(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】医療ロボットを適所に固定するシステム
(51)【国際特許分類】
B62B 5/04 20060101AFI20240130BHJP
F16H 21/10 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B62B5/04 C
F16H21/10 G
(21)【出願番号】P 2021545369
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 FR2020050404
(87)【国際公開番号】W WO2020178511
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ペシェール,エステール
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-023663(JP,A)
【文献】特開2017-128142(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105284629(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00666209(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0218948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/04
F16H 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置(20)を固定するシステム(10)であって、
それぞれのガイド(110)内で摺動する少なくとも3つの可動の脚(100)であって、前記ガイド(110)が、前記移動装置(20)のシャシに取り付けられるように意図されている、脚(100)と、
前記脚(100)を互いに接続するとともに、前記移動装置(20)の前記シャシに取り付けられるように意図されている連結機構(30)と、
前記
システム(10)が前記移動装置(20)を固定することができる、床に当接する位置と、前記
システム(10)が前記移動装置(20)の可動性を可能にすることができる後退位置との間で摺動するように、前記脚(100)を移動させるように、前記連結機構(30)を誘導することができるアクチュエータ(40)と、
前記脚(100)の位置を決定するように構成された少なくとも1つのセンサと、を備え、
前記1つのセンサ又は複数のセンサが、その情報に応じて前記アクチュエータ(40)を制御するように構成された制御装置に接続されている、システム。
【請求項2】
前記脚(100)が支持位置にあるときに誘導される少なくとも1つの弾性部材(140)を備え、前記少なくとも1つの弾性部材が、誘導されたときに前記移動装置(20)の総重量の所定の割合を支持するようなサイズである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記連結機構(30)が、互いに関節接続されたリンクの少なくとも3つの組を含み、各リンクの組(33)が、前記移動装置(20)の前記シャシに脚(100)を接続するように構成され、前記連結機構(30)が、少なくとも1つの横材(32)に固く接続された少なくとも1つのバー(31)をさらに含み、前記バー(31)及び前記横材(32)が、前記リンクの組と前記アクチュエータ(40)とを接続し、前記アクチュエータ(40)の誘導により、各リンクの組(33)の前記リンクの互いに対する回転と、前記ガイド(110)内の前記脚(100)の摺動とがもたらされる、請求項1~
2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記
バー(31)及び前記横材(32)のそれぞれの端部の各々が、ピボット接続部によりリンクの組(33)に接続され、前記ピボット接続部の回転軸が、前記リンクの組(33)の前記リンクの互いに対する回転軸と同軸である、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アクチュエータ(40)が電動シリンダである、請求項1~
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータ(40)を介する前記移動装置(20)の前記シャシと前記連結機構(30)との機械的接続を提供し、前記アクチュエータ(40)が、前記連結機構(30)に機械力を加えることができる、結合状態と、
前記機械的接続を切り離し、前記機械力が前記アクチュエータ(40)により前記連結機構(30)に伝達可能ではない、係合解除状態と、
を占めるように適合された、前記アクチュエータ(40)を係合解除する部材(36)を備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記脚(100)をそれらの後退位置に押し込むように前記連結機構(30)を誘導する弾性戻り部材(50)を備える、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記脚(100)が、互いに摺動関係にある吊下部(120)と支持部(130)とを含み、前記吊下部(120)及び前記支持部(130)が、弾性部材(140)により互いから離れるように付勢される、請求項1~
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
各脚(100)が、前記吊下部(120)又は前記支持部(130)のうちの一方に取り付けられた、他方の前記吊下部(120)又は前記支持部(130)の開口部を通して係合するピンによって形成された、前記吊下部(120)及び前記支持部(130)の互いに対する摺動のための少なくとも1つの行程端当接部を備える、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
各脚(100)が、前記床の平坦性の局所的な不良を測定して、前記脚(100)に面する前記床の局所的な平坦性不良が存在するか否かを判断するとともに、その局所的な不良のサイズを決定する部材を備え、前記測定する部材が、前記制御装置に、
「測定値」と称する、前記局所的な不良の前記サイズの値が事前定義された許容範囲内にあるときに前記アクチュエータ(40)の制御を許可する設定値と、
