(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】コポリエーテルエステル樹脂配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240130BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240130BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240130BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L83/04
C08L71/02
C08L33/06
(21)【出願番号】P 2021510423
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019049072
(87)【国際公開番号】W WO2020047415
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519393129
【氏名又は名称】デュポン ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ペトロス ダフニオティス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン グラデレ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-147489(JP,A)
【文献】特開平09-037802(JP,A)
【文献】特開平10-152604(JP,A)
【文献】特開2017-145399(JP,A)
【文献】特開2006-249163(JP,A)
【文献】特開平06-145477(JP,A)
【文献】特開2009-007487(JP,A)
【文献】特表2010-509434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリエーテルエステル配合物であって、
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステル樹脂、及び
(2)エネルギー分散型X線分光法による
測定で、
1.5ミクロンの表面層深さを基準とし、表面層の原子の重量を基準として、0.5wt%を超える表面のSi濃度を与える量のポリシロキサン、及び
(3)1wt%を超える濃度のポリエーテルグリコールワックス、
を含み、
前記重量百分率は相補的であり、前記コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準とする、
コポリエーテルエステル配合物。
【請求項2】
前記コポリエーテルエステルは、テレフタレート、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、及びブタンジオールのモノマーから作製されたものから選択される、又は前記コポリエーテルエステルは、60、000~80,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項3】
前記ポリシロキサンは、1.5ミクロンの表面層深さを基準とし、表面層の原子の重量を基準として、
エネルギー分散型X線分光法による測定で、0.7wt%を超え
る前記表面のSi濃度を与える量で存在する、請求項1又は2に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンは、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化された
ポリジメチルシロキサンであ
る、請求項1、2、又は3に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項5】
1~4wt%
の量の前記ポリエーテルグリコールワックスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項6】
前記ポリエーテルグリコールは、2、3、又は4個の炭素原子の繰り返しグリコール単位を有するポリエーテルグリコール類から選択され
る、請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項7】
前記ポリエーテルグリコールは、800~3,000
の分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物から作製されるCVJブーツ。
【請求項9】
前記ポリシロキサンは、1.5ミクロンの表面層深さを基準とし、表面層の原子の重量を基準として、エネルギー分散型X線分光法による測定で、0.9wt%を超える前記表面のSi濃度を与える量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項10】
ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化された前記ポリジメチルシロキサンは、光学顕微鏡法で計測された200~300μmの数平均粒径を有する、請求項4に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【請求項11】
前記ポリエーテルグリコールは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールである、請求項6に記載のコポリエーテルエステル配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月31日出願の、米国仮特許出願第62/725,501号明細書に対する米国特許法第365条の下での優先権を主張するものであり、この出願は、その全内容を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、コポリエーテルエステル樹脂配合物の分野に関し、特に、きしみ音のない等速ジョイント(CVJ:constant-velocity joint)ブーツ用のコポリエーテルエステル配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
