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特許7428677膜パターン形成方法及びインクジェット塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】膜パターン形成方法及びインクジェット塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20240130BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240130BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240130BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240130BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240130BHJP
   B05C 9/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C9/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021045350
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144374
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久嘉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一夫
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182072(JP,A)
【文献】特開2013-110315(JP,A)
【文献】特開2005-296904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00 - 7/26
B05C5/00 - 5/04
7/00 -21/00
B41J2/01
2/165- 2/20
2/21 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の膜形成領域にインクジェット法により液滴を吐出して膜パターンを形成する膜パターン形成方法であって、
膜形成領域に所定ピッチで液滴を着弾させて第1の塗布膜を形成する第1塗布膜形成工程と、
前記第1塗布膜形成工程における液滴の着弾位置間に液滴を着弾させて形成される中央着弾領域と、
前記第1の塗布膜の最端部着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に液滴を着弾させて形成される広域着弾領域と、
を有する第2の塗布膜を形成する第2塗布膜形成工程と、を有し、
前記第1塗布膜形成工程と、前記第2塗布膜形成工程をこの順に行うことにより前記第1の塗布膜と前記第2の塗布膜とが合体し1枚の塗布膜が形成されることを特徴とする膜パターン形成方法。
【請求項2】
前記広域着弾領域の外側に、前記第1の塗布膜、及び、第2の塗布膜を形成するピッチよりも小さいピッチで形成される線状膜を形成する第3塗布膜形成工程を有していることを特徴とする請求項1に記載の膜パターン形成方法。
【請求項3】
前記第2塗布膜形成工程と前記第3塗布膜形成工程とは、同時に行われることを特徴とする請求項2に記載の膜パターン形成方法。
【請求項4】
前記中央着弾領域を形成する着弾位置は、前記第1塗布膜形成工程におけるX軸方向、及び、Y軸方向の着弾位置からそれぞれ半ピッチずらした位置に設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の膜パターン形成方法。
【請求項5】
基材を載置するステージと、
前記ステージに載置された基材に対し相対的に移動しつつ、基材上の膜形成領域に液滴を吐出して膜パターンを形成する液滴ユニットと、
前記ステージと前記液滴ユニットとを制御する制御装置と、
を有するインクジェット塗布装置であって、
前記制御装置は、膜形成領域に所定ピッチで液滴を着弾させて第1の塗布膜を形成する第1塗布膜形成モードと、
前記第1塗布膜形成工程における液滴の着弾位置間に液滴を着弾させて形成される中央着弾領域と、前記第1の塗布膜の最端部着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に液滴を着弾させて形成される広域着弾領域と、
