IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪有機化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】圧電材料および圧電材料用組成物
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/857 20230101AFI20240130BHJP
   H10N 30/045 20230101ALI20240130BHJP
   C08F 20/22 20060101ALI20240130BHJP
   C08F 214/22 20060101ALI20240130BHJP
   C08F 214/24 20060101ALI20240130BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H10N30/857
H10N30/045
C08F20/22
C08F214/22
C08F214/24
C08J5/18 CEW
C08J5/18 CEY
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020557767
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046329
(87)【国際公開番号】W WO2020111106
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018222694
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】真井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】水森 智也
(72)【発明者】
【氏名】加畑 雅之
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135457(WO,A1)
【文献】特表2018-530634(JP,A)
【文献】特開2015-088566(JP,A)
【文献】特開2019-002003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/857
H10N 30/045
C08F 20/22
C08F 214/22
C08F 214/24
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、
式(I):
【化1】
〔式中、
は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー
を含有する、圧電材料。
【請求項2】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、圧電材料全体に基づいて99~40質量%であり、(メタ)アクリル系ポリマーの量は、圧電材料全体に基づいて1~60質量%である、請求項1に記載の圧電材料。
【請求項3】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の重量平均分子量は100,000以上である、請求項1または2に記載の圧電材料。
【請求項4】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体において、フッ化ビニリデンに由来する構造単位の量は、全構造単位の量に基づいて55~90mol%である、請求項1~3のいずれかに記載の圧電材料。
【請求項5】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は10,000~2,000,000である、請求項1~4のいずれかに記載の圧電材料。
【請求項6】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、
式(I):
【化2】
〔式中、
は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー
を含有する、圧電材料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料および圧電材料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性高分子であるフッ化ビニリデン(VDF)とトリフルオロエチレン(TrFE)との共重合体であるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF/TrFE))は、優れた圧電特性と大きい自発分極(残留分極)を有する圧電材料として知られている。この圧電材料は、例えば圧電センサー・トランスジューサ、赤外線焦電センサーなどの種々の圧電素子に用いられている。
【0003】
特許文献1には、特定のモル比でフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとを共重合させて得た共重合体から作られた圧電膜が記載されている。特許文献2には、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとを共重合させて得た共重合体であって、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの重合比が異なる少なくとも2種の共重合体の混合物からなる圧電膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/159354号
【文献】特開2018-119087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような種々の有機系圧電材料が検討されてはいるものの、有機系圧電材料の圧電特性のさらなる向上、特に圧電材料の残留分極を大きくすることに対する要求がなお存在する。有機系圧電材料の残留分極は、高分子材料に電圧を印加し、印加した電圧を除いた後に残存する電気的な極性であり、高分子材料に電圧を印加後、残留分極が生じた状態の材料が有機系圧電材料となる。残留分極が大きい圧電材料は、単位体積あたりに貯蔵可能な電気的エネルギーも大きいため、広範な用途への利用が可能となる。
【0006】
そこで本発明は、残留分極が大きい圧電材料および該圧電材料を得るための圧電材料用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、
式(I):
【化1】
〔式中、
は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー
を含有する、圧電材料。
〔2〕フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、圧電材料全体に基づいて99~40質量%であり、(メタ)アクリル系ポリマーの量は、圧電材料全体に基づいて1~60質量%である、前記〔1〕に記載の圧電材料。
〔3〕フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の重量平均分子量は100,000以上である、前記〔1〕または〔2〕に記載の圧電材料。
〔4〕フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体において、フッ化ビニリデンに由来する構造単位の量は、全構造単位の量に基づいて55~90mol%である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の圧電材料。
〔5〕(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は10,000~2,000,000である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の圧電材料。
〔6〕フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、
式(I):
【化2】
〔式中、
は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー
を含有する、圧電材料用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、残留分極が大きく圧電特性に優れた圧電材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。なお、本明細書において「~」で示される数値の範囲は、その上限と下限とを含む。
【0010】
本発明の圧電材料は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体と、ハロゲン原子を含む特定の(メタ)アクリル系ポリマーとを含有する。
【0011】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、式(I):
【化3】
〔式中、
は、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
は、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、フェニル基、または、炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、
ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、
前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、
前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよく、
の少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
