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特許7428665拡張PAPメトリックを提供するためのシステム及びシステムの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】拡張PAPメトリックを提供するためのシステム及びシステムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20240130BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61B5/087
A61M16/00 305A
A61B5/16 130
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020569841
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019066736
(87)【国際公開番号】W WO2020002273
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】62/691,945
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】グラショー ジョナサン セイヤー
(72)【発明者】
【氏名】シェリー ベンジャミン アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】ケイン マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ グレゴリー デラーノ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122138(WO,A1)
【文献】特表2001-522662(JP,A)
【文献】特表2011-526196(JP,A)
【文献】米国特許第7942824(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08-5/087
A61B 5/16
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の睡眠期間の拡張PAPメトリックを取得及び提供するシステムにおいて、前記システムは、
前記患者に呼吸ガス流を供給するのに使用するための圧力支持装置、
処理ユニット、並びに
前記処理ユニットとワイヤレス通信する複数の補助装置であって、各々が前記患者の睡眠に関連するデータを検出及び収集するように構成される、複数の補助装置
を有し、
前記処理ユニットは、
前記患者の睡眠中に、前記圧力支持装置の動作中、前記患者に呼吸ガス流を供給しているとき、前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られた、前記患者の睡眠品質に関連するデータを受信する、
前記圧力支持装置が前記患者に呼吸ガス流を供給していない間、前記複数の補助装置により得られた補助データを受信し、前記補助データは、前記患者の睡眠中に、前記圧力支持装置が前記患者に呼吸ガス流を供給していない時間期間中に検出及び収集された前記患者の睡眠品質に関連するデータを有する、及び
前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られたデータ及び前記補助データを利用して前記患者の睡眠期間の全体的な睡眠品質に関連する拡張PAPメトリックを決定する
ようにプログラムされる
システム。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記圧力支持装置に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理ユニットは、前記圧力支持装置及び前記補助装置とは別個の他の装置に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理ユニットは、前記複数の補助装置のうちの1つの補助装置に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の補助装置は、スマートウォッチ、スマートフォン、ベッドサイド睡眠モニタ及びマットレス下センサの1つ以上を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理ユニットはさらに、前記睡眠期間の前記拡張PAPメトリックを他の装置に通信するようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の補助装置は、少なくとも3つの補助装置を有し、前記処理ユニットは、前記複数の補助装置の1つの補助装置からのデータが前記複数の補助装置の残りの補助装置からのデータに対応していない場合、前記複数の補助装置の前記1つの補助装置からのデータを除外するようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理ユニットはさらに、前記拡張PAPメトリックを利用して、前記圧力支持装置より前記患者に供給された呼吸ガス流の調整を決定及び実施するようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
