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特許7428745炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクル
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20240130BHJP
【FI】
G03F1/62
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022064475
(22)【出願日】2022-04-08
(65)【公開番号】P2022161891
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0046187
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503257778
【氏名又は名称】コリア エレクトロニクス テクノロジ インスティチュート
【住所又は居所原語表記】25,Saenari-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13509 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン クン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スル ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン キョン
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/170356(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/008976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に開放部が形成された基板と、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、MoC1-x(0<x<1)で表される炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層と、を含み、
前記ペリクル層は、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成されるコア層と、
前記コア層上に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記コア層が、前記炭化モリブデン含有層であることと、
前記キャッピング層が、炭化モリブデンを含有することと、
を特徴とする極紫外線露光用ペリクル。
【請求項2】
前記炭化モリブデン含有層は、結晶質または非晶質の炭化モリブデンが混合物または一部結晶粒の形態で含まれることを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項3】
前記炭化モリブデン含有層は、MoCを含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項4】
前記キャッピング層の素材は、窒化物(nitride)、酸化物(oxide)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項5】
前記基板と前記ペリクル層との間に介在され、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、SiN、SiO、SiC、およびMoCのうち少なくとも一つの素材で形成される支持層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項6】
前記ペリクル層は、
前記コア層上に形成されるキャッピング層と、
前記基板と前記コア層との間、および前記コア層と前記キャッピング層との間のうち少なくとも一つに形成されるバッファー層と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項7】
前記キャッピング層および前記バッファー層のうち少なくとも一つは、炭化モリブデンを含有することを特徴とする請求項6に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項8】
前記バッファー層が炭化モリブデンを含有する場合、
前記キャッピング層の素材は、窒化物(nitride)、酸化物(oxide)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項9】
前記キャッピング層が炭化モリブデンを含有する場合、
前記バッファー層の素材は、B、C、Zr、BC、BN、SiN(x≧1)、MoSi、RuC、NbC(0<x≦1)、YC(0.5≦x≦2)、ZrSi(x≦2)、ZrC(0.3≦x≦1)、ZrB(2<x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)、ZrC(0.8≦x≦1.2、y≧2)およびZrCSi(0.8≦x≦1.2、y≦2)のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項10】
中心部に開放部が形成された基板と、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、MoC1-x(0<x<1)で表される炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層を含み、
前記ペリクル層は、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成されるコア層と、
前記コア層の一面または両面に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記コア層が、前記炭化モリブデン含有層であることと、
前記キャッピング層は、炭化モリブデンを含有することと、
を特徴とする極紫外線露光用ペリクル。
【請求項11】
前記炭化モリブデン含有層は、結晶質または非晶質の炭化モリブデンが混合物または一部結晶粒の形態で含まれることを特徴とする請求項10に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項12】
前記炭化モリブデン含有層は、MoCを含むことを特徴とする請求項10に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項13】
前記ペリクル層は、
前記コア層の一面または両面に形成されるバッファー層と、
前記バッファー層上に形成されるキャッピング層と、をさらに含み、
