(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240130BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240130BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20240130BHJP
C12C 12/04 20060101ALI20240130BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20240130BHJP
C12C 12/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/52
C12G3/06
C12C12/04
C12C5/02
C12C12/02
(21)【出願番号】P 2021575203
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004635
(87)【国際公開番号】W WO2021157030
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠一
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528144(JP,A)
【文献】特開2015-027309(JP,A)
【文献】特開2013-081417(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルトールを0.05~8.00mg/L、フラネオールを0.005~3.00mg/L、およびβダマセノンを0.005~0.80mg/L含み、
フラネオールの含有量(単位:mg/L)と、βダマセノンの含有量(単位:mg/L)との比〔フラネオール/βダマセノン〕が0.02以上であり、カロリーが360mL当たり5kcal未満であり、エタノールの含有量が0.5(v/v)%未満のビールテイスト飲料。
【請求項2】
人工香料を含まない、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
人工甘味料を含まない、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
甘味料を含まない、請求項3に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
脂質の含有量が、350mL当たり0.5g未満である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
タンパク質の含有量が、350mL当たり0.5g未満である、請求項1~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
前記ビールテイスト飲料の炭酸ガス圧が、0.700w/w%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
前記ビールテイスト飲料が、非発酵飲料である、請求項1~7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康意識の高まりから、ビール風味の炭酸飲料であるビールテイスト飲料として、エタノール濃度が極めて低いまたはアルコールを含まず、低カロリー、低脂質、低タンパクの飲料の需要が高まっている。しかし、カロリーが低く、脂質、タンパク等の含有量を抑えた飲料では原材料の使用量が制限されるため、ビールテイスト飲料の風味や味わいが悪くなってしまう(特開2014-207914公報(特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下、優れた味わいを有するビールテイスト飲料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、マルトール、フラネオール、およびβダマセノンを所定量含み、低カロリーで、エタノールの含有量が0.5(v/v)%未満のビールテイスト飲料を提供する。すなわち、本発明には、以下の態様の発明が含まれる。
[1]
マルトールを0.05~8.00mg/L、フラネオールを0.005~3.00mg/L、およびβダマセノンを0.005~0.80mg/L含み、カロリーが360mL当たり5kcal未満であり、エタノールの含有量が0.5(v/v)%未満のビールテイスト飲料。
[2]
人工香料を含まない、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
人工甘味料を含まない、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
甘味料を含まない、[3]に記載のビールテイスト飲料。
[5]
脂質の含有量が、350mL当たり0.5g未満である、[1]~[4]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[6]
タンパク質の含有量が、350mL当たり0.5g未満である、[1]~[5]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[7]
前記ビールテイスト飲料の炭酸ガス圧が、0.700w/w%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[8]
前記ビールテイスト飲料が、非発酵飲料である、[1]~[7]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様のビールテイスト飲料は、良好な味わいのビールテイストを有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.ビールテイスト飲料
本発明において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の味わいを有する炭酸飲料を意味する。ビールテイスト飲料とは、アルコール含有量や麦芽の使用の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する発泡性飲料を意味する。すなわち、ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料またはローアルコール飲料であってもよい。また、麦芽を原料とする飲料であってもよく、麦芽を原料としない飲料であってもよい。さらに、発酵飲料であってもよく、非発酵飲料であってもよい。ビールテイスト飲料としては、具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。
