(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】飲食品用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/24 20160101AFI20240130BHJP
A23L 27/21 20160101ALI20240130BHJP
A23L 27/22 20160101ALI20240130BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20240130BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240130BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240130BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20240130BHJP
C12P 1/04 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
A23L27/24
A23L27/21 Z
A23L27/22
C12C5/02
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/38 Z
C12P1/04 Z
(21)【出願番号】P 2021537255
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029017
(87)【国際公開番号】W WO2021024875
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2019143375
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】滝井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】新村 杏奈
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093182(JP,A)
【文献】特開2019-088212(JP,A)
【文献】特開2013-169158(JP,A)
【文献】特開2014-207891(JP,A)
【文献】老川典夫,日本酒の新たな呈味性成分「D-アミノ酸」,日本醸造協会誌,2015年,Vol. 110, No. 4,pp. 189-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12C
C12G
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Brix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)が30以上240以下
の乳酸発酵エキス又はその加工品である、
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項2】
D-アスパラギン酸の含有量が140mg/L以上である、請求項1に記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項3】
L-アスパラギン酸の含有量が1000mg/L以下である、請求項1又は2に記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項4】
D-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量が170mg/L以上である、請求項1~3いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項5】
L-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸の合計含有量が2000mg/L以下である、請求項1~4いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項6】
L-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸の合計含有量100質量部に対するD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量が5質量部以上である、請求項1~5いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項7】
L-グルタミン酸の含有量100質量部に対するD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量が15質量部以上である、請求項1~6いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項8】
Brix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)が50以上である、請求項1~7いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項9】
乳酸発酵エキスの原料がモルトエキスである、請求項
1~8いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項10】
乳酸発酵エキスがLb.fermentumで発酵させる工程を含む方法により得られたものである、請求項
1~9いずれかに記載の
ビールテイスト飲料用組成物。
【請求項11】
飲料にキレを付与するための
飲料用組成物
であって、Brix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)が30以上240以下の乳酸発酵エキス又はその加工品である、飲料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者の嗜好の多様化にともなって、様々な香味特徴をもつビールテイスト飲料の開発が望まれている。例えば、特許文献1には、コク感、キレ感及び嗜好性に優れ、プリン体の含有量が低い非発酵ビール風味ノンアルコール飲料を提供するために、発酵米エキスを用いることが開示されている。
【0003】
また、飲食品の味質を改良する目的で種々の調味料が提案されている。例えば、特許文献2には、飲食品の濃厚さの向上、持続性の向上、および煮込み感の向上のために、D-アラニン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、およびD-プロリンの混合物を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6042490号公報
【文献】特許第6449418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発酵米エキスや、特許文献2のD-アミノ酸の混合物をビールテイスト飲料に用いると、キレが悪くなってしまう場合があることが分かった。
