(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】3Dプリンティング用の非中実コアフィラメント
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20240130BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240130BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240130BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2020536251
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 US2018067587
(87)【国際公開番号】W WO2019133651
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アザーズ・バホラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ジョセフ・ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・シン-レン・リウ
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/173258(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107254151(CN,A)
【文献】特開2017-213813(JP,A)
【文献】特開2005-206631(JP,A)
【文献】特表2020-518484(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーを含む3Dプリンティング用フィラメントであって、
前記フィラメントが前記半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーとマイクロボイドとを含むマイクロフォームを含み、
前記マイクロフォームが、非発泡フィラメントと比較して10%未満の密度低下を有し、
前記マイクロボイドが、
0.005mm以上0.5mm未満の平均直径を有するフィラメント。
【請求項2】
前記フィラメントがマイクロフォームを含み、
前記マイクロフォームが、前記半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーと、マイクロボイドとを含む、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項3】
前記フィラメントが、当該フィラメントの中央に位置するマイクロフォームコアを含む、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項4】
前記フィラメントが、当該フィラメントの外径の3/4未満である中央コアマイクロフォームを含む、請求項1~3のいずれかに記載のフィラメント。
【請求項5】
前記ポリマーが、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリアミド11、ポリアミド12、コポリアミド、ブロックポリエーテル-アミドポリプロピレン、ポリエチレン、半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、半結晶性ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエステルおよびアセタールからなる群より選択される、請求項2~4のいずれかに記載のフィラメント。
【請求項6】
前記ポリマーが、フルオロポリマーを含み、
フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマー、PVDFコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンコポリマー(THV)、PFA、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)からなる群より選択される溶融加工可能なフルオロポリマーである、請求項1~5のいずれかに記載のフィラメント。
【請求項7】
前記フィラメントがフィラーをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のフィラメント。
【請求項8】
前記フィラーが、炭素繊維、炭素粉末、粉砕炭素繊維、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ、ガラス繊維、ナノシリカ、アラミド繊維、PVDF繊維、ポリアリールエーテルケトン繊維、BaSO
4、タルク、CaCO
3、グラフェン、平均繊維長100~150ナノメートルのナノ繊維、中空ガラス球および中空セラミック球からなる群より選択される、請求項7に記載のフィラメント。
【請求項9】
前記マイクロボイドが、0.005mm以上0.3mm未満の平均直径を有する、請求項1~8のいずれかに記載のフィラメント。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載のフィラメントから
物品をプリントするための条件下で前記フィラメントを3Dプリンタに供給することにより、前記フィラメントから3Dプリント物品を製造する方法。
【請求項11】
半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーからプリントされた3Dプリント物品の収縮ボイドを低減する方法であって、
a)マイクロボイドを含む発泡フィラメントを形成する工程であって、各マイクロボイドが
0.005mm以上0.5mm未満の平均直径を有する工程、
b)前記フィラメントから物品をプリントするための条件下で前記フィラメントを3Dプリンタに供給する工程、
を含み、
前記b)の前記フィラメントが、請求項1~
9のいずれかに記載のフィラメントである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントのコアが非中実フィラメントまたはモノフィラメントである、3Dプリンタで使用するための熱可塑性フィラメントに関する。フィラメントは、多数の小さなマイクロボイド(マイクロフォーム)を含んでいるか、フォームコア構造であるか、中空であるか、またはモノフィラメントコアを有し得る。本発明のフィラメントは、結晶性ポリマーおよび半結晶性ポリマーで特に有用であり、フィラメントの冷却中の収縮によって形成される一貫性のないフィラメントボイドの悪影響を低減する。