ただし、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている〕
で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む。言い換えると、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも含むモノマーの重合体(ポリマー)である。なお、本明細書において(メタ)アクリルは、アクリルおよび/またはメタクリルを表す。
【0012】
式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位は、次の式(II):
【化4】
〔式(II)中のRおよびRは、式(I)中のRおよびRについて定義した通りである〕
で表される構造単位であり、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、上記式(II)で表される構造単位を含む。本明細書において、式(I)中のRおよびRに関する記載は、同様に、上記式(II)中のRおよびRに当てはまる。
【0013】
上記式(I)中、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている。そのため、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、ハロゲン原子を含有する。本発明者らは、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体と、Rおよび/またはRの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーとを含有する圧電材料が、残留分極の大きい圧電材料となることを見出した。ハロゲン原子は、残留分極を大きくしやすい観点から、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子であり、より好ましくはフッ素原子および/または塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。なお、本発明の圧電材料の残留分極が大きくなる詳細な理由は必ずしも明らかではないが、特定の(メタ)アクリル系ポリマーがハロゲン原子を含むことで、構造単位中の双極子がある程度大きくなり、この双極子がフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の構造単位中の双極子と相互作用することで、圧電材料全体として残留分極が大きくなると推測される。
【0014】
式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位に含まれるハロゲン原子の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすい観点から、1つの構造単位中に含まれる数が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。上記ハロゲン原子の量を特定する方法の一例としては、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位が含まれる(メタ)アクリル系ポリマーを分析する方法、および、原料モノマーである(メタ)アクリル系モノマーを分析する方法が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーを分析する場合は、熱分解ガスクロマトグラフィーにて分析することが挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーを分析する場合は、核磁気共鳴装置(NMR)で分析することが挙げられるが、これらの手法に限定されない。
【0015】
圧電材料の残留分極を大きくしやすい観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全原子に対してハロゲン原子が占める割合(モル比率)は、好ましくは5mol%以上70mol%以下、より好ましくは10mol%以上60mol%以下である。上記ハロゲン原子の量は、(メタ)アクリル系ポリマーを、NMRや、高分解能質量分析スペクトル(HRMS)等により分析することが決定できるが、これらの方法に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーをNMRで分析した際は、(ハロゲン原子の面積の合計/内部標準物質の面積)×100に基づいて決定できる。
【0016】
式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに含まれるハロゲン原子は、好ましくはトリフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、モノフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、およびモノクロロメチル基からなる群から選択される基として(メタ)アクリル系モノマー中に含まれていることが、双極子を大きくしやすく、残留分極を高めやすい観点から好ましい。言い換えると、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくはトリフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、モノフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、およびモノクロロメチル基からなる群から選択される基を含む、式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0017】
上記式(I)中のRは、水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基を表し、ここでRの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、これらの少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基であってもよい。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子であり、より好ましくはフッ素原子および/または塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0018】
の具体例としては、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ジフルオロエチル基、およびモノクロロメチル基等が挙げられるがこれに限定されない。
【0019】
上記式(I)中のRは、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基、(3)フェニル基、または、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表し、ここで、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基、前記フェニル基、および前記フェニルアルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記脂環式炭化水素基および前記アルキレン基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記フェニル基および前記フェニルアルキレン基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよい。また、Rの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0020】
ここで、Rの少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよいとは、例えばRが上記(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す場合には、当該直鎖状または分枝状のアルキル基に含まれる少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよいし、前記アルキル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている場合には、置換している炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基における少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rが上記(2)~(4)である場合も同様である。なお、ハロゲン原子としては、Rについて上記に述べた原子が挙げられ、Rのハロゲン原子に関する好ましい記載がRについても同様にあてはまる。
【0021】
炭素数1~6のアルキル基、および、炭素数1~6のアルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は、1~4であってよく、より好ましくは1~2であってよい。炭素数1~6のアルキル基、および、アルコキシ基におけるアルキル基は、直鎖状または分枝状のいずれでもよい。
【0022】
