(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】マルチクリンチ式ファスナー挿入体
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20240130BHJP
F16B 4/00 20060101ALI20240130BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16B37/04 E
F16B4/00 H
F16B35/04 E
(21)【出願番号】P 2021511545
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019051078
(87)【国際公開番号】W WO2020056306
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルンク,ジョナサン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03279303(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1318720(KR,B1)
【文献】特開昭62-242112(JP,A)
【文献】特公昭36-004858(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
F16B 4/00
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに取り付けるための二つの部品で構成するファスナーにおいて、
パネル内の
穴に受け取られ
てこのパネル
の穴の壁
に係合する周辺把持手段を備えるシャンク
、中心
の通し孔
及び大径の保持部ヘッドを有する保持部
品、および、
直径が順次に漸増する複数のセルフクリンチ部を有
し、前記保持部品に取り付ける挿入部
品であって、
前記パネルの他方の面に接するフランジを一端部に取り付けた前記挿入部品があり、
前記保持部
品の
前記通し孔に
前記挿入部品を締め付け状態で挿入
するために、前記保持部品の材料が前記セルフクリンチ部の一つかそれ以上に
流れ込み、そして、前記通し孔
の壁
が変形
することで、前記保持部
ヘッドと前記パネル間が締め付けられることを特徴とす
るファスナー。
【請求項2】
前記挿入部
品が、最大径のセルフクリンチ部に直接隣接する一端
部にフランジを有
し、このフランジが前記パネルに設けた前記穴の径よりも大きい請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記挿入部
品がネジ付き通し孔を有する請求項2に記載のファスナー。
【請求項4】
前記保持部
品の把持手段が長手方向刻みである請求項1に記載のファスナー。
【請求項5】
前記挿入部
品が細長いスタッドを有し、このスタッドが前記フランジと対向する前記挿入部
品から上向きに延在する請求項2に記載のファスナー。
【請求項6】
前記パネルの両側に直接接触することによって前記保持部品のヘッドと前記挿入部品のフランジとの間に固く締め付けられるパネルに組み付けられアセンブリを構成する請求項2に記載のファスナー。
【請求項7】
前記保持部品および前記挿入部品が金属製である請求項1に記載のファスナー。
【請求項8】
前記パネルが非金属製である請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項9】
各セルフクリンチ部がランドおよびアンダーカットを有する請求項
6に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記保持部品の中心の前記通し孔の壁が円筒形を構成する請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
少なくとも一つのランドによって前記保持部品の素材を少なくとも一つのアンダーカット内に変位させることによって前記挿入部品が前記保持部品に取り付けられる請求項
9に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2018年9月13日を出願日とし、“マルチクリンチ式ファスナー挿入体”を発明の名称とする仮親出願第62/30,765号に関連する非仮特許出願の優先権を主張する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、通常平面パネルなどの構造体の反対側まで延在する孔を介してこの構造体に取り付ける挿入ファスナーに関する。具体的には、本発明は2つのファスナー部材間に締め付けられる複合構造体に取り付ける2部材ファスナー(two-component fastener)に関する。
【背景技術】
【0003】