患者の睡眠期間の拡張PAPメトリックを提供するシステムの作動方法であって、前記システムは、圧力支持装置、処理ユニット及び複数の補助装置を有し、前記睡眠期間は、前記患者が前記圧力支持装置から治療を受けている第1の部分と、前記患者が前記圧力支持装置から治療を受けていない第2の部分とを有し、前記方法は、
前記処理ユニットが、前記患者の睡眠中に、前記圧力支持装置の複数のセンサによって前記睡眠期間の第1の部分の間に得られた、前記患者の睡眠品質に関連するデータを受信するステップ、
前記処理ユニットが、前記複数の補助装置によって前記睡眠期間の第2の部分の間に得られた補助データを受信するステップであり、前記補助データは、前記患者の睡眠中に、前記圧力支持装置が前記患者に呼吸ガス流を供給していない時間期間中に検出及び収集された前記患者の睡眠に関するデータを有する、ステップ、並びに
前記処理ユニットが、前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られたデータ及び前記補助データを利用して、前記患者の前記睡眠期間の睡眠品質に関連する拡張PAPメトリックを決定するステップ
を有する
方法。
【請求項10】
前記処理ユニットが、前記拡張PAPメトリックを通信するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理ユニットが、前記拡張PAPメトリックを利用して、前記圧力支持装置により前記患者に供給された呼吸ガス流の調整を決定及び実施するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張されたPAPメトリックを提供するための方法に関する。本発明は、そのような方法を実施する際に使用するためのシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人々は、睡眠中の呼吸障害に苦しんでいる。睡眠時無呼吸は、世界中の何百万人もの人々が苦しんでいるこのような睡眠呼吸障害の一般的な例である。睡眠時無呼吸の1つの種類は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)であり、典型的には上気道又は咽頭領域である、気道の閉塞による呼吸不能により睡眠が繰り返し中断される状態である。気道の閉塞は一般的に、少なくとも一部は、上気道セグメントを安定させる筋肉の全般的な弛緩によるものであり、それにより組織が気道を崩壊させるためであると考えられている。もう一つの種類の睡眠時無呼吸症候群は、中枢性無呼吸であり、これは脳の呼吸中枢からの呼吸信号の欠如による呼吸停止である。閉塞性、中枢性又は閉塞性と中枢性との組み合わせである混合性を問わず、無呼吸状態は、呼吸の完全な停止又は略停止、例えば最大呼吸気流量の90%以上の減少と定義される。
【0003】
睡眠時無呼吸に苦しむ患者は、睡眠の断片化を体験し、潜在的に重度のオキシヘモグロビン不飽和化を伴う睡眠中の間欠的な換気の完全又は略完全な停止を体験する。これらの症状は、極度の日中の眠気、心不整脈、肺動脈性高血圧、うっ血性心不全及び/又は認知機能障害に臨床的に変換される可能性がある。睡眠時無呼吸の他の結果は、右心室機能不全、覚醒時及び睡眠時の二酸化炭素の停滞、並びに動脈血酸素分圧の連続的な低下が含まれる。睡眠時無呼吸患者は、これらの因子による過度の死亡のリスク、並びに運転中及び/又は潜在的に危険な機器の操作中の事故に対する高いリスクに曝される可能性がある。
【0004】
患者が気道の完全又は略完全な閉塞に苦しんでいなくても、例えば睡眠からの覚醒のような悪影響は、気道の部分的な閉塞だけで起こり得ることも知られている。気道の部分的な閉塞は、典型的には低呼吸と呼ばれる浅い呼吸をもたらす。低呼吸は、典型的には、最大呼吸気流の50%又はそれ以上の減少として定義される。他の種類の睡眠呼吸障害は、これらに限定されないが、上気道抵抗症候群(UARS)及び一般にいびきと呼ばれる咽頭壁の振動のような気道の振動が含まれる。
【0005】
患者の気道に持続陽圧呼吸(CPAP)を加えることにより睡眠呼吸障害を治療することはよく知られている。この陽圧は気道に効果的に"添え木(splint)"を当て、それにより肺への開放通路を維持する。患者に送出されるガスの圧力が患者の呼吸サイクルと共に変化する又は患者の呼吸努力と共に変化する陽圧療法を提供し、患者に対する快適性を高めることも知られている。この圧力支持技術はバイレベル圧力支持と呼ばれ、患者に送出される吸気気道陽圧(IPAP)は呼気気道陽圧(EPAP)よりも高い。例えば患者が無呼吸及び/又は低呼吸を経験しているかどうかのような、患者の検出された状態に基づいて、圧力が自動的に調整される陽圧療法を提供することも知られている。この圧力支持技術は、圧力支持装置が呼吸障害を治療するのに必要なだけ高い圧力を患者に供給しようとするので、自動滴定タイプの圧力支持と呼ばれる。上述した治療の何れかに使用される装置は一般に、気道陽圧(PAP)装置と呼ばれる。