上記式(I)中のRが、(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す場合、該アルキル基の炭素数は、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーの製造性の観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。本明細書において、アルキル基は直鎖状または分枝状のいずれでもよい。アルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、イソアミル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数1~10のアルキル基の少なくとも1つの水素原子は、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0023】
水酸基で置換された炭素数1~10のアルキル基の例としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシn-プロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシn-ブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシtert-ブチル基などが挙げられる。
【0024】
炭素数1~6のアルキル基で置換された炭素数1~10のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基を主鎖とし、該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された基である。主鎖となるアルキル基部分の炭素数が1~10であれば、アルキル基全体としての炭素数は10を超えていてもよい。このようなアルキル基の例としては、例えば2-エチルヘキシル基等が挙げられる。なお、アルキル基全体としての炭素数が10を超えない基の場合、該基は、炭素数1~10の分枝状のアルキル基の定義にも包含される基である。
【0025】
炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~10のアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~6のアルキル基である。かかる基の例としては、例えばメトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシブチル基が挙げられる。
【0026】
水酸基および炭素数1~6のアルコキシ基で置換された炭素数1~10のアルキル基としては、例えば炭素数1~6のヒドロキシアルコキシ基および炭素数1~6のアルキル基を有する基、具体的にはヒドロキシメトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロピルオキシプロピル基等が挙げられる。
【0027】
上記アルキル基の中で、入手しやすさの観点から、水酸基および/または炭素数1~2のアルコキシ基で置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水酸基および/または炭素数1~2のアルコキシ基で置換されていてよい炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水酸基および/または炭素数1~2のアルコキシ基で置換されていてよい炭素数1~2のアルキル基がさらにより好ましい。
【0028】
上記アルキル基の中で、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーの製造性の観点から、式(I)中のRが(1)炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、前記アルキル基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-で置換されている基であることが好ましい。このようなRとしては、例えば式(III):
【化5】
〔式中、
mおよびnはそれぞれ独立して2または3の数を表し、
Xは水素原子またはメチル基を表し、
式(III)中の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい〕
で表される基が挙げられる。該基の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。このような基としては、好ましくはトリフルオロメトキシエチル基、およびトリフルオロメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0029】
上記に述べた、場合により水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよい、炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルキル基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。
【0030】
上記式(I)中のRが、(2)炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表す場合、炭素数3~6の脂環式構造としては、例えばシクロヘキサンが挙げられる。炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子は、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、炭素数3~12の脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子は、水酸基、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。
【0031】
少なくとも1つの炭素原子が酸素原子(-O-)で置換された、炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3の脂環式炭化水素基の1つの炭素原子が酸素原子で置換されたエポキシ基、炭素数4の脂環式炭化水素基の1つの炭素原子が酸素原子で置換されたオキセタニル環、炭素数5の脂環式炭化水素基の2つの炭素原子が酸素原子で置換されたジオキソラン環、炭素数6の脂環式炭化水素基の2つの炭素原子が酸素原子で置換されたジオキサン環などが挙げられる。なお、これらの環上の水素原子は、炭素数1または2のアルキル基で置換されていてよい。このような基としては、具体的には、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
上記に述べた、場合により水酸基、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよい炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の耐熱性を向上しやすい。
【0033】
上記式(I)中のRは、(3)フェニル基を表してもよい。また、フェニル基におけるフェニル環上の少なくとも1つの水素原子は、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてよい。フェニル環上の少なくとも1つの水素原子、特にパラ位の水素原子が、炭素数1~4(好ましくは1または2)のアルキル基で置換され、該炭素数1~4のアルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換されている基は、圧電材料の耐熱性を向上しやすい観点で好ましい。
【0034】
上記に述べた、場合によりフェニル環上の少なくとも1つの水素原子が水酸基、炭素数1~4のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の耐熱性を向上しやすい。
【0035】
上記式(I)中のRが、(4)炭素数1~4のアルキレン基を含むフェニルアルキレン基を表す場合、アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよいし、フェニル環上の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよい。
【0036】
アルキレン基の少なくとも1つの炭素原子が-O-で置換されたフェニルアルキレン基としては、式(IV):
【化6】
〔pおよびqはそれぞれ独立に2または3である〕
で表される基、および、該基のアルキレン部分およびフェニル環部分の少なくとも1つの水素原子が水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換された基が挙げられる。上記の基に含まれる少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。Rが上記の基である場合、圧電材料の耐熱性を向上させやすい。
【0037】
上記に述べた、場合によりアルキレン基上の少なくとも1つの水素原子が水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基等で置換されていてもよい、および/または、フェニル環上の少なくとも1つの水素原子が水酸基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、および/または、シアノ基で置換されていてもよい、フェニルアルキレン基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換された基であってもよい。Rが当該基である場合、圧電材料の耐熱性を向上しやすい。