等速ジョイント(同速(homokinetic)又はCVジョイントとしても知られている)は、ドライブシャフトが、摩擦又は遊びを大きく増加させることなく、一定の回転速度で、可変角度により動力を伝達することを可能にする。これらは主に前輪駆動車両で使用されている。独立リアサスペンションを有する最近の後輪駆動自動車の多くは、一般に、CVジョイントをリアアクスルハーフシャフトの端部に使用しており、それらをドライブシャフトに使用することが増えてきている。
【0004】
等速ジョイントは、通常、二硫化モリブデングリースが充填されたラバーブーツ又はCVJブーツによって保護されている。CVJブーツは、ジョイント及びジョイント内の特殊なグリースへの水及び汚れの侵入を防ぐリブ付きのエラストマー可撓性ブーツである。アクスル及びジョイントにブーツを固定し、グリースが漏れ出るのを防ぐためにクランプが使用される。
【0005】
CVJブーツは、典型的には、熱可塑性エラストマー、特に、コポリエーテルエステルから作製される。コポリエーテルエステルは、所望の機械的及び物理的特性、グリースに対する良好な耐薬品性を有し、CVJブーツの製造にブロー成形を使用することを可能にする。
【0006】
アウトボードCVJブーツの共通の課題は、ドライブシャフトとジョイントとの間の角度が大きく(典型的には、≧40°、
図1のα)、回転速度が低く(典型的には、≦200rpm)、濡れた環境において、ブーツが、自動車の乗員と歩行者の双方に不快感をもたらすほどの高ピッチの高周波音(「きしみ音」と呼ばれる)をしばしば発するおそれがあることである。これは過去20年以上にわたってよく知られている課題であるが、以下の最近の発展の結果、更により顕著になってきている。
・ほぼ全ての製造業者による、車両のNVH(Noise Vibration Harshness:騒音、振動、ハーシュネス)問題に対する多くの注目及び進展が集中しているため、車内はより静かになっており、きしみ音をより目立たせている、
・自動車のエンジンはますます静かになっている、
・低回転速度の電気自動車及びハイブリッド車は非常に静かなため、きしみ音がより目立つ、
・CVJブーツはより薄くなっているため、可能な騒音吸収が少なくなっている、
・消費者は駐車場でのより素早い操舵を望んでいるため、より大きな回転角に対する要求はますます高くなっている。
【0007】
このきしみ騒音の発生に対抗するために、熱可塑性エラストマー樹脂の製造元は、自身の配合物に1種以上のワックスを添加している。例えば、国際公開第2018/019614(A1)号パンフレットは、この課題に対処するための、遅く拡散するワックス及び速く拡散するワックスの使用について開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
きしみ音を減少させるCVJブーツを製造するためのエラストマー樹脂配合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本明細書に提供されるのは、コポリエーテルエステル配合物であって、
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステル樹脂、及び
(2)エネルギー分散型X線分光法による、0.5wt%を超える表面のSi濃度を与える量のポリシロキサン、及び
(3)1wt%を超える濃度のポリエーテルグリコールワックス、
を含み、
全ての重量百分率(wt%)は、配合物の総重量を基準とする、
コポリエーテルエステル配合物である。
【0010】
第2の態様において、本明細書に提供されるのは、コポリエーテルエステル配合物から作製されたCVJブーツであって、
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステル樹脂、及び
(2)エネルギー分散型X線分光法による、0.5wt%を超える表面のSi濃度を与える量のポリシロキサン、及び
(3)1wt%を超える濃度のポリエーテルグリコールワックス、
を含み、
全ての重量百分率(wt%)は、配合物の総重量を基準とする、
CVJブーツである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】CVジョイント及びそのドライブシャフトとの接続部の概略部分断面図を示す。角度αは、CVJブーツの試験中にジョイントの回転が発生する角度である。
【
図2】CVJブーツの概略軸方向断面図を示す。Hは、高さを示し、Dは、最大直径を示し、dは、最小直径を示し、tは、壁厚を示し、Pは、ピッチ(ピーク間の軸方向距離)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、ポリシロキサンとポリエーテルグリコールワックスとを用いて配合したコポリエーテルエステルを使用してCVJブーツを作製すると、得られたブーツは、きしみ音のない優れた性能を示すことを見出した。
【0013】
定義
本明細書で報告されるポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:size exclusion chromatography)により決定した数平均分子量又は重量平均分子量としてダルトン(Da)で報告される。
【0014】
コポリエーテルエステル
本明細書に記載される配合物での使用に適した1種以上のコポリエーテルエステルは、80又は約80~95又は約95重量%の量で存在することが好ましい。重量百分率は、配合物の総重量を基準とする。重量百分率は相補的である。即ち、本明細書に記載される配合物中の全構成成分の重量百分率の合計は、100wt%である。
【0015】
本発明の配合物中に使用されるコポリエーテルエステルは、エステル結合を介して頭-尾結合した複数の繰り返し長鎖エステル単位及び短鎖エステル単位を有し、前記長鎖エステル単位は、式(A):
【0016】
【0017】
で表され、及び前記短鎖エステル単位は、式(B):
【0018】
【0019】
で表され、式中、
Gは、約400~約6000又は好ましくは約400~約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除去後に残る二価のラジカルであり、
Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去後に残る二価のラジカルであり、
Dは、約250未満の分子量を有するジオールからヒドロキシル基を除去後に残る二価のラジカルである。
【0020】
本発明で使用する場合、ポリマー鎖中の単位に適用される「長鎖エステル単位」という用語は、長鎖グリコールとジカルボン酸との反応生成物を意味する。好適な長鎖グリコールは、末端(又はできる限り末端に近い)ヒドロキシ基を有し、且つ約400~約6000及び好ましくは約600~約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。好ましいポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、これらのアルキレンオキシドのコポリマーグリコール、及びエチレンオキシド保護ポリ(プロピレンオキシド)グリコールなどのブロックコポリマーが挙げられる。これらグリコールの2種以上の混合物を使用することができる。
【0021】
本発明で使用する場合、コポリエーテルエステルのポリマー鎖中の単位に適用される「短鎖エステル単位」という用語は、約550未満の分子量を有する低分子量化合物又はポリマー鎖単位を意味する。短鎖エステル単位は、低分子量(約250未満の分子量)ジオール又はジオールの混合物をジカルボン酸と反応させて、上の式(B)で表されるエスエル単位を形成することによって作製される。
【0022】
コポリエーテルエステルの調製のために使用するのに適した短鎖エステル単位を、反応して形成する低分子量ジオールとしては、非環式、脂環式及び芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。好ましい化合物は、エチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、1,4-ペンタメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン及びデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレンなどの約2~15個の炭素原子を有するジオールである。とりわけ好ましいジオールは、2~8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールであり、より好ましいジオールは、1,4-ブタンジオールである。使用可能なビスフェノール類としては、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、及びビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ジオールの等価なエステル形成誘導体も有用である(例えば、エチレンオキシド又はエチレンカーボネートをエチレングリコールの代わりに使用することができ、又はレゾルシノールジアセテートをレゾルシノールの代わりに使用することができる)。
【0023】
本発明で使用する場合、「ジオール」という用語には、言及したものなどの等価のエステル形成誘導体が含まれる。しかしながら、分子量要件は、対応するジオールに言及するものであり、それらの誘導体に言及するものではない。
【0024】
前述の長鎖グリコール及び低分子量ジオールと反応してコポリエーテルエステルを生成することができるジカルボン酸は、低分子量、即ち、約300未満の分子量を有する脂肪族、脂環式、又は芳香族ジカルボン酸である。本明細書で使用する場合、「ジカルボン酸」という用語は、コポリエーテルエステルポリマーを形成する際のグリコール及びジオールとの反応において実質的にジカルボン酸のように機能する、2つのカルボキシル官能基を有するジカルボン酸の機能的等価物を含む。これら等価物としては、エステル並びに酸ハロゲン化物及び酸無水物などのエステル形成誘導体が挙げられる。分子量要件は、酸に関係するものであり、その等価のエステル又はエステル形成誘導体に関係するものではない。
【0025】
したがって、対応する酸が約300未満の分子量を有するという条件で、300を超える分子量を有するジカルボン酸のエステル、又は300を超える分子量を有するジカルボン酸の機能的等価物のエステルが含まれる。ジカルボン酸は、本発明の配合物におけるコポリエーテルエステルポリマーの形成及びコポリエーテルエステルポリマーの使用を実質的に妨げない任意の置換基又は組み合わせを含有することができる。
【0026】
本発明で使用する場合、「脂肪族ジカルボン酸」という用語は、飽和炭素原子にそれぞれ結合した2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。カルボキシル基が結合している炭素原子が飽和しており、環内にある場合、酸は脂環式である。共役不飽和を有する脂肪族又は脂環式の酸は、多くの場合、単独重合ゆえに使用することができない。しかしながら、マレイン酸などのいくつかの不飽和酸は使用することができる。
【0027】
本発明で使用する場合、「芳香族ジカルボン酸」という用語は、炭素環式芳香族環構造の炭素原子にそれぞれ結合した2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸を意味する。両方の官能性カルボキシル基が同一芳香環に結合している必要はなく、2つ以上の環が存在する場合、それらは、脂肪族若しくは芳香族の二価のラジカル又は-O-若しくは-SO2-などの二価のラジカルによって結合させることができる。
【0028】
使用することができる代表的な有用な脂肪族酸及び脂環式酸としては、セバシン酸;1,3-シクロヘキサンジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸;アジピン酸;グルタル酸;4-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸;2-エチルスベリン酸;シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ-1,5-ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビシクロヘキシルジカルボン酸;デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸;4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)カルボン酸;及び3,4-フランジカルボン酸が挙げられる。好ましい酸は、シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸である。