【0006】
上述したような圧力支持療法は、患者の顔面上に柔らかく柔軟な封止クッションを有するマスク構成要素を含む患者インターフェース装置の配置を含む。マスク構成要素は、これらに限定されないが、患者の鼻を覆う鼻マスク、患者の鼻と口を覆う鼻/口マスク又は患者の顔を覆うフルフェイスマスクである。そのような患者インターフェース装置は、額支持体、頬パッド及び顎パッドのような他の患者接触構成要素を使用してもよい。患者インターフェース装置は通例、ヘッドギア構成要素により患者の頭部に固定される。患者インターフェース装置は、ガス送出チューブ又は導管に接続され、圧力支持装置を患者の気道と結び付けるので、呼吸ガス流が、圧力/フロー発生装置から患者の気道に送出され得る。
【0007】
現在のPAP装置は、PAP使用量(すなわち、順守)及び睡眠中の治療の有効性(例えば、無呼吸-低呼吸指数(AHI))を反映している、患者のメトリック値を医療提供者に報告することが可能である。しかしながら、現在のPAP装置により報告されるメトリックは、PAP装置が使用中であるときの治療の有効性を反映するだけであり、故に、患者は、睡眠中に時々PAP装置を動作させることができないので、患者の睡眠の完全な写真を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の実施例は、患者に施される治療を改善するために、医療提供者により利用され得る、患者の睡眠のより完全な写真を提供することにより、既存のシステム及び方法を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様として、患者の睡眠期間の拡張されたPAPメトリックを取得及び供給するためのシステムが提供される。このシステムは、患者に呼吸ガス流を供給する際に使用する圧力支持装置、処理ユニット、及び前記処理ユニットとワイヤレス通信する複数の補助装置を含み、これら複数の補助装置の各補助装置は、患者の睡眠に関連するデータを検出及び収集するように構成される。処理ユニットは、圧力支持援装置の動作中、患者に呼吸ガス流を供給しているとき、前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られたデータを受信する、圧力支持装置が患者に呼吸ガス流を供給していない間に、複数の補助装置により得られた補足データを受信する、並びに前記データ及び前記補足データを利用して、患者の睡眠期間の拡張されたPAPメトリックを決定するようにプログラムされる。
【0010】
前記処理ユニットは、前記圧力支持装置の一部でもよい。
【0011】
前記処理ユニットは、前記処理ユニット及び前記補助装置とは別個の他の装置の一部であってもよい。
【0012】
前記処理ユニットは、前記複数の補助装置のうちの1つの補助装置の一部でもよい。
【0013】
前記複数の補助装置は、スマートウォッチ、スマートフォン、ベッドサイド睡眠モニタ及びマットレス下センサの1つ以上を含むことができる。
【0014】
前記処理ユニットはさらに、睡眠期間の拡張されたPAPメトリックを他の装置に通信するようにプログラムされてもよい。
【0015】
前記複数の補助装置は、少なくとも3つの装置を含むことができ、前記処理ユニットはさらに、前記複数の補助装置の他の補助装置からのデータに対応していない前記複数の補助装置の1つの補助装置からのデータを除外するようにプログラムすることができる。
【0016】
前記処理ユニットはさらに、拡張されたPAPメトリックを利用して、前記圧力支持装置により患者に施される治療に対する調整を決定及び実施するようにプログラムされてもよい。
【0017】
本発明の他の態様として、患者の睡眠期間の拡張されたPAPメトリックを供給する方法が提供される。睡眠期間は、患者が圧力支持装置から治療を受けている第1の部分と、患者が圧力支持装置から治療を受けていない第2の部分とを有する。前記方法は、睡眠期間の前記第1の部分の間に、前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られたデータを受信するステップ、睡眠期間の前記第2の部分の間に、前記複数の補助装置により得られた補助データを受信するステップ、並びに前記データ及び前記補助データを利用して、患者の睡眠期間全体の拡張されたPAPメトリックを決定するステップを含む。
【0018】
前記方法はさらに、拡張されたPAPメトリックを通信するステップを含む。
【0019】
前記方法はさらに、拡張されたPAPメトリックを分析するステップ、及び前記圧力支持装置により患者に施される治療を調整するステップを含む。
