(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】受動センサ対応RFIDタグを使用した無線反応器監視システム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240130BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240130BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20240130BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240130BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K7/10 264
G06K19/07 230
H04B1/59
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2020538695
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 US2019012843
(87)【国際公開番号】W WO2019139946
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,カスパー・ジョーセフ
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-348496(JP,A)
【文献】特表2010-506901(JP,A)
【文献】特開昭59-022189(JP,A)
【文献】特開2006-085411(JP,A)
【文献】特表2002-535118(JP,A)
【文献】特表2010-506704(JP,A)
【文献】国際公開第2014/062066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06K 7/00 - 7/14
G06K 19/00 - 19/18
H04B 1/59
H04B 5/02
B01J 8/00 - 8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内部のプロセス条件を無線で監視するためのシステムであって、
反応ゾーンを画定する反応容器であって、
反応ゾーン内部には、触媒粒子を含む触媒床があり、触媒床の内部には、反応ゾーン内部の反応器状態を感知することと、質問信号を受信することと、質問信号に応答して、反応器状態を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信することとが可能であるRFIDセンサがある、反応容器と、
RFIDセンサに無線でリンクされ、質問信号を送信することと、質問信号に応答するRFIDトランスポンダ信号を受信することとが可能であるRFIDリーダアンテナと、を備え
、触媒粒子が、無機酸化物成分および金属成分を含む、システム。
【請求項2】
RFIDセンサが、反応器状態を感知し、反応器状態を表すセンサ入力をRFIDタグに提供するためのセンサ手段に動作可能に接続されたRFIDタグを含み、センサ手段が、RFIDタグによって、反応器状態を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を提供するように構成される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
RFIDリーダアンテナが、反応容器の外部に位置付けられる、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
反応容器が、反応ゾーンに供給流を導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応ゾーンから流出流を除去するための流体連通を提供する出口手段とを含む、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
反応器状態が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体組成、ならびに流量からなる環境条件の群から選択される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
RFIDリーダアンテナが、質問信号をRFIDリーダアンテナに提供し、RFIDリーダアンテナからRFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダに動作可能に接続される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
リーダとともに構成され、反応器状態に関する出力情報を提供するためのRFIDトランスポンダ信号の処理のために設けられる計算手段をさらに含む、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