【0029】
代表的な芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸;ビ安息香酸;ビス(p-カルボキシフェニル)メタンなどの2個のベンゼン核を持つ置換ジカルボキシ化合物;p-オキシ-1,5-ナフタレンジカルボン酸;2,6-ナフタレンジカルボン酸;2,7-ナフタレンジカルボン酸;4,4’-スルホニルジ安息香酸、並びにハロ、アルコキシ、及びアリール誘導体などの、これらのC1~C12アルキル及び環置換誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も使用されるという条件で、p-(ベータ-ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸も使用することができる。
【0030】
芳香族ジカルボン酸は、本発明に有用なコポリエーテルエステルエラストマーの調製に好ましい種類のものである。芳香族酸の中では、8~16個の炭素原子を有するもの、特に、テレフタル酸単独、又はテレフタル酸とフタル酸及び/若しくはイソフタル酸との混合物が好ましい。
【0031】
コポリエーテルエステルエラストマーは、好ましくは、15又は約15重量%~99又は約99重量%の、上記の式(B)に対応する短鎖エステル単位を含み、残りは、上記の式(A)に対応する長鎖エステル単位である。より好ましくは、コポリエーテルエステルエラストマーは、20又は約20~95又は約95重量%、更に一層好ましくは50又は約50~90又は約90重量%の短鎖エステル単位を含み、残りは、長鎖エステル単位である。より好ましくは、上記の式(A)及び式(B)中のRで表される基の少なくとも約70%は、1,4-フェニレン基であり、上記の式(B)中のDで表される基の少なくとも約70%は、1,4-ブチレン基であり、1,4-フェニレン基ではないR基の百分率と1,4-ブチレン基ではないD基の百分率の合計は、30%を超えない。第2ジカルボン酸を使用してコポリエーテルエステルを調製する場合、イソフタル酸が好ましく、第2低分子量ジオールが使用される場合、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、又はヘキサメチレングリコールが好ましい。コポリエーテルエステルに関連して使用される場合、長鎖エステル及び短鎖エステル、脂肪族ラジカル、及びジカルボン酸などの共重合残基の重量百分率は、コポリエーテルエステルの総重量を基準とする。更に、重量百分率は相補的である。即ち、コポリエーテルエステル中の全共重合単位の重量百分率の合計は、100wt%である。
【0032】
2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンド又は混合物を使用することができる。ブレンドに使用されるコポリエーテルエステルエラストマーは、個々に、エラストマーに関して上記に開示した値の範囲内である必要はない。しかしながら、2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドは、加重平均基準において、コポリエーテルエステルに関して本明細書に記載されている値に合致していなければならない。例えば、等量の2種のコポリエーテルエステルエラストマーを含有する混合物において、短鎖エステル単位の加重平均45重量%に対し、一方のコポリエーテルエステルエラストマーは60重量%の短鎖エステル単位を含有することができ、他方の樹脂は30重量%の短鎖エステル単位を含有することができる。
【0033】
好ましいコポリエーテルエステルエラストマーとしては、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、(2)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物から選択されるジオールを含むモノマーから調製される、又は(1)ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、(2)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物から選択されるジオールを含むモノマーから調製される、又は(1)エチレンオキシド末端保護ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、(2)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物から選択されるジオールを含むモノマーから調製されるコポリエーテルエステルエラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
好ましくは、本明細書に記載されるコポリエーテルエステルエラストマーは、テレフタル酸及び/若しくはイソフタル酸のエステル若しくはエステルの混合物、1,4-ブタンジオール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール若しくはポリ(トリメチレンエーテル)グリコール若しくはエチレンオキシド末端保護ポリプロピレンオキシドグリコールから調製される、又はテレフタル酸のエステル、例えばジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール及びポリ(エチレンオキシド)グリコールから調製される。より好ましくは、コポリエーテルエステルは、テレフタル酸のエステル、例えば、ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール及びポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールから調製される。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明による配合物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール又はポリ(トリメチレンオキシド)グリコール及びこれらの混合物、(2)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオールを含むモノマーから調製したコポリエーテルエステルエラストマーを含む。