【0020】
本発明のさらに他の態様として、患者の睡眠期間の拡張されたPAPメトリックを供給するための方法が提供される。睡眠期間は、患者が圧力支持装置から治療を受けている第1の部分と、患者が圧力支持装置から治療を受けていない第2の部分とを有する。前記方法は、睡眠期間の第1の部分の間に、前記圧力支持装置の複数のセンサにより得られたデータを受信するステップ、睡眠期間の第1の部分の間に、複数の補助装置により得られた補助データを受信するステップ、前記データ及び前記補助データの一方又は両方から睡眠期間の前記第1の部分の間の1つ又は複数のSDB事象の発生を判定するステップ、前記圧力支持装置の複数のセンサにより検出されたSDB事象と前記補助装置により検出されたSDB事象との間の相関を識別するステップ、睡眠期間の第2の部分の間に、前記複数の補助装置により得られた補助データを受信するステップ、並びに睡眠期間の第1の部分の間に得られたデータ及び睡眠期間の第2の部分の間に得られた補助データとの相関を利用して、患者の睡眠期間全体の拡張されたPAPメトリックを決定するステップを含む。
【0021】
前記方法はさらに、拡張されたPAPメトリックを通信するステップを含む。
【0022】
前記方法はさらに、拡張されたPAPメトリックを利用して、圧力支持装置により患者に施される治療を調整するステップを含む。
【0023】
本発明のこれら及び他の目的、特徴並びに特性、構造の関連する要素の動作方法及び機能、並びに部品の組み合わせ及び製造の経済性は、添付の図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考察するとより明らかになり、これらの全てが本明細書の一部を形成し、様々な図面において、同様の参照番号は、対応する部品を示す。しかしながら、これら図面は単に例示及び説明のみを目的とし、本発明の限定の定義として意図されていないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の1つの例示的な実施例に従う圧力発生装置を含む気道圧力支持システムの部分概略図である。
図2図2は、本発明の例示的な実施例に従う方法を実行する際に使用するためのシステムの部分概略図である。
図3図3は、本発明の例示的な実施例に従う方法を実行する際に使用するためのシステムの部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例が本明細書に開示されるが、開示される実施例は、単なる本発明の例示であり、これは様々な形態で実施されることを理解されたい。従って、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、及び実質的に如何なる適切な詳細な構造で本発明を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0026】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、「及び/又は」は、そのような語句により分離される要素の一方又は両方を意味するものとする(例えば、A及び/又はBは、A、B又はA及びBの両方を意味する)。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が「結合される」と述べることは、連動している限り、これらの部品が直接的に又は間接的に、すなわち1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより接合される又は共に動作することを意味している。明細書において、「直接的に結合される」は、2つの要素が互いに直に接していることを意味している。明細書において、「固定して結合される」又は「固定される」は、2つの構成要素が互いに対し一定の方向を維持するように結合されることを意味している。明細書において、「選択的に結合される」は、構成要素が、これら構成要素の何れも損傷することなく、予測可能であり反復的な可能な方法で、容易に結合又は分離されることを可能にすることを意味している。明細書において特に説明されない限り、単に「結合される」として記載される如何なる構成要素も、本発明の範囲から外れることなく、「固定的に」又は「選択的に」結合されてもよい。
【0027】
明細書において、「ユニタリ(unitary)」という言葉は、構成要素が単一ピース又は単一ユニットとして作られることを意味している。すなわち、別々に作られ、その後ユニットとして連結される部分を含んでいる構成要素は、"ユニタリ"な構成要素又は本体ではない。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに「係合する」と述べることは、これらの部品が互いに向けて直接的に又は1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより力を及ぼしていることを意味している。明細書において、"数字"は、1又は1より大きい整数(すなわち複数)を意味する。