RFIDリーダアンテナが、反応容器の反応ゾーン内に位置付けられる、請求項
2に記載のシステム。
【請求項9】
反応容器が、反応ゾーンに供給流を導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応ゾーンから流出流を除去するための流体連通を提供する出口手段とを含む、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
反応器状態が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体組成、ならびに流量からなる環境条件の群から選択される、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
RFIDリーダアンテナが、質問信号をRFIDリーダアンテナに提供し、RFIDリーダアンテナからRFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダに動作可能に接続される、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
リーダとともに構成され、RFIDトランスポンダ信号の処理を提供して、反応器状態に関する出力情報を提供する計算手段をさらに含む、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
反応容器内のプロセス条件を監視する方法であって、
触媒粒子を含む触媒床が内部にあり、触媒床がRFIDリーダアンテナに無線でリンクされるRFIDセンサを含む、反応ゾーンを画定する反応容器を設けることと、
RFIDセンサによって受信される質問信号を、RFIDリーダアンテナによって送信することと、
質問信号に応答して、反応ゾーン内部の反応器状態を表す情報を含み、RFIDリーダアンテナによって受信されるRFIDトランスポンダ信号を、RFIDセンサによって送信することと、を含
み、触媒粒子が、無機酸化物成分および金属成分を含む、方法。
【請求項14】
RFIDセンサが、反応器状態を感知し、反応器状態を表すセンサ入力をRFIDタグに提供するセンサに動作可能に接続されたRFIDタグを含み、RFIDタグが、反応器状態を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を提供する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
RFIDリーダアンテナが、反応容器の外部に位置付けられる、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
反応容器が、反応ゾーンに供給流を導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応ゾーンから流出流を除去するための流体連通を提供する出口手段とを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
反応器状態が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体組成、ならびに流量からなるプロセス条件の群から選択される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
質問信号をRFIDリーダアンテナに提供し、RFIDリーダアンテナからRFIDトランスポンダ信号を受信するリーダを設けることを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
リーダとともに構成された計算手段を設けることと、計算手段によってRFIDトランスポンダ信号を処理することと、反応器状態に関する出力情報を表示するかまたは提供することと、をさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
RFIDリーダアンテナが、反応容器の反応ゾーン内に位置付けられる、請求項
14に記載の方法。
【請求項21】
反応容器が、反応ゾーンに供給流を導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応ゾーンから流出流を除去するための流体連通を提供する出口手段とを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
反応器状態が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体組成、ならびに流量からなるプロセス条件の群から選択される、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
質問信号をRFIDリーダアンテナに提供し、RFIDリーダアンテナからRFIDトランスポンダ信号を受信するリーダを設けることをさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