シート金属の代替物として工学用途に複合素材を使用することは、長年にわたって成長してきた分野であり、継続発展することが考えられる。現在主流傾向であるネジ式ファスナーの場合、接着材に頼ってファスナーを所定位置に保持している。多数の2部材挿入体およびポット式挿入体が各種サイズおよび接着剤を利用する構成で市場に出回っている。またいくつかのパネルの周囲で変形する機械式やリベット式の挿入体も利用されている。この型式のファスナーの場合、ネジ強度、保持力、およびパネルの小さなベアリング面積に関して問題を抱えている。ベアリング面積が小さいと、パネルに作用する応力が大きくなり、材料に弊害が生じる。また、ネジ強度が欠けると、材料をフレアリング操作、あるいはリベット操作する必要が出てくる。これら操作のいずれかを終えるためには、材料は十分軟質でなければならない。
【0004】
パネル素材が鋼やアルミなどの展性のある金属である場合、長年にわたりセルフクリンチ式ファスナーが利用されてきたが、複合パネルには適さない。複合パネルに使用する素材はカーボンファイバーのようにあまりにも脆いか、あるいはアルミハニカムパネルなどのように必要な装着負荷を支持できないかのいずれかである。
【0005】
これが現状であり、セルフクリンチ技術の作用効果を複合的で、しかも非金属素材に適用できるファスナーが求められている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示するファスナーは主構成が2つの部分であり、上記従来技術の課題を解決するものである。第1部分は保持部であり、通し孔および周囲に刻み(knurl)を有する。この保持部については、複合パネルまたはプラスチックパネルの通し孔に挿入する。第2部分は挿入部であり、直径が漸増する複数のセルフクリンチ部を有する。挿入部は保持部に装着し、2つの部材を締め付ける。複数のセルフクリンチ部がランドおよびアンダーカットからなるため、アセンブリが広範囲のパネル厚さに対処でき、広いトレランスに対処できる。挿入部のネジ付き孔の代わりに、平滑なスタッドまたはネジ付きスタッドを利用できる。
【0007】
以下に記載するように、また添付図面に示すように、クリンチ部を有する本挿入部には雌ネジ、雄ネジを形成でき、あるいはネジを設けなくてもよい。ネジ付き部分として、挿入部は他のパネルや他の対象物に取り付ける取り付け点として作用する。通し孔を有するため、ネジ付け部分を使用して二枚のパネルまたは複数の材料層を確実かつ安全に接合できる。また、通し孔を設けるため、ボルトを完全に貫通させることができ、簡単にファスナーの重量を小さくすることができる。
【0008】
より具体的には、本発明は保持部および挿入部を備えた、パネルに装着できる二部分ファスナーを提供するものである。保持部は、パネルの両側に延在するパネル内の孔に受け取られる。保持部は拡径ヘッドおよびシャンクを備え、このシャンクは周囲にパネルの孔壁および中心通し孔に係合する把持手段を備える。挿入部は、直径が連続的に大きくなる複数のセルフクリンチ部を有し、これらが保持部に取り付けられる。保持部の通し孔への挿入によって、またセルフクリンチ部による円筒形の通し孔の壁部の変形によって挿入部が保持部に強固に取り付けられる。各セルフクリンチ部はランド、およびこのランドによって変位した保持部素材を受け取るアンダーカットを備える。
【0009】
一つの実施態様では、挿入部はネジ付き通し孔を備え、直径が最大のセルフクリンチ部は保持部に直接隣接する。保持部の把持手段は、保持部の周囲にある長手方向刻みである。一つの実施態様では、挿入部は細長いスタッドを有し、このスタッドは一端のフランジに対向する挿入部の他端から延在する。パネルに装着すると、パネルの両側に直接接触することによって保持部のヘッドと挿入部のフランジとの間に締め付けられる。保持部および挿入部については、金属製であってもよく、あるいは非金属製であってもよい。一つの実施態様では、パネルは非金属製の複合材で構成することができる。
【0010】
本発明のファスナーによれば、複合パネル(主にカーボンファイバーパネルおよびハニカムパネル)内においてより強度の強い接合を実現できる。装着方法は、素早く、簡単にかつ強固に実施できるため、従来の技術よりも高い作用効果を有する。装着したファスナーの保持部からの引き抜き強度は大半の接着剤を使用する接合よりも強い。装着は、油圧プレスやその他のプレス作業で一挙に実施できる。これは、接着剤を塗布し、硬化するのを待つことに比べて、より簡単に、またより素早く実施できる装着方法である。本ファスナーのこれら以外の目的および作用効果については、当業者にとって添付図面および以下の好適な実施態様の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、保持部および挿入部それぞれを示す合成図であり、一つの部が他方の部の断面図である両者の斜視図である。
【
図2】
図2は、パネルに組み付けた2部材挿入部を示す断面正面図である。
【
図3-7】
図3~
図7は、保持部を挿入部に対して下向きに押し付けたさいの保持部変形の進行を順次示す側面図である。
【
図8】
図8は、挿入部が雄ネジ付きシャンクを有する別な実施態様を示す一方が他方の断面図である2つの図面からなる合成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および
図2を参照して説明する。本発明の一つの実施態様10は主部、即ち保持部および挿入部を有する。保持部11は3つの主構造部、即ち保持部中心に円筒形を形成する貫通孔15、周辺外面に刻み(knurl)を備えるシャンク17、およびファスナーを取り付けるパネル20中に引っ張りこまれることを防止する拡径ヘッド19を有する。保持部11の外側にある刻み付きシャンク17は、