【0028】
明細書において、例であり限定ではない方向の表現は、頂部、底部、左側、右側、上方、下方、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の方位に関連し、特に明瞭に言わない限り、請求項を制限しない。
【0029】
本発明のある特定の非限定的である例示的な実施例の一部として用いられる例示的な気道圧力支持システム2を図1に示す。気道圧力支持システム2は、送風機アセンブリ6を収容する圧力支持装置4を含み、その例は、以下にさらに詳細に説明される。送風機アセンブリ6は、圧力支持装置4の一部として設けられたろ過吸気口8を介して周囲雰囲気から一般的に矢印Cで示される呼吸ガスを受け取り、患者回路12、14を介して患者10に圧力補償を提供するための圧力を生成するために、相対的に高い圧力及び低い圧力、すなわち一般的に周囲大気圧に等しい又はそれ以上の圧力で患者10の気道に送出するための呼吸ガス流を生成する。例示的な実施例において、送風機アセンブリ6は、2~30cmHOの圧力範囲の呼吸ガス流を提供することができる。送風機アセンブリ6からの加圧された呼吸ガス流は、一般的に矢印Dで示され、送出導管12を介して、任意の既知の構造の呼吸マスク又は患者インターフェース14に送出され、この呼吸マスク又は患者インターフェース14は、患者10により着用されるか、さもなければ患者10に取り付けられ、呼吸ガス流を患者10の気道に伝える。送達導管12及び患者インターフェース装置14は通例、総称して患者回路と呼ばれる。
【0030】
図1に示される圧力支持システム2は、単一リムシステムとして知られているものであり、前記患者回路が、患者10を圧力支持システム2に接続する送出導管12のみを含むことを意味する。そのようなものとして、排気口16は、矢印Eで示されるように、呼気ガスをシステムから放出するために送出導管12内に設けられる。排気口16は、送出導管12に加えて又はその代わりに、例えば患者インターフェース装置14内のような他の場所に設けることができることに留意されたい。排気口16は、ガスを圧力支持システム2から放出する所望の方法に応じて、多種多様な構成を有することができることも理解されるべきである。
【0031】
本概念はまた、圧力支持システム2が、患者10に接続される送出導管及び排出導管を有する2肢システムも可能であり得ることを意図する。(デュアルリムシステムとも呼ばれる)2肢システムにおいて、排出導管は、患者10からの排気ガスを運び、患者10から遠位の端部に排気弁を含む。そのような実施例における排気弁は通例、システム内を所望のレベル又は圧力に維持するように能動的に制御され、これは一般に、呼気終末陽圧(PEEP)として知られている。
【0032】
その上、図1に示される例示的な実施例において、患者インターフェース14は鼻/口マスクである。しかしながら、患者インターフェース14は、鼻マスク、鼻枕、気管チューブ、気管内チューブ又は適切なガス流伝達機能を備える他の如何なる装置を含むことができると理解されるべきである。また、本発明の目的のために、「患者インターフェース」という言葉は、送達導管12及び加圧された呼吸ガスの供給源を患者10に結合する他の如何なる構造も含むことができる。
【0033】
例示される実施例において、圧力支持システム2は、圧力支持装置4のハウジング内に設けられた内部の送出導管20内に設けられるバルブ18形式の圧力制御器を含む。バルブ18は、患者10に送出される、送風機アセンブリ6からの呼吸ガス流の圧力を制御する。この目的のために、送風機アセンブリ6及びバルブ18は、患者10に送出されるガスの圧力及び/又はガス流を生成及び制御するように協調して機能するので、総称して圧力発生システムと呼ばれる。しかしながら、例えば送風機組立体6の速度を単独で又は圧力制御バルブと組み合わせて変化させるような、患者10に送出されるガスの圧力を制御するための他の技術が、本発明により考慮されることは明らかである。故に、バルブ18は、患者10に送出される呼吸ガス流の圧力を制御するのに使用される技術に応じて、任意選択である。バルブ18が除外される場合、圧力発生システムは、送風機アセンブリ6単独に対応し、患者回路内のガスの圧力は例えば、送風機アセンブリ6の速度を制御することによって制御される。
【0034】
圧力支持システム2は、送出導管20及び送出導管12内の呼吸ガスの流量を測定する流量センサ22をさらに含む。図1に示される特定の実施例において、流量センサ22は、送出導管20及び12と一列に、最も好ましくはバルブ18の下流側に置かれる。圧力支持システム2は、送出導管20内の加圧された流体の圧力を検出する圧力センサ28をさらに含む。流量センサ22により流量が測定される、及び圧力センサ28により圧力が測定される地点は、圧力支持装置4内にあるとして例示されているが、実際の流量及び圧力の測定が行われる位置は、送出導管20又は12に沿ったどこの場所でもよいことが理解されるべきである。流量センサ22により測定される呼吸ガスの流量及び圧力センサ28により検出される圧力は、患者10におけるガスの流量(QPATIENT)を決定するために処理ユニット24に供給される。
