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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電気自動車用バッテリ充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240130BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240130BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240130BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20240130BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20240130BHJP
   B60L 53/68 20190101ALI20240130BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H02J7/00 L
H02M7/12 P
B60L53/30
B60L53/66
B60L53/62
B60L53/68
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020520042
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 CA2018051291
(87)【国際公開番号】W WO2019071359
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CA2017/051218
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(31)【優先権主張番号】62/660,530
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520116768
【氏名又は名称】ディーシーベル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】バヘディ、ハニ
(72)【発明者】
【氏名】フォルジェ、マルクーアンドレ
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081330(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/098819(WO,A1)
【文献】特開2009-260760(JP,A)
【文献】特開2009-011100(JP,A)
【文献】VAHEDI, Hani, et al,A New Five-Level Buck-Boost Active Rectifier,IEEE INTERNATIONL CONFERENCE ON INDSTRIAL TECHNOLOGY (ICIT),米国,IEEE,2015年03月17日,2559-2564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02M 7/12
B60L 53/30
B60L 53/66
B60L 53/62
B60L 53/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電バッテリに給電するためのバッテリ充電器であって、
給電部から電力を受電するためのAC入力と、
前記蓄電バッテリと通信して、充電電圧値を受け取るためのバッテリ充電コントローラインターフェースと、
前記AC入力に接続されているとともに、前記充電電圧値に応じて前記AC入力からの電力をDCに変換して、前記充電電圧値に応じて可変の電圧をDC負荷用のDC出力とする電力コンバータと、を備え、
当該電力コンバータは、
電力を蓄積するための少なくとも1つの高圧コンデンサと、
整流器回路と、を備え、
当該整流器回路は、
前記AC入力に直列接続されたインダクタと、
低圧コンデンサと、
第1AC入力端子と前記高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つのダイオードか、
第1AC入力端子と前記高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧スイッチか、の少なくとも一方と、
前記高圧コンデンサの前記両端と前記低圧コンデンサの両端との間に接続された2つの中間低圧電力スイッチと、
前記低圧コンデンサの前記両端と第2AC入力端子との間に接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備え、
前記高圧コンデンサの前記両端には、DC負荷が接続可能であり、
前記電力コンバータは、さらに、
前記充電電圧値、前記AC入力から読み取った位相、および前記少なくとも1つの高圧コンデンサの電圧を入力として、基準信号を出力するコントローラと、
前記コントローラに接続されて前記基準信号を受信し、前記2つの高圧スイッチと、前記2つの中間低圧電力スイッチと、前記2つの終端低圧電力スイッチと、の状態を示す比較信号を出力するモジュレータと、
前記比較信号を受信して、状態選択信号を出力するための状態選択回路と、
前記状態選択信号を受信するスイッチングパルス生成器であって、前記電力コンバータが前記2つのダイオードを備える場合には、前記2つの中間低圧電力スイッチのゲート入力及び前記2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続され、前記電力コンバータが前記2つの高圧スイッチを備える場合には、前記2つの中間低圧電力スイッチのゲート入力、前記2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力及び前記2つの高圧スイッチのゲート入力に接続されるスイッチングパルス生成器と、を備えるものである、バッテリ充電器。
【請求項2】
前記コントローラは、前記整流器回路を昇圧モードで動作させるように機能し、前記高圧コンデンサの電圧は、前記AC入力のピーク電圧よりも高く、前記2つの中間低圧電力スイッチ及び前記2つの終端低圧電力スイッチは、前記低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、前記低圧コンデンサは、前記高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、前記高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、前記整流器回路は、5レベルの能動整流器として、前記AC入力の高調波を低く抑えた状態で前記DC負荷に給電するとともに、電力を吸収する、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記バッテリ充電コントローラインターフェースは、さらに、前記蓄電バッテリと通信して、所望の充電電流値を受け取り、前記電力コンバータは、さらに、前記所望の充電電流値に応じて前記AC入力からの電力をDCに変換して、前記所望の充電電流値を超えない可変電流をDC負荷用のDC出力とする、請求項1又は2のいずれかに記載の充電器。
【請求項4】
前記状態選択回路は、前記高圧コンデンサと前記低圧コンデンサとの間の電圧を用いて前記状態選択信号を出力する、請求項1に記載の充電器。
【請求項5】
前記高圧コンデンサの前記両端からのDC電力を、前記充電電圧値で設定された低いDC出力電圧に降圧変換するバックコンバータ回路をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の充電器。
【請求項6】
前記高圧コンデンサの前記両端からのDC電力を、前記充電電圧値で設定された高いDC出力電圧に昇圧変換するブーストコンバータ回路をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載の充電器。
【請求項7】
前記高圧コンデンサを前記整流器回路から取り外して交換するためのソケット型コネクタを備える、請求項1~6のいずれかに記載の充電器。
【請求項8】
前記高圧コンデンサは、少なくとも1つの電子識別コンポーネントと、当該電子識別コンポーネントを前記コントローラに接続するためのインターフェースと、を含むプラグインモジュールに組み込まれており、前記コントローラは、前記電子識別コンポーネントが欠落しているとき、又は、前記プラグインモジュールを正しく識別できないときは、動作を抑止するよう構成されている、請求項7に記載の充電器。
【請求項9】
前記2つの中間低圧電力スイッチ及び前記2つの終端低圧電力スイッチは、10kHzを超える周波数でスイッチングされる、請求項1~8のいずれかに記載の充電器。
【請求項10】
記AC入力の電圧は、RMSで約240Vであり、前記DC出力電力の電圧は、350Vよりも高い、請求項1~9のいずれかに記載の充電器。
【請求項11】
前記充電器は、複数のモジュールソケットと、前記モジュールソケットに接続された少なくとも1つのモジュールと、を有するコネクタバックプレーンを含む筐体を備え、前記モジュールの各々は、前記整流器回路を備え、前記モジュールは、並列に動作して前記負荷にDC電力を供給する、請求項1~10のいずれかに記載の充電器。
【請求項12】
前記モジュールの各々における前記高圧コンデンサの容量は、約4ミリファラドである、請求項11に記載の充電器。
【請求項13】
前記モジュールの各々は、約2kW超のDC負荷電力を供給可能である、請求項11又は12に記載の充電器。
【請求項14】
DC車両充電ケーブル及び充電プラグをさらに備える、請求項1~13のいずれかに記載の充電器。
【請求項15】
9.5kW超のDC負荷電力を供給可能である、請求項1~11のいずれかに記載の充電器。
【請求項16】
前記充電器は、可搬型の充電器であって、さらにAC入力ケーブルと、DC出力ケーブルと、筐体と、を備え、当該筐体は、複数のモジュールソケットと、前記モジュールソケットに接続された少なくとも1つのモジュールと、を有するコネクタバックプレーンを有し、前記モジュールの各々は、前記整流器回路を備え、前記モジュールは、並列に動作して前記負荷にDC電力を供給する、請求項1~15のいずれかに記載の充電器。
【請求項17】
前記電力コンバータは、前記給電部が配電変圧器から引き込んだ電力を測定するための給電電力センサ、及び、前記引き込み電力の値を受け取るための入力と、前記給電部の引き込み電力に、前記給電部の最大電力負荷の関数を算出することで予測される最大増加の値を供給する出力と、を有する引込み電力増加予測モジュールを備え、前記電力コンバータは、前記引き込み電力に予測される最大増加が発生した場合には、当該電力コンバータが出力する電流レベルを制限して、前記給電部の引き込み電力が所定の制限を超えることを防止するよう構成されている、請求項1~16のいずれかに記載の充電器。
【請求項18】
前記充電器は電気自動車に備えられるものであって、前記電気自動車は、前記充電器のコネクタの存在を検知するセンサを有するレセプタを備える、請求項17に記載の充電器。
【請求項19】
記充電器が前記電気自動車に積み込まれていること、又は、その近くにあること、を示す無線自動識別(RFID)及びブルートゥース(登録商標)センサのうちの一方をさらに備える、請求項18に記載の充電器。
【請求項20】
前記整流器回路は、双方向整流器/インバータ回路であって、ACポートに直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC端子と前記高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチと、前記高圧コンデンサの前記両端と前記低圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチと、前記低圧コンデンサの前記両端と第2AC入力端子との間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備え、前記高圧コンデンサの前記両端には、DC負荷が接続可能であり、
前記コントローラは、整流器モード用の第1コントローラであって、前記双方向整流器/インバータ回路の電流及び/又は電圧を感知するための少なくとも1つのセンサを有するとともに、前記2つの高圧電力スイッチ、前記2つの中間低圧電力スイッチ、及び、前記2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されており、前記整流器回路を昇圧モードで動作させるコントローラであり、前記高圧コンデンサの電圧は、前記AC入力のピーク電圧よりも高く、前記2つの高圧電力スイッチは、前記AC入力の周波数でオンオフ切り替えを行うように制御され、前記2つの中間低圧電力スイッチ及び前記2つの終端低圧電力スイッチは、前記低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、前記低圧コンデンサは、前記高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、前記高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、前記整流器回路は、5レベルの能動整流器として、前記AC入力の高調波を低く抑えた状態で前記DC負荷に給電するとともに、電力を吸収し、
前記電力コンバータは、インバータモード用の第2コントローラをさらに備え、当該第2コントローラは、前記2つの高圧電力スイッチと、前記2つの中間低圧電力スイッチと、前記2つの終端低圧電力スイッチと、に接続されているとともに、第1制御信号を含む信号波形及び第2制御信号を含む信号波形を生成して、前記2つの高圧電力スイッチ、前記2つの中間低圧電力スイッチ、及び、前記2つの終端低圧電力スイッチに印加するよう構成されており、前記第1制御信号は、前記低圧コンデンサをDCポート及び前記ACポートに直列接続させて、前記低圧コンデンサを前記DCポートの電圧に比例した所定の値まで充電させる信号であり、前記第2制御信号は、前記低圧コンデンサを前記DCポートから切断させて、前記ACポートに直列接続させることで、前記低圧コンデンサを放電させる信号である、請求項1~19のいずれかに記載のバッテリ充電器。