【0038】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの好ましい例としては、Rがハロゲン原子または少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、ここで、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい、上記式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0039】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの別の好ましい例としては、Rが水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~2)の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、ここで、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、Rの少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)の水素原子がハロゲンに置換されている、上記式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。当該(メタ)アクリル系ポリマーのより具体的な例としては、Rが水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが炭素数1~10(好ましくは1~4、より好ましくは1~3)の直鎖状または分枝状のアルキル基を表し、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、Rにおけるアルキル基の少なくとも1つの水素原子が、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1または2のアルキル基で置換されている化合物が挙げられる。かかる化合物の例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート,3,3,3-トリクロロプロピル(メタ)アクリレート、4,4,4-トリフルオロブチル(メタ)アクリレート、4,4,4-トリクロロブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジクロロエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの別の好ましい例としては、Rが水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表し、ここで、Rにおける脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、Rにおける脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が、水酸基、炭素数1または2のアルキル基、および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよく、Rの少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)の水素原子がハロゲンに置換されている、上記式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。圧電材料が当該(メタ)アクリル系ポリマーを含有する場合、圧電材料の残留分極を大きくしやすいことに加えて、耐熱性も向上させやすい。当該(メタ)アクリル系ポリマーのより具体的な例としては、Rが水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rが炭素数3~6の脂環式構造を含む炭素数3~12の脂環式炭化水素基を表し、Rにおける脂環式炭化水素基の少なくとも1つの炭素原子が、-O-、-N-または-S-で置換されていてもよく、Rにおける脂環式炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1または2のアルキル基で置換されている化合物が挙げられる。かかる化合物の例としては、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび4-(トリクロロメチル)シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの具体例としては、以下に限定されるものではないが、3,3,3-トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、3,3,3-トリクロロプロピル(メタ)アクリレート、4,4,4-トリフルオロブチル(メタ)アクリレート、4,4,4-トリクロロブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジクロロエチル(メタ)アクリレート、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-(トリクロロメチル)シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、上記式(I)で表される1種類の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位のみを有していてもよいし、上記式(I)で表される2種以上の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を有していてもよい。また、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の圧電材料の特性を損なわない範囲で、少なくとも1種の別のモノマーに由来する構造単位を含んでもよい。言い換えると、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、上記式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、上記式(I)で表される2種以上の(メタ)アクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、上記式(I)で表さ少なくとも1種の(メタ)アクリル系モノマーと、少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0043】
上記式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、例えばカルボキシル基含有モノマー、式(I)で表される構造単位を与える(メタ)アクリル系モノマー以外のカルボン酸アルキルエステル系モノマー、アミド基含有モノマー、アリール基含有モノマー、スチレン系モノマー、窒素原子含有モノマー、脂肪酸ビニルエステル系モノマー、ベタインモノマーなどが挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられる。
【0045】
式(I)で表される構造単位を与える(メタ)アクリル系モノマー以外のカルボン酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が11~20のアルキルアクリレート、イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどのアルキル基の炭素数が1~4のイタコン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0046】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1~8であるアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0047】
アリール基含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリートなどのアリール基の炭素数が6~12であるアリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0048】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0049】
窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。
【0050】
脂肪酸ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0051】
ベタインモノマーとしては、例えば、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-メタクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインなどのN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタインなどのスルホベタインモノマーなどが挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際のモノマー成分における式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を向上させやすい観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際のモノマー成分全体の量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、特により好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。また、上記含有率の上限は、特に限定されず、100質量%以下であればよく、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際のモノマー成分が、式(I)で表される(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有する場合、その含有率は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を向上させやすい観点から、(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際のモノマー成分全体の量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、特により好ましくは7質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また、上記含有率の下限は、特に限定されず、全モノマー成分の質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上であってよい。