前記バッファー層および前記キャッピング層のうち少なくとも一つは、炭化モリブデンを含有することを特徴とする請求項10に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、より詳細には、極紫外線を用いた露光工程に使用されるマスクに設置される炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業が発達し、半導体素子の集積度が向上するに伴い、電子機器が次第に小型化および軽量化している。半導体素子の集積度の向上のために、露光技術の高度化が要求されている。
【0003】
現在、光源の波長を減少させて半導体の微細なパターンを具現する方向に技術が発展している。このうち、次世代技術である極紫外線(Extreme Ultraviolet,EUV)露光技術は、一回のレジスト工程で微細パターンを具現できる技術である。
【0004】
半導体工程に使用される極紫外線露光装置は、光源(light source power)、レジスト(resist)、ペリクル(pellicle)およびマスクを含む。ペリクルは、マスクに設置されて、露光工程中に発生する異物がマスクに付着するのを防止し、露光装置によって選択的に使用されている。
【0005】
極紫外線露光工程では、クリーンシステムが構築されていて、ペリクルが不要であるという期待が初期に存在した。しかしながら、実際露光装置の構築後に駆動過程で装置内部駆動部で発生する異物および光源の発振過程で生成されたスズ粒子と極紫外線感光剤によるマスクの汚染が発生することを確認した。
【0006】
したがって、極紫外線露光工程では、マスクの汚染を防止するために、ペリクルが必須の素材として認識されている。ペリクルを使用する場合、サイズが10,000nm未満の欠陥を無視することができる。
【0007】
このような極紫外線露光用ペリクルは、マスクをカバーするために、サイズが110×144mmであることが要求され、光源の損失による生産性の悪化を最小化するために、90%以上の極紫外線透過率が要求されている。極紫外線露光装置内部における20Gに達する物理的動きにより破損しないレベルの機械的安定性と、5nmノード(node)を基準として250W以上の熱的荷重に耐えることができる熱的安定性が要求されている。また、極紫外線環境で発生する水素ラジカルに反応しない化学的耐久性も要求されている。
【0008】
現在、ペリクル開発会社は、多結晶シリコン(p-Si)基盤またはSiN基盤の透過素材を開発中にある。これらの素材は、極紫外線用ペリクルの最も重要な条件である90%以上の透過率を満足していない。これらの素材は、極紫外線露光環境での熱的安定性、機械的安定性、および化学的耐久性に脆弱であるという欠点を有するので、特性補完のための工程開発研究が行われている。例えばSiN基盤素材の問題点を解決するための素材として、Mo、Ru、Zrなどの物質を選別して研究を行っているが、薄い厚さに製造して形態を維持することが難しいのが現状である。
【0009】
また、最近では、250Wレベルの照射強度を超えて350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と、熱的、化学的および機械的に安定性を有するペリクルが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第2018-0135490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率を有する炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有する炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、中心部に開放部が形成された基板と、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、MoC1-x(0<x<1)で表される炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層と、を含む極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【0014】
前記炭化モリブデン含有層は、結晶質または非晶質の炭化モリブデンが混合物または一部結晶粒の形態で含まれる。
【0015】
前記炭化モリブデン含有層は、MoCを含む。
【0016】
前記ペリクル層は、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成されるコア層を含む。前記コア層が前記炭化モリブデン含有層である。
【0017】
前記ペリクル層は、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成されるコア層と、前記コア層上に形成されるキャッピング層と、を含む。前記コア層および前記キャッピング層のうち少なくとも一つは、前記炭化モリブデン含有層である。
【0018】
前記コア層が前記炭化モリブデン含有層である場合、前記キャッピング層の素材は、窒化物(nitride)、酸化物(oxide)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0019】
前記キャッピング層が前記炭化モリブデン含有層である場合、前記コア層の素材は、グラフェン、Me-α(Meは、ZrおよびMoのうち少なくとも一つ、αは、窒化物(nitride)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つ)、ZrSi、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)およびYB(x≧2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0020】
本発明による極紫外線露光用ペリクルは、前記基板と前記ペリクル層との間に介在され、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、SiN、SiO、SiC、およびMoCのうち少なくとも一つの素材で形成される支持層をさらに含んでもよい。
【0021】
前記ペリクル層は、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成されるコア層と、前記コア層上に形成されるキャッピング層と、前記基板と前記コア層との間、および前記コア層と前記キャッピング層との間のうち少なくとも一つに形成されるバッファー層と、を含んでもよい。前記コア層、前記キャッピング層および前記バッファー層のうち少なくとも一つは、前記炭化モリブデン含有層である。
【0022】
前記バッファー層が前記炭化モリブデン含有層である場合、前記キャッピング層の素材は、窒化物(nitride)、酸化物(oxide)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つを含んでもよい。また、前記コア層の素材は、グラフェン、Me-α(Meは、ZrおよびMoのうち少なくとも一つ、αは、窒化物(nitride)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つ)、ZrSi、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)およびYB(x≧2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0023】