を有する第2の塗布膜を形成する第2塗布膜形成モードと、
を備えており、前記第1塗布膜形成モードにより形成された第1の塗布膜と、前記第2塗布膜形成モードにより形成された第2の塗布膜とが合体し1枚の塗布膜が形成されることを特徴とするインクジェット塗布装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記広域着弾領域の外側に、前記第1の塗布膜、及び、第2の塗布膜を形成するピッチよりも小さいピッチで形成される線状膜を形成する第3塗布膜形成モードを有していることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に液滴を吐出して薄い塗布膜を形成する膜パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスやフィルム等の基材上にインクジェット法により液滴を吐出し、線分、矩形状等、様々な形状の塗布膜(膜パターンという)を形成することが望まれている。例えば、プリント基板やパッケージ基板のような配線基板(基材)における配線パターン、パワー半導体の絶縁膜パターンは、インクジェット法を用いることにより、薄い膜パターン(薄膜)を形成することが検討されている。
【0003】
このインクジェット法による膜パターンを形成する場合には、基材上に膜パターンに応じた膜形成領域が設定されており、その膜形成領域に塗布材料である液滴が多数吐出されることにより行われる(例えば下記特許文献1参照)。すなわち、図9(a)に示すように、膜形成領域Rに応じた着弾位置PがX軸方向及びY軸方向に延びる破線の交点として格子状に設定されており、インクジェットヘッド100と基材Wとを相対的に移動させつつ液滴Dを吐出することにより膜形成領域Rに膜パターンCが形成される。ここで、膜パターンCの厚みは、着弾位置Pの設定により調節され、薄膜を形成する場合には、図9(b)の破線の円形で示されるように、着弾位置Pを間引いて(着弾位置P間隔を広げて)塗布されることにより形成される。しかし、着弾位置Pを間引いて液滴Dを吐出すると、着弾位置P間に未塗布領域mが形成される場合がある(図9(b)における実線の円形)。この未塗布領域mが形成されると膜パターンCの平坦性が損なわれる。そのため、1スキャン目に着弾位置Pを間引いて塗布する第1塗布膜形成工程を行った後、未塗布領域mを埋めるように、2スキャン目に第1塗布膜形成工程における着弾位置P間に液滴Dを吐出する第2塗布膜形成工程を行うことにより、未塗布領域mが形成されるのを抑えて平坦な薄膜(膜パターンC)を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-133137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の膜パターン形成方法では、膜パターンCの端部領域が制御できず、膜パターンCの有効領域αが小さくなってしまうという問題があった。すなわち、形成される膜パターンCの中央領域は膜厚精度がよく、平坦に形成されるが、端部領域には、図9(C)に示すように、端部にいくほど厚みが増加する、いわゆるコーヒーステインSが形成される。このコーヒーステインSが形成される領域は、製品としては使用できない端部除外領域fになるため、上述のように未塗布領域mを埋めるために単に着弾位置P間に液滴Dを吐出するのみでは、製品として使用できる膜パターンCの有効領域αが小さくなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、インクジェット法により薄い膜パターンを形成する場合であっても、端部除外領域により有効領域が小さくなるのを抑えることができる膜パターン形成方法及びインクジェット塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の膜パターン形成方法は、基材上の膜形成領域にインクジェット法により液滴を吐出して膜パターンを形成する膜パターン形成方法であって、膜形成領域に所定ピッチで液滴を着弾させて第1の塗布膜を形成する第1塗布膜形成工程と、前記第1塗布膜形成工程における液滴の着弾位置間に液滴を着弾させて形成される中央着弾領域と、前記第1の塗布膜の最端部着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に液滴を着弾させて形成される広域着弾領域と、を有する第2の塗布膜を形成する第2塗布膜形成工程と、を有し、前記第1塗布膜形成工程と、前記第2塗布膜形成工程をこの順に行うことにより前記第1の塗布膜と前記第2の塗布膜とが合体し1枚の塗布膜が形成されることを特徴としている。
