(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】衝撃力を吸収するための構成部材
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240130BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240130BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
F16F7/00 B
F16F7/00 K
F16F7/12
(21)【出願番号】P 2020543719
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2018079466
(87)【国際公開番号】W WO2019086348
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520149353
【氏名又は名称】テイジン カーボン ユーロップ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Teijin Carbon Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Kasinostrasse 19-21, 42103 Wuppertal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100194858
【氏名又は名称】田中 久子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヴォールマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フンヤール
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュナイダー
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175431(JP,A)
【文献】特開2015-148282(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080974(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/080975(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/125646(WO,A1)
【文献】特開2015-175430(JP,A)
【文献】特表2013-544310(JP,A)
【文献】米国特許第06601886(US,B1)
【文献】粘着剤設計技術,日本,日東電工株式会社,2022年08月09日,https://www.nitto.com/jp/ja/rd/base/adhesive/specificat/,[2022年8月9日検索],インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
F16F 7/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に配置するための、かつ前記第1の衝撃要素と前記第2の衝撃要素との間に作用する衝撃方向を有する衝撃荷重の結果としての衝撃エネルギーを吸収するための、炭素繊維に基づく繊維複合材料からボディとして形成された三次元の構成部材(1)であって、ここで、前記構成部材は、
- 少なくとも第1の端部(E1)および第2の端部(E2)と、
- 前記両端部の間に延びる長手方向(L)であって、衝撃の方向に配置され得る長手方向(L)と、
- 第1の表面(8)および第2の表面(9)ならびに前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びる壁厚(10、10’)を有する壁と
を有し、
- 前記壁は、炭素繊維の
複数の束
を有し、前記束内には前記炭素繊維を形成する炭素繊維フィラメントが互いに平行に配置されており、
- ここで、前記束および当該束を構成する前記炭素繊維は、主に1種または複数の架橋ポリマーを含むポリマーマトリックスに埋め込まれており、
- ここで、前記束は、前記壁厚(10、10’)にわたって均一に分布しており、前記第1の表面および/または前記第2の表面(8、9)に垂直(S)な方向に見たときに等方性に配向されており、かつ前記第1の表面および/または前記第2の表面(8、9)に平行に見たときに、前記束は、前記第1の表面および/または前記第2の表面(8、9)の一部と交差角を形成し、ここで、前記第1の表面および/または前記第2の表面(8、9)に平行に見た前記束は、前記構成部材内で、前記交差角の少なくとも一部が0°~90°の間で均一に分布した範囲から、そこに存在する少なくとも一部の前記交差角が1°よりも大きい範囲まであるように分布しており、
- ここで、前記壁内の前記炭素繊維の繊維体積割合は35体積%~70体積%の範囲にあり、
- ここで、前記炭素繊維の束の長さは3mm~100mmの範囲にあり、
- ここで、前記構成部材(1)は、前記炭素繊維の束からの繊維プリフォームの製造を含む方法、および任意選択的に、続いてマトリックス系を、射出、注入、浸透またはプレスし、架橋することによって前記繊維プリフォームに導入することによって得ることができ、ここで、前記マトリックス系は、1種または複数の架橋ポリマーから少なくとも一部がなり、
前記構成部材(1)が、前記第1の端部と前記第2の端部(E1、E2)との間に延びる内側空間を有する、閉じたまたは開いた中空プロファイルをボディとして有し、ここで、前記第1の端部(E1)および前記第2の端部(E2)は、前記第1の衝撃要素および前記第2の衝撃要素に接続可能であり、かつ前記ボディは外側および内側の横断面(11、11’)を有し、前記第1の表面(8)は前記内側空間とは逆を向き、前記第2の表面(9)は前記内側空間の方を向く、
ことを特徴とする、構成部材(1)。
【請求項2】
前記炭素繊維を構成する炭素繊維フィラメントが、前記第1の表面および/または前記第2の表面(8,9)に垂直(S)に見たときに壁内で互いに平行に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の構成部材(1)。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、ISO13586に従って測定された温度が20℃から100℃に変化したときに最大100%増加する破壊靭性を有することを特徴とする、請求項1または2記載の構成部材(1)。
【請求項4】
前記ボディの内側および/または外側の横断面(11、11’)が、波形形状、ジグザグ形状、角張った形状、曲線または前述の形状の組合せであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項5】
前記内側および/または前記外側の横断面(11、11’)が、円形、楕円形、正方形または長方形の輪郭または多角形の輪郭を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項6】
前記内側および/または前記外側の横断面(11、11’)が、前記長手方向(L)の延在部に沿って一定であることを特徴とする、請求項1記載の構成部材(1)。
【請求項7】
前記内側および/または前記外側の横断面(11、11’)が、前記第1の端部と前記第2の端部(E1、E2)との間の領域で、前記複合材料構成部材(1)の前記第1の端部から前記第2の端部(E1、E2)に向けて増加することを特徴とする、請求項1記載の構成部材(1)。
【請求項8】
前記壁厚(10、10’)が、前記第1の端部と前記第2の端部(E1、E2)との間の領域で、前記構成部材(1)の前記第1の端部から前記第2の端部(E1、E2)に向けて増加することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項9】
前記束を構成する炭素繊維および/または前記マトリックス系を包埋する前記ポリマーマトリックスが熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項10】
前記構成部材(1)が、その第1の端部(E1)に前記衝撃エネルギーを導入するための領域を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項11】
前記構成部材(1)が、前記長手方向(L)において互いに連結されて前記構成部材(1)を形成する2つの部分ボディから構成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項12】
前記部分ボディが、前記長手方向延在部において横方向にフランジ(6)を有し、それによって前記部分ボディが互いに接続されていることを特徴とする、請求項11記載の構成部材(1)。
【請求項13】
前記第1の表面および/または第2の表面(8、9)上の壁が、前記構成部材(1)の前記長手方向(L)の方向に延びる補強要素(2)を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項14】