【0006】
本発明は、ビールテイスト飲料に対して、キレを付与することができる飲食品用組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、Brix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)が30以上である、飲食品用組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビールテイスト飲料に対して、キレを付与することができる飲食品用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般的に、ビールテイスト飲料ではキレが高いとお客様嗜好度が向上する。本発明者らは、D-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸を一定以上含有しBrixが一定以下の組成物がビールテイスト飲料のキレに寄与することを新たに見出した。このメカニズムは定かではないが、飲食品に風味の抑揚を付けキレを改善する効果を有するD-アスパラギン酸とD-グルタミン酸を含有し、雑味ともなりうる他の成分が少ない組成物、すなわちBrixの低い組成物であることが、飲料のキレに寄与していると推測される。特許文献2でも同様にD-アスパラギン酸とD-グルタミン酸を含有することによる風味改善が報告されているが、この文献で具体的に開示されているのは、カレーなどの味が濃厚でキレを必要としない食品についての味カドを緩和することであり、キレに関する効果は予測できない。本明細書における「キレ」とは、甘味や甘い香りが少なく後に残らず、のどの奥に軽さを感じる爽快感、刺激感があることを指す。また、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、ビール風味の炭酸飲料を全て包含する。本発明の飲食品組成物は、ビールテイスト飲料全般に使用することができ、麦芽比率や麦由来成分、原麦汁エキス、真正エキス、プリン体含有量、アルコール度数などの低いビールテイストアルコール飲料や、同様に麦芽比率や麦由来成分、原麦汁エキス、真正エキス、プリン体含有量などの低いノンアルコールビールテイスト飲料など、味わいが軽めの飲料においても好適に用いられる。このうち、ノンアルコールビールテイスト飲料は、特に断りがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味を有するいずれのノンアルコールの炭酸飲料をも包含する。また、「麦芽比率」とは、麦芽、米、トウモロコシ、コウリャン、バレイショ、デンプン、麦芽以外の麦、及び糖類など、水とホップ以外の原料中に占める麦芽の質量の比率をいう。ただし、酸味料、甘味料、苦味料、調味料、香料など、微量に添加され得る成分については上記比率の計算に含めない。本明細書において、麦芽比率は、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。一般に原麦汁エキスは、アルコールとエキスという2つのパラメーターから計算されるビールの濃醇さを表す概念である(醸造物の成分、184ページ、編集・発行(財)日本醸造協会)。原麦汁エキスは、そのビール製造時に用いられる麦汁濃度(糖質を添加する場合は糖質濃度を含む)の推定値と言える。原麦汁エキスは、国際法として公定されているSCABA(Servo Chem Automatic Beer Analyzer)法にしたがって測定することができる。本発明において「真正エキス(°P)」は、飲料中に含まれる不揮発性の固形物の質量濃度を意味し、BCOJビール分析法8.4.3のアルコライザー法に基づいて測定することができる。
【0010】
本発明の飲食品用組成物は、D-アスパラギン酸及び/又はD-グルタミン酸を含む。本発明の飲食品用組成物におけるBrix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)は、キレを良くする観点から30以上であり、好ましくは50以上であり、より好ましくは60以上であり、また、苦味の発生を抑制する観点から、好ましくは240以下であり、より好ましくは200以下であり、更に好ましくは180以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。本明細書において、Brix及びアミノ酸の含有量は後述の実施例に記載の方法で測定する。
【0011】
本発明の飲食品用組成物中のD-アスパラギン酸の含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは140mg/L以上であり、より好ましくは145mg/L以上であり、更に好ましくは150mg/L以上であり、また、苦味の発生を抑制する観点から、好ましくは600mg/L以下であり、より好ましくは500mg/L以下であり、更に好ましくは450mg/L以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0012】
本発明の飲食品用組成物中のD-グルタミン酸の含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは20mg/L以上であり、より好ましくは25mg/L以上であり、更に好ましくは30mg/L以上であり、また、苦味の発生を抑制する観点から、好ましくは150mg/L以下であり、より好ましくは100mg/L以下であり、更に好ましくは90mg/L以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0013】
本発明の飲食品用組成物中のD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは170mg/L以上であり、より好ましくは180mg/L以上であり、更に好ましくは190mg/L以上であり、また、苦味の発生を抑制する観点から、好ましくは700mg/L以下であり、より好ましくは600mg/L以下であり、更に好ましくは570mg/L以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。また、D-アスパラギン酸の含有量とD-グルタミン酸の含有量の比率(D-アスパラギン酸:D-グルタミン酸)は、特に限定されるものではないが、例えば、10:1、8:1、6:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、1:10などが挙げられ、これらいずれの組み合せによる範囲としてもよい。後述する乳酸発酵エキスの態様においては、6:1~4:1となる乳酸発酵エキスが好ましい。
【0014】
本発明の飲食品用組成物におけるBrix(°)は、上記比率を満足する限りにおいて限定されるものではないが、好ましくは1~10°であり、より好ましくは2~5°であり、上限値は特に限定されないが、濃縮や精製等を実施する場合は、例えば80°以下とすることができる。