【0008】
上記膜パターン形成方法によれば、第1塗布膜形成工程にて所定ピッチで第1の塗布膜が形成された後、第2塗布膜形成工程にて第2の塗布膜が形成されるため、コーヒーステインの影響を小さくすることができる。すなわち、第2塗布膜の中央着弾領域が第1の塗布膜上に形成されることから、第1の塗布膜の端部に形成されようとするコーヒーステインは、中央着弾領域及び広域着弾領域が形成されることにより、端部環境ではなくなるため、その成長が抑えられる。また、広域着弾領域は、第1の塗布膜の最端部の着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に形成されるため、広域着弾領域の端部領域には第1の塗布膜が形成されておらず、第2の塗布膜を形成する液滴のみが存在する。すなわち、広域着弾領域の端部領域では、液滴量が少なくなる。そのため、1回の走査(1スキャン)で形成される通常厚さの塗布膜に比べて、広域着弾領域の端部領域で凸形状に形成されにくく、コーヒーステインの形成が抑えられる。したがって、コーヒーステインが抑えられることにより端部除外領域の形成が抑えられ、膜パターンの有効領域が小さくなるのを抑えることができる。
【0009】
また、前記広域着弾領域の外側に、前記第1の塗布膜、及び、第2の塗布膜を形成するピッチよりも小さいピッチで形成される線状膜を形成する第3塗布膜形成工程を有している構成にしてもよい。
【0010】
この構成によれば、膜パターンの最端部形状における波打ち現象を抑えることができる。すなわち、膜パターンの最端部では、着弾位置が間欠的に設定されているため、最端部形状は液滴同士が混ざり合っても波打つ形状に形成される(波打ち現象という)。この波形状は、膜パターンの端部に形成されるが、着弾位置間寸法が大きいほど、図9(b)ので示す振幅が大きく形成される。そして、上述のように、膜パターンCを形成するために着弾位置Pを間引いて塗布すると、波打ち現象が顕著になり、端部除外領域fが大きくなり、膜パターンCの有効領域αが損なわれる傾向があるという問題がある。しかし、上記第3塗布膜形成工程により、線状膜を形成することにより、波打ち現象を抑えることができ、端部除外領域fが必要以上に大きくなるのを抑えることができる。
【0011】
また、前記第2塗布膜形成工程と前記第3塗布膜形成工程とは、同時に行われる構成にしてもよい。
【0012】
この構成によれば、第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程とが1スキャンで行われるため、別々のスキャンで行う場合に比べてタクトタイムを短縮することができる。
【0013】
また、前記中央着弾領域を形成する着弾位置は、前記第1塗布膜形成工程におけるX軸方向、及び、Y軸方向の着弾位置からそれぞれ半ピッチずらした位置に設定されている構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、X軸方向、Y軸方向いずれの着弾位置からも離れた位置に液滴を着弾させるため、未塗布領域の形成を効率よく抑えることができる。
【0015】
上記課題を解決するために本発明のインクジェット塗布装置は、基材を載置するステージと、前記ステージに載置された基材に対し相対的に移動しつつ、基材上の膜形成領域に液滴を吐出して膜パターンを形成する液滴ユニットと、前記ステージと前記液滴ユニットとを制御する制御装置と、を有するインクジェット塗布装置であって、前記制御装置は、膜形成領域に所定ピッチで液滴を着弾させて第1の塗布膜を形成する第1塗布膜形成モードと、前記第1塗布膜形成工程における液滴の着弾位置間に液滴を着弾させて形成される中央着弾領域と、前記第1の塗布膜の最端部着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に液滴を着弾させて形成される広域着弾領域と、を有する第2の塗布膜を形成する第2塗布膜形成モードと、を備えており、前記第1塗布膜形成モードにより形成された第1の塗布膜と、前記第2塗布膜形成モードにより形成された第2の塗布膜とが合体し1枚の塗布膜が形成されることを特徴としている。
【0016】