【0053】
(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際のモノマー成分には、本発明の目的を阻害しない範囲内で架橋性モノマーが適量含まれていてもよい。上述したように、本発明の圧電材料が含む(メタ)アクリル系ポリマーは、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体である。架橋性モノマーは、(1)上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体の主鎖に構造単位として含まれて、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体同士を結合(架橋)する、および/または、(2)上記式(I)で示されるアクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体の主鎖には含まれず、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体の側鎖と結合して、上記式(I)で示されるアクリル系モノマーに由来する構造単位を含む重合体同士を結合(架橋)する。(1)と(2)のいずれの形態においても、(メタ)アクリル系ポリマーが架橋性モノマーに由来する構造単位を含むことで、上記式(I)で示される(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む複数の重合体が結合し、より分子量の大きい一つの重合体が形成される。
【0054】
架橋性モノマーとしては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドなどのアルキレン基の炭素数が1~4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個有する(メタ)アクリルアミド化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個または3個有する(メタ)アクリレート化合物;ジアリルアミン、トリアリルアミンなどの炭素-炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有するアミン化合物;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼンなどの炭素-炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有する芳香族化合物などの多官能モノマーが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上、特に好ましくは150,000以上である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が上記の下限値以上であると、圧電材料の強度や耐久性を高めやすい。また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、(メタ)アクリル系ポリマーの製造し易さの観点からは、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,500,000以下、さらに好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは750,000以下である。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。測定条件等の詳細は実施例に記載するとおりである。
【0056】
((メタ)アクリル系ポリマーの製法)
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、モノマー成分を重合させることによって得ることができる。
【0057】
モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のうち、(メタ)アクリル系ポリマーの製造性の観点から、塊状重合法および溶液重合法が好ましい。
【0058】
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる際には、溶媒が用いられる。溶媒としては、非水系有機溶媒が好ましい。非水系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系有機溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトンなどのエステル系有機溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩化物系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、100~1000質量部程度であることが好ましい。
【0059】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤のなかでは、(メタ)アクリル系エラストマーに熱履歴を残さないようにする観点から、光重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体などが挙げられ、所望により2種以上を併用してよい。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,1’-ビイミダゾール、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕などの光ラジカル重合開始剤、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(p-メトキシフェニルビニル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’-ジtert-ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどの光カチオン開環重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、0.01~20質量部程度であることが好ましい。
【0063】
モノマー成分を重合させる際には、得られる(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのチオール基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、当該連鎖移動剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、モノマー成分100質量部あたり、0.01~10質量部程度であることが好ましい。
【0064】
モノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気中であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中であってもよい。
【0065】
モノマー成分を重合させる際の温度は、特に限定がなく、通常、5~100℃程度の温度であることが好ましい。モノマー成分を重合させるのに要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意であるが、通常、1~20時間程度である。
【0066】
重合反応は、残存しているモノマー成分の量が20質量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマー成分の量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0067】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0068】
(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体)
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体は、フッ化ビニリデンに由来する構造単位と、トリフルオロエチレンに由来する構造単位とを含む共重合体である。フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構造単位の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすいとともに、耐熱性、耐変形性の良い圧電材料を得やすい観点から、全構造単位の量に基づいて、好ましくは55mol%以上、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは75mol%以上であり、80mol%以上、さらには85mol%以上であってもよい。また、上記フッ化ビニリデンに由来する構造単位の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を向上しやすい観点から、全構造単位の量に基づいて、好ましくは90mol%以下、より好ましくは86mol%以下である。
