(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】多孔質プラスチック被覆を製造するためのポリオールエーテルの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20240130BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20240130BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240130BHJP
C08G 65/28 20060101ALI20240130BHJP
C08G 65/327 20060101ALI20240130BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08L101/14
C08L71/00 Y
C08L75/04
C08G65/28
C08G65/327
C08J9/00 Z CFF
(21)【出願番号】P 2020512388
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2018070948
(87)【国際公開番号】W WO2019042696
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マリアン フォン ホーフ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン グロース
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン アイルブラハト
(72)【発明者】
【氏名】フェレナ ダール
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー シュプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘニング ヴェンク
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518349(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033732(WO,A1)
【文献】特開2012-131996(JP,A)
【文献】特開2013-234292(JP,A)
【文献】特開2011-001277(JP,A)
【文献】特開2000-239208(JP,A)
【文献】特開平10-338744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08J
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマー被覆を製造するための、水性ポリマー分散液中での、添加剤としてのポリオールエーテルの使用であって、
前記ポリオールエーテルが、一般式2:
M
aD
bT
c 式2
[式中、
M=[C
3H
5(OR’’)
2O
1/2]、
D=[C
3H
5(OR’’)
1O
2/2]、
T=[C
3H
5O
3/2]、
a=1~10、
b=0~10、
c=0~3であり、
前記基R’’は、互いに独立して、同じまたは異なる、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であって、前記基R’’のうち少なくとも1個は炭化水素基である]
に相応する、
および/または一般式3:
M
xD
yT
z 式3
[式中、
【化2】
x=1~10、
y=0~10、
z=0~3であり
前記基R’’は、互いに独立して、同じまたは異なる、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であって、少なくとも1個の前記基R’’は水素ではない]
に相応する、
および/または一般式4:
【化3】
[式中、
k=1~10、
m=0~10であり、
前記基R’’は、互いに独立して、同じまたは異なる、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であって、少なくとも1個の前記基R’’は水素ではない、かつk+mの合計は0超であり、指数kおよびmを有する断片は統計的に分布している]
に相応するポリグリセリンエーテルの群から選択され、かつ
前記ポリグリセリンエーテルが、1~20の平均縮合度を有するポリグリセリンから製造される、前記使用。
【請求項2】
前記多孔質ポリマー被覆が、多孔質ポリウレタン被覆である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
a=2、b=1~4、c=0である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
x=2、y=1~4、z=0である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
k=2、m=1~3である、請求項1記載の使用。
【請求項6】
前記式2、3および/または4のポリオールエーテルが、リン酸化されており、基R’’として少なくとも1個の基(R’’’O)
2P(O)-を有し、前記基R’’’は、互いに独立して、Na
+、K
+もしくはNH
4
+であるか、またはモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミンおよびトリアミノアルキルアミンのアンモニウムイオンであるか、または水素であることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項7】
前記ポリオールエーテルが、少なくとも1種のイオン性補助界面活性剤と混合されて、添加剤として水性ポリマー分散液中で使用され、
前記イオン性補助界面活性剤が、脂肪酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメートおよびアルキルサルコシネートであり、
前記アルキルスルフェートが、12~20個の炭素原子を有し、かつ
前記イオン性補助界面活性剤の割合が、前記ポリオールエーテル+前記補助界面活性剤の合計量を基準として、0.1~50重量%の範囲にある
ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記水性ポリマー分散液が、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液およびポリウレタン分散液の群から選択され、これらの分散液の固形物割合が、20~70重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項9】
前記水性ポリマー分散液が、ポリウレタン分散液である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記水性ポリマー分散液中の前記ポリオールエーテルの使用濃度が、前記分散液の総重量を基準として、0.2~10重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記ポリオールエーテルが、前記水性ポリマー分散液を発泡させるための発泡助剤または発泡安定化剤として、また乾燥助剤、均展添加剤、湿潤剤および/またはレオロジー添加剤として用いられることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
a) 水性ポリマー分散液と、請求項1に記載の少なくとも1種のポリオールエーテルとを含有する混合物を用意する工程、
b) 前記混合物を発泡させて均質な微細セル発泡体にする工程、
c) 少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤発泡体の所望の粘度を調整する工程、
d) 発泡したポリマー分散液の被覆を適切な基材に施与する工程、
e) 前記被覆を乾燥させる工程
を含む、水性ポリマー分散液中で添加剤としてポリオールエーテルを使用して、多孔質ポリマー被覆を製造する方法。
【請求項13】
前記多孔質ポリマー被覆が、多孔質ポリウレタン被覆である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
多孔質ポリマー被覆であって、そのようなポリマー被覆を製造する際に、請求項1に記載の少なくとも1種のポリオールエーテルを添加剤として水性ポリマー分散液中で使用することにより得られ、
前記多孔質ポリマー被覆が、150μm未満の平均セル径を有する、多孔質ポリマー被覆。
【請求項15】
前記多孔質ポリマー被覆が、多孔質ポリウレタン被覆である、請求項14記載の多孔質ポリマー被覆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック被覆、合成皮革およびポリオールエーテルの分野にある。
【0002】
本発明は殊に、ポリオールエーテルを添加剤として使用する、多孔質ポリマー被覆、好ましくは多孔質ポリウレタン被覆の製造に関する。