リーダとともに構成されたコンピュータを設けることと、RFIDトランスポンダ信号を処理することと、反応器状態に関する出力情報を表示するかまたは提供することと、をさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月11日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/616,166号の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、反応器などの処理容器内の状態を無線で監視するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
触媒を包含する反応容器は、製油所や化学プラントでは一般的である。これらの反応器を操作する場合、容器内のプロセス条件を測定または監視することが望ましいが、これは、この情報が反応容器内の反応条件の制御に役立つ可能性があるためである。反応容器内の状態を測定する現在の方法では、外部ディスプレイにセンサ測定情報を送信するセンサへの電気的接続または空気圧接続等の物理的接続を必要とする。そのような測定手段の一例は、温度を測定するための熱電対の使用である。熱電対を使用して反応容器内の場所の温度を測定するためには、サーモウェルが必要である。サーモウェルは、容器の壁を貫通して設置され、容器内の温度が測定される場所まで延在する。
【0004】
反応容器内の場所でプロセス条件を測定および観察し、異なる場所で収集するために情報を無線で送信する能力を有することが望ましい。出願人は、反応器内部の様々な環境条件を測定し、測定された情報を無線送信して、遠隔で収集するために、センサ対応のRF識別タグの使用の可能性を提案した。この技術は、特定の環境条件を測定し、この情報を無線で送信するために使用されるセンサデバイスと何らかの方法で結合された無線周波数識別タグ装置を含むさまざまなシステムを開示する。
【0005】
そのようなデバイスの例は、US6,720,866に記載されている。当該特許は、無線周波数識別(RFID)タグ装置内の論理回路に、RFIDタグ装置によって送信される信号を修正させるセンサ入力を有するRFIDタグ装置を含むシステムを開示している。RFIDタグ装置は、内部電源がないという点で受動的である。これは、代わりに、RFIDタグ装置を作動するRFタグリーダ(質問器)によって生成されるRF波によって供給される電力に依拠する。RFIDタグ装置は、センサから入力信号を受信するように適合される。このセンサは、電圧、電流、抵抗、周波数、圧力、温度、加速度、振動、含水率、ガスの割合、密度、流量、光の強度、音の強度、放射線、磁束、pHまたは他の値等の測定値を提供する。センサはまた、センサ入力信号に関する情報を包含する信号を生成するRFIDタグ装置へのアナログ入力信号の生成を提供する。RFIDタグリーダまたは質問器は、このセンサ入力信号を読み取る。
【0006】
US8,106,778は、無線周波数識別(RFID)の別の用途について述べている。この特許は、場所、温度、湿度、圧力、時間、日付、および慣性測定値(例えば、速度および加速度)等の可変条件を追跡する方法およびシステムを開示している。‘778特許によって開示されたRFIDシステムは、RFIDセンサで状態を測定することができるRFIDセンサを含む。次に、センサからの可変情報は、RFIDセンサタグのRFIDタグプロセッサのメモリに格納され、次に、RFIDリーダに、状態を表す可変情報を含む応答信号を送信する。
【0007】
これらの特許は、センサ対応RFIDタグを使用して反応容器内のプロセスまたは環境条件を測定したり、さらなる受信、処理、および使用のために反応容器内の測定条件に関連する情報を無線で転送したりすることについては何ら開示または示唆していない。実際、当業者は、RF信号の大きな歪み、または減衰、またはその両方なしに、大量の触媒粒子または炭化水素を含む容器を介してRF信号を送信できることを予期していなかった。これは、これまでは、かなりの触媒金属濃縮物を含む触媒粒子が、RFIDタグおよびRF質問器によって送信されるRF波が、触媒粒子を通過するときに、歪みまたは深刻な減衰を引き起こすと考えられていたためである。
【0008】
しかしながら、出願人は、反応器内部の場所での環境またはプロセス条件の局所的感知、および反応器内部で測定された条件を表す情報を包含するRF波の受信機への反応器を介した無線送信を提供するシステムおよび方法を発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6,720,866号明細書
【文献】米国特許第8,106,778号明細書
【発明の概要】
【0010】