前記壁が、一方向に配向された長繊維の少なくとも1つの層をさらに含み、ここで、前記少なくとも1つの層が、前記表面(8、9)の少なくとも1つまたは前記壁の内側にあり、かつ前記構成部材(1)の前記第1の端部と前記第2の端部(E1、E2)との間に延びていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項15】
前記壁内の炭素繊維の繊維体積割合が、45体積%~65体積%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【請求項16】
前記炭素繊維が5mm~70mmの範囲の長さを有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の構成部材(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に配置するための、かつ第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に作用する衝撃荷重の結果としての衝撃エネルギーを吸収するための繊維複合材料からのボディとして形成された三次元の構成部材に関する。
【0002】
自動車両の車両乗員の保護および衝突が発生した場合の車両付近の人や物体の保護は、自動車両の設計および製造における重要な側面である。衝突が発生した場合の自動車両の安全設計について言えば、乗員拘束システムが有効になっている間の車両の減速または車両乗員に作用する力が、衝突の過程で一定の閾値を超えないことが重要である。自動車両の衝突が発生した場合、衝突する車両の有効質量と、衝突する車両の減速と、力との間で関係が成り立ち、この文脈では衝撃構造または変形要素と呼ばれることの多いボディ構造用支持体が、塑性、弾性変形または脆性破壊により次第に機能しなくなる。そのような変形要素は、たとえば、自動車両のバンパークロスメンバーとフレームサイドメンバーとの間に取り付けられていてもよい。
【0003】
変形要素による衝突エネルギーの可能な低減は、利用可能な変形経路にわたる力曲線によって決定される。衝突の開始時は車両の速度が高いため、比較的高い運動衝突エネルギーまたは衝撃エネルギーを低減する必要があり、ボディ構造用支持体または変形要素を含めたボディ構造は、ボディ構造用支持体が適合されたレベルの力で機能しなくなるように設計される必要がある。
【0004】
ボディ構造用支持体または変形要素は、自動車両の衝突荷重が加わった場合に衝突エネルギーを吸収できないように設計されていることが多い。金属材料でできたボディ構造用支持体は、特定の間隔にわたって、ある一定の力のレベルで塑性変形するように設計されている。
【0005】
衝撃が加わった場合に長手方向に圧縮される金属パイプを使用したボディ構造用支持体が普及している。金属管、たとえばアルミニウム管は、バンパークロスメンバーと車両との間の強力な接続を保証する。しかしながら、金属パイプの圧縮時の比エネルギー吸収(kJ/kg)は特に高くない。さらに、金属パイプを長手方向に圧縮するために必要な初期の力は、多くの状況では大きすぎる場合がある。
【0006】
たとえば、炭素繊維強化プラスチックまたは別の繊維強化プラスチックでできたボディ構造用支持体または変形要素について言えば、たとえば長方形のプロファイルを有する中空プロファイルが提案されている。炭素繊維強化プラスチックでできたそのような中空プロファイルは、いわゆる「破砕」のために機能しなくなる。「破砕」破損メカニズムでは、主に脆性破壊において、ボディ構造用支持体が多かれ少なかれ崩壊する(粉砕または断片形成であって、分散化としても知られている)。この破損メカニズムは、特に前面衝撃が加わった場合に機能し、キャリアに及ぼす力は、キャリアの横断面に垂直である。この破損メカニズムで発生する、力の方向に垂直な平面の変形プロファイル横断面の表面あたりの力の量は、破砕破損応力と呼ばれる。
【0007】
独国特許出願公開第102012019923号明細書、独国特許出願公開第102014016024号明細書、独国特許出願公開第102014206610号明細書、または欧州特許第1366960号明細書は、繊維複合材料、特に炭素繊維に基づく複合材料から作られた、エネルギー吸収または衝撃エネルギーの吸収のための構成部材を開示している。これらのボディ構造用支持体または変形要素は、たとえば、編組、引抜成形もしくは巻付けによって、または欧州特許第1366960号明細書に記載されているように、好ましくは連続繊維を出発材料として、複数の繊維層、たとえば複数のファブリック層を互いに積層することによって製造され得る。引用文献に記載されているエネルギー吸収のための構成部材は、時として層状構造もしくはラミネート構造を有しているが、独国特許出願公開第102014016024号明細書に従って不連続繊維から作られることもでき、または欧州特許第1366960号明細書に記載されているように、ランダムに配向した繊維を有する領域を含めることもできる。全体として、前述の文書に記載されている構成部材は、複雑な構成部材構造を有している。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0147804号明細書はまた、エネルギー吸収のための要素を記載しており、これらの要素は、束ねられたフィラメント糸でできた繊維層の層状構造を有している。繊維は、それらの伸長方向が衝撃による圧力荷重に対して平行または斜めになるように、すなわち、繊維が衝撃荷重の方向に構成部材を有するように配置されている。さらに、米国特許出願公開第2005/0147804号明細書におけるエネルギー吸収のための要素では、要素の一端から他端にかけて繊維の密度が増加している。
【0009】
特開平06-264949号公報は、短繊維が中に混合されている繊維強化合成樹脂から構成されているエネルギー吸収のための要素を記載している。特開平06-264949号公報におけるエネルギー吸収のための要素は円筒形状を有し、円筒部分の壁は、壁厚が一端から他端にかけて増加するように設計されている。特開平06-264949号公報は、実施例において、3mmの繊維長および30重量%の濃度を有するガラス繊維が混合されたポリプロピレンマトリックスを用いて射出成形プロセスにより製造された要素を出発材料としている。
【0010】
欧州特許出願公開第3104036号明細書には、衝撃吸収またはエネルギー吸収のための熱可塑性マトリックスを有する繊維複合材料からの構造が記載されている。構造は、中空プロファイルとして通常設計されており、束状の強化繊維を有し得る。繊維は、熱可塑性マトリックスに埋め込まれた炭素繊維であり得る。繊維は、好ましくは、表面平面において二次元でランダムに配向されていてもよい。繊維複合材料を製造するために、強化繊維は切断され、次に開繊され、開繊された強化繊維は、次に繊維状または粒子状の熱可塑性樹脂と混合され得る。次に、混合物は加圧および加熱されて、繊維強化熱可塑性半製品に成形される。半製品のそのような1つまたは複数の層は、中空プロファイルを形成するために層状に互いに積み重ねられる。
【0011】
熱可塑性マトリックスの粘度は高いので、均一な機械的特性の基礎としての熱可塑性マトリックスによる繊維の均一な含浸およびマトリックス内での繊維の均一な分布は、処理中に困難になり得る。さらに、層状構造は、層に平行な方向に衝撃荷重が加わった場合に層の層間剥離をもたらす可能性があり、隣接する大きな材料領域の剥離と相まって、衝撃エネルギーの比吸収を大幅に低減し、またはこうして弱められた構成部材の領域の座屈に関連して、構成部材の突然の破損および極端に低い衝撃力吸収をもたらす。
【0012】
本発明の目的は、衝撃荷重が加わった場合のエネルギー吸収のための構造的に単純で製造が容易な構成部材を提供することである。構成部材は、衝撃荷重を受けたときに高い比エネルギー吸収を有しているべきである。さらに、構成部材に衝撃荷重が加わった場合、特に金属材料でできた変形要素について見られるような初期ピーク荷重が低減され、衝突/衝撃荷重の過程で、ある一定の閾値を超えてはならない。
【0013】
この目的は、第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に配置するための、かつ第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に作用する衝撃方向を有する衝撃荷重の結果としての衝撃エネルギーを吸収するための、炭素繊維に基づく繊維複合材料からのボディとして形成された三次元の構成部材によって達成され、ここで、構成部材は、
- 少なくとも第1の端部および第2の端部と、
- 両端部の間に延びる長手方向であって、本質的に衝撃の方向に配置され得る長手方向と、
- 第1の表面および第2の表面ならびに第1の表面および第2の表面との間に延びる壁厚を有する壁と
を有し、
- ここで、壁は、炭素繊維の束で少なくとも大部分が構成されており、束内には炭素繊維を構成する炭素繊維フィラメントが互いに平行に配置されており、