前記測定値が前記事前定義された許容範囲外にあるときに前記アクチュエータ(40)の制御を禁止する設定値と、
を送信するように構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項11】
各脚(100)が、前記脚が後退位置と支持位置との間で摺動するときに、前記脚(100)の移動の値を表す情報を前記制御装置に通信する安全部材(150)を備え、前記制御装置が、この情報に基づき、前記脚(100)によって補償される前記床の局所的な平坦性不良のサイズを表す「制御値」と称する値を導出し、前記制御装置が、前記制御値が前記測定値と
一致しない場合、前記脚を前記後退位置に押し込むように前記アクチュエータ(40)を制御するとともに、前記移動装置(20)に警報信号を送信するように構成されている、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
各脚(100)が、前記制御装置に接続されるとともに、前記脚(100)が前記支持位置にあるときに前記脚(100)の各々によって支持される重量を決定する力センサを備え、前記制御装置が、脚(100)によって支持される前記重量が目標値未満である場合に警報信号を放出するように構成されている、請求項
2に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の
システム(10)が接続されたシャシを備え、前記シャシが、少なくとも3つの車輪により床から離れて支持されていることを特徴とする、移動装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、移動装置、たとえばトロリー又は他の運搬手段のための機器の分野にある。本発明は、特に、移動装置を固定するシステムに関する。
【0002】
本発明は、特に、医療支援ロボットを固定するのに好適である。
【背景技術】
【0003】
従来技術
荷物を運ぶように意図されたトロリー又は他の運搬手段等の移動装置は、一般に、それらを固定するように適合された固定手段を含む。
【0004】
既知の固定手段は、装置の車輪に当接して車輪に対してその回転を阻止するのに十分な強度の摩擦力を加えることができるシューからなる。
【0005】
しかしながら、いくつかの用途では、たとえば、移動装置の固定が特に重要である医療支援ロボットの分野において、この種の固定手段は十分ではない。
【0006】
実際に、ロボットベースの医療支援装置は、通常、操作者のジェスチャの精度を向上させ、及び/又は、医療器具を担持するロボットベースのアームの手段により、患者に対して直接処置を行うように使用される。したがって、処置の間、移動装置が有効に固定及び安定化されることが、患者の安全のために必須であり、前記装置のいかなる望ましくない移動も、ロボットベースのアームの、したがって、それが担持する医療器具の移動をもたらす危険がある。
【0007】
仏国特許第3043970号は、ベアリングシューを介して固定することができるキャスタが設けられ、ベアリングシューが、操作者が手動で作動させるレバーに前記シューを接続する機構により、枢動するように駆動されるように適合された、ロボットベースの医療支援装置を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの固定手段には、特に、それらの有効性が、床の上のベアリングシューの摩擦の強度によって直接決まるという利点がある。その強度は、シュー及び床の材料の性質に応じて大きく変化しやすい。したがって、移動装置の固定は十分でない場合がある。
【0009】
さらに、固定手段の配置展開は、完全に操作者次第である。したがって、操作者が、処置の前に固定手段を作動させるのを忘れるというリスクがある。
【0010】
仏国特許第3043970号の文献に記載されているロボットベースの医療支援装置を固定する手段の別の不都合は、それらが最適に機能するために完全な平坦性の床が必要であるという事実にある。シューをレバーに接続する機構は、シューのいかなる相対的な移動も阻止し、そのため、床が平坦性不良を有する場合に、シューが床の上に載らず、又はすべてが同じ支持力で床の上に載らない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の説明
本発明の目的は、車輪によって支持される移動装置、たとえば医療支援ロボットを固定するシステムを提案することにより、上述した不都合を緩和することである。固定システムは、移動装置のシャシに取り付けられるように意図されたそれぞれのガイド内で摺動する少なくとも3つの可動の脚と、脚を互いに接続するとともに、移動装置の前記シャシに取り付けられるように意図されている連結機構と、固定システムが移動装置を固定することができる、床に当接する位置と、固定システムが移動装置の可動性を可能にすることができる後退位置との間で摺動するように、脚を移動させるように、連結機構を誘導する(solicit)ことができるアクチュエータとを備える。
【0012】
言い換えれば、連結機構は、アクチュエータによって誘導されたときに、ガイド内で脚をそれらの支持位置と後退位置との間で摺動させるように適合されている。
【0013】
これらの特徴により、システムの容易及び連続的な起動及び停止が可能になり、すなわち、単純に及び迅速に移動装置を固定するとともにその可動性を可能にすることができる。
【0014】
特定の実施形態では、本発明はさらに、以下の特徴を別個に又は任意の技術的に機能する組合せで有する。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、固定システムは、脚が支持位置にあるときに誘導される少なくとも1つの弾性部材を備える。前記少なくとも1つの弾性部材は、誘導されたときに移動装置の総重量の所定の割合を支持するようなサイズである。
【0016】
言い換えれば、弾性部材は、脚が支持位置にあるときに移動装置の総重量の所定の割合のみを支持するように誘導されるように構成される。
【0017】
この種の割合は、移動装置の総重量の一部のみを表す。所定の割合は、好ましくは、移動装置の総重量の30~75%(それらの値を含む)である。所定の割合は、より好ましくは、移動装置の総重量の45~60%(それらの値を含む)である。例として、およそ150kgの重量の移動装置の場合、所定の割合分は、およそ80kgとなる。
【0018】
その結果、移動装置の重量は、前記移動装置が固定されるときに固定システムによって部分的に支持される。
【0019】