【請求項21】
レベル1又はレベル2のEV充電用のAC出力と、前記電力コンバータを切断して、前記AC入力と前記AC出力の間にAC電流を通電させるよう切り替えるためのスイッチと、をさらに備える、請求項1~20のいずれかに記載のバッテリ充電器。
【請求項22】
レベル3のEV用DC充電器にアップグレードして蓄電バッテリに給電可能なレベル2のEV用ACバッテリ充電器であって、
筐体を備え、当該筐体は、
給電部から電力を受電するAC入力と、
AC出力と、
DC出力と、
少なくとも1つのDC電力コンバータモジュールを装着可能に構成された少なくとも1つのモジュールコネクタを有し、前記AC入力と前記DC出力を接続するためのコネクタバックプレーンと、
前記AC入力と前記AC出力の間にAC電流を通電させるためのスイッチと、を備えるものである、バッテリ充電器。
【請求項23】
前記スイッチは、前記少なくとも1つのDC電力コンバータモジュールにより制御される、請求項22に記載のバッテリ充電器。
【請求項24】
前記少なくとも1つのDC電力コンバータモジュールを物理的に設置する際は、前記スイッチが開状態とされる、請求項23に記載のバッテリ充電器。
【請求項25】
前記スイッチは、ソケット型のコネクタである、請求項24に記載のバッテリ充電器。
【請求項26】
AC出力電圧が所望の充電電圧を超えること、及び、AC出力電流が所望の充電電流を超えること、を防止する過剰電力防止モジュールをさらに備える、請求項22~25のいずれかに記載のバッテリ充電器。
【請求項27】
前記蓄電バッテリと通信して、充電電圧値及び所望の充電電流値を受け取るためのバッテリ充電コントローラインターフェースをさらに備える、請求項22~26のいずれかに記載のバッテリ充電器。
【請求項28】
蓄電バッテリに給電するためのバッテリ充電器であって、
給電部から電力を受電するためのAC入力と、
前記給電部が配電変圧器から引き込んだ電力を測定するための給電電力センサと、
前記引き込み電力の値を受け取るための入力、及び、前記給電部の引き込み電力に、前記給電部の最大電力負荷の関数を算出することで予測される最大増加の値を供給する出力を有する引込み電力増加予測モジュールと
前記蓄電バッテリと通信して、充電電圧値を受け取るためのバッテリ充電コントローラインターフェースと、
前記AC入力に接続されているとともに、前記充電電圧値及び所望の充電電流に応じて前記AC入力からの電力をDC変換して、前記充電電圧値に応じて可変の電圧をDC出力とする電力コンバータと、を備え、前記電力コンバータは、前記引き込み電力に予測される最大増加が発生した場合には、当該電力コンバータが出力する電流レベルを制限して、前記給電部の引き込み電力が所定の制限を超えることを防止するよう構成されている、バッテリ充電器。
【請求項29】
前記電力コンバータは、充電優先度パラメータを規定するユーザ入力を受け取るためのユーザ入力インターフェースを有する充電電力プログラムモジュールを備え、前記充電電力プログラムモジュールは、前記充電優先度パラメータに応じて前記電流レベルを経時的に制御する、請求項28に記載のバッテリ充電器。
【請求項30】
ユーザ入力を受け取るための前記ユーザ入力インターフェースは、充電プラグに設けられた少なくとも1つのスイッチを備える、請求項29に記載の充電器。
【請求項31】
ネットワークインターフェースをさらに備え、ユーザ入力を受け取るための前記ユーザ入力インターフェースは、前記ネットワークインターフェースに接続されたリモートデバイスユーザインターフェースを備える、請求項29又は30に記載の充電器。
【請求項32】
バッテリの劣化を評価することができるように、前記充電電力プログラムモジュールは、充電電流の履歴を記録する、請求項29~31のいずれかに記載の充電器。
【請求項33】
負荷制限スイッチをさらに備え、前記引込み電力増加予測モジュールは、前記負荷制限スイッチに接続されており、前記引き込み電力に近々に予測される最大増加によって前記所定の制限を超過するリスクがあるときは、前記負荷制限スイッチに接続可能な少なくと も1つのシフト可能な負荷を一時的に切断し、前記引込み電力増加予測モジュールは、前記所定の制限を超過する近々のリスクが回避されたと判定すると、前記シフト可能な負荷を再接続するよう構成されている、請求項28~32のいずれかに記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2018年4月20日出願の米国特許仮出願第62/660,530号を基礎とする優先権を主張する。同基礎出願の明細書は、参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本出願は、例えば電気自動車で使用されるバッテリ充電システムの分野に関する。本出願は、また、家庭用の電圧及び電力で動作する整流器などの電力コンバータの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本セクションは、請求の範囲に記載した発明の背景や前提について記載することを目的とする。本セクションの記載には、権利化可能な概念が含まれる場合があり、これらは、必ずしも既に着想や権利化されたものとは限らない。したがって、特段の記載がない限り、本セクションの内容は、本開示及び請求の範囲の先行技術を構成するものではなく、また、本セクションに記載されていることによって先行技術であると認められるものでもない。
【0004】
現在の電気自動車(EV)は、バッテリバンク(battery bank)及びバッテリ充電システムを備えるものが一般的である。バッテリバンクは、通常、直流電流(DC)を入力としてバッテリを充電する。このため、一般家庭用のAC電力をバッテリバンク用のDC入力に変換する充電回路が車両に搭載されている。一般的に「レベル1」及び「レベル2」の充電として知られる方式のバッテリ充電システムは、家庭用などの交流電力の供給を受け、これをDC変換してバッテリバンクに給電する。レベル1充電とレベル2充電は、主に、供給される電力量が異なり、場合によっては、電圧も異なる。
【0005】
「レベル3」充電は、一般的にDC充電であり、例えば、350V超の高電圧、大電流のハイパワーDC電流を用いて、典型的には約15kW超、最大で160kWの充電電力を供給することができる。レベル3の充電ステーションは、商用の充電ステーションであって、EVを最短で充電することを目的とする。現行のEV用バッテリは、充電容量の約75%~80%までは、かなり急速に充電することが可能である。EV用バッテリによっては、15分~20分のハイパワー充電(high power charging)で、バッテリ残量15%の状態から80%まで充電可能なものもある。しかし、これ以降の充電は非常に遅く、例えば80%の充電レベルから99%まで充電するのに何時間も要する場合がある。通常、充電ステーションの利用者は、他の利用者が車両の充電を行えるように、その段階で充電を終了するよう求められる。急速充電は、商用の充電ステーションの運用には都合がよいが、EVバッテリによっては、ハイパワー充電を行うと耐用寿命が短くなってしまう可能性がある。バッテリ寿命の観点では、例えば、20分ではなく、2時間かけて、バッテリ容量の15%から80%まで充電することが望ましい。
【0006】
そのような充電に用いられるDC電力は、三相電源から供給されるが、三相電源は通常、商業用の施設に設置されており、一般家庭には設置されていない。三相AC電力は、DCに効率的に変換できる。また、一般家庭で使用可能な電力は60kW未満に制限されているので、このタイプの充電は、通常、家庭では利用できない。地域によっては、家庭用分電盤への電力供給は、上限が、例えば、240V(RMS)、200Aに設定されており、つまり、家庭で使用可能な総電力は48kWである。多くの家庭が多くの電力を過剰に引き込んだ場合には過負荷状態が発生するが、家庭用配電変圧器は、一般的に「オーバーサブスクリプション(oversubscription)」を前提とした容量に設定されており、メインサーキットブレーカを利用して電力制限を設けることで、統計学的観点に基づいてこのような過負荷状態から配電変圧器を保護している。加えて、レベル3充電を単相AC電流源から行うには、整流器回路が必要であるが、整流器回路は、コストなどの理由により、一般家庭には設置されていない。
【0007】
現行の家庭用車両充電システムは、例えば、衣類乾燥機用プラグなどから電力を引き込む大電力家電と本質的に同じ挙動を示す。レベル2充電においては、電力は通常約7kW以下に制限されており、これは、衣類乾燥機(240Vで30アンペア、つまり7.2kW)と同程度の負荷である。家庭に設置された充電ユニットは、ブレーカ回路を経由して主電源のAC電力を車に接続し、車載のAC-DC変換回路により車両用バッテリを充電する。
【0008】
多くの電気自動車は、「急速」DC充電が可能な構成であり、この場合、AC-DCコンバータは、EVの外部要素である。DC充電には、車載型AC-DCコンバータの容量よりも充電電力が大きいという利点に加えて、車の製造時に製造業者によって搭載されたコンバータに変換効率が依存しないという利点がある。DC充電を家庭で効率的に行うことができれば、重量が大きく高価なレベル2充電用の機器を車両に搭載する必要がなくなる。
【0009】
レベル2の電力消費の場合、車の充電によって、住宅の給電部(electrical entry)又は主回路盤が電力容量(power budget)を超える電力を引き込んでしまう(よって、メインブレーカが落ちて、回路盤が配電変圧器から切断されてしまう)可能性は、かなり低い。しかしながら、ほとんどの家庭用分電盤では、7kWを超える負荷を何時間も追加すると、家庭用分電盤に設定された電力容量の総量を超えてしまうリスクが高くなる。
【発明の概要】
【0010】
本特許出願は、補完的な改良を提供するものであり、これらの改良は、別個に適用することも、組み合わせて適用することも可能である。第1の改善は、DC充電器に用いられる整流器の改良に関する。一態様において、改良された整流器は、充電器において容易に交換可能な高圧コンデンサモジュールを含む。別の態様において、充電器は、ACからDCへの変換を複数の低電力分枝モジュールに分散して行うことを可能にするバックプレーン・分枝構成を含み、これにより、各々の給電能力が約5kVA未満の分枝モジュールを組み合わせて、10kVA超(好ましくは、20kVA超)の単相AC電力を充電用のDC電力出力に変換することを可能にする。第2の改良は、バッテリ充電システムであって、充電以外の全ての負荷が給電部に同時に接続されて電力を引き込んだ場合には公称の電力容量を超えてしまうようなレベルの電力をバッテリ充電に使用することを可能にするシステムに関する。したがって、第2の改良では、充電以外の負荷による電力消費のモデル化及び/又は履歴の監視に基づいて、充電以外の負荷による電力消費について時間帯を考慮した予測を行う。第3の改善は、充電電力プログラムモジュールを有する電力コンバータに関し、当該充電電力プログラムモジュールは、充電優先度パラメータ(charging aggressivity parameter)を設定するユーザ入力を受け取るためのユーザ入力インターフェースを備えるとともに、充電優先度パラメータに応じて、電流レベルを経時的に制御する。第4の改良は、電力コンバータから高圧コンデンサを着脱可能にするソケット型コネクタに関する。第5の改良は、双方向で動作可能な回路を有する電力コンバータに関する。つまり、当該電力コンバータは、AC入力からDC充電する整流器としての機能に加えて、DC電圧/電流をACに変換するインバータとしての機能も有しており、よって、電気自動車のDCバッテリからAC出力を供給することができる。
【0011】
いくつかの実施態様では、バッテリ充電器は、単相AC電力を変換して、DC電力を蓄電バッテリに供給する。AC入力は、給電部から単相電力を受電する。電力コンバータは、AC入力に接続されており、充電電圧値及び所望の充電電流値に応じて電力をDC負荷用に変換して、所望の充電電流を超えない範囲の可変電流の可変DC電圧にする。上記電力コンバータは、AC入力のピーク電圧を超える電圧に昇圧された電力を蓄積するための少なくとも1つの高圧コンデンサを有する。いくつかの実施形態において、充電器回路は、双方向で動作可能である。つまり、当該回路は、AC電圧/電流をDCに変換する整流器として機能するとともに、DCからACに変換するインバータとしても機能する。よって、電気自動車のDCバッテリからAC出力を供給することができる。
【0012】
本開示の一態様では、充電回路は、整流器として一方向のみに動作して、AC電圧をDCに変換する単方向充電器として機能する。この構成は、充電回路において、第1端子と高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続されている2つの高圧スイッチを2つのダイオードに置き換えることで実現できる。
【0013】
この際に、整流器モードで動作するバッテリ充電コンバータを、バッテリ充電整流器と呼び、インバータモードで動作するバッテリ充電コンバータを、バッテリ充電インバータと呼ぶことができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、本開示のバッテリ充電器は、給電部から単相電力を受電するためのAC入力と、AC出力と、DC出力とを有する筐体を備え、AC入力とAC出力とは、スイッチで接続されている。このスイッチも、バックプレーンに接続されており、当該バックプレーンは、1つ以上のDC電力コンバータモジュールを装着可能に構成された1つ以上のモジュールコネクタを有する。ACモードでは、このスイッチは、閉状態であり、AC入力をAC出力に接続する。よって、蓄電バッテリにAC電流が供給される。DCモードでは、スイッチは開状態であり、AC入力をDC電力コンバータモジュールに接続する。よって、DC出力にDC電流が供給される。