【0036】
より好ましくは、本発明による配合物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、(2)テレフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオールを含むモノマーから調製したコポリエーテルエステルエラストマーを含み、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールのレベルは、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約25重量%未満である。
【0037】
別の実施形態では、本発明による配合物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、(2)テレフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオールを含むモノマーから調製した少なくとも1種のコポリエーテルエステルエラストマーであって、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールのレベルがコポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約25重量%未満である、少なくとも1種のコポリエーテルエステルエラストマーと、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、(2)イソフタル酸とテレフタル酸との混合物からなる群から選択されるジカルボン酸、並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオールを含むモノマーから調製した少なくとも1種のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーであって、前記コポリエーテルエステルエラストマーのレベルがコポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約5~約50重量%である、少なくとも1種のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーとのブレンドを含む。
【0038】
コポリエーテルエステルは、好ましくは、50,000~100000、より具体的には、好ましくは、60,000~75,000の数平均分子量を有する。
【0039】
特に好ましいのは、テレフタレート、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、及びブタンジオールのモノマーから調製したコポリエーテルエステルである。更により好ましいのは、以下の特性、即ち、テレフタレート50~60wt%、ポリ(テトラメチレンオキシド)35~45wt%、及び1,4-ブタンジオール15~25wt%を有するコポリエーテルエステルである。
【0040】
ポリシロキサン
本発明の配合物での使用に好適なポリシロキサンは、一般に、化学式[R2SiO]nであり、式中、Rは、アルキル基(メチル基、エチル基)又はフェニル基などの有機基である。特に好ましいのは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0041】
好ましくは、ポリシロキサンは、500,000よりも高い、より好ましくは600,000よりも高い分子量を有する。
【0042】
本発明の配合物は、ペレット化されると又はCVJブーツに成形されると、1.5ミクロンの表面層深さを使用し、表面層の原子の重量を基準として、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による測定で0.5wt%を超える表面のSi濃度を有する。
【0043】
EDXによる測定で0.5wt%を超えるSiの表面濃度を達成するために、以下の様々な方法によってポリシロキサンをコポリエーテルエステルに組み込むことが好ましい。
・例えばポリ[メチル(メタ)アクリレート]を使用したポリシロキサンのカプセル化、
・ポリシロキサンと、例えば、エチレンと(メタ)アクリレートとのコポリマーなどのポリオレフィンとの又はコポリエーテルエステルとのプレブレンド、
・ポリシロキサンを相溶化剤と反応させること、例えば、ポリシロキサンをエチレンと(メタ)アクリレートとのコポリマーと反応させること。
【0044】
好ましい実施形態では、ポリシロキサンは、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されることによって配合されるPDMSである。特に好ましくは、カプセル化ポリシロキサンは、光学顕微鏡法により決定した200~250μmの平均粒径を有する。このような製品、例えば、METABLEN-S(三菱ケミカル株式会社)は、市販されている。
【0045】
特に好ましい配合ポリシロキサンは以下の通りである。
(A)エチレンと(メタ)アクリレートとのコポリマー(好ましくは、反応生成物の総重量を基準として40wt%)とポリジメチルシロキサン(PDMS)(好ましくは反応生成物の総重量を基準として60wt%)との反応生成物。
(B)好ましくは1000μmの粒径を有する、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されたPDMS、例えば、三菱ケミカル株式会社のMETABLEN S-2100。