【背景技術】
【0002】
機器の進歩と価格の引き下げにより、3Dプリンティングは、家庭、学校、および産業において、試作品を製造し、カスタムの最終使用部品を製造するための、高速、簡単、そしてしばしば安価な方法として広く採用されるようになった。具体的には、材料押し出し3Dプリンティング(溶融フィラメント製造または溶融堆積モデリングとしても知られる)は、操作が最も簡単なので、直接消費者向け、大規模生産、および迅速な熱可塑性試作品製造のための選択ツールとして出現し、無駄を省き、従来の3Dプリンティング技術の最短のターンアラウンドタイムを提供する。
【0003】
チョコレートからコラーゲンまで、多種多様な最終用途のための3Dプリント物品を製造するために多くの材料が使用されてきた。熱可塑性材料は、3Dプリンタでの使用に特に適している。残念ながら、高い耐薬品性、難燃性、および優れた機械的特性を提供する熱可塑性樹脂はほとんどない。
【0004】
ポリフェニルスルホン(PPS)のようないくつかのアモルファスポリマーは、プリントされたときにわずか3パーセントの伸長しか有さない。ナイロンはより大きな伸長(~30%)を有するが、耐薬品性が低く、プリントする前に乾燥する必要がある。伸長がはるかに大きく、柔軟性のある熱可塑性ポリウレタンが入手可能であるが、耐薬品性と耐候性が劣っている。
【0005】
フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルケトン、およびポリエーテルエーテルケトンなどの結晶性ポリマーおよび半結晶性ポリマーは、良好な機械的特性、および一般的に良好な耐候性を有するが、それらは、溶融物から最終固体への転移時に高い収縮を有する傾向があり、それがフィラメントやプリント物品にボイドを作る。
【0006】
ARKEMA INCへのUS2015/635,525は、3Dプロセスにおける3つの異なるパラメータの選択および調整による、半結晶性PVDFの成功した3Dプリントについて記載されている。パラメータは、ポリマーまたはポリマーブレンドの選択、任意のフィラーの選択、および特定の処理条件が含まれる。
【0007】
PVDFフォームおよびフォームコア材料は、US2012/0045603およびUS2013/0108816に記載されている。US62/55576に記載されているように、PVDF 3Dフィラメントは、PVDF組成の操作、特定のフィラーの追加、および処理条件の選択により、3Dプリンティングにおいてうまく使用されている。
【0008】
2つの異なる材料、内部コアとは異なる結晶化温度を有する外部シェルを有する3Dプリント可能な共押出しフィラメントは、US8801990に記載されている。結晶化温度の違いにより、堆積時にシェルの材料は結晶化し、コアの材料はさらに冷却して結晶化する。3Dプリントで使用する場合、歪みと内部応力を減らすことが望ましい。
【0009】
中空ジオメトリを有するポリアミドブレンドで構成されるフィラメントは、US9592530に記載されている。US8221669によれば、中空フィラメントは、3Dプリンティングのための液化装置の応答時間および/または供給速度を改善し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
問題:3Dプリンティング用のポリマーフィラメント、特に結晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーフィラメントの問題は、ポリマーの収縮による内部ボイドの存在であり、これは、フィラメントの冷却およびポリマーの結晶化時の「収縮ボイド(shrink voids)」と呼ばれることが多い。これらの収縮ボイドは、多くの場合白い欠陥として説明され、フィラメントの中央により多く存在する傾向があり、フィラメントの長さに沿って不規則に分散する、比較的大きな気泡として見られる。収縮ボイドのサイズと不規則性は、プリンティング中の材料のふぞろいの産出、産出中のボイド、押出ラインの時々のギャップ、最終プリント製品のすべての欠陥につながり、プリント品質に悪影響を及ぼす。プリント製品の欠陥は、大きな部品をプリントする場合に特に懸念され、大きなノズルサイズでプリントする場合により顕著になる。さらに、最終的なプリント部品中の大きなボイドの存在は、部品が故障する可能性のある場所となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
解決策:収縮ボイドの問題に対する1つの解決策は、結晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーの収縮ボイドのないフィラメントを押し出すためのプロセスである。理論的には、これは押出後の冷却速度を遅くすることによって、またはフィラメントの表面よりも早くフィラメントのコアを冷却する方法を見つけることによって達成できる。現在、3Dプリンティング用のいくつかのアモルファスフィラメントと結晶性フィラメントは、温水、空気、またはオイルを使用して制御された冷却速度で作製されているため、フィラメントにボイドや小さいボイドはない。それでも、材料の結晶化度が高い、いくつかの場合、フィラメントに収縮ボイドが発生する場合があり、また、特にフィラメントが空冷されている、他の場合は、収縮ボイドの代わりに、またはそれに加えて、外径(OD)の大きな変動がある。フィラメントの長さに沿ったODの変動により、3Dプリンティング中に材料の流れが不均一になり、プリント部品に過不足の充填欠陥が生じる。ほとんどの3Dプリンタは、一定の流量ではなく一定の速度で押し出しする。ODの変動は、流量の変動を引き起こし、欠陥を引き起こす。
【0012】
本発明によって提示されるボイド収縮の問題に対する別のより実用的な解決策は、モノフィラメントコアを有するフィラメントまたは均一な構造を有する非中実体(non-solid)を提供することである。非中実フィラメントは、微発泡(マイクロフォーム)フィラメントまたは中空コアの形態であり得る。これらのマイクロコアフィラメントコアまたは微発泡フィラメントは、大きな収縮ボイドを排除し、ODの変動を低減する。本発明のフィラメントは、中空コアを有するか、完全に発泡体(フォーム体)であるか、固体材料によって囲まれた発泡体コアを有する発泡体コア構造を有するか、または中実(solid)でボイドのないモノフィラメントコアを有するか、とすることができる。発泡体は、通常の大きな収縮ボイドよりも小さい、極小ボイドを有するべきである。さらに、小さな気泡は中央に位置しているが、フィラメントの断面内に分散することができ、フィラメントの中央でのみ発生しない。断面全体によりランダムに分布する小さなボイドの存在が、大きく且つフィラメント断面の中央にある通常の収縮ボイドとは異なる。これらのアプローチにより、大きな収縮ボイドを有する中実フィラメントに関連するボイド欠陥が存在しないプリント部品が得られる。さらに、本発明のフィラメントは、同じ外径であって収縮ボイドを有さない中実コアフィラメントよりも低い密度を有し得る。通常、本発明のフィラメントは、収縮ボイドを含む同じフィラメントよりも高いかまたは同様の密度を有する。
