(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
H01R13/42 B
(21)【出願番号】P 2022036374
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩見 倫和
(72)【発明者】
【氏名】山田 矩久
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/021297(WO,A1)
【文献】特開2018-10787(JP,A)
【文献】特開昭57-61276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の端子と、前記端子を保持する端子ホルダと、前記端子ホルダが装着されるハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子ホルダは、
前記端子の径方向に弾性的に変位可能であり且つ前記端子に係合して前記端子の前記径方向及び軸方向における移動を規制可能な複数の係止部を、前記端子の周方向に並ぶように有し、
前記ハウジングは、
前記端子ホルダの前記複数の前記係止部を前記径方向の内側に向けて押圧する一又は複数の第1押圧部を有
し、
前記ハウジングは、
前記端子を前記径方向の内側に向けて押圧する第2押圧部を、更に有する、
コネクタ。
【請求項2】
棒状の端子と、前記端子を保持する端子ホルダと、前記端子ホルダが装着されるハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子ホルダは、
前記端子の径方向に弾性的に変位可能であり且つ前記端子に係合して前記端子の前記径方向及び軸方向における移動を規制可能な複数の係止部を、前記端子の周方向に並ぶように有し、
前記ハウジングは、
前記端子ホルダの前記複数の前記係止部を前記径方向の内側に向けて押圧する一又は複数の第1押圧部を有し、
前記端子ホルダは、
前記端子を前記径方向の内側に向けて押圧する第3押圧部を、更に有し、
前記第1押圧部と前記第3押圧部とは、前記端子の周方向において互いにオフセットするように配置される、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記端子ホルダは、
前記複数の前記係止部を、前記端子の周方向において等間隔に並ぶように有する、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記複数の前記係止部の各々は、前記端子に向けて延びる係止突起を有する、
コネクタ。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のコネクタにおいて、
前記複数の前記係止部の各々は、片持ち梁状の形状を有する、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の端子と、端子ホルダと、端子ホルダが装着されるハウジングと、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリに車両外部から電力を供給(充電)するための給電用のコネクタが提案されている。給電用のコネクタは、車両外部の電源等に繋がっており、車両に設けられた充電インレットに挿し込まれるように接続される(例えば、特許文献1を参照。)。なお、この種のコネクタは、充電コネクタとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の充電コネクタでは、複数の棒状の端子をハウジングの端子収容室に順に挿入して仮固定(いわゆる仮係止)した後、ハウジングにリアホルダを組み付けることで、複数の端子をハウジングに最終的に固定(いわゆる本係止)するようになっている。このような構造上、リアホルダの組付時、ハウジングに仮固定されている端子の位置ズレ等を抑制しながら組付作業を行うことになる。その結果、充電コネクタを製造する作業の作業性を向上させ難い。更に、上記説明から理解されるように、充電コネクタに限らず、コネクタを組立製造する作業の作業性の向上を図ることが、望まれている。
【0005】
本発明の目的の一つは、コネクタを製造する作業の作業性を向上可能なコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、以下を特徴としている。
【0007】