図2に示すように、装着後パネル中で回転しない。
【0013】
挿入部13は、底部に向かって順次大きくなる直径において段階的なディスプレーサーランド(displacer land)18間にある一連のアンダーカット(切り欠き)16と同様な形状の拡大フランジ14を備える。これらアンダーカットは、装着時に、ランド18によって変位した保持部11の素材の冷間流れを受け取る構成である。図示の両部分は円形形状を有するが、他の幾何学的形状も実施可能である。
【0014】
特に
図2を参照して説明を続けると、本発明の複合的な二部構成ファスナーは図示の陽に、パネルに組み付ける。即ち装着する。ここで二部構成部材、即ち保持部11およびマルチクリンチ式挿入部13をパネル20に締め付ける。この挿入部はパネルの孔に受け取られ、パネルの反対側から保持部に留める。装着時、保持部のヘッド19および挿入部のフランジ14がパネル20の両側に接触するまで、挿入部および保持部が相互に押し付けられる。この場合、挿入部のネジ付きボア12がネジ付きボルトを受け取り、被装着体(図示省略)をパネルに取り付ける。
【0015】
保持部および挿入部については、各種の金属系、あるいは非金属系の素材から構成されるパネル内に装着できる設計である。代表的な素材は、現在セルフクリンチ式ファスナーを利用できないハニカムパネルであればよい。挿入部および保持部が押し付けられると、保持部の素材が挿入部のアンダーカットに変位する。保持部素材に関しては、これに作用する圧力によって冷間流動する十分な軟質性および展性をもつものであればよい。両部分の端部にある挿入部フランジおよび保持部ヘッドがパネルに接触するまで、挿入部を保持部に押入する。カスケード型のマルチクリンチ式の作用効果の一つとして、ファスナーが一定の範囲の厚さに対処でき、またパネル厚みにおける大きなトレランスにも対処できる。
【0016】
次に、
図3~
図7を参照して説明を続ける。
図3~
図7には、挿入部の保持部内への装着時の装着順を示すが、作図を簡単にするためにパネルは図示していない。このプロセスでは、保持部の素材がアンダーカットのそれぞれの間のランドによる楔作用によって保持部のボア内に上向きに進む間、この素材がアンダーカット内に内向きに流入するため、これら図に矢印で示すように、保持部素材の冷間流れが強制的にアンダーカットに流入させられる。
【0017】
図3の第1図には、装着前に挿入部が保持部にどのように着座するかを示す。挿入部の上部リム21が、保持部の底部が第1アンダーカットのランド23に着座する間、保持部ボア内に嵌合する。このため押圧が進むと、ミスマッチが生じないため、保持部の素材が保持部ボア内に内向きかつ上向きに流れ込む。この時点で、負荷がプレス(図示省略)などによって挿入部のヘッドに印加する。このため、
図4から理解できるように、素材が保持部から第1アンダーカット内に強制的に流入させられる。
【0018】
図4に示すように、ここでは挿入部の第1アンダーカットが完全に埋まる。この時点では、ファスナーは確実に装着している。さらに装着が進行すると、接続部の強度が増す効果が得られ、任意の点で下向きの押入が停止する。この点において、パネルの最大厚みが保持部のヘッドと挿入部の底部にあるフランジとの間の隙間として定まる。パネルの装着については、
図2に示す両部材間にパネルが締め付けられるまで、必要に応じてさらに進めることができる。使用できる最小パネル厚みは、保持部の高さマイナス(-)保持部フランジ19および挿入部フランジ14の高さによって定まる。
【0019】
図5~
図7に、装着下向き点が進む間保持部11がどのように見えるかを示す。保持部がさらに下向きに押圧されると、保持部のより多くの素材がアンダーカット内にさらに下向きにかつ保持部ボア15内に上向きに流れ込む。さらに、
図7に示すように、最小パネル厚さに達するまで、保持部の押圧が続く。ここで、保持部11が挿入部フランジ14の上部に達するため、保持部ボア15はほぼ完全に挿入部および変位保持部素材で埋められる。
【0020】
図8に示すように、挿入部も
図1~
図7に示す同様な方法で形成できるが、ネジ付きボアの代わりに上向きに延在する雄ネジ付きスタッド25を使用する。プレーンピン(plain pin)が望ましい場合には、挿入部スタッドにネジを設けなくともよい。
【0021】
本発明の原理および実施態様を説明するために、具体的な実施態様を説明してきたが、この実施態様の記載は本発明の主技術思想の理解の一助に過ぎない。一方、当業者ならば、本発明の技術思想に係る具体的な実施態様および適用範囲に変更を加えることができるはずである。即ち、本明細書の開示については、本発明の範囲を制限するものではなく、この範囲は特許請求の範囲およびその法的な等価範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0022】
10 実施態様
11 保持部
12 ネジ付きボア
13 挿入部
14 挿入部フランジ
15 貫通孔
16 アンダーカット(切り欠き)
17 シャンク
18 ランド
19 保持部フランジ、拡径ヘッド
20 パネル
21 上部リム
23 ランド
25 雄ネジ付きスタッド