【0013】
本発明は、半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーからプリントされた3Dプリント物品中の収縮ボイド欠陥を低減するように設計されたフィラメントに関する。新規のフィラメントは、発泡(フォーム)されるか、発泡コアを有するか、中空コアを有するか、または、モノフィラメントコアを有するか、とすることができる。
【0014】
本明細書内で、実施形態は、明快かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で説明されたが、実施形態は、本発明から離れることなく、様々に組み合わせまたは分離され得ることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載されているすべての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様に適用可能であることは理解されよう。
【0015】
本発明の態様には、以下が含まれる。
【0016】
態様1:半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーを含む3Dプリンティング用フィラメントであって、
a.マイクロフォームであって、前記半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーとマイクロボイドとを含むマイクロフォーム、または、
b.中央モノフィラメントであって、前記フィラメントの残りの部分に囲まれて中実フィラメントを形成し、当該フィラメントの周囲部分と同じ組成を有する中央モノフィラメント、または、
c.中空コアであって、当該中空コアを囲む前記半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーが、フルオロポリマー、ブロックポリエーテル-アミドポリプロピレン、ポリエチレン、半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、半結晶性ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエステル、およびアセタールからなる群より選択される中空コア、
を含むフィラメント。
【0017】
態様2:前記フィラメントがマイクロフォームを含み、
前記マイクロフォームが、前記半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーと、マイクロボイドとを含む、態様1に記載のフィラメント。
【0018】
態様3:前記フィラメントが、当該フィラメントの中央に位置するマイクロフォームコアを含む、態様1に記載のフィラメント。
【0019】
態様4:前記フィラメントが、当該フィラメントの外径の3/4未満である中央コアマイクロフォームを含む、態様1~3のいずれかに記載のフィラメント。
【0020】
態様5:前記マイクロフォームが、非発泡フィラメントと比較して10%未満、より好ましくは5%未満の密度低下を有する、態様1~4のいずれかに記載のフィラメント。
【0021】
態様6:前記マイクロボイドが、0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満、より好ましくは0.02mm~0.2mmの平均直径を有する、態様1~5のいずれかに記載のフィラメント。
【0022】
態様7:中央モノフィラメントを含み、当該中央モノフィラメントは、前記フィラメントの残りの部分に囲まれて中実フィラメントを形成し、当該フィラメントの周囲部分と同じ組成を有する、態様1に記載のフィラメント。
【0023】
態様8:前記中央モノフィラメントの外径が、前記最終フィラメントの外径の25%以下である、態様6に記載のフィラメント。
【0024】
態様9:前記ポリマーが、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリアミド11、ポリアミド12、コポリアミド、ブロックポリエーテル-アミドポリプロピレン、ポリエチレン、半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、半結晶性ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエステルおよびアセタールからなる群より選択される、態様2~8のいずれかに記載のフィラメント。
【0025】
態様10:前記フィラメントが中空コアを含み、当該中空コアが当該フィラメントの中央に位置する、態様1に記載のフィラメント。
【0026】
態様11:前記中空コアの外径が前記フィラメントの外径の25%以下である、態様8または9に記載のフィラメント。
【0027】
態様12:前記フィラメントが中空コアを含み、当該中空コアが、円形、楕円形、正方形および星形からなる群より選択される形状である、態様1に記載のフィラメント。
【0028】
態様13:前記ポリマーが、フルオロポリマーを含み、
フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマー、PVDFコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンコポリマー(THV)、PFA、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)からなる群より選択される溶融加工可能なフルオロポリマーである、態様1~10のいずれかに記載のフィラメント。
【0029】
態様14:前記フィラメントがフィラーをさらに含む、態様1~13のいずれかに記載のフィラメント。
【0030】
態様15:前記フィラーが、炭素繊維、炭素粉末、粉砕炭素繊維、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ、ガラス繊維、ナノシリカ、アラミド繊維、PVDF繊維、ポリアリールエーテルケトン繊維、BaSO4、タルク、CaCO3、グラフェン、平均繊維長100~150ナノメートルのナノ繊維、中空ガラス球および中空セラミック球からなる群より選択される、態様14に記載のフィラメント。
【0031】