- ここで、束および当該束を構成する炭素繊維は、主に1種または複数の架橋ポリマーを含むポリマーマトリックスに埋め込まれており、
- ここで、束は、壁厚にわたって実質的に均一に分布しており、第1の表面および/または第2の表面に垂直な方向に見たときに実質的に等方性に配向されており、かつ第1の表面および/または第2の表面(8,9)に平行に見たときに、束は、第1の表面および/または第2の表面(8,9)の一部と交差角を形成し、ここで、束は、構成部材内で、交差角の大部分が0°~90°の間で実質的に分布した範囲から、そこに存在する大部分の交差角が1°よりも大きい範囲まであるように、第1の表面および/または第2の表面(8,9)に平行に分布しており、
- ここで、壁内の炭素繊維の繊維体積割合は35体積%~70体積%の範囲にあり、
- ここで、炭素繊維の束の長さは3mm~100mmの範囲にあり、
- ここで、構成部材は、炭素繊維の束からの繊維プリフォームの製造を含む方法、ならびに任意選択的に、続いてマトリックス系を、射出、注入、浸透またはプレスすることによって繊維プリフォームに導入することによって得ることができる。
【0014】
構成部材は、長手方向延在部に平行な視線方向のボディとして設計される必要がある。ボディという用語には、プロファイル、ハーフプロファイル、または長手方向軸に沿って断面が変化してもよい他の形状の両方が含まれる。ボディは、中空、中実および/または部分的に充填されていてもよく、かつ/またはその長手方向延在部は、中間ピースによって分割されていてもよい。ボディはさらに異なる壁厚を有し、補強要素を含み、かつ/または凹部を有していてもよい。構成部材を形成するボディは、ワンピースから(一体で)または複数の部分ボディから構成されていてもよい。部分ボディも同様に、異なる断面を有し、中空、中実および/または部分的に充填され、かつ異なる壁厚および/または形状を有していてもよい。
【0015】
構成部材は、変形要素とも呼ばれ得る。炭素繊維の束は、炭素繊維束、強化繊維束、または単に束とも呼ばれ得る。
【0016】
構成部材はまた、マトリックス系の構成部材(たとえばデュロマーマトリックス樹脂)のその後の導入なしに形成され得る。この実施形態では、繊維束ひいては構成部材自体がすでに多量のポリマーマトリックスを有しているため、構成部材の製造にマトリックス材料(マトリックス系)をさらに導入する必要はない。そのような場合、構成部材は、たとえば、圧力および熱を使用してポリマーマトリックスの構成部材を活性化することによって製造され得る。
【0017】
(繊維束が埋め込まれている)ポリマーマトリックスは、主に1種または複数の架橋ポリマーからなる。比較的程度は低いが、ポリマーマトリックスは、部分的に架橋されたポリマーのほんの一部を有することもできる。たとえば、ポリマーマトリックスは、完全に架橋可能なデュロマーの主たる部分と、熱可塑性樹脂系および/または添加剤のほんの一部とを有することができる。熱可塑性デュロマーが好ましくは使用される。別の実施形態では、ポリマーマトリックスは、熱可塑性部分を有するエポキシの集合体からなる。
【0018】
任意の実施形態では、マトリックス系は、好ましくは、主に1種または複数の架橋ポリマー(たとえばデュロメリックマトリックス樹脂)からなるポリマーマトリックス系である。構成部材の製造では、マトリックス系が好ましくは硬化する。(構成部材の製造に加えて任意に追加され得る)マトリックス系はまた、好ましくは、主に1種または複数の架橋ポリマーからなる。比較的程度は低いが、マトリックス系は、完全にまたは少なくとも部分的に架橋されたポリマーを有することができる。たとえば、マトリックス系は、完全に架橋可能なデュロマーの主たる部分と、熱可塑性樹脂系および/または添加剤のほんの一部とを有することができる。熱可塑性デュロマーも使用され得る。更なる実施形態では、マトリックス系は、熱可塑性部分を有するエポキシの集合体からなる。
【0019】
ポリマーマトリックスおよびマトリックス系を選択することにより、構成部材は、有利には広い温度範囲にわたってほぼ一定の特性を有する。(たとえば、熱可塑性樹脂を使用したときに起こるような)エネルギー吸収の温度依存変動が、有利には回避され得る。
【0020】
構成部材の第1の表面および/または第2の表面を超えた繊維束の理論的な線形延長を考慮した場合、この線は構成部材の第1の表面および/または第2の表面と角度を形成する。構成部材の第1の表面および/または第2の表面(第1の表面および/または第2の表面の一部)の十分に小さくて平坦な領域を考慮すると、第1の表面および/または第2の表面の間の束の大部分は、第1の表面および/または第2の表面といわゆる交差角を形成する。繊維束の交差角は、交差角が実質的に0°~90°の間で分布した範囲から、交差角が大部分で1°よりも大きい、好ましくは2°よりも大きい、最も好ましくは3°よりも大きい角度を有する繊維束の配置まである。第1の表面および/または第2の表面に平行に見たときに、主に等方性である繊維束の分布では、交差角は本質的にすべて0°~90°の間の値を有し、それによって、はるかに頻度が高かったり少なかったりする値が表されることはないだろう。繊維束が第1の表面および/または第2の表面と比較的平行である場合、繊維束の主たる部分は1°よりも大きい交差角を有する。その結果、繊維束の大部分は、構成部材における構成部材の表面に本質的に正確に平行ではない。繊維束は定義された範囲内で任意の配置をとり得ることを明確にすべきであるが、しかしながら、構成部材内の大部分の繊維束は、選択された配置を有する。
【0021】
「主たる部分」とは、約70%~100%、好ましくは80%~95%、最も好ましくは85%~90%の部分を意味すると理解されるべきである。
【0022】
「本質的にすべて」という表現は、これが80%~100%、好ましくは85%~95%に当てはまることを意味する。
【0023】
繊維束は、たとえば、構成部材において等方性であり、繊維束の繊維が短く、構成部材の壁厚が繊維長よりも大きければ、表面に関しても等方性である。この例として、壁厚が5mmの構成部材では3mmの繊維長を使用することができる。炭素繊維の束と構成部材の表面との間の交差角の非等方性の分布であって、束の主たる部分の交差角が1°よりも大きくなるのは、特に束の繊維長が壁厚に対して比較的大きく、たとえば、繊維長が50mmで壁厚が2mmの場合である。構成部材は、異なる繊維長の異なる束を有することができ、さらに、構成部材内で、あるいは構成部材が異なる場合も、異なる壁厚が考えられるので、表面に平行な束の配置は、これらの2つの可能性の間で変動する。
【0024】
構成部材の長手方向延在部は、好ましくは、長手方向に垂直なその延在部よりも大きい。
【0025】
本発明による繊維複合材料からのボディとして形成された三次元の構成部材は、第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間、したがって、たとえば、自動車両のバンパークロスメンバーとフレームサイドメンバーとの間にあり、衝突が発生した場合、または第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間に作用する衝撃荷重が加わった場合に衝撃エネルギーを吸収し得る。これは、本発明による構成部材が、変形経路にわたる力曲線から判別され得る均一な吸収挙動をもたらし、ここで、衝撃荷重の初期段階におけるピーク荷重は比較的低いことを示している。同時に、金属材料でできた構成部材または変形要素と比較して、高い比エネルギー吸収(kJ/kg)が、本発明による構成部材で達成され得る。
【0026】
したがって、本発明による構成部材は、調節可能な長い変形経路にわたって可能な限り一定のレベルで、定義されたエネルギー吸収を可能にする解決策を提供する。実際のエネルギーレベルは、とりわけ構成部材の幾何学的設計(特に壁厚)によって設定され得る。さらに、構成部材の等方性材料構造が、構成部材の長手方向延在部に対して軸方向に伝わらない衝撃荷重が生じても、一定のエネルギー吸収を提供する。
【0027】
同等以上のレベルの比エネルギー吸収も、繊維複合材料の層が互いに積層された層状構造を有する繊維複合材料からの変形要素と比較して示されている。破損が起こった場合、層状構造を有する構成部材または変形要素では、層は少なくとも部分的に層間剥離され、すなわち、層は剥離または破壊され、それに伴って、結果生じる力レベルがより低下する。層状構造を有するそのような構成部材または変形要素とは対照的に、そのような故障は、本構成部材または変形要素では起こらない。なぜなら、壁の厚みに垂直な方向に見たとき、または第1の表面および/または第2の表面に平行な方向に見たときに、束の大部分が、等方性の配置と、束が構成部材の第1の表面および/または第2の表面に対して1°よりも大きい交差角を実質的に下回らない配置との間に配置されているからである。これは、層状構造ではなく、束による構成部材の壁のさまざまなレベルの浸透、つまり繊維構造の絡み合いがあることを意味する。
【0028】
最後に、壁厚全体で本質的に均一である束の分布、特に、第1の表面および/または第2の表面に垂直な方向に見たときのそれらの実質的に等方性の配置により、衝撃荷重が加わった場合に、ピーク荷重のない均一な破損が衝撃荷重の初期段階で起こるようになる。