前記コア層および前記キャッピング層のうち少なくとも一つが前記炭化モリブデン含有層である場合、前記バッファー層の素材は、B、C、Zr、BC、BN、SiN(x≧1)、MoSi、RuC、NbC(0<x≦1)、YC(0.5≦x≦2)、ZrSi(x≦2)、ZrC(0.3≦x≦1)、ZrB(2<x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)、ZrC(0.8≦x≦1.2、y≧2)およびZrCSi(0.8≦x≦1.2、y≦2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0024】
また、本発明は、MoC1-x(0<x<1)で表される炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層を含む極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ペリクル層に炭化モリブデンを適用することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。すなわち、ペリクル層は、コア層、バッファー層およびキャッピング層のうち少なくとも一つを炭化モリブデン含有層で形成することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。
【0026】
炭化モリブデン含有層は、MoC1-x(0<x<1)で表されるMoとCの二元系素材であって、蒸着方法を用いて容易に製造できるメリットもある。また、炭化モリブデン含有層は、他の炭化物と比較して低い温度、例えば700℃から炭化物化が可能である。
【0027】
炭化モリブデン含有層の形成工程において、MoCは、Moスパッタリング後に炭化水素雰囲気での熱処理を通じて形成したり、MoCターゲットのスパッタリング後に不活性気体雰囲気での熱処理などの方法で容易に薄膜形態に形成が可能であり、スパッタリングを基盤とするので、厚さの均一性の制御にも有利であるという利点がある。
【0028】
炭化モリブデン含有層は、結晶質または非晶質のMoCが混合物または一部結晶粒の形態で含まれ、炭化物(carbide)として高い耐食性(erosion resistance)と耐摩耗性(wear resistance)、水素ラジカルに対する抵抗性、および高温での化学的安定性を有するペリクルを提供できる。
【0029】
また、炭化モリブデン含有層は、MoCが耐食性と耐化学性を有するので、独立型メンブレン(freestanding membrane)の製造のためのドライエッチング(dry etching)およびウエットエッチング(wet etching)環境でもエッチング停止層(etch stop layer)として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の第1実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。
図2図2は、図1のA部分の拡大図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
図5図5は、本発明の第1実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図6図6は、本発明の第1実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図7図7は、本発明の第2実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図8図8は、本発明の第2実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図9図9は、本発明の第3実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図10図10は、本発明の第3実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図11図11は、本発明の第4実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図12図12は、本発明の第4実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図13図13は、本発明の第5実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図14図14は、本発明の第5実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図15図15は、本発明の第6実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図16図16は、本発明の第6実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図17図17は、本発明の第7実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図18図18は、本発明の第7実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図19図19は、本発明の第8実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図20図20は、本発明の第8実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図21図21は、本発明の第9実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図22図22は、本発明の第9実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図23図23は、本発明の第10実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図24図24は、本発明の第10実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図25図25は、本発明の第11実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図26図26は、本発明の第11実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図27図27は、本発明の第12実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図28図28は、本発明の第12実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図29図29は、本発明の第13実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図30図30は、本発明の第13実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図31図31は、本発明の第14実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図32図32は、本発明の第14実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