【0015】
本発明の飲食品組成物は、更にL-アスパラギン酸を含有するものであってもよいが、キレを良くする観点からは少量であることが好ましい。本発明の飲食品用組成物中のL-アスパラギン酸の含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは1000mg/L以下であり、より好ましくは700mg/L以下であり、更に好ましくは500mg/L以下であり、下限値は特に限定されないが、例えば、0.01mg/L以上とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0016】
本発明の飲食品組成物は、更にL-グルタミン酸を含有するものであってもよいが、キレを良くする観点からは少量であることが好ましい。本発明の飲食品用組成物中のL-グルタミン酸の含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは1000mg/L以下であり、より好ましくは800mg/L以下であり、更に好ましくは700mg/L以下であり、下限値は特に限定されないが、例えば、0.01mg/L以上とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0017】
本発明の飲食品用組成物中のL-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸の合計含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは2000mg/L以下であり、より好ましくは1500mg/L以下であり、更に好ましくは1200mg/L以下であり、下限値は特に限定されないが、例えば、0.01mg/L以上とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0018】
本発明の飲食品用組成物におけるL-アスパラギン酸及びL-グルタミン酸の合計含有量100質量部に対するD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは15質量部以上であり、上限値は特に限定されないが、例えば、10000質量部以下とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0019】
本発明の飲食品用組成物におけるL-グルタミン酸の含有量100質量部に対するD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量は、キレを良くする観点から、好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、更に好ましくは25質量部以上であり、上限値は特に限定されないが、例えば、10000質量部以下とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0020】
本発明の飲食品用組成物は、任意に、炭素源原料(糖)、窒素源原料(ペプチド、アミノ酸)、ビタミン、香料成分などの成分を含有することができる。
【0021】
本発明の飲食品用組成物は、ビールテイスト飲料、清涼飲料、アルコール飲料、緑茶飲料、スポーツ飲料など各種飲食品に用いることができるが、なかでもビールテイスト飲料にキレを付与する用途として好適に用いることができる。以下に、これらの飲料における使用態様について例示する。
【0022】
麦芽を原料として使用して製造されるビールテイストアルコール飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイストアルコール飲料を得る。前記各工程において本発明の飲食品用組成物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、微生物保証の観点から、煮沸工程において混合することが好ましい。
【0023】
麦芽を原料として使用せずに製造されるビールテイストアルコール飲料は、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。この糖化液の代替として、麦芽以外の原料を用いたエキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイストアルコール飲料を得る。前記各工程において飲食品用組成物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、微生物保証の観点から、煮沸工程において混合することが好ましい。
【0024】
ビールテイストアルコール飲料の製造工程における本発明の飲食品用組成物の添加量としては、ビールテイストアルコール飲料の種類により異なるが、味わいが軽めのビールテイストアルコール飲料においては、D-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量が好ましくは1.2~2.2mg/L、より好ましくは1.4~2.0mg/L、更に好ましくは1.6~1.8mg/Lとなる量を目安として添加することができる。
【0025】
麦芽を原料として使用して製造されるノンアルコールビールテイスト飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。煮沸後、得られた麦汁を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程において本発明の飲食品用組成物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、微生物保証の観点から、煮沸工程において混合することが好ましい。
【0026】
麦芽を原料として使用しないノンアルコールビールテイスト飲料を製造する場合には、まず、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。煮沸後の液糖溶液に対して、炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程において本発明の飲食品用組成物の添加は、充填までのどの工程で行ってもよいが、微生物保証の観点から、煮沸工程において混合することが好ましい。
【0027】
ノンアルコールビールテイスト飲料の製造工程における本発明の飲食品用組成物の添加量としては、ノンアルコールビールテイスト飲料中のD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量が好ましくは0.3~1.5mg/L、より好ましくは0.5~1.3mg/L、更に好ましくは0.8~1.0mg/Lとなる量を目安として添加することができる。
【0028】
本発明の飲食品用組成物としては、乳酸発酵エキス又はその加工品を好適に例示できる。以下にこれらの態様について説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0029】