棒状の端子と、前記端子を保持する端子ホルダと、前記端子ホルダが装着されるハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子ホルダは、
前記端子の径方向に弾性的に変位可能であり且つ前記端子に係合して前記端子の前記径方向及び軸方向における移動を規制可能な複数の係止部を、前記端子の周方向に並ぶように有し、
前記ハウジングは、
前記端子ホルダの前記複数の前記係止部を前記径方向の内側に向けて押圧する一又は複数の第1押圧部を有し、
前記ハウジングは、
前記端子を前記径方向の内側に向けて押圧する第2押圧部を、更に有する、
コネクタであること。
及び、
棒状の端子と、前記端子を保持する端子ホルダと、前記端子ホルダが装着されるハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子ホルダは、
前記端子の径方向に弾性的に変位可能であり且つ前記端子に係合して前記端子の前記径方向及び軸方向における移動を規制可能な複数の係止部を、前記端子の周方向に並ぶように有し、
前記ハウジングは、
前記端子ホルダの前記複数の前記係止部を前記径方向の内側に向けて押圧する一又は複数の第1押圧部を有し、
前記端子ホルダは、
前記端子を前記径方向の内側に向けて押圧する第3押圧部を、更に有し、
前記第1押圧部と前記第3押圧部とは、前記端子の周方向において互いにオフセットするように配置される、
コネクタであること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性的に径方向に変位可能な複数の係止部が、端子ホルダに設けられる。複数の係止部は、棒状の端子を周方向に取り囲むように配置され、端子に係合して、径方向及び軸方向における端子の移動を規制する。よって、上述した従来のコネクタで用いられていたリアホルダ等を用いなくても、端子を端子ホルダで適正に保持できる。そして、そのように端子を保持した端子ホルダにハウジングを装着することで、ハウジングの第1押圧部により、複数の係止部が径方向の内側に押圧される。即ち、複数の係止部が意図せず端子から外れることが、第1押圧部によって抑制される。なお、コネクタに複数の端子を収容する場合でも、上記同様、各々の端子を端子ホルダ及び第1押圧部で適正に保持できる。このように、本構成のコネクタは、従来のコネクタに比べて各部材の組付作業が容易になるため、コネクタを製造する作業の作業性を向上可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタにおける、端子を保持する端子ホルダとハウジングとが分離した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコネクタを構成する複数の部品の一部が分解された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、温度センサ、センサホルダ、及び、端子ホルダにおけるセンサホルダが取り付けられる箇所を示す、斜視図である。
【
図7】
図7は、端子を保持する端子ホルダがハウジングに装着された状態における
図6に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。コネクタ1は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に設置されるとともに、その車両に搭載されたバッテリや機器等から延びる電線2に接続されるコネクタである。コネクタ1は、充電インレットとも呼ばれる。コネクタ1の嵌合用開口部37(
図1を参照)に相手側コネクタ(いわゆる充電ガン)を嵌合することで、車両外部の電源等からバッテリに電力が供給されて、バッテリが充電される。
【0012】
以下、説明の便宜上、
図1~
図10に示すように、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。前後方向は、コネクタ1及び相手側コネクタの嵌合方向と一致しており、相手側コネクタに対するコネクタ1の嵌合の進行側及び退行側がそれぞれ、「前」及び「後」に対応している。
【0013】
コネクタ1は、
図1~
図3等に示すように、複数の端子10と、複数の端子10を保持する端子ホルダ20と、端子ホルダ20が装着されるハウジング30と、端子10に装着されるセンサホルダ40と、センサホルダ40に保持される温度センサ50と、を備える。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明する。