本発明のビールテイスト飲料のエタノールの含有量は、0.5(v/v)%未満であり、好ましくは0.1(v/v)%未満、より好ましくは0.01(v/v)%未満、さらに好ましくは0.005(v/v)%未満、特に好ましくは0.004(v/v)%未満である。
なお、本明細書において、エタノールの含有量は、体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のエタノールの含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、ガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0008】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、製造工程において、酵母を用いた発酵工程を経た後、発酵工程で生じたエタノールを除去して、エタノールの含有量を上記範囲に調整した発酵飲料であってもよく、また、このような発酵工程を経ないで調製される非発酵飲料であってもよい。
エタノールの含有量を上記範囲に容易に調整する観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、発酵工程を経ないで製造されることが好ましい。
【0009】
一般的なビールテイスト飲料は、エタノールの含有量が低いため、味わいが不十分となり易い。このような問題に対して、マルトール、フラネオール、およびβダマセノンを所定量含む飲料とすることで、甘味料を使用している従来のビールテイスト飲料に比べて、不適な嫌な甘みを抑えながら良好な味わいのビールテイストを提供できるという知見を得た。本発明は、その知見によりなされたものである。
【0010】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、マルトールの含有量は、よりビールらしい味わいのビールテイスト飲料とする観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で0.05mg/L以上、好ましくは0.07mg/L以上、より好ましくは0.08mg/L以上、より好ましくは0.09mg/L以上、より好ましくは0.10mg/L以上、さらに好ましくは0.25mg/L以上、さらに好ましくは0.50mg/L以上特に好ましくは1.00mg/L以上である。また、マルトールの含有量は不適な嫌な甘みを抑制するという観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で8.00mg/L以下、好ましくは、7.00mg/L以下、より好ましくは6.00mg/L以下、より好ましくは5.00mg/L以下、より好ましくは4.00mg/L以下、より好ましくは3.00mg/L以下、さらに好ましくは2.00mg/L以下、特に好ましくは1.70mg/L以下である。
【0011】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、フラネオールの含有量は、よりビールらしい味わいのビールテイスト飲料とする観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で0.005mg/L以上、好ましくは0.007mg/L以上、より好ましくは0.009mg/L以上、より好ましくは0.010mg/L以上、より好ましくは0.020mg/L以上、より好ましくは0.030mg/L以上、より好ましくは0.040mg/L以上、さらに好ましくは0.050mg/L以上、特に好ましくは0.060mg/L以上である。また、フラネオールの含有量は不適な嫌な甘みを抑制するという観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で3.00mg/L以下、好ましくは、2.70mg/L以下、より好ましくは2.40mg/L以下、より好ましくは2.00mg/L以下、より好ましくは1.50mg/L以下、より好ましくは1.20mg/L以下、さらに好ましくは0.90mg/L以下、特に好ましくは0.80mg/L以下である。
【0012】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、βダマセノンの含有量は、よりビールらしい味わいのビールテイスト飲料とする観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で0.005mg/L以上、好ましくは0.007mg/L以上、より好ましくは0.008mg/L以上、より好ましくは0.009mg/L以上、より好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.05mg/L以上、さらに好ましくは0.10mg/L以上、さらに好ましくは0.12mg/L以上、さらに好ましくは0.14mg/L以上、特に好ましくは0.16mg/L以上である。また、βダマセノンの含有量は不適な嫌な甘みを抑制するという観点から、前記ビールテイスト飲料の全量基準で0.80mg/L以下、好ましくは、0.70mg/L以下、より好ましくは0.60mg/L以下、より好ましくは0.50mg/L以下、より好ましくは0.40mg/L以下、より好ましくは0.30mg/L以下、さらに好ましくは0.20mg/L以下、特に好ましくは0.18mg/L以下である。
【0013】
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンは人工的に合成した化合物(たとえば、人工香料(artificial flavor))であっても、天然由来の化合物(たとえば、天然香料(natural flavor))であってもよいが、天然香料を用いることが好ましい。天然香料は、米国のFDAの21 CFR 101.22に規定された「natural flavor」に該当する。本明細書中、「天然マルトール」は天然由来のマルトール、「天然フラネオール」は天然由来のフラネオール、「天然βダマセノン」は天然由来のβダマセノンである。本明細書において、「天然由来」とは天然原料が起源原料であることを意味する。天然由来の成分は、たとえば、植物性原料、動物性原料、微生物原料、発酵食品等から得られたものである。天然由来の成分を製造する際、物理的または化学的な変換や、微生物や酵素を用いた製造工程、無機触媒を用いた化学変換工程等を経てもよい。