【0015】
一実施形態において、充電器は、1つ以上のDC電力コンバータモジュールを装着可能に構成されたモジュールコネクタを有する。ただし、当該充電器は、DC電力コンバータが最初から筐体に設けられている構成ではなく、ユーザにレベル2のEV用ACバッテリ充電器を提供するものである。DC電力コンバータモジュールは、充電器に後付けで追加可能であり、これにより、当該充電器をレベル3のEV用DC充電用にアップグレードすることができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、電気自動車用の可搬型DC充電ユニットを提供する。可搬型DC充電ユニットは、コネクタバックプレーンを有する筐体を備え、当該コネクタバックプレーンは、バッテリ整流器回路と、AC源からAC電流を受電するAC入力と、DCケーブルを介して電気自動車に接続されるDC出力とを含む少なくとも1つのモジュールを装着可能に構成された複数のソケットを有する。
【0017】
より広い別の態様では、本開示は、AC入力に接続されて、AC入力からの電力をDCに変換する電力コンバータを提供するものであり、当該電力コンバータは、AC入力のピーク電圧より高い電圧に昇圧された電力を蓄積するための少なくとも1つの高圧コンデンサと整流器回路とを備える。当該整流器は、AC入力に直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC入力端子と高圧コンデンサの両端との間に接続された2つのダイオードか2つの高圧スイッチのいずれかと、高圧コンデンサの両端と低圧コンデンサの両端との間に接続された2つの中間低圧電力スイッチと、低圧コンデンサの両端と第2AC入力端子との間に接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を含む。高圧コンデンサの両端には、DC負荷を接続することができる。当該電力コンバータは、さらに、整流器回路における電流及び/又は電圧を感知する少なくとも1つのセンサを有するとともに、2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されたコントローラを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記コントローラは、整流器回路を昇圧モードで動作させるものであり、高圧コンデンサの電圧は、AC入力のピーク電圧より高く、2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチは、低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、低圧コンデンサは、高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、整流器回路は、5レベルの能動整流器として、AC入力の高調波を低く抑えた状態でDC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記電力コンバータは、整流回路の代わりに、双方向整流器/インバータ回路を有し、また、整流器とインバータの両方として双方向に機能する1つのコントローラの代わりに、2つのコントローラを有する。上記双方向整流器/インバータ回路は、ACポートに直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC端子と高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチと、高圧コンデンサの両端と低圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチと、低圧コンデンサの両端と第2AC入力端子との間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備える。高圧コンデンサの両端には、DC負荷を接続することができる。上記電力コンバータは、整流器モード用の第1コントローラをさらに備える。当該第1コントローラは、双方向整流器/インバータの電流及び/又は電圧を感知するための少なくとも1つのセンサを有するとともに、2つの高圧電力スイッチ、2つの中間低圧電力スイッチ、及び、2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されており、整流器回路を昇圧モードで動作させる。高圧コンデンサの電圧は、AC入力のピーク電圧よりも高い。2つの高圧電力スイッチは、AC入力の周波数でオンオフ切り替えを行うように制御される。2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチは、低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、低圧コンデンサは、高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、整流器回路は、5レベルの能動整流器として、AC入力の高調波を低く抑えた状態でDC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。上記電力コンバータは、インバータモード用の第2コントローラをさらに備える。当該第2コントローラは、2つの高圧電力スイッチと、2つの中間低圧電力スイッチと、2つの終端低圧電力スイッチとに接続されているとともに、第1制御信号を含む信号波形及び第2制御信号を含む信号波形を生成して、2つの高圧電力スイッチ、2つの中間低圧電力スイッチ、及び、2つの終端低圧電力スイッチに印加するよう構成されており、第1制御信号は、低圧コンデンサをDCポート及びACポートに直列接続させて、低圧コンデンサをDCポートの電圧に比例した所定の値まで充電させる信号であり、第2信号は、低圧コンデンサをDCポートから切断させて、ACポートに直列接続させることで、低圧コンデンサを放電させる信号である。
【0020】
一態様において、本開示は、単相のAC電力を変換して、蓄電バッテリにDC電力を供給するためのバッテリ充電器を提供する。前記充電器は、給電部から単相電力を受電するためのAC入力と、前記蓄電バッテリと通信して、充電電圧値及び所望の充電電流値を受け取るためのバッテリ充電コントローラインターフェースと、前記AC入力に接続されているとともに、前記充電電圧値及び前記所望の充電電流に応じて前記AC入力からの電力をDC変換して、前記充電電圧値に応じて可変の電圧、及び、前記所望の充電電流を超えない範囲で可変の電流をDC負荷用のDC出力とする電力コンバータと、を備える。前記電力コンバータは、前記AC入力のピーク電圧を超える電圧に昇圧された電力を蓄積するための少なくとも1つの高圧コンデンサを有する。前記充電器は、さらに、以下のうちの1つを特徴とする。
【0021】
-いくつかの実施形態において、前記電力コンバータは、前記給電部が配電変圧器から引き込んだ電力を測定するための給電電力センサ、及び、前記引き込み電力の値を受け取るための入力と、前記給電部の引き込み電力に予測される最大増加の値を供給する出力と、を有する引込み電力増加予測モジュールを備える。前記電力コンバータは、前記引き込み電力に予測される最大増加が発生した場合には、当該電力コンバータが出力する電流レベルを制限して、前記給電部の引き込み電力が所定の制限を超えることを防止するよう構成されている。
【0022】
-いくつかの実施形態において、前記電力コンバータは、充電優先度パラメータを規定するユーザ入力を受け取るためのユーザ入力インターフェースを有する充電電力プログラムモジュールを備える。前記充電電力プログラムモジュールは、前記充電優先度パラメータに応じて前記電流レベルを経時的に制御する。
【0023】
-いくつかの実施形態において、前記電力コンバータは、前記高圧コンデンサを前記電力コンバータから取り外して交換するためのソケット型コネクタをさらに備える。
【0024】
-いくつかの実施形態において、前記電力コンバータは、整流回路を備え、当該整流回路は、AC入力に直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC端子と前記高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチと、前記高圧コンデンサの前記両端と前記低圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチと、前記低圧コンデンサの前記両端と第2AC入力端子との間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備える。前記高圧コンデンサの前記両端には、DC負荷が接続可能である。前記電力コンバータは、前記整流器回路の電流及び/又は電圧を感知するための少なくとも1つのセンサを有するコントローラであって、前記2つの高圧電力スイッチ、前記2つの中間低圧電力スイッチ、及び、前記2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されており、前記整流器回路を昇圧モードで動作させるコントローラをさらに備える。前記高圧コンデンサの電圧は、前記AC入力のピーク電圧よりも高く、前記2つの高圧電力スイッチは、前記AC入力の周波数でオンオフ切り替えを行うように制御され、前記2つの中間低圧電力スイッチ及び前記2つの終端低圧電力スイッチは、前記低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、前記低圧コンデンサは、前記高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、前記高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持される。前記整流器回路は、5レベルの能動整流器として、前記AC入力の高調波を低く抑えた状態で前記DC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。また、前記高圧コンデンサの前記両端からのDC電力を、前記充電電圧値で設定された低いDC出力電圧に降圧変換するバックコンバータ回路をさらに備える。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記充電器は、以下の両方を備える電力コンバータを特徴とする。
即ち、前記給電部が配電変圧器から引き込んだ電力を測定するための給電電力センサと、前記引き込み電力の値を受け取るための入力、及び、前記給電部の引き込み電力に予測される最大増加の値を供給する出力を有する電力引込み増加予測モジュールと、を備える電力コンバータであって、当該電力コンバータは、前記引き込み電力に予測される最大増加が発生した場合には、当該電力コンバータが出力する電流レベルを制限して、前記給電部の引き込み電力が所定の制限を超えることを防止するよう構成されている。さらに、以下を備える。
【0026】
a)AC入力に直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC端子と前記高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチと、前記高圧コンデンサの前記両端と前記低圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチと、前記低圧コンデンサの前記両端と第2AC入力端子との間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備える整流回路。
【0027】
b)前記整流器回路の電流及び/又は電圧を感知するための少なくとも1つのセンサを有するとともに、前記2つの高圧電力スイッチ、前記2つの中間低圧電力スイッチ、及び、前記2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されており、前記整流器回路を昇圧モードで動作させるコントローラ。前記高圧コンデンサの電圧は、前記AC入力のピーク電圧よりも高く、前記2つの高圧電力スイッチは、前記AC入力の周波数でオンオフ切り替えを行うように制御され、前記2つの中間低圧電力スイッチ及び前記2つの終端低圧電力スイッチは、前記低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、前記低圧コンデンサは、前記高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、前記高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、前記整流器回路は、5レベルの能動整流器として、前記AC入力の高調波を低く抑えた状態で前記DC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。
【0028】
c)前記高圧コンデンサの前記両端からのDC電力を、前記充電電圧値で設定された低いDC出力電圧に降圧変換するバックコンバータ回路。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記充電器は、ユーザ入力を受け取るためのネットワークインターフェースであって、当該ネットワークインターフェースに接続されたリモートデバイスユーザインターフェースを備えるネットワークインターフェースを有する。
【0030】