図33図33は、本発明の第15実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率を示すグラフである。
図34図34は、本発明の第15実験例による極紫外線露光用ペリクルの反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
下記の説明では、本発明の実施形態を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を不明にしない範囲で省略されることに留意しなければならない。
【0032】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用される用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解すべきものではなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念として適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解すべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全部表すものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解しなければならない。
【0033】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0034】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す図である。また、図2は、図1のA部分の拡大図である。
【0035】
図1および図2を参照すると、第1実施形態による極紫外線露光用ペリクル100(以下「ペリクル」という)は、中心部に開放部13が形成された基板10と、開放部13を覆うように基板10の上に形成され、MoC1-x(0<x<1)で表される炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層30と、を含む。ペリクル層30は、基板10に順次に積層されて形成されるコア層31およびキャッピング層37を含んでもよい。コア層31およびキャッピング層のうち少なくとも一つは、炭化モリブデン含有層である。
【0036】
第1実施形態によるペリクル100は、支持層20をさらに含んでもよい。支持層20は、基板10とペリクル層30との間に介在され、開放部13を覆うように基板10の上に形成される。
【0037】
ペリクル100は、半導体およびディスプレイ製造工程中、露光工程でマスクを異物から保護する消耗性素材である。すなわちペリクル100は、マスクの上に被覆される薄い薄膜であり、カバーとしての役割をする。ウェハーに転写される光は、マスクで焦点を合わせて露光を進めるので、一定の距離に離れているペリクル100に異物が混入しても、焦点が合わないため、ユーザが作ろうとするパターンのサイズに影響を及ぼさないようにして、不良パターンの形成を減らすことができる。
【0038】
そのため、ペリクル100は、露光工程中にマスクの異物から保護しつつ、不良パターンを最小化して、半導体およびディスプレイ製造工程の収率を高めることができる。また、ペリクル100の使用によってマスクの寿命を延ばすことができる。
【0039】
以下、このような本発明によるペリクル100について具体的に説明する。
【0040】
基板10は、支持層20およびペリクル層30を支持し、ペリクル100を製造する過程および製造完了後にペリクル100のハンドリングおよび移送を容易に行うことができる。基板10は、シリコンなどのエッチング工程が可能な素材で形成される。例えば、基板10の素材は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、金属酸化物、金属窒化物、黒鉛、非晶質炭素などがあり、当該素材が積層された構造も可能であり、これらに限定されるものではない。ここで、金属は、Cr、Al、Zr、Ti、Ta、Nb、Niなどが可能であり、これらに限定されるものではない。
【0041】
基板10の上にエッチング停止層(etch stopper)の機能をする支持層20が形成される。支持層20の上にペリクル層30が形成される。
【0042】
このような支持層20は、KOHに抵抗性を有する素材で形成され、ペリクル層30の素材が基板10に拡散するのを防止する機能も担当する。支持層20の素材は、SiN、SiO、SiC、およびMoCのうち少なくとも一つを含んでもよい。ここで、SiNは、Siとして含んでもよい。支持層20は、CVD(chemical vapor deposition)工程で形成してもよいが、ALD(atomic layer deposition)、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)またはスパッタリング(sputtering)工程で形成して、厚さ、物性および化学組成の変更を自由に調節して、最上の透過率を有し、かつ、欠点を最小化できるように形成する。支持層20は、基板10の上に1nm~10nmの厚さに形成してもよい。支持層20は、キャッピング層37に対応する厚さに形成してもよい。
【0043】
基板10の中心部に形成された開放部13は、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)のような微細加工技術を用いて形成できる。すなわち支持層20下の基板10の中心部を微細加工技術で除去して開放部13を形成する。開放部13にペリクル層30下のエッチング停止層20が露出する。
【0044】
また、ペリクル層30は、コア層31およびキャッピング層37を含む。コア層31およびキャッピング層37のうち少なくとも一つは、炭化モリブデン含有層である。
【0045】
ここで、コア層31は、極紫外線の透過率を決定する層である。コア層31は、極紫外線に対する90%以上の透過率を有し、熱を効果的に放出してペリクル層30の過熱を防止する。
【0046】
また、キャッピング層37は、コア層31の極紫外線の透過率の低下を最小化しつつ、ペリクル層30に熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供する。すなわちキャッピング層37は、コア層31の保護層であり、コア層31から発生した熱を外部に効果的に放出して熱的安定性を提供する。キャッピング層37は、コア層31の機械的強度を補完して機械的安定性を提供する。また、キャッピング層37は、水素ラジカルと酸化からコア層31を保護して、化学的耐久性を提供する。