【0029】
理論に拘束されるものではないが、本発明による構成部材の繊維複合材料ひいては壁は、炭素繊維の束から少なくとも大部分が構成され、本発明により必要な繊維束の配向は、高い比エネルギー吸収の根拠であるという事実が想定される。衝撃荷重と、結果生じる構成部材の破損が発生した場合に、それによって引き起こされる破損ゾーンにおいて、衝撃エネルギーは、それが分解エネルギーに変換されて繊維とマトリックスとの間に新しい表面を生じるように、継続的に作用する衝撃力から散逸される。構成部材の表面に平行な等方性を有するだけでなく、厚さ全体にわたる繊維束の強力な絡み合いも保証する、本発明による繊維複合材料の強化繊維構造により、高い分解エネルギー密度、ひいては高い比エネルギー吸収が、破損ゾーンが構成部材の体積全体で進行したときに保証され得る。
【0030】
同様に、35体積%~70体積%の範囲における壁内での炭素繊維の高い繊維体積割合は、衝撃荷重下での構成部材の高い比エネルギー吸収の根拠となる。繊維体積割合が35体積%未満の場合、衝撃荷重下での構成部材の破損挙動は、マトリックス破損が占めており、すなわち、破損挙動は、マトリックスの破壊または亀裂ひいては中間的な繊維の破壊によって決定されることに留意されたい。繊維体積割合が35体積%を超える場合、破損挙動は、繊維とマトリックスとの間の境界面での破損、すなわち繊維の破損によって主に決定される。最初の破損モードと比較して、後者の2つの破損モードのより高い破損力により、材料中に高い分解エネルギー密度、ひいては高い比散逸エネルギー、ひいては高い比エネルギー吸収が生じる。他方で、70体積%を超えると、構成部材内のマトリックスの十分な分布および繊維束のフィラメント表面での濡れをもはや保証できなくなる。また、非常に高い値での繊維体積割合は、フィラメント形状によって制限されると想定される。なぜなら、円形のフィラメント横断面の場合、繊維束の繊維方向に沿った横断面で最も密度の高い円形の充填物を上回ることはできないからである。70体積%を超えると、この繊維体積割合により、繊維マトリックスの接続が不十分になり、ひいては構成部材の比エネルギー散逸が確実に低くなる。本発明による構成部材の好ましい実施形態では、構成部材の壁内での炭素繊維の繊維体積割合は45体積%~65体積%の範囲にある。
【0031】
本発明によれば、炭素繊維の束、すなわち強化繊維束は、互いに平行に整列された炭素繊維フィラメントからなり、3mm~100mmの長さを有する。長さは、好ましくは5mm~70mmの範囲にあり、最も好ましくは10mm~50mmの範囲にある。構成部材の壁内での炭素繊維の達成可能な繊維体積割合を考慮すると、特に45体積%を超える部分を達成するために、本発明による構成部材の壁が、互いに異なる長さを有する強化繊維束のいくつかのグループを有し、そうすることで強化繊維束の長さが全体的に分布を有する場合に有利である。たとえば、20mm、30mmおよび50mmの長さを有する強化繊維束を互いに組み合わせてもよい。
【0032】
炭素繊維の束、すなわち強化繊維束は、たとえば500~50,000本の繊維フィラメントを有する従来の炭素繊維フィラメント糸からなってもよい。しかしながら、各強化繊維束が500~24,000本の強化繊維フィラメントからなる場合に有利である。束内のフィラメントの本数は、構成部材の壁内で強化繊維束の可能な限り最も均一な分布を達成し、かつ可能な限り高い繊維体積割合を達成するために、最も好ましくは500~6,000本の範囲、非常に好ましくは1,000~3,000本の範囲にある。
【0033】
一実施形態では、マルチフィラメント補強糸は、JIS-R-7608に従って測定される少なくとも5000MPaの強度およびJIS-R-7608に従って測定される少なくとも260GPaの引張弾性率を有する炭素繊維糸として使用され得る。
【0034】
構成部材の壁内で高い繊維体積割合を達成するために、特に45体積%を超える炭素繊維の部分を達成するために、壁にフィラメントの数が異なる強化繊維束のいくつかのグループがある場合も有利であることが証明された。なぜなら、この結果、壁内の束の充填密度が高くなるからである。たとえば、3,000本、6,000本および12,000本のフィラメントの強化繊維束を組み合わせてもよい。
【0035】
壁内に必要な繊維体積割合を達成するために、本発明による構成部材の壁を形成する束は、好ましくは1mm~20mmの範囲の幅、最も好ましくは1mm~10mmの範囲の幅を有する。同様に、束の高い充填密度を達成するために、つまり、構成部材の壁内で45体積%を超える高い繊維体積割合を達成するために、束の横断面が束内の炭素繊維フィラメントの延在部に垂直に可能な限り平坦である場合にも有利である。束は、好ましくは帯状であり、少なくとも25の束幅対束厚の比を有する。束幅対束厚の比は、最も好ましくは30~150の範囲にある。
【0036】
強化繊維束を、それらの束幅対束厚の比、それらの長さ、および強化繊維フィラメントの本数に関して適切に選択することにより、特に、構成部材の壁内の強化繊維束の高い充填密度、ひいては特に高い繊維体積割合が達成され得る。構成部材の特に非常に好ましい実施形態では、構成部材の壁内に配置された束は、平坦な横断面に加えて、異なる長さおよび異なる本数のフィラメントを有する。これにより、構成部材の壁内に特に高い繊維体積割合がもたらされる
【0037】
衝撃エネルギーを吸収するための、すなわち変形または衝突要素としての本発明による構成部材の使用のために、温度または湿度などの環境条件の可能な限り広い範囲にわたっての均一な材料の挙動が必要である。自動車の用途には、メーカーおよび適用領域に応じて、異なる連続動作温度が適用される。エンジンまたは排気システムに近い領域での用途のために、-40℃~120℃の温度窓が確立されている。自動車工学に関連するほとんどの熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、この温度範囲にある。たとえば、自動車分野で広く使用されているポリアミドのガラス転移温度は、約35℃~60℃の範囲にある。結果として、そのような熱可塑性樹脂は、同じ特性を有する衝撃エネルギーを吸収するための構成部材において使用することが困難である。
【0038】
当然ながら、ガラス転移温度がより高い熱可塑性樹脂、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのPAEKファミリーの熱可塑性樹脂もある。しかしながら、これらのマトリックス材料は、自動車産業の大規模な量産における用途ではあまりにも高価である。一方では、材料の費用が高すぎ、他方では、溶融温度が高いゆえに加工温度が高いことから、かなりの追加費用がかかる。融点が250℃(好ましくは220℃)を超える熱可塑性樹脂は適していない。さらに、5重量%を超える、好ましくは3重量%を超える吸水量を有するすべてのマトリックス材料は、車両の構造用構成部材には適していない。吸水量が増えると、構成部材が膨潤し、機械的性能が低下する。したがって、一貫した特性、たとえば一定のエネルギー吸収値を、変化する環境条件で達成することができない。
【0039】
したがって、構成部材内の束および当該束を構成する炭素繊維は、好ましくは、主に1種または複数の部分的にまたは完全に架橋されたポリマーからなるポリマーマトリックスに埋め込まれている。ポリマーマトリックスは、好ましくは、マトリックス割合に基づいて少なくとも60体積%、最も好ましくは少なくとも75体積%の1種または複数の部分的にまたは完全に架橋されたポリマーからなる。ポリマーマトリックスの他の構成部材は、たとえば、構成部材の耐衝撃性を高めるために熱可塑性樹脂であり得るか、またはたとえば、構成部材の加工性または耐用年数に影響を与える他の添加剤であり得る。有利な実施形態では、ポリマーマトリックスは、アクリレートまたはメタクリレートに基づくマトリックス材料を有する。さらに、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂またはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂がポリマーマトリックス中に含まれていてもよい。
【0040】
構成部材の壁内の炭素繊維は、好ましくは、壁の第1の表面および/または第2の表面に垂直に見たときに引き伸ばされている(
図12を参照)。
【0041】
前述のように、壁は、炭素繊維の束で少なくとも大部分が構成されており、束内には炭素繊維を構成する炭素繊維フィラメントが互いに平行に配置されており、ここで、束および当該束を構成する炭素繊維は、主に1種または複数の架橋ポリマーからなるポリマーマトリックスに埋め込まれている。これは、完成した構成部材の束構造が実際に保持されることを意味する。有利には、炭素繊維は束に引き伸ばされ、その結果、本発明による構成部材に対して高レベルの圧縮剛性値を達成することができる。
【0042】