一実施形態において、前記電力コンバータは、前記充電電力プログラムモジュールを備え、前記充電優先度パラメータは、前記車を充電する充電電流の上限を規定する。一実施例において、前記充電電力プログラムモジュールは、バッテリの劣化を評価することができるように、充電電流の履歴を記録する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記充電器は、以下を特徴とする。前記電力コンバータは、前記給電部が配電変圧器から引き込んだ電力を測定するための給電電力センサと、前記引き込み電力の値を受け取るための入力、及び、前記給電部の引き込み電力に予測される最大増加の値を供給する出力を有する電力引込み増加予測モジュールと、を備え、前記電力コンバータは、前記引き込み電力に予測される最大増加が発生した場合には、当該電力コンバータが出力する電流レベルを制限して、前記給電部の引き込み電力が所定の制限を超えることを防止するよう構成されており、また、負荷制限スイッチをさらに備える。前記引込み電力増加予測モジュールは、前記負荷制限スイッチに接続されており、前記引き込み電力に近々に予測される最大増加によって前記所定の制限を超過するリスクがあるときは、前記負荷制限スイッチに接続可能な少なくとも1つのシフト可能な負荷を一時的に切断し、前記引込み電力増加予測モジュールは、前記所定の制限を超過する近々のリスクが回避されたと判定すると、前記シフト可能な負荷を再接続するよう構成されている。
【0032】
本開示では、本明細書及び請求の範囲に記載のシステム、方法、及び、より広範には技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の実施例は、下記に示す添付図面を参照することで、理解が促進されよう。
【0034】
図1】家庭用EV充電システムであって、柱上変圧器と、負荷センサ及びメインサーキットブレーカパネルを備える住宅用給電部と、上記パネルと充電器をつなぐ240VのAC電力線と、上記充電器と電気自動車(EV)をつなぐ充電ケーブルを含むとともに、EVと上記充電器との間にCANバス接続が設けられたシステムの物理的な設置を示す概略図である。
図2A】5レベル・トポロジー回路を有するとともに整流器モードで動作する、特定の実施態様例のバッテリ充電コンバータの回路図である。
図2B図2Aのバッテリ充電器の5レベル・トポロジー回路の回路図であって、「状態2」のスイッチング構成における接続状態を示している。
図2C図2Aのバッテリ充電器の5レベル・トポロジー回路の回路図であって、「状態3」のスイッチング構成における接続状態を示している。
図2D】特定の実施態様例による一方向/整流充電器の5レベル・トポロジー回路の回路図である。
図2E】5レベル・トポロジー回路を有するとともにインバータモードで動作する、一実施形態のバッテリ充電コンバータの回路図である。
図3A】整流器モードで動作する図1のバッテリ充電コンバータの電圧バランス制御機能を有するモジュレータのブロック図である。
図3B図3Aのモジュレータで用いられる4キャリアパルス幅変調方式を示す信号グラフである。
図3C】整流器モードで動作する図1のバッテリ充電コンバータにおけるコントローラの要素を示す回路図である。
図3D】インバータモードで動作する図2Eのバッテリ充電コンバータにおけるコントローラの要素を示す回路図である。
図3E】電圧フィードバック及び電流フィードバックの両方を用いてそれぞれ異なる状態を示す8つの信号を供給するモジュレータ及び状態選択回路の両方の論理素子を示す。
図4】整流器モードで動作する図1のバッテリ充電コンバータ1を示すブロック図であり、コントローラ回路を含む。
図5図1のバッテリ充電コンバータが1kWの整流器モードで動作した結果である安定した状態を示す信号グラフである。
図6】電力アナライザのスクリーンショットであり、整流器モードで動作する図1のバッテリ充電コンバータについて電力アナライザが測定したいくつかのパラメータを示している。
図7】整流器モードで動作する図1のバッテリ充電コンバータについて、DC負荷が50%変化する変化Iの間の性能を示す信号グラフである。
図8A】モジュラーコンバータバッテリ充電システムを示すブロック図である。
図8B】ACとモジュラーコンバータバッテリ充電システムとの両方を備える充電器を示すブロック図である。
図8C】バックプレーンに接続されたスイッチを有し、AC出力を供給する充電器の実施形態を示すブロック図である。
図8D図8Cのスイッチをモジュラーコンバータバッテリ充電システムに置き換えた実施形態を示すブロック図である。
図9】充電電力量コントローラを示すブロック図である。
図10】一実施形態による電力コンバータモジュールを示す概略図である。
図11】一実施形態によるAC充電モジュールを示す概略図である。
図12】可搬型EV充電システムであって、充電器と電気自動車(EV)をつなぐ充電ケーブルを含むとともに、EVと充電器との間にバッテリ整流ユニットが設けられたシステムの物理的な設置を示す概略図である。
図13図12の可搬型EV充電システムを示すブロック図である。
図14A】特定の実施態様例によるレセプタを有する可搬型EV充電システムを格納するためのコンポーネントを示す概略図である。
図14B】特定の実施態様例によるレセプタを有する可搬型EV充電システムを格納するためのコンポーネントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」、又は、これに類する文言は、当該実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は、特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書に用いる「一実施形態において」、「実施形態において」、又は、これに類する文言は、すべてが同一の実施形態に言及するとは限らない。
【0036】
加えて、本発明について記載した特徴、構造、又は、性質は、任意の態様で1つ以上の他の実施形態と組み合わせることが可能である。なお、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変形や変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、請求の範囲やその均等範囲に含まれる変形や変更を包含することを意図している。以下に、本発明の好ましい実施形態の詳細を説明する。
【0037】
本出願において、「レベル2のEV充電器」とは、単相ACのEV充電器を指す用語であり、「レベル3のEV充電器」とは、単相DCのEV充電器を指す用語である。
【0038】
図1は、柱上変圧器から3線式単相の主電源電力(split single phase mains power)が配電される実施形態の物理的な状況を示しており、これは、北米で最も一般的な配電形態である。変圧器は、配電線から、通常14.4kV又は25kVの単相電力を受電する。変圧器は、また、3線式単相のAC240Vで送られてくる約50kVAから167kVAの電力を処理して、少数の家庭、即ち、給電部に配電することができる。各給電部は、一般的には、AC240Vで100Aから200Aの間の電力、つまり、約24kVAから48kVA(1kVAは、1kWに相当するというのが一般的な見方である)の電力を処理するよう構成されている。
【0039】
なお、実施形態は、3線式単相のAC240Vの電力システムに限定されるものではなく、本開示の実施形態は、家庭や企業の給電部に配電される任意の既存のAC電圧の単相を用いる電力ネットワークにも適用可能である。
【0040】
給電部は、一般的に、使用量メータと、総許容負荷(例えば、100A又は200A)を定格とするメインブレーカと、3線式単相AC240V入力からAC240V又はAC120Vの受電が可能な家庭用回路の各々に対応するサーキットブレーカを有するパネルと、を備える。ほとんどのサーキットブレーカの容量は、15Aと30Aの間であるが、これより小さい容量(例えば、10A)のものや、大型の電化製品用に、例えば40Aなどの大きな容量のものも含まれる。国によっては、給電部の容量が、例えば40A~60Aと小さい場合があり、また、家庭用のすべての回路がAC240Vである国では、電力は3線式単相ではなく、通常の2線式単相AC240Vの電力が使用される(使用される電圧レベルについては、約100Vから250Vの間でばらつきがある)。
【0041】
図1に示すように、充電器は、メインパネルのサーキットブレーカに、例えば40Aから80Aなどより大きな定格電流のブレーカを介して接続されている。ただし、本開示の充電器は、必要であれば100Aを超える電力を消費することができる。充電器に特定のサーキットブレーカが必要か否かは、電気法規によって定められている。充電器をパネルにつなぐケーブルは、そのような大電流に適した定格に設定されている。電力パネルとの接続は、固定配線による直接接続でもよいし、或いは、高圧用ソケットを設けて電気パネルに接続してもよい。この場合は、オーブンや衣類乾燥機などの電化製品に用いるようなケーブルとプラグによって、充電器をパネルに接続することができる。図示の充電器は、充電器を含めたパネル全体が引き込む負荷を感知する1つの負荷センサに接続されている。充電ケーブルは、当業界で従来から知られているプラグ付き充電ケーブルであってもよい。
【0042】
図2Aは、特定の実施態様例よる電気自動車用バッテリ充電コンバータ100を示す。この回路は、5レベルの充填Uセルトポロジ(5-level Packed U-Cell topology)を特徴とし、力率補正(power factor correction)機能を備える能動整流器を構成する。当該充電器には、他の種類のコンバータに優る注目すべき利点がいくつかあり、また、入力側の電流高調波を低減又は排除しつつ、ACのピークを超える出力を可能にする昇圧モード動作を特徴とする。
【0043】
バッテリ充電コンバータ100は、AC入力105と、このAC入力105に直列接続された誘導性フィルタ110と、5レベル・トポロジー回路(5-level topology circuit)115と、を有する。
【0044】
誘導性フィルタ110は、限定するものではないがこの実施例では、2.5mHのインダクタである。一般的な1~3kWの範囲の電力を(フルパワーからアンダーパワーまでの全充電状態を通じて)供給するには、1mHの線のインダクタを用いると、既存の標準に合致する良好な結果が得られる。電力範囲がこれより高い場合は、インダクタンスが小さくなるので、例えば、高ワット数の(例えば、2kWより高く、好ましくは3kWより高く、より好ましくは約5kWより高い)定格電力には、500μΗのインダクタを誘導性フィルタ110に用いてもよい。本開示の設計によれば、誘導性フィルタ110が小型であることを理由の1つとして、バッテリ充電コンバータ100の全体形状を小型化できるという利点がある。誘導性フィルタ110は、用途、定格電力、使用電圧における高調波(utility voltage harmonics)、スイッチング周波数などに基づいて選択される設計に合わせて変更可能である。そのようなフィルタとしては、単一のインダクタがもっとも単純であるが、代替の実施形態では、誘導性フィルタ110は、インダクタとコンデンサを組み合わせてもよく、例えば、インダクタ(例えば、2mH)を、接地されたコンデンサ(例えば、30μF)に接続したものでもよい。フィルタの選択は、設計全体の大きさと損失に影響する要素である。フィルタが大きいほど、設計全体のサイズが大きくなり、損失も概ね大きくなる。
【0045】
5レベル回路は、高圧コンデンサ120と、少なくとも1つの低圧コンデンサ125と、第1端子135と高圧コンデンサ120の両端145a、145bとの間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチ130a、130bと、高圧コンデンサ120の両端145a、145bと低圧コンデンサ125の両端155a、155bとの間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチ(intermediate low voltage power switch)140a、140bと、第2入力端子160と低圧コンデンサ125の両端155a、155bとの間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチ(terminal low voltage power switch)150a、150bと、を含む。
【0046】
これらのコンデンサは、使用時の高圧コンデンサ120の電圧が、低圧コンデンサ125の電圧よりも高くなるので、このように呼ばれる。特定の実施例では、高圧コンデンサ120の電圧Voは、低圧コンデンサ125の電圧Vcの約2倍である。本実施例では、高圧コンデンサ120と低圧コンデンサ125とは、別個のデバイスであって、高圧コンデンサ120の容量は2mFであり、低圧コンデンサの容量は50μFである。一般的な1~3kWの範囲の電力を(フルパワーからアンダーパワーまでの全充電状態を通じて)供給するには、2mFのコンデンサを高圧コンデンサ120とし、100μFのコンデンサを低圧コンデンサ125として組み合わせると、既存の標準に合致する良好な結果が得られる。この構成は、電圧バランス制御(voltage balancing)のためのサンプリング時間を20μsとすると、上手く機能することがわかっている。5kWの電力デバイスには、4mFのコンデンサを高圧コンデンサ120とし、200μFのコンデンサを低圧コンデンサ125とする組み合わせが適切である。ただし、より小さい容量のコンデンサを使用することも可能であり、このためには、電圧バランス制御のサンプリング速度を上げて、電圧バランス制御のための演算をより正確に行えばよい。これは、より高速なマイクロプロセッサを用いることで実現することができる。各コンデンサは、電解コンデンサでも、フィルムコンデンサでもよいが、本実施例では、負荷に接続されていない低圧コンデンサ125には、寿命の長いフィルムコンデンサを用いる。高圧コンデンサ120の方が寿命が短いので、回路の故障の原因になることが多い。このため、図10に示す実施形態では、高圧コンデンサは、交換可能なコンポーネントとして構成されている。この詳細については、図10を参照して説明する。
【0047】
当然ながら、必要な要件を超えないコンデンサを使用するのが経済的であるが、同じコンデンサを高圧コンデンサ120と低圧コンデンサ125に用いても問題はない。ただし、その場合、必要以上に高い仕様のコンデンサを低圧コンデンサ125に用いることになる。