【0035】
処理ユニット24は例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又は他の何らかの適切な処理装置とすることができる処理部と、処理部の内部にある又は処理部に動作可能に結合することができ、圧力支持システム2の動作を制御するための処理部により実行可能なデータ及びソフトウェアのための記憶媒体を備えるメモリ部とを含む。処理ユニット24は、例えば上述したような1つ以上のセンサの出力を受信するように構成され、これらセンサは、圧力支持療法の有効性に関連するデータを収集するように構成される。処理ユニット24は、圧力支持療法が患者に施されている間に前記センサの出力を分析して、患者回路内の患者の気流及び圧力波形を決定するように構成されている。
【0036】
入力/出力装置26は、圧力支持システム2により使用される様々なパラメータを設定するため、並びに情報及びデータを臨床医又は介護者などのユーザに表示及び出力するために設けられる。
【0037】
本発明のある実施例による患者(図示せず)の拡張されたPAPメトリックを提供する方法を実行する際に使用するためのシステム100が、図2において一部を概略的に示される。システム100は、処理ユニット24を有する、図1において前述した圧力支持装置4のような圧力支持装置を含む。システム100はさらに、睡眠に関連するデータを検出及び収集するように構成され、各々が圧力支持装置4及びその処理ユニット24とワイヤレス通信(例えば、Bluetooth(登録商標)を介して)する、複数の(この例では4つが示されている)補助装置102A、102B、102C、102Dを含む。より詳細には、これら複数の補助装置は、スマートウォッチ102A、スマートフォン102B、ベッドサイド睡眠モニタ102C及びマットレス下センサ102D含む。患者が着用するように構成されたスマートウォッチ102Aは、患者の心拍数及びアクチグラフの一方又は両方を検出し、それらに関連するデータを処理ユニット24にワイヤレス通信するように構成される。スマートフォン102Bは、患者の呼吸音及び他の音を監視し、それらに関連するデータを処理ユニット24にワイヤレス通信するように構成されたセンサを含む。さらに、スマートフォン102Bは、ベッドの振動を監視し、それらに関連するデータを処理ユニット24にワイヤレス通信するために使用されてもよい。ベッドサイド睡眠モニタ102Cは、患者の呼吸及び身体の動きである非接触の感知を提供し、それらに関連するデータを処理ユニット24にワイヤレス通信する。マットレス下センサ102Dは、患者の心拍数、呼吸数及び動きを検出し、それらに関連するデータを処理ユニット24にワイヤレス通信するように構成されたセンサを含む。システム100において、4つの例示的な補助装置102A~102Dが使用されているが、そのような装置の数及び/又は種類は、本発明の範囲から逸脱することなく変更することができる(図示されているもの以外の装置、例えばこれに限定されないが、SpOセンサを使用することができる)ことを理解されたい。
【0038】
既存の圧力支持装置と同様に、処理ユニット24は、圧力支持装置4内のセンサ(例えば流量センサ22、圧力センサ28)を利用して、患者により圧力支持装置4が使用されているときの患者の睡眠の質(例えば、睡眠呼吸障害事象)を要約するようにプログラムされる。圧力支持装置が患者により使用されていないときには何も記録又は分析しない既存の構成とは異なり、処理ユニット24は、圧力支持装置4が使用されていないが、補助装置102A~102Dの1つ以上により睡眠が検出されるとき、複数の補助装置102A~102Dの1つ以上から補助データを受信及び分析し、そのようなデータを使用して患者の睡眠の質を測定(又は推定)するようにさらにプログラムされる。処理ユニット24はさらに、圧力支持装置4が使用されていた夜の期間、及び圧力支持装置4が使用されなかった夜の期間の患者の睡眠品質を反映している"総夜間(total night)"睡眠品質メトリックを作成するために、圧力支持装置4が使用されたときに収集されたデータに加えて、そのような補助データを利用するようにプログラムされる。補助装置102A~102Dは、SDB事象を直接検出するのに必要とされる呼吸感覚を有していないことがあるので、組み合わされるメトリックは、より一般的な睡眠品質メトリック(例えば、不眠を示すアクチグラフ)であってもよいことを理解されたい。そのような"総夜間"睡眠品質メトリックは、医師又は介護者によるさらなるレビューのために、(ローカル無線、セルラー、インターネット又は如何なる適切な構成を介して)遠隔電子装置104(例えば、スマートフォン106、タブレット108又は他の如何なる適切な電子装置)に通信されてよい。