態様16:態様1~15のいずれかに記載のフィラメントからプリントされた3D物品。
【0032】
態様17:半結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーからプリントされた3Dプリント物品の収縮ボイドを低減する方法であって、
a)次のいずれかを形成する工程:
1)マイクロボイドを含む発泡フィラメントであって、各マイクロボイドが0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満、より好ましくは0.02mm~0.2mmの平均直径を有し、または、
2)マイクロフォーム、中空、またはモノフィラメントのいずれかである中央コアを有するフィラメントを形成する工程、
b)前記フィラメントから物品をプリントするための条件下で前記フィラメントを3Dプリンタに供給する工程、
を含む、方法。
【0033】
態様18:前記b)の前記フィラメントが、態様1~15のいずれかに記載のフィラメントである、態様17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、3Dプリンティング用のフィラメントの製造を示している。
【
図2】
図2は、0%、2%および3%の発泡剤を有するKYNAR PVDF樹脂を有するフィラメントを示す。
【
図3】
図3は、発泡剤を含まないフィラメントを示す。
【
図4】
図4は、2%の発泡剤を有するKYNAR PVDF樹脂を有するフィラメントを示す。
【
図5】
図5は、3%の発泡剤を有するKYNAR PVDF樹脂を有するフィラメントを示す。
【
図6】
図6は、それぞれ0%、2%、および3%の発泡剤を含む、
図3~5のフィラメントでプリントされた物品を示す。
【
図7】
図7(比較)は、収縮ボイドを含むフィラメントでプリントされた物品を示す。
【
図8a】
図8aは、本発明の発泡フィラメント(3%発泡剤)でプリントされた物品を示す。
【
図8b】
図8bは、本発明の発泡フィラメント(2%の発泡剤)でプリントされた物品を示す。
【
図9】
図9は、2%の発泡剤を使用する本発明の発泡フィラメントでプリントされた物品を示す。
【
図10】
図10は、3%の発泡剤を使用する本発明の発泡フィラメントでプリントされた物品を示す。
【
図11】
図11は、クロスヘッド押出機のセットアップを示す。
【
図15】
図15は、収縮ボイドフィラメントでプリントされた容器を示す。
【
図16】
図16は、マイクロコアフィラメントを有する容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書で使用される「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味する。「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーの両方を意味するために使用される。例えば、本明細書で使用される「PVDF」および「ポリフッ化ビニリデン」は、特に別段の記載がない限り、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマーの両方を含むために使用される。ポリマーは、直鎖、分岐、星型、櫛型、ブロック型、またはその他の構造であってもよい。ポリマーは均一、不均一であり得、コモノマー単位の勾配分布を有し得る。引用されたすべての文献は、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、パーセントは質量パーセントを意味するものとする。分子量は、GPCで測定される重量平均分子量である。ポリマーに架橋が含まれており、不溶性ポリマー画分が原因でGPCを適用できない場合、ゲルからの抽出後の、可溶性画分/ゲル画分または可溶性画分の分子量が使用される。
【0036】
フィラメントポリマー:
【0037】
本発明は、任意の直径および任意の組成である任意の種類の熱可塑性フィラメントに有用である。本発明は3Dプリントされたアモルファスポリマーの品質を改善するが、半結晶性ポリマーでは特に有用である。これらのポリマーは、冷却および結晶形成中に収縮が大きくなる傾向があり、フィラメントにますます大きなボイドが作られるためである。本発明のフィラメントは、伝統的なプラスチックプロセス装置を使用して製造することができる。
【0038】
3Dプリンティング用のフィラメントは、現在、1.75から2.85mmのODの範囲である。しかしながら、本発明は、3Dプリンティングで使用され得る任意のサイズのフィラメントに適用され得る。実際に、収縮ボイドは冷却プロセス中にフィラメントの中央に主に形成されるように見えるので、非中実中央を有する本発明は、大きな収縮ボイドなしでさらに厚いフィラメントの使用を可能にすることができる。本発明は任意の直径のフィラメントからの3Dプリント部品の品質を改善するであろうが、より大きな直径のフィラメントは収縮ボイドを形成しやすいので、より大きな外径のフィラメントで特に有用である。
【0039】
半結晶性ポリマーは、結晶の融点より高い温度で粘性液体として存在するものである。冷却すると、結晶が核となり成長して利用可能な体積を満たす。これらの材料は、ポリマーが室温に冷却されたときにポリマーの一部が結晶化されないまま、またはアモルファスのままであるため、「半結晶性」と呼ばれる。アモルファスポリマーは、成長する結晶の間に閉じ込められる。ポリマー鎖の非常に絡み合った性質の結果として、アモルファスポリマーの動きは制限される。
【0040】
結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)によって10mgの試料を室温から20℃/分で融点より50℃上まで加熱し、5分間保持し、次いで10℃/分で室温に冷却することにより測定することができる。本発明の半結晶性ポリマーは、2J/gを超える、好ましくは5J/gを超える融解熱を有する。融解熱は、試料の質量で割った融解ジュール熱の標準的な方法で計算される。半結晶性ポリマーを区別する別の方法は、DSCで測定して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%の結晶化度を有することである。
【0041】
本発明において有用な半結晶性ポリマーには、以下が含まれるがこれらに限定されない。
【0042】