この特徴は、移動装置の固定されるときの安定性を保証するのに寄与する。さらに、脚のうちの1つが損傷した場合、移動装置は、常に床と接触し続けるその車輪によって依然として支持され、それにより、障害時に前記装置の安定性を確保することができる。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、固定システムは、脚の位置を決定するように構成された少なくとも1つのセンサを備え、前記1つのセンサ又は複数のセンサは、その情報に応じてアクチュエータを制御するように構成された制御装置に接続されている。
【0021】
したがって、固定システムを自動化することができる。
【0022】
この種の特徴により、有利に、操作者が固定システムを作動させるのを忘れるすべてのリスクを防止することができる。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、連結機構は、互いに関節接続されたリンクの少なくとも3つの組を含み、各リンクの組は、移動装置のシャシに脚を接続するように構成されている。連結機構は、少なくとも1つの横材に固く接続された少なくとも1つのバーをさらに含み、前記バー及び前記横材は、リンクの組とアクチュエータとを接続し、アクチュエータの誘導により、各リンクの組のリンクの互いに対する回転と、ガイド内の脚の摺動とがもたらされる。
【0024】
言い換えれば、各リンクの組は、そのリンクが互いに対して枢動するように駆動されると、それが接続されている脚の摺動運動をもたらすように構成されている。
【0025】
ロッド及び横材は、アクチュエータをリンクの組に接続し、それにより、アクチュエータの各誘導時に、前記ロッド及び前記横材が、各リンクの組のリンクの枢動、したがって、ガイド内の脚の摺動をもたらす。
【0026】
本明細書では、「リンクの組」という用語は、互いに関節接続された2つのリンクからなる組を定義する。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、ロッド及び横材のそれぞれの端部の各々が、ピボット接続部によりリンクの組に接続され、ピボット接続部の回転軸は、前記リンクの組のリンクの互いに対する回転軸と同軸である。
【0028】
したがって、アクチュエータの各誘導時に、リンクの組の各リンクにわたって均一に力が分散される。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、アクチュエータは電動シリンダである。
【0030】
この特徴により、アクチュエータは可逆的ではない。さらに、この種のアクチュエータは、非常に正確に移動する。最後に、電動アクチュエータは、機能するために電源のみを必要とするという利点を有する。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、固定システムは、
-アクチュエータを介する移動装置のシャシと連結機構との機械的接続を提供し、これにより、前記アクチュエータが、連結機構に機械力を加えることができる、結合状態と、
-前記機械的接続を切り離し、これにより、アクチュエータにより機械力を連結機構に伝達可能することができない、係合解除状態と、
を占めるように適合された、アクチュエータを係合解除する部材を備える。
-したがって、係合解除部材が結合状態にあるか又は係合解除状態にあるかに応じて、アクチュエータは、脚に対して、脚をそれらの後退位置と支持位置との間で駆動するように作用することができるか又はできない。
【0032】
この特徴は、アクチュエータが機能していないとき、たとえば、アクチュエータが正常に作動していないか又はエネルギーが供給されなくなった場合に、固定システムを使用しなければならない場合、特に有利である。
【0033】
本発明の実施形態では、固定システムは、脚をそれらの後退位置に押し込むように連結機構を誘導する弾性戻り部材を備える。
【0034】
言い換えれば、脚は、連結機構に、より詳細にはロッド及び横材に作用している弾性部材により、それらの後退位置に誘導される。
【0035】
したがって、係合解除部材が係合解除状態にあるとき、弾性戻り部材は、脚のそれらの後退位置への系統的な戻りを誘導する。
【0036】
この特徴は、特に、アクチュエータが可逆的でない場合に有利である。実際には、固定システムは手動で停止させることができ、それにより、固定システムを、正常に作動していないときに、エネルギー供給、たとえば、電気式、空気圧式又は液圧式エネルギー供給から独立させる。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、脚は、互いに摺動関係にある吊下部と支持部とを含み、前記吊下部及び前記支持部は、弾性部材により互いから離れるように付勢される。
【0038】
これらの特徴により、各脚は、床のいかなる平坦性不良、すなわち、隆起及び窪みも、局所的に補償するように個々に適合され、それにより、装置のシャシは、実質的に水平に支持される。
【0039】
各脚の支持部は、好ましくは、ガイド内を摺動するように適合され、吊下部は、好ましくは、支持部内を摺動するように適合される。
【0040】
弾性部材によって、これらの特徴により、移動装置の重量の全体ではなく一部のみを支持することができるようになり、それにより、脚が損傷した場合であっても、移動装置は、その車輪によって支持されるため安定化する。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、各脚は、前記吊下部又は前記支持部のうちの一方に取り付けられた、他方の吊下部又は支持部の開口部を通して係合するピンによって形成された、吊下部及び支持部の互いに対する摺動のための少なくとも1つの行程端当接部(end of travel abutment)を備える。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、各脚は、前記脚に面する床の平坦性の局所的な不良が存在するか否かを判断するとともに、その局所的な不良のサイズを決定するように適合された、床の平坦性の局所的な不良を測定する部材を備え、前記測定する部材は、制御装置に、
-「測定値」と称する、局所的な不良のサイズの値が事前定義された許容範囲内にあるときにアクチュエータの制御を許可する設定値と、
-測定値が事前定義された許容範囲外にあるときにアクチュエータの制御を禁止する設定値と、
を送信するように構成されている。
【0043】
したがって、この特徴により、移動装置の安定性は、その固定中に確保される。
【0044】