【0048】
中間低圧電力スイッチ140a、140bと終端低圧電力スイッチ150a、150bは、合わせて補助電力スイッチを構成する。コンデンサと同様に、高圧電力スイッチ130a、130b及び低圧電力スイッチは、使用時の電圧が、高圧電力スイッチ130a、130bの方が補助電力スイッチの電圧よりも高くなるので、このように呼ばれる。加えて、本開示の設計によれば、低圧電力スイッチは、高周波電力スイッチであり、高圧電力スイッチ130a、130bは、低周波電力スイッチである。繰り返しになるが、これらのスイッチは、使用時に、高周波電力スイッチが低周波電力スイッチより高いも周波数で操作/スイッチングされるので、このように呼ばれる。実際には、高周波スイッチのスイッチングの最高周波数、及び、高圧スイッチに印加される最高電圧に適していれば、すべて同じスイッチを用いることも可能である。ただし、それぞれの用途に適したスイッチを用いることが、コスト削減のため、また、場合によってはサイズや重量の削減のために望ましい。これらのスイッチは、すべてFET、JFET、IGBT及びMOSFETなどの種類であってもよい。
【0049】
5レベル回路115の低圧コンデンサ125は、補助コンデンサであるとみなすことができ、補助電力スイッチと合わせて、5レベル回路115の補助回路116を構成する。なお、代替の実施形態では、補助回路116にさらに補助コンデンサ及びスイッチ対を追加してもよい。
【0050】
5レベル回路115のスイッチング状態には、冗長性のある(redundant)状態が含まれており、これにより補助コンデンサ電圧のバランス制御を促進できることが調査によって明らかになっている。コンデンサ電圧のバランス制御を行うと、整流器の入力において5つの電圧レベルを生成することができ、電流の高調波成分に直接に影響する電圧高調波を低減することができる。また、出力端子の電圧は、調整されてDC負荷に供給される。ここで、実験結果を記載して、本提案の整流器が単位力率(unity power factor)で動作し、商用電源から引き込むAC電流の高調波を低減するという動的性能を示す。
【0051】
図2Aに示すように、整流器モードで動作する5レベル回路115は、6つのスイッチだけで、5つの電圧レベルを生成する。この構成は、冗長性のあるスイッチング状態を有用な特徴としており、これによりDCリンク間の電圧のバランス制御を促進することができる。本開示が提案する5レベル整流器は、昇圧モードで動作するので、単位力率で動作するとともに、入力AC電流における高調波を排除することができる。5レベル整流器による5つのレベルの電圧波形のTHDが低いことは、線電流高調波(line current harmonics)に直接に影響するので、2レベル整流器の誘導フィルタよりも小さい誘導フィルタを利用して、製品を小型化することが可能になる。冗長性のあるスイッチング状態だけで補助DCコンデンサ電圧のバランス制御が行えるので、5レベル整流器の電圧/電流は、単一のDC出力端子を有する全波整流器と同様に、カスケード型PIコントローラによって調整することができる。
【0052】
次に、5レベル整流器の構成とスイッチング状態について説明する。ここでは、電圧バランス制御をベースとしたスイッチング方式を提示する。本記載の設計に関し、負荷の変更、AC電源の変動など様々な状況で実用試験を行った。試験の結果、整流器モードのバッテリ充電コンバータ100は、良好な動的性能を示した。
【0053】
5レベル回路115は、2つのDCリンクを有する。メインDCリンクは、調整された電圧をDC負荷に供給する高圧コンデンサ120を含む。ここでは、高圧コンデンサ120の電圧をVoとする。もう一つのDCリンクは、補助コンデンサ(低圧コンデンサ125)を含む。ここでは、低圧コンデンサ125の電圧をVcとする。Vcは、電圧振幅がメイン端子(Vo)の電圧振幅の半分であり、第1端子及び第2端子間に整流器入力電圧(Vin)として、5レベルの疑似正弦波(5-level quasi-sine wave)を形成するのに用いられる。したがって、Vc=E、Vo=2Eであり、5つの電圧レベルは、0、±E、±2Eである。
【0054】
なお、昇圧モードで動作するということは、DC出力電圧が、AC入力のピーク値より高いことを意味する。本実施例では、以下のようになる。
【数1】
【0055】
系統ACのピーク値に基づいて、DC電圧は、200Vに選択された。ここで、Vcは、Voの半分なので、以下の関係が得られる。
【数2】
【0056】
このため、出力端子電圧Voは、200Vに調整されてDC負荷に供給される。この実施例では、DC負荷は、EV用バッテリバンクである。加えて、補助コンデンサ電圧Vcは、Vinとして5レベルの電圧波形を生成する目的で、100Vでバランス制御される。
【0057】
上述のように選択された電圧に基づいて、2つの高圧電力スイッチ130a、130bは、200Vの電圧に耐えるよう選択されている。補助電力スイッチには、高圧電力スイッチ130a、130bの電圧の約半分、つまり、この実施例では100Vしか印加されない。
【0058】
表1に、5レベル回路115のスイッチング状態を示す。この実施例では、高圧電力スイッチ130a、130bの対と、中間低圧電力スイッチ140a、140bの対と、終端低圧電力スイッチ150a、150bの対を含み、これら各スイッチ対において、各スイッチは、互いに相補的に動作し、つまり、一方が開けば、他方が閉じ、またその逆になる。
【表1】
【0059】
各スイッチ構成に基づいてコンバータを流れる電流の経路が形成されるとともに、入力側に電圧レベルが生じ、この結果、5段階のレベルの電圧波形が形成されることが分かる。波形が滑らかであれば、全高調波ひずみ(THD)は低く、引き込み電流の高調波成分にも直接に影響する(電圧波形に高調波が含まれていれば、電流波形にも高調波が引き継がれる。電圧波形に含まれる高調波が小さければ、電流波形における高調波も小さくなる)。THDの量が必然的に削減されれば、AC線に設けるフィルタを小さくしても、2レベルコンバータでは一般的な大きなフィルタと比較して許容可能な性能を得ることができる。
【0060】
表1から分かるように、高圧電力スイッチ130a、130は、実際のところ、1周期あたり2回スイッチングされただけである。ただし、補助電力スイッチのスイッチングの頻度はこれよりずっと高く、例えば、重複していない次の状態(例えば、状態4)に遷移する前に、冗長性のある状態(例えば、状態2及び状態3)の間でスイッチングが複数回行われている。特定の実施形態では、低圧電力スイッチのスイッチング周波数は高く、少なくとも1kHz以上であって、例えば10kHzよりも高い。この特定の実施例では、スイッチング周波数は、例えば48kHzである。
【0061】
次に、本バッテリ充電整流器100の電圧バランス制御について説明する。表1から分かるように、スイッチング状態には、いくつか重複がある。つまり、例えば、状態2と状態3、又は、状態6と状態7のように、結果として同じVinの電圧になるスイッチング状態が含まれる。メイン出力は、Voであって、外部PIコントローラによって制御されるので、冗長性のあるスイッチング状態があることで、いくつかの利点が得られる。冗長性のあるスイッチング状態による利点の1つとして、Voの電圧の誤差を小さくして、外部コントローラの負担を軽減できることがある。加えて、補助コンデンサ電圧Vcのバランス制御を行うことにより、THDの小さい疑似正弦波を生成するために、5つの均一な電圧レベル(5 identical voltage levels)を供給することができる。
【0062】
図2B及び図2Cは、冗長性のある状態2及び状態3にそれぞれ対応する電流経路205、210を示しており、両DCリンクの電圧バランス制御に対する冗長スイッチング状態の効果がより明確に示されている。DCリンクの極性は、図示の通りであると仮定し、電流符号の通りに、充電又は放電することができる。状態2では、電流がプラスであると仮定すると、高圧コンデンサ120が充電され、極性が逆になる低圧コンデンサ125が放電される。よって、Voは増加し、Vcは減少する。これに対し、状態3では、低圧コンデンサ125が、状態3でプラスになる電流によって充電される。なお、電流の符号がマイナスの場合には、これらの状態は、逆に作用する。また、AC源に接続されていないときは、負荷の放電により、Voは常に減少する。
【0063】
表2は、各スイッチング状態が高圧コンデンサ120及び低圧コンデンサ125に与える効果を示しており、バランス制御の設計に有用な情報を得ることができる。
【表2】
【0064】
本提案のコンバータは、電力ネットワークに接続されており、対応するコントローラは、既に電流センサを含んでいるので、センサの追加も、それにともなう追加のコストも不要である。同じ線電流センサのフィードバック信号を、そのまま電圧バランス制御にも利用可能である。2つの電圧センサを、DC電圧フィードバックとして利用可能であり、スイッチング方式としては、表2にリストした電圧の効果によって操作されるマルチキャリアPWMが含まれる。このスイッチング方式によれば、冗長性のあるスイッチング状態が、電流及び電圧センサからのフィードバックに基づいて選択される。
【0065】
図2Dに示すように、実施形態によっては、高圧電力スイッチ130a、130bを2つのダイオード132a、132bに置き換えることで、AC電圧からDCへの変換のみを行う単方向充電器として5レベル単方向整流器を構成してもよい。当業者には理解されるように、5レベル単方向整流器を採用しても、本発明の機能には影響はなく、本明細書に記載のすべての実施形態の5レベル回路の代替構成として利用可能である。
【0066】
実施形態によっては、5レベル回路は、双方向に動作可能である。つまり、当該回路は、図2Aに示すような整流器モードでは、電圧/電流をACからDCに変換することができ、図2Eに示すようなインバータモードでは、DCからACに変換することができる。整流器モードで動作する場合、本発明はDC出力を有する。
【0067】
インバータモードでは、高圧コンデンサ(Vo)は、例えば、絶縁DC源、バッテリ、又はソーラパネルなどのDC源に接続されており、5レベル回路は、このようなDC入力からAC電圧/電流を生成することができる。AC電流は、電力ネットワーク接続モードの動作としてネットワークに供給したり、或いは、電源として利用して通常のAC負荷に供給したりすることができる。インバータモードは、車両から電力系統に電力を供給するVehicle-to-Gridにおいて使用して、系統電力のピーク時の負荷を負担したり、或いは、停電時に家庭内の重要な負荷に電力を供給することができる。
【0068】
図2Eを参照すると、一実施形態による、インバータモードで動作する5レベル電力コンバータのトポロジー200が示されている。回路には、スイッチング素子だけが接続されており、当該回路おける唯一のノードに相当する第1端子135と第2端子160の間に、AC負荷202が接続されている。第1端子135と第2端子160の間に生成される電圧は、インバータの出力電圧(V)であり、例えば、5レベルのパルス幅変調(PWM)波形である。
【0069】
ここでは、本提案の5レベルインバータを実装するための制御方式の説明においてPWMに言及したが、他の制御方式も利用可能であることは理解されよう。限定するものではないが例えば、選択的高調波除去PWM(Selective Harmonics Elimination PWM)及び最適化高調波階段状波形(Optimized Harmonics Stepped Waveform)が利用可能である。また、位相差PWM(Shift PWM)、純粋正弦波PWM(Sinusoidal Natural PWM)、及び、プログラムPWM(Programmed PWM)などのPWM変調方式も利用可能である。開ループ方式及び閉ループ方式も利用可能である。開ループ方式の例には、空間ベクトル(Space Vector)及びシグマデルタ(Sigma Delta)が含まれる。閉ループ方式の例には、ヒステリシス電流コントローラ(Hysteresis Current Controller)、線形電流コントローラ(Linear Current Controller)、DDB電流コントローラ(DDB Current Controller)、及び、最適化電流コントローラ(Optimized Current Controller)が含まれる。
【0070】
例示的な実施形態では、5レベルインバータ回路200は、スイッチのオン/オフ状態を様々に組み合わせて、5つの異なる出力電圧を生成することができる。6つのスイッチ130a、130b、140a、140b、150a及び150bは、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)を用いて設けられている。BJTの性質上含まれる寄生ダイオードも、トランジスタのバイアスの方向、具体的には、逆バイアスを示すために図示されており、これにより、トランジスタは、短絡することなくスイッチとして機能する。なお、スイッチは、他の手段を用いて設けることも可能である。例えば、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)や集積化ゲート転流型サイリスタ(IGCT)などのサイリスタ、リレー、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT),金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、又は、他の適当な制御可能なスイッチが可能である。
【0071】
回路200は、さらに、閉ループで接続された206及び208などの要素を含み、要素206及び要素208は、それぞれ、スイッチング素子130a、130b、140a、140b、150a及び150bのうちの4つに接続されている。要素206は、例えば、DC源(即ち、バッテリ又はソーラパネルなど)である。これに対し、要素208は、従属電圧源(dependent Voltage source)であり、例えば、コンデンサ(図示)又はコンデンサの組み合わせ(図示せず)などのエネルギー蓄積装置であって、補助電源として用いられる。