【0069】
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるトリフルオロエチレンに由来する構造単位の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を向上しやすい観点から、全構造単位の量に基づいて、好ましくは10mol%以上、より好ましくは14mol%以上である。また、上記トリフルオロエチレンに由来する構造単位の量は、耐熱性の良い圧電材料を得る観点から、全構造単位の量に基づいて、好ましくは45mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは25mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0070】
本発明の圧電材料は、1種類のフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を含有してもよいし、2種以上のフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を含有してもよい。
【0071】
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、残留分極が大きい圧電材料を得やすい観点から、好ましくは100,000以上、より好ましくは300,000以上、さらに好ましくは500,000以上、さらに好ましくは550,000以上、特に好ましくは600,000以上である。重量平均分子量の上限は特に限定されず、例えば2,000,000以下程度である。重量平均分子量は、公知の方法により測定できる。
【0072】
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲において、フッ化ビニリデンに由来する構造単位およびトリフルオロエチレンに由来する構造単位の他に、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。他のモノマーの例としては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーに関して上記に述べた、(メタ)アクリル系モノマーと共重合し得る他のモノマーが挙げられる。耐熱性と圧電特性に優れる圧電材料を得やすい観点から、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構造単位およびトリフルオロエチレンに由来する構造単位の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは93質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であり、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構造単位の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体におけるフッ化ビニリデンに由来する構造単位およびトリフルオロエチレンに由来する構造単位の含有率は、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下であってよく、フッ化ビニリデンおよび/またはトリフルオロエチレンと共重合し得る他のモノマーに由来する構造単位の含有率は、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上であってよい。
【0073】
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体は、例えば特許文献1に示される組成および分子量からなるものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。市販されているフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の例としては、例えばPIEZOTECH社製「FC20」、「FC25」、「FC30」が挙げられる。
【0074】
(圧電材料用組成物および圧電材料)
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料全体に基づいて、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、80質量%以上、85質量%以上であってもよい。また、本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすい観点および上記特定の(メタ)アクリル系ポリマーのその他の機能(例えば圧電材料における耐熱性等の向上等)を発揮させやすい観点の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下であり、85質量%以下、80質量%以下であってもよい。
【0075】
本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすい観点および上記特定の(メタ)アクリル系ポリマーのその他の機能を発揮させやすい観点から、圧電材料全体に基づいて好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、15質量%以上、20質量%以上であってもよい。また、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの量は、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を高めやすい観点の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらにより好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下であり、20質量%以下、15質量%以下であってもよい。
【0076】
本発明の圧電材料には、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および特定の(メタ)アクリル系ポリマー以外の材料(以下、他の材料という)を含有する態様も含まれる。他の材料としては、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および特定の(メタ)アクリル系ポリマー以外の共重合体やエラストマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤、熱伝導性フィラー、導電性フィラー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および(メタ)アクリル系ポリマーの合計重量に基づいて、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、80質量%以上、85質量%以上であってもよい。また、上記本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量は、本発明の圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および(メタ)アクリル系ポリマーの合計重量に基づいて、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下であり、85質量%以下、80質量%以下であってもよい。フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量が上記の下限以上であると、圧電材料の残留分極を大きくしやすく、圧電特性を高めやすい。また、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の量が上記の上限以下であると、圧電材料の残留分極を大きくしやすいと共に、特定の(メタ)アクリル系ポリマーのその他の機能(例えば圧電材料における耐熱性、伸びおよび/または柔軟性の向上等)を発揮させやすい。
【0078】
圧電材料におけるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の構造やその量、特定の(メタ)アクリル系ポリマーの構造やその量は、例えば、赤外分光装置(IR)、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて分析することができるが、これに限定されない。原料の仕込み比から、これらの量を算出してもよい。したがって、圧電材料に含まれるフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体の構造や特定の(メタ)アクリル系ポリマーの構造を決定した後、圧電材料からそれらを公知の手法で分取する、または、同じ構造の特定の(メタ)アクリル系ポリマーを準備し、上述の分析方法等により分析することで、圧電材料を構成するフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および(メタ)アクリル系ポリマーの構造や量を分析してよい。同様にして、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるハロゲン原子の量や(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位に含まれるハロゲン原子の量などを特定することもできる。
【0079】