本発明による構成部材のこの特性は、用途において有利である。なぜなら、構成部材または変形要素が衝撃荷重にさらされ、それにより衝突ゾーンの形成中に構成部材が破損したときに、衝突ゾーンの下に位置する材料は圧縮力に耐えなければならず、故障してはならないからである。この高圧剛性が必要なのは、それが破損(衝突)によって損傷をまだ受けていない支持ゾーンでの変形を低く抑え、ひいては座屈による構成部材の早期破損を妨げるからである。衝突破損応力と比べて圧縮剛性が比較的低い場合は、その他に構成部材を非常に厚くする必要があるか、または最悪の場合、座屈プロセスにより常に破損することになる。
【0043】
本発明の文脈では、構成部材内の炭素繊維の伸張形態とは、炭素繊維がそれ自体で屈曲または座屈しておらず、炭素繊維の長手方向延在部に関する変化が構成部材の形状によるものに限られていることを意味すると理解される。したがって、繊維束は、長手方向延在部に、または長手方向延在部に対して横方向に、構成部材の形状によって引き起こされない屈曲部または起伏部を有しない。
【0044】
織布、不織布またはシート成形コンパウンド(SMC)に基づくものなどの従来の繊維複合材料では、繊維は湾曲しているか、または波状になっているため、引張、特に圧縮荷重に対する剛性値(弾性率)が低下している。これらの低下した特性は、静的荷重および動的荷重の両方にとって不利である。そのような繊維の湾曲したまたは波形の配置は、たとえば、X線検査によって可視化され得る。たとえば、Handbuch der Faserverbundwerkstoffe/Composites,Springer Verlag、2014年、第4版、第253頁の
図154または第270頁の
図270には、SMC構成部材のX線が示されている。強化繊維は、粘性マトリックスの流れによる充填プロセス中にSMC構成部材の製造時に配向され、起伏が付けられる。繊維束は直線に沿って整列していないが、比較すると明確な曲率を有している。さらに、マトリックスおよび繊維の強力な流れにより、充填プロセス中に繊維の分布が不均一になる。
【0045】
比較すると、本発明による炭素繊維束は、構成部材の横断面にわたって均一に分布している。この場合、均一な分布とは、構成部材の繊維束長の少なくとも半分のサイズを有する構成部材の各サンプルについて、繊維体積割合の変動が±10体積%未満であることを意味する(たとえば、構成部材の壁厚2mmおよび繊維束長50mmで、直径25mmおよび厚さ2mmの円柱状サンプルの場合)。さらに、プリフォームが製造されたとき、束はすでに本質的に最終的な形状で集積されている。ポリマーマトリックスの流動性のある構成部材のみが、射出および注入プロセス中に追加される。プリフォームの固定により、炭素繊維束のズレが排除される。さらに、炭素繊維束は、その引き伸ばされた方向を維持する。このようにして、高い圧縮剛性値が達成され、構成部材の樹脂リッチなゾーンまたは特に強く変形した領域などの弱い箇所での望ましくない破損が回避される。
【0046】
構成部材は、炭素繊維の束から、プリフォームと呼ばれることも多い繊維プリフォームを最初に製造することによって、簡単な方法で製造することができる。すでに最終輪郭に近い繊維プリフォームは、最終輪郭に近い構成部材のネガまたはポジ形状を有するツールに入れられる。強化繊維束にすでに十分なマトリックス材料が含まれている場合は、さらにマトリックス材料を追加する必要はない。そのような場合、マトリックス材料は、たとえば構成部材の製造のために、圧力および熱で活性化することができる。しかしながら、追加のマトリックス材料(マトリックス系)が従来の方法によって繊維プリフォームに供給されることも提供され得る。たとえば、マトリックス材料、すなわち、まだ完全にまたは部分的に硬化されていないマトリックス樹脂を、注入、浸透、射出またはプレスによって、ツールひいては繊維プリフォームに導入することができる。次に、(たとえば、デュロメリックマトリックス樹脂を硬化させることによる)ポリマーマトリックス材料の完全なまたは部分的な架橋により、構成部材が形成される。
【0047】
繊維プリフォームは、たとえば、欧州特許第2727693号明細書に記載されている方法によって、安価にかつ簡単な方法で製造することができ、その開示は、参照により明示的に組み込まれる。欧州特許第2727693号明細書の方法は、以下のステップを含む:
- バインダーを備えた強化繊維の少なくとも1つの連続した帯形状のストランドをテンプレートから配置ヘッドに送り、ここで、少なくとも1本のストランドは、少なくとも5mmのストランド幅、および帯形状のストランドの重量に基づいて2重量%~20重量%、あるいは15重量%~75重量%の範囲のバインダーの濃度を有する、ステップ、
- 配置ヘッドに配置された展開ユニットで少なくとも1本の連続した帯形状のストランドを展開し、配置ヘッドに配置された第1の搬送装置によって、配置ヘッドに配置された長手方向の分離装置に向けて少なくとも1本のストランドを搬送方向で搬送し、それによって、搬送方向を横切る方向に少なくとも1本のストランドを安定させる、ステップ、
- 少なくとも1本のストランドを、少なくとも1つの分離要素によって、その長手方向延在部に沿って長手方向の分離装置で2本以上の部分ストランドに切断するステップ、
- 部分ストランドを、配置ヘッドに配置された第2の搬送装置によって搬送方向で、配置ヘッドに配置された切断ユニットに搬送するステップ、
- 切断ユニットを使用して、部分ストランドを定義された長さの強化繊維束へと切断するステップ、
- 強化繊維束を表面上および/または表面上に堆積された強化繊維束に堆積させ、強化繊維束を表面上および/または表面上に堆積された強化繊維束上に固定して繊維プリフォームを形成し、ここで、配置ヘッドと表面との間の相対的な動きは、表面上に強化繊維束が荷重に応じて適切に配置されるように設定する、ステップ。
【0048】
炭素繊維がバインダーと共に提供される炭素繊維の束は、好ましくは、繊維プリフォームを製造するために使用される。このバインダーは、たとえば、熱活性化およびその後の冷却によって繊維プリフォームを安定状態にすることができる材料であり、これにより、繊維プリフォームが、その後のプロセスステップで処理可能になる。
【0049】
この場合、バインダーは、炭素繊維のフィラメントに通常適用されるように、改善された加工性および良好な繊維クロージャー、すなわちフィラメントの少なくとも部分的な相互接続を達成するための繊維調製物であり得る。そのような調製物は、多くの場合、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂に基づいている。(繊維束が埋め込まれている)ポリマーマトリックスは、好ましくは、炭素繊維束用のバインダーまたは調製物を表す。しかしながら、本発明による構成部材用の繊維プリフォームの製造のために、一般に使用される調製物の濃度と比較して増加した含有量が、バインダーを備えた炭素繊維糸の総重量に基づいて、好ましくは2重量%~14重量%の範囲、最も好ましくは3重量%~7重量%の範囲で必要である。
【0050】
ここで適切なバインダーは、熱可塑性もしくは未硬化もしくは部分的に硬化したデュロメリックポリマーまたはこれらのポリマーから構成されるポリマー組成物である。適切な熱可塑性ポリマーは、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、芳香族ポリヒドロキシエーテル、熱可塑性ポリウレタン樹脂またはこれらのポリマーの混合物である。未硬化もしくは部分的に硬化した適切な熱硬化性ポリマーの例は、エポキシ、イソシアネート、フェノール樹脂または不飽和ポリエステルである。
【0051】
バインダーを備えた炭素繊維または炭素繊維束が、繊維プリフォームを製造するために使用されるような加工温度で、すなわち束が繊維プリフォーム上に堆積されるとき、すなわち一般的に室温で粘着性ではない場合に有利である。しかしながら、高温では、バインダーまたはバインダーと共に提供される炭素繊維は粘着性で、それから製造される繊維束の良好な接着をもたらすべきである。そのような強化繊維糸または強化繊維のストランドは、たとえば、国際公開第2005/095080号に記載されており、その開示は、ここで明示的に参照される。そこでのフィラメント糸は、いくつかの異なるエポキシ樹脂で構成されたバインダーで浸透されており、ここで、これらのエポキシ樹脂は、エポキシ値および分子量などのそれらの特性に関して、ならびにそれらの濃度に関して、定義された方法で互いに異なる。その開示が明示的に参照される国際公開第2013/017434号はまた、バインダーが予備含浸された炭素繊維を記載している。
【0052】
本発明による構成部材の有利な実施形態では、構成部材で使用されるポリマーマトリックスおよび/またはマトリックス系は、ISO 13586に従って測定される温度が20℃から100℃に変化したときに最大100%増加する破壊靭性を有する。そのようなマトリックス特性を有する構成部材は、マトリックス脆性が高い。(マトリックスが脆くなるほど、破壊靭性は低くなる)。そのような破壊靭性を有するマトリックス材料を選択することによって、個々の繊維束に力が加えられると構成部材が層間剥離し、その結果、構成部材に大きな内面が形成され、これは、衝突エネルギーの熱への最終的な変換に寄与する。構成部材に使用されるポリマーマトリックスは、強化繊維束のポリマーマトリックスおよび/または構成部材の製造のために任意に追加されるマトリックス系であり得る。