たとえば、この種の測定部材は、各脚の基部に取り付けられるとともに、前記基部とそれが面する床の表面との間の距離を測定するように向けられる、超音波センサであり得る。そして、その測定距離は、床の平坦性のあり得る不良の存在及び寸法を決定するために、床からの事前定義された理論的距離と比較される。床からの理論的距離は、後退位置にある脚の基部と移動装置の少なくとも3つの車輪に正接する平面との間の距離である。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、各脚は、脚が支持位置にあるときに脚の移動の値を表す情報を制御装置に通信する安全部材を備える。移動の値は、特に、使用されるセンサのタイプと脚におけるその配置とによって決まる。
【0046】
制御装置は、この情報に基づき、前記脚によって補償される床の平坦性の局所的な不良の寸法を表す「制御値」と称する値を導出する。前記制御装置は、制御値が測定値と実質的に一致しない場合、脚を後退位置に押し込むようにアクチュエータを制御するとともに、移動装置に警報信号を送信するように構成されている。
【0047】
「実質的に一致する」という用語は、使用されるセンサの機械的遊びと精度とに対応する小さい許容範囲が許容されることを意味する。
【0048】
この特徴により、固定システムの使用時にさらなる安全レベルが追加される。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、各脚は、制御装置に接続されるとともに、前記脚が前記支持位置にあるときにそれら脚の各々によって支持される重量を決定するように構成された、力センサを備え、制御装置は、脚によって支持される重量が目標値未満である場合に警報信号を放出するように構成されている。
【0050】
これらの特徴により、たとえば、脚のうちの1つが補償するには大きすぎる平坦性の局所的な不良の上に位置するために、又は、弾性部材が損傷しているために、移動装置が固定されるときに十分に安定していないか否かを判断することができる。
【0051】
別の態様によれば、本発明は、上述した固定システムが接続されたシャシを備え、シャシが、少なくとも3つの車輪により床から離れて支持されていることを特徴とする、移動装置、特に医療支援ロボットに関する。
【0052】
図面の簡単な説明
本発明は、非限定的な例として与えられる以下の説明を、図を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】破線で表されている移動装置のシャシに取り付けられた移動装置の固定システムの斜視図である。
【
図2】脚が支持位置にある、
図1による固定システムの側面図である。
【
図3】脚が後退位置にあり、アクチュエータがシャシから分離されている、
図1による固定システムの側面図である。
【
図4】アクチュエータの係合解除部材の概略詳細図である。
【
図5】脚が支持位置にあるとともに床の平坦性の局所的な不良を補償している、
図1による固定システムの脚の断面図である。
【
図6】脚が後退位置に向かって移動している、
図1による固定システムの脚の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
これらの図では、図の間で同一の参照番号は、同一の又は類似する要素を示す。さらに、明確にするために、図面は、別段の指示がない限り、正確な縮尺ではない。
【0055】
実施形態の説明
本発明は、移動装置20を固定するシステム10に関し、
図1にその1つの実施形態を斜視図で示す。
図1において、移動装置20は、部分的に及び概略的に破線で表されている。
【0056】
本発明は、移動装置20が医療支援ロボットである状況において、好ましく応用される。
【0057】
本発明は、前記医療支援ロボットが、医療処置を行うために患者の位置に対して最適な位置を占めるときに、その医療支援ロボットを固定することと、処置が終了したときに前記ロボットの可動性を可能にすることとに対して、さらに特に適している。
【0058】
固定システム10は、少なくとも3つ、好ましくは4つの車輪(図示せず)によって支持される移動装置20のシャシに取り付けられるように意図されている。
【0059】
固定システム10は、移動装置20を固定し、その安定化を保証しながらその重量の一部のみを支持する状態と、前記装置の移動を可能にする状態とを占めるように構成されている。
【0060】
固定システム10は、連結機構30によりシャシに接続されるように意図された脚100を備える。
【0061】
脚100が床の上に載る位置と床から離れた後退位置との間で移動するように脚100に力を伝達するように、連結機構30にアクチュエータ40が接続されている。
【0062】
脚100は、床の上に載る位置にあるとき、移動装置20を固定するように移動装置20の重量の所定の割合を支持するように意図され、後退位置にあるとき、移動装置20の可動性を可能にするように意図されている。
【0063】
脚100は、移動するとき、有利には、移動装置20のシャシに取り付けられるように適合されたガイド110内を摺動する。これらのガイド110は、1つのみの並進運動の自由度を有するような脚100の保持を可能にする。
【0064】
言い換えれば、連結機構30は、アクチュエータ40の運動を脚100の並進運動に変換するように構成されている。
【0065】
図1が示すように、連結機構30は、2つの長手方向端部の間に延在するロッド31を含み、ロッド31には、同様に2つの長手方向端部の間に延在する横材32が取り付けられている。
【0066】
図1が示すように、ロッド31は、好ましくは、たとえば構造的区画によって形成された2つの平行アームによって形成され、それら2つの平行アームは、対称に及び互いに間隔を空けて配置されている。
【0067】
ロッド31及び横材32の長手方向端部の各々は、運動伝達アセンブリによって脚100に接続されている。運動伝達アセンブリは、ロッド31及び横材32の任意の運動を脚100の並進運動に変換するように構成されている。
【0068】
脚100にかけられる力を平衡させるために、横材32は、好ましくは、前記横材32の2つの長手方向端部から等距離に、及び同様にロッド31の2つの長手方向端部の間で等距離に、ロッド31に取り付けられている。
【0069】
図1~
図6に表されている本発明の実施形態では、固定システム10は、4つの脚100を備えるが、他の実施形態では、システムは、少なくとも3つの脚100を備えることができる。
【0070】
