1のスイッチ41を作動させるように設計される。ユーザインタフェース12の第2のユーザボタン2は、
図2において破線で示される電子回路4の第2のスイッチ42を作動させるように設計される。
【0039】
一実施形態において、第1のユーザボタン1および/もしくは第1のスイッチ41、または第2のユーザボタン2および/もしくは第2のスイッチ42は、ばね機構を含み、ばね機構は、ユーザまたは患者が、例えば第1のユーザボタンを押下することによって、第1のユーザボタン1または第2のボタンを作動させるとき、第1のスイッチ41または第2のスイッチ42が閉じられ、それによって、スイッチの一方の端部とスイッチのもう一方の端部との間の接続を閉じること、および、ユーザまたは患者が、例えば第1のユーザボタン1または第2のユーザボタン2を解放することによって、第1のユーザボタン1または第2のユーザボタン2をもはや作動していない状態になるやいなや、第1のスイッチ41または第2のスイッチ42が開かれ、それによって、スイッチの一方の端部とスイッチの他方の端部との間の接続を中断することを提供する。
【0040】
第1のユーザボタン1を作動させることによって、ユーザまたは患者は、第1のスイッチ41を(
図2に示されるような)開位置から(
図2に示されていない)閉位置に切り替えることができる。第2のユーザボタン2を作動させることによって、ユーザまたは患者は、第2のスイッチ42を(
図2に示されるような)開位置から(
図2に示されていない)閉位置に切り替えることができる。
【0041】
第1のスイッチ41の一方の端部はグランド電圧に接続される。第1のスイッチ41の他方の端部は第1のパッド43に接続され、第1のパッド43は第1のポート31に更に接続され、抵抗器45を介して供給電圧Vccに更に接続される。第1のスイッチ42の一方の端部はグランド電圧に接続される。第1のスイッチ42の他方の端部は第2のパッド44に接続され、第2のパッド44は第2のポート32に更に接続され、抵抗器46を介して供給電圧Vccに更に接続される。
【0042】
第1のユーザボタン1または第2のユーザボタン2を作動させることによって、ユーザまたは患者は、供給電圧Vccとグランド電圧との間で第1のパッド43または第2のパッド44を切り替えることができる。コントローラ3は、第1のパッド43または第2のパッド44の電圧レベルを検知し、それによって、ユーザまたは患者が第1のユーザボタン1または第2のユーザボタン2を作動させるか否かを判断することができる。
【0043】
特に、第1のパッド43および第2のパッド44の電圧レベルを検知することによって、コントローラ3は、ユーザまたは患者が第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2を実質的に同時に作動させるか否かを検知することができる。
【0044】
図2に示される第1のスイッチ41または第2のスイッチの開位置において、第1のパッド43または第2のパッド44の電圧レベルは、供給電圧Vccである。
図2に示されるように、制御回路4の様々な場所において、短絡scA、scBが生じ得る。
図2に示されるように、参照符号scAを有する短絡は、第1のポート31を第1のパッド43と接続する線路と、第2のポート32を第2のパッド44と接続する線路との間で生じる場合がある。
図2に示されるように、参照符号scBを有する短絡は、第1のスイッチ41を第1のパッド43と接続する線路と、第2のスイッチ42を第2のパッド42と接続する線路との間で生じる場合がある。更に(
図2に示されていない)、短絡は、第1のパッド43と第2のパッド44との間で生じる場合がある。更に(
図2に示されていない)、短絡は、第1のパッド43を第1の抵抗器45と接続する線路と、第2のパッド44を第2の抵抗器46と接続する線路との間で生じる場合がある。更に(
図2に示されていない)、短絡は、コントローラ3の内部で、例えば第1のポート31と第2のポート32との間で生じる場合がある。
【0045】
短絡は、第1のパッド43の電圧レベルおよび第2のパッド44の電圧レベルが同じ値を有するという効果を有する。
このため、短絡の事例では、ユーザまたは患者が、単に、第1のユーザボタン1を単独で作動させる場合、第1のパッド43および第2のパッド44の双方が、供給電圧Vccからグランド電圧に電圧レベルを変更する。したがって、コントローラ3は、ユーザまたは患者が第1のユーザボタン1および第2のユーザボタンの両方を同時に作動させたと誤って検出し、それによって、ユーザまたは患者に適合していない(または更には危険な)場合がある動作モードを始動させる可能性がある。
【0046】
図3は、短絡が発生したか否かを判断するために、第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2に関連付けられた電子回路4に接続されたコントローラ3によって行われる一連のステップを概略的に示す。
【0047】
以下において、一連のステップは、第1のユーザボタン1の線路について説明される。しかしながら、第1のユーザボタン1ではなく第2のユーザボタン2の線路にステップS4、S5、S6、S7およびS8を適用することによって、一連のステップを、第2のユーザボタン2の線路について等しく良好に実行することができる。
【0048】
ステップS1において、短絡が発生したか否かを判断する一連のステップが開始する。
