(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】内視撮像装置、内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/01 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B1/01 511
(21)【出願番号】P 2022007122
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祐貴
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/112975(WO,A1)
【文献】特開2022-000141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0127959(US,A1)
【文献】特表2002-543938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0338064(US,A1)
【文献】特開2008-022939(JP,A)
【文献】国際公開第2020/178634(WO,A1)
【文献】特表2010-506669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される曲線状のカテーテルに挿入可能な、曲線状に形成されたカメラシャフトと、
前記カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、
を備え
、
前記カメラシャフトは、形状記憶合金によって曲線状に形成され、
前記カメラシャフトには、前記形状記憶合金からなる形状記憶合金管が設けられ、その少なくとも先端側に螺旋状の切れ目が設けられる
、
内視撮像装置。
【請求項2】
前記カメラシャフトの曲率は、前記カテーテルの曲率より小さい、請求項1に記載の内視撮像装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金は、前記カメラシャフトの先端部には設けられず、
当該先端部には、前記撮像素子の外周を被覆する先端カバーが設けられる、
請求項
1または2に記載の内視撮像装置。
【請求項4】
前記螺旋状の切れ目のピッチは、前記形状記憶合金管の基端側から先端側に向かって小さくなる部分を有する、請求項
1から3のいずれかに記載の内視撮像装置。
【請求項5】
体内に挿入されるカテーテルと、
当該カテーテルに挿入可能なカメラシャフトと、
当該カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、
前記カテーテルの先端部に位置し、前記撮像素子によって撮像可能な方向指標と、
を備え
、
前記カテーテルは、前記カメラシャフトを挿入可能なカメラチャンネルと、医療器具を挿入可能な器具チャンネルと、を更に備え、
前記方向指標は、前記カメラチャンネルの先端部、前記器具チャンネルの先端部、前記器具チャンネルの先端部から出た医療器具の少なくともいずれかである
、
内視鏡。
【請求項6】
前記カテーテルの先端部に対する前記撮像素子の位置を、基端側の第1位置と先端側の第2位置の間で切替可能なカメラ位置切替部を更に備え、
前記方向指標は、少なくとも前記第1位置にある前記撮像素子によって撮像可能である、
請求項
5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記撮像素子によって撮像された前記方向指標に基づいて、当該撮像素子の前記カテーテルに対する方向を検知するカメラ方向検知部と、
検知された前記撮像素子の方向に応じて、当該撮像素子によって撮像された画像を加工する画像加工部と、
を更に備える請求項
5または6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記画像加工部は、検知された前記撮像素子の方向が所定方向と一致するように、当該撮像素子によって撮像された画像を回転させる、請求項
7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記画像加工部は、回転させる前記画像を当該回転中心の周りに切り出す、請求項
8に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記画像加工部は、前記撮像素子によって撮像された前記方向指標の方向を、当該撮像素子によって撮像された画像に表示する、請求項
7から