各運動伝達アセンブリは、一方では脚100に、他方では移動装置20のシャシに、取付部材により関節接続された、リンクの組33を備える。
【0071】
取付部材は、より詳細には、リンクの組33のうちの1つのリンクを移動装置20のシャシに接続し、好ましくは、1つの回転自由度を可能にする。たとえば、
図1が示すように、取付部材は、シャシに固く取り付けられるとともにピン35を備えたヨーク34によって形成され、ピン35により、前記ヨーク34は、自由に回転するようにリンクに取り付けられている。
【0072】
各リンクの組33は、リンク頭部とリンク脚部との間に延在する2つのリンクを有し、それらリンクは、それぞれ、本文の残りの部分において「上部リンク」310及び「下部リンク」320と称する。
【0073】
本明細書において、「垂直な」という用語は、重力の方向に対して平行である方向に従って定義され、「上部」及び「下部」という相対的な用語は、垂直な直線線分に沿って定義され、
図1に示すような本発明による固定システム10の位置に関することが留意されるべきである。
【0074】
リンクの組33の上部リンク310及び下部リンク320は、互いに関節接続されており、上部リンク310の脚部は、「リンクピボットの組」と称されるピボットにより、下部リンク320の頭部に接続されている。
【0075】
各リンクの組33は、上部リンク310が、その頭部によりヨーク34のピン35に接続され、下部リンク320の脚部が脚100の一端に関節接続されるようになっている。
【0076】
ロッド31及び横材32の長手方向端部の各々は、有利にはリンクの組33に接続されている。ロッド31及び横材32の各長手方向端部は、より詳細には、ピボット接続部によりリンクの組33に接続され、ピボット接続部の回転軸は、リンクピボットの組の軸と同軸である。
【0077】
図1に見ることができるように、ロッド31の端部に接続されたリンクの組33のリンクピボットの組は、前記リンクの組の上部リンク310及び下部リンク320のように、前記2つの平行なアームの間に配置されている。
【0078】
図1に表されている本発明の実施形態では、アクチュエータ40は、一方ではロッド31に、他方ではシャシに、ロッド31及び横材32を上部リンク310のリンク頭部の回転軸を中心に円形並進運動させるように接続されている。言い換えれば、アクチュエータ40は、ロッド31及び横材32に、各上部リンク310に上部リンク310の頭部を介して、ヨーク34のピン35を中心とする回転運動を伝達させるように構成されている。
【0079】
別法として、アクチュエータ40は、ロッド31に接続する代わりに、横材32に接続することができる。
【0080】
この種の運動伝達の効果は、リンクピボットの組33を中心とする下部リンク320の回転を駆動し、それにより、上部リンク310及び下部リンク320を互いに対して傾斜させるか又は位置合せすることができるようにすることである。
【0081】
したがって、これにより、下部リンク320の回転方向に応じて、脚100が自由に摺動するガイド110を通る各脚100の押し又は引きがもたらされる。
【0082】
脚100及びガイド110は、好ましくは、前記脚100が実質的に垂直な軸に沿って摺動し、その結果、床に対して各脚100によって加えられる、支持すべき移動装置20の重量によって発生する力の合力が、完全に垂直であるように構成されている。この特徴により、移動装置20のその固定中の安定性を保証し、脚100が滑るすべてのリスクをなくすことが可能になる。
【0083】
本発明の利点は、
図1が示すように、脚100が支持位置にあるとき、各リンクの組33の上部リンク310及び下部リンク320が、それらが関連する脚100と一列になり、各脚100に加えられる、支持すべき移動装置20の重量によって発生する力の合力が、完全に垂直である、という事実にある。アクチュエータ40が受ける機械的応力の強度を低減させるとともに、この特徴により、固定システム10は、滑るすべてのリスクがなくなるため、固定されるときの移動装置20の高い安定性を確保することができる。
【0084】
アクチュエータ40は、好ましくは、ロッド31に対して、それが前記ロッド31に加える力の合力が実質的に水平であるように配置される。
【0085】
本発明の本実施形態では、アクチュエータ40は、有利には、シリンダ、好ましくは電動シリンダである。
【0086】
シリンダは、アクチュエータ本体内で並進運動するように適合されたロッドを備える。本実施形態では、ロッドは、シャシに固く固定されるように意図された「支持ヨーク」42と称するヨークと協働する「支持シャフト」41と称するシャフトを中心として回転運動するように取り付けられている。シリンダの本体は、前記ロッド31に対して回転運動するように、ロッド31の2つの平行なアームの間に横方向に配置されたピボットに取り付けられている。
【0087】
しかしながら、シリンダ本体及びロッドは、支持シャフト41又はロッド31のいずれかに等しく適切に取り付けることができる。
【0088】
機械的強度の理由で、支持ヨーク42は、好ましくは、前記シャシの垂直面に当接して位置するようにシャシに取り付けられている。実際には、この特徴により、支持ヨーク42をシャシに取り付ける支持ヨーク42の取付要素は、張力及び圧縮力を受け、せん断力は受けない。
【0089】
固定システム10は、有利には、
-アクチュエータ40を介する、移動装置20のシャシと連結機構30との機械的接続を提供し、それにより、前記アクチュエータ40が連結機構30に機械力を加えることができる、結合状態と、
-いかなる機械力もアクチュエータ40によって連結機構30に伝達することができないように、前記機械的接続を切り離す係合解除状態と
を占めるように適合された、アクチュエータ40を係合解除する部材36を備えることができる。
-係合解除部材36は、より詳細には、シャシから及び/又は連結機構30からアクチュエータ40を分離するように適合されている。
【0090】
この特徴は、アクチュエータ40が機能していないとき、たとえば、正常に機能していないか又はエネルギーが供給されなくなった場合、固定システム10を使用しなければならない場合に、特に有益である。
【0091】
係合解除部材36は、好ましくはロッド360によって形成され、ロッド360の端部のうちの一方はピンの形態をとり、それは、係合解除部材36が結合状態にあるとき支持ヨーク42に係合して、上述した支持シャフト41と同様に及びそれに対して代替的に、移動装置20のシャシとアクチュエータ40との機械的接続をもたらすように意図されている。