【0047】
炭化モリブデン含有層は、MoC1-x(0<x<1)で表されるモリブデン(Mo)とカーボン(C)の二元系素材であって、蒸着方法を用いて容易に製造できる。炭化モリブデン含有層は、2価以上の価数を有するモリブデンとカーボンが結合したMoC1-x(0.5≦x<1)を含んでもよい。炭化モリブデン含有層は、結晶質または非晶質のMoCが混合物または一部結晶粒の形態で含まれる。炭化モリブデン含有層は、MoCで構成されたMoC層でありうる。
【0048】
炭化モリブデン含有層は、他の炭化物と比較して低い温度、例えば700℃から炭化物化が可能である。すなわち結晶化が始まる温度は、炭化ケイ素(silicon carbide)が900℃、炭化ジルコニウム(zirconium carbide)および炭化ホウ素(boron carbide)が1000℃以上である。しかしながら、炭化モリブデンは、モリブデンとカーボン間の結合力が高いため、700℃から炭化物化が進行される。
【0049】
炭化モリブデン含有層の形成工程において、MoCは、Moスパッタリング後に炭化水素雰囲気での熱処理を通じて形成したり、MoCターゲットのスパッタリング後に不活性気体雰囲気での熱処理などの方法で容易に薄膜形態で形成が可能である。炭化モリブデン含有層をスパッタリングで形成する場合、厚さ均一性の制御にも有利である。
【0050】
炭化モリブデン含有層は、炭化物(carbide)として高い耐食性(erosion resistance)と耐摩耗性(wear resistance)、水素ラジカルに対する抵抗性、および高温での化学的安定性を有するペリクル100を提供できる。
【0051】
また、炭化モリブデン含有層は、MoCが耐食性と耐化学性を有するので、独立型メンブレン(freestanding membrane)の製造のためのドライエッチング(dry etching)およびウエットエッチング(wet etching)環境でもエッチング停止層として活用することができる。
【0052】
まず、コア層31が炭化モリブデン含有層でありうる。炭化モリブデンを含有するコア層31は、18nm以下の厚さに形成することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。
【0053】
また、炭化モリブデンを含有するコア層31に対して、キャッピング層37の素材は、窒化物(nitride)、酸化物(oxide)、ホウ化物(boride)、炭化物(carbide)およびケイ化物(silicide)のうち少なくとも一つを含んでもよい。ここで、窒化物は、SiN、SiON、BNまたはBCNを含んでもよい。酸化物は、SiOを含んでもよい。ホウ化物は、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)、YB(x≧2)またはSiBを含んでもよい。炭化物は、SiC、MoCまたはBCを含んでもよい。ケイ化物は、ZrSi(x≧2)を含んでもよい。
【0054】
このようにコア層31を炭化モリブデン含有層で形成することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。
【0055】
また、コア層31の素材として炭化モリブデンを使用すると、炭化モリブデンは、一般的な蒸着工程を用いて容易に形成できるので、グラフェンや多成分系物質を使用することよりは、コア層31の製造工程を単純化できる。
【0056】
次に、キャッピング層37が炭化モリブデン含有層でありうる。炭化モリブデン含有層で形成されたキャッピング層37は、10nm以下の厚さを有していてもよい。
【0057】
また、炭化モリブデン含有層で形成されたキャッピング層37に対して、コア層31の素材は、グラフェン、Me-α(Meは、ZrおよびMoのうち少なくとも一つ、αは、窒化物、ホウ化物、炭化物およびケイ化物のうち少なくとも一つ)、ZrSi、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)およびYB(x≧2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0058】
コア層31をグラフェンで形成する場合、転写方式または直接成長方式で形成することができる。
【0059】
ここで、転写方式は、別途の基板で成長したグラフェンを基板10の支持層20の上に移す方式でコア層31を形成する方法である。
【0060】
直接成長方式は、基板10の支持層20の上に金属触媒層と非晶質炭素素材のソース層間の熱処理を通した層間交換を用いてグラフェンを直接成長する方法である。もちろんグラフェンを直接成長した後に金属触媒層が除去される。層間交換で直接成長するグラフェンが支持層20の上に安定的に結合されうるように、支持層20の上にシード層を形成できる。シード層としては、5nm以下の厚さに形成される非晶質炭素層、少数層グラフェン、非晶質ホウ素、BN、BCN、BCおよびMe-X(Meは、Si、Ti、MoおよびZrのうち少なくとも一つ、Xは、B、CおよびNのうち少なくとも一つ)のうち少なくとも一つの素材が使用できる。
【0061】
このような第1実施形態によるペリクル100は、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に支持層20、コア層31およびキャッピング層37をこの順に積層して形成する。
【0062】
この際、支持層20は、CVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0063】
コア層31およびキャッピング層37は、スパッタリング、CVD、ALDなど多様な蒸着方法を用いて形成できる。
【0064】
ペリクル層30に含まれる炭化モリブデン含有層は、スパッタリングで形成できる。例えば炭化モリブデン含有層でMoC層を形成する場合、支持層20の上にスパッタリングでMo薄膜を蒸着する。また、700℃以上で炭化水素気体と水素を含む雰囲気でMo薄膜を熱処理することによって、支持層上にMoC層を形成できる。
【0065】
また、コア層31下の基板10の中心部を除去して、コア層31が露出する開放部13を形成することによって、第1実施形態によるペリクル100を得ることができる。すなわち支持層20下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。開放部13にコア層31下の支持層20が露出する。
【0066】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0067】
図3を参照すると、第2実施形態によるペリクルは、中心部に開放部が形成された基板と、開放部を覆うように基板の上に形成される支持層20と、支持層20の上に形成される炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層130と、を含む。ペリクル層130は、支持層20に順次に積層されて形成されるコア層31、バッファー層35、およびキャッピング層37を含む。
【0068】