本発明の圧電材料の製造方法は特に限定されないが、例えばフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマー、および、溶媒を含有する溶液を塗布して乾燥させた後、熱処理し、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を結晶化させることにより圧電特性を発生させて製造してよい。なお、乾燥と熱処理とは、同時に行ってもよい。他の例としては、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体と、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーと、必要に応じて溶媒とを混合する工程と、前記モノマーを重合させて前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを得る工程と、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を結晶化させることにより圧電特性を発生させる工程を含む圧電材料の製造方法が挙げられる。他の例としては、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーと、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を構成するモノマーと、必要に応じて溶媒とを混合する工程と、前記モノマーを重合させて前記フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を得る工程と、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を結晶化させることにより圧電特性を発生させる工程とを含む圧電材料の製造方法が挙げられる。圧電材料を製造するための、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマー、および、溶媒を含有する溶液を、以下において「圧電材料用組成物」とも称する。圧電材料用組成物には、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーのいずれか一方と、他方をそれぞれを構成するモノマーの状態で含む組成物も含まれる。本発明は、圧電材料用組成物も提供する。なお、本明細書において、本発明の圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーおよびフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体に関する記載は、同様に、本発明の圧電材料用組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーおよびフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体についてもあてはまる。
【0080】
圧電材料用組成物に含まれ得る溶媒は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを溶解できる溶媒であれば特に限定されないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、炭酸ジエチル等である。
【0081】
本発明の圧電材料用組成物は、特に限定されないが、例えばフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーおよび必要に応じて溶媒を、必要に応じて加熱しながら混合し、溶媒にフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体および(メタ)アクリル系ポリマーを溶解させて製造してよい。また、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーおよび溶媒を必要に応じて加熱しながら混合して圧電材料用組成物を製造してもよい。この場合、圧電材料用組成物に含まれる前記特定の前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーを重合させた後で得られる前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを含有する組成物も本発明の圧電材料用組成物である。フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を構成するモノマーと前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーとを含有させた圧電材料用組成物の場合も同様に製造できる。
【0082】
次いで、本発明の圧電材料用組成物を基材上に塗布し、必要に応じて前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーまたはフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を構成するモノマーを重合させ、乾燥し、熱処理により結晶化させて圧電特性を発生させることにより、本発明の圧電材料を製造することができる。例えば本発明の圧電材料が圧電膜である場合、本発明の圧電材料用組成物を基材表面上に塗布してよい。例えば本発明の圧電材料が圧電ワイヤーである場合、本発明の圧電材料用組成物を、銅線の様な導電性の線材、例えば導電性材料からなる単線に、公知の方法で塗布してよい。
【0083】
塗布された本発明の圧電材料用組成物を乾燥する方法も特に限定されず、大気圧条件下または減圧条件下等において、溶媒が蒸発するような温度で加熱して乾燥させてよい。例えば15~80℃の温度で乾燥を行うことが好ましい。
【0084】
本発明の圧電材料を製造する際の熱処理の温度は、好ましくはフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体のキュリー点以上融点以下である。加熱時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは2時間以上である。このような熱処理を行うことにより、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体を結晶化させ、圧電特性を発現させることができる。
【0085】
本発明の圧電材料は、圧電膜、圧電ワイヤー、圧電ブロック(塊)であってよい。本発明の圧電材料は、残留分極が大きいため、単位体積あたりに貯蔵可能な電気的エネルギーが大きく、例えばセンサーの部材などへの利用が可能となる。
【0086】
本発明の好ましい一態様において、本発明の圧電材料は、残留分極が大きいことに加えて、耐熱性にも優れている。この態様における本発明の圧電材料の特徴を活かしやすい観点からは、圧電材料はタッチセンサー、加速度センサー、振動センサー、超音波センサー等のセンサーの部材、歪みゲージの部材、トランスデューサーの部材等として特に適している。なお、圧電材料の耐熱性を評価する方法としては、示差熱熱重量同時測定装置により1%重量減少温度を測定する方法が挙げられる。上記評価方法において、1%重量減少温度が、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である圧電材料は、耐熱性に特に優れているといえる。
【0087】
本発明の圧電材料の残留分極は、十分な圧電特性を得やすい観点から、好ましくは100mC/m以上、より好ましくは105mC/m以上、より好ましくは110mC/m以上、より好ましくは120mC/m以上、さらに好ましくは140mC/m以上、さらに好ましくは150mC/m以上、さらに好ましくは170mC/m以上、さらに好ましくは175mC/m以上である。残留分極は高いほどよく、その上限は特に限定されないが、例えば300mC/m以下であってよい。残留分極の測定は、例えば電圧振幅200MV/mであり、周波数0.01Hz又は0.1Hzの三角波交流を印加する条件で行ってよく、例えば実施例に記載する測定方法を用いてよい。
【0088】
本発明の圧電材料の圧電定数d33は、十分な圧電特性を得やすい観点から、好ましくは24.5pC/N以上、より好ましくは25pC/N以上である。圧電定数d33の測定方法は、実施例に記載する通りである。
【実施例
【0089】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特記しない限り、例中の「%」および「部」はそれぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0090】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させて得た0.05~0.1質量%溶液を測定試料として用いた。測定条件は次の通りである。
機器:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel G5000H および TSKgel G3000H
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
温度:40℃
検出器:RI
分子量標準:標準ポリスチレン
【0091】
製造例1:(メタ)アクリル系ポリマーB1(Poly-3FPMA)の調製
(1)3,3,3-トリフルオロプロピルメタクリレート(3FPMA)の調製
還流冷却器、水分離器、空気導入管、温度計および攪拌器を備えた容量1Lのガラス製五つ口フラスコ中で、3,3,3-トリフルオロプロパノール25.0g、メタクリル酸18.9g、およびN,N-ジメチル-4-アミノピリジン5.36gを、ジクロロメタン200gに溶解させ、氷浴上で撹拌しながら1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDC)44.1gを添加し、10時間撹拌を続けた。得られた反応混合物を水で洗浄し、濃縮した後、減圧蒸留を行うことにより精製して、3,3,3-トリフルオロプロピルメタクリレート(3FPMA)21.9gを無色透明液体として得た(GC純度;99%,収率;55%)。