また、天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンは、米国のFDAの21 CFR 101.22に規定された「natural flavor」に該当する。したがって、米国のFDAの21 CFR 101.22に基づき、「natural flavor」であるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンは、それぞれ、本明細書の「天然マルトール」、「天然フラネオール」、「天然βダマセノン」に該当する。
【0014】
なお、本明細書において、マルトール、フラネオールおよびβダマセノンの含有量は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により測定することができる。定量値は既知濃度で算出した検量線を用いた方法で算出する。LC/MS測定条件は以下のとおりである。
【0015】
(1)マルトールおよびフラネオールのLC/MS測定条件
(LC分離条件)
HPLC装置:Prominence UFLC(島津製作所社製)
カラム:L-column2 ODS (2.1 mm x 150 mm, 5.0 μm)
カラム温度:40℃
移動相A :0.1%ギ酸水溶液
移動相B :アセトニトリル
A:B = 85:15(0 min)→60:40(10 min)
流速:0.2 mL/min
注入量:5 μL
(質量分析条件)
質量分析装置:4500Qtrap(AB SCIEX製)
イオン化法:ESI
定量イオン:マルトール Q1/Q3=127.0/43.0
フラネオール Q1/Q3=129.0/57.0
【0016】
(2)βダマセノンのLC/MS測定条件
(LC分離条件)
装置:1290 Infinity(Agilent Technologies社製)
カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18 (2.1 mm x 100 mm, 1.8 μm)
カラム温度:40℃
移動相A :0.1%ギ酸+10 mMギ酸アンモニウム水溶液
移動相B :アセトニトリル
A:B = 90:10(0 min)→0:100(10 min)
流速:0.2 mL/min
注入量:5 μL
(質量分析条件)
質量分析装置:6460 Triple Quadrupole LC/MS(Agilent Technologies社製)
イオン化法:ESI
定量イオン:βダマセノン Q1/Q3=191.1/69.1
【0017】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、マルトールの含有量(単位:mg/L)と、フラネオールの含有量(単位:mg/L)との比〔マルトール/フラネオール〕としては、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、よりさらに好ましくは0.50以上、特に好ましくは1.20以上であり、また、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは600以下、よりさらに好ましくは300以下、よりさらに好ましくは200以下、よりさらに好ましくは100以下、よりさらに好ましくは50以下、よりさらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
【0018】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、マルトールの含有量(単位:mg/L)と、βダマセノンの含有量(単位:mg/L)との比〔マルトール/βダマセノン〕としては、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上、よりさらに好ましくは1.50以上、特に好ましくは3.00以上であり、また、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは600以下、よりさらに好ましくは300以下、特に好ましくは200以下である。
【0019】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、フラネオールの含有量(単位:mg/L)と、βダマセノンの含有量(単位:mg/L)との比〔フラネオール/βダマセノン〕としては、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上、よりさらに好ましくは1.00以上、特に好ましくは2.00以上であり、また、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下、よりさらに好ましくは150以下、特に好ましくは100以下である。
【0020】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のカロリーは、360mL当たり5kcal未満である。このような低カロリー飲料とすることによって、健康意識の高い消費者に受け入れやすい飲料を提供できる。カロリーは、原材料(たとえば、麦芽、麦等の穀物、ホップなど)の配合組成、配合量等を調整することによって制御できる。
なお、ビールテイスト飲料のカロリーは、定量した各種栄養成分の量に、それぞれの成分のエネルギー換算係数(タンパク質:4kcal/g、脂質:9kcal/g、糖質:4kcal/g、食物繊維:2kcal/g、アルコール:7kcal/g、有機酸:3kcal/g)を乗じたものの総和として算出することができる。
【0021】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のpHは、特に限定されないが、好ましくは4.0未満であり、また、微生物の発生を抑制し、香味を向上させた飲料とする観点から、好ましくは2.0以上である。
【0022】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の総エキス量は、特に限定されないが、軽快な飲み口が付与された飲料とする観点から、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.1重量%以下、さらに好ましくは0.80重量%以下、よりさらに好ましくは0.50%未満である。