したがって、反応容器内のプロセス条件を無線で監視するためのシステムが提供される。本システムは、反応ゾーンを定義する反応容器を備える。反応ゾーン内部には、触媒粒子を含む触媒床があり、触媒床の内部には、反応ゾーン内部の反応器状態を感知することと、質問信号を受信することと、質問信号に応答して、反応器の状態を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信することとが可能であるRFIDセンサがある。本システムは、RFIDセンサに無線でリンクされ、質問信号を送信し、質問信号に応答するRFIDトランスポンダ信号を受信することができるRFIDリーダアンテナを含む。
【0011】
さらに、触媒粒子を含む触媒床がある反応ゾーンを画定する反応容器内のプロセス条件を監視する方法が提供される。触媒床内部には、RFIDセンサがあり、RFIDリーダアンテナに無線でリンクされている。RFIDリーダアンテナは、RFIDセンサによって受信された質問信号を送信する。質問信号に応答して、RFIDセンサは、反応ゾーン内の反応器の状態を表す情報を含み、かつRFIDリーダアンテナによって受信されるRFIDトランスポンダ信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】反応容器内のプロセス条件を無線で監視するための本発明のシステムの実施形態を表す概略図である。
【
図2】環境内部のセンサ対応RFIDタグと、センサ対応RFIDタグに無線でリンクされ、RF信号に包含された情報を処理するためのコンピュータに接続されたRFIDリーダ/質問器とを含むRFIDシステムの図である。
【
図3】触媒床および液体炭化水素を通過するRF信号の空気に対する減衰を試験するために使用される実験装置の代表的な概略図である。
【
図4】RF信号が4フィートの空気、1フィートの触媒およびディーゼル油、ならびに7フィートの触媒およびディーゼル油を通過する場合の500MHz~2.5GHzの範囲のRF周波数の関数としてのRF信号の強度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、反応容器内の特定の条件を無線で監視するためのシステムおよび方法の両方を含む。これらの条件には、反応容器内のさまざまな場所での圧力や温度などのプロセス条件や環境条件を含むことができ、当該条件は、蒸気および液体の割合、流量、ならびに反応容器内部に包含されるかまたはそれを通過する流体の化学組成等のパラメータを含み得る。
【0014】
本特許出願と同時に提出されるのは、3件の関連仮特許出願、表題“SP2118-Wireless Monitoring and Profiling of Reactor Conditions Using Plurality of Sensor-Enabled RFID Tags Having Known Locations”、“SP2119-Wireless Monitoring and Profiling of Reactor Conditions Using Arrays of Sensor-Enabled RFID Tags Placed At Known Reactor Heights”、および“SP2102-Wireless Monitoring and Profiling of Reactor Conditions Using Plurality of Sensor-Enabled RFID Tags and Multiple Transceivers”であり、出願番号はそれぞれ62/616,148、62/616,185および62/616,155である。
【0015】
本発明は、反応容器の反応ゾーン内に存在する1つ以上のプロセス条件を測定または感知するための無線周波数識別(RFID)センサの使用と、それに続いて、測定された情報を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号によるRFIDリーダアンテナへの測定情報の送信を必要とする。
【0016】
本明細書では、RFIDセンサという用語は、受動RFIDタグで構成された、または統合された、または作動可能に接続されたセンサを含むデバイスを意味する。センサは、反応容器内のプロセス条件またはパラメータを感知する手段と、特に測定されたプロセス条件を表す情報を含む信号入力をRFIDタグに提供する手段とを提供する。当技術分野で教示されている受動RFIDタグは、RFIDリーダアンテナから質問信号を受信し、トランスポンダ信号を送信するためのトランスポンダアンテナと結合された集積回路を含む。
【0017】
RFIDリーダの質問信号の受信に応答して、RFIDセンサは、測定されたプロセス条件を表す、センサから受信された情報を含むRFIDトランスポンダ信号をRFIDリーダアンテナに返信する。コンピュータは、受信したRFIDトランスポンダ信号に包含された情報を処理し、測定または感知されたプロセス条件に関する出力情報を提供する。
【0018】