【0014】
まず、複数の端子10について説明する。本例では、
図2等に示すように、複数(具体的には5本)の端子10は、径が最も大きい同形の一対の端子10と、径が最も小さい同形の一対の端子10と、径が中間の大きさの単一の端子10と、を含んでいる。センサホルダ40は、径が最も大きい一対の端子10のみに装着され、他の3本の端子10には装着されない(
図4等参照)。以下、径が最も大きい同形の一対の端子10の各々を、他の端子10と区別する必要があるときに限り「端子10A」と呼ぶ(
図2等参照)。径が最も大きい一対の端子10Aは、上述した充電等に用いられる電力供給用の端子である。径が最も小さい一対の端子10は、信号伝送用(シグナル)用の端子であり、径が中間の大きさの単一の端子10は、グランド(GND)用の端子である。なお、コネクタ1に用いられる端子10の本数、端子10の径の大きさ(太さ)、及び、端子10同士の径の大きさの大小関係等は、本実施形態に記載の内容に限定されない。
【0015】
端子10は、金属製であり、
図5に示すように、小径部11と、小径部11の後側に位置する大径部12と、大径部12の後側に位置する中径部13と、からなる段付き円柱状の棒状の形状を有するオス端子である。小径部11と大径部12との間には、小径部11から大径部12に向けて徐々に拡径しながら小径部11と大径部12とを繋ぐ連結部16が形成されている。コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合時、端子10の小径部11は、相手側コネクタが有するメス端子(図示省略)と接続されることになる。
【0016】
大径部12の外周面には、環状溝部14が形成されている。端子10の端子ホルダ20への組み付け時、環状溝部14には、端子ホルダ20の後述する弾性係止片24の係止突起24aが嵌合されることになる(
図5参照)。
【0017】
中径部13の後端部には、電線2(
図1及び
図2参照)の一端部がそれぞれ接続される。電線2の他端部は、電力供給源(図示両略)に接続されている。具体的には、電線2は、導体芯線2aと、導体芯線2aを覆う絶縁樹脂製の被覆2bと、で構成されている(
図5参照)。中径部13の後端面には、前方へ窪む凹部15が形成されている(
図5参照)。凹部15には、電線2の一端部にて露出した導体芯線2aが挿入されて、加締め固定されている。これにより、端子10と電線2の一端部とが電気的に接続されている。本例では、更に、
図2及び
図5に示すように、筒状の外装部材3が、端子10と電線2との接続箇所を含む前後方向の所定領域を覆うように設けられている。以上、複数の端子10について説明した。
【0018】
次いで、端子ホルダ20について説明する。端子ホルダ20は、樹脂成形品であり、端子ホルダ20の後端部を構成する略円形平板状の後壁部21(
図4及び
図5参照)と、後壁部21の周縁の周方向の異なる箇所から前方に向けて延びる複数(本例では、4つ)の延出部22(
図2~
図4参照)と、一体に備える。本例では、4つの延出部22は、後壁部21の上下両端部及び左右両端部を除いた4箇所の周縁から前方に突出しており、各延出部22は、後壁部21の周縁に沿って(前方からみて)円弧状に延びている。後壁部21の上端部には、下方に窪む切り欠き部21aが形成されている(
図4参照)。
【0019】
後壁部21の周縁より径方向内側の領域には、複数の端子10に対応して、複数(本例では、5つ)の円形の貫通穴23が、互いに間隔を空けて形成されている(
図5及び
図6参照)。各貫通穴23の周縁の周方向の異なる複数箇所からは、貫通穴23から前方に連続して延びる端子挿通孔25を画成するように(
図5及び
図6参照)、複数の弾性係止片24が前方に延びている(
図2~
図4等参照)。各弾性係止片24は、貫通穴23の周縁に沿って(前方からみて)円弧状に延びている。各端子挿通孔25には、貫通穴23を介して後側から、端子10が挿通されることになる。
【0020】
各弾性係止片24は、片持ち梁状の形状を有し、端子挿通孔25の径方向に弾性変形可能となっている。各弾性係止片24の先端部(前端部)には、端子挿通孔25の径方向内側に向けて延びる係止突起24aが形成されている(
図5及び
図9参照)。更に、各弾性係止片24の先端近傍部分の内周面には、径方向内側に突出する突条部24cが、係止突起24aから後方に向けて延びるように形成されている(