9のいずれかに記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡を構成する内視撮像装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラシャフトの先端部に撮像素子が設けられる内視撮像装置(カメラ)であって、カメラシャフトを挿入可能なカテーテル(以下ではシースともいう)から分離可能なものが開示されている。内視撮像装置が取り付けられたカテーテルは内視鏡を構成し、カテーテルと共に体内に挿入されたカメラシャフトの先端部において露出される撮像素子によって体内の診断部位や治療部位を撮像する。使用後の内視撮像装置は単回使用が一般的なシースから取り外し可能であり、所定使用回数を超えない範囲で同種の他のシースに再利用できる。高価な内視撮像装置(または撮像素子)を再利用することで、手技当たりの費用を大幅に低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、カテーテルのカメラチャンネルに挿入される内視撮像装置が、当該カメラチャンネル内で予期しない方向に回転してしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、カテーテル内での回転を低減できる内視撮像装置等を提供することにある。あるいは、本発明は、カテーテル内で内視撮像装置が回転した場合でも、撮像された画像の方向の誤認を防止できる内視鏡等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の内視撮像装置は、体内に挿入される曲線状のカテーテルに挿入可能な、曲線状に形成されたカメラシャフトと、カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、を備える。
【0007】
この態様では、曲線状のカメラシャフトが同じく曲線状のカテーテルによってガイドされるため、カテーテル内でのカメラシャフトの回転を低減できる。
【0008】
本発明の別の態様は、内視鏡である。この内視鏡は、体内に挿入される曲線状のカテーテルと、当該カテーテルに挿入可能な曲線状に形成されたカメラシャフトと、当該カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様もまた、内視鏡である。この内視鏡は、体内に挿入されるカテーテルと、当該カテーテルに挿入可能なカメラシャフトと、当該カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、カテーテルの先端部に位置し、撮像素子によって撮像可能な方向指標と、を備える。
【0010】
この態様では、撮像素子によって撮像される方向指標に基づいて、カテーテル内でカメラシャフトが回転した場合でも、撮像素子によって撮像された画像の方向の誤認を防止できる。
【0011】
本発明の更に別の態様もまた、内視鏡である。この内視鏡は、体内に挿入されるカテーテルと、当該カテーテルに挿入可能なカメラシャフトと、当該カメラシャフトの先端部に設けられる撮像素子と、を備える内視鏡であって、カテーテルにおいてカメラシャフトを挿入可能なカメラチャンネルの少なくとも一部の断面形状と、当該カメラシャフトの少なくとも一部の断面形状は、非円形の略相似形状である。
【0012】
この態様では、略相似形状の断面を有するカメラチャンネルおよびカメラシャフトによって、カメラチャンネル内でのカメラシャフトの回転を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カテーテル内での内視撮像装置の回転を低減できる。あるいは、本発明によれば、カテーテル内で内視撮像装置が回転した場合でも、撮像された画像の方向の誤認を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】カテーテルの先端部の先端面の平面図である。
【
図4】カメラ位置切替部によってカメラヘッドを基端側の第1位置と先端側の第2位置の間で切り替える様子を示す。
【
図5】胆道鏡から取り外された状態のカメラを示す。
【
図6】第1実施形態に係る胆道鏡におけるカテーテルとカメラの先端側を示す。
【
図7】第1実施形態に係る胆道鏡におけるカテーテルとカメラの先端側を示す。
【
図8】形状記憶合金に曲線形状を記憶させる前のカメラシャフトの先端側の詳細を示す。
【
図9】第2実施形態に係る胆道鏡におけるカテーテルおよびカメラの一つの断面を示す。
【
図10】第3実施形態に係る胆道鏡を、カメラの基端部に設けられるコネクタに接続される体外のコンピュータ等で実現される機能ブロックと共に示す。
【