【0003】
プラスチックで被覆されたテキスタイル、例えば合成皮革は、テキスタイル基材から成り、この上に多孔質ポリマー層が積層され、またこれが表面層またはトップコートで覆われていることが一般的である。
【0004】
ここで多孔質ポリマー層は、マイクロメートル領域の細孔を有することが好ましく、空気透過性があり、よって通気性があり、すなわち水蒸気を通過させるが、それでいて耐水性がある。多孔質ポリマー層は、しばしば多孔質ポリウレタンである。現在、多孔質ポリウレタン層の製造は、たいていの場合、DMFが溶媒として使用される凝固法により製造される。しかしながら、環境への懸念から、この製造法はますます批判されており、そのため、この製造法は、環境により優しい別の技術によって次第に取って代わられるべきである。これらの技術の1つは、水性ポリウレタン分散液、いわゆるPUDをベースとする。これらは、水中に分散したポリウレタン微粒子から成ることが一般的であり、固形物含量は、たいていの場合、30~60重量%の範囲にある。多孔質ポリウレタン層を製造するために、これらのPUDは、機械的に発泡させられ、基材に被覆(一般的な層厚は300~2000μm)され、続いて、高温で乾燥させられる。この乾燥工程の間、PUD系中に含有されている水が蒸発し、それにより、ポリウレタン粒子が膜化する。膜の機械的強度をさらに向上させるために、この製造プロセスの間に、PUD系に親水性(ポリ)イソシアネートをさらに添加してもよく、この親水性(ポリ)イソシアネートは、乾燥工程の間に、ポリウレタン粒子表面に存在する遊離OH基と反応することができ、それによりポリウレタン膜がさらに架橋される。
【0005】
そのように製造されたPUD被覆の機械的特性および触質性のどちらも、かなりの程度で、多孔質ポリウレタン膜のセル構造により決まる。さらに、多孔質ポリウレタン膜のセル構造は、材料の空気透過性または通気性に影響を与える。ここで、特に良好な特性は、セルができるだけ微細であり、均質に分布していることにより達成される。上記の製造法の間にセル構造に影響を与えるためには、機械的発泡の前または間に、PUD系に界面活性剤を添加することが一般的である。相応する界面活性剤により、一方では、発泡プロセスの間に、十分な量の空気をPUD系に導入することができる。他方で、界面活性剤は、このように生成された気泡の形態に対して直接影響を与える。気泡の安定性も、かなりの程度で、界面活性剤の種類に影響を受ける。これは殊に、発泡したPUD被覆の乾燥の間に重要である。というのも、これにより、乾燥欠陥、例えばセルの粗大化または乾燥亀裂を防止することができるからである。
【0006】
従来技術には、多孔質PUD系テキスタイル複合材の製造に使用可能な一連のイオン性および非イオン性界面活性剤が開示されている。ここでたいていの場合、ステアリン酸アンモニウム系のアニオン性界面活性剤が殊に好ましく、例えば、米国特許出願公開第2015/0284902号明細書または米国特許出願公開第2006/0079635号明細書を参照されたい。
【0007】
しかしながら、ステアリン酸アンモニウムの使用には、様々な欠点が伴う。まず、ステアリン酸アンモニウムは、硬水に敏感である。ここで、カルシウムイオンを含有するポリマー分散液中に、不溶性カルシウム石けんが形成されることがあり、これにより、ポリマー分散液のフロック形成またはゲル化が起こる。さらに、ステアリン酸アンモニウムをベースとして製造される合成皮革には、硬水と接触すると、白い斑点として生じるカルシウム石けんが合成皮革表面に形成され得るという欠点がある。殊に皮革が濃く着色されている場合、これは望ましくない。さらに、ステアリン酸アンモニウムには、乾燥したポリウレタン膜において移行性(Migrierfaehigkeit)が非常に高いという欠点がある。ここで殊に水との接触では、不快に知覚される潤滑膜が、合成皮革被覆の表面に生じることがある。ステアリン酸アンモニウムのさらなる欠点は、初めて十分な泡安定性を得ることができるように、一般的にこれを別の界面活性剤と組み合わせて使用する必要があることであり、ここで従来技術では、例えばスルホスクシナメートが記載されている。これらのさらなる成分により、適用時に複雑性が高くなる。
【0008】
未だ開示されていない欧州特許出願第16180041.2号明細書には、多孔質プラスチック被覆、殊に多孔質ポリウレタン被覆を製造するためのポリオールエステルの使用がすでに記載されている。ここでは、相応するポリオールエステルが、従来技術に記載の欠点を示すことなく、水性ポリマー分散液の効率的な発泡を可能にすることを示すことができた。しかしながら、これらのポリオールエステルの欠点は、殊にpH値が高い場合に、これが水性ポリマー分散液中で不十分な加水分解安定性しか示さないことであろう。よって、本発明の課題は、同様に水性ポリマー分散液の効率的な発泡を可能にし、それでいて、さらに加水分解安定性が向上している点で優れているさらなる部類の界面活性剤を提供することであった。驚くべきことに、ポリオールエーテルを使用することにより、挙げられた課題の解決が可能になることが分かった。
【0009】
よって、本発明の対象は、多孔質ポリマー被覆の製造、好ましくは多孔質ポリウレタン被覆の製造のための、水性ポリマー分散液中での、添加剤としてのポリオールエーテルの使用である。
【0010】
ここで、本発明により製造すべき多孔質ポリマー層(すなわち多孔質ポリマー被覆)は、マイクロメートル領域の細孔を有することが好ましく、平均セル径は、好適には150μm未満、好ましくは120μm未満、殊に好ましくは100μm未満、極めて特に好ましくは75μm未満である。好ましい層厚は、10~10000μm、好適には50~5000μm、さらに好ましくは75~3000μm、殊に100~2500μmの範囲にある。
【0011】
驚くべきことに、ポリオールエーテルの本発明による使用には幾つもの利点がある。
【0012】
これによりポリマー分散液の効率的な発泡が可能になる。ここで、そのように製造された発泡体は、特に均質なセル分布を有する細孔構造が非常に微細である点で優れており、またこれは、これらの発泡体をベースとして製造された多孔質ポリマー被覆の機械的特性および触質性に非常に有利な影響を与える。さらにこれにより、被覆の空気透過性または通気性を改善することができる。
【0013】
本発明により使用すべきポリオールエーテルのさらなる利点は、これにより特に安定した発泡体の製造が可能になることである。これは一方で、その加工性に対して有利な影響を与える。他方で、泡安定性が向上していることには、相応する発泡体の乾燥の間に、セルの粗大化または乾燥亀裂などの乾燥欠陥を回避することができるという利点がある。さらに、泡安定性が改善されていることにより、発泡体のより迅速な乾燥が可能になり、これは、環境的および経済的な観点の双方からプロセス工学的な利点をもたらす。
【0014】
本発明により使用すべきポリオールエーテルのさらなる利点は、乾燥の間に、なおもさらなる(親水性)(ポリ)イソシアネートまたはメラミン系架橋剤が系に添加される場合に特に、これらのポリオールエーテルが、乾燥したポリマー膜、殊にポリウレタン膜中ではもはや移行可能ではないことである。
【0015】
本発明により使用すべきポリオールエーテルのさらなる利点は、これらのポリオールエーテルにより、発泡した乾燥していない分散液の粘度を上昇させることができることである。またこれは、発泡体の加工性に対して有利な影響を与えることができる。さらにこれにより、場合によっては、発泡体粘度を調整するためのさらなる増粘剤の使用を省略すること、またはその使用濃度を低下させることができ、これにより経済的な利点がもたらされる。
【0016】
本発明により使用すべきポリオールエーテルのさらなる利点は、これが硬水に対してあまりまたは全く敏感ではないことである。
【0017】
本発明により使用すべきポリオールエーテルのさらなる利点は、これにより、さらなる界面活性剤を使用しなくても、水性ポリマー分散液をベースとする発泡体が十分に安定化することである。これにより、適切な発泡体調製物の配合における複雑性をユーザー側で低減することができる。
【0018】
さらに、本発明によるポリオールエーテルの利点は、これが広いpH範囲にわたり加水分解安定性の点で優れていることである。
【0019】
本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルという用語は、ポリオールエーテルと、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応により得ることが可能なそのアルコキシル化付加物も含む。
【0020】
本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルという用語は、ポリオールエステルのO-アルキル化(ポリオールエステルの用語については殊に、未だ開示されていない欧州特許出願第16180041.2号明細書を参照されたい)またはポリオールエーテルのエステル化により製造されるポリオールエステル-ポリオールエーテル-ハイブリッド構造も含む。
【0021】