なお、本明細書における「総エキス量」は、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める「ビール分析法 7.2 エキス」に従い測定したエキス値(質量%)を意味する。
【0023】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色や黄金色、黒ビールのような黒色、又は、無色透明であってもよく、あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
本明細書において、色度は、European Brewery Convention(EBC)で定められた方法で測定できる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色度は特に限定されないが、好ましくは0.5EBC以上であり、より好ましくは1EBC以上、さらに好ましくは2EBC以上、さらに好ましくは3EBC以上、さらに好ましくは4EBC以上、特に好ましくは5EBC以上である。また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の色度は、好ましくは100EBC以下であり、より好ましくは75EBC以下であり、さらに好ましくは50EBC以下であり、さらに好ましくは25EBC以下であり、さらに好ましくは20EBC以下であり、特に好ましくは15EBC以下である。
【0024】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、飲料が容器に詰められた態様であればよく、容器の例としては、例えば、ビン、ペットボトル、缶、又は樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビン又はペットボトルが好ましい。
【0025】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料は、水と共に麦芽を用いてもよく、また、麦芽を用いなくてもよい。さらにホップを用いてもよく、その他に、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、ビタミン、ミネラル、保存料等を用いてもよい。
【0026】
原材料として麦芽を用いる場合、当該麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。
本発明の一態様においては、用いる麦芽としては、大麦麦芽が好ましい。大麦麦芽は、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0027】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物を用いてもよい。
そのような穀物としては、例えば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、およびそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。
【0028】
なお、麦芽を用いない場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の上述の穀物等のアミノ酸含有材料としての窒素源を用いた、ビールテイスト飲料が挙げられる。
【0029】
本発明の一態様で用いるホップの形態としては、例えば、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等のホップ加工品を用いてもよい。
ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料全量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0030】
本発明の一態様の飲料は香料であるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンを含有する。本明細書中、「香料」とは、一般に、飲食品の製造や貯蔵中に失われる好機や香味を補ったり、飲食品に新たな風味を付与するために用いられるものである。たとえば、飲料の原材料表示に「香料」として標記が求められている化合物は、本明細書における「香料」である。
【0031】
本発明の一態様の飲料は、マルトール、フラネオールおよびβダマセノンは、これらの化合物またはこれらを含む混合物を添加する方法、原材料から生成される量を調整する方法、これらを併用する方法等を用いて製造できる。
また、本発明の一態様の飲料において、天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンは、天然原料を用いに含まれる糖とアミノ酸を含む原材料混合物を煮沸することによるアミノカルボニル反応によって生成することができる。したがって、原材料混合物における糖およびアミノ酸の含有量の調整、原材料混合物の煮沸時間および煮沸温度の調整によるアミノカルボニル反応の反応時間と反応速度の制御等によって、天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンの生成量を調整できる。
また、天然原料を起源原料とする天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンからなる1以上を含む組成物(精油など)や化合物を原飲料に添加することによって、各成分の含有量を調整することも可能である。
【0032】
本発明の一態様の飲料において、マルトール、フラネオールおよびβダマセノン以外の香料をさらに用いてもよい。本発明の一態様の飲料に用いることができる香料としてはエステルや高級アルコール等が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、酢酸イソアミル、n-プロパノール、イソブタノール、およびアセトアルデヒド等が挙げられる。
また、消費者の天然志向への意識の高まりから、本発明の一態様の飲料は、香料として有効な化合物や当該化合物を含む組成物を化学的に合成して得られる「人工香料」を含まないことが好ましい。「人工香料」とは天然香料ではない香料を意味する。「人工香料」は米国のFDAの21 CFR 101.22に規定された「artificial flavor」に該当する。
なお、「人工香料を含まない飲料」とは、特定の意図をもって人工香料を配合した飲料を除外する規定であり、不可避的に人工香料が含まれた飲料までを除外はしていない。