第2実施形態によるペリクル層130は、バッファー層35が炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層で形成されてもよい。
【0069】
バッファー層35の素材として炭化モリブデンが使用されると、多様な素材のコア層31とキャッピング層37の積層構造を有する第2実施形態によるペリクルを提供できる。
【0070】
炭化モリブデン含有層で形成されたバッファー層35に対して、キャッピング層37の素材は、窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物およびケイ化物のうち少なくとも一つを含んでもよい。コア層31の素材は、グラフェン、Me-α(Meは、ZrおよびMoのうち少なくとも一つ、αは、窒化物、ホウ化物、炭化物およびケイ化物のうち少なくとも一つ)、ZrSi、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)およびYB(x≧2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0071】
一方、第2実施形態によるペリクル層130は、バッファー層35が炭化モリブデンを含む例を開示したが、これに限定されるものではない。
【0072】
例えば第2実施形態によるペリクル層130において、第1実施形態と同様に、コア層31およびキャッピング層37のうち少なくとも一つが炭化モリブデンを含んでもよい。炭化モリブデン含有層でコア層31またはキャッピング層37を形成する場合、バッファー層35の素材は、B、C、Zr、BC、BN、SiN(x≧1)、MoSi、RuC、NbC(0<x≦1)、YC(0.5≦x≦2)、ZrSi(x≦2)、ZrC(0.3≦x≦1)、ZrB(2<x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)、ZrC(0.8≦x≦1.2、y≧2)およびZrCSi(0.8≦x≦1.2、y≦2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。ここで、バッファー層35の素材のうちCは、非晶質炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、SiCなどを含んでもよい。
【0073】
このような第2実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部が形成されていない状態の基板の上に支持層20、コア層31、バッファー層35およびキャッピング層37をこの順に積層して形成する。
【0074】
この際、支持層20は、CVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0075】
コア層31、バッファー層35およびキャッピング層37は、スパッタリング、CVD、ALDなど多様な蒸着方法を用いて形成できる。
【0076】
ペリクル層30に含まれる炭化モリブデン含有層は、スパッタリングで形成できる。例えば炭化モリブデン含有層でMoC層を形成する場合、支持層20の上にスパッタリングでMo薄膜を蒸着する。また、700℃以上で炭化水素気体と水素を含む雰囲気でMo薄膜を熱処理することによって、支持層上にMoC層を形成できる。
【0077】
また、コア層31下の基板10の中心部を除去して、コア層31が露出する開放部13を形成することによって、第2実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち支持層20下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。開放部13にコア層31下の支持層20が露出する。
【0078】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態による炭化モリブデンを含む極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0079】
図4を参照すると、第3実施形態によるペリクルは、中心部に開放部が形成されたシリコン基板と、開放部を覆うようにシリコン基板の上に形成される支持層20と、支持層20の上に形成される炭化モリブデン含有層を具備するペリクル層130と、を含む。ペリクル層230は、支持層20に順次に積層されて形成される第1バッファー層33、コア層31、第2バッファー層35、およびキャッピング層37を含む。
【0080】
第3実施形態によるペリクル層230は、第1および第2バッファー層33、35が炭化モリブデンを含有する炭化モリブデン含有層で形成されてもよい。
【0081】
第1および第2バッファー層33、35の素材として炭化モリブデンが使用されると、多様な素材のコア層31とキャッピング層37の積層構造を有する第3実施形態によるペリクルを提供できる。
【0082】
炭化モリブデン含有層で形成された第1および第2バッファー層33、35に対して、キャッピング層37の素材は、窒化物、酸化物、ホウ化物、炭化物およびケイ化物のうち少なくとも一つを含んでもよい。コア層31の素材は、グラフェン、Me-α(Meは、ZrおよびMoのうち少なくとも一つ、αは、窒化物、ホウ化物、炭化物およびケイ化物のうち少なくとも一つ)、ZrSi、ZrB(2≦x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)およびYB(x≧2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0083】
一方、第3実施形態によるペリクル層230は、第1および第2バッファー層33、35が炭化モリブデンを含む例を開示したが、これに限定されるものではない。
【0084】
例えば第1または第3バッファー層33、35が炭化モリブデンを含んでもよい。
【0085】
または、ペリクル層230において、第1実施形態と同様に、コア層31およびキャッピング層37のうち少なくとも一つが炭化モリブデンを含んでもよい。炭化モリブデン含有層でコア層31またはキャッピング層37を形成する場合、第1および第2バッファー層33、35の素材は、B、C、Zr、BC、BN、SiN(x≧1)、MoSi、RuC、NbC(0<x≦1)、YC(0.5≦x≦2)、ZrSi(x≦2)、ZrC(0.3≦x≦1)、ZrB(2<x<16)、ZrBSi(x≧2、y≧2)、ZrC(0.8≦x≦1.2、y≧2)およびZrCSi(0.8≦x≦1.2、y≦2)のうち少なくとも一つを含んでもよい。ここで、バッファー層35の素材のうちCは、非晶質炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、SiCなどを含んでもよい。
【0086】
このような第3実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部が形成されていない状態のシリコン基板の上に支持層20、第1バッファー層33、コア層31、第2バッファー層35およびキャッピング層37をこの順に積層して形成する。
【0087】