【0092】
ロッド360の他方の端部は、係合解除部材36の状態を変更するために操作者によって操作されるように意図された、
図4に概略的に示すような、操作要素361、たとえば、ハンドル、ハンドレバー又はハンドホイールを含む。
【0093】
ロッド360は、移動装置20のシャシに取り付けられるように意図された支持部の開口部を通って延在している。支持部は、有利には、ロッド360をその長手方向軸に沿って並進運動するとともにその長手方向軸を中心に回転運動するように誘導するように適合されている。
【0094】
ロッド360は、係合解除部材36が、ピンを支持ヨーク42に係合した状態で維持するように結合状態にあるときに支持部に当接する、半径方向当接部362を含む。この半径方向当接部362により、係合解除部材36の結合状態で保持を保証し、状態のいかなる偶発的な変化も防止することができる。
【0095】
支持部の開口部は、より詳細には、前記半径方向当接部362の形状と同じ形状であり、前記半径方向当接部362の断面の寸法と少なくとも等しい寸法である断面を含む、半径方向隙間を備える。これにより、半径方向当接部362が、隙間に面しているとき、前記隙間を通って摺動することができ、その結果、ロッド360のその長手方向軸に沿った摺動が可能になる。
【0096】
操作要素361を介してロッド360を引き寄せることにより、この種の特徴によって、支持ヨーク42からのピンの係合解除と、したがって、係合解除部材36の係合解除状態での駆動とが可能になる。
【0097】
要約すると、係合解除部材36をその結合状態からその係合解除状態にするために、操作者は、半径方向当接部362が隙間に面して配置されるまで前記部材を枢動させ、その後、ピンが支持ヨーク42から引き抜かれるまでロッド360を引き寄せなければならない。
【0098】
逆に、係合解除部材36をその係合解除状態からその結合状態にするために、操作者は、アクチュエータ40、特にシリンダのロッドの自由端を、支持ヨーク42に面するように位置決めし、ピンを支持ヨーク42及びシリンダのロッドの自由端の両方と係合させるように、ロッド360をその長手方向軸に沿って押し、その後、半径方向当接部362を支持部に対して押し付けるように前記ロッド360を枢動させなければならない。
【0099】
図2及び
図3は、連結機構30に、脚100をそれらの後退位置に押し込ませるように誘導するように適合された、弾性戻り部材50を示す。より正確には、弾性戻り部材50は、一方ではロッド31に他方では移動装置20のシャシに、たとえば支持ヨーク42によって取り付けられた、引張コイルばねによって形成することができる。
【0100】
したがって、アクチュエータ40が、係合解除部材36の除去によりシャシから取り外されるとき、脚100は、弾性戻り部材50によってそれらの後退位置に系統的に押し込まれる。
【0101】
この特徴は、アクチュエータ40が可逆的でない場合に特に有利である。
【0102】
固定システム10は、好ましくは、使用者によって供給される指示にしたがって、又は事前定義された設定値が示される場合、アクチュエータ40を制御する、特にシリンダのロッドを展開するか又は後退させることができるようにアクチュエータ40に接続された、制御装置を含む。
【0103】
本実施形態では、固定装置10の制御装置は、好ましくは、移動装置20の中央制御装置に接続されるように意図され、好ましくは、中央制御装置によって供給される設定値に従ってアクチュエータ40を制御するように適合される。
【0104】
移動装置20の中央制御装置は、より詳細には、要件に応じて、移動装置20を固定するようにアクチュエータ40を制御するために、固定システム10の制御装置に固定設定値を送信し、又は、前記移動装置20の可動性を可能にするようにアクチュエータ40を制御するために、固定システム10の制御装置に解除設定値を送信するように構成されている。
【0105】
固定システム10の制御装置は、有利には、移動装置20の中央処理装置によって制御することができ、それにより、移動装置20が治療計画に従って所定ゾーンに位置決めされると、前記中央制御装置は、操作者のコマンドで又は自動的に、移動装置20を固定するようにアクチュエータ40の制御設定値を制御装置に送信する。逆に、移動装置の固定が不要となると、中央処理装置は、操作者のコマンドで又は自動的に、移動装置20の可動性を可能にするようにアクチュエータ40に対する制御設定値を制御装置に送信する。そして、移動装置20を移動することができる。
【0106】
固定システム10は、有利には、制御装置に接続されるとともに脚100の位置を決定するように適合された、1つ又は複数のセンサを備えることができる。制御装置は、センサが、脚100が支持位置又は後退位置にあると判断したとき、脚100の運動を中断するようにアクチュエータ40を制御するように構成されている。
【0107】
センサは、連結機構30の任意の部分の運動に対して高感度であり得る。
図2及び
図3が示すように、これらのセンサは、より詳細には、ロッド31、横材32、又は上部リンク310若しくは下部リンク320が、脚100が後退位置にある位置及び支持位置にある位置にそれぞれ対応する2つの極限位置のうちの一方にあるときに誘導されるように適合された、行程端センサ60であり得る。
【0108】
この場合、行程端センサ60は、機械的、磁気的、電気的、空気圧式又は光学的位置センサである。
【0109】
図2及び
図3に表されている実施形態では、行程端センサ60は、ロッド31のそれぞれ両側においてその長さと実質的に一列に、移動装置20のシャシの上に配置されており、それにより、前記ロッド31がその極限位置のうちの一方にあるとき、その長手方向端部の各々が前記センサを作動させる。
【0110】
別法として、固定システム10は、アクチュエータ40の運動に対して高感度なセンサを含む。このセンサは、より詳細には、アクチュエータ40と協働してその行程を連続的に決定するポテンショメータであり得る。したがって、ポテンショメータは、アクチュエータ40が、ロッド31を2つの極限位置のうちの一方に押し込んだとき、したがって脚100の位置を、決定するように適合される。
【0111】
図5及び
図6は、後退位置及び支持位置それぞれの固定システム10の脚100のうちの1つの断面図を表す。
【0112】
各脚100は、支持部130と摺動関係にある吊下部120を備え、支持部130及び吊下部120は、弾性部材140により互いから離れるように付勢される。
【0113】
吊下部及び支持部130は、好ましくは、垂直軸に沿って互いに対して並進運動する。