A)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマーまたはコポリマー。PVDFコポリマーは、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総質量の51質量%超、好ましくは70質量%超を含み、より好ましくは、モノマー単位の総質量の75質量%超を含む。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマーおよびより高次のポリマー(一般に本明細書では「コポリマー」と称す。多元共重合体。)は、フッ化ビニリデンを、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテンおよびヘキサフルオロプロペンなどの部分的または完全に1つ以上フッ素化されたアルファオレフィン、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ-n-プロピルビニルエーテルおよびペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのペルフルオロビニルエーテル、ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)およびペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール、2-ヒドロキシエチルアリルエーテルもしくは3-アリルオキシプロパンジオールなどのアリル、部分的にフッ素化されたアリルまたはフッ素化アリルモノマー、並びに、エテンまたはプロペン、からなる群からの1つ以上のモノマーと、反応させることによって作製できる。好ましいコポリマーまたはターポリマーは、フッ化ビニリデン、並びに、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)およびクロロフルオロエチレンの1つ以上で形成される。
【0043】
好ましいコポリマーには、約60から約99質量パーセントのVDFと、対応して約1から約40パーセントのHFPとを含むもの;VDFとCTFEのコポリマー;VDF/HFP/TFEのターポリマー;およびVDFとEFEPのコポリマー、が含まれる。
【0044】
本発明のPVDFはまた、PVDFと混和性、半混和性、または相溶性ポリマーとのアロイであり得る。PVDFのほとんどのアロイはPVDF特性のいくらかの低下をもたらすため、好ましくはPVDFはアロイではない。ただし、少量の、PVDFポリマーアロイ全体の30%までの他のポリマーは追加し得る。他のフルオロポリマー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)および(メタ)アクリルポリマーは、有用なポリマーアロイを構成し得る有用なポリマーの例である。
【0045】
一実施形態では、フルオロポリマーは、分岐フルオロポリマーである。分岐フルオロポリマーは、より小さなボイドセルをもたらす可能性があり、発泡多層フィラメントを形成するのに有用な選択肢となり得る。
【0046】
B)PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11およびPA12(Arkema社Rilsan(登録商標)またはRilsamid(登録商標)ポリアミドなど)などのポリアミド。
【0047】
C)カプロラクタムおよびラウリルラクタムのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/12/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸、アゼライン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-9/11/12)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノ-ウンデカン酸、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6/11/12)、ラウリルラクタム、アゼライン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6-9/12)などのコポリアミド。
【0048】
D)ブロックポリエステル-アミドおよびブロックポリエーテル-アミドなどのブロックポリアミドコポリマー(Arkema社PEBAX(登録商標)樹脂など)。
【0049】
E)ポリプロピレン。
【0050】
F)ポリエチレン。
【0051】
G)半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)。
【0052】
H)PVDFとポリ(メチルメタクリレート)のホモポリマーまたはコポリマーとの相溶性ブレンドなどの、半結晶性ポリマーとアモルファスポリマーとのブレンドまたはアロイ。
【0053】
I)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびコポリエステルなどのポリエステル。
【0054】
J)ポリフェニレンスルフィド。
【0055】
K)ポリオキシメチレン。
【0056】
L)エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンコポリマー(THV)、およびエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)を含む他の溶融加工可能なフルオロポリマー。
【0057】
ポリマーは、熱可塑性ポリマーと選択されたフィラーとのブレンドであってよい。フィラーは、フルオロポリマーとフィラーの総量に基づいて、0.01から50質量パーセント、好ましくは0.1から40、より好ましくは1から30質量パーセント、さらにより好ましくは1から19質量パーセント、特にさらにより好ましくは約1から15質量パーセントの有効レベルでフルオロポリマーに添加することができる。充填剤は、粉末、小板、ビーズ、および粒子の形態であり得る。ノズルの汚れの可能性を回避するために、アスペクト比が低い、より小さい材料が好ましい。本発明に有用なフィラーには、特に限定されないが、炭素繊維、炭素粉末、粉砕炭素繊維、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ、ガラス繊維、ナノシリカ、アラミド繊維、PVDF繊維、ポリアリールエーテルケトン繊維、BaSO4、タルク、CaCO3、酸化亜鉛、グラフェン、ナノファイバー(一般に100から150ナノメートルの平均ファイバー長を有する)、および中空ガラス球または中空セラミック球が含まれる。フィラーの添加は、溶融物からの収縮を低減する能力を有することが知られており、したがって、本発明と協働して、大きなボイド形成をさらに低減することができる。
【0058】
これまでに試験された粒子状フィラーの別の代替として、機械的強度を改善するように設計されたアスペクト比を有する粒子の使用を想定することができる。
