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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】発泡材料を製造するための新規の発泡法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240130BHJP
   B29C 35/12 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08J9/04 CES
C08J9/04 CEV
C08J9/04 CEY
C08J9/04 CEZ
C08J9/04 CFF
C08J9/04 CFG
B29C35/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021541166
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2019086250
(87)【国際公開番号】W WO2020148067
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】19152178.0
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リヒター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リーべ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン トラスル
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンゼント マ ジュンヨン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-074629(JP,A)
【文献】特開昭60-262835(JP,A)
【文献】米国特許第04740530(US,A)
【文献】特開昭61-025810(JP,A)
【文献】米国特許第05064867(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
B29C 35/00 - 35/18
H05B 6/46
H05B 6/52 - 6/64
H05B 6/70 - 6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォームの製造方法であって、発泡剤を含むポリマー組成物を装置内で発泡させ、ここで、前記装置は、前記装置の内部温度Tに加熱するための熱加熱器具と、これと同時に前記ポリマー組成物にマイクロ波放射線を照射するための少なくとも1つのマイクロ波源とを備えること、および前記発泡の前に、前記発泡されるポリマー組成物を該ポリマー組成物のガラス転移温度T よりも高い予熱温度T 予熱し、該予熱時間は、少なくとも60分であり、該ポリマー組成物は、発泡後に硬質フォームを形成する材料であって、P(M)I、PMMA、メタクリレートベースのコポリマー、PVC、PP、PU、ポリスルホン、またはポリ(エーテル)イミドであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記発泡されるポリマーを、前記発泡の前に、前記装置内で、前記装置の内部温度Tよりも80℃低い最低温度と10℃高い最大温度との間の温度で予熱する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記予熱後の前記ポリマー組成物内の最低温点と最高温点との間の温度差は、15℃以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記予熱されたポリマー組成物を、前記装置内での発泡プロセスに直接供給する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記予熱温度Tは、110~190℃であり、予熱時間は、少なくとも100分である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ波放射線は、0.85~6.0GHzの周波数を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー組成物は、PMIを含み、前記予熱温度Tは、120~190℃であり、前記装置の内部温度Tは、180~240℃である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー組成物は、PMMAまたはメタクリレートベースのコポリマーを含み、前記予熱温度Tは、110~140℃であり、前記装置の内部温度Tは、120~190℃である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリマー組成物からの発泡材料の新規の製造方法に関し、この新規の方法は、発泡剤を含むポリマーの発泡において予熱を行うプロセスステップと、次いでマイクロ波によって支援される熱プロセスにより発泡を行うプロセスステップとを含む。
【0002】
従来技術
(硬質)フォームを製造するためのポリマーの発泡法は、周知の知識である。既知の方法には、ポリマーを押出機で溶融させて発泡剤を充填し、この場合にノズルからの出口での圧力降下の結果としてポリマーが発泡する連続押出法、発泡剤を含むポリマーペレットをエネルギー(熱、蒸気)の供給により金型内で発泡させるビーズ発泡法、ポリマーを例えばCOもしくはNでの加圧下に超臨界条件下で装入して圧力降下時に発泡させるバッチ法、または発泡剤を含むポリマーをオーブン内でガラス転移温度を超えて加熱することによって軟化させ、存在する発泡剤により発泡させるスラブストック発泡法が含まれる。
【0003】
発泡剤を含むポリマーシートをポリマーのTgを超えて熱加熱する上述のスラブストック発泡法は、特にPMIまたはPMMAベースの硬質フォームの製造に用いられる(独国特許出願公開第2726259号明細書、独国特許出願公開第1817156号明細書、欧州特許出願公開第3277748号明細書)。用いられる理由の1つは、発泡温度/発泡時間によって得られるフォームの密度を適切に調整できることにある。さらに、上述のPMIまたはPMMAベースの硬質フォームは、機械的特性にとって重要な高分子量であるため、他の製造方法では経済的に得ることができない。このことは、該硬質フォームは、押出法での製造が不可能であることを意味する。
【0004】
マイクロ波技術は、フォームの製造には非常に限定的にしか用いられていない。欧州特許出願公開第0037470号明細書には、例えば弾性メラミンフォームの製造について記載されている。これには、マイクロ波放射線により液体メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物を加熱、したがって発泡および架橋することが含まれる。