本発明の1つの特定の特徴は、センサデバイスを使用して反応容器内のプロセスおよび環境条件の測定を可能にし、測定された情報を包含するRF信号を、反応容器を介して、RF信号に含まれる情報を処理するリーダに接続されたRFIDリーダアンテナに無線送信することを可能にすることである。本発明は、送信されたRF信号が、触媒粒子の床、または炭化水素で充填された容器、または両方の組み合わせを通過したとしても、これに備える。質問RF信号およびトランスポンダRF信号は、反応容器内のプロセス条件の無線監視を妨げる歪みや減衰がほとんどない状態で、反応容器内に含まれる触媒床と炭化水素を通過する。
【0019】
反応容器内の条件を測定するために、RFIDセンサは、反応容器によって定義された反応ゾーン内の場所に配置される。反応ゾーンは、空隙であってもよく、または水、炭化水素、および他の化学物質を含む任意のタイプの流体から選択される気体もしくは液体を包含し得る容積である。炭化水素の例には、ナフサ、灯油、ディーゼル、軽油、および残油などの重油が含まれる。典型的には、反応ゾーンは触媒粒子の床を含み、それはさらに、触媒粒子と共に、前述の流体のいずれか、好ましくは炭化水素流体を含むことができる。
【0020】
反応ゾーンの触媒粒子は、任意の形状の押出成形物(例えば、シリンダ、ディローブ、トリローブ、クアドラローブ等)、球、ボール、不規則な凝集体、ピル、および粉末等を含む、業界で一般的に使用されるサイズおよび形状であり得る。触媒の粒子サイズは0.1mm~200mmの範囲とすることができるが、より一般的には、触媒粒子のサイズは0.5mm~100mm、または1mm~20mmの範囲であり、任意の組成を有し得る。
【0021】
一般的な触媒組成物は、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびチタニアなどの無機酸化物成分を含む。触媒組成物は、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、および銅を含む遷移金属のいずれか等の触媒金属成分をさらに含むことができる。触媒粒子の金属成分の濃度は、その実際の状態に関係なく、金属に基づいて、60重量%までであり得、典型的には、金属濃度は、その実際の状態に関係なく、金属に基づいて、0.1~30重量%の範囲である。
【0022】
本発明以前は、科学者および技術者は、触媒粒子上の金属濃度の存在に起因して、および触媒床の厚さに起因して、RF信号が大幅な減衰または歪みなしに触媒粒子の床を通過できないと考えていた。この減衰が、RF波の送受信機との間でのやり取りを妨害するため、読み取り不可能になる。しかしながら、本発明の特徴は、触媒粒子がRFIDセンサを取り囲むように、反応ゾーンの触媒床内にRFIDセンサを配置することを提供する。触媒粒子は、上記のように、無機酸化物成分もしくは金属成分、または両方の成分を含む。
【0023】
本発明の反応容器は、当業者に周知である任意の適切な材料で作製された任意の適切な容器であってもよい。多くの用途において、反応容器は一般に、触媒を包含し、その中に反応物または供給原料が導入される容積を画定する。本発明の一実施形態では、反応容器は、その中に触媒床がある反応ゾーンを画定する。反応容器には、反応ゾーンへの流体連通を提供する入口と、上記の炭化水素等の供給流を反応ゾーンに導入するための手段とが具備される。反応容器はまた、反応ゾーンからの流体連通を提供する出口、および反応生成物などの流出流を反応ゾーンから除去するための手段を備えている。
【0024】
センサ対応RFIDタグは、本明細書でRFIDセンサとも称され、局所プロセス条件を測定するために、反応ゾーンの所望の場所に配置される。この所望の場所は、特定のプロセス条件が測定される場所であり、そこから、測定された反応器状態を表す情報を含むかまたは運ぶRFIDトランスポンダ信号がRFIDリーダアンテナに無線で送信される。
【0025】
本発明の実施形態において、RFIDセンサは、RFIDセンサが触媒粒子によって包囲されるように、反応ゾーンの触媒床内に配置される。典型的な反応器では、深さおよび幅の幾何学的寸法が、触媒床を画定する。深さおよび幅によって画定可能である反応器の場合、触媒床の典型的な深さは0.5~20メートルの範囲であり、触媒床の典型的な有効幅は0.5~20メートルの範囲である。したがって、RFIDセンサは、20メートルまでの厚さを有する触媒粒子の層またはエンベロープで包囲することができ、質問信号およびトランスポンダ信号は、約0.5~約20メートルの触媒粒子の床厚さを通過することが必要とされる。
【0026】
センサ対応RFIDタグは受動的であるため、RFIDトランスポンダ信号は、RFIDリーダアンテナによって送信される質問信号の受信に応答して送信される。上記のように、センサはRFIDタグと統合されており、反応ゾーン内の1つ以上の状態を感知できる。RFIDセンサのセンサ構成要素は、温度センサ、圧力センサ、化学センサ、湿度センサおよびそれらの任意の組み合わせの中から選択され得る。センサは、RFIDタグと統合されて、反応器の状態を感知し、質問信号を受信し、質問信号に応答して、測定された反応器の状態を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信する手段を提供する。特許公開物、US2013/0057390、US9,563,833、US9,412,061、US9,035,766、およびWO03/098175は、センサ対応RFIDタグの例を示す。これらの特許公開物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