図5及び
図10参照)。このような突条部24cを設けたことによる作用については後述する。
【0021】
各貫通穴23の径寸法は、対応する端子10の径寸法に対応している。よって、各貫通穴23の周縁から延びる複数の弾性係止片24により画成される端子挿通孔25の径寸法も、対応する端子10の径寸法に対応している。
図4等に示すように、径が最も大きい一対の端子10Aに対応して径が最も大きい一対の貫通穴23(及び一対の端子挿通孔25)は、後壁部21の上下方向の中央より上側の位置にて左右方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。以下、径が最も大きい一対の端子挿通孔25の各々を、他の端子挿通孔25と区別する必要があるときに限り「端子挿通孔25A」と呼ぶ(
図5参照)。
【0022】
図4から理解できるように、一対の端子挿通孔25Aの各々、及び、径が中間の大きさの単一の端子10に対応する単一の端子挿通孔25は、端子挿通孔25の周方向に等間隔に並ぶ3つの弾性係止片24により画成され、径が最も小さい一対の端子10に対応する端子挿通孔25の各々は、端子挿通孔25の周方向に等間隔に並ぶ2つの弾性係止片24により画成されている。
【0023】
一対の端子挿通孔25Aの各々を画成する複数(3つ)の弾性係止片24のうち、前方からみて後壁部21の切り欠き部21aに対向する位置に配置されている弾性係止片24(以下、特に「弾性係止片24A」と呼ぶ(
図2~
図5参照))の外周面には、切り欠き部21aに向けて突出する係止突起24bが設けられている(
図2、
図3及び
図5参照)。係止突起24bは、センサホルダ40の後述する係止孔48(
図3及び
図5参照)と係合することになる。
【0024】
後壁部21の切り欠き部21a(
図4参照)には、一対の弾性係止片24Aの外周面と所定の間隔を空けてそれぞれ対向配置された一対の対向面(平面)27を有する保持壁26が設けられている(
図2~
図5参照)。弾性係止片24Aの外周面と対向面27との間には、センサホルダ40の後述するセンサ保持部49の後端部が挿入され保持されることになる(
図4及び
図5参照)。以上、端子ホルダ20について説明した。
【0025】
次いで、ハウジング30について説明する。ハウジング30は、樹脂成形品であり、
図1に示すように、前後方向に延びる円筒状の筒状部31と、筒状部31の外周面から径方向外側に突出するフランジ部32と、を備える。フランジ部32は、前後方向からみて略矩形状の外周形状を有している。フランジ部32の周縁部の複数箇所にはそれぞれ、前後方向に貫通するボルト挿通孔33が形成されている。ボルト挿通孔33には、コネクタ1を車両の所定の取付箇所へ固定するためのボルト(図示省略)が挿通されることになる。
【0026】
筒状部31の内部には、端子ホルダ20の複数の貫通穴23(端子挿通孔25)に対応して、複数(5つ)の端子収容室34が、前後方向に貫通するように形成されている(
図1及び
図6参照)。端子ホルダ20のハウジング30への組み付け時、各端子収容室34には、後側から、対応する端子10が挿通されることになる(
図7参照)。各端子収容室34の径寸法は、対応する端子10の径寸法に対応している。なお、上述したように、コネクタ1に用いられる端子10の本数や太さ等は、本実施形態に記載の内容に限定されない。同様に、端子収容室34の数や大きさ等は、端子10の本数や太さ等に基づいて適宜定められればよく、本実施形態の記載の内容に限定されない。
【0027】
各端子収容室34の内周面における前後方向所定位置の周方向の異なる複数箇所からは、
図6及び
図8に示すように、端子収容室34より小径の前後方向に貫通する挿通孔36を画成するように、複数の弾性片35が径方向内側且つ前方に延びている。本例では、各挿通孔36は、端子収容室34の周方向に等間隔に並ぶ3つの弾性片35により画成されている(
図8参照)。各弾性片35は、片持ち梁状の形状を有し、端子収容室34の径方向に弾性変形可能となっている。端子ホルダ20のハウジング30への組み付け時、各挿通孔36には、対応する端子10の小径部11が挿通されることになる(
図7参照)。このような弾性片35を設けたことによる作用について後述する。
【0028】
各端子収容室34の内周面における弾性片35より後側の位置には、
図6及び