乳酸発酵エキスとしては、モルトエキス、米エキス、大麦エキス、コーンスターチなどを乳酸発酵させた乳酸発酵エキスが挙げられ、発酵性や風味の観点から、モルトエキスを乳酸発酵させた乳酸発酵エキスの態様が好ましい。本態様において、モルトエキスは麦芽に対して粉砕、糖化、ろ過、煮沸、ろ過という一連の工程を経ることにより調製することができ、モルトエース20(オリエンタル酵母工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。乳酸発酵エキスの調製に用いられる乳酸菌としては、Lb.fermentum、Lb.reuteriなどが挙げられ、D-アスパラギン酸とD-グルタミン酸の産生能の観点から、Lb.fermentumを用いる態様が好ましい。培養条件としては一般的な乳酸菌培養の条件を当てはめることが好ましい。培養温度は、乳酸菌が生育しうる範囲、即ち、30~45℃で行われる。培養の際はpH3.0~8.0、好ましくはpH3.5~7.0で行う。培養時間は、使用する培地の種類および基質により異なるが、通常、10~24時間程度であり、好ましくは一晩以上培養する。培養後、得られた培養液は、殺菌工程の有無にかかわらず、当該分野において通常使用される周知の手段、例えば膜濾過、遠心分離などの操作により不溶性固形分を除去することにより乳酸発酵エキスが得られる。Brixの調整はモルトエキスの配合量を適宜調節することで行うことができる。
【0030】
乳酸発酵エキスの加工品としては、乳酸発酵エキスの濃縮品、希釈品、凍結乾燥品、濃縮乾燥品、分画若しくは精製処理した精製品などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0032】
実施例1
モルトエキスを特定の乳酸菌で発酵させることにより、乳酸発酵エキスを得た。具体的には、モルトエキス(オリエンタル酵母工業(株)社製、「モルトエース20」)2.5g、L-アスパラギン酸0.1g、L-グルタミン酸0.1g、水96.3gを混合し、湯煎にて90℃で1分間殺菌し、その後、乳酸菌培養温度まで冷却した、冷却した原料混合物のBrixを3程度に調整し、市販の乳酸菌Lb.fermentumの懸濁液1×108(cfu/g)1gを接種し、一般的な乳酸菌培養条件にてインキュベートし、乳酸発酵を行った。乳酸発酵後の混合液を遠心分離に供して不溶固形分を除去し、さらにBrixが3±0.2になるように調整して、実施例1の飲食品用組成物(乳酸発酵エキス1)を得た。
【0033】
実施例2
乳酸菌Lb.fermentumの懸濁液1×108(cfu/g)を市販の乳酸菌Lb.reuteri 1×108(cfu/g)で置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行うことで実施例2の飲食品用組成物(乳酸発酵エキス2)を得た。
【0034】
比較例1
乳酸菌Lb.fermentumの懸濁液1×108(cfu/g)を市販の乳酸菌Lb.plantarum1×108(cfu/g)で置き換えた以外は実施例1と同様の操作を行うことで比較例1の飲食品用組成物(乳酸発酵エキス3)を得た。
【0035】
実施例3
乳酸菌Lb.fermentumの懸濁液1×108(cfu/g)を水に置き換え、更にD-アスパラギン酸を0.016g、D-グルタミン酸0.003gを加え、乳酸菌発酵工程以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例3の飲食品用組成物(未発酵エキス)を得た。
【0036】
比較例2
モルトエキスの配合量を2.5gから15gに変更し、水の配合量を96.3gから83.8gに変更することにより冷却した原料混合物のBrixを12程度に調整し、不溶固形分を除去後にBrixが12±0.2になるように調整した以外は実施例1と同様の操作を行うことで比較例2の飲食品用組成物(乳酸発酵エキス4)を得た。
【0037】
各実施例、比較例に係るエキス中のアミノ酸の定量は、次に示すオルトフタルアルデヒド・N-アセチル-L-システインキラル誘導体化法(OPA-NACキラル誘導体化法)を用いたアミノ酸定量分析により行った。
まず、各実施例、比較例に係るエキスに対し、2倍量のメタノールを加え撹拌後、遠心分離機にかけて得られる上清を蒸留水で3倍に希釈したものをキラル誘導体化用試料とした。なお、発酵物に含まれるアミノ酸量に応じ、上清を直接もしくは、蒸留水にて2倍から5倍に希釈したものをキラル誘導体化用試料とすることができる。
キラル誘導体化用試料60μlに1%四ホウ酸ナトリウム水溶液40μl、1%N-アセチル-L-システイン水溶液20μl、1.6%オルト-フタルアルデヒドメタノール溶液20μlを添加し、0.45μmセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック社製)でろ過したものをキラル誘導体化処理液とした。キラル誘導体化処理液を分析用試料として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、(株)島津製作所製、検出限界値:0.5ppm)によるアミノ酸分析を行った。また、キラル誘導体化処理液を分析用試料としたHPLCによるアミノ酸分析にあたり、分析条件としては、次の表1に示す条件を選択した。結果を表2に示す。
【0038】
【0039】
各実施例、比較例に係るエキスのBrixは、デジタル糖用屈折計(RX-5000α、下(株)アタゴ製)により測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【0041】
各実施例、比較例のエキスを、市販のノンアルコールビールテイスト飲料には100質量部に対し各0.3質量部添加し、麦芽比率10~35質量%の市販のビールテイストアルコール飲料には100質量部に対し各0.5質量部添加し、以下の基準でキレの評価を行った。エキスを添加する前の飲料の評価を「△」(ブランクの評価を「△」)とし、表3においてはブランク1に対する相対評価を、表4においてはブランク2に対する相対評価を行った。評価が「○」以上であればキレが向上したとみることができる。結果を表3及び表4に示す。
(キレの評価)
◎:強いキレを感じる
○:ややキレを感じる
△:かすかにキレを感じる(ブランクと同等)
×:キレを感じない
【0042】
【0043】
【0044】
表3、4から、Brix(°)あたりのD-アスパラギン酸及びD-グルタミン酸の合計含有量((mg/L)/Brix)が30以上である実施例1~3の飲食品用組成物をノンアルコールビールテイスト飲料や低麦芽比率のビールテイストアルコール飲料に添加すると、飲料のキレが向上したことが分かる。なお、麦芽比率100質量%のビールに添加した場合においてもキレ向上効果を確認できたが、ノンアルコールビールテイスト飲料や低麦芽比率のビールテイストアルコール飲料の向上効果の方が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の組成物は、飲食品などの分野において有用である。