【0059】
フィラー、特に繊維は、優れた収縮低減を提供できることが期待される。繊維の問題の1つは、溶融物の粘度が高くなる傾向があり、ノズルを詰まらせる可能性があることである。この影響は、溶融粘度の低いポリマー、アスペクト比の短い繊維、またはノズルサイズを大きくすることで最小限に抑えることができる。
【0060】
他の一般的な添加剤も、有効量でフルオロポリマー組成物に添加することができ、添加剤としては、特に限定されないが、接着促進剤および可塑剤などである。
【0061】
モノフィラメントコア:
【0062】
一実施形態では、中実モノフィラメントコアは、同じまたは異なる材料で被覆される。モノフィラメントのコアは、最初に伝統的なインラインダイを使用してモノフィラメントを製造し、次にクロスヘッドダイ(真空ありまたは真空なし)を使用してモノフィラメント上に共押出しして最終フィラメントを形成することで製造できる。モノフィラメントのターゲットは0.25~0.30mmであり、これは3Dプリンタの最終的なフィラメント直径によって異なるが、0.15~0.45mmのより大きいまたは小さいモノフィラメントは本発明の一部である。マイクロフィラメントのコアは、円形、楕円形、星型、正方形、またはその他の形状を含む、あらゆるプロファイルを有することができる。
【0063】
目標は、ボイドのないフィラメントを製造することである。収縮ボイドは主にフィラメントの中央に現れるため、中実コアが存在すると、この場所でのボイドの形成が妨げられる。中実コアフィラメントは、所望の外径を有するフィラメントを生成するために別の層でコーティングされた小さなODを有するフィラメントから構成される。小さなフィラメントはボイドの形成なしに製造できることが理解される。外径が小さく、結晶性ポリマーでしばしば製造されるボイドフリーフィラメントの一般的な例は、通常のモノフィラメント釣り糸(monofilament fishing line)である。最初に小さなフィラメントを作製し、次に2番目のステップで、第2層を適用して目的のODのフィラメントを作製することにより、ボイドフリーまたはボイドフリーに近い収縮を実現できる。被覆は、好ましくは同じ材料であるが異なる材料であり得、コア上に押し出されて、中実ボイドフリーフィラメントを製造する。
【0064】
フィラメントコアは、単一層であることができ、または、例えば、共押出によって製造することができる2つ以上の層からなることができる。フィラメントの各層は、半結晶性ポリマー、アモルファスポリマー、半結晶性ポリマーとアモルファスポリマーとのブレンド、さまざまな結晶性ポリマーのブレンド、フィラー入りポリマー(ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維、炭素粉末、酸化亜鉛、導電性フィラー、可塑剤、架橋促進剤)、ポリマーアロイ、ゴム、またはそれらの任意の組み合わせなどの同じまたは異なる材料で構成できる。
【0065】
一実施形態では、内部モノフィラメントをコーティングすることができる。コーティングは、最終的なプリンタ部品での層間の接着に役立つ接着材料であり得る。コーティングは架橋促進剤であることもでき、プリント後、放射線を適用して層間の結合を促進することができ、これによりz方向の機械的特性を向上させることができる。特定の化学的または機械的特性を追加するために、最終プリント物品の一部となるモノフィラメント上の他のコーティングが想像される。
【0066】
最終的なフィラメントは、ボイドのない中実コアフィラメントとして現れる。
【0067】
中空コア:
【0068】
フィラメントにおけるボイド形成の問題を解決するための別のアプローチは、中空コアフィラメントである。この構造は、フィラメントの中央に中空で均一な小さな開口部を有するフィラメントを有している。マイクロコアフィラメントの内側に含まれる空気は、フィラメントの中央の開口部を通過するか、プリンティングプロセスを妨げることなくノズルを通過する。中空マイクロコアは、円形、楕円形、正方形、星型、その他の形状やプロファイルを含む、あらゆるプロファイルを有することができる。
【0069】
開口コアの存在は、コアにおけるボイド形成を排除し、そしてフィラメントにおける一定のODをもたらすであろう。フィラメントは、標準的なクロスヘッド、言い換えれば細長い針の先端(hypodermic needle tip)を持つインラインダイを使う伝統的な押出技術を使用して、製造できる。細長い針は、最小のIDを達成できるように設計されている。フィラメントの中央の中空コアは、フィラメントのODの直径の25%以下である。または、総体積で、中空コアはフィラメントの6.25%以下である。中空フィラメントの初期ターゲットIDは0.25mmである。言い換えれば、OD1.85mmのフィラメントの場合、ID0.25mmの中空コアはフィラメントの体積の1.8%のみを占め、OD2.85mmのフィラメントの場合、中空コアはさらに少ない体積の0.7%しか占めない。中空コアのフィラメントIDは、0.01mmからフィラメントのODマイナス0.05mmまでの範囲である。これは、3Dプリンティング用途に作製された任意のサイズのフィラメントに適用できる。好ましくは、中空コアは、フィラメントの総断面積または中空であることを目標とするフィラメントの計算された体積の、20%以下、好ましくは10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2.5%以下、さらにより好ましくは2%以下、特にさらにより好ましくは1%未満である。
【0070】
中空コアを押し出す別のプロセスは、キャリアフィラメントをゆるく被覆し、次いでキャリアフィラメントを引き抜くことによる。
【0071】
発泡、発泡コア:
【0072】
大きな収縮ボイドから生じる印刷適性(printability)の欠陥の問題を克服するための第3のアプローチは、大きなボイドを3Dプリンティング品質に影響を与えないマイクロボイドに変換するフィラメントを生成することである。これは、均等に分散されたマイクロボイドからなる均一に発泡したフィラメントを生成することによって行うことができる。あるいは、ポリマーの固体層(solid layer)でコーティングされたマイクロボイドを含む発泡コア層を作製することもできる(フォームコアフィラメント)。
【0073】
マイクロボイドは、好ましくは可能な限り小さく、平均直径が0.5mm未満、好ましくは0.30mm未満、より好ましくは0.005mmから0.2mmの範囲、より好ましくは0.01mmから0.1mmの範囲である。特定の理論に縛られることはないが、ボイドが小さいほど、最終的な特性部分への影響は少ないと考えられる。
【0074】