図10に示すように、端子収容室34の径方向内側に突出し且つ前後方向に延びる突条部34aが、周方向の複数箇所にそれぞれ形成されている。このような突条部34aを設けたことによる作用については後述する。以下、ハウジング30について説明した。
【0029】
次いで、センサホルダ40について説明する。センサホルダ40は、温度センサ50(
図3参照)を保持すると共に、端子10により発生する熱を温度センサ50に伝える機能を果たす。センサホルダ40は、一枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工を施すことで形成されている。
【0030】
センサホルダ40は、
図3に示すように、前後方向に延びる矩形平板状の平板部41を有する。平板部41の前端部の幅方向両縁部には、一対の板状の弾性片42が、平板部41の一面側に向けて延び且つ互いに対向するように、設けられている。各弾性片42は、互いの対向方向に弾性変形可能となっている。各弾性片42には、端子10の大径部12の外周形状に対応して、互いの対向方向外側に円弧状に突出する湾曲部43が形成されている。センサホルダ40の端子10への装着時、一対の弾性片42の湾曲部43は、端子10の大径部12の外周を覆うように大径部12に組み付くことになる。
【0031】
平板部41における前後方向略中央から後端までの後側領域41aの幅方向一側縁には、立壁部44が、平板部41の他面側に向けて突出し且つ前後方向に延びるように設けられている。立壁部44の前後方向に延びる延出端縁には、対向板部45が、幅方向他側に向けて突出し且つ前後方向に延びて後側領域41aに対向するように、設けられている。
【0032】
対向板部45の中央部には前後方向に延びる略矩形状の切り欠き部46が形成されている。対向板部45には、切り欠き部46を塞ぐように、切り欠き部46の後端縁から前端縁に向けて延びる片持ち梁状の弾性片47が設けられている。弾性片47は、後側領域41aとの対向方向に弾性変形可能であり、非弾性変形時において、後側領域41aに近づく向きに僅かに傾斜している。後側領域41aには、板厚方向に貫通する係止孔48が形成されている。
【0033】
後側領域41aと対向板部45との間には、温度センサ50の後述する本体部51が挿入され保持されることになる。よって、後側領域41a、立壁部44、対向板部45及び弾性片47は、センサ保持部49を構成している。センサホルダ40において、一対の弾性片42が、本発明の「端子装着部」に対応し、平板部41の後側領域41aが、本発明の「当接面部」に対応し、平板部41における後側領域41aより前側の前側領域41bが、本発明の「伝熱部」に対応している。以上、センサホルダ40について説明した。
【0034】
次いで、温度センサ50について説明する。
図3に示すように、温度センサ50は、サーミスタを内蔵する本体部51を有する。本体部51は、本例では、前後方向に延びる略直方体状の形状を有し、その外表面には、互いに平行に配置された一対の前後方向に延びる平面51aを有している。本体部51の後端からは、サーミスタに接続された一対の電線52が延出している。以上、コネクタ1を構成する各部品について説明した。
【0035】
次いで、コネクタ1の組み付けについて説明する。コネクタ1を組み付けるためには、まず、複数の端子10の端子ホルダ20への組み付け、及び、温度センサ50のセンサホルダ40への組み付けが行われる。両組み付けの前後は問わない。
【0036】
まず、複数の端子10の端子ホルダ20への組み付けについて説明する。電線2の一端部が接続され且つ外装部材3が設けられた各端子10が、端子ホルダ20の対応する端子挿通孔25に、後側からそれぞれ挿入される(
図5参照)。この挿入は、端子挿通孔25を画成する複数の弾性係止片24の係止突起24aへの端子10の連結部16及び大径部12からの押圧により、複数の弾性係止片24が径方向外側に一時的に弾性変形する段階を経て、複数の弾性係止片24の径方向内側への弾性復帰により複数の係止突起24aが大径部12の環状溝部14に嵌合されることで、完了する(
図5及び
図9参照)。複数の端子10の全てについて挿入が完了することで、複数の端子10の端子ホルダ20への組み付けが完了する。
【0037】
端子10の端子ホルダ20への挿入完了状態では、端子10の大径部12及び中径部13が複数の弾性係止片24によって周方向に取り囲まれており(