図11】画像加工部による画像加工処理の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明または図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限りは限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態が適用される胆道鏡100の全体を示す。胆道鏡100は、総胆管や膵管の内部を撮像する内視鏡である。胆道鏡100は、口等から体内に挿入される長尺の管状のカテーテル10またはシースを備える。カテーテル10の先端部(
図1における下端部)には、CMOSイメージセンサ等の撮像素子を備える内視撮像装置としてのカメラ30のカメラヘッドが露出可能に設けられる。口等から十二指腸内に挿入されたカテーテル10は、十二指腸に面したファーター乳頭を通じて総胆管や膵管の内部に挿入される。この状態で、カテーテル10の先端部において露出したカメラヘッドが、総胆管や膵管の内部の動画像や静止画像等の画像を診断や治療のために撮像する。
【0017】
ここで、口等から十二指腸内に挿入された不図示の十二指腸内視鏡の鉗子チャンネル等に胆道鏡100のカテーテル10を挿入することで、胆道鏡100を十二指腸まで確実にガイドできると共に、十二指腸内視鏡から得られる画像を確認しながら胆道鏡100を狭いファーター乳頭内に確実に挿入できる。なお、カテーテル10をファーター乳頭内に挿入する前に、十二指腸内視鏡のワイヤルーメンを通じてカテーテル10より小径のガイドワイヤをファーター乳頭内に挿入し、当該ガイドワイヤを通じてガイドされたバルーンカテーテルによってファーター乳頭を予め拡張してもよい。
【0018】
胆道鏡100またはカテーテル10の基端側(
図1における上端側)または体外側には、胆道鏡100の操作等のためのハンドル部20が設けられる。ハンドル部20は、医者等の操作者が把持する把持部21と、操作者がカテーテル10の少なくとも先端部を任意の方向に湾曲させて位置を調整するための二つの回転操作部25、26を備える。前述のようにカテーテル10の先端部にはカメラ30のカメラヘッドが配置されているため、二つの回転操作部25、26の回転操作によってカメラ30による撮像部位や撮像範囲を任意に変えられる。
【0019】
後述するように、カテーテル10またはシースの内部には、カメラヘッドが先端部に設けられる小径のカメラシャフトが挿入されるカメラチャンネル13と、総胆管や膵管の内部の検査や治療のための各種の医療器具が挿入される大径の器具チャンネルとしての鉗子チャンネル17が設けられる。ハンドル部20には、カテーテル10のカメラチャンネル13に連通するカメラポート23と、カテーテル10の鉗子チャンネル17に連通する鉗子ポート27が設けられる。すなわち、カメラヘッドが先端部に設けられる小径のカメラシャフトは、カメラポート23からシース10内(カメラチャンネル13内)に挿入され、各種の医療器具は、鉗子ポート27からシース10内(鉗子チャンネル17内)に挿入される。
【0020】
図2はカテーテル10の先端部の側面図であり、
図3はカテーテル10の先端部の先端面15の平面図である。
図3に示されるように、カテーテル10の断面は略円形であり、それぞれ略円形の断面のカメラチャンネル13、鉗子チャンネル17、二つの送気/送水チャンネル14が設けられる。カメラチャンネル13、鉗子チャンネル17、送気/送水チャンネル14は、それぞれシース10内を通って体外と連通している。前述のように、カメラチャンネル13はカメラポート23に連通し、鉗子チャンネル17は鉗子ポート27に連通し、送気/送水チャンネル14は鉗子ポート27に設けられる送気/送水ポートに連通している。
【0021】
カメラチャンネル13には、カメラヘッド31が先端部に設けられる小径で長尺のカメラシャフトが挿入される。カメラヘッド31は内視撮像装置としてのカメラ30の先端部を構成し、撮像素子としてのCMOSイメージセンサ311を備える。カメラヘッド31またはCMOSイメージセンサ311は、カメラシャフト内および
図1のカメラコネクタ50から体外に延びるカメラケーブル35内を通る導線によって、体外の電源やコンピュータ等に接続されている。この導線を通じて、体外の電源からのCMOSイメージセンサ311への電力の供給、体外のコンピュータ等の制御装置からのCMOSイメージセンサ311への制御信号の伝送、CMOSイメージセンサ311によって撮像された画像信号の体外のコンピュータやモニタ等への伝送、等が行われる。なお、体外のコンピュータ等とCMOSイメージセンサ311の間の制御信号や画像信号の伝送は、導線を介さずにBluetooth(登録商標)等によって無線で行ってもよい。
【0022】