本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルという用語は、そのイオン性誘導体、好ましくは、リン酸化および硫酸化誘導体、殊にリン酸化ポリオールエーテルも含む。ポリオールエーテルのこれらの誘導体、殊にリン酸化ポリオールエーテルは、本発明により好ましく使用可能なポリオールエーテルである。これらについては、以下でさらにより詳細に説明する。
【0022】
本発明により使用すべきポリオールエーテルは、殊にポリオールのO-アルキル化により、またはヒドロキシアルカンもしくはヒドロキシアルケンのO-アルキル化により製造することが可能である。これは基本的に知られており、専門文献において詳細に説明されている(例えば、RoemppまたはUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry「Acylation and Alkylation」およびその都度そこに引用されている文献を参照)。例えば、相応するポリオールエーテルを供給するための炭素-酸素結合の形成は、ポリオールとアルキル化剤との反応により達成可能であることが知られている。アルキル化剤としては、オレフィン、ハロゲン化アルキル(ウィリアムソンエーテル合成)、アルコール、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、チオール、ジアゾ化合物、スルホン酸エステルおよび関連化合物を使用してもよい。アルキル化剤としてオレフィンを使用する場合の一般的な触媒は、例えば、H2SO4、酸性イオン交換体、リン酸およびゼオライトである。ウィリアムソンエーテル合成では、アルコールまたはポリオールを、まず例えばナトリウムもしくはカリウムまたはナトリウムもしくはカリウムの水和物との反応により、そのアルコラートに変換させ、続いて、アルキル化剤としてのハロゲン化アルキルと反応させる。アルキル化剤としてエポキシドを使用する場合、酸、ルイス酸、塩基およびルイス塩基を触媒として使用してもよい。
【0023】
以下で、本発明をさらにかつ例示的に説明するが、本発明は、この例示的な実施形態に限定されないものとする。以下に、範囲、一般式または化合物群が記載されている場合、これらは、明示的に言及されている相応する範囲または化合物群を含むのみならず、個別の値(範囲)または化合物を取り出して得ることができるあらゆる部分範囲および化合物の部分群も含むものとする。本明細書の枠組みにおいて文書が引用される場合、その内容、殊にこの文書が引用される文脈における主題に関する内容は、完全に本発明の開示内容の一部であるものとする。特に記載のない限り、パーセントの記載は、重量パーセントでの記載である。以下で測定により求められたパラメーターを記載する場合、これらの測定は、特に記載のない限り、25℃の温度および101,325Paの圧力で実施される。
【0024】
本発明の枠組みにおいて、ポリオールと、少なくとも1個の直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、第一級もしくは第二級アルコールまたは相応する混合物との反応により得られるポリオールエーテルが殊に使用可能である。これは本発明の好ましい実施形態に相応する。相応するポリオールエーテルは、それ自体が公知であり、例えば国際公開第2012082157号に記載されている。
【0025】
さらに、本発明の枠組みにおいて、殊に、ポリオールと、少なくとも1個の直鎖状もしくは分枝鎖状のハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アルケニル、または直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルスルホン酸エステルもしくはアルケニルスルホン酸エステル、例えば、トシレート、メシレート、トリフレートもしくはノナフレート、またはそのような物質の混合物との反応により得られるポリオールエーテルが好ましく使用可能である。これも同様に、本発明の好ましい実施形態に相応する。相応するポリオールエーテルも同様に、それ自体が公知である。
【0026】
さらに、本発明の枠組みにおいて、ポリオールと、少なくとも1個の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルオキシランもしくはアルケニルオキシラン、チイラン、またはアジリジン、またはそのような物質の混合物との反応により得られるポリオールエーテルが好ましく使用可能である。これも同様に、本発明の好ましい実施形態に相応する。相応するポリオールエーテルも同様に、それ自体が公知である。
【0027】
さらに、本発明の枠組みにおいて、ポリオールと、少なくとも1個の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルグリシジルエーテルまたはアルケニルグリシジルエーテルまたはそのような物質の混合物との反応により得られるポリオールエーテルが好ましく使用可能である。これも同様に、本発明の好ましい実施形態に相応する。相応するポリオールエーテルも同様に、それ自体が公知である。
【0028】
さらに、本発明の枠組みにおいて、直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、第一級もしくは第二級アルコールと、グリシドールまたはエピクロロヒドリンまたはグリセリンカーボネートまたはこれらの物質の混合物との反応により得られるポリエーテルが好ましく使用可能である。これも同様に、本発明の好ましい実施形態に相応する。相応するポリオールエーテルも同様に、それ自体が公知である。
【0029】
本発明によるポリオールエーテルの製造に使用される好ましいポリオールは、C3~C8ポリオールの群、ならびにそのオリゴマーおよび/または混合オリゴマー(Mischoligomere)から選択される。混合オリゴマーは、様々なポリオールの反応により、例えばプロピレングリコールとアラビトールとの反応により生成される。ここで殊に好ましいポリオールは、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトールおよびグルコースである。グリセリンが極めて特に好ましい。好ましいポリオールオリゴマーは、1~20個、好ましくは2~10個、特に好ましくは2.5~8個の繰り返し単位を有するC3~C8ポリオールのオリゴマーである。ここで、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ジエリトリトール、トリエリトリトール、テトラエリトリトール、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ならびに二糖類およびオリゴ糖が殊に好ましい。ソルビタン、ならびにオリゴグリセリンおよび/またはポリグリセリンが極めて特に好ましい。殊に、様々なポリオールの混合物を使用してもよい。さらに、C3~C8ポリオール、そのオリゴマーおよび/または混合オリゴマーのアルコキシル化付加物も、本発明により使用可能なポリエーテルの製造に使用することが可能であり、このポリエーテルは、C3~C8ポリオール、そのオリゴマーおよび/または混合オリゴマーと、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応により得ることが可能である。
【0030】
本発明の意味合いにおける「ポリグリセリン」という用語は、ポリグリセリンであると理解され、これはグリセリンも含み得る。よって、量、質量などを計算する際に、場合によっては、グリセリン割合も考慮する必要がある。よって、本発明の意味合いにおけるポリグリセリンとは、少なくとも1種のグリセリンオリゴマーおよびグリセリンを含有する混合物でもある。それぞれの場合において、グリセリンオリゴマーとは、あらゆる相応する構造、例えば、すなわち直鎖状、分枝鎖状および環状化合物であると理解される。本発明の枠組みにおいて、「ポリグリセリンエーテル」という用語についても同様のことが言える。
【0031】
ポリオールエーテルを製造するために直鎖状もしくは分枝鎖状のハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルケニルが使用される場合、ここで殊に、一般式R-Xに相応するハロゲン化物が好ましく、式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、さらにより好ましくは臭素原子、さらにより好ましくはヨウ素原子であり、Rは、直鎖状または分子鎖状の、飽和または不飽和の、4~40個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、特に好ましくは10~18個の炭素原子を有する炭化水素基である。ここで、ハロゲン化アルキルは、1-クロロオクタン、1-クロロデカン、1-クロロドデカン、1-クロロテトラデカン、1-クロロヘキサデカン、1-クロロオクタデカン、1-クロロエイコサン、1-クロロドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが極めて特に好ましく、1-クロロヘキサデカンおよび1-クロロオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0032】