【化7】
【0092】
3FPMAのH-NMR(CDCl、ppm):1.95(3H,t)、2.44-2.59(2H,m)、4.38(2H,t)、5.58-5.62(1H,m)、6.13-6.14(1H,m)
【0093】
(2)(メタ)アクリル系ポリマーB1(Poly-3FPMA)の調製
上記のようにして合成した3FPMAを以下の手順で重合させて(メタ)アクリル系ポリマーB1(Poly-3FPMA)を製造した。
【0094】
容量30mLのガラス製容器中で、上記(1)で製造した3FPMA22.1gに、重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製の商品名「IrgacureTPO」。以下、「TPO」と称す)0.22gを溶解させ、3FPMAおよび重合開始剤を含有する混合物を得た。
【0095】
得られたTPOおよび3FPMAの混合物を透明ガラス製の成形型(縦:100mm、横:100mm、深さ:0.5mm)内に注入した後、該混合物に紫外線を照射する(照射線量:1.0mW/m)ことで3FPMAを重合させ、(メタ)アクリル系ポリマーB1(Poly-3FPMA)を得た。得られたPoly-3FPMAの重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、224,000であった。
【化8】
【0096】
製造例2:(メタ)アクリル系ポリマーB2(Poly-3FPA)の調製
(1)3,3,3-トリフルオロプロピルアクリレート(3FPA)の調製
メタクリル酸に変えてアクリル酸を用いた以外は、製造例1と同様にして3FPAを調製した。
【0097】
3FPAのH-NMR(CDCl、ppm):2.45-2.59(2H,m)、4.39(2H,t)、5.88(1H,dd)、6.13(1H,dd)、6.44(1H,dd)
【0098】
(2)(メタ)アクリル系ポリマーB2(Poly-3FPA)の調製
窒素導入管、温度計および攪拌器を備えた容量50mL用のガラス製フラスコ中に,上記(1)で製造した3FPA10.0gと酢酸ブチル10.0gとを加え撹拌し、混合液を得た。この混合液に窒素導入管から窒素を30分間導入した後,フラスコ内の温度を室温から62℃まで昇温し、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(大塚化学(株)製。以下、「ADVN」と称す)0.05gを添加した。ADVNを添加してから5.5時間フラスコ内の温度を62℃に維持した状態で撹拌し、その後、35℃以下まで冷却した。フラスコ内の溶液を取り出し、50℃の雰囲気の減圧乾燥装置で減圧乾燥し、(メタ)アクリル系ポリマーB2(Poly-3FPA)を得た。得られたPoly-3FPAの重量平均分子量(Mw)をGPCにより測定したところ、230,000であった。
【0099】
製造例3:(メタ)アクリル系ポリマーB3(Poly-FMA)の調製
モノマーであるFMAとして、市販の2-フルオロアクリル酸メチル(Alfa Aesar社製)を使用した。窒素導入管、温度計および攪拌器を備えた容量50mL用のガラス製フラスコ中に、2-フルオロアクリル酸メチル1.51g、γ―ブチロラクトン6.08gを加えて撹拌した後、重合開始剤としてTPOを0.02g添加し、窒素導入管から窒素を内容物に導入して30秒間のバブリングを行った後に、ガラス製フラスコを密閉した。その後、内容物に対して紫外線を2時間照射(照射線量:1.0mW/cm)しながら撹拌し、Poly-FMAを得た。得られたPoly-FMAの重量平均分子量(Mw)をGPCによりを測定したところ、210,000であった。
【0100】
実施例1:圧電材料用組成物1および圧電材料1の製造
フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体A1(P(VDF/TrFE)A1、VDF:TrFE=75:25(モル比)、重量平均分子量:300,000)0.85g、製造例1で得た(メタ)アクリル系ポリマーB1(Poly-3FPMA)0.15g、および、溶媒として炭酸ジエチル4.72gを、栓をしたフラスコ内にて混合し、表1に示す質量比のフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体A1および(メタ)アクリル系ポリマーB1を含有する圧電材料用組成物1を製造した。
【0101】
上記のようにして製造した圧電材料用組成物1を、電極を備えた評価用基板((株)イーエッチシー製、ITO付ガラス基板)に一定量供給し、スピンコーター((株)ミカサ社製、品名:1H-360S)により1秒間で700rpmまで加速後、この回転速度で10秒間保持した後、1秒間かけて停止させることで、評価用基板上に圧電材料用組成物1を塗布した。
得られた膜付の評価用基板を30秒間静置した後、ホットプレート上で70℃にて20分間乾燥させ、その後、ホットプレートの温度を140℃にして1時間乾燥させた後、室温まで徐冷した。触針式プロファイリングシステム(Bruker社製、品名:Dektak150)を用いて、膜の厚みを測定したところ、15μmであった。
次いで、抵抗加熱式の真空蒸着機((株)理研社製、品名:RVC-2-ICP、)に放冷後の膜付の評価用基板を設置し、気圧2×10-4Pa以下にて金を加熱蒸発させ、膜の表面に電極を形成した。このようにして得た電極を形成した膜付の評価基板の電極間に、高電圧装置(松定プレシジョン(株)製、品名:HEOPS-1B30)を用いて、電界振幅200MV/m、周波数0.01Hzの三角波交流を印加することで、評価基板上の膜を圧電材料1とした。なお、サンプルの電気変位はチャージアンプ((株)タートル工業製、品名:T-CAM001BZ)を介して測定した。この結果を基にD(電気変位)-E(電界)ヒステリシス曲線を作製し、圧電材料1の残留分極を算出した。
【0102】
実施例1の圧電材料1について得られた結果を表1に示す。なお、表1中のA1は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体A1の混合比を表し、Bは、(メタ)アクリル系ポリマーB1~B3の混合比を表す。
【0103】
実施例2~6および比較例1~2
圧電材料組成物の組成を、表1に示す組成に変えたこと以外は実施例1と同様にして、圧電材料を調製した。得られた圧電材料について同様の測定を行った結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1~6に示す、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、特定の(メタ)アクリル系ポリマーを含む本発明の圧電材料は、高い残留分極を有することが確認された。これに対し、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体または特定の(メタ)アクリル系ポリマーのいずれかのみを含む圧電材料の場合には、高い残留分極は得られなかった。
【0106】
(実施例7~16および比較例3~5)
圧電材料組成物の組成を、表2に示す組成に変えたこと以外は実施例2と同様にして、圧電材料を調製した。なお、表2中のフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体A2は、VDF:TrFE=80:20(モル比)であり、重量平均分子量が292,000であった。また、表2中のフッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体A3は、VDF:TrFE=85:15(モル比)であり、重量平均分子量が435,000であった。
【0107】
(残留分極の測定)
実施例7~16及び比較例3~5の各圧電材料について、周波数0.01Hzの三角波交流を印加したことに代えて、周波数0.1Hzの三角波交流を印加したこと以外は、圧電材料1の残留分極の算出方法と同様にして残留分極を測定した。得られた結果を表2に示す。なお、実施例8、実施例9及び比較例3の圧電材料組成物及び圧電材料は、それぞれ、実施例2、実施例4及び比較例2の圧電材料組成物及び圧電材料と同じ組成を有する。
【0108】
(圧電定数d33の測定)
実施例7、10及び12~14、並びに比較例3及び5に係る各圧電材料ついて、残留分極の測定を行った後、評価基板上の膜を剥離した。剥離した各実施例および比較例に係る各圧電材料の膜の圧電定数d33を、圧電定数測定装置(リードテクノ製、品名:LPF-02)を用いて測定した。
具体的には、以下の手順により測定を行った。
(1)膜を測定子で挟持した。
(2)測定子から膜に加わる荷重を1Nに設定し、静置した。
(3)1Nの力を加えた際に発生した電荷量Aを測定した。
(4)測定子から膜に加える荷重を3N増加させ、測定子から膜に加える荷重が4Nとなるように設定した。
(5)4Nの力を加えた際に発生した電荷量Bを測定した。
(6)測定子から膜に加える荷重を3N減少させ1Nとした。
(7)上記の(3)~(6)を4回行い、2~4回目に測定した電荷量AおよびBの測定値の差分(A-B)の平均値を各実施例、比較例に係る膜の電荷量とし、この平均電荷量を測定荷重(3N)で除することにより、各実施例、比較例に係る膜のそれぞれの圧電定数d33を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
実施例7~16に示す、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、および、特定の(メタ)アクリル系ポリマーを含む本発明の圧電材料は、高い残留分極を有することが確認された。これに対し、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体のみを含む比較例3~5の圧電材料の場合には、高い残留分極は得られなかった。