RFIDリーダアンテナは、RFIDセンサから離れた任意の場所に配置されるが、ただし、RFIDセンサへの質問信号の送信と、RFIDセンサからの応答トランスポンダ信号の受信とによって、RFIDセンサと通信することが可能であることにより、RFIDセンサと無線でリンクされていることが条件である。
【0028】
RFIDリーダアンテナを反応ゾーン内部に位置付けることが好ましいが、これは、質問信号およびトランスポンダ信号が反応容器の壁を通過する必要がなくなるためである。しかしながら、本発明のシステムの別の実施形態は、RFIDアンテナを反応容器の外部に位置付けるかまたは配置することである。RFIDリーダアンテナは、RFIDリーダアンテナに質問信号を提供し、RFIDトランスポンダ信号の受信を提供するリーダと接続される。コンピュータは、リーダを介して提供されたRFIDトランスポンダ信号情報を処理し、反応ゾーン内の条件に関する情報に関連する出力を表示するか、または他の方法で出力を提供する。
【0029】
ここで、
図1を参照すると、これは、反応容器12内のプロセス条件を無線で監視するための本発明のシステム10の実施形態の概略図である。反応容器12は、触媒粒子18を含む触媒床16を包含する反応ゾーン14を画定する。反応容器12は、導管24に動作可能に接続される入口ノズル22を備える。入口ノズル22は、導管24を介して流体連通するための手段、および供給物を反応ゾーン14に導入するための手段を提供する。反応容器12はまた、導管28に動作可能に接続される出口ノズル26を備えている。出口ノズル26は、導管28を介して流体連通するための手段、および反応ゾーン14から流出物を除去するための手段を提供する。
【0030】
図1は、反応ゾーン14内に位置付けられたRFIDリーダアンテナ30を含む本発明のシステム10の一実施形態を示す。この図は、触媒床16の表面32の上に配置されたときのRFIDリーダアンテナ30を示すが、RFIDリーダアンテナ30は、触媒床16の触媒粒子の境界内部に含まれ、かつ触媒床16の触媒粒子によって包囲される反応ゾーン14内ならどこでも配置され得ることがわかる。しかしながら、質問信号38の送信およびトランスポンダ信号40の受信によってRFIDセンサ36に無線でリンクされ、かつ無線で通信できるようにRFIDリーダアンテナ30を位置付けることが重要である。
【0031】
本発明のシステム10の代替の実施形態として、RFIDリーダアンテナ30は、反応ゾーン14および反応容器12の外部の場所に位置付けられる。内部に配置されたRFIDリーダアンテナと同様に、RFIDセンサ36に無線でリンクされ、かつ無線で通信することができるようにRFIDリーダアンテナ30を位置付けることが重要であるが、これを可能にする反応容器12の外部の任意の場所に配置されてもよい。
【0032】
RFIDセンサ36を反応ゾーン14内の所望の場所に配置することにより、RFIDセンサ36を取り囲むエンベロープの近くまたはその内部のプロセス条件の測定が提供される。
図1は、触媒床16内に配置され、それによって、触媒粒子18の体積または層がそれを取り囲むRFIDセンサ36を示す。これにより、結果として、RFIDリーダアンテナ30と通信するために、質問信号38およびトランスポンダ信号40は、触媒床16内部のRFIDセンサ36の位置に応じて、充填触媒粒子の厚さを20メートル以上まで通過する必要が生じる。
【0033】
RFIDリーダアンテナ30は、ケーブル42によってリーダ44に動作可能に接続される。リーダ44は、RFIDリーダアンテナ30に質問信号38を提供する手段と、RFIDリーダアンテナ30からトランスポンダ信号40を受信する手段とを提供する。コンピュータ46およびリーダ44は、ケーブル48によってともに構成され、ケーブルは、リーダ44とコンピュータ46との間の通信手段を提供する。コンピュータ46は、RFIDリーダアンテナ30からのトランスポンダ信号40を処理するための手段、および表示またはメモリ内への格納のために測定された反応器条件に関する出力情報50を提供するための手段を提供する。
【0034】
図2は、RFIDシステム10の他の特定の要素との関係におけるRFIDセンサ36の拡大詳細図を示す。RFIDセンサ36は、接続部60によってセンサ58から受信した入力情報の記憶および処理を提供する集積回路56を含む受動RFIDタグ54を含む。
【0035】