ここで、ハロゲン化アルキルは、1-ブロモオクタン、1-ブロモデカン、1-ブロモドデカン、1-ブロモテトラデカン、1-ブロモヘキサデカン、1-ブロモオクタデカン、1-ブロモエイコサン、1-ブロモドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが極めて特に好ましく、1-ブロモヘキサデカンおよび1-ブロモオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0033】
ここで、ハロゲン化アルキルは、1-ヨードオクタン、1-ヨードデカン、1-ヨードドデカン、1-ヨードテトラデカン、1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタデカン、1-ヨードエイコサン、1-ヨードドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが同様に極めて特に好ましく、1-ヨードヘキサデカンおよび1-ヨードオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0034】
ここで、ハロゲン化アルキルは、2-クロロオクタン、2-クロロデカン、2-クロロドデカン、2-クロロテトラデカン、2-クロロヘキサデカン、2-クロロオクタデカン、2-クロロエイコサン、2-クロロドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが同様に極めて特に好ましく、2-クロロヘキサデカンおよび2-クロロオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0035】
ここで、ハロゲン化アルキルは、2-ブロモオクタン、2-ブロモデカン、2-ブロモドデカン、2-ブロモテトラデカン、2-ブロモヘキサデカン、2-ブロモオクタデカン、2-ブロモエイコサン、2-ブロモドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが同様に極めて特に好ましく、2-ブロモヘキサデカンおよび2-ブロモオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0036】
ここで、ハロゲン化アルキルは、2-ヨードオクタン、2-ヨードデカン、2-ヨードドデカン、2-ヨードテトラデカン、2-ヨードヘキサデカン、2-ヨードオクタデカン、2-ヨードエイコサン、2-ヨードドコサンおよびそれらの混合物から選択されることが同様に極めて特に好ましく、2-ヨードヘキサデカンおよび2-ヨードオクタデカン、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。
【0037】
ポリオールエーテルを製造するためにアルキルエポキシドが使用される場合、ここで殊に、一般式1:
【化1】
[式中、R’は、互いに独立して、同じまたは異なる、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、特に好ましくは8~18個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であるが、ただし、これらの基のうち少なくとも1個が炭化水素基である]
に相応するアルキルエポキシドが好ましい。基R’のうちちょうど1個が炭化水素基であり、もう一方の基R’が水素であるアルキルエポキシドが特に好ましい。C
6~C
24α-オレフィンから誘導されるエポキシドが極めて特に好ましい。
【0038】
ポリオールエーテルを製造するためにアルキルグリシジルエーテルが使用される場合、これらは、直鎖状または分子鎖状の、飽和または不飽和の、4~40個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、特に好ましくは10~18個の炭素原子を有するアルキルアルコールのグリシジルエーテルの群から選択されることが好ましい。ここで、アルキルグリシジルエーテルは、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテルおよびそれらの混合物から選択されることが極めて特に好ましく、ヘキサデシルグリシジルエーテルおよびオクタデシルグリシジルエーテル、ならびにこれら双方の物質の混合物が、極めて特に好ましい。本発明の特に好ましい実施形態において、ポリオールエーテルは、ソルビタンエーテルおよび/またはポリグリセリンエーテルの群から選択される。ポリグリセリンヘキサデシルエーテル、ポリグリセリンオクタデシルエーテルおよびこれら双方の物質の混合物が、特に好ましい。ポリグリセリンヒドロキシヘキサデシルエーテルおよびポリグリセリンヒドロキシオクタデシルエーテル、ならびにこれらの物質の混合物が、極めて特に好ましい。ポリグリセリン(1-ヒドロキシヘキサデシル)エーテル、ポリグリセリン(2-ヒドロキシヘキサデシル)エーテル、ポリグリセリン(1-ヒドロキシオクタデシル)エーテルおよびポリグリセリン(2-ヒドロキシオクタデシル)エーテル、ならびにこれらの物質の混合物が、さらにより好ましい。
【0039】
ここで、一般式2:
MaDbTc 式2
[式中、
M=[C3H5(OR’’)2O1/2]
D=[C3H5(OR’’)1O2/2]
T=[C3H5O3/2]
a=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
b=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~4
c=0~3、好ましくは0であり、
ここで基R’’は、互いに独立して、同じまたは異なる、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、特に好ましくは8~18個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であるが、ただし、基R’’のうち少なくとも1個が、置換基、殊にヒドロキシル基も有し得る炭化水素基である]
に相応するポリグリセリンエーテルが殊に好ましい。
【0040】
一般式3:
MxDyTz 式3
[式中、
【化2】
x=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
y=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~4
z=0~3、好ましくは0超~2、殊に好ましくは0
ただし、少なくとも1個の基R’’は水素ではなく、さらにR’’は先に定義した通りである]
に相応するポリグリセリンエーテルがさらにより好ましい。
【0041】
一般式4:
【化3】
[式中、
k=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
m=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~3
ただし、少なくとも1個の基R’’は水素ではなく、さらにR’’は先に定義された通りであり、k+mの合計は0超であり、指数kおよびmを有する断片は統計的に分布している]
のポリグリセリンエーテルがさらに好ましい。
【0042】
統計的分布は、任意の数のブロックと、任意の順序またはランダム分布とによりブロック状に構成されており、またこれらは、交互に構成されていても、または鎖により勾配を形成していてもよく、殊にこれらは、場合によって様々な分布群が連続して続き得るあらゆる混合形態を形成してもよい。特定の構成では、統計的分布がこの構成により制限を受けることがある。制限を受けない範囲についてはすべて、統計的分布は変化しない。
【0043】
本発明により使用可能なポリグリセリンエーテルは、先に記載のR’’の形態の炭化水素基を、6個以下、より好ましくは5個以下、さらにより好ましくは4個以下有することが好ましい。
【0044】
構造的には、ポリオールエーテルは、湿式化学的指数、例えばその水酸基価により特徴付けられる。水酸基価を求めるのに適した特定法は、殊にDGF C-V17a(53)、Ph.Eur.2.5.3MethodAおよびDIN53240に記載のものである。酸価を求めるのに適した方法は、殊にDGF C-V2、DIN EN ISO2114、Ph.Eur.2.5.1、ISO3682およびASTM D974に記載のものである。鹸化価を求めるのに適した特定法は、殊にDGF C-V3、DIN EN ISO3681およびPh.Eur.2.5.6に記載のものである。
【0045】
エポキシ-酸素含量を求めるのに適した方法は、殊にR.Kaiser「Quantitative Bestimmung organischer funktioneller Gruppen Methoden der Analyse in der Chemie」、Akad.Verlagsgesellschaft、1966およびR.R.Jay、Anal.Chem.1964、36(3)、667~668に記載のものである。