【0072】
回路200は、要素208を1つ含んでおり、5レベルインバータを構成するものとして記載されているが、要素208をさらに追加して、インバータの出力の段階レベルをさらに増やすよう構成することもできる。この詳細については後述する。
【0073】
図3Aは、電圧バランス機能を備えるモジュレータ305に組み込んだ電圧バランス制御を示す概略図である。図示のとおり、本実施例では、5レベルPWMを実行するモジュレータ310が使用されている。本実施例では、4キャリアPWM方式を用いて、基準信号320を図3Bに示すように変調する。したがって、基準信号320は、後述するコントローラから供給される。モジュレータ310の出力は、状態選択回路315に供給され、当該回路において、表1及び表2に示したロジックが適用されて、スイッチへの入力として、信号S1、S2、S3と、これら信号を反転させた(NOT)信号S4、S5、S6が生成される。状態選択回路315によれば、迅速な電圧バランス制御をスイッチング方式に組み込んで実現することができ、これにより、小型のコンデンサを補助コンデンサとして適切に使用することが可能になる。図3Cは、使用されるアルゴリズムの概略図を示している。同図は、電圧フィードバックを用いて異なる状態を示す8つの信号を供給するモジュレータ310及び状態選択回路315の両方の論理素子を示している。図3Eは、同じ論理素子を、電流フィードバックと電圧フィードバックの両方が使用される場合について示している。
【0074】
図3Dは、代替の構成として、フィードバックを一切使用することなく異なる状態を示す5つの信号を供給するモジュレータ310及び状態選択回路315の両方の論理素子を示している。
【0075】
これらの信号は、パルス発生器モジュール325によって、スイッチへのパルス出力を生成するために用いられる。一実施形態では、パルス発生器325は、マイクロコントローラにプログラム可能なスイッチテーブル(switch table)でもよい。
【0076】
なお、当業者であれば、デジタルスイッチング信号がゲートドライバを経由してからスイッチに到達することは理解されよう。
【0077】
図3Aでは、電圧バランス部において電圧フィードバックが用いられていることが示されている。ただし、電圧バランス部は、電圧フィードバックを用いても良いし、電流フィードバックを用いてもよい。両方のフィードバックを用いる場合は、コンデンサ電圧のバランス制御をより確実に行うことができる。
【0078】
使用可能な1つのアルゴリズムの概略図を図3Eに示している。同図は、電圧フィードバック及び電流フィードバックを用いて異なる状態を示す8つの信号を供給するモジュレータ310及び状態選択回路315の両方の論理素子を示している。この構成によっても、比較的良好な性能が得られる。
【0079】
一実施形態では、ブロック315は、最適なスイッチング状態の番号(表1を参照)を選択して、モジュール325に通知する。状態番号に基づいて、スイッチングパルス(S1からS6)が生成される。例えば、ブロック315が状態1を選択すれば、表1に基づいて、S1、S5及びS6がオンにされ、これと相補的にS2,S3及びS4がオフにされる。
【0080】
一実施形態では、図4の基準信号320は、図3のVrefであるとみなすことができる。
システムのコントローラ410としては、カスケード型比例積分(PI)コントローラを採用することができる。以下に、このコントローラについて説明する。上述したように、本実施例の構成によれば、補助コンデンサ電圧は、スイッチング状態によってバランス制御されるので、単一のDC電源インバータとして利用することが可能である。本提案のトポロジーのいくつかは、2つのDCコンデンサを用いて整流を行うためのものであるが、本実施形態では、補助コンデンサの電圧は、提案のスイッチング方式によって制御されるので、電圧調整器を追加する必要がない。よって、外部電圧コントローラを1つ用いるだけで、DC端子の出力を所望のレベルに固定することができる。なお、本実施例では、200Vが所望のレベルである。この結果、単純なカスケード型PIコントローラを用いて、DC出力電圧を調整することができるだけでなく、入力電流を制御して系統電圧と同期させて、整流器の力率補正(PFC)処理を保証することができる。コントローラ410は、EVに搭載されているようなバッテリ管理システム(BMS)からの入力に応じて、Vo及びisを調整する。
【0081】
本開示のいくつかの実施例では、図4に示すコントローラ(ブロック405)は、電流ループ及び電圧ループを含む。電圧ループは、C1電圧を基準電圧に固定する役割を有する。比例積分(PI)コントローラは、電圧誤差を最小化して、その出力を電流基準値として電流ループに供給する。電流ループは、系統電圧(vs)をサンプリングし、vsとisの位相ずれを調整するために、電流誤差を別のPIコントローラに送る。(PFCと呼ばれる力率補正では、位相ずれが0度であることが望ましいが、電力ネットワークとの無効電力交換については、任意の値に調整することが可能である。)2つのループが直列であるので、これは、線形カスケード型PIコントローラと呼ばれる。コントローラの出力は、基準信号(符号320)であって、第2コンデンサ電圧(C2)のバランス制御のため、モジュレータ305に送られて、冗長性のある状態に基づいてスイッチングパルスが生成される。
【0082】
なお、当業者であれば理解できるように、本開示では、他の種類のコントローラも利用可能であり、例えば、非線形のもの、モデル予測制御、スライディングモード制御、又は、当業界で公知のその他の適当なコントローラも利用可能である。
【0083】
コントローラは、プロセッサベースのマイクロコントローラに、センサからの入力を利用して、本明細書に記載のロジックに従ったゲート制御信号をデジタルシステムに出力する制御ソフトウェアを実装することで構成してもよい。また、コントローラは、能動素子及び受動素子を用いたアナログ回路を含んでもよい。アナログ回路は、システム電圧及び電流のフィードバックの一部を取り込んで、モジュレータに基準信号を送出してもよい。
【0084】
図3Dは、本開示のいくつかの実施形態に用いられるアルゴリズムを示す概略図であり、状態選択回路315は、センサを用いない(センサレス)構成で、異なる状態を表す8つの信号を供給する。さらに、図3Dは、本発明の一実施形態に用いられるスイッチング部340について、充電コンバータがインバータモードで動作するときの論理素子を示す。なお、当業者であれば、5レベル構成の補助コンデンサ(低圧コンデンサ)についてのスイッチングパルスの生成及び電圧バランス制御は、コンバータが整流器モードで動作する場合と、インバータモードで動作する場合の両方に適用可能であって、一方のモードの動作のみに限定されないことは理解されよう。
【0085】
図10を参照すれば、コントローラ410が、BMSによって要求された所望のDC出力電圧に応じて、DC-DCのバックコンバータ又はブーストコンバータも制御することが理解されよう。図10では、これは、単純なバックコンバータ又はブーストコンバータであって、センサで測定されたDC出力電圧のフィードバックを用いて、スイッチS7によって制御される。
【0086】
また、当業者であれば、当業界で公知の任意の種類のバックコンバータ又はブーストコンバータ、或いは、バック・ブーストコンバータのいずれも利用可能であって、本発明の実施には影響しないことは理解されよう。2つの重要なトポロジーは、バック・ブーストコンバータと呼ばれるものであり、出力電圧として、入力電圧よりも振幅が(絶対値において)かなり大きい電圧から略ゼロの電圧までの範囲の電圧を生成することができる。
【0087】
第1のトポロジーは、入力と反対の極性の出力電圧を生成する反転トポロジーである。これは、スイッチング電源に相当し、回路トポロジーは、ブーストコンバータ及びバックコンバータと類似する。出力電圧は、スイッチングトランジスタのデューティサイクルに基づいて調整可能である。
【0088】
第2のトポロジーは、バック(降圧)コンバータとブースト(昇圧)コンバータの組み合わせであって、出力電圧の極性は入力と同じであるが、電圧は、入力よりも低くしたり、高くしたりすることができる。このような、非反転バック・ブーストコンバータは、ダイオードの代わりにスイッチを用いることで、単一のインダクタをバックインダクタモードとブーストインダクタモードの両方に用いることができる。
【0089】
図4に示す実施例では、コントローラ410は、Vo電圧を、入力として受けっとった基準レベルVrefに合わせて調整するとともに、系統電流isを制御して系統電流の高調波を除去又は低減し、また、系統電流の位相を系統電圧と合わせるようにし、これにより、力率1又はそれに近い力率(例えば、PF=99.99%)動作とする。例示的な実施態様のコントローラ410の概略図を図4に示す。同図において、センサからの電流及び/又は電圧は、コントローラ410により必要に応じて(例えば、約20マイクロ秒毎に)サンプリングされる。
【0090】
電圧調整器は、基準電流(is*)の振幅を調整することで、Voの誤差を最小化するように動作する。本実施例では、系統電圧の単位サンプルを取り込んで基準電流の形状を生成することで、PFCモードを保証する。コントローラの出力320は、標準的な4キャリアPWM方式で変調され、所望のパルスとして送出される。
【0091】
次に、バッテリ充電整流器100について行った実験結果を記載する。一実施例では、炭化ケイ素(SiC)系の5レベルコンバータを実際に試験した。能動スイッチには、耐圧1.2KV、容量40AのSiC製MOSFETタイプの6つSCT2080KEを用いた。本提案の電圧バランス制御は、スイッチング方式に組み込み、カスケード型コントローラは、dSpace1103で実装した。これにより、スイッチングパルスを5レベルスイッチに送出した。試験に用いたシステムパラメータを表3に示す。
【表3】
【0092】
代替の実施形態では、AC入力(系統)電圧はRMSで約240Vでもよく、DC負荷は、350Vより大きくてもよく、これは、本明細書に記載の昇圧モード整流により供給される。
【0093】
1kWでは、図5に示すように、安定した状態が観察された。図示のとおり、DC端子の出力電圧3は、200Vに調整されており(曲線1であって、0V2として示す基準点は、縦軸上の点1に対応する。また、グラフの下側に示すように、50.0Vを一単位とする目盛りが4つあるので、全体で200Vである。)、電圧リップルは、許容可能なレベルである10%未満であった。加えて、電圧Vcのバランス制御の効果により、Vinは、0、±100、±200Vの5つの均一な電圧レベルで生成され、高調波汚染も2レベルの電圧波形よりも小さかった。加えて、バッテリ充電整流器100のPFC動作は、入力電圧波形vs(曲線3であって、0Vとして示す基準点は、縦軸上の点4に対応する。また、グラフの下部に示すように、それぞれが100.0Vを表す。)及び入力電流波形is(曲線4であって、0A2として示す基準点は、縦軸上の点4に対応する。また、グラフの下側に示すように、それぞれが10.0Aを表す)を見れば把握することができる。最終的には、負荷電流il(曲線2であって、0A2として示す基準点は、縦軸上の点2に対応する。また、図の下側に示すように、それぞれが10.0Aを表す)は、ほぼ5Aと測定された。このことは、1kW動作システムの効果を示すものである。
【0094】
図6は、AEMC(登録商標)電力アナライザにより測定された、いくつかの他のパラメータを示している。当然理解されるように、バッテリ充電整流器100は、1kWで試験され、力率は、最高力率(単位力率1に近い)であった。これにより、無効電力が大幅に低減され、線電流を系統電圧に同期させるコントローラが良好に機能することが保証される。加えて、5レベル整流器により生成されるマルチレベル電圧波形の高調波汚染が小さいので、電流のTHDも低く抑えることができる(IEEE519及びIEC61000の規格では、線電流のTHDは、5%未満であることが求められる)。
【0095】
本試験において、コントローラの動的性能を試験する目的で、最終的に負荷の大きさを50%(38Ωから75Ωに)意図的に変化させた。図7に示すように、負荷電流は、振幅が最初のほぼ半分まで減少した。この結果、負荷に供給されるエネルギー量が変化するので、Vo(曲線1であって、0V2として示す基準点は、縦軸上の点1に対応する。また、グラフの下側に示すように、それぞれの目盛は50.0Vを表す。)に変動がみられたが、コントローラ及び電圧バランス制御によって十分に安定化されて、予期せぬオーバーシュートも、アンダーシュートも発生しなかった。加えて、AC入力電流は、安定モードに移行する前の段階で振幅が変化している間も、系統電圧との同期が維持さていた。また、この移行期間中、電流高調波も除去されていたことが理解されよう。換言すると、DC負荷に50%の減少(負荷電流il(曲線2)が50%まで減少:基準点0A2は、縦軸上の点2に相当する)が観察されている間も、DC電圧は、所望のレベルに制御される。
【0096】
バッテリ充電整流器100の実際の結果から分かるように、変調プロセスに組み込んだコントローラ及び電圧バランス制御は、良好な動的性能を示した。補助コンデンサ電圧は、電圧リップルを低く抑えつつ所望のレベルに調節され、これは、部分的には、高速かつ正確な電圧バランス制御を行うことで、高調波成分の小さい5レベルの疑似正弦波が整流器の入力として生成されることで得られる効果である。そのようなマルチレベル波形であれば、より小型のフィルタを用いても線電流高調波を除去することができる。したがって、バッテリ充電整流器100は、EV用のトラクションシステム(traction system)又はバッテリ充電器に用いる産業用整流器に適しており、有力な選択肢である。
【0097】