(C)好ましくは250μmの粒径を有する、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されたPDMS、例えば、三菱ケミカル株式会社のMETABLEN SX-005。
【0046】
ポリシロキサンは、EDXにより決定される、0.5wt%を超える、より好ましくは0.7wt%を超えるSiの表面濃度をもたらす量で使用される。より好ましくは、表面Si濃度は、0.7~2wt%、特に好ましくは、0.9~1.5wt%、更により特に好ましくは、1wt%である。
【0047】
バルク中のSiのwt%が表面のSiのwt%とほぼ同じであると仮定すると、0.5wt%を超えるSiの表面濃度を得るために添加されるポリシロキサンの量は、以下のように推定することができる。
【0048】
【0049】
上記の表面Si濃度を得るために配合物に添加されるポリシロキサンの典型的な量は、完成コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として、1~10wt%、より好ましくは、3~5wt%である。
【0050】
例えば、ポリシロキサン(C)が使用される場合、コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として、好ましくは、2~6wt%、より好ましくは、3~5wt%で添加される。
【0051】
ポリエーテルグリコールワックス
ポリエーテルグリコールワックスは、好ましくは、2、3、又は4個の炭素原子の繰り返しグリコール単位を有するポリエーテルグリコール類から選択される。ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMEG)が特に好ましい。
【0052】
ポリエーテルグリコールは、好ましくは、800~3,000、より好ましくは、1,000~2,500、特に好ましくは、2,000の分子量を有する。
【0053】
好ましいポリエーテルグリコールは、800~3,000、より好ましくは、1,000~2,500、特に好ましくは、2,000の分子量を有するポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールである。
【0054】
ポリエーテルグリコールワックスは、コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として、好ましくは1wt%を超える、より好ましくは1.5wt%を超える量で使用される。好ましくは、ポリエーテルグリコールワックスは、コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として、1.5~4wt%、より好ましくは2~3.5wt%、特に好ましくは約3wt%の量で存在する。
【0055】
特に好ましい実施形態では、ポリエーテルグリコールワックスは、好ましくは2000の分子量を有するPTMEGであり、コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として、1~6wt%、好ましくは2~5wt%の量で使用される。
【0056】
追加的な成分
本明細書に記載されるコポリエーテルエステル配合物は、以下の成分の1種以上並びに以下の成分の組み合わせを含むが、これらに限定されない添加剤を更に含んでもよい。ヒドラジン及びヒドラジドなどの金属不活性化剤、熱安定剤、酸化防止剤、改質剤、着色剤、潤滑剤、充填剤及び補強剤、耐衝撃性改良剤、流動性促進添加剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、導電性添加剤、粘度調整剤、核剤、可塑剤、離型剤、掻き傷及び擦傷改良剤、ドリップ抑制剤、接着性改良剤、及びポリマー配合技術において周知の他の加工助剤。好ましくは、添加剤は、安定剤、処理剤、金属不活性化剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、染料及び/又は顔料からなる群から選択される。使用される場合、追加的な添加剤は、コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準として約0.05~約10重量%の量で存在することが好ましい。
【0057】
本明細書に記載されるコポリエーテルエステル配合物は、溶融混合ブレンドであり、ブレンドが統一された全体を形成するように、ポリマー成分は全て、互いに十分に分散しており、非ポリマー原料は全て、ポリマーマトリックス中に十分に分散しており、且つポリマーマトリックスで拘束されている。任意の溶融混合法を使用して、本発明のポリマー成分と非ポリマー成分とを組み合わせてもよい。
【0058】
本発明のコポリエーテルエステル配合物のポリマー成分及び非ポリマー原料は、例えば、一軸若しくは二軸スクリュー押出機;ブレンダ;一軸若しくは二軸スクリュー混練機;又はバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに単一工程添加によって同時に又は段階的に添加され、次いで、溶融混合されてもよい。ポリマー成分及び非ポリマー原料を段階的に添加する場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー原料の一部が最初に添加され、続いて添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー原料と溶融混合され、十分に混合された組成物が得られるまで更に溶融混合される。
【0059】
CVJブーツ
本発明のCVJブーツは、本発明のコポリエーテルエステル配合物を使用し、ポリマーを成形するための任意の技術によって作製される。特に好適なのは、射出成形、プレスブロー成形、及び押出及び射出ブロー成形である。特に好ましいのは、プレスブロー成形である。
【0060】
ここで、図の全体を通して同様の参照番号が対応する構造を示す図面を参照し、特に
図2を参照すると、CVJブーツの寸法は、車両のサイズ及び寸法に対して選択される。乗用車で使用されるいくつかの典型的な寸法は以下の通りである。
高さ 60~120mm、
ピッチ 9~18mm、
ベローズの数 5~7、
壁厚 0.9~1.3mm、