図5参照)、複数の弾性係止片24と大径部12の環状溝部14との嵌合により、端子ホルダ20に対する端子10の径方向及び前後方向への移動が規制される。更に、
図5及び
図10に示すように、周方向に等間隔に配置された複数の弾性係止片24の突条部24cが、端子10の外周面(具体的には、大径部12や中径部13に対応する箇所の外周面)を径方向内側に向けて押圧している。これにより、端子10の径方向における位置ズレが抑制される。
【0038】
次いで、温度センサ50のセンサホルダ40への組み付けについて説明する。この組み付けは、温度センサ50の本体部51が、一対の平面51aがセンサホルダ40の後側領域41a及び弾性片47に対面する向きで、センサホルダ40のセンサ保持部49に、後側から挿入されることで完了する。
【0039】
温度センサ50のセンサホルダ40への組付完了状態では、弾性片47が本体部51を後側領域41aに向けて弾性的に押し付けている。このため、互いに対向する本体部51の平面51aと後側領域(平面)41aとが互いに押し付けられながら対面接触している状態が維持される。これにより、センサホルダ40を通じて端子10の熱を温度センサ50に正確に伝えることで、端子10の温度を適正に測定できるようになる。
【0040】
以上のように、複数の端子10の端子ホルダ20への組み付け、及び、温度センサ50のセンサホルダ40への組み付けが完了すると、次いで、センサホルダ40の端子10Aへの組み付けが行われる。温度センサ50が組み付けられたセンサホルダ40は、端子ホルダ20に組み付けられた一対の端子10Aの各々に組み付けられる。
【0041】
具体的には、センサホルダ40の一対の弾性片42の間の空間に端子10Aの小径部11を挿通させた状態で、センサホルダ40のセンサ保持部49の後端部が弾性係止片24Aの外周面と保持壁26の対向面27との間に挿入されるように、センサホルダ40が、端子10A(端子ホルダ20)に対して相対的に後方に移動される。この移動は、一対の弾性片42への端子10Aの連結部16からの押圧により、一対の弾性片42の互いに離れる方向への弾性変形量が徐々に増大しながら進行し、弾性変形した一対の弾性片42が端子10Aの大径部12を挟む位置まで到達することで、完了する。これにより、センサホルダ40の端子10Aへの組み付けが完了する。
【0042】
センサホルダ40の端子10Aへの組付完了状態では、一対の弾性片42の湾曲部43が端子10の大径部12の外周面を覆うように、一対の弾性片42が大径部12の外周面に押圧接触しながら組み付いている。これにより、端子10Aの熱が適正にセンサホルダ40の一対の弾性片42に伝わる。一対の弾性片42に伝わった端子10Aの熱は、センサホルダ40の前側領域41b及び後側領域41aをこの順に経て、後側領域41aと対面接触している温度センサ50の本体部51(平面51a)に伝わる。
【0043】
更に、センサホルダ40のセンサ保持部49の後端部が、弾性係止片24Aの外周面と保持壁26の対向面27との間に挟持されて保持され、且つ、センサホルダ40の係止孔48と端子ホルダ20の係止突起24bとが係合している(
図5参照)。これにより、センサホルダ40が端子ホルダ20に対して強固に固定される。このように、センサホルダ40が端子ホルダ20に対して強固に固定された状態において、温度センサ50の本体部51は、端子10Aから離れており、端子10Aのどの部位にも接触していない(
図5参照)。
【0044】
以上のように、センサホルダ40の端子10Aへの組み付けが完了すると、次いで、端子ホルダ20のハウジング30への組み付けが行われる。具体的には、
図6及び
図7に示すように、端子ホルダ20の複数の端子挿通孔25から前方に突出するように露出している複数の端子10の小径部11が、ハウジング30の複数の端子収容室34に後側からそれぞれ挿入され、且つ、端子ホルダ20の複数の延出部22により画成される空間内にハウジング30の筒状部31が進入するように、端子ホルダ20がハウジング30に組み付けられる。
【0045】
端子ホルダ20のハウジング30への組付完了状態では、
図7及び
図10に示すように、ハウジング30の端子収容室34に設けられた複数の突条部34aが、端子10の大径部12及び中径部13を周方向に取り囲む複数の弾性係止片24の外周面を、径方向内側に向けて押圧している。これにより、複数の弾性係止片24の係止突起24aと端子10の大径部12の環状溝部14との嵌合(
図5及び
図6参照)が意図せずに解除されることが抑制され得る。