【0053】
前述のように、構成部材は、長手方向に平行な視線方向のボディとして設計されている。ボディとして設計することにより、座屈荷重に対して安定した自立構造が得られる。このようにして、衝撃エネルギーは、変形経路にわたって均等に散逸され得、更なるエネルギー散逸を終わらせる構成部材の座屈が少なくとも大幅に回避され得る。
【0054】
好ましい実施形態では、構成部材の長手方向に平行に見たときに、ボディは、プロファイル、より好ましくは波形プロファイル、ジグザグプロファイル、角張ったプロファイル、または前述のプロファイルの組合せを有するプロファイルであり得る。しかしながら、任意の、それでいて不規則なプロファイルであってもよい。ボディの内側および/または外側の横断面は、好ましくは、波形形状、ジグザグ形状、角張った形状、曲線または前述の形状の組合せを有する。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、構成部材は、第1の端部と第2の端部との間に延びるキャビティを有する閉じた中空プロファイルをボディとして有することができ、ここで、第1の端部および第2の端部は、第1の衝撃要素および第2の衝撃要素に接続可能であり、かつ中空プロファイルは外側および内側の横断面を有し、第1の表面はキャビティとは逆を向き、第2の表面はキャビティの方を向く。内側および/または外側の横断面が円形、楕円形、正方形もしくは長方形の輪郭または多角形の輪郭を有する中空プロファイルが好ましい。そのような中空プロファイルの例は、たとえば、欧州特許出願公開第3104036号明細書または米国特許出願公開第2005/0147804号明細書にも見ることができる。
【0056】
構成部材は、1つよりも多い第1の端部および第2の端部を有することができる。たとえば、構成部材は3つ以上の端部を有することができる。簡素化するために、構成部材がこれらに限定されることなく、第1の端部および第2の端部が以下で参照される。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明による構成部材の壁厚は、長手方向延在部にわたって一定である(
図2cを参照)。さらに好ましい実施形態では、構成部材の壁厚は、構成部材の第1の端部から第2の端部に向けて増加する(
図2dを参照)。構成部材のボディとしての中空プロファイルの場合、内側および/または外側の横断面は、好ましくは、長手方向延在部に沿って一定であり得る。同様に、ボディとして中空プロファイルを有する構成部材の場合、内側および/または外側の横断面は、好ましくは、複合材料-構成部材の第1の端部から第2の端部までの第1の端部と第2の端部との間の領域で増加し得る。
【0058】
内側および外側の横断面が一定である場合、構成部材の第1の端部から第2の端部まで壁厚が一定の壁が得られる。この実施形態では、壁の横断面積も、長手方向の構成部材の延在部にわたって一定である。同様に、第1の端部から第2の端部までの長手方向延在部に沿って内側および外側の横断面が増加する場合、一定の壁厚を得ることができる。しかしながら、この場合、壁の横断面積は、構成部材の第1の端部から第2の端部までの長手方向の構成部材の延在部にわたって増加する。本発明による構成部材の更なる有利な実施形態は、壁厚が構成部材の第1の端部から第2の端部までの第1の端部と第2の端部との間の範囲で増加するものである。構成部材の更なる設計により、構成部材の壁が部分領域に限ってより厚いおよび/またはより薄いことが提供される。たとえば、部分領域内で壁がより厚い部分領域は、リブを有することができる。部分領域内で壁がより薄い部分領域は、たとえば、力を加えるために使用され得るトリガー領域とすることができる。
【0059】
構成部材は、好ましくは、複数の部分ボディから構成される。たとえば、構成部材は2つのボディシェルからなり、これらを(たとえばフランジによる接続によって)組み立てて構成部材を形成することができる。最終用途(たとえば車両)では、構成部材を個別に、またはいくつかの構成部材とともに、衝撃エネルギーの吸収要素として使用することができる。複数の構成部材が使用される場合、使用される構成部材を、同一または異なるように構成することができ、かつ/または互いに隣り合って、重なり合って、かつ/または中心点の周りに同心円状に配置することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、ボディとしての構成部材が閉じた中空プロファイルである場合、この構成部材は、長手方向に互いに接続されて中空プロファイルを形成する2つの部分プロファイルから構成される。そのような部分プロファイルは、たとえばハーフシェルの形で、繊維プリフォームまたはプリフォームを製造するプロセスによって、特に簡単な方法で製造することができる。なぜなら、強化繊維束を、プリフォームの製造中に開いた形で配置することができるからである。部分プロファイルは、好ましくは、長手方向に側方フランジを有し、それによって部分プロファイルが互いに接続される。接続は、好ましくは、接着剤を使用して、たとえば、2成分構造接着剤を使用して行うことができる。接続はまた、たとえば欧州特許出願公開第3104036号明細書に記載されているように、フランジを囲むクランプ、ねじ込み、溶接および/またはリベット留めによって、またはフランジを囲む補助構造によって行うことができる。部分プロファイルは、好ましくは、形状結合式および/または摩擦結合式に互いに接続される。
【0061】
構成部材が少なくともその第1の端部および/または第2の端部に衝撃エネルギーを導入するための領域を有する場合に有利である。本発明による構成部材を使用するとき、衝撃荷重が加わった場合に、破損ゾーンが制御されて形成され、それが進行したときに構成部材によって可能な限り多くのエネルギーが吸収されることが重要である。これは、衝撃力または衝撃エネルギーが、衝突要素とも呼ばれることの多い構成部材、衝撃エネルギーを導入するための衝突要素の端部の領域、いわゆるトリガー領域であって、たとえば、横断面積の傾斜部分(面取り)であってもよい領域に最初に導入されるという点で有利に達成することができる。この領域の正確な幾何学的設計はそれほど重要ではないことが証明されている。しかしながら、それは、壁厚または壁の横断面積を低減することを含まなければならず、何よりも、対象となる破損の所定の破壊点である。同じ力が、面取りされた先端の領域のより少ない材料に作用するので、増加した張力がトリガー領域に作用し、材料が破損する。
【0062】
本発明によれば、本構成部材の壁は、炭素繊維の束から少なくとも大部分が構成され、束内には炭素繊維を構成する炭素繊維フィラメントが互いに平行に配置されている。しかしながら、好ましい場合では、壁は、一方向に配向された長繊維の少なくとも1つの層をさらに含むことができ、ここで、少なくとも1つの層は、表面の少なくとも1つまたは壁の内側に配置され、構成部材の第1の端部と第2の端部との間に延びることができる。そのような一方向に配向された長繊維の層を、たとえば、構成部材を座屈に対してさらに安定させるために使用することができる。長繊維は、好ましくは、構成部材の第1の端部から第2の端部まで延びる。2つよりも多い端部がある場合、長繊維は、好ましくは、構成部材の少なくとも2つの端部の間で延びる。そのような長繊維は、好ましくは、長さが10mmを超え、幅が3mmを超える繊維を有する。
【0063】
本発明による構成部材の有利な実施形態では、第1の表面および/または第2の表面上の壁は、構成部材の長手方向の方向に延びる補強要素を有する。そのような補強要素は、たとえば、個別に製造された要素を接着することによって、たとえば、表面に適用されるリブまたはラメラの形状を有することができる(
図2も参照)。補強要素はまた、繊維複合材料からなり得るが、たとえば、金属材料でできた要素であってもよい。補強要素が繊維複合材料からなる場合、補強要素はまた、構成部材または構成部材の壁に一体的に接続され、壁と一緒に製造され得る。たとえば一方向プリプレグなどの一方向繊維の帯を繊維プリフォームの壁上に積層し、マトリックス材料を射出した後、硬化して、マトリックスを備えた繊維プリフォームと一緒に構成部材を形成することができる。しかしながら、補強要素は、好ましくは、構成部材の壁を形成するためにも使用されたのと同じ炭素繊維の束からなる。
【0064】
更なる好ましい実施形態では、恒久的な耐荷重要素が構成部材に組み込まれ、第1または第2の衝撃要素に接続され得る。衝撃荷重が加わった場合、この恒久的な耐荷重要素は構成部材と一緒に破壊されるのではなく、移動および/または変形される。そのような要素を使用して、衝撃荷重後に構成部材が破壊された後でも、第1の衝撃要素と第2の衝撃要素との間の接続が維持されるようにすることができ、すなわち、たとえばバンパークロスメンバーが自動車両のフレームサイドメンバーに保持され続けたままとなる。たとえば、恒久的な耐荷重要素は、衝突が発生した場合または衝撃荷重が加わった場合に構成部材内で伸縮自在に変位する鋼管であり得る。いくつかの恒久的な耐荷重要素を構成部材に統合することも可能である。