集積回路56は、RFIDタグアンテナ62に動作可能に接続され、RFIDトランスポンダ信号40を送信する手段を提供し、RFIDトランスポンダ信号40は、RFIDセンサ36の周囲もしくはエンベロープ64内、またはその付近もしくは近くの反応器状態を表す情報を運ぶ。RFIDタグアンテナ62はまた、RFIDリーダアンテナ30によって送信される質問信号38を受信することが可能である。RFIDリーダアンテナ30は、ケーブル42によってリーダ44に動作可能に接続される。
【0036】
RFIDタグ54は、センサ58とともに構成されるかまたは一体化され、それによって、センサ58は接続部60を介してRFIDタグ54の集積回路56にセンサ入力信号を提供することが可能である。センサ58は、要素66か、または測定されたプロセスまたは環境条件を表すアナログまたはデジタル入力をプロセッサ68を介して集積回路56に提供することが可能である任意の他の適切な感知手段を使用することによって、その周囲64内のプロセスまたは環境条件を感知または検出することが可能である。集積回路56は、接続部60を介して提供されるセンサ入力信号に応答するRFIDトランスポンダ信号40の変調を提供し、それにより、周囲64内の測定された環境条件を表す情報を含むか、または運ぶ。周囲64内には、触媒粒子18が含まれる。
【0037】
以下の実施例は、本発明の特定の特徴を例示するが、本発明を限定することは全く意図していない。
【実施例】
【0038】
この実施例で説明する実験の目的は、送信されたRF信号が、金属含有触媒粒子の触媒床を通過し、最小限の減衰または歪みで受信される能力を決定することであった。
【0039】
実験では2つの試験容器を使用した。1つの容器は、直径12インチ×高さ10フィートのPVCパイプによって組み立てられ、第2の容器は、直径12インチを×高さ10フィートのスケジュール40(壁厚0.406インチ)炭素鋼パイプで組み立てられた。RF受信機プレート(アンテナ)が容器の底部に配置された。RF送信機プレート(アンテナ)は、RF送信機アンテナを容器内の所定の位置まで上げ下げするために設けられたリフトガイドを備えた容器内に配置された。これにより、送信機アンテナと受信機アンテナとの間に、所定の深さの触媒床を配置することが可能となった。容器は、触媒床を形成するために、ニッケルおよびモリブデン触媒金属成分を含有する市販の水素化処理1/8インチ押出物触媒粒子で充填された。
【0040】
空の容器を使用して一連の試験を実施し、RF信号の空中の通過に対する基準データを取得し、次にRF信号の乾燥触媒床および液体ディーゼル炭化水素で充填された触媒床の通過に対する不透過率データを取得した。測定は、触媒床の高さを、触媒床の1フィートから、最大で8フィートの深さまで増分して行われた。指向性高利得アンテナと広帯域低利得アンテナを使用して、500MHz~5GHzの周波数範囲でRF信号を送信した。
【0041】
図3は、実験を実施するために使用された機器設定を表す図を示す。試験システム310が示されている。試験システム310には、容器314およびその容積316を画定するパイプ312を含め、その中には、床高さ320を有する触媒床318を包含させた。触媒床318には、内部にニッケルおよびモリブデン触媒金属成分の濃縮物が組み込まれたアルミナ押出物を含む触媒粒子の床を含めた。床高さ320は、試験全体を通して変動させた。
【0042】
RF受信機プレートまたはアンテナ324は、容器314の底部および触媒床318の下に配置された。アンテナ324は、触媒床318の上方または上面328付近に配置されたRF送信機プレートまたはアンテナ326によって送信されたRF信号を受信した。RF送信機アンテナ326は、送信ケーブル330に動作可能に接続され、500MHz~5GHzの範囲の様々な周波数のRF信号を送信するために設けられた。これらのRF信号は、触媒床318を通過し、RF受信機アンテナ324によって収集または受信される。RF受信機アンテナは、受信機ケーブル332に動作可能に接続され、RF送信機アンテナ326によって送信され、触媒床318を通過したRF信号を受信するために設けられた。
【0043】
図4は、空中4フィートでのRF信号損失と、液体ディーゼル炭化水素で充填された1フィートの触媒床を通過した後、および液体ディーゼル炭化水素で充填された7フィートの触媒床を通過した後のRF信号強度とを比較したグラフを示す。
【0044】
図4に示された結果は、予期せぬことに、RF信号が、空中の信号損失に比べて大幅な減衰や強度の低下なしに、触媒床を介して送信され、受信アンテナで受信できることを示す。
図4のグラフに示されたデータは、受信されたRF信号強度が、屋外を経由して送信されるRF信号にきわめて類似することを実証している。このことは予期しないことであるが、それは、これまでRF信号は、触媒床、触媒粒子の金属成分、および容器内の液体炭化水素によって、悪影響を受けるかまたは歪められ、弱められると考えられていたためである。これにより、結果として、RF信号が触媒床を通過してRF受信機アンテナで受信することが妨害されるかまたは大幅に抑制されてきた。