この際、支持層20は、CVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0088】
第1バッファー層33、コア層31、第2バッファー層35およびキャッピング層37は、スパッタリング、CVD、ALDなど多様な蒸着方法を用いて形成できる。
【0089】
ペリクル層30に含まれる炭化モリブデン含有層は、スパッタリングで形成できる。例えば炭化モリブデン含有層でMoC層を形成する場合、支持層20の上にスパッタリングでMo薄膜を蒸着する。また、700℃以上で炭化水素気体と水素を含む雰囲気でMo薄膜を熱処理することによって、支持層上にMoC層を形成できる。
【0090】
また、コア層31下の基板10の中心部を除去して、コア層31が露出する開放部13を形成することによって、第3実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち支持層20下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。開放部13にコア層31下の支持層20が露出する。
【0091】
このような本発明によるペリクルは、7nm~13.5nm、または190nm以下の波長を有する光源を用いた露光工程に使用できる。
【0092】
また、本発明によるペリクルは、ペリクル層が5mm以上の直径を有する円形または四角形のフレームに支持されてフリースタンディングされてもよい。
【0093】
[実験例]
このような本発明によるペリクルの350W以上の極紫外線出力環境での透過率と反射率を確認するために、図5図34による第1~第15実験例によるペリクルに対するシミュレーションを行った。
【0094】
[第1~第5実験例]
図5図14は、第1~第5実験例によるペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。ここで、第1~第5実験例によるペリクルは、支持層と、コア層およびキャッピング層を含む。支持層およびキャッピング層の素材は、SiNである。コア層の素材は、MoCである。
【0095】
支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmの場合、コア層は、0~20nm、キャッピング層は、0~10nmに厚さを変更しつつ、第1~第5実験例によるペリクルの350Wの極紫外線出力環境での透過率と反射率をシミュレーションした。
【0096】
第1~第5実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(Xnm)」で表示した。「SiN(Xnm)」は、支持層を示し、Xnmは、支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmであることを示す。「Mo2C」は、コア層を示す。「SiN」は、キャッピング層を示す。
【0097】
第1実験例
図5および図6は、本発明の第1実験例によるペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図5は、透過率を示し、図6は、反射率を示す。
【0098】
図5および図6を参照すると、第1実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(0nm)」で表示した。
【0099】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が85%以上である。コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが9nm未満である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0100】
また、コア層の厚さが12~17.5nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0101】
第2実験例
図7および図8は、本発明の第2実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図7は、透過率を示し、図8は、反射率を示す。
【0102】
図7および図8を参照すると、第2実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(3nm)」で表示した。
【0103】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が85%以上である。コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが7nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0104】
また、コア層の厚さが10~17.5nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0105】
第3実験例
図9および図10は、本発明の第3実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図9は、透過率を示し、図10は、反射率を示す。
【0106】
図9および図10を参照すると、第3実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(5nm)」で表示した。
【0107】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が85%以上である。コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが6nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0108】
また、コア層の厚さが12~19nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0109】
第4実験例
図11および図12は、本発明の第4実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図11は、透過率を示し、図12は、反射率を示す。
【0110】
図11および図12を参照すると、第4実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(7nm)」で表示した。
【0111】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm未満である場合、透過率が85%以上である。コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが5nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0112】
また、コア層の厚さが12~17.5nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0113】
第5実験例
図13および図14は、本発明の第5実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図13は、透過率を示し、図14は、反射率を示す。