ただし、不可避的に人工香料が含まれた飲料においても、その人工香料の含有量は極力少ないほど好ましい。具体的な人工香料の含有量は、飲料中に含まれる天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンの合計100質量部に対して、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~1質量部、さらに好ましくは0~0.1質量部、よりさらに好ましくは0~0.01質量部、特に好ましくは0質量部(検知されない)である。
【0033】
本明細書において「甘味料」とは飲料に甘みを与える原材料を意味する。一般的に、ビールテイスト飲料に用いることができる甘味料は天然甘味料と人工甘味料に分けられる。天然甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸または酵素等で分解・精製した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等が挙げられる。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、および酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオースおよびこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオヘスペリジンDC、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、アリテーム、タウマチン、シクラメート、グリシリジン等が挙げられる。
また、「甘味料」は飲料に甘みを与える原材料であるから、原材料に由来する糖類等は本明細書の「甘味料」に該当しない。したがって、たとえばビールテイスト飲料において麦芽やカラメル色素等の原材料に由来する単糖、二糖、三糖以上の糖等の糖類、原材料に由来するデンプン、糖アルコール等の糖質等は、本明細書の「甘味料」に含まれない。
【0034】
不自然な風味を付与しないため、本発明の一態様の飲料は、人工甘味料を含有しないことが好ましい。
なお、「人工甘味料を含まない飲料」とは、特定の意図をもって人工甘味料を配合した飲料を除外する規定であり、不可避的に人工甘味料が含まれた飲料までを除外はしていない。
ただし、不可避的に人工甘味料が含まれた飲料においても、その人工甘味料の含有量は極力少ないほど好ましい。具体的な人工甘味料の含有量は、飲料中に含まれるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンの合計100質量部に対して、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~1質量部、さらに好ましくは0~0.1質量部、よりさらに好ましくは0~0.01質量部、特に好ましくは0質量部(検知されない)である。
【0035】
さらに、本発明の一態様の飲料は、甘味料を含有しないことが好ましい。
なお、「甘味料を含まない飲料」とは、特定の意図をもって甘味料を配合した飲料を除外する規定であり、不可避的に甘味料が含まれた飲料までを除外はしていない。
ただし、不可避的に甘味料が含まれた飲料においても、その甘味料の含有量は極力少ないほど好ましい。具体的な甘味料の含有量は、飲料中に含まれるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンの合計100質量部に対して、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~1質量部、さらに好ましくは0~0.1質量部、よりさらに好ましくは0~0.01質量部、特に好ましくは0質量部(検知されない)である。
【0036】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の脂質の含有量は350mL当たり0.5g未満であることが好ましい。ビールテイスト飲料に含まれる脂質の多くは、主原料である麦芽由来であり、麦芽中、ビール製造工程中およびビールテイスト飲料製造工程中において、脂肪酸、トリグリセリド等の中性脂質、糖脂質、りん脂質などの複合脂質や澱粉粒との結合脂質等の種々の形態をとって存在している。これらの脂質の含有量を減少させるために、(1)原料穀物より脂質を多く含む胚芽の除去(精白)、(2)原料穀物からのエタノール抽出による除去、(3)脂質分解酵素による原料穀物の前処理(特公昭48-22478号公報、特開昭62-55069号公報)あるいは製造工程中での脂質分解酵素の添加(特公昭59-21594号公報)、(4)分離・濾過方法による除去、(5)ビールの原料の麦芽に、脂質を除去処理した麦芽を用いる(特開平5-137555号公報)、(6)脂質を含む原材料穀物の削減等の方法などが挙げられる。
また、脂質の含有量の測定方法は、マックモレイ、モリソンらによる方法(MacMurray 、 Morrisonn著、Journal of the Science of Food and Agriculture 21巻、520 頁 (1970))により行うことができる。
【0037】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のタンパク質の含有量は350mL当たり0.5g未満であることが好ましい。タンパク質含有量は、改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定することができる。
タンパク質の含有量は、原材料におけるタンパク質含有原材料(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等の麦類およびそれの麦芽、小麦タンパク、大豆たんぱく、エンドウタンパク、これらの分解物など)の使用量、発酵条件(発酵工程を含む場合)によって、調整できる。また、原料として別途用いたタンパク質を含んでいてもよい。
【0038】
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリン又はポリデキストロースが好ましい。