用語「発泡剤(foaming agent)」および「膨張剤(blowing agent)」という用語は、交換可能に使用される。
【0075】
マイクロボイドを形成する1つのアプローチは、ポリマーとブレンドされた物理的または化学的発泡剤を使用することによるものであり、押出プロセス中に発泡が形成される。発泡剤は、マスターバッチの一部として事前に処方することができ、マスターバッチは、フィラメント押出の前にポリマーマトリックスにブレンドされる。
【0076】
本発明において有用な膨張剤は、化学的膨張剤または物理的膨張剤のいずれか、またはそれらの混合物であり得る。化学的膨張剤の場合、ガスは、分解温度以上に加熱された化学物質の分解によって生成される。物理的膨張剤の場合、ガスは、直接、または、液体発泡剤をその蒸発温度以上に加熱して液体発泡剤を蒸発させることにより、ポリマーに導入される。
【0077】
化学的膨張剤は、固体または流体であり得る。有用な膨張剤は、特に限定されないが、アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニタイル、スルホニルセミカルバジド、4,4-オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジイソプロピルヒドラゾジカルボキシレート、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン-3,3’-ジスルホヒドラジド、イサト酸無水物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’-ジニトロソ-ペンタメチレンテトラミン、およびp-トルエンスルホニルヒドラジドを含み、または、前記膨張剤の2つ以上のブレンドを含む。化学的膨張剤および物理的膨張剤の混合物もまた、本発明によって企図される。
【0078】
本発明のポリマー発泡体を製造するための別のアプローチは、低レベルの発泡性マイクロスフェアを使用することによる。発泡性マイクロスフェアは、さまざまな液体または気体をカプセル化できるポリマーシェルを備えた小さな中空粒子である。加熱すると、ポリマーシェルが軟化し、球内の液体の状態が変化して、高圧の大量のガスが生成され、これにより、マイクロスフェアが大幅に膨張する。
【0079】
前記スフェアは、様々な直径を有することができ、低レベルでの非常に小さい粒子サイズ、例えば、10~30マイクロンのマイクロスフェアは、本発明において有用であり得る。発泡性マイクロスフェアは、ポリマーマトリックス材料とともに押出機に加えることができ、またはマスターバッチへ予備形成してから、ポリマーマトリックス材料と共に押出機に加えることができる。
【0080】
フィラメントの発泡は、任意の密度であり得るが、より高い発泡密度が好ましい。目標は、大きなボイドを排除しながら、可能な限り最高密度を実現することである。理想的には、発泡フィラメントは、ボイドを含む非発泡フィラメントと同じかそれ以上の密度を持っている。本質的に、大きなボイドを多数のより均等に分布したマイクロボイドに再分配する。(ボイドを含む非発泡フィラメントと比較して)10%の密度低下発泡が有用であり得、密度低下は5%未満、さらには2%未満がより好ましい。
【0081】
フィラメント全体は、マイクロボイドを有する発泡であり得るが、本発明の一実施形態では、フィラメントは、固体ポリマーによって取り囲まれた中央発泡コアを有する発泡コア構造を有する。発泡マトリックスと固体ポリマー壁との組成は同じでも異なっていてもよい。最終的な3Dプリント部品の小さな気泡は制御可能である必要があり、3D部品のプリントプロセスを妨げず、最終的な部品の特性への影響を最小限に抑える。最終製品の特性および部品の印刷適性は、最終製品の密度に比例する最終製品の特性を伴う発泡による非常に小さな気泡によって、損なわれないと考えられている。微発泡コアを用いて製造されたフィラメントを使用した3Dプリンティングは、収縮ボイドに関連する欠陥を排除できることがわかった。この方法で発泡コアフィラメントを製造する場合、クロスヘッドのニーズは必要ではなく、標準のフィラメントツール(しばしばインラインダイ)を使用できる。
【0082】
発泡フィラメントが3Dプリントされるとき、プリント物品の密度は、物品を作製するために使用される発泡フィラメントよりも高くなり得る。最終的な3Dプリント物品は、射出成形された類似の物品の密度の7%以内、好ましくは5%以内、好ましくは4%以内の密度を有し得る。3Dプリント物品は、物品をプリントするために使用される発泡フィラメントよりも少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも3%の密度の増加を有し得る。
【実施例】
【0083】
例1~3
【0084】
Kynar(登録商標)826-3D樹脂を、
図1に示すような、Davis Standard社の低作業障壁スクリュと80°Fの水を含む冷却タンクとを備えた1.5インチの単一スクリュ押出機からなる、従来の単一フィラメント押出ラインを使用して2.85(±.05)mmフィラメントに変換した。例2~3の発泡剤のKynar2620(登録商標)FCを、ペレット混合によってさまざまな濃度でKynar(登録商標)826-3D樹脂に添加し、次に、表1で記載するように、2.85(±.05)mmフィラメントに押し出した。
【0085】
【0086】
結果:
【0087】
発泡剤なしで製造されたフィラメントは、中央に位置する大きなボイドを含んでいた。発泡剤の導入により、ボイドサイズはより小さくなり、フィラメントの中央内により均一に分布した。異なるボイド含有量で製造されたフィラメントの例を
図2に示す。
【0088】
全体として2%および3%の発泡濃度で製造されたフィラメントは、最小の楕円率変動または直径変動を伴う全体的に良好な外観を有していた。密度測定を行って、発泡剤の導入に関連する密度低下を決定した。理想的には、密度低下は、発泡剤を含まない同じ樹脂と比較して相対的に低いであろう。発泡剤の添加量の関数としての密度の低下を表2に示す。
【0089】
【0090】
発泡剤なしで製造されたフィラメント(例1)は、フィラメントの中央に位置する大きな収縮ボイドを含んでいた。ボイドのサイズは、フィラメントの直径の30%にもなるものもあった。大きなボイドを含むフィラメントは、プリントプロセスに問題があることが知られている。PVDFコンパウンドで生成され、収縮ボイドを含むフィラメントについての拡大画像を
図3に示す。
【0091】