上記インクジェット塗布装置によれば、第1塗布膜形成モードにて所定ピッチで第1の塗布膜が形成された後、第2塗布膜形成モードにて第2の塗布膜が形成されるため、コーヒーステインの影響を小さくすることができる。すなわち、第2塗布膜の中央着弾領域が第1の塗布膜上に形成されることから、第1の塗布膜の端部に形成されようとするコーヒーステインは、中央着弾領域及び広域着弾領域が形成されることにより、端部環境ではなくなるため、その成長が抑えられる。また、広域着弾領域は、第1の塗布膜の最端部着弾位置から少なくとも1ピッチを超える範囲に形成されるため、広域着弾領域の部分には第1の塗布膜が形成されておらず、第2の塗布膜を形成する液滴のみが存在する。また、広域着弾領域の部分では、液滴量が少なくなると共に、中央着弾領域の部分に比べて、第1の塗布膜の厚さ分だけ低い位置に形成される。そのため、1回の走査(1スキャン)で形成される塗布膜に比べて、広域着弾領域の部分で凸形状に形成されにくいと考えられ、コーヒーステインの形成が抑えられる。したがって、コーヒーステインが抑えられることにより端部除外領域の形成が抑えられ、膜パターンの有効領域が小さくなるのを抑えることができる。
【0017】
また、前記制御装置は、前記広域着弾領域の外側に、前記第1の塗布膜、及び、第2の塗布膜を形成するピッチよりも小さいピッチで形成される線状膜を形成する第3塗布膜形成モードを有している構成にしてもよい。
【0018】
この構成によれば、膜パターンの最端部形状における波打ち現象を抑えることができる。すなわち、膜パターンの最端部では、着弾位置が間欠的に設定されているため、最端部形状は液滴同士が混ざり合っても波打つ形状に形成される(波打ち現象という)。この波形状は、膜パターンの端部に形成されるが、着弾位置間寸法が大きいほど、図9(b)ので示す振幅が大きく形成される。そして、上述のように、膜パターンCを形成するために着弾位置Pを間引いて塗布すると、波打ち現象が顕著になり、端部除外領域fが大きくなり、膜パターンCの有効領域αが損なわれる傾向があるという問題がある。しかし、上記第3塗布膜形成工程により、線状膜を形成することにより、波打ち現象を抑えることができ、端部除外領域fが必要以上に大きくなるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インクジェット法により薄い膜パターンを形成する場合であっても、端部除外領域により有効領域が小さくなるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の膜パターン形成方法が適用されるインクジェット塗布装置を概略的に示す側面図である。
図2】上記インクジェット塗布装置の上面図である。
図3】上記インクジェットヘッド部のノズルの配置を示す図である。
図4】第1塗布膜形成工程により第1の塗布膜の形成を説明するための図であり、(a)は第1塗布膜形成工程の着弾位置に液滴を吐出した状態を示す図、(b)は第1の塗布膜が形成された状態を示す図である。
図5】第2塗布膜形成工程により第2の塗布膜の形成を説明するための図であり、(a)は第2塗布膜形成工程の着弾位置に液滴を吐出した状態を示す図、(b)は第1の塗布膜と第2の塗布膜とが合体した状態を示す図である。
図6】第3塗布膜形成工程により線状膜の形成を説明するための図であり、(a)は第3塗布膜形成工程の着弾位置に液滴を吐出した状態を示す図、(b)は第1の塗布膜、第2の塗布膜、及び、線状膜が合体した状態を示す図である。
図7】上記インクジェット塗布装置の塗布動作を示すフローチャートである。
図8】第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程とが同時に実行され、第2の塗布膜と線状膜の形成を説明するための図であり、(a)は、基材の下端部における第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程の着弾位置に液滴が吐出される状態を示す図、(b)は、2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程のすべての着弾位置に液滴が吐出された状態を示す図である。
図9】従来の方法により薄膜状の膜パターンの形成を説明するための図であり、(a)は着弾位置に液滴が吐出された状態を示す図であり、(b)は膜パターンが形成され、未塗布領域が形成されている図であり、(c)は、膜パターンの端部に形成されるコーヒーステインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のインクジェット塗布装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、インクジェット塗布装置の一実施形態を示す側面図であり、図2は、インクジェット塗布装置の上面図である。
【0023】
インクジェット塗布装置は、図1図2に示すように、基材Wを載置するステージ10と、基材Wに液滴D(塗布材料)を塗布する液滴ユニット2とを有しており、液滴ユニット2がステージ10に載置された基材W上を移動しつつ、液滴Dを吐出することにより、基材W上に塗布膜が形成される。