CMOSイメージセンサ311の受光面が矩形(典型的には正方形)であるのに対し、それを外接するように包含するカメラヘッド31の先端面(カメラ30またはカメラシャフトの先端面でもある)は円形である。このようなカメラヘッド31の円形の外周とCMOSイメージセンサ311の矩形の外周の間の領域には、複数の光ファイバ(不図示)がCMOSイメージセンサ311の外周を囲むように設けられる。これらの光ファイバは、CMOSイメージセンサ311に接続されている導線と同様にカメラシャフト内を通って
図1のカメラポート23外まで延び、体外の光源に接続されている。この光源からの光が光ファイバの先端面から照射され、CMOSイメージセンサ311の撮像範囲を照明するため、診断部位や治療部位の鮮明な画像が得られる。
【0023】
鉗子チャンネル17には、鉗子等の処置具が先端部に設けられた各種の医療器具が挿入される。送気/送水チャンネル14は、鉗子ポート27に設けられる送気/送水ポートから診断部位や治療部位への送気や送水を行う。小径のカメラチャンネル13と大径の鉗子チャンネル17は、それぞれの中心がカテーテル10の先端面15の中心と一直線上(
図3では鉛直線上)に配置されるように整列される。
図3では、カメラチャンネル13と鉗子チャンネル17が上下に整列配置され、その左右における上側(小径のカメラチャンネル13側)の領域に二つの送気/送水チャンネル14が対称に配置される。
【0024】
図3において、カテーテル10またはシースの径は、1.1mmと7.0mmの間(例えば3.6mm)であり、カメラチャンネル13の径は、0.7mmと3.0mmの間(例えば1.1mm)であり、鉗子チャンネル17の径は、0.3mmと3.0mmの間(例えば2.0mm)である。カメラチャンネル13に挿入されるカメラシャフトおよびカメラヘッド31の径は、カメラチャンネル13の径より僅かに小さく、0.6mmと2.9mmの間(例えば1.0mm)である。また、鉗子チャンネル17の径を2.0mm以上とすれば、径が1.8mmの一般的な鉗子または医療器具に対応できる。一方、カメラチャンネル13の径は、CMOSイメージセンサ311の小型化に応じて小さくできる。このように、本実施形態によれば、一般的な鉗子または医療器具に対応可能な最低限の鉗子チャンネル17の径(例えば2.0mm以上)を維持しながら、カメラチャンネル13の径を最小化(例えば1.1mm以下)できるため、狭いファーター乳頭も容易に通過可能な十分に細いカテーテル10を実現できる。
【0025】
図2に示されるように、内視撮像装置としてのカメラ30の先端部を構成するカメラヘッド31は、カテーテル10の先端面15から更に先端側に突出可能および露出可能に設けられる。このように、カメラヘッド31またはCMOSイメージセンサ311が、カテーテル10の先端面15より先端側に突出した位置を、以下では第2位置ともいう。これに対して、カメラヘッド31またはCMOSイメージセンサ311は、カテーテル10の先端面15より基端側に後退した位置(以下では第1位置ともいう)を取ることもできる。第1位置と第2位置の切り替えは、カメラコネクタ50に併設されるカメラ位置切替部53(
図5)によって操作者が行える。
【0026】
図4Aおよび
図4Bは、カメラ位置切替部53によってカメラヘッド31を基端側の第1位置と先端側の第2位置の間で切り替える様子を示す。
図4Aでは、カメラヘッド31がカテーテル10の先端面15から基端側に後退した第1位置にあり、
図4Bでは、カメラヘッド31がカテーテル10の先端面15から先端側に突出した第2位置にある。カテーテル10の先端面15と第1位置の間の後退距離は、例えば1.5mmと20mmの間であり、カテーテル10の先端面15と第2位置の間の突出距離は、例えば0.5mmと80mmの間である。
【0027】
カメラヘッド31のCMOSイメージセンサ311によって診断部位や治療部位を撮像する際には
図4Bの第2位置が取られる一方で、カテーテル10の先端部を撮像部位としての総胆管や膵管の内部に挿入する際には、カテーテル10を十二指腸までガイドする十二指腸内視鏡の内壁、オッディ括約筋(または胆膵管膨大部括約筋)によって狭窄されているファーター乳頭、総胆管や膵管の内壁等にカメラヘッド31が接触しないように、カメラヘッド31がカテーテル10またはシース内に収納された
図4Aの第1位置が取られる。このようなカメラ位置切替部53によるカメラヘッド31の位置切替機構は、2020年3月23日に出願された国際出願PCT/JP2020/012793(国際公開第2021/191989号)に開示されており、その全内容が参照によって本書に援用される。
【0028】
内視撮像装置としてのカメラ30は、カテーテル10または胆道鏡100に対して着脱可能である。