【0114】
吊下部120は、上端部と下端部との間に延在している。吊下部120は、その上端部においてピボットを有し、ピボットにより、吊下部120は下部リンク320の脚に接続されている。
【0115】
本実施形態では、吊下部120は、円形状の断面を有し、その長さの範囲内に、「第1肩部」121と称する肩部を形成するように直径が異なる2つの部分を備える。より正確には、吊下部120は、その下端部まで延在するその長さの一部にわたり、「下方部分」と称する相対的に小さい直径の部分を有する。
【0116】
本実施形態では、支持部130は、上端部と下端部との間に延在し、断面が円形である中空管形状を有する。支持部130は、その上端部に開口部を有し、そこに、吊下部120が摺動可能に係合する。
【0117】
支持部130は、好ましくは、その長さの範囲内に、「第2肩部」131と称する肩部を形成するように内径が異なる2つの部分を備える。より正確には、支持部130は、その下端部と上端部との間に延在するその長さの一部にわたり、「下方部分」と称する部分を有し、その内径は、機械的隙間を除き、吊下部120の下方部分の直径に実質的に対応し、それにより、前記下方部分は、互いに摺動して協働する。
【0118】
図5及び
図6が示すように、吊下部120及び支持部130は、第1肩部121及び第2肩部131が対面し、吊下部120の下方部分の周囲に環形状の内部チャンバを形成するように構成されている。
【0119】
図5及び
図6は、弾性部材140が内部チャンバ内に配置されていることを示す。弾性部材140は、好ましくは、吊下部120の相対的に小さい断面部分の周囲に巻回されるとともに、第1肩部121及び第2肩部131に当接するように配置された、圧縮コイルばねからなる。
【0120】
弾性部材140とともに、吊下部120の支持部130に対する可動性により、有利には、固定システム10は、移動装置20が固定されるときにその重量の一部のみを支持することができる。
【0121】
このために、各弾性部材140は、脚100が支持位置にあるときに移動装置20の重量の目標値を支持することができるようなサイズである。
【0122】
たとえば、脚100の数が4であり、各弾性部材140は、移動装置が固定されるときに移動装置の重量の所定の割合の25%を支持するように較正される。当然ながら、固定システムが3つの脚100を含む場合、目標値は、移動装置20が固定されるときに移動装置20の重量の所定の割合の33%に対応する。
【0123】
したがって、脚が損傷した場合、移動装置20は、その車輪によって支持され続けるため、安定したままである。したがって、この特徴は、移動装置が固定されたときに移動装置の安定性を保証し続ける。
【0124】
さらに、吊下部120の支持部130及び弾性部材140に対する可動性により、各脚100は、窪み又は隆起タイプの、床の任意の局所的な平坦性不良を局所的に補償し、それにより、移動装置20のシャシは、実質的に水平に支持され、脚100のすべてが、あり得る局所的な平坦性不良にも関わらず床の上に載る。したがって、固定された移動装置20の安定性が確実になる。
【0125】
言い換えれば、床の任意の局所的な平坦性不良に応じて、吊下部120は支持部130に幾分か係合し、ヨークは、床に対して系統的に同じレベルにあり、それにより、移動装置20は同じレベルで維持される。
【0126】
「床の局所的な平坦性不良」の概念は、本明細書では、移動装置20の車輪が床の上に載るゾーン又は点が記される平面に対する床の表面の任意のオフセットを意味するものと理解される。
【0127】
各脚100は、支持部130における吊下部120の最大行程により、床の平坦性不良の補償が可能になるとともに、脚が支持位置にあるときに移動装置の総重量の所定の割合のパーセンテージに対応する目標値を支持することができる。支持部130における吊下部120の最大行程は、たとえば、固定システムが150kgの移動装置の80kgを支持するとともに、5ミリメートルの最大オフセットを補償するとき、およそ20ミリメートルである。
【0128】
本明細書では、最大行程は、脚100の最大圧縮状態と最大伸長状態との間で規定される。脚100は、床の平坦性の局所的な不良、隆起及び窪みそれぞれを局所的に補償するとき、こうした状態にある。各脚100が補償することができる隆起及び窪みは、たとえば、移動装置20の車輪が床の上に載るゾーン又は点が記される平面に対して、5ミリメートルのオフセットを有する。
【0129】
各脚100は、
図5が示すように、圧縮行程端当接部132を備え、それは、本実施形態では、脚100が支持位置にあり、床の局所的な平坦性の不良が補償されるときに、吊下部120の下端部が当接することができる、支持部130の下端部のレベルにある端壁により形成される。
【0130】
各脚100は、
図6が示すように、伸長行程端当接部122も備え、それは、本実施形態では、支持部130の下方部分の半径方向内側に取り付けられたピンにより形成される。ピンは、吊下部120の下方部分において軸方向に延在する、たとえば楕円形状の開口部に係合する。
【0131】
図5及び
図6が示すように、各脚100の支持部130の下端部は基部133を有し、基部133は、脚100が支持位置にあるときに床と当接するように適合されている。基部133は、有利には、床のあり得る局所変形に適合するように玉継手接続部により前記下端部に接合することができる。
【0132】
図5及び
図6はまた、本発明の1つの実施形態では、ガイド110が、貫通孔111を含む本体と、本体をシャシに取り付ける手段112とを有する。各脚100の支持部130は、好ましくは、それが協働するガイド110の貫通孔111に、たとえば平滑な軸受内で摺動することにより係合する。
【0133】
各脚100は、好ましくは、前記脚100に関して床の局所的な平坦性不良が存在するか否かを判断し、その局所的な不良のサイズを決定するように適合された、床の局所的な平坦性不良を測定する部材(図には示さず)を備える。
【0134】
床の平坦性の局所的な不良を測定する部材は、より詳細には、床の事前定義された理論的な位置に対する各脚100に面する床の位置間のオフセットがあるか否かを判断するように適合される。
【0135】
たとえば、この種の測定部材は超音波センサである場合があり、その動作自体は当業者に既知である。各超音波センサは、脚100の基部133内に取り付け、前記基部133とそれが面する床の表面との間の距離を測定するように向けることができる。
【0136】