【0046】
更に、
図10に示すように、ハウジング30の複数の突条部34aと、端子ホルダ20の複数の突条部24cとが、端子10の周方向において互いにオフセットするように配置されている。これにより、突条部34a及び突条部24cによる押圧力が、周方向において適度に分散されることになり、端子10の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0047】
更に、
図7及び
図8に示すように、端子10の小径部11が、複数の弾性片35によって画成された挿通孔36に挿通されると共に、周方向に等間隔に配置された複数の弾性片35が端子10の小径部11を径方向内側に向けて弾性的に押圧している。複数の弾性片35の各々の径方向内側の面には、端子10の小径部11に向けて突出する突起部35aが設けられている。これら突起部35aが端子10の小径部11に接触することにより、端子10の径方向における位置ズレが更に抑制される。以上のように、端子ホルダ20のハウジング30への組み付けが完了すると、コネクタ1の組み付けが完了する。
【0048】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るコネクタ1によれば、弾性的に径方向に変位可能な複数の係止部(弾性係止片)24が、端子ホルダ20に設けられる。複数の係止部24は、棒状の端子10を周方向に取り囲むように配置され、端子10に係合して、径方向及び軸方向における端子10の移動を規制する。よって、上述した従来のコネクタで用いられていたリアホルダ等を用いなくても、端子10を端子ホルダ20で適正に保持できる。そして、そのように端子10を保持した端子ホルダ20にハウジング30を装着することで、ハウジング30の第1押圧部(突条部)34aにより、複数の係止部24が径方向の内側に押圧される。即ち、複数の係止部24が意図せず端子10から外れることが、第1押圧部34aによって抑制される。なお、コネクタ1に複数の端子10を収容する場合でも、上記同様、各々の端子10を端子ホルダ20及び第1押圧部34aで適正に保持できる。このように、本実施形態に係るコネクタ1は、従来のコネクタに比べて各部材の組付作業が容易になるため、コネクタ1を製造する作業の作業性を向上可能である。
【0049】
更に、ハウジング30が、端子10を径方向の内側に向けて押圧する第2押圧部(弾性片)35を有する。よって、第2押圧部35の働きにより、端子10の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0050】
更に、端子ホルダ20が、複数の係止部24とは別に、端子10を径方向の内側に向けて押圧する第3押圧部(突条部)24cを有する。よって、第3押圧部24cの働きにより、端子10の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0051】
更に、端子ホルダ20には、端子10の周方向において等間隔に並ぶように、複数の弾性係止片24が配置される。よって、端子10の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0052】
更に、端子ホルダ20の係止部24を押圧する第1押圧部34aと、端子10を押圧する第3押圧部24cとが、端子10の周方向において互いにオフセットするように配置される。これにより、第1押圧部34a及び第3押圧部24cによる押圧力が、周方向において適度に分散されることになり、端子10の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0053】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
例えば、上記実施形態では、複数の突条部34a(第1押圧部)が、端子収容室34の内周面の周方向の複数箇所にそれぞれ形成されている。これに対し、単一の突条部34aが、端子収容室34の内周面の周方向の1箇所に形成されていてもよい。
【0055】
更に、上記実施形態では、複数の弾性片35(第2押圧部)がハウジング30の端子収容室34の内周面に設けられ、且つ、突条部24c(第3押圧部)が端子ホルダ20の弾性係止片24の内周面に設けられている。これに対し、このような弾性片35及び突条部24cの何れか一方又は双方が省略されていてもよい。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