図5は、胆道鏡100から取り外された状態のカメラ30を示す。カメラ30は、先端部(
図5における左端部)にカメラヘッド31が設けられる小径(0.6mmと2.9mmの間)で長尺の管状のカメラシャフト32と、当該カメラシャフト32の基端部(
図5における右端部)に接続されるカメラコネクタ50と、当該カメラコネクタ50とカメラ30の基端部に設けられるコネクタ33の間を電気的に接続するカメラケーブル35を備える。前述のように、カメラ30の先端部においてカメラヘッド31のCMOSイメージセンサ311に接続されている導線は、カメラシャフト32内およびカメラケーブル35内を通り、コネクタ33を介して体外の電源、コンピュータ、モニタ等に接続されている。
【0029】
図1に示されるように、カメラコネクタ50は、胆道鏡100のカメラポート23に対して着脱可能である。但し、前述の国際出願PCT/JP2020/012793で開示されているように、カメラヘッド31がカテーテル10の先端面15から突出しうる状態(
図4B)でカメラシャフト32がカテーテル10(カメラチャンネル13)に挿入されることを規制する装着規制機構が設けられる。これによって、カメラヘッド31がカテーテル10の先端面15から突出しない位置、すなわち前述の第1位置(
図4A)にある場合に限って、カメラ30(カメラコネクタ50)を胆道鏡100(カメラポート23)に装着できる。
【0030】
カメラヘッド31の第1位置と第2位置の切り替えは、カメラコネクタ50に併設されるカメラ位置切替部53の回転操作によって行われる。カメラ位置切替部53を第1方向に回転させると、カメラヘッド31が第1位置(
図4A)に移動すると共に、カメラコネクタ50に設けられるスライド部材52が基端側(
図5における右側)に移動する。また、カメラ位置切替部53を第1方向と逆の第2方向に回転させると、カメラヘッド31が第2位置(
図4B)に移動すると共に、カメラコネクタ50に設けられるスライド部材52が先端側(
図5における左側)に移動する。従って、スライド部材52が基端側にある場合に限って、カメラ30(カメラコネクタ50)を胆道鏡100(カメラポート23)に装着できるともいえる。
【0031】
以上のように第1位置(
図4A)で胆道鏡100に装着されたカメラヘッド31は、体内の撮像部位に到達した後にカメラ位置切替部53の第2方向への回転操作によって第2位置(
図4B)に移動して撮像を行う。撮像完了後のカメラヘッド31はカメラ位置切替部53の第1方向への回転操作によって第1位置に戻される。この状態でカテーテル10を体内から抜去することで、カテーテル10の先端面15より基端側に後退したカメラヘッド31が、体内組織や十二指腸内視鏡等の親内視鏡の内壁に接触することを防止できる。更に、使用後のカメラ30は、単回使用が一般的なシース10から取り外される(具体的には、胆道鏡100のカメラポート23からカメラ30が取り外される)。このカメラ30は、所定使用回数(例えば10回)を超えない範囲で、同種の他のシース10または胆道鏡100に再利用できる。高価なカメラ30(またはCMOSイメージセンサ311)を再利用することで、手技当たりの費用を大幅に低減できる。
【0032】
以上のようにカメラ30が着脱可能な胆道鏡100では、カテーテル10のカメラチャンネル13に挿入されたカメラシャフト32が、当該カメラチャンネル13内で回転してしまう可能性がある。そこで、以下の実施形態では、カテーテル10内での回転を低減できるカメラ30および胆道鏡100や、カテーテル10内でカメラ30が回転した場合でも、撮像された画像の方向の誤認を防止できる胆道鏡100を開示する。以下では複数の実施形態を個別に説明するが、特段の支障がない限り各実施形態の一部または全部を任意に組み合わせることができる。
【0033】
図6および
図7は、第1実施形態に係る胆道鏡100におけるカテーテル10(
図6Aおよび
図7A)とカメラ30(
図6Bおよび
図7B)の先端側を示す。カテーテル10は、十二指腸の側壁にあるファーター乳頭を通じて総胆管や膵管の内部に容易に挿入できるように、曲線状に形成されている。なお、前述のように、カテーテル10の先端部16は回転操作部25、26によって任意の方向に湾曲可能であるが、カテーテル10は当該先端部16より基端側のカテーテル本体18も含めて曲線状に形成されている。
図6Aのカテーテル10では曲率が比較的大きく、先端面15がカテーテル10の基端側(
図6における右側)を向く。
図7Aのカテーテル10では曲率が比較的小さく、先端面15がカテーテル10の基端側を向かない。
【0034】