測定距離は、床までの理論的な距離と比較されて、「測定値」と称する、局所的な不良のサイズが決定される。測定値は、固定システムの各脚によって補正することができる床の平坦性の局所的な不良の最大寸法を表す値と比較され、この最大寸法は、以下に言及する許容範囲の1つの限界に対応する。
【0137】
この種の測定部材は、脚100が後退位置にあるときに使用されるように意図されている。
【0138】
測定部材は、さらに、
-「測定値」と称する局所的な不良の寸法の値が事前定義された許容範囲内にあるときにアクチュエータ40の制御を可能にする設定値と、
-測定値が事前定義された許容範囲外にあるときにアクチュエータ40の制御を禁止する設定値と、
を制御装置に送信するように構成されている。
【0139】
各脚100は、好ましくは、安全部材150を備え、安全部材150は、脚が後退位置と支持位置との間で摺動するときに脚100が移動する距離が、脚が後退位置にあるときに基部133と床の表面との間の測定部材によって測定された距離に対応するか否かを検証するように適合されている。
【0140】
図6に表されている本発明の一実施形態では、安全部材150は、光学式リニアエンコーダによって形成されている。光学式リニアエンコーダは、光学モジュールを備え、光学モジュールは、ガイド110に取り付けられるとともに、前記光学モジュールに面する吊下部120に取り付けられた(太線によって表す)定規上に向けられた(破線によって表す)光ビームを発生するように適合されている。
【0141】
したがって、エンコーダは、ガイド110に対して吊下部120の移動を測定することができるとともに、この情報を制御装置に送信するように構成され、制御装置は、その情報から、「制御値」と称する、補償されたときの床の平坦性の局所的な不良のサイズの値を導出する。変形実施形態では、制御装置は、前記制御値を移動装置20の中央制御装置に通信するようにすることができ、中央制御装置は、その制御値から、この床の補償された局所的な平坦性不良のサイズの値を導出する。
【0142】
別法として、安全部材150は、
図5に示すように、誘導型移動センサによって形成される。センサは、開口部の上方で、吊下部120に形成された内部容積内に組み込まれた測定モジュールと、ボア内で前記測定モジュールからピンまで軸方向に延在するロッドとを含む。したがって、ロッドは、開口部内のピンの移動中にボア内で摺動するように適合される。
【0143】
したがって、誘導型移動センサは、支持部130に対する吊下部120の移動を測定することができるとともに、その情報を制御装置に送信するように構成され、制御装置は、その情報から、「制御値」と称する、補償されたときの床の平坦性の局所的な不良のサイズを導出する。変形実施形態では、制御装置は、前記制御値を移動装置20の中央制御装置に通信するようにすることができ、中央制御装置は、その制御値から、補償されたときの床の平坦性の局所的な不良のサイズを推定する。
【0144】
実際に補償された床の平坦性の局所的な不良のサイズが、実質的に測定値と一致する場合、移動装置20は、安定して固定される。
【0145】
逆に、実際に補償された床の平坦性の局所的な不良のサイズが、測定値と実質的に一致しない場合、移動装置20は、不安定に固定される。
【0146】
固定システム10の制御装置は、制御値が測定値に対応しない、すなわち、測定値と実質的に一致しない場合、移動装置20の可動性を可能にするようにアクチュエータ40を制御するとともに、前記移動装置20の中央制御装置に警報信号を送信するように構成されている。
【0147】
固定システム10の制御装置は、反対の状況において、制御値が測定値に対応する場合、移動装置20の固定を可能にするようにも構成されている。
【0148】
さらに、制御装置は、脚100のうちの1つの伸長時及び圧縮時の行程端当接部が誘導される場合、すなわち、脚100のうちの1つが最大圧縮又は最大伸長状態にある場合、移動装置20の可動性を可能にするようにアクチュエータ40を制御するとともに、移動装置20の中央制御装置に警報信号を送信するように構成されている。これらの状況は、床の平坦性の局所的な不良が大きすぎて補償することができないことを表し、したがって、移動装置20が固定されないか、又は安定して固定されないことを意味する。
【0149】
たとえば、行程端当接部は、より詳細には、前記行程端当接部が誘導されるときに状態を変化させる機械的位置スイッチ型センサを備えることができる。制御装置は、これらのセンサに、それらの状態を決定するために接続される。
【0150】
別法として、シリンダのロッドに関連するとともに制御装置に接続されたポテンショメータ等、他のタイプのセンサを使用することができる。
【0151】
さらに、各脚100は、力センサを備え、力センサは、制御装置に接続されるとともに、前記脚100が支持位置にあるときに脚100の各々によって支持される重量を決定するように構成される。
【0152】
固定システム10の制御装置は、脚100によって支持される重量が目標値未満である場合、移動装置20の可動性を可能にするようにアクチュエータ40を制御するとともに、前記移動装置20の中央制御装置に警報信号を送信するように構成される。
【0153】
目標値は、固定システム10の脚100の数の関数としての装置の重量の所定の割合のパーセンテージに等しい。
【0154】
たとえば、固定システム10が4つの脚100を含む場合、目標値は、移動装置20が固定されたときの移動装置20の重量の所定の割合の25%に等しい。当然ながら、固定システムが3つの脚100を含む場合、目標値は、移動装置20が固定されたときの移動装置20の重量の所定の割合の33%に対応する。
【0155】
これらの特徴により、移動装置20は、たとえば、脚100のうちの1つが、補償するには大きすぎる平坦性の局所的な不良の上にあるため、又は弾性部材140が損傷したため、移動装置20が固定されるときに十分に安定していないか否かを判断することができる。
【0156】
より全体的には、上記で考慮した本発明の実施形態及び使用は、非限定的な例として記載されていることと、したがって、他の変形形態を構想することができることとが留意されるべきである。
【0157】
特に、他のタイプの実施形態では、前記機構がロッド31を備え、ロッドの端部の各々に横材32が取り付けられ、脚100が横材32の端部に接続される、連結機構30の代替構成を考慮することを排除するものはない。
【0158】
より全体的には、連結機構30、特にロッド31及び横材32の他のタイプの構成を排除するものはない。