【0065】
本発明を、例によって以下に記載し、ここで、例および図は、本発明の単なる実施形態を表すものであって、限定的なものとして理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】衝突時の本発明によらない構成部材と本発明による構成部材の例示的な実施形態との間の電圧経路プロファイルの比較を概略的に示す図である。
【
図2】構成部材の可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2a】構成部材の可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2b】構成部材の可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2c】構成部材の可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図2d】構成部材の可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図4】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図5】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図6】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図7】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図8】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図9】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図10】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図11】構成部材の例示的な実施形態の衝突データを曲線で示す図である。
【
図12】細長い繊維束を有する構成部材のX線画像を示す図である。
【0067】
図1は、衝突時の本発明によらない構成部材と本発明による構成部材の例示的な実施形態との間の電圧経路プロファイルの比較を概略的に示す。
【0068】
図2、2a、2b、2cおよび2dは、構成部材の可能な実施形態を概略的に示す。
【0069】
図1および
図3~
図11は、構成部材の例示的な実施形態のさまざまな衝突データを曲線で示す。X軸はそれぞれ、測定された経路(mm)を表す。Y軸は、測定された力(kN)を示す。
【0070】
図1は、繊維強化プラスチックでできた構成部材と比較したアルミニウム構成部材(曲線A)の圧力または応力変位プロファイルの比較を示す。X軸は経路をmmで表し、Y軸は圧力または応力をMPaで表す。繊維強化プラスチックでできた構成部材は、炭素繊維を有する熱可塑性材料の本発明によらない例(曲線B)および本発明の例示的な実施形態による構成部材(曲線C)であり、ここで、50mmの繊維束の平均切断長さを有する炭素繊維は、構成部材内に等方性の繊維束分布で存在する。繊維強化プラスチックでできた両方の構成部材は同じ形状を有し、ハーフシェルで構成されていた。アルミニウム構成部材は、内径66mmおよび壁厚2mmの管からなっていた。構成部材の形状は調整されているため、結果を比較することができる。アルミニウム構成部材の経路に関連する振幅変動は、繊維強化プラスチックでできた構成部材の振幅変動よりもはるかに顕著であることがわかる。本発明によらない繊維強化プラスチックでできた構成部材と比較して、本発明の例示的な一実施形態による破損構成部材の初期応力振幅は、有意に低い。その結果、運動エネルギーは、より低い初期の力で早くも変形エネルギーに変換され、後続の車両構造または車両乗員は、たとえば大きな力の影響から保護される。
【0071】
図2は、衝撃エネルギー吸収に使用することができる構成部材1の例示的な実施形態を示す。構成部材1は、第1の端部E1および第2の端部E2と、たとえば半円形の横断面を有し、ここで、横断面は長手方向Lに沿って変化する。構成部材1は、たとえば第1の表面8に設けることができるリブ2(または複数のリブ)を有することができる。リブは、構成部材1から一体に作製することができ、または更なる要素として構成部材1に取り付けることができる。たとえば、リブ2は、構成部材1に1つまたは複数の繊維帯を配置することによって形成することができる。構成部材1は、さらに好ましくは、穴などの凹部3を有することができる。これらの凹部3によって、構成部材1の長さまたは幅を低減することなく、構成部材1の重量を有利に減少させることができる。フラップまたはカバー5を構成部材内に設けることができ、これは構成部材1をその長手方向延在部Lにおいて分割する。カバー5は、それらが一方の壁からもう一方の壁に延びてクロージャーを形成するか、またはカバー5が他の(反対の)壁側と接触せずに、構成部材1の内側でのみ延び得るように設計することができる。カバーまたはフラップ5は、有利には構成部材1を安定させ、たとえば、衝撃が発生した場合に、ボディ1が座屈するのを防ぐことができる。
図2の例示的な実施形態では、ボディ1は、半円形のプロファイル7を有し、ここで、第1の端部E1は、第2の端部E2よりも小さい直径を有する。構成部材1は、フランジ6によって他の部品に接続され得る。他の部品は、たとえば、(同じタイプもしくは異なるタイプの)衝撃エネルギーを吸収するための更なる構成部材1であってもよく、または衝撃要素であってもよい。フランジ6によって、構成部材1は、他の部品に形状結合式および/または摩擦結合式に接続されることができ、ここで、不可逆的な接続が好ましい。
【0072】
図2aは、例1のために使用された構成部材1の例示的な実施形態を示す。
【0073】
構成部材1の断面が
図2bに概略的に示される。第1の表面8を有する構成部材1の壁の一部が示される。第1の表面8に垂直なSを考慮すると、構成部材1を形成するための繊維束は実質的に等方性である。さらに、第1の表面8に平行なWを考慮すると、繊維束は表面8、9に対して交差角を形成する。
【0074】
図2cは、構成部材1の実施形態を簡略化して概略的に示す。この例示的な実施形態では、第1の端部E1における構成部材の外側横断面11は、第2の端部E2における外側横断面11よりも小さい。結果として、構成部材1の横断面は、長手方向Lにわたって増加した。構成部材1の内側横断面11’は、第1の端部から第2の端部E1、E2へと変化し得るか、または同じのままであり得る。内側横断面11’が一定の場合、構成部材1の壁厚が変化する。
【0075】
構成部材1の更なる実施形態が、
図2dに簡略化して概略的に示される。この例示的な実施形態では、構成部材1の外側横断面(図示せず)は、第1の端部E1から第2の端部E2まで一定のままである。しかしながら、第1の端部E1での構成部材1の壁厚10は、第2の端部E2での構成部材の壁厚10’よりも大きい。
【0076】
図12は、細長い繊維束を有する構成部材のX線画像を示す。構成部材は、好ましくは、構成部材の所定の形状によって湾曲しているとまだ決定されていない領域に少なくとも20%の繊維束を有している必要があり、これは、適用された直線と比較して最大5mm(好ましくは2mm)ずれている。プリフォームの製造に起因するのではなく、強制された所望の寸法である構成部材の形状に起因する繊維束の曲率は、最も近い構成部材のエッジを基準として使用することで決定される。
【0077】
例1:
例1では、本発明の例示的な実施形態によるボディを、
図2aに示されるような衝突構成部材として製造した。試験結果として、構成部材を動的衝撃試験で試験した。このために、プリフォームを初めに製造した。このステップでは、(国際公開第2005/095080号、国際公開第2013/017434号の文献に従って)障害物がある炭素繊維糸(Tenax HTS40 X030 12k 800テックス)を横方向および縦方向で繊維束に切断した。長さ50mmおよび幅1mm~5mmの繊維束を得た。これらの繊維束を、最終輪郭に近いプリフォームに形成した。このために、繊維束をプリフォームツールに適用し、プリフォームツールはすでに最終的な構成部材の形状をほぼ示す。適用方法(手動または制御された移動ユニット、たとえばロボットによる)は、束の均一な適用が生じる限り、あまり重要ではない。この例では、構成部材の繊維体積含有量50体積%を最大偏差±5体積%でもたらす繊維適用を設定している。それぞれの適用位置で繊維束を固定するために、プリフォームツールは、吸引流を受ける多数の小さな穴を備えているように設計されていてもよい。このようにして、繊維束はそれぞれの箇所で吸引され、固定される。次のステップでは、この構造が加熱され、バインダーがその接着効果を発揮する。状況次第では、それぞれの表面に垂直な追加の力によって構造を圧縮してもよい。バインダーを再び冷却した後、プリフォーム全体だけでなく、個々の繊維束もそれらの局部的な位置に固定する。プリフォームは、樹脂注入プロセス(樹脂トランスファー成形、RTM)を使用して鋼ツールで作製し、長手方向に2mmの一定の壁厚および部分的に半円形の横断面を有する2つの半シェル形状のプロファイル構成部材(部分ボディ)を形成した。部分ボディの繊維体積割合は50%であった。エポキシ樹脂系(Huntsman Araldite LY 1564/Aradur AD 22962)を、樹脂注入用のマトリックス系として使用した。プロファイル構成部材または部分ボディの脱型後、それらをアニールした。部分ボディをダイヤモンドの丸鋸で切り落とした。これらのハーフシェル形状の部分ボディの2つを接着クランプで一緒に結合し、2成分構造の接着剤(3M DP490)で平坦な長手方向フランジに接着した。続けて、円周45°の面取りの形の力導入構造(いわゆるトリガー)を構成部材の片側に導入した。