ここで、カメラシャフト32が挿入されるカメラチャンネル13は、曲線状のカテーテル10の外側に設けられ、総胆管や膵管の内部の検査や治療のための各種の医療器具が挿入される鉗子チャンネル17は、曲線状のカテーテル10の内側に設けられている。曲線状のカテーテル10および後述する曲線状のカメラシャフト32において、「外側」とは凸状に突出する側を指し、「内側」とは凹状にへこむ側を指す。カメラチャンネル13および鉗子チャンネル17を示す
図3では、上側が曲線状のカテーテル10の外側に対応し、下側が曲線状のカテーテル10の内側に対応する。このように、カメラチャンネル13は、鉗子チャンネル17より曲線状のカテーテル10の外側に設けられている。このため、僅かではあるがカメラチャンネル13の曲率が鉗子チャンネル17の曲率より小さくなり、カメラシャフト32をカメラチャンネル13に容易に挿入できる。
【0035】
カテーテル10の先端側と同様に、カメラ30またはカメラシャフト32の先端側も、曲線状に形成されている。カメラシャフト32をカメラチャンネル13に挿入する際、曲線状のカメラシャフト32が同じく曲線状のカメラチャンネル13によってガイドされるため、カメラチャンネル13内でのカメラシャフト32の回転を低減できる。このように、本実施形態によれば、着脱可能なカメラ30を所期の方向でカテーテル10または胆道鏡100に挿入できる。なお、カメラシャフト32は、カテーテル10またはカメラチャンネル13のように大きく曲がっていなくても、カメラチャンネル13の曲率に追従可能な程度に曲がっていれば、カメラチャンネル13内で略一定の方向を保つことができる。このため、カメラシャフト32の曲率は、カテーテル10またはカメラチャンネル13の曲率より小さくてよい。
【0036】
ここで、曲率は曲線部の半径(曲率半径)の逆数である。曲率(および曲率半径)はカテーテル10の各部およびカメラシャフト32の各部でそれぞれ変わりうるが、カメラシャフト32がカテーテル10のカメラチャンネル13に挿入された時に同じ位置にくるカテーテル10の各曲線部の曲率とカメラシャフト32の各曲線部の曲率を比較した場合に、概してまたは平均的に前者が後者より大きくなることが好ましい。あるいは、カテーテル10における最大の曲率とカメラシャフト32における最大の曲率を比較した場合に、前者が後者より大きくなることが好ましい。また、カテーテル10とカメラシャフト32の各曲線部の曲率を比較する場合、それぞれの中心軸の曲率を比較するのが好ましい。あるいは、カテーテル10およびカメラシャフト32のそれぞれの内側(最内周)の曲率を比較してもよいし、カテーテル10およびカメラシャフト32のそれぞれの外側(最外周)の曲率を比較してもよい。
【0037】
カメラシャフト32は、金属によって曲線状に形成される。金属としては、NiTi(ニッケルチタン)合金等の形状記憶合金が好適である。
図8は、形状記憶合金等の金属に曲線形状を記憶させる前のカメラシャフト32の先端側の詳細を示す。
図8Aは、カメラシャフト32の外観を示し、
図8Bは、
図8Aにおけるカメラシャフト32の表面のカバー等を透明化した図であり、
図8Cは、
図8Bの先端側を拡大した図である。
図8Aに示されるように、カメラシャフト32の先端部(
図8における左端部)には、カメラヘッド31またはCMOSイメージセンサ311の外周または側面を被覆して保護する円筒状の先端カバー34が設けられる。先端カバー34は硬質の樹脂等によって形成され、その軸方向(
図8における左右方向)の長さは約5mmである。
【0038】
カメラシャフト32の先端部より基端側(
図8における右側)には、先端カバー34から連続するように、後述する形状記憶合金管37等の外周を被覆する円筒状のシャフトカバー36が設けられる。シャフトカバー36の少なくとも先端側は、
図6Aおよび
図7Aにおけるカテーテル10(カメラチャンネル13)の先端部16の内部に位置する。シャフトカバー36を硬質の先端カバー34より軟質の樹脂等によって形成することで、回転操作部25、26によって任意の方向に湾曲可能なカテーテル10の先端部16に追従してカメラシャフト32(シャフトカバー36)が柔軟に湾曲できる。
【0039】
シャフトカバー36によって被覆される内周側には、カメラシャフト32に沿う管状または円筒状の金属管としての形状記憶合金管37が設けられる。形状記憶合金管37は、NiTi合金等の形状記憶合金によって形成された長尺の円管であり、温度や磁界による形状記憶処理によって
図6Bおよび
図7Bで示したようなカメラシャフト32の所期の曲線形状を記憶する。形状記憶合金管37は、硬質の先端カバー34が設けられるカメラシャフト32の先端部(湾曲することが想定されていない)には設けられない。形状記憶合金管37の先端側にはレーザ加工等による螺旋状の切れ目371が設けられる。これによって、回転操作部25、26がカテーテル10の先端部16(