【0046】
融点を求めるのに適した方法は、殊にDIN53181、DIN EN ISO3416、DGF C-IV3aおよびPh.Eur.2.2.14に記載のものである。
【0047】
本発明によると、ポリグリセリンエーテルを製造するために、1~20、好ましくは2~10、特に好ましくは2.5~8の平均縮合度を有するポリグリセリンが使用されると好ましく、本発明の特に好ましい実施形態に相応する。ここで、平均縮合度Nは、ポリグリセリンの水酸基価(OHZ、mgKOH/g)により求められ、
【数1】
に従ってこれに関連付けられている。
【0048】
ここで、ポリグリセリンの水酸基価は、先に記載のように求めることが可能である。よって、本発明によるポリグリセリンエーテルを製造するためには、1829~824mgKOH/g、特に好ましくは1352~888mgKOH/g、殊に好ましくは1244~920mgKOH/gの水酸基価を有するポリグリセリンが殊に好ましい。
【0049】
使用されるポリグリセリンは、例えば、グリシドールの重合(例えば塩基触媒)、エピクロロヒドリンの重合(例えばNaOHのような等モル量の塩基の存在下)、またはグリセリンの重縮合のような様々な従来の方法により用意することが可能である。そのようなものは、文献から知られている。
【0050】
本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルという用語は、そのイオン性誘導体、好ましくは、リン酸化および硫酸化誘導体、殊にリン酸化ポリオールエーテルも含むことがすでに明らかとなった。ここで、リン酸化ポリオールエーテルは、ポリオールエーテルとリン酸化試薬との反応、および任意の、好適には必須の引き続く中和により得られる(殊に、Industrial Applications of Surfactants.II.Preparation and Industrial Applications of Phosphate Esters、D.R.Karsa編、Royal Society of chemistry、Cambridge、1990を参照)。本発明の意味合いにおける好ましいリン酸化試薬とは、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)、特に好ましくはポリリン酸である。本発明全体の意味合いにおいて、リン酸化ポリオールエーテルという用語は、部分リン酸化ポリオールエーテルも包含し、同様に、本発明全体の意味合いにおいて、硫酸化ポリオールエーテルという用語は、部分硫酸化ポリオールエーテルを包含する。
【0051】
さらに、本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルのイオン性誘導体は、ポリエーテルと、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸または相応する環状無水物との反応、および任意の、好適には必須の中和によっても得ることが可能である。
【0052】
さらに、本発明全体の意味合いにおいて、ポリオールエーテルのイオン性誘導体は、ポリエーテルと、不飽和ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸または相応する環状無水物との反応、および引き続くスルホン化、ならびに任意の、好適には必須の中和によっても得ることが可能である。
【0053】
本発明全体の意味合いにおいて、中和という用語は、部分中和も包含する。部分中和を含む中和のために、一般的な塩基を使用してもよい。これには、水溶性金属水酸化物、例えば、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化タリウム(I)、好適には水溶液中で遊離金属イオンおよび水酸化物イオンへと解離するアルカリ金属水酸化物、殊にNaOHおよびKOHが含まれる。また、これには、水と反応して水酸化物イオンを形成する無水塩基、例えば、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化銀およびアンモニアも含まれる。これらの先に挙げたアルカリ金属のみならず、(固体化合物中に)HO-を有することなく水中での溶解において同様にアルカリ性の反応を起こす固体物質も塩基として使用可能であり、例えばこれには、例えばアミドアミンの場合のように官能化されたアルキル基でもあり得るモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンのようなアミン、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミン、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミンおよびトリアミノアルキルアミン、ならびに例えば弱酸塩、例えば、シアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどが含まれる。
【0054】
ここで、本発明の意味合いにおける極めて特に好ましいポリオールエーテルは、リン酸化ソルビタンエーテルおよび/またはリン酸化ポリグリセリンエーテル、特にリン酸化ポリグリセリンエーテルである。殊に、リン酸化および中和ポリグリセリンヘキサデシルエーテル、リン酸化および中和ポリグリセリンオクタデシルエーテル、またはこれらの物質の混合物が好ましい。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態は、先に記載のように、式2、3および/または4のポリオールエーテルの本発明による使用を意図しているが、これらが、(少なくとも部分的に)リン酸化されており、それにより、式2、3および/または4のこれらのポリオールエーテルが、殊に基R’’として、少なくとも1個の基(R’’’O)2P(O)-を有することをさらなる条件とし、式中、基R’’’は、互いに独立して、カチオン、好適にはNa+、K+もしくはNH4
+であるか、または例えばアミドアミンの場合のように官能化されたアルキル基でもあり得るモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミンおよびトリアミノアルキルアミンのアンモニウムイオンであるか、または水素であるか、またはR’’’’-O-であり、ここでR’’’’は、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、3~39個の炭素原子、好ましくは7~22個の炭素原子、特に好ましくは9~18個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、またはポリオール基である。
【0056】
硫酸化ポリオールエーテルの場合、ポリオールエーテルと、三酸化硫黄またはアミドスルホン酸との反応により入手可能なものが殊に好ましい。ここで、硫酸化ソルビタンエーテルおよび/または硫酸化ポリグリセリンエーテルが好ましい。
【0057】
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリオールエーテルは、純粋にではなく、添加剤としての少なくとも1種の補助界面活性剤と混ぜて、水性ポリマー分散液中で使用される。本発明によると好ましい補助界面活性剤は、例えば、脂肪酸アミド、アルキルアルコキシレート、例えば脂肪アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド-プロピレンオキシド-ブロックコポリマー、ベタイン、例えばアミドプロピルベタイン、アミンオキシド、第四級アンモニウム界面活性剤またはアンホアセテートである。さらに、補助界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤、例えば、トリシロキサン界面活性剤またはポリエーテルシロキサンであってもよい。
【0058】
殊に好ましい補助界面活性剤は、イオン性補助界面活性剤、好ましくはアニオン性補助界面活性剤である。ここで、好ましいアニオン性補助界面活性剤は、脂肪酸のアンモニウムおよび/またはアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメート、ならびにアルキルサルコシネートである。ここで、12~20個の炭素原子、より好ましくは14~18個の炭素原子、さらにより好ましくは16個超~18個の炭素原子を有するアルキルスルフェートが殊に好ましい。脂肪酸のアンモニウムおよび/またはアルカリ金属塩の場合、これが、25重量%未満のステアリン酸塩を含有すると、殊にステアリン酸塩不含であると好ましい。
【0059】
補助界面活性剤が使用される場合、補助界面活性剤の割合が、ポリオールエーテル+補助界面活性剤の合計量を基準として、0.1~50重量%の範囲、好ましくは0.2~40重量%の範囲、より好ましくは0.5~30重量%の範囲、さらにより好ましくは1~25重量%の範囲にあると殊に好ましい。