【0039】
本発明の別の例示的な実施例による患者(図示せず)の拡張されたPAPメトリックを提供する方法を実行する際に使用するためのシステム200が、図3において一部を概略的に示される。システム200は、概ね1つの明らかな例外を除いて、システム200と同様に機能するシステム100と概ね同じ構成要素を含む。補助構成要素102A~102Dが圧力支持装置4の処理ユニット24と通信する代わりに、補助構成要素102A~102D、並びに処理ユニット24は、遠隔処理ユニット210と直接的又は間接的に(例えば、ローカル無線及びインターネットを介して)、(例えば、任意の適切なローカル又は遠隔配置を介して)ワイヤレス通信し、この遠隔処理ユニットは、例えば図3に示される遠隔電子装置104(例えば、スマートフォン106又はタブレット108)の一部でもよいし、クラウドベースのサーバ上に配置されてもよい。遠隔処理ユニット210は、処理ユニット24と同じようにプログラムされ、圧力支持装置4が使用されていた夜の期間、及び圧力支持装置24が使用されなかった夜の期間の患者の睡眠品質を反映している"総夜間"睡眠品質メトリックを作成する。
【0040】
代替実施例において、圧力支持装置4の開始及び停止時間(すなわち、患者が治療を開始したとき、及び患者がマスクを外したとき又はCPAPをオフにしたとき)を使用して、補助装置102A~102Dにより提供されるデータから、睡眠品質に関連するデータの報告をセグメント化することができる。一例として、PAPが使用されていたときに、患者がどのくらい安眠(動きが少ない)であったかを強調するために、睡眠療法システムは、PAPが使用されていた夜間及びPAPが使用されなかった夜間に対し、スマートウォッチからのアクティグラフデータを別々に要約することができる。
【0041】
例えばシステム100又は200において、複数の補助装置が使用される場合、誤った測定値を排除するために照合検査(cross-check)プロトコルが使用されてもよい。例えば、4つの補助装置が接続され、これらの装置の1つが無呼吸を検出するが、他の3つの装置が検出しない場合、検出された事象は、誤検出である可能性が最も高いものとして、総夜間の要約から除外される。
【0042】
明細書に記載されるようなシステムは、圧力支持装置により検出されたSDB事象と補助データとの間の相関関係を特定するために、圧力支持装置及び接続された補助装置からデータを同時に収集する"較正モード"を含んでもよい。そのような較正は、PAPが使用されていないとき(較正期間が完了した後)に、睡眠療法システムがSDB事象をより良く推定することを可能にする。
【0043】
本発明の例示的な実施例において、データにおける"如何なる穴も埋める"ために、1つの接続された補助装置が誤動作する又はシステムから切り離されると、誤動作している装置のデータは、他のシステムのデータ(例えば、PAPセンサのデータ又は他の補助装置からのデータ)の傾向を用いて推定されることができる。一例として、1つの接続された補助装置からのデータが2日間利用可能ではないが、他の全てのデータが"正常"と思われる場合、誤動作している装置から以前に収集された"正常な"データを使用して失われたデータが推定されることができる。
【0044】
従って、上述したことから、本発明の実施例は、患者の治療を改善するために、医師又は他の介護者により使用される、患者の睡眠のより完全な分析を提供することが理解されるべきである。
【0045】
本発明は、最も実用的で好ましい実施例であると現在考えられるものに基づいて、例示を目的に詳細に説明されているが、そのような詳細は、単にその目的のためだけであること、及び本発明は、開示された実施例に限定されるのではなく、それどころか添付の特許請求の範囲の主旨及び範囲内にある修正及び同等の構成を包含することが意図されることを理解されるべきである。例えば、本発明は、可能な限り、何れかの実施例の1つ以上の特徴が、他の何れかの実施例の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを意図することが理解されるべきである。
【0046】
請求項において、括弧の間に付された参照記号は、請求項を限定するものと解釈されない。「有する」又は「含む」という言葉は、請求項に列挙された以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてもよい。要素が複数あることを述べなくても、そのような要素が複数あることを排除するものではない。幾つかの手段を列挙している如何なる装置の請求項において、これらの手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてもよい。特定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用されることができないことを示すものではない。
図1
図2
図3