最大直径 100mm、
最小直径 25mm
【0061】
特に好ましい実施形態では、CVJブーツは、7つのベローズ、厚さ約1.1mm、高さ115~120mm、重さ約75gを有する。
【0062】
きしみ音性能
本発明のコポリエーテルエステル配合物を用いて作製されたCVJブーツは、35サイクルを超えるきしみ音なしのランタイムを好ましくは示す。「きしみ音なし」とは、2つの連続サイクルにわたって78dB(A)を下回る騒音を生じることを意味する。
【0063】
きしみ音性能測定の設定
1.ドライブシャフトとジョイントとの間の角度(
図1のα)は40°;回転速度は150rpm;例えば、鉱油をベースにし、パラフィン系鉱物系油(75~85wt%)、ポリウレア系増粘剤(約5~15wt%)を有するグリース、並びに通常のグリース改質剤セット、即ち、摩擦用改質剤[典型的には、二硫化モリブデン(MoS
2)、又はジブチルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)]、防錆用改質剤、摩耗防止剤(典型的には、ジチオリン酸亜鉛-ZnDTP)、及び酸化防止剤でブーツを満たす。グリースは通常、ジョイント内には約70g、ブーツ内部表面には約50gで適用される。
2.典型的な実験プロトコル:100秒のサイクルで、回転中のブーツの外側に液体及び固体を均一に塗布する。
a)30秒間 液体の噴霧(30ml)
b)10秒間 固体の添加(10g)
c)60秒間 回転のみ
3.液体は、水、又は塩化カルシウム15wt%と水酸化カルシウム15wt%と水道水70wt%とからなる不凍剤の水溶液である。この配合物は、低温で乾燥した気候の道路上に見られる条件を再現するように設計されている。
4.固体は、好ましくは平均直径0.1~1.2mmの砂である。
5.圧力は、例えば、ブーツから適切な距離(例えば、ブーツから14cm)に、好ましくはブーツのベローズに直接向けて配置されるマイクロフォン(National Instruments GRAS 1/2” Free-Field Response Microphoneなど)を使用して測定し、好ましくはブーツ1回転に対して時間平均された(例えば、150rpmにおいて、これは0.4秒である)dB(A)に変換される。
6.きしみ騒音が発せられ、78dB(A)の騒音レベルが2連続サイクルにわたり測定されると実験は停止される。この時点までのサイクル数は、「きしみ音発生前のサイクル数」として記録される。
【0064】
好ましくは、本発明のコポリエーテルエステル配合物を用いて作製されたCVJブーツは、少なくとも35サイクル又は少なくとも40サイクル、より好ましくは少なくとも50サイクル、特に好ましくは少なくとも70サイクルのきしみ音なしのランタイムを示す。
【0065】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために提供される。本発明を実施するために現在考えられる好ましい態様を示すこれらの実施例は、本発明の例示を意図するものであり、その限定を意図するものではない。
【実施例】
【0066】
樹脂配合物
樹脂配合物は、成分と塩及びコショウとのブレンドを二軸押出機内で溶融ブレンドすることにより混和した。混和され、溶融ブレンドされた比較実施例の混合物及び全実施例の混合物をレース又はストランドの形態で押出し、水槽内で冷却し、粒体に細断し、吸湿を防ぐために密封アルミニウム内張り袋内に置いた。
【0067】
使用したコポリエーテルエステルは、PBTハードセグメントとポリテトラメチレンオキシドソフトセグメントとを有していた。具体的には、44wt%がポリテトラメチレンオキシドソフトセグメント、63wt%が、ジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールとのエステル交換反応によってできたハードセグメントであった。
【0068】
以下の3種類の配合ポリシロキサンを使用した。
A:エチレンと(メタ)アクリレートとのコポリマー40wt%とポリジメチルポリシロキサン(PDMS)60wt%との反応生成物
B:1000μmの粒径を有する、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されたPDMS。(METABLEN S-2100、三菱ケミカル株式会社)
C:250μmの粒径を有する、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されたPDMS。(METABLEN SX-005、三菱ケミカル株式会社)
D:エステル型ソフトブロックを有する芳香族TPU中にカプセル化されたPDMS
E:スチレン系エラストマー(SEBS)をカップリング剤として組み込んだアクリルゴム変性脂肪族-エステル-エステルTPU中にカプセル化されたPDMS
F:EMA(エチレンメタクリレート)樹脂中にカプセル化されたPDMS
【0069】
使用したポリエーテルワックスは、平均分子量2000を有するPTMEGであった。
【0070】
CVJブーツ
CVJブーツは、様々な樹脂配合物から、例えば、Ossberger DSE150プレスブロー成形機を使用し、プレスブロー成形によって作製した。CVJブーツは、以下の寸法を有していた。
ベローズ 7つ
壁厚 約1.1mm
高さ 115~120mm
重さ 約75g
【0071】
きしみ音試験
きしみ音試験リグにより、定められた回転速度及び角度を適用することが可能になる。実験作業の大部分において、ドライブシャフトとジョイントとの間の角度40°、回転速度150rpmを使用した。
【0072】
ブーツ及びジョイントは、鉱油をベースにし、パラフィン系鉱物系油(75~85wt%)、ポリウレア系増粘剤(約5~15wt%)を有するグリース、並びに通常のグリース改質剤セット、即ち、摩擦用改質剤[典型的には、二硫化モリブデン(MoS2)、又はジブチルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)]、防錆用改質剤、摩耗防止剤(典型的には、ジチオリン酸亜鉛-ZnDTP)、及び酸化防止剤で満たした。グリースは、ジョイント内には約70g、ブーツ内部表面には約50gで適用した。
【0073】