【0024】
なお、以下の説明では、この液滴ユニット2が移動する方向をX軸方向(主走査方向)、これと水平面上で直交する方向をY軸方向(副走査方向、又は、幅方向)、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0025】
インクジェット塗布装置は、基台1を有しており、この基台1上にステージ10、液滴ユニット2が設けられている。具体的には、基台1上にステージ10が設けられており、このステージ10をY軸方向に跨ぐように液滴ユニット2が設けられている。
【0026】
ステージ10は、基材Wを載置するものであり、載置された基材Wが水平な姿勢を維持した状態で載置できるようになっている。具体的には、ステージ10の表面は、平坦に形成されており、その表面には、吸引孔が複数形成されている。この吸引孔には真空ポンプが接続されており、ステージ10の表面に基材Wを載置した状態で真空ポンプを作動させることにより、吸引孔に吸引力が発生し、基材Wが水平な姿勢でステージ10の表面に吸着保持できるようになっている。
【0027】
また、液滴ユニット2は、基材W上に塗布材料である液滴Dを着弾させて塗布するものであり、塗布材料を吐出するインクジェットヘッド部21と、このインクジェットヘッド部21を支持するガントリ部22とを有している。
【0028】
このガントリ部22は、ステージ10のY軸方向両外側に配置される脚部22aと、これらの脚部22aを連結しY軸方向に延びるビーム部材22bとを有する略門型形状に形成されている。そして、このビーム部材22bにインクジェットヘッド部21が取付けられており、ガントリ部22は、ステージ10をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。本実施形態では、基台1のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール(不図示)が設置されており、脚部22aがこのレールにスライド自在に取り付けられている。そして、脚部22aにはリニアモータが取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、ガントリ部22がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0029】
また、ビーム部材22bは、両脚部22aを連結する柱状部材である。このビーム部材22bには、インクジェットヘッド部21が取付けられている。具体的には、ビーム部材22bのX軸方向一方側の側面に、インクジェットヘッド部21が取り付けられており、このインクジェットヘッド部21に設けられたノズル31a(図3参照)がステージ10の表面に向く姿勢で取付けられている。したがって、ガントリ部22がX軸方向に移動又は停止するにしたがって、インクジェットヘッド部21もそれに付随してX軸方向に移動又は停止を行うことができ、ガントリ部22の移動量を調節することにより、ステージ10の表面に載置された基材W上にインクジェットヘッド部21を位置させて基材W上に塗布材料である液滴Dを吐出できるようになっている。
【0030】
また、インクジェットヘッド部21は、複数のノズル31aを一体化させたものである。本実施形態では、インクジェットヘッド部21は、複数のノズル31aを有しており、それぞれのノズル31aから液滴Dを吐出できるようになっている。
【0031】
インクジェットヘッド部21は、図3に示すように、ノズル31aを有する複数のヘッドモジュール31を備えている。本実施形態では、複数のヘッドモジュール31がY軸方向(副走査方向)に沿って配列されており、塗布方向に対して直交する方向に配置されている。また、ヘッドモジュール31は、複数のノズル31aを有しており、ノズル31aが一方向に所定の配列ピッチで整列した状態で設けられている。本実施形態では、ノズル31aの副走査方向における配列方向寸法が、基材Wの副走査方向寸法よりも大きい寸法になるように構成されている。
【0032】
また、ヘッドモジュール31は、それぞれが互いに重複する部分を有するようにずらして配置されている。図3の例では、隣接するヘッドモジュール31がX軸方向に交互にずらして配置されている。すなわち、これらのヘッドモジュール31は、ノズル31aの配置間隔とヘッドモジュール31の両端部分とでは寸法が異なっているため、この両端部分の寸法分を相殺できるようにX軸方向にずらしつつY軸方向に配列される。すなわち、インクジェットヘッド部21は、X軸方向に見て通常ノズル31aがY軸方向に等間隔で配置されており、インクジェトヘッド部21全体としてX軸方向に見て、すべての通常ノズル31aがY軸方向に沿って一定の配列ピッチで配列され、X軸方向から見てY軸方向に亘って等間隔で配置されている。これにより、図2に示すように、ガントリ部22がX軸方向に移動することにより、1回の走査で基材W上の膜形成領域すべてに液滴Dを着弾させることができる。