【0057】
[1]
棒状の端子(10)と、前記端子(10)を保持する端子ホルダ(20)と、前記端子ホルダ(20)が装着されるハウジング(30)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記端子ホルダ(20)は、
前記端子(10)の径方向に弾性的に変位可能であり且つ前記端子(10)に係合して前記端子(10)の前記径方向及び軸方向における移動を規制可能な複数の係止部(24)を、前記端子(10)の周方向に並ぶように有し、
前記ハウジング(30)は、
前記端子ホルダ(20)の前記複数の前記係止部(24)を前記径方向の内側に向けて押圧する一又は複数の第1押圧部(34a)を有する、
コネクタ(1)。
【0058】
上記[1]の構成のコネクタによれば、弾性的に径方向に変位可能な複数の係止部が、端子ホルダに設けられる。複数の係止部は、棒状の端子を周方向に取り囲むように配置され、端子に係合して、径方向及び軸方向における端子の移動を規制する。よって、上述した従来のコネクタで用いられていたリアホルダ等を用いなくても、端子を端子ホルダで適正に保持できる。そして、そのように端子を保持した端子ホルダにハウジングを装着することで、ハウジングの第1押圧部により、複数の係止部が径方向の内側に押圧される。即ち、複数の係止部が意図せず端子から外れることが、第1押圧部によって抑制される。なお、コネクタに複数の端子を収容する場合でも、上記同様、各々の端子を端子ホルダ及び第1押圧部で適正に保持できる。このように、本構成のコネクタは、従来のコネクタに比べて各部材の組付作業が容易になるため、コネクタを製造する作業の作業性を向上可能である。
【0059】
[2]
上記[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記ハウジング(30)は、
前記端子(10)を前記径方向の内側に向けて押圧する第2押圧部(35,35a)を、更に有する、
コネクタ(1)。
【0060】
上記[2]の構成のコネクタによれば、ハウジングが、端子を径方向の内側に向けて押圧する第2押圧部を有する。よって、第2押圧部の働きにより、端子の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0061】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記端子ホルダ(20)は、
前記端子(10)を前記径方向の内側に向けて押圧する第3押圧部(24c)を、更に有する、
コネクタ(1)。
【0062】
上記[3]の構成のコネクタによれば、端子ホルダが、複数の係止部とは別に、端子を径方向の内側に向けて押圧する第3押圧部を有する。よって、第3押圧部の働きにより、端子の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0063】
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のコネクタ(1)において、
前記端子ホルダ(20)は、
前記複数の前記係止部(24)を、前記端子(10)の周方向において等間隔に並ぶように有する、
コネクタ(1)。
【0064】
上記[4]の構成のコネクタによれば、端子ホルダには、端子の周方向において等間隔に並ぶように、複数の係止片が配置される。よって、端子の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【0065】
[5]
上記[3]に記載のコネクタ(1)において、
前記第1押圧部(34a)と前記第3押圧部(24c)とは、前記端子(10)の周方向において互いにオフセットするように配置される、
コネクタ(1)。
【0066】
上記[5]の構成のコネクタによれば、端子ホルダの係止部を押圧する第1押圧部と、端子を押圧する第3押圧部とが、端子の周方向において互いにオフセットするように配置される。これにより、第1押圧部及び第3押圧部による押圧力が、周方向において適度に分散されることになり、端子の径方向における位置ズレが更に強力に抑制される。
【符号の説明】
【0067】
1 コネクタ
10 端子
20 端子ホルダ
30 ハウジング
24 弾性係止片(係止部)
24c 突条部(第3押圧部)
34a 突条部(第1押圧部)
35 弾性片(第2押圧部)