電圧のバランス制御は、スイッチングパターンに組み込んで補助コンデンサ電圧を調整することで、整流器の入力として、5レベルの均一な電圧レベルを生成して、高調波成分の少ない5レベルの滑らかな電圧波形を形成するよう設計されている。本提案の整流器には、標準的なカスケード型PIコントローラが実装されているが、これは、部分的には、DC端子を1つのみ有しており、出力側に分割コンデンサを備えないことにより可能である。電圧バランス制御とコントローラを実装したバッテリ充電整流器100について、安定状態と負荷を変化させた状態とで実際にテストした結果、良好な動的性能が証明された。よって、PFC整流器の市場でも有望な製品であろう。
【0098】
7レベル/3コンデンサを含む構成とするには、スイッチを2つ、及び、低圧コンデンサを1つ追加する必要がある。変調ブロックも、6つの搬送波に対応するように変更する。コンデンサの充放電と電圧調整のためのスイッチング状態が増えるので、電圧バランス部も変更する必要がある。
【0099】
図8Aに示すように、バッテリ充電器には、バッテリ充電整流器100の他にも、同じ構成のバッテリ充電整流器回路が並列に含まれており、これらバッテリ充電整流器は、それぞれ並列に動作して、負荷にDC電力を供給する。このため、バッテリ充電器は、複数のソケットが設けられたコネクタバックプレーンを有する筐体を備える。これらソケットは、本明細書に記載された種類のバッテリ充電整流器を構成する複数のモジュールを装着可能に構成されている。なお、図8Aに示すように、コントローラは共通であってもよい。このようなモジュール式の構成の利点として、バックプレーンの最初の設置は、専門の電気技師のサービスによって行う場合もあるが、モジュール100の追加や交換については、エンドユーザが必要に応じて行うことができる。記載のモジュール式の構成では、モジュール100の数は特に限定されない。ただし、出願人の知見によれば、上述の整流器設計を用いる場合は特に、5kW整流器モジュールが効率的であり、そのような整流器を6つ用いると、全体として約30kWのDC充電電力を供給することができる。この電力量は、バッテリの高速充電に適しており、しかも、ほとんどの従来の単相給電部に許容された電力容量の範囲内で実現可能である。
【0100】
実際の実装段階では、バッテリ充電整流器100を含むバッテリ充電器は、ユーザにより交換可能なDC車両充電ケーブル及び充電プラグを含んでもよい。例えば、標準的なプラグ/ソケット(即ち、SAE J1772、ChaDeMoほか)を使用可能な互換型のものでもよい。
【0101】
図8Aは、バッテリ及び充電コントローラ(バッテリマネジメントシステム、即ちBMSとしても知られる)810が、充電ケーブル815でバッテリ充電コントローラインターフェース820及びコントローラ830にどのように接続されているかも示している。充電ケーブル815は、インターフェース820にデータ経路を提供するとともに、バックプレーン840に接続された高電圧DC導体になる。インターフェース820は、EVのDC充電器の当業界で公知のインターフェースであってもよく、充電用の電圧及び/又は電流のパラメータに関する情報を示すデータ又は信号をBMSから受け取る。インターフェース820は、コントローラ830を提供するコンピュータに対応付けることができる。コンピュータ830は、1つ以上の整流器回路100用のVrefの値をバックプレーン840に提供することができる。コンピュータ830は、回路100の一部である場合も、或いは、バックプレーン840の一部であるセンサを用いる場合もあるが、いずれの場合も、バッテリ810に供給された電流を受け取ることができる。モジュール100におけるデータインターフェース、AC入力、及び、DC出力の接続を図10に示し、以下に詳細を説明する。コンピュータ830は、充電制御を管理するためのプログラムメモリを有する任意の適当なプロセッサである。
【0102】
本発明のいくつかの実施態様では、図8Bが示すように、電力受電パネルからのAC電流は、スイッチなどのコネクタに入り、ここでAC電流をバッテリ及び充電制御部に誘導すると、ユーザにレベル2のEVバッテリ用AC充電器が提供され、あるいは、整流器回路に誘導すると、レベル3のEV用DC充電器が提供され、DC出力が供給される。したがって、ユーザは、レベル2のEV用AC充電器、又は、レベル3のEV用DC充電器を選択することができる。
【0103】
図8Cは、バックプレーンがコネクタ又はスイッチを直接に装着するか、あるいは、モジュールコネクタを介して装着することが可能な実施形態を示す。スイッチがバックプレーンに接続されているときは、充電器のAC出力はバッテリに供給されるので、ユーザに、レベル2のEV用AC充電器が提供される。
【0104】
図8Dは、図8Cと同じ実施形態を示すが、スイッチがユーザによってモジュールコネクタから物理的に取り外されており、よって、AC出力へのAC電流が遮断されている。そして、スイッチの代わりに、モジュール100などの1つ以上のバッテリ充電整流器が後付けされている。よって、充電器な、レベル3のEV用DC充電器にアップグレードされている。この構成によれば、ユーザは、高速で効率的なレベル3のEV用DC充電器に容易にアップグレード可能であることを前提として、高速で効率的な車両充電は行えないが、全車種に使用可能で比較的安価なレベル2のEV用ACバッテリ充電器を設置することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、図11に示すように、スイッチは、余剰電力防止(surcharge prevention)モジュールを含む分枝200であってもよい。また、この分枝は、整流器分枝100と同様に、バックプレーンに直接に、又は、モジュールコネクタを介して接続される構成でもよい。本実施形態では、ユーザは、分枝200を整流器分枝100と交換する際には、当該分枝を取り外す必要がある。
【0106】
当業者には明らかなように、任意の種類のコネクタをバックプレーンとして使用可能であり、モジュールコネクタは、ユーザによる取り付けプロセスを補助し、簡素化することのみを目的とするものであり、任意の種類のコネクタをバックプレーンとして使用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、スイッチ及びバックプレーンは、単一の要素であってもよく、これによってAC出力を遮断して、電流が整流器回路に送られるようにする機能を実現してもよい。
【0107】
さらに、当業者には明らかなように、上述の説明とは異なるが、コントローラ830及び/又はバッテリ充電コントローラインターフェース820や充電器の他の要素は、整流器分枝100と同様に、装置に後付け可能な付加モジュール又は負荷分枝であってもよい。つまり、元々の充電器は、入力と出力を有する単なるバックプレーンであってもよく、いくつかのモジュールや分枝を追加するだけで、DC充電ステーションにアップグレード可能ある。
【0108】
加えて、当業者には理解できるように、AC出力及びDC出力としては、物理的に別個のコンセント又はケーブルを用いてもよいし、同じものを用いてもよい。いくつかの実施形態では、コンセントは、車両の充電器コントローラと通信可能である。
【0109】
図9は、蓄電バッテリ用のバッテリ充電器を示すブロック図である。給電部は、電力ネットワークのローカル配電変圧器に、センサ及び所定の電流閾値を有するメインブレーカを経由して接続されている。センサは、給電部に引き込まれる電流値を示す。バッテリ充電コントローラインターフェースは、蓄電バッテリと通信して、充電電圧値及び所望の充電電流値を受け取る。整流器回路は、給電部に接続されて単相AC電力を受電するとともに、例えば、DCバック・ブーストコンバータ回路を用いて降圧又は昇圧したDC電圧を出力することができる。バックコンバータは、DC出力の電圧及び電流を規定する制御入力を有する。図10に示すように、コントローラ410は、所望のDC電圧及び電流を出力するようにバック・ブーストコンバータを制御することができる。
【0110】
より広い別の態様では、本開示は、AC入力に接続されて、AC入力からの電力をDCに変換する電力コンバータを提供するものであり、当該電力コンバータは、AC入力のピーク電圧より高い電圧に昇圧された電力を蓄積するための少なくとも1つの高圧コンデンサと整流器回路を備える。当該整流器は、AC入力に直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC入力端子と高圧コンデンサの両端との間に接続された2つのダイオードか2つの高圧スイッチのいずれかと、高圧コンデンサの両端と低圧コンデンサの両端との間に接続された2つの中間低圧電力スイッチと、低圧コンデンサの両端と第2AC入力端子との間に接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を含む。高圧コンデンサの両端には、DC負荷を接続することができる。当該電力コンバータは、さらに、整流器回路における電流及び/又は電圧を感知する少なくとも1つのセンサを有するとともに、2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されたコントローラを含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記コントローラは、整流器回路を昇圧モードで動作させるものであり、高圧コンデンサの電圧は、AC入力のピーク電圧より高く、2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチは、低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、低圧コンデンサは、高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、整流器回路は、5レベルの能動整流器として、AC入力の高調波を低く抑えた状態でDC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。
【0112】
いくつかの実施形態において、上記電力コンバータは、整流回路の代わりに、双方向整流器/インバータ回路を有し、また、整流器とインバータの両方として双方向に機能する1つのコントローラの代わりに、2つのコントローラを有する。上記双方向整流器/インバータ回路は、ACポートに直列接続されたインダクタと、低圧コンデンサと、第1AC端子と高圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの高圧電力スイッチと、高圧コンデンサの両端と低圧コンデンサの両端との間にそれぞれ接続された2つの中間低圧電力スイッチと、低圧コンデンサの両端と第2AC入力端子との間にそれぞれ接続された2つの終端低圧電力スイッチと、を備える。高圧コンデンサの両端には、DC負荷を接続することができる。上記電力コンバータは、整流器モード用の第1コントローラをさらに備え、当該第1コントローラは、双方向整流器/インバータの電流及び/又は電圧を感知するための少なくとも1つのセンサを有するとともに、2つの高圧電力スイッチ、2つの中間低圧電力スイッチ、及び、2つの終端低圧電力スイッチのゲート入力に接続されており、整流器回路を昇圧モードで動作させる。高圧コンデンサの電圧は、AC入力のピーク電圧より高い。2つの高圧電力スイッチは、AC入力の周波数でオンオフ切り替えを行うように制御される。2つの中間低圧電力スイッチ及び2つの終端低圧電力スイッチは、低圧コンデンサの電圧の測定値に応じて、冗長性のあるスイッチング状態でスイッチングされ、これにより、低圧コンデンサは、高圧コンデンサの所望の電圧に対して所定の割合の電圧に維持され、よって、高圧コンデンサは、所望の高電圧に維持され、整流器回路は、5レベルの能動整流器として、AC入力の高調波を低く抑えた状態でDC負荷に給電するとともに、電力を吸収する。上記電力コンバータは、インバータモード用の第2コントローラをさらに備える。当該第2コントローラは、2つの高圧電力スイッチと、2つの中間低圧電力スイッチと、2つの終端低圧電力スイッチとに接続されているとともに、第1制御信号を含む信号波形及び第2制御信号を含む信号波形を生成して、2つの高圧電力スイッチ、2つの中間低圧電力スイッチ、及び、2つの終端低圧電力スイッチに印加するよう構成されており、第1制御信号は、低圧コンデンサをDCポート及びACポートに直列接続させて、低圧コンデンサをDCポートの電圧に比例した所定の値まで充電させる信号であり、第2信号は、低圧コンデンサをDCポートから切断させて、ACポートに直列接続させることで、低圧コンデンサを放電させる信号である。
【0113】
図9において、ネットワークインターフェース902は、例えば、イーサネット、Wi-Fiなどの従来のデータインターフェースであってもよく、コンピュータ830に関連付けられている。ロギングモジュール904、電力量コントローラ906、使用可能電力予測部(available power predictor)908、及び、充電電力プログラムモジュール910は、コンピュータ830のメモリに格納されたソフトウェアによって実装可能であり、コンピュータ830のプロセッサにより実行されると、後述する処理を実現することができる。
【0114】
ロギングモジュールは、センサによって測定された引き込み電流から導出された少なくとも1つのパラメータをメモリに格納している。また、一日の様々な時間帯において整流器回路により引き込まれたすべての電力についても格納している。このパラメータは、充電以外の負荷について、当該時間帯において当該負荷の最大予測増加量を示すものでもよい。1つ以上の家電がオンにされると、負荷が急激に増加する可能性がある。例えば、ヒートポンプやエアコンのモータなどのACモータは、一般的に、始動時には、通常時の電流の少なくとも2倍を必要とする。当然ながら、引き込み電力の増加は、例えば、97%以内など、所望の確率の範囲内に抑えることが可能である。
【0115】