【0033】
また、上記インクジェット塗布装置は、制御装置を有している。制御装置は、上述した各種ユニットの駆動を制御するものであり、予め記憶されたプログラムに従って一連の塗布動作を実行すべく、各ユニットの駆動装置を駆動制御するとともに、塗布動作に必要な各種演算を行うものである。制御装置には、所定の膜パターンCを形成する塗布プログラムが記憶されており、本実施形態では、厚さの薄い膜パターンC(薄膜)を形成するための第1塗布膜形成モード、第2塗布膜形成モード、第3塗布膜形成モードが記憶されている。すなわち、これらのモードを実行することにより、端部除外領域f(図9(b)、図9(c)参照)により有効領域α(図9(b)、図9(c)参照)が小さくなるのを抑えた薄膜を形成することができる。
【0034】
第1塗布膜形成モードは、第1の塗布膜を形成するものであり、基材W上の膜形成領域R(図4において2点鎖線)のほぼ中央部分に膜パターンCを形成するように設定されている。液滴Dを着弾させる着弾位置Pのピッチは、形成する膜パターンCの膜厚に応じて設定されており、通常の膜パターンCの膜厚よりも薄い薄膜を形成する場合には、通常の膜厚の膜パターンCの着弾位置Pの間隔(ピッチ)よりも広い所定ピッチに設定されている。具体的には、着弾位置Pは格子状に設定されており、図4(a)に示す例では、通常の塗布膜を形成する場合に応じた着弾位置Pが仮想的に示された破線の交点により示されている。そして、薄膜を形成する場合には、着弾位置P1が間引いて設定されており、図4(a)に示す例では、通常の塗布膜のピッチの2倍になるように設定されている。すなわち、第1塗布膜形成モードでは、着弾位置P1が1つ置きの破線の交点に設定され、その間引きされた所定の着弾位置P1に実線の円形で示されるように液滴D(塗布液)が着弾される。そして、液滴Dが着弾されると、液滴D同士が混ざり合い、図4(a)では、基材Wのほぼ中央に矩形状の第1の塗布膜C1が形成される(図4(b))。この第1の塗布膜C1は、破線の交点すべてが着弾位置Pに設定される通常の塗布膜よりも薄い塗布膜に形成される。なお、着弾位置Pは、第1塗布膜形成モードで使用される着弾位置はP1、後述する第2塗布膜形成モードで使用する着弾位置はP2、第3塗布膜形成モードで使用する着弾位置はP3で表し、特に着弾位置を区別する必要がない場合はPとして表すこととする。
【0035】
第2塗布膜形成モードは、第2の塗布膜C2(図5(b))を形成するものである。上述の第1塗布膜形成モードで形成した第1の塗布膜C1は、着弾位置Pの間隔を広げているため、局所的に未塗布領域m(図4(b)、図5(a)において実線円形で示す)が形成される。この第2の塗布膜C2が形成されることにより、この未塗布領域mが埋められつつ、形成される膜パターンC(薄膜)のコーヒーステインが抑制される。すなわち、第2の塗布膜C2は、中央着弾領域T1と広域着弾領域T2とを有しており、中央着弾領域T1により未塗布領域mが埋められ、広域着弾領域T2によりコーヒーステインが抑制される。
【0036】
中央着弾領域T1は、第1塗布膜形成モードの着弾位置P1間に液滴Dを着弾させて形成される第2の塗布膜C2の一部であり、第1の塗布膜C1上に形成される。中央着弾領域T1は、本実施形態では、図5(a)に示すように、その着弾位置P2が第1塗布膜形成モードと同ピッチに設定されており、第1塗布膜形成モードの着弾位置P1からX軸方向及びY軸方向にそれぞれ半ピッチずらした位置に設定されている。図5(a)の例では、第1塗布膜形成モードにおける着弾位置P1からほぼ等距離離れた位置に液滴Dが吐出されることにより、第1の塗布膜C1において、着弾位置P1間に形成された未塗布領域mが埋められ、平坦な薄膜を形成することができる。
【0037】
広域着弾領域T2は、第1の塗布膜C1の最端部から外側に形成される第2の塗布膜C2の一部であり、第1の塗布膜C1の最端部着弾位置P1から少なくとも1ピッチを超える範囲に液滴Dを着弾させて形成される。すなわち、広域着弾領域T2は、図5(a)に示すように、1点鎖線で示される中央着弾領域T1の外側に形成される領域である。この広域着弾領域T2は、本実施形態では、中央着弾領域T1と同ピッチで形成されており、中央着弾領域T1の形成から継続して同ピッチで形成される。すなわち、第1の塗布膜C1の最端部を超える部分には、中央着弾領域T1と同ピッチの着弾位置P2が設定される。