【0005】
欧州特許出願公開第3277748号明細書には、熱的に供給されるエネルギーをマイクロ波と組み合わせても、発泡剤を含むPMMAキャストポリマーを発泡させることが可能であるという表面的な説明がなされている。しかし、プロセスパラメータや上流の予熱ステップに関するより正確な詳細は示されていない。
【0006】
硬質フォームブロックは、好ましくはキャスティング重合法によって得られるポリマーシートから製造され、この場合、重合前に発泡剤がモノマー溶液に添加される。こうした発泡剤含有ポリマーシートを発泡させるためには、該シートを、存在する発泡剤の沸点/分解点を超えて、またそれと同時にポリマーのガラス転移温度を超えて加熱しなければならない。単にオーブンで熱加熱するだけでは、ポリマーへのエネルギー入力が、熱エネルギーの対流および伝導によってしか行われないという欠点がある。プラスチック自体は熱伝導率が低く、ポリマーシートのコアはゆっくりとしかフォーム温度に達しないため、この方法には2~3時間を要する場合がある。さらに、発泡ポリマーは、それ自体をオーブン温度に対して断熱する。
【0007】
課題
対処される課題は、(硬質)フォームを発泡させるための、またそれと同時に非常に均質な細孔構造を有する生成物を生じさせる、経済的に実施可能な方法を開発することであった。特に、例えばマトリックスポリマーのモル質量が大きいために押出法では製造できないPMIベースおよびPMMAベースのフォームなどの硬質フォームブロックを製造するために、経済的に実施可能な発泡法を開発する必要があった。さらなる目的は、硬質フォームシートの製造方法を明確に短縮し、それによって発泡法をより経済的に実施可能とすることであった。
【0008】
この時点で明確に議論されていないさらなる課題は、以下で、従来技術、発明の詳細な説明、特許請求の範囲、または実施例から明らかとなり得る。
【0009】
解決策
上述の目的は、フォームの新規の製造方法であって、該方法において、発泡剤を含むポリマー組成物を装置内で発泡させること、および発泡の前に、発泡されるポリマー組成物を予熱することを特徴とする、方法によって達成される。この装置は、装置の内部温度Tに加熱するための熱加熱器具と、これと同時にポリマー組成物に照射するための少なくとも1つのマイクロ波源とを備える。
【0010】
ポリマー組成物は、好ましくは、発泡後に硬質フォームを形成する材料である。これは、より好ましくは、P(M)I(ポリ(メタ)アクリルイミド)、PMMA、メタクリレートベースのコポリマー、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PU(ポリウレタン)、特に高度に架橋されたPU、ポリスルホン、またはポリ(エーテル)イミドである。
【0011】
予熱ステップにおいて、発泡されるポリマーは、装置内で行われる発泡の前に、装置の内部温度Tよりも80℃低い最低温度と10℃高い最大温度との間の温度Tで予熱される。好ましくは、Tは、最低温度が、装置の内部温度よりも60℃、より好ましくは40℃、特に20℃低い。また好ましくは、Tは、T以下であり、より好ましくは、Tより少なくとも10℃低い。
【0012】
予熱および実際の発泡は、同一の装置内で、例えば、任意に温度を変化させ、予熱後にマイクロ波源のスイッチを入れるという形で行うことができる。ただし、これら2つのステップを別個の装置内で行うことが有利である。例えば、予熱は、複数のワークピースを用いて大型のオーブン内で同時に行うことができる。次に、個々のワークピースが発泡のためにそこから取り出される。
【0013】
予熱後のポリマー組成物内の最低温点と最高温点との間のその後の温度差が15℃以下、好ましくは10℃以下となるように予熱を行うことが特に有利であることが判明した。同様に好ましくは、予熱されたポリマー組成物は、次に、装置内の発泡に直接送られる。
【0014】
発泡の前に、ポリマー組成物を、ポリマー組成物のガラス転移温度Tよりも高い予熱温度Tに予熱することが特に有利である。理想的には、実際の発泡が開始されたとき、ポリマー組成物は弾性である。
【0015】
多くの材料について、比較的高い結晶性の成分を有するもの、例えばPPについても、簡略化して110~190℃の予熱温度Tが良好であることが判明した。総じて、予熱時間は、少なくとも60分、好ましくは少なくとも100分である。
【0016】
0.85~6.0GHzの周波数を有するマイクロ波放射線を使用することが有利である。ポリマー組成物として、10~30mm、好ましくは20~25mmの厚さを有するポリマーシートを使用することが好ましいことが判明した。
【0017】
実際の発泡は、装置内で、例えば2~30分以内、好ましくは5~20分以内で行うことができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマー組成物は、PMIである。この実施形態では、予熱温度Tは、好ましくは120~190℃であり、装置の内部温度Tは、180~240℃である。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態では、ポリマー組成物は、PMMAまたはメタクリレートベースのコポリマーである。この実施形態では、予熱温度Tは、好ましくは110~140℃であり、装置の内部温度Tは、120~190℃である。
【0020】
本発明による方法の主な利点は、本方法を、環境に優しい方法で、非常に短いサイクル時間で、またそれと同時に材料を節約して実施できることにある。特に、本発明の方法により、発泡部分全体にわたって、驚くほど均一な孔径および孔径分布が得られる。
【0021】
さらなる加工可能な硬質フォームは、PVCフォームである。この硬質フォームは、ワゴン建設用の繊維複合材技術およびサンドイッチ体製造、風力タービンの製造、ならびにボート製造から広く知られている。完成したフォームシートは、PMIフォームシートと同様に加工可能である。
【0022】
同様のことが、硬質PPフォームにも当てはまる。PPフォームは、特に断熱材として、輸送用コンテナにおいて、およびサンドイッチ材として知られている。PPフォームは、フィラーを含むことができ、主に20~200kg/mの密度範囲で市販されている。
【0023】
軟質PUフォームと比較した場合の硬質PUフォームの特徴は、より閉じた細孔構造、およびより高度な架橋である。硬質PUフォームは、比較的多量の無機フィラー材料を含むこともできる。
【0024】
硬質フォーム材料の密度は、比較的自由に選択することができる。フォームは、例えば25~220kg/mの密度範囲で使用することができる。
【0025】
原則として、硬質フォームから製造された本発明のワークピースは、非常に広く使用可能である。