【0060】
すでに記載のように、本発明の対象は、多孔質ポリマー層を製造するための、水性ポリマー分散液中での、添加剤としてのポリオールエーテルの使用である。ここで、ポリマー分散液は、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液およびポリウレタン分散液の群から選択されることが好ましい。これらの分散液の固形物割合は、20~70重量%の範囲、より好ましくは25~65重量%の範囲にあることが好ましい。本発明によると、水性ポリウレタン分散液中での、添加剤としてのポリオールエーテルの使用が特に好ましい。ここで、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオールおよびポリエーテルポリオールをベースとするポリウレタン分散液が殊に好ましい。
【0061】
水性ポリマー分散液における本発明によるポリオールエーテルの使用濃度は、分散液の総重量を基準として、好ましくは0.2~10重量%の範囲、特に好ましくは0.4~7.5重量%の範囲、殊に好ましくは0.5~5重量%の範囲にある。
【0062】
ポリオールエーテルは、純粋な状態および適切な溶媒に希釈した状態のどちらで水性分散液に添加されてもよい。ここで、好ましい溶媒は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、EO、PO、BOおよび/またはSOをベースとするポリアルキレングリコール、ならびにこれらの物質の混合物から選択される。本発明によるポリオールエーテルの水性の希釈液または混合物の場合、配合性(粘度、均質性など)を改善するために、混合物にハイドロトロープ(hydrotrope)化合物を添加すると有利であり得る。ここで、ハイドロトロープ化合物とは、親水性部分と疎水性部分とから成るものの、非常に分子量が低いため界面活性特性を有する水溶性有機化合物である。ハイドロトロープ化合物により、水性調製物中での、有機物質、殊に疎水性有機物質の溶解度または溶解特性が改善される。ハイドロトロープ化合物という用語は、当業者に公知である。本発明の枠組みにおいて、ハイドロトロープ化合物としては、アルカリ金属トルエンスルホネートおよびアンモニウムトルエンスルホネート、アルカリ金属キシレンスルホネートおよびアンモニウムキシレンスルホネート、アルカリ金属ナフタリンスルホネートおよびアンモニウムナフタリンスルホネート、アルカリ金属クメンスルホネートおよびアンモニウムクメンスルホネート、ならびに6個までのアルコキシレート単位を有するフェノールアルコキシレート、殊にフェノールエトキシレートが好ましい。
【0063】
本発明によるポリオールエーテルのみならず、水性ポリマー分散液は、なおもさらなる添加剤、例えば、フィラー、有機顔料および無機顔料、艶消し剤、安定化剤、例えば加水分解安定化剤もしくはUV安定化剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、均展添加剤、増粘剤、または場合によって先に記載の別の補助界面活性剤を含有していてもよい。
【0064】
本発明によるポリオールエーテルは、水性ポリマー分散液中で、分散液を発泡させるための発泡助剤または発泡安定化剤として使用されることが好ましい。しかしながら、これはさらに、乾燥助剤、均展添加剤、湿潤剤およびレオロジー添加剤としても使用可能である。
【0065】
先に記載のように、ポリオールエーテルは、水性ポリマー分散液から製造される多孔質ポリマー被覆を著しく改善するため、本発明によるポリオールエーテルのうちの少なくとも1種を含有する水性ポリマー分散液は、先に詳細に説明したように、同様に本発明の対象でもある。
【0066】
さらに、先に詳細に説明したように、発明によるポリオールエーテルを添加剤として使用して得られる、水性ポリマー分散液から製造される多孔質ポリマー層も本発明の対象である。
【0067】
本発明による多孔質ポリマー被覆は、
a) 水性ポリマー分散液と、先に記載のように、本発明によるポリオールエーテルのうちの少なくとも1種と、場合によってさらなる添加剤とを含有する混合物を用意する工程
b) この混合物を発泡させて均質な微細セル発泡体にする工程、
c) 任意で少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤発泡体の粘度を調整する工程
d) 発泡したポリマー分散液の被覆を適切な基材に施与する工程
e) この被覆を乾燥させる工程
を含む方法により製造されることが好ましい。
【0068】
好ましい形態について、殊に本方法において好ましく使用可能なポリオールエーテルおよび好ましく使用可能な水性ポリマー分散液について、前述の説明および先に挙げた好ましい実施形態、殊に請求項2~11に示されるものも参照されたい。
【0069】
先に示される本発明による方法の方法工程が固定された順序では行われないことを明確にしたい。よって、例えば、方法工程c)は、すでに方法工程a)と同時に実施されてもよい。
【0070】
方法工程b)において高いずり応力をかけることにより水性ポリマー分散液を発泡させる場合に、本発明の好ましい実施形態に相応する。ここで、発泡は、当業者にとって一般的なせん断ユニット、例えば、ディスパーマット、ディゾルバー、ハンザミキサー(Hansa-Mixern)またはオークスミキサー(Oakes-Mixern)により行うことが可能である。
【0071】
さらに、方法工程c)の最後に製造される湿潤発泡体が、少なくとも3Pa・s、好ましくは少なくとも5Pa・s、より好ましくは少なくとも7.5Pa・s、さらにより好ましくは少なくとも10Pa・sの粘度を有すると好ましい。ここで、発泡体の粘度は、例えば、スピンドルLV-4を備えたBrookfield社の粘度計Modell LVTDを用いて求められる。湿潤発泡体の粘度を求めるための相応する測定法は、当業者に知られている。
【0072】
先にすでに記載のように、湿潤発泡体の粘度を調整するために、系にさらなる増粘剤を添加してもよい。
【0073】
ここで、本発明の枠組みにおいて有利に使用可能な増粘剤は、会合性増粘剤の部類から選択されることが好ましい。ここで、会合性増粘剤とは、ポリマー分散液中に含有される粒子の表面での会合により増粘効果をもたらす物質である。この用語は、当業者に知られている。ここで、好ましい会合性増粘剤は、ポリウレタン増粘剤、疎水変性ポリアクリレート増粘剤、疎水変性ポリエーテル増粘剤、および疎水変性セルロースエーテルから選択される。ポリウレタン増粘剤が、極めて特に好ましい。さらに、本発明の枠組みにおいて、増粘剤の濃度は、分散液の組成全体を基準として、0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.05~5重量%の範囲、極めて特に好ましくは0.1~3重量%の範囲にあることが好ましい。
【0074】
さらに、本発明の枠組みにおいて、方法工程d)で、発泡したポリマー分散液の被覆が、10~10000μm、好ましくは50~5000μm、より好ましくは75~3000μm、さらにより好ましくは100~2500μmの層厚で製造されると好ましい。発泡したポリマー分散液の被覆は、当業者にとって一般的な方法、例えばブレードコーティングにより製造することが可能である。ここで、直接的な被覆プロセスおよび間接的な被覆プロセス(いわゆる転写塗布)のどちらも使用することができる。
【0075】
さらに、本発明の枠組みにおいて、方法工程e)で、発泡および被覆したポリマー分散液の乾燥が高温で行われると好ましい。ここで本発明によると、最低50℃、好ましくは60℃、より好ましくは少なくとも70℃の乾燥温度が好ましい。さらに、発泡および被覆したポリマー分散液を様々な温度で複数段階にて乾燥させて、乾燥欠陥の発生を回避することが可能である。相応する乾燥技術は、当産業において普及しており、当業者に知られている。
【0076】
すでに記載したように、方法工程c)~e)は、普及している当業者に公知の方法を用いて行うことが可能である。これらの概観は、例えば「Coated and laminated Textiles」(Walter Fung、CR-Press、2002)に記載されている。
【0077】
殊に本発明の枠組みにおいて、ポリオールエーテルを含む多孔質ポリマー被覆であって、250μm未満、好ましくは150μm未満、殊に好ましくは100μm未満、極めて特に好ましくは75μm未満の平均セル径を有する多孔質ポリマー被覆が好ましい。平均セル径は、好適には顕微鏡法により、好適には電子顕微鏡法により求められる。そのために、多孔質ポリマー被覆の断面を顕微鏡により十分な拡大率で観察し、少なくとも25個のセルの大きさを調べる。この評価法の十分な統計を得るためには、顕微鏡の拡大率を、少なくとも10×10個のセルが観察域に存在するように選択することが好ましい。平均セル径は、観察したセルまたはセル径の算術平均として求められる。顕微鏡法によるこのセル径の測定は、当業者にとって一般的である。
【0078】