図6Aおよび
図7A)を湾曲させる際に、形状記憶合金管37も追従して柔軟に湾曲できる。螺旋状の切れ目371のピッチは、少なくとも形状記憶合金管37の一部分において、基端側から先端側に向かって徐々にまたは段階的に小さくなっており、回転操作部25、26による湾曲の程度が大きい先端側ほど湾曲しやすくなっている。一方、回転操作部25、26による湾曲の程度が極めて小さい(あるいは全くない)形状記憶合金管37の基端側には螺旋状の切れ目371が設けられない。例えば、螺旋状の切れ目371は形状記憶合金管37の先端から約25mmの範囲に形成され、そこから基端側には形成されない。
【0040】
図8Cに示されるように、カメラヘッド31またはCMOSイメージセンサ311に接続されている複数の導線381およびCMOSイメージセンサ311の周囲に配置されている複数の光ファイバ382は、先端カバー34、シャフトカバー36、形状記憶合金管37の内部を通って、
図1のカメラポート23外まで延びる。
【0041】
図9は、第2実施形態に係る胆道鏡100におけるカテーテル10およびカメラ30(カメラシャフト32)の一つの断面を示す。なお、カテーテル10およびカメラ30の先端面を示す
図3における送気/送水チャンネル14の図示は省略した。本実施形態では、カテーテル10のカメラチャンネル13の少なくとも一部の断面形状と、カメラ30のカメラシャフト32の少なくとも一部の断面形状が、非円形の略相似形状である。
【0042】
図9Aの例では、カメラチャンネル13の少なくとも一部の断面形状と、カメラシャフト32の少なくとも一部の断面形状が略相似の楕円形である。
図9Bの例では、カメラチャンネル13の少なくとも一部の断面形状と、カメラシャフト32の少なくとも一部の断面形状が略相似の多角形(具体的には例えば台形)である。なお、カメラチャンネル13の内周またはカメラシャフト32の外周の一方に長さ方向に延在するガイド溝を設け、当該ガイド溝に嵌まって長さ方向に摺動可能または挿入可能な凸条部をカメラチャンネル13の内周またはカメラシャフト32の外周の他方に設けることで、略相似形状を実現してもよい。略相似形状の断面を有するカメラチャンネル13およびカメラシャフト32によって、カメラチャンネル13内でのカメラシャフト32の回転を低減できるため、着脱可能なカメラ30を所期の方向でカテーテル10または胆道鏡100に挿入できる。
【0043】
なお、略相似形状とは数学的に厳密な相似形状でなくてもよく、カメラチャンネル13内でのカメラシャフト32の回転が有効に制限される程度に類似している形状であればよい。例えば、楕円形断面のカメラチャンネル13に長方形断面のカメラシャフト32を挿入した場合でも、カメラチャンネル13内でのカメラシャフト32の回転が制限されうるため、本明細書における略相似形状の要件を満たす。また、
図9Aや
図9Bのような非円形の断面は、カメラチャンネル13および/またはカメラシャフト32の全長に亘っている必要はなく、長さ方向における少なくとも一箇所に形成されていればよい。なお、カメラチャンネル13の断面が全長に亘って楕円形や多角形に形成されている場合、カメラシャフト32の断面は全長に亘って当該楕円形や当該多角形に包含される略円形とするが、当該カメラシャフト32の長さ方向における少なくとも一箇所の外周に前記楕円形や前記多角形と略相似形状の回転制限ピースを取り付けることで、カメラチャンネル13内でのカメラシャフト32の回転を制限してもよい。
【0044】
図10は、第3実施形態に係る胆道鏡100を、カメラ30の基端部に設けられるコネクタ33に接続される体外のコンピュータ等で実現される機能ブロックと共に示す。画像取得部41は、カメラヘッド31におけるCMOSイメージセンサ311によって撮像され、カメラシャフト32内およびカメラケーブル35内を通る導線を通じて伝送される画像をコネクタ33から取得する。カメラ方向検知部42は、画像取得部41が取得した画像に含まれる後述の方向指標に基づいて、CMOSイメージセンサ311のカテーテル10(
図10では不図示/
図3を参照)に対する方向を検知する。画像加工部43は、カメラ方向検知部42が検知したCMOSイメージセンサ311の方向に応じて、画像取得部41が取得した画像を加工してモニタ40または表示装置に表示する。
【0045】
画像取得部41が取得した画像のカテーテル10に対する方向を示唆する方向指標はカテーテル10の先端部に位置し、胆道鏡100による手技前または手技中にCMOSイメージセンサ311によって撮像される。