使用可能電力予測算出部は、引き込み電流値及びロギングモジュールのパラメータを受け取り、最大充電負荷の値を所定の給電部最大電力負荷の関数として算出する。給電部の最大負荷の値は、ユーザインターフェース(図示せず)を用いて設定することができる。電力量コントローラは、最大充電負荷の値を受け取り、また、電力管理インターフェースから所望の充電電圧値及び所望の充電電流値を受け取って、整流器回路に制御入力を供給する。
【0116】
一実施形態では、最大予測増加量(greatest probable increase)は、長期の観察データに基づいて決定される。このデータが所得されるまでは、使用可能電力予測部は、より慎重な予測を行い、予測の確度の向上とともに、より積極的な予測を行う。
【0117】
別の実施形態では、電力消費の変動を分析して、主だった家庭用負荷の数と量が特定される。次いで、これらの負荷の挙動パターンが検出される。オンになっていると推定された負荷をオフにするだけで、これらの負荷が総負荷を増加させる可能性を排除できる。ある負荷がオンにされる可能性は、他の負荷の状態、時刻、及び、一年のうちの時期に依存する。例えば、給湯器がオフになっている場合、この給湯器がオンにされる可能性は、水の使用を考えれば、午前7時から午前8時の間の方が、午後11時から午前6時の間よりも高い。また、夏季であれば、暖房用の電気負荷がオンにされる可能性は低いが、冷房がオンにされる可能性は高く、冬季であれば、その逆になる。使用可能電力予測部は、オンにされる負荷の挙動パターン及び電流予測に基づいて、直近に生じうる電力の最大予測増加量を予測することができる。
【0118】
電力量コントローラは、電力の最大予測増加量のリスクを考慮して、充電器が消費可能な電力を決定し、要求された電力が大きすぎる場合には、電力量コントローラは、整流器回路及び/又はDC-DCダウンコンバータを制御して、EVに供給されるDC電力を調整する。
【0119】
さらに、電力量コントローラは、電池の劣化を考慮して充電率を決定することができる。この際、所定の最大充電流値、又は、最大電力値を用いてもよい。また、後述するように、ユーザにより選択された充電優先レベルを参照することも可能である。
【0120】
使用可能電力予測モジュールが、電力容量(受電制限)を超える電力増加が発生する可能性が高いと予測したときは、任意の構成である負荷制限スイッチ(sheddable load switch)を用いて、大きな負荷が電力を引き込むことを防止し、これにより、電力容量を超過することを防止できる。この結果、追加した負荷を遅延させたり、シフトさせたりして、給電部が電力容量を超過してしまうことを防止できる。負荷制限スイッチは、例えば給湯器などの1つ以上の電気負荷と電力パネルとの間に接続された線電圧電力スイッチを含んでもよく、これにより、当該負荷が電力パネルから電流を引き込むことを抑止して、負荷が増加して電力容量を超過してしまうリスクを防ぐことができる。好ましくは、負荷スイッチが電流センサなどのセンサを含んでおり、該当する負荷が現在電流を引き込んでいるかを測定できる構成が望ましい。この構成によれば、電力量コントローラは、対象とされている負荷が現在、電力を引き込んでいるか否かを検知することができる。負荷制限スイッチは、開状態では、遮断された負荷が電力の引き込みを要求しているか否かを検知するセンサを備えることができ、この場合、電力量コントローラは、DC充電電力を低減させた後に、当該負荷を再度接続するか否かを決定してもよい。
【0121】
大電流を引き込む負荷の中には、待ち受け状態で必要とする負荷が、例えば約100ワット未満と小さいものもある。この場合、負荷制限スイッチが開状態の間は、低AC電力を迂回させて、制限可能な負荷に供給してもよい。低AC電力を迂回させる接続の例としては、10ワットから数十ワットの電力を制限可能負荷の電力として供給するよう構成された絶縁トランスがある。該当する負荷がオンにされると、負荷制限スイッチモジュールは、絶縁トランスの負荷側の電力の引き込みを検知して、電力量コントローラに信号を送出して、DC充電電力を減らして、制限可能負荷を再接続してフルレベルのAC電力を許容するのか、或いは、DC充電をそのままの割合で継続するのかを判定させる。DC充電の負荷需要が終了すれは、制限可能負荷の再接続が許可される。
【0122】
図9に示す実施形態は、ユーザがEVの充電を急いでいないときには、ユーザ入力に応じて充電率を低くする充電電力プログラムモジュールを含む。EVは、急速充電可能に構成されているが、本開示の実施形態では、約25kVAの電力での充電も可能である。急速充電は、バッテリの寿命を縮める可能性がある。加えて、充電電力プログラムモジュールを用いれば、充電のタイミング設定を選択することができ、具体的には、充電のタイミングを遅らせたり、及び/又は、時間変動制のエネルギーコスト及び/又は配電網における使用可能電力に合わせて調整したりすることができる。充電コネクタは、例えば、充電優先度、具体的には、バッテリが高い充電率を要求した場合の可変充電率を選択するためのユーザインターフェースを提供することができる。或いは、ネットワークインターフェースを提供して、充電電力プログラムのパラメータを設定するためのリモートユーザインターフェースとして利用できる。
【0123】
いくつかの実施形態では、電力供給パネルから引き込まれるAC電流の供給先を、ユーザがスイッチなどのコネクタを利用してAC出力に変更することができ、このAC出力からAC電流を直接バッテリ・充電コントローラに供給して、整流器回路を迂回することができる。これにより、ユーザは、AC充電モードとDC充電モードの両方を選択肢として与えられる。代替の実施形態では、バッテリ充電器は、整流器回路を備えない構成であるが、整流器回路を後付けで追加可能なバックプレーンを有する。つまり、蓄電バッテリに給電可能なレベル3のEV用DC充電器にアップグレード可能なレベル2のEV用ACバッテリ充電器をユーザに提供することができる。
【0124】
当業者には認識されるように、本開示のバックプレーンは、電力量コントローラ、使用可能電力予測部、ネットワークインターフェース、充電電力プログラムモジュールなどの制御ユニットを内蔵していれば、単純なコネクタによって実現可能であり、或いは、そのような制御ユニットを追加で接続可能なモジュールコネクタを有するバックプレーンによって実現可能である。
【0125】
図10は、図8Aに示すモジュラーシステムにおける1つの「分枝」100を概略的に示す。記載した実施形態では、プリント基板が設けられおり、その一端に沿って、高圧ACコネクタ、高圧DCコネクタ、及び、データインターフェース用のコネクタが設けられている。分枝100は、電力コンバータの電力スイッチを含み、本実施形態では、6つのスイッチS1からS6が5レベル能動整流器に設けられており、1つのスイッチS7がDC-DCの降圧変換又は昇圧変換を行うバック・ブーストコンバータに設けられている。
【0126】
コンデンサ120は、分枝100のプラグを接続するためのソケットを有する小型のモジュールに設けられている。整流器が適切かつ安全に動作するためには、高圧コンデンサ120の性能が重要である。したがって、適時に交換することが推奨される。ソケットは、様々な情報を特定するためにコントローラ410によって読み取り可能な識別回路を含んでもよい。当該回路は、第1に、必要に応じて新たなコンデンサが設置されたか否かを判定するために用いられる。当該回路は、第2に、当該コンデンサが以前に設置されていたことがあるか否かを判定するために用いられる。これは、様々な方法で判定することができる。例えば、コントローラ410は、各コンデンサ120を固有のIDで識別して、その使用を外部データベースに通知する。新たなコンデンサが差し込まれたときに、このデータベースに問い合わせることができる。あるいは、識別回路をコンデンサプラグモジュールに設け、コントローラ410によって読み取り可能な不揮発性メモリに使用情報を格納してもよい。この方法によれば、新たなコンデンサモジュールが分枝100に接続されると、コントローラ410は、コンデンサ120が新品であるか、ある程度使用されたものであるか、又は、有効期限切れのものであるかを判定することができる。有効期限切れのコンデンサ120であれば、コントローラ410は、電力の供給を行わず、コンデンサ120の交換を促す警告を出すことができる。
【0127】
分枝モジュール100の接続としては、図示したような端部において接続する形態ではなく、ケーブルで接続する形態も可能である。コンデンサモジュールのソケットは、図10に示すように分枝100に設けてもよいし、バックプレーンの別の部分(図8A参照)をはじめとする他の部分に設けてもよい。
【0128】
ソケットは、コンデンサプラグモジュールが取り外されているか、取り外すために露出しているかを検出するスイッチを含み、よって、1つ以上の分枝100への電力を遮断すれば、コンデンサモジュール120を安全に取り外し、交換することができる。図10に示す各分枝100は、それぞれがコントローラ410を有しているが、複数の分枝のスイッチを制御する共通のコントローラ410をバックプレーンに設けた構成でもよい。
【0129】
図10に示すセンサブロックは、低圧コンデンサの電圧、DC出力電流、及び、DC出力電圧を測定するように接続されている。必要であれば、他の値も測定することができる。測定された値は、コントローラ410に送られる。
【0130】
図11は、本発明の代替的な実施形態の概略図であって、AC充電分枝1100が過剰電力防止モジュール1102を備える構成が開示されている。AC電流がAC入力から分枝に入力され、過剰電力防止モジュール1102を経由してAC出力から出力される。過剰電力防止モジュールは、さらに、充電コントローラインターフェースと通信可能であり、データポートを用いてEVが必要とするAC出力の電流及び電圧を設定する。
【0131】
図12を参照すると、本発明の一実施形態おいて、可搬型DC充電ユニット1200が提供される。可搬型DC充電ユニットは、AC入力1204及びDC出力1208を含む筐体1202を有し、AC入力は、ケーブル1206を介してAC源1204に接続されており、DC出力は、ケーブル1210を介してEVに接続されている。可搬型DC充電ユニット1200は、1つ以上の5レベル整流器回路を備える。
【0132】
一実施形態では、可搬型DC充電ユニット1200は、図13に示すように、同じ構成の5レベルバッテリ充電整流器回路を複数個、並列に備え、各整流器回路は、並列に動作して、DC電力を供給する。このために、バッテリ充電器の筐体1202は、複数のソケット1304を含むコネクタバックプレーン1302を含み、各ソケットは、記載した種類の5レベルバッテリ整流器回路を構成する各分枝モジュール1306を装着可能に構成されている。
【0133】
このようなモジュラー式の構成によれば、可搬型の充電器に5レベル整流器回路を1つだけ設置した状態で販売し、必要に応じてエンドユーザ側でモジュール1306を追加したり、交換したりすることが可能である。記載のモジュール式の構成におけるモジュール1302の数は、特に限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態では、可搬型充電ユニットは、双方向モード又は一方向モードで動作する。双方向モードでは、可搬型充電器は、インバータとしても、或いは、整流器としても機能する。一方向モードでは、コンバータは、本発明の別の実施形態で先に記載したように、整流器として機能する。
【0135】
一方向モードの5レベル整流器回路であれば、図2Dに示した2つの高圧スイッチの代わりに、2つのダイオードを含む構成が可能である。
【0136】
可搬型充電ユニット1200には、車載型の充電ユニットとは違い、力率が単位力率に近く、商用電源から高調波成分の小さいAC電流を引き込むことができるという利点がある。さらに、いくつかの実施形態では、可搬型充電ユニット1200は、任意の他の非車載型充電ユニットが有する機能を実現することができ、例えば、より高いKWの転送、より高度なバッテリ管理システム、バッテリの熱管理、ビル/家庭/電力ネットワークとの通信、エネルギー管理システム、より高いエネルギー伝達率などの機能を実現することができる。また、本開示の可搬型充電ユニット1200によれば、EVの製造業者は、車両に充電ユニットを搭載せず、その分の軽量化を図り、可搬型充電ユニット1200については、車両充電のためのオプションとして提供するという選択肢を持つことができる。
【0137】
図14A及び図14Bを参照すると、いくつかの実施形態では、電気自動車は、運転者用の表示部に接続されたセンサ(図示せず)を有するコネクタ1212用のレセプタ1402をトランクに含み、車両のトランクに可搬型DC充電ユニットが積み込まれているかどうかを表示部に表示させる構成でもよい。これにより、ユーザが可搬型充電ユニットを充電後や移動時に置き忘れてしまうことを防止できる。センサは、レセプタ1402にコネクタが差し込まれると押下される単純な機械式スイッチで構成してもよいし、或いは、当業界で公知の任意の他の種類の機械的、電気的又は電子的なセンサを利用してもよい。
【0138】
実施形態によっては、電気自動車は、レセプタ1402の代わりに、可搬型DC充電ユニット1200の筐体やケーブルを装着できる別のレセプタを備えることで、同様の表示機能を実現してもよい。
【0139】
一実施形態では、可搬型充電ユニット1200は、レセプタ1402の代わりに、例えば、無線自動識別(RFID)センサ又はブルートゥースセンサなどの無線接続表示機(wireless presence indicator)を備えてもよく、これにより、可搬型DC充電器が車両の近くにあることを表示する構成でもよい。
【0140】
なお、当業者であれば分かるように、例えば、本出願に記載の5レベル整流器回路などの回路は、任意のAC-DC変換システムに適用可能であって、例えば、DC電源、他のEV用充電器、他の種類のバッテリ充電器、又は、AC-DC変換を必要とする他の構成などに適用可能である。
【0141】
上述の説明では、特定の実施例に言及したが、これは、あくまでも説明を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B