【0039】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、苦味は、ホップ等によって付与することが好ましいが、ホップと共に、もしくは、ホップに代えて、苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料又は苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与剤として用いられるものが使用でき、例えば、ニガヨモギ、ナリンジン、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、クワシン、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物、香辛料抽出物等が挙げられる。
本発明の一態様のビールテイスト飲料の苦味価は、好ましくは5BUs以上が、さらに好ましくは、さらに好ましくは7BUs以上、さらに好ましくは10BUs以上、特に好ましくは12.5BUs以上である。また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の苦味価は、好ましくは50BUs以下、さらに好ましくは45BUs以下、さらに好ましくは40BUs以下、さらに好ましくは35BUs以下、特に好ましくは32BUs以下である。
「苦味価」とは、イソフムロンなどのイソα酸類によってもたらされる苦味の指標である。苦味価は、EBCのAnalytica-EBC標準法に従って測定することができる。例えば、脱ガスしたサンプルに酸を加えた後イソオクタンで抽出し、得られたイソオクタン層の吸光度をイソオクタンを対照にして275nmで計測し、ファクターを乗じて苦味価(BU)を得ることができる。
【0040】
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、およびカテキン等が挙げられる。
【0041】
酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、乳酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン又はそれらの塩を用いることができる。
これらの酒石酸以外の酸味料の中でも、乳酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、乳酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、酢酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リン酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、炭酸水との混和によって加えてもよく、または原料液に炭酸ガスを直接添加してもよい。
【0043】
ビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスの量は、飲料の炭酸ガス圧によって表されるが、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。典型的には、飲料の炭酸ガス圧の上限は0.700w/w%、好ましくは0.650w/w%、さらに好ましくは0.600w/w%、下限は0.200w/w%、好ましくは0.300w/w%、さらに好ましくは0.400w/w%であり、これらの上限および下限のいずれを組み合わせてもよい。例えば、飲料の炭酸ガス圧は、0.200w/w%以上0.700w/w%以下、0.300w/w%以上0.650w/w%以下、または、0.400w/w%以上0.600w/w%以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0044】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、およびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0045】
2. ビールテイスト飲料の製造方法
本発明のビールテイスト飲料の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、下記工程(1)~(3)を有する方法が挙げられる。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、飲料前液を得る工程。
・工程(2):前記飲料前液に、炭酸ガスを加える工程。
・工程(3):マルトール、フラネオールおよびβダマセノンの含有量を調整する工程。
以下、上記の各工程について説明する。
【0046】
<工程(1)>
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、飲料前液を得る工程である。
例えば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水および麦芽を含む各種原材料を仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加する。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、食物繊維、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等を加えてもよい。
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。糖化処理の温度および時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水および麦芽以外の原材料等によって適宜調整する。糖化処理後に、濾過を行い、糖化液が得られる。
【0047】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
その後、清澄タンクにて凝固タンパク等の固形分を取り除くための固形分除去処理を行うことが好ましい。このようにして、飲料前液が得られる。
なお、上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等を加えて煮沸処理を行い、飲料前液を調製してもよい。
【0048】
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、食物繊維、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、飲料前液を調製してもよい。
ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0049】