2%の発泡剤(例2)の添加により、フィラメントは、フィラメント全体に多数の小さな気泡を含むことが観察される。理想的には、小さな気泡の量はこの画像で観察されるよりもわずかに少ないだろう。重要なことに、大きなボイドはもはや存在せず、このフィラメントは、発泡剤なしで製造され、大きなボイドを含むフィラメントよりも良好に処理されたことがわかった。フィラメントはより均一で、押出プロセスではラインブレーク(line break)が少なくなった。2%発泡剤を含むPVDFコンパウンドで生成されたフィラメントの拡大画像を
図4に示す。
【0092】
3%の発泡剤を添加すると(例3)、フィラメントは、2%の発泡剤で製造されたフィラメントと同様であることが観察される。気泡は比較的小さく、フィラメント内に均一に分布している。中央にある大きなボイドは除去され、存在しなくなった。3%の発泡剤を含むPVDFコンパウンドで生成されたフィラメントの拡大画像を
図5に示す。
【0093】
図6に示されるように、フィラメントを使用して、0.6mmノズルを備えた3DP機械を使用して単一壁容器をプリントした。泡濃縮物なしで製造されたフィラメントからの単一壁容器は、大きな構造欠陥を示した。逆に、発泡剤を使用して製造されたフィラメントを使用して製造された単一壁容器は、大きな構造上の欠陥のない単一壁容器を製造することがわかった。
【0094】
泡濃縮物を使用しないフィラメントで製造された単一壁容器には、重大な構造上の問題があった。これらの大寸法の欠陥を示すコンテナの拡大領域を
図7に示す。欠陥は転位として表示され、プリンタノズルから押し出されたときに大きなエアポケットとして形成される。これらの大寸法の欠陥は、コンテナの物理的および機械的性能を低下させ、許容できないと見なされる。
【0095】
発泡剤と共にフィラメントを使用して製造された単一壁容器の拡大画像は、
図8A(3%の発泡剤)および8B(2%の発泡剤)に見ることができる。これらのフィラメントから製造された単一壁容器には、大寸法の欠陥がなかった。代わりに、パーツの壁内に分布する小さなボイドの存在を確認できる。フィラメント内の小さなサイズのボイドはプリンティングに影響せず、パーツの壁に含まれる小さなボイドが性能を低下させることはないと予測される。さらに、フィラメントの小さなボイドのほんの一部だけが、実際に3Dプリントされたパーツに転写される。これは、発泡剤を有する3Dプリントされたパーツの密度(例3P)が、発泡剤を含むフィラメント(例3)の密度よりも大幅に高いことで示されている。プリントされたパーツの密度(例3P)は、ボイドのない射出成形部品(比較例C)の密度の約97%である。
【0096】
要約すると、発泡は、3Dプリンティングプロセスに影響を及ぼさず、欠陥のないパーツのプリンティングを促進する、制御されたより小さなボイドをもたらした。ただし、サイズが3ミル(76マイクロン)から6ミル(152マイクロン)の少量のマイクロボイドは、最終的なプリントされたパーツに移行して、製品の最終的な性能に影響を与えることはない。さらに、発泡後に密度がわずか2~2.5%減少することは、発泡しなかった場合に発生する可能性があったボイドが発泡の大部分に置き換わることを意味する。発泡剤を含むKynar(登録商標)826-3Dコンパウンドを使用した許容可能なプリントを示す追加の画像は、
図9と10に示す。
【0097】
例5(比較例)および例6(本発明の例)
【0098】
比較例では、Kynar(登録商標)826-3D樹脂を、Davis Standard社の低作業障壁スクリュと80°Fの水を含む冷却タンクとを備えた1.5インチの単一スクリュ押出機からなる、従来の単一フィラメント押出ラインを使用して2.85(±.05)mmフィラメントに変換した。一方、本発明の例では、Kynar(登録商標)826-3D樹脂のマイクロコアフィラメントは、低作業障壁スクリュと、細長い先端を有するクロスヘッドダイ(
図11)を備えた1インチのAmerican Kuhne社の押出機と、80°Fの水を含む冷却タンクとを用いて製造した。フィラメントは、外径が2.85(±.05)mmで、IDが0.5((±.05)mm)に押し出された。これにより、中空コアがフィラメントの体積の約3%になる。表3でプロセス条件を説明する。
【0099】
【0100】
結果:
【0101】
不規則なボイドを有する中実フィラメントとして記載された従来の方法で製造されたフィラメントは、フィラメント内に連続した中空中央を含む中空マイクロコアフィラメントと比較して、フィラメントの中央内に有意かつ大きなボイドを含むことが見出された。
【0102】
製造されたフィラメントは、フィラメントの中央に位置する大きな収縮ボイドを含むが、ときおりフィラメントの直径の30%にもなるボイドを含んでいた。ボイドのサイズは、フィラメントの直径の30%にもなることがあった。大きなボイドを含むフィラメントは、プリンティングプロセスに問題があることが知られている。PVDFコンパウンドで生成され、収縮ボイドを含むフィラメントの拡大画像を
図12に示す。
【0103】
マイクロコアまたは中空コアフィラメントは、非常に重い壁を有するチューブのようなものである。中央の非常に小さな穴は均一で、フィラメントの中央にある。フィラメントの中央にある均一な穴は、収縮ボイドの形成をなくすのに役立つ。中空の中央は、空気がフィラメントを通って後方に逃げるのを促進し、これにより、空気がノズルを通って3Dプリントされている部品に流れ込むことを、排除しないとしても減少させる。
【0104】
中空コアを含むフィラメントの均一な断面積は、ノズルを通る供給速度の一貫性を改善する。さらに、中空コアフィラメントの中央が開いているため、閉じ込められた空気がプリントされたパーツに大きな欠陥を引き起こすのではなく、フィラメントを通って逃げることができる。PVDFで生成されたフィラメントの拡大画像を
図13に示す。
【0105】
図14に示すように、0.6mmノズルを有する3DP機械を使用して単一壁容器をプリントするためにフィラメントを使用した。マイクロコアフィラメントを使用して製造された
図14の単一壁容器は、不規則なボイドを有する中実フィラメントと比較して大きな欠陥を示さない。
【0106】
収縮ボイドフィラメントを用いて製造された単一壁容器は、重大な構造上の問題を抱えていた。これらの大寸法の欠陥を示す容器の拡大領域を
図15に示す。欠陥はずれ(ディスロケーション)として現れ、大きなエアポケットがプリンタノズルから押し出されるときに形成される。これらの大寸法の欠陥は、容器の物理的および機械的性能を低下させ、許容できないと見なされる。
【0107】
マイクロコアフィラメント(中空)を使用して作製された単一壁容器の拡大画像を
図16に見ることができる。単一壁容器は、これらのフィラメントから作製され、大寸法の欠陥はなかった。
【0108】
要約すると、マイクロコアフィラメント(中空)は均一な流量を提供し、空気が後方から逃げることを可能にし、欠陥のない3Dプリント部品をもたらす。