【0078】
このようにして製造された構成部材を、長手方向の軸がプレートに垂直となり、かつ力の作用点が外側を向くように、鋼製の平坦な非可塑性のバッフルプレートに取り付けた。続けて、質量が61kgで、構成部材の方向に平坦な鋼バッフルプレートを備えたキャリッジを、それが長手方向軸に沿って破壊されるように、構成部材上に10m/sで走行させた。破壊プロセス中、衝撃が発生した場合のキャリッジの経路は、磁気変位センサーおよび磁歪式位置測定システム(MTS社のTemposonics Rシリーズ、最大1000mmの経路長)で吸収し、構成部材に作用する荷重は、構成部材のロードセル(Kistler社のPiezo-KMD 9091A、最大400kN)で吸収した。力と経路の経時変化を、サンプリング周期4psおよび周波数250kHzで記録した。
図3では、さまざまな構成部材の記録された力-変位の関係が平均化されて示され(X軸変位(mm)、Y軸力(kN))、ここで、変位および力の両方のデータを、チャンネル周波数クラス(CFC)600フィルターアルゴリズム(SAE J211に準拠)を使用して、時間の観点から数値的にフィルター処理した。(50+/-5)kNの力のプラトーをこの曲線に示した。構成材料の質量あたりの吸収エネルギー(散逸エネルギー密度)は71J/gであった。結果は、トリガーによって開始された破損ゾーンでは、継続的に作用する衝撃力からの衝撃エネルギーが、それを分解エネルギーに変換して繊維とマトリックスとの間に新しい表面を作り出すことによって散逸されたことを示した。破損ゾーンの時間的にほぼ一定の経過により、破損力とそれに関連する均一なエネルギー消費の均一な経過が生じた。たとえば車両乗員に危険をもたらす振幅の大きな変動がない。表1に示されるように、散逸エネルギー密度の値は、先行技術を表す他の材料の値の範囲内にあるか、それらの値を超えていた。
【0079】
【0080】
表1の比較例1は、50mmの切断長さを有する炭素繊維でできた構成部材であり、ここで、構成部材は、ポリアミド6をマトリックス材料として使用したことを除き、例1に記載しているように製造する。
図1に関連して説明したように、そのような構成部材は、初期振幅が、本発明の例示的な実施形態による構成部材の場合よりも大幅に高いという欠点を有する。さらに、熱可塑性マトリックス系は、温度依存の衝突挙動を示すが、これは望ましくない。さらに、熱可塑性樹脂の割合が高い構成部材は水を吸収する傾向にあり、これは、そのような構成部材の寿命を構成部材の膨潤によって縮める。特にライフサイクルの終わりでの耐用年数の短縮が、構成部材の衝突特性に影響を及ぼし、低下させることは容易に理解される。
【0081】
熱可塑性マトリックスを用いた構成部材の温度依存性を
図11に示す。
【0082】
図11のX軸は、経路をmmで表し、Y軸は、力をkNで表す。曲線Dは、比較例1により構成された構成部材の-30℃での衝突挙動を表す。曲線Eは、比較例1により構成された構成部材の-20℃での衝突挙動、曲線Fは50℃での、曲線Gは90℃での衝突挙動を表す。そのような温度範囲は、自動車分野での衝突要素としての構成部材の場合に特に一般的である。したがって、温度にほぼ依存しない一貫した破損挙動は、主たるマトリックス材料として熱可塑性樹脂を使用した場合に達成することはできない。
【0083】
表1の比較例2は、
図1の実験にも使用したアルミニウム管である。
【0084】
例2:
例1に記載しているように、構成部材を、長さ25mmおよび幅1mm~5mmの繊維束を含むプリフォームから製造した。例1とは対照的に、50mmの代わりに25mmの繊維長を使用した。構成部材の壁厚は、例1に対応していた。構成部材は、例1に示すように破壊した。この結果、
図3に示されるのと同様の力曲線が得られ、(55+/-5)kNで力がプラトーになった。構成材料の質量あたりの吸収エネルギーは72J/gであった。力-変位曲線の経路および比エネルギー密度は、切断長さが50mmの例1の場合と大幅に異ならなかった。したがって、例2の個別の図は作成しなかった。
【0085】
例3:
例1に記載しているように、構成部材を、長さ50mmおよび幅1mm~5mmの繊維束を含むプリフォームから製造した。しかしながら、例1とは対照的に、3mmまたは4mmの壁厚を有する2つの構成部材を製造した。例1に示すように構成部材を破壊し、例1に示すように結果を処理した。この結果、壁厚が3mmの構成部材の場合は
図4のような、そして4mmの構成部材の場合は
図5のような力曲線が得られ、3mmの壁厚の場合は(70+/-5)kNで、4mmの壁厚の場合は(90+/-7)kNで力がプラトーになった。構成材料の質量あたりの吸収エネルギーは、3mmの壁厚の場合は70J/gであり、4mmの壁厚の場合は73J/gであった。これは、破損力が構成部材の壁厚によって調節可能であり、壁の横断面積にほぼ線形に比例することを示し、それによって、散逸エネルギー密度はほぼ一定のままであった。したがって、調整可能な力曲線が、有利には構成部材の変形中に可能である。
【0086】
例4:
例1に記載しているように、構成部材を、長さ50mmおよび幅1mm~5mmおよび壁厚2mmの繊維束を含むプリフォームから製造した。例1に示すように構成部材を破壊し、データを例1に示すように処理した。しかしながら、例1とは異なり、構成部材を試験前に-30℃、70℃および110℃に最大30秒で温度調節した。この結果、衝突試験では構成部材の温度が-30℃、50℃および90℃になった。ここに示されている力曲線から、
図6(-30℃)、
図7(50℃)および
図8(90℃)の曲線が得られ、-30℃の構成部材温度の場合は(40+/-5)kNで、50℃の構成部材温度の場合は(45+/-5)kNで、そして90℃の構成部材温度の場合は(45+/-5)kNで力がプラトーになった。構成材料の質量あたりの吸収エネルギーは、-30℃の構成部材温度の場合は54J/g、50℃の構成部材温度の場合は60J/g、そして90℃の構成部材温度の場合は60J/gであった。破損力および散逸エネルギー密度の温度依存性があまり顕著でないことが有利であると判明した。これは、先行技術で見られ、かつ比較例1、
図11で調査されたように、熱可塑性樹脂を有する炭素繊維複合材料と比較して特に明白であった。
【0087】
例5:
例1に記載しているように、構成部材を、長さ50mmおよび幅1mm~5mmおよび壁厚2mmの繊維束を有するプリフォームから製造した。しかしながら、例5による構成部材の繊維体積割合は、ある時は40%であり、ある時は45%であった。構成部材は、例1に示すように破壊し、データは例1に示すように準備した。この結果、40%の繊維体積割合の場合は
図9に示される曲線の力曲線が、45%の繊維体積割合の場合は
図10に示される曲線の力曲線が得られ、40%の繊維体積割合の場合は(45+/-10)kNで力がプラトーになり、45%の繊維体積割合の場合は(45+/-5)kNで力がプラトーになった。構成材料の質量あたりの吸収エネルギーは、繊維体積割合が40%の場合は64J/gで、繊維体積割合が45%の場合は61J/gであった。力-変位曲線のプラトー領域での変動は、40%の繊維体積割合ではまだ比較的大きく、45%の繊維体積割合では比較的平坦なプラトーがすでに形成されていた。つまり、この場合に材料の有利な破損が起こった。45%の繊維体積割合での値との比較および40%の繊維体積割合での値との比較における、例1からの繊維体積含有率が50%である試験のプラトー値のそれぞれより高い値は、繊維体積割合が小さいほど破損特性(力と散逸エネルギー密度)を低下させることを示した。なぜなら、構成部材の体積あたりの繊維とマトリックス材料との間の剥離プロセスがより少なかったからである。
【符号の説明】
【0088】
A 構成部材アルミニウムの曲線
B 熱可塑性樹脂を有する構成部材炭素繊維の曲線
C 本発明の実施形態による構成部材の曲線
D 熱可塑性樹脂を有する比較例の構成部材の曲線
E 熱可塑性樹脂を有する比較例の構成部材の曲線
F 熱可塑性樹脂を有する比較例の構成部材の曲線
G 熱可塑性樹脂を有する比較例の構成部材の曲線
1 構成部材(衝撃要素、衝突構造)
2 リブ
3 凹部/穴
4 波形プロファイル
5 カバー/フラップ
6 フランジ
7 半円形プロファイル
8 第1の表面
9 第2の表面
10、10’ 壁厚
11 外側横断面
11’ 内側横断面
E1 第1の端部
E2 第2の端部
L 長手方向
S 表面8、9に垂直
W 表面8、9に平行