【0038】
また、第1の塗布膜C1の最端部着弾位置P1から1ピッチを超える範囲、本実施形態では、最端部着弾位置Pから1.5ピッチ外側にも着弾位置P2が設定されている。これにより、コーヒーステインの形成が抑制される。すなわち、第1の塗布膜C1が形成された後、中央着弾領域T1が形成されると、第1の塗布膜C1の最端部で形成されようとするコーヒーステインの成長が中央着弾領域T1及び広域着弾領域T2が形成されることにより、第1の塗布膜C1の最端部が端部環境ではなくなるため、第1の塗布膜C1の最端部位置でコーヒーステインが成長しなくなりコーヒーステインの発生が抑えられる。また、広域着弾領域T2の最端部分では、第1の塗布膜C1の最端部着弾位置P1から少なくとも第1の塗布膜形成の1ピッチを超える範囲に形成されるため、広域着弾領域T2の端部領域には第1の塗布膜C1が形成されておらず、第2の塗布膜C2を形成する液滴Dのみが存在する。すなわち、広域着弾領域T2の部分では、着弾位置P2が間引いて設定されることから液滴量が少なくなり、1回の走査(1スキャン)で形成される通常厚さの塗布膜に比べて、広域着弾領域T2の最端部分で凸形状に形成されにくく、コーヒーステインの形成を抑えることができる。なお、この中央着弾領域T1、及び、広域着弾領域T2により、第2の塗布膜C2が形成されるが、破線の交点が着弾位置P1又は着弾位置P2に設定されていない点が存在しており、破線の交点すべてが着弾位置Pに設定される通常の塗布膜よりも薄い塗布膜に形成される。
【0039】
第3塗布膜形成工程は、第2の塗布膜C2の外側(広域着弾領域T2の外側)に形成する塗布膜である。本実施形態では、膜形成領域Rに沿って直線的に形成され、第2の塗布膜C2を囲うように線状の塗布膜(線状膜ともいう。)が形成される。第3塗布膜形成工程は、図6(a)に示すように、第1塗布膜及び第2の塗布膜C2の外側に着弾位置Pが設定されており、着弾位置Pのピッチは、第1塗布膜及び第2塗布膜のピッチよりも小さいピッチに設定されている。これにより、線状膜が第2の塗布膜C2の全周を囲うように形成され、第2塗布膜形成工程で吐出された塗布液の流動性を止めつつ、基材W上に形成される薄膜最端部の波打ち現象を抑えることができる。
【0040】
すなわち、広域着弾領域T2は、最端部が着弾した液滴D同士が混ざり合って波打つ形状に形成される。そして、コーヒーステインの影響を抑えるため、第2塗布膜形成工程において、着弾位置Pが間引いて設定されているため、その影響が大きいが、第2の塗布膜C2の外側に線状の塗布膜を形成することにより、最端部の塗布膜を線状に形成することができるため、波打ち現象を緩和し、形成される薄膜の最端部を直線状に形成することができる。これにより、端部除外領域fが必要以上に大きくなるのを抑えることができる。
【0041】
次に、本実施形態のインクジェット塗布装置の塗布動作について図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
まず、ステップS1により基材搬入工程が行われ、基材Wがステージ10上に供給されると、基材Wが所定位置に位置決めされてステージ10上に吸着固定される。そして、予め入力された基材Wデータに基づいて、当該基材Wのマッピングデータが演算される。すなわち、基材W上の膜形成領域Rに一様な膜パターンCが形成できるように、第1~3塗布膜形成モードに応じた着弾位置Pと、吐出周期、着弾位置Pに対するノズル31aの選定等が行われる。
【0043】
次に、ステップS2により塗布工程が行われ、基材W上に塗布膜が形成される。すなわち、ステップS21、及び、ステップS22が順次実行されることにより基材W上の膜形成領域Rに平坦な薄膜が形成される。
【0044】
まず、ステップS21により、第1塗布膜形成工程が行われる。この第1塗布膜形成工程では、第1塗布膜形成モードにより塗布膜が形成される。すなわち、図4(a)に示すように、基材W上の中央部分に所定ピッチに設定された着弾位置Pに液滴Dが吐出され、第1の塗布膜C1が形成される(図4(b))。
【0045】