なお、工程(1)の後に、酵母を用いた発酵工程を行い、当該発酵工程で生じたアルコールを除去する処理を行い、エタノール濃度を0.5(v/v)%未満、より好ましくは0.1(v/v)%未満、さらに好ましくは0.01(v/v)%未満、よりさらに好ましくは0.005(v/v)%未満)とした発酵飲料とする工程を行い、ビールテイスト飲料を製造してもよい。
一方で、本発明の一態様の製造方法において、上記の発酵工程およびアルコールを除去する工程を行わない方法であってもよい。
【0050】
<工程(2)>
工程(2)は、記飲料前液に、炭酸ガスを加える工程である。
炭酸ガスを加える方法について、炭酸飲料を製造する際に適用される公知の方法を用いることができる。公知の方法を用いて、炭酸ガス圧が上述の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0051】
<工程(3)>
工程(3)は、マルトール、フラネオールおよびβダマセノンの含有量を調整する工程である。
工程(3)は、工程(1)の糖化処理の前後、煮沸処理の前後、および固形分除去処理の前後のいずれに行ってもよく、また、工程(1)終了後の工程(2)の前後で行ってもよい。ただし、最終的に製造される飲料中の含有量を正確に調整する観点から、工程(1)終了後であって、工程(2)開始前に行うことが好ましい。
【0052】
工程(3)において、調整前の飲料中のマルトール、フラネオールおよびβダマセノンの含有量を測定し、その測定値の基づき、これらの成分をそれぞれ添加、もしくは水を加えて希釈して、各成分の含有量が上述の範囲となるように調整を行うことが好ましい。なお、調整前の飲料中の原材料に由来する天然マルトール、天然フラネオールおよび天然βダマセノンの存在によって、すでにこれらの3成分の含有量が所望の範囲内である場合には、本工程によるマルトール、フラネオールおよびβダマセノンの添加や水を加えて希釈するといった操作は不要である。
【0053】
これらの工程後、貯酒工程およびろ過工程等の当業者に周知のビールテイスト飲料の製造で行われる工程を行ってもよい。
【0054】
このようにして得られた本発明の一態様のビールテイスト飲料は、所定の容器に充填され、製品として市場に流通する。
飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明のビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、上述のとおりである。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0056】
実施例1~15、比較例1~6
水、麦芽、ホップを原料として用い、糖化処理を経て得られた麦汁に、酵母を用いた発酵工程を行わずに、表1~4に記載の含有量となるように、着色料(カラメル色素)、酸化防止剤(アスコルビン酸)、および酸味料(乳酸、リン酸)を添加し、炭酸ガスを添加して、pHが4.0未満であり、エタノール濃度が0.0050(v/v)%未満のビールテイスト飲料を調製した。
【0057】
得られたビールテイスト飲料について、日頃から訓練を受けた7人のパネラーが、「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」について、下記のスコア基準に基づき、3.0(最大値)~1.0(最小値)の範囲で、1.0刻みのスコアにて官能評価を行った。評価に際しては、下記基準「3.0」、「2.0」、および「1.0」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。表1~4には、各パネラーのスコアの平均値を記載している。なお、表1~4のいずれの評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[ビールテイスト飲料として不適な嫌な甘みのスコア基準]
・「3.0」:不適な嫌な甘みが全く感じられない。
・「2.0」:不適な嫌な甘みがわずかに感じられる。
・「1.0」:不適な嫌な甘みが強く感じられる。
[ビールらしい味わいのスコア基準]
・「3.0」:ビールらしい良好な味わいが強く感じられる。
・「2.0」:ビールらしい良好な味わいがある程度感じられる。
・「1.0」:ビールらしい良好な味わいが感じられない。
【0058】
また、上記の3つの官能評価項目についての各パネラーのスコアの平均値から、以下の評価基準にて、それぞれのビールテイスト飲料の総合評価を行った。その結果は、表1~4に示すとおりであった。
[総合評価]
・「〇」:「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」の2つの官能評価項目の各パネラーのスコアの平均値がいずれも2.5以上である。
・「×」:「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」の2つの官能評価項目の各パネラーのスコアの平均値のどちらか1つが2未満である。
・「△」:「○」と「×」に該当しない。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表1に示すとおり、フラネオール、およびβダマセノンの含有量を固定し、マルトールの含有量を0.01~10mg/Lの範囲内に調整した飲料を製造した。これによって、マルトールが所定の範囲内にあるときに「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」が一定の評価以上であった。
また、表2に示すとおり、マルトール、およびβダマセノンの含有量を固定し、フラネオールの含有量を0.001~4mg/Lの範囲内に調整した飲料を製造した。これによって、フラネオールが所定の範囲内にあるときに「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」が一定の評価以上であった。
さらに、表3に示すとおり、マルトール、およびフラネオールの含有量を固定し、βダマセノンの含有量を0.001~1mg/Lの範囲内に調整した飲料を製造した。これによって、βダマセノンが所定の範囲内にあるときに「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」が一定の評価以上であった。
また、表4に示すとおり、本発明の飲料に含まれるマルトールの含有量0.05~8.00mg/L、フラネオールの含有量0.005~3.00mg/L、およびβダマセノンの含有量0.005~0.80mg/Lのそれぞれの最小値および最大値近辺においても、「不適な嫌な甘み」、および「ビールらしい味わい」が一定の評価以上であった。