ステップS2において、コントローラ3は、第1のユーザボタン1および第2のユーザボタン2のステータスを読み出し、すなわち、第1のパッド43および第2のパッド44の電圧レベルを特定することによって読み出し、第1のパッド43および第2のパッド44の電圧レベルが供給電圧Vccに等しいと判断される場合、第1のユーザボタン1も第2のユーザボタン2もユーザまたは患者によって作動されていないと判断される。第1のパッド43の電圧レベルがグランド電圧に等しいと判断される場合、第1のユーザボタン1がユーザまたは患者によって作動されていると判断される。第2のパッド44の電圧レベルがグランド電圧に等しいと判断される場合、第2のユーザボタン2はユーザまたは患者によって作動されていると判断される。
【0049】
ステップS3において、ステータスが、第1のユーザボタン1または第2のユーザボタン2がユーザまたは患者によって作動されているか否かを示すか否かが判断される。示す場合、一連のステップはステップS31に続く。示さない場合、一連のステップはステップS4に続く。
【0050】
ステップS31において、例えばコントローラ3のメモリロケーションに記憶された総待機時間の値は、所定の値だけ、例えば1秒だけインクリメントされる。
ステップ32において、総待機時間の値が、所定の最大待機時間と比較される。総待機時間が最大待機時間以上である場合、一連のステップはステップS33に続く。総待機時間が最大待機時間未満である場合、一連のステップはステップS2に続く。
【0051】
ステップS4において、コントローラ3の第1のポート31は、出力ポートとして構成される(一連のステップが第1のユーザボタン1ではなく第2のユーザボタン2の線路について行われる場合、第1のポート31ではなく第2のポート32が出力ポートとして構成される)。コントローラ3は、通常動作において、ユーザまたは患者が第1のユーザボタンまたは第2のユーザボタンを作動させるか否かを判断するように構成されるため、第1のポート31および第2のポート32は、通常、入力ポートとして構成される。しかしながら、ステップS4において、第1のポート31(または第2のポート32)は出力ポートとして構成される。
【0052】
ステップS5において、第1の信号が第1のポート31に印加される。一変形において、第1の信号は、一定レベルを有する電圧である。一変形において、第1の信号はグランド電圧である。
【0053】
ステップS6において、第2の信号は第2のポート32から取得される。一変形において、第2の信号は、所定の時間間隔中に取得される。
ステップS7において、コントローラ3の第1のポート31は、入力ポートとして構成され、それによって、コントローラ3の通常動作を準備し、可能にする。
【0054】
ステップS8において、第2の信号に基づいて、短絡が発生したか否かが判断される。一変形において、第1の信号が一定のレベルを有する事例において、第2の信号が第1の信号と同じレベルを有する場合、短絡が発生したと判断される。一変形において、第1の信号がグランド電圧を有する事例において、第2の信号がグランド電圧である場合、短絡が発生したと判断される。一変形において、第2の信号が供給電圧でない場合、短絡が発生したと判断される。短絡が発生したと判断される場合、一連のステップはステップS81に続く。短絡が発生したと判断されない場合、一連のステップはステップS9に続く。
【0055】
ステップS81において、短絡警告信号が生成される。一変形において、短絡警告信号は、コントローラ3の信号線に印加される。一変形において、短絡警告信号は、コントローラ3のメモリ内の所定の格納ロケーションを所定の値に設定することによって示される。
【0056】
ステップS9において、ステップS31による総待機時間がリセットされ、それによって、短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップの次の実行を準備する。
ステップS10において、短絡が発生したか否かを判断する一連のステップが終了する。
【0057】
短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、第1のユーザボタン1の線路または第2のユーザボタン2の線路について実行され得る。
短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、第1のユーザボタン1の線路について、その直後に第2のユーザボタン2の線路について実行され得る。
【0058】
短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、第1のユーザボタン1の線路について、および第2のユーザボタン2の線路について交互に実行され得る。
短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、医療装置10の起動時に実行され得る。
【0059】
短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、例えば、丸一時間ごとに周期的に実行され得る。
ユーザまたは患者が医療装置を用いている場合、短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップは、所定の時間量だけ延期され得る。短絡が発生したか否かを判断するための一連のステップが所定の時間量後に実行できない場合、警告信号が生成され得る。