次に、ステップS22により、第2塗布膜形成工程及び第3塗布膜形成工程が行われる。本実施形態では、第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程とが同時に行われる。すなわち、図8(a)に示すように、第2塗布膜形成モードにより形成される第2の塗布膜C2と、第3塗布膜形成モードにより、第2の塗布膜C2を囲う線状塗布膜とが同時に形成される。具体的には、スタート時に図8(a)の下側に位置するインクジェット部21(破線で示す)が基材Wに対して相対移動し、線状塗布膜に応じた着弾位置Pに液滴Dが吐出される。すなわち、基材W上の膜形成領域R下端部においてY軸方向に延びる線状塗布膜の着弾位置Pに液滴Dが吐出される。そして、インクジェットヘッド部21が移動しつつ、線状塗布膜の着弾位置Pへの吐出を継続し、第2の塗布膜C2の着弾位置Pに対しても液滴Dを吐出する。このようにして、第3塗布膜形成工程及び第2塗布膜形成工程における着弾位置Pすべてに液滴Dが吐出され(図8(b))、線状塗布膜と、第2の塗布膜C2とが同時に形成される。すなわち、第1塗布膜形成時に形成された未塗布領域mが埋められ、広域着弾領域T2の最端部分では、第2の塗布膜C2を形成する液滴Dのみが存在することから液滴量が少なくなりコーヒーステインの形成が抑えられる。そして、線状塗布膜により薄膜端部の波打ち現象が抑えられ薄膜の最端部が直線状に形成される。これにより、基材W上には、1枚の平坦な薄膜が形成される(図6(b))。
【0046】
次に、ステップS3により基材搬出工程が行われる。すなわち、基材W上の膜形成領域Rに膜パターンCが形成されると、ロボットハンド等により、基材Wがステージ10から搬出される。
【0047】
このように、上記膜パターンC形成方法によれば、第1塗布膜形成工程にて所定ピッチで第1の塗布膜C1が形成された後、第2塗布膜形成工程にて第2の塗布膜C2が形成されるため、コーヒーステインの影響を小さくすることができる。すなわち、第2塗布膜の中央着弾領域が第1の塗布膜C1上に形成されることから、第1の塗布膜C1の端部に形成されようとするコーヒーステインは、中央着弾領域T1及び広域着弾領域T2が形成されることにより、端部環境ではなくなるため、その成長が抑えられる。また、広域着弾領域T2は、第1の塗布膜C1の最端部の着弾位置Pから少なくとも1ピッチを超える範囲に形成されるため、広域着弾領域T2の部分には第1の塗布膜C1が形成されておらず、第2の塗布膜C2を形成する液滴Dのみが存在する。すなわち、広域着弾領域T2の部分では、液滴量が少なくなる。そのため、1回の走査(1スキャン)で形成される通常厚さの塗布膜に比べて、広域着弾領域T2の部分で凸形状に形成されにくく、コーヒーステインの形成が抑えられる。したがって、コーヒーステインが抑えられることにより端部除外領域fの形成が抑えられ、膜パターンCの有効領域αが小さくなるのを抑えることができる。さらに、第3塗布膜形成工程により、線状膜を形成することにより、波打ち現象を抑えることができ、端部除外領域fが必要以上に大きくなるのを抑えることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程とが同時に実行される例について説明したが、第1塗布膜形成工程後、第2塗布膜形成工程、第3塗布膜形成工程とが順番に行われるようにしてもよい。上記実施形態のように第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程とが同時に実行されることにより、インクジェットヘッド部21が1スキャンで第2塗布膜形成工程と第3塗布膜形成工程を行うことができるため、タクトタイム短縮の点で好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では、第2の塗布膜C2の着弾位置Pが第1塗布膜形成工程における着弾位置Pに対してX軸方向及びY軸方向それぞれ半ピッチずつずらした位置に設定される例について説明したが、特に限定するわけではなく、第1の塗布膜C1に形成される未塗布領域mを埋めることができれば、どのようなピッチで塗布してもよく、等ピッチでなくても、特定の着弾位置Pを設定して塗布するものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、広域着弾領域T2が第1塗布膜形成工程における最端部着弾位置Pから1.5ピッチに着弾位置Pを設定する例について説明したが、最端部着弾位置Pから1ピッチを超える範囲に着弾位置Pが設定されていればよく、第1の塗布膜C1を形成する液滴Dの影響が少なく、コーヒーステインを抑えられるように設定されていればよい。
【符号の説明】
【0051】
2 液滴ユニット
10 ステージ
21 インクジェットヘッド部
31a ノズル
C 膜パターン
C1 第1の塗布膜
C2 第2の塗布膜
P 着弾位置
D 液滴
R 膜形成領域
W 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9