ポリオールエーテルを含有する本発明による多孔質ポリマー層(またはポリマー被覆)は例えば、テキスタイル産業で例えば合成皮革材料のために、建築および建設産業で、エレクトロニクス産業で例えば発泡シーリング材のために、スポーツ産業で例えばスポーツマットを製造するために、または自動車産業で使用することが可能である。
【0079】
本発明のさらなる対象は、先に記載のように得られるポリオールエーテルと、リン酸化試薬との反応、および任意の、好適には必須の引き続く中和により得られるリン酸化ポリオールエーテルであり、ここで、リン酸化試薬は殊に、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)および/またはポリリン酸を含む。また、ここでおよび以下で、リン酸化ポリオールエーテルという用語は、部分リン酸化ポリオールエーテルを含む。また、ここおよび以下で、中和という用語は、部分中和を含む。中和に使用可能な好ましい塩基については、すでに先に説明した。
【0080】
好ましい形態について、殊に、好ましく使用可能なポリオールおよびハロゲン化アルキルまたはアルキルエポキシドについて、不必要な繰り返しを避けるために、前述の説明およびそこに挙げた好ましい形態を完全に参照されたい。
【0081】
特に好ましいリン酸化ポリオールエーテルは、リン酸化ポリグリセリンエーテル、好適にはリン酸化および中和ポリグリセリンエーテル、殊にリン酸化および中和ポリグリセリンヘキサデシルエーテル、リン酸化および中和ポリグリセリンオクタデシルエーテル、ならびにこれらの物質の混合物である。リン酸化および中和ポリグリセリンヒドロキシアルキルエーテル、殊にリン酸化および中和ポリグリセリンヒドロキシヘキサデシルエーテル、リン酸化および中和ポリグリセリンヒドロキシオクタデシルエーテル、ならびにこれらの物質の混合物が、さらに好ましい。
【0082】
リン酸化および中和ポリグリセリン(1-ヒドロキシヘキサデシル)エーテル、リン酸化および中和ポリグリセリン(2-ヒドロキシヘキサデシル)エーテル、リン酸化および中和ポリグリセリン(1-ヒドロキシオクタデシル)エーテル、リン酸化および中和ポリグリセリン(2-ヒドロキシオクタデシル)エーテル、ならびにこれらの物質の混合物が、さらにより好ましい。リン酸化ソルビタンエーテル、好適にはリン酸化および中和ソルビタンエーテルが、同様に特に好ましい。
【0083】
ポリグリセリンエーテルを製造するために使用されることが好ましいポリグリセリンは、1829~824mgKOH/g、特に好ましくは1352~888mgKOH/g、殊に好ましくは1244~920mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0084】
リン酸化ポリオールエーテル、好適にはリン酸化ポリグリセリンエーテル、殊にリン酸化および中和ポリグリセリンエーテルにより、冒頭に挙げたすべての利点を伴って、PUD系の極めて特に効率的な発泡が可能になる。
【0085】
先に挙げた対象であるリン酸化ポリオールエーテルは、請求項1~11の対象(すなわち本発明による使用)、請求項12の対象(すなわち本発明による方法)、および請求項13の対象(すなわち本発明によるポリマー被覆)を実現するために非常に有利に使用可能である。
【0086】
本発明のさらなる対象は、ポリオールエーテル、好ましくはポリグリセリンエーテルと、三酸化硫黄またはアミドスルホン酸との反応により得られることが好ましい硫酸化ポリオールエーテル、殊に硫酸化ポリグリセリンエーテルである。これによっても、冒頭に挙げたすべての利点を伴って、PUD系の極めて特に効率的な発泡が可能になる。この対象、すなわち硫酸化ポリオールエーテルも、請求項1~13すべての対象を実現するために非常に有利に使用可能である。
【0087】
本発明のさらなる対象は、
(a) ポリオールと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルキレン、好適には塩化アルキル、少なくとも1種の第一級もしくは第二級アルコール、または少なくとも1種のアルキルオキシランもしくはアルケニルオキシラン、チイランもしくはアジリジン、好適にはアルキルエポキシドとの反応により、あるいは第一級もしくは第二級アルコールと、グリシドール、エピクロロヒドリンおよび/またはグリセリンカーボネートとの反応によりポリオールエーテルを用意する工程、
(b) 引き続き、リン酸化試薬と反応させる工程、ならびに
(c) 任意の、好適には必須の引き続く中和工程
により得られるリン酸化ポリオールエーテルであり、
ここで、リン酸化試薬は殊に、オキシ塩化リン、五酸化リン(P4O10)および/またはポリリン酸を含む。
【0088】
リン酸化ポリオールエーテルが、リン酸化ポリグリセリンエーテルおよび/またはリン酸化ソルビタンエーテル、好適にはリン酸化および中和ポリグリセリンエーテルおよび/またはリン酸化および中和ソルビタンエーテル、殊にリン酸化および中和ポリグリセリンヘキサデシルエーテル、リン酸化および中和ポリグリセリンオクタデシルエーテル、ならびにこれらの物質の混合物である点で優れていると、本発明の好ましい実施形態に相応する。
【0089】
また、ポリグリセリンエーテルの製造に使用されるポリグリセリンが、1829~824mgKOH/g、特に好ましくは1352~888mgKOH/g、殊に好ましくは1244~920mgKOH/gの水酸基価を有する場合、本発明の好ましい実施形態であると言える。
【0090】
さらなる好ましい形態については、前述の説明を参照されたい。
【0091】
本発明のさらなる対象は、一般式2a:
MaDbTc 式2a
[式中、
M=[C
3H
5(OR’’)
2O
1/2]
D=[C
3H
5(OR’’)
1O
2/2]
T=[C
3H
5O
3/2]
a=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
b=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~4
c=0~3、好ましくは0であり、
ここで基R’’は、互いに独立して、同じまたは異なる(R’’’O)
2P(O)-の形態の基であるか、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、特に好ましくは8~18個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、または水素であるが、ただし、基R’’のうち少なくとも1個は炭化水素基であり、かつ少なくとも1個の基R’’は(R’’’O)
2P(O)-の形態に相応し、
ここで基R’’’は、互いに独立して、カチオン、好適にはNa
+、K
+もしくはNH
4
+であるか、または例えばアミドアミンの場合のように官能化されたアルキル基でもあり得るモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミンおよびトリアミノアルキルアミンのアンモニウムイオンであるか、または水素であるか、またはR’’’’-O-であり、
ここでR’’’’は、一価の、脂肪族の、飽和または不飽和の、3~39個の炭素原子、好ましくは7~22個の炭素原子、特に好ましくは9~18個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、またはポリオール基である]
に相応する、
および/または一般式3a:
MxDyTz 式3a
[式中、
【化4】
x=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
y=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~4
z=0~3、好ましくは0超~2、殊に好ましくは0
ただし、少なくとも1個の基R’’は炭化水素基に相応し、少なくとも1個の基R’’は(R’’’O)
2P(O)-の形態の基に相応し、さらにR’’は先に定義された通りである]
に相応する、
および/または一般式4a:
【化5】
[式中、
k=1~10、好ましくは2~3、殊に好ましくは2
m=0~10、好ましくは0超~5、殊に好ましくは1~3
ただし、少なくとも1個の基R’’は炭化水素基に相応し、少なくとも1個の基R’’は(R’’’O)
2P(O)-の形態の基に相応し、さらにR’’は先に定義された通りであり、かつk+mの合計は0超であり、指数kおよびmを有する断片は統計的に分布している]
に相応する、リン酸化ポリグリセリンエーテルである。
【0092】
実施例
物質:
Impranil(登録商標)DLU:Covestro社の脂肪族ポリカーボネートエステルポリエーテルポリウレタン分散液
Stokal(登録商標)STA:Bozetto社のステアリン酸アンモニウム(H2O中に約30%)
Stokal(登録商標)SR:Bozetto社の獣脂系(Talkfett-basiertes)ナトリウムスルホスクシナメート(H2O中に約35%)
Tego(登録商標)Viscoplus3030:Evonik Industries AG社のポリウレタン系会合性増粘剤
粘度測定:
スピンドルLV-4を備えるBrookfield社の粘度計LVTDタイプを用いて、すべての粘度測定を12rpmの一定の回転速度で実施した。粘度測定のために、試料を100mlのグラスに入れ、これに測定スピンドルを沈めた。粘度計が一定の測定値を示すまで待ち続けた。
【0093】
例1A:ポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルの合成
市販で入手可能なポリグリセリン-3(Spiga Nord、水酸基価1124mgKOH/g、52.5g、0.219mol、1.0当量)とナトリウムメタノラート(メタノール中の25%溶液1.96g、0.009mol、0.04当量)との混合物を、撹拌およびN2導入下で15mbarにて2時間以内に180℃に加熱し、メタノールを留去した。180℃に達した後に、真空を遮断し、続いて、80℃に加熱した1,2-エポキシオクタデカン(CAS RN7390-81-0、85%、97.0g、0.361mol、1.65当量)を1時間にわたりゆっくりと滴加した。この混合物を、0.16%のエポキシ-酸素含量が達成されるまで、さらに4時間にわたり180℃で撹拌した。続いて、この混合物を90℃に冷却し、相を分離した。5.6gの未反応のポリグリセリン(下側の相)および113gのポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル(上側の相、融点=71.5℃、水酸基価=387mgKOH/g、酸価=0.4mgKOH/g、エポキシ-酸素含量=0.06%)が得られた。
【0094】
例1B:ポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルのリン酸化
ポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル(97.62g、例1Aに記載のように得られたもの)とポリリン酸(115%のH3PO4、2.38g)との混合物を、4時間にわたり撹拌しながら80℃に加熱した。その後、この混合物は、27.6mgKOH/gの酸価を有していた。続いて、45%のKOH水溶液(9.77g)を80℃で添加し、さらに30分にわたり80℃で撹拌した。この混合物は、1.3mgKOH/gの酸価を有していた。
【0095】
例1C:ポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルステアレートの合成
ポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル(150g、例1Aに記載のように得られたもの)とステアリン酸(44.3g、0.156mol)との混合物を、撹拌およびN2導入下で3時間以内に240℃に加熱し、1mgKOH/g以下の酸価が達成されるまで240℃で撹拌した。186gのポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルステアレート(水酸基価=264mgKOH/g、酸価=0.6mgKOH/g、鹸化価44mgKOH/g)が得られた。
【0096】
例2A:ポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルの合成
市販で入手可能なポリグリセリン-3(Spiga Nord、水酸基価1124mgKOH/g、52.6g、0.219mol、1.0当量)と濃硫酸(0.36g)との混合物を、撹拌およびN2導入下で15mbarにて1時間以内に100℃に加熱した。100℃に達した後に、真空を遮断し、続いて、80℃に加熱した1,2-エポキシオクタデカン(CAS RN7390-81-0、85%、97.1g、0.362mol、1.65当量)を1時間にわたりゆっくりと滴加した。この混合物を、0.01%のエポキシ-酸素含量が達成されるまで、さらに4時間にわたり100℃で撹拌した。続いて、この混合物を90℃に冷却し、相を分離した。22.8gの未反応のポリグリセリン(下側の相)および113.8gのポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテル(上側の相、融点=49.5℃、水酸基価=268mgKOH/g、酸価=0.6mgKOH/g、エポキシ-酸素含量=0.01%)が得られた。
【0097】
例2B:ポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルのリン酸化
例2Aに記載のように得られたポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル(98.81g)とポリリン酸(115%のH3PO4、1.19g)との混合物を、4時間にわたり撹拌しながら80℃に加熱した。その後、この混合物は、12mgKOH/gの酸価を有していた。続いて、45%のKOH水溶液(2.67g)を80℃で添加し、さらに30分にわたり80℃で撹拌した。この混合物は、1.0mgKOH/gの酸価を有していた。
【0098】
例2C:カリウムポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルスクシネートの合成
例2Aに記載のように得られたポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル(300g)を、80℃に加熱し、撹拌しながら、1時間以内に無水コハク酸(9.15g)を分けて添加した。この混合物を、19.2mgKOH/gの酸価が達成されるまで、さらに2時間にわたり80℃で撹拌した。続いて、45%のKOH水溶液を12.90g添加し、この混合物をさらに15分にわたり撹拌した。得られたカリウムポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテルスクシネートは、8.0mgKOH/gの酸価を有していた。
【0099】
例3:本発明による界面活性剤の調製および混合
例1A~Cおよび2A~Cからの本発明による界面活性剤を、表1および2に記載の組成に従って混合し、続いて、80℃で均質化した:
【表1】
【0100】
【0101】
例4:
150gの分散液Impranil(登録商標)DLUを、500mlプラスチックカップに予め装入し、ディゾルバーディスク(Φ=6cm)を備えるVMA Getzmann社のディゾルバーにより3分にわたり800rpmで撹拌した。この時間の間に、注射器により界面活性剤をゆっくりと添加した。試料の正確な組成は、表3および4に記載されている。
【0102】
続いて、混合物を発泡させるために、せん断速度を2000rpmに上昇させ、その際、適切な渦が生じるようにディゾルバーディスクを常に分散液内に沈ませることを確実にした。この速度で、混合物を約425mlの体積に発泡させた。このために必要なせん断時間も同様に、表3および4に記載されている。その後、せん断速度を1000rpmに下げ、注射器を用いて、Tego(登録商標)Viscoplus3030を添加し、再び15分にわたりせん断した。この工程では、ディゾルバーディスクを、さらなる空気が系に入らず、ただし容積全体がなおも動くほどの深さで混合物中に沈めた。
【0103】
いずれの場合においても、この発泡プロセスの最後に、微細で均質な発泡体が得られた。本発明による界面活性剤1~6で製造された発泡体が、より低い増粘剤濃度にもかかわらず、より高い粘度を有していたことが注目に値する(表3および4を参照)。ボックス型ドクターブレード(Kastenrakel)(ドクターブレード厚=800μm)を備えるフィルム塗布機(TQC社のタイプAB3220)を用いて、発泡体をシリコーン処理ポリエステル膜にコーティングし、続いて、10分にわたり60℃で、またさらに5分にわたり120℃で乾燥させた。
【0104】
試料1に比べて、乾燥した本発明による試料2~7は、肉眼での外観がより均質である点、および感触がよりビロードのようである点で優れていた。乾燥した試料のセル構造の評価を走査型電子顕微鏡により行った。ここで、比較試料1の場合、平均セル径は約120μmであると求めることができ、本発明による試料2および3は、セル径が著しくより微細で、約55μmであった。
【0105】
【0106】
【0107】
例5:
表3および4に記載の組成物を、例4に記載の方法と同様に発泡させ、ボックス型ドクターブレード(ドクターブレード厚=800μm)を用いてシリコーン処理ポリエステル膜にコーティングした。しかしながら今回は、試料の乾燥を、5分にわたり90℃で、また3分にわたり120℃で行っただけであった。ここで、比較試料1は、乾燥後に著しい欠陥(乾燥亀裂)を有し、一方で本発明による試料2~7は、より短く厳しい乾燥条件にもかかわらず、欠陥なく乾燥されることを観察することができた。
【0108】
さらに、すべての試料から、2000μmのドクターブレード厚を有する被覆が製造された。これを、10分にわたり60℃で、10分にわたり90℃で、また10分にわたり120℃で乾燥させた。ここでも、本発明による界面活性剤を含有する試料2~7は、欠陥なく乾燥し、一方で比較試料は、著しい乾燥亀裂1を示した。