システムは、150rpmでの10分間の初期暖機後、以下の通りの一連のサイクルが施された。
実験プロトコル:100秒のサイクルで、回転中のブーツの外側に液体及び固体を均一に塗布する。
a)30秒間 液体の噴霧(30ml)
b)10秒間 固体の添加(10g)
c)60秒間 回転のみ
【0074】
使用した液体は、水、又は塩化カルシウム15wt%、水酸化カルシウム15wt%、及び水道水70wt%の不凍剤の水溶液であった。この配合物は、低温で乾燥した気候の道路上に見られる条件を再現するように設計されている。
【0075】
約0.8~1.0mmの寸法を有する砂などの様々な固体を使用した。約0.5mmの及び(and)平均粒子径を有する砂でも同様の結果が得られた。多くの異なる種類及び由来の天然砂を使用したが差はほとんどなかった。
【0076】
グリース、液体、及び研磨剤をブーツ内に有するCVJを60秒間回転させた後、ブーツから14cmに、ブーツのベローズに直接向けて配置したマイクロフォン(National Instruments GRAS 1/2” Free-Field Response Microphone)を使用して騒音を測定し、ブーツ1回転に対して時間平均された(例えば、150rpmにおいて、これは0.4秒である)dB(A)に変換し、dB(A)に変換した。きしみ騒音が発せられ、78dB(A)の騒音レベルが2連続サイクルにわたり測定された時に実験を停止した。この時点までのサイクル数を、最後の2つの連続サイクルはカウントせずに、「きしみ音発生前のサイクル数」として記録した。
【0077】
結果
様々な樹脂配合物のきしみ音試験の結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
表1の結果から、EDXによる測定で0.5wt%を超える表面Si濃度を与える量のポリシロキサン及び1wt%を超えるポリエーテルワックス濃度を含む本発明のコポリエーテルエステル樹脂配合物(E1、E2、E3、E5、及びE6)は、きしみ音のない優れた性能を示すことが分かる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態のいくつかを上記に説明し、具体的に例示してきたが、本発明をこのような実施形態に限定することは意図していない。むしろ、本発明の多くの特徴及び利点を本発明の構造及び機能の詳細と共に前述の説明において述べてきたが、本開示は例示的なものに過ぎず、また、添付の特許請求の範囲を表現する用語の広範な一般的意味により示される最大限まで、本発明の原理の範囲内で、細部、特に部品の形状、大きさ及び配置に関して変更を施すことができることは理解されるべきである。
本発明の実施形態の例
a.コポリエーテルエステル配合物であって、
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステル樹脂、及び
(2)エネルギー分散型X線分光法による、0.5wt%を超える表面のSi濃度を与える量のポリシロキサン、及び
(3)1wt%を超える濃度のポリエーテルグリコールワックス、
を含み、
前記重量百分率は相補的であり、前記コポリエーテルエステル配合物の総重量を基準とする、
コポリエーテルエステル配合物。
b.前記コポリエーテルエステルは、テレフタレート、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、及びブタンジオールのモノマーから作製されたものから選択される、aに記載のコポリエーテルエステル配合物。
c.前記コポリエーテルエステルは、60,000~80,000の数平均分子量を有する、a又はbに記載のコポリエーテルエステル配合物。
d.前記ポリシロキサンは、1.5ミクロンの表面層深さを基準とし、表面層の原子の重量を基準として、EDXによる測定で、0.7wt%を超える前記表面のSi濃度を与える量で存在する、a、b、又はcに記載のコポリエーテルエステル配合物。
e.前記ポリシロキサンは、1.5ミクロンの表面層深さを基準とし、表面層の原子の重量を基準として、EDXによる測定で、0.9wt%を超える前記表面のSi濃度を与える量で存在する、a~dのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
f.前記ポリシロキサンは、ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化されたPDMSである、a~eのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
g.ポリ[メチル(メタ)アクリレート]中にカプセル化された前記PDMSは、光学顕微鏡法により決定した200~300μmの数平均粒径を有する、eに記載のコポリエーテルエステル配合物。
h.1~4wt%の量の前記ポリエーテルグリコールワックスを含む、a~gのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
i.3wt%の量の前記ポリエーテルグリコールワックスを含む、a~hのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
j.前記ポリエーテルグリコールは、2、3、又は4個の炭素原子の繰り返しグリコール単位を有するポリエーテルグリコール類から選択される、a~iのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
k.前記ポリエーテルグリコールは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールである、a~jのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
l.前記ポリエーテルグリコールは、800~3,000の分子量を有する、a~kのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
m.前記ポリエーテルグリコールは、約2,000の分子量を有する、a~lのいずれか一つに記載のコポリエーテルエステル配合物。
n.a~mのいずれか一項に記載のコポリエーテルエステル配合物から作製されるCVJブーツ。