図4に方向指標44の例を示す。この方向指標44は、カメラチャンネル13の先端部における内壁のうち鉗子チャンネル17に最も近い部分において長さ方向に延在する線状のマークである。
図4に示されるように、線状の方向指標44は、カテーテル10の先端面15上において、カメラチャンネル13の下端から鉗子チャンネル17の上端を結ぶように延在してもよい。
【0046】
カメラ位置切替部53によって
図4Aの第1位置にあるCMOSイメージセンサ311は、カメラチャンネル13および/または鉗子チャンネル17あるいはカテーテル10の先端部に設けられた線状の方向指標44を撮像できる。そして、カメラ方向検知部42は、画像取得部41が取得した画像に含まれる方向指標44に基づいて、CMOSイメージセンサ311のカテーテル10、カメラチャンネル13、鉗子チャンネル17に対する方向を検知できる。このように、CMOSイメージセンサ311によって撮像される方向指標44に基づいて、カテーテル10内でカメラシャフト32が回転した場合でも、CMOSイメージセンサ311によって撮像された画像の方向の誤認を防止できる。なお、方向指標44は、以上のようなマークに限らず、CMOSイメージセンサ311の方向を示唆する任意の物体や構造でよい。例えば、カメラチャンネル13の先端部自体の輪郭、鉗子チャンネル17の先端部自体の輪郭、カテーテル10の先端面15自体の輪郭、鉗子チャンネル17の先端部から出た医療器具等を方向指標44としてCMOSイメージセンサ311によって撮像してもよい。
【0047】
画像加工部43は、カメラ方向検知部42が検知したCMOSイメージセンサ311の方向に応じて、画像取得部41が取得した画像を加工する。
図11は、画像加工部43による画像加工処理の例を示す。
図11Aは、鉗子チャンネル17等に対してCMOSイメージセンサ311が所期の方向を向いている理想的な場合に、CMOSイメージセンサ311によって撮像されてモニタ40に表示される画像の例を示す。画面の中央に略円形の総胆管BD(Bile Duct)が表示されており、鉗子チャンネル17から導出される医療器具171は画面の中心から正確に下方(鉛直下方)の位置に現れる。これに対して
図11Bでは、カテーテル10内でカメラシャフト32が回転した結果、医療器具171の現れる位置が
図11Aから回転してしまっている。
【0048】
画像加工部43は、第1オプションOP1として示されるように、カメラ方向検知部42が検知したCMOSイメージセンサ311の方向が
図11Aの所期の方向と一致するように、CMOSイメージセンサ311によって撮像された画像を回転させる。この結果、モニタ40には
図11Aと同様の画像が表示される。この際、第2オプションOP2として示されるように、画像加工部43は、第1オプションOP1によって回転させる画像を当該回転中心の周りの所定径範囲内に亘って切り出してもよい。画像を回転させると、元々は矩形だった画像の一部が画面外にはみ出して輪郭が崩れてしまうが、図示のように円形に切り出すことでその影響を除去できる。なお、画像加工部43によって切り出される所定径範囲は、少なくとも撮像対象としての総胆管BDを含む範囲とするのが好ましい。
【0049】
画像加工部43は、第3オプションOP3として示されるように、CMOSイメージセンサ311によって撮像された方向指標44の方向(
図4および
図11の例では鉗子チャンネル17の方向または医療器具171が現れる方向)を、当該CMOSイメージセンサ311によって撮像された画像に表示する。
図11の例では、鉗子チャンネル17の方向または医療器具171が現れる方向が、矢印状の方向表示マークによって示されている。以上のような本実施形態によれば、CMOSイメージセンサ311によって撮像される方向指標44に基づく画像加工処理によって、カテーテル10内でカメラシャフト32が回転した場合でも、CMOSイメージセンサ311によって撮像された画像の方向の誤認を防止できる。
【0050】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0051】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 カテーテル、13 カメラチャンネル、17 鉗子チャンネル、23 カメラポート、27 鉗子ポート、30 カメラ、31 カメラヘッド、32 カメラシャフト、34 先端カバー、37 形状記憶合金管、41 画像取得部、42 カメラ方向検知部、43 画像加工部、44 方向指標、53 カメラ位置切替部、100 胆道鏡、171 医療器具、311 CMOSイメージセンサ、371 切れ目、381 導線、382 光ファイバ。