【0114】
図13および図14を参照すると、第5実験例によるペリクルは、「SiN_Mo2C_SiN(10nm)」で表示した。
【0115】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが8nm以下である場合、透過率が85%以上である。コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが3nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0116】
また、コア層の厚さが10~17.5nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0117】
このように第1~第5実験例によれば、キャッピング層がSiN層であり、コア層がMoC層である場合、コア層の厚さを17.5nm以下に形成する場合、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0118】
[第6~第10実験例]
図15図24は、第6~第10実験例によるペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。ここで、第6~第10実験例によるペリクルは、支持層、コア層およびキャッピング層を含む。支持層の素材は、SiNである。コア層の素材は、MoCである。また、キャッピング層の素材は、SiCである。
【0119】
支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmの場合、コア層は、0~20nm、キャッピング層は、0~10nmに厚さを変更しつつ、第6~第10実験例によるペリクルの350Wの極紫外線出力環境での透過率と反射率をシミュレーションした。
【0120】
第6~第10実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(Xnm)」で表示した。「SiN(Xnm)」は、支持層を示し、Xnmは、支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmであることを示す。「Mo2C」は、コア層を示す。「SiC」は、キャッピング層を示す。
【0121】
第6実験例
図15および図16は、本発明の第6実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図15は、透過率を示し、図16は、反射率を示す。
【0122】
図15および図16を参照すると、第6実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(0nm)」で表示した。
【0123】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0124】
また、コア層の厚さが12~17nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0125】
第7実験例
図17および図18は、本発明の第7実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図17は、透過率を示し、図18は、反射率を示す。
【0126】
図17および図18を参照すると、第7実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(3nm)」で表示した。
【0127】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0128】
また、コア層の厚さが10~17nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0129】
第8実験例
図19および図20は、本発明の第8実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図19は、透過率を示し、図20は、反射率を示す。
【0130】
図19および図20を参照すると、第8実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(5nm)」で表示した。
【0131】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが9nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0132】
また、コア層の厚さが12~19nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0133】
第9実験例
図21および図22は、本発明の第9実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図21は、透過率を示し、図22は、反射率を示す。
【0134】
図21および図22を参照すると、第9実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(7nm)」で表示した。
【0135】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが8nm未満の場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0136】
また、コア層の厚さが12~17nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0137】
第10実験例
図23および図24は、本発明の第10実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図23は、透過率を示し、図24は、反射率を示す。
【0138】
図23および図24を参照すると、第10実験例によるペリクルは、「SiC_Mo2C_SiN(10nm)」で表示した。
【0139】
コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが5nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0140】
また、コア層の厚さが10~17nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0141】
このように第6~第10実験例によれば、キャッピング層がSiC層であり、コア層がMoC層である場合、コア層の厚さを約15nmに形成する場合、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0142】
[第11~第15実験例]
図25図34は、第11~第15実験例によるペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。ここで、第11~第15実験例によるペリクルは、支持層、コア層およびキャッピング層を含む。支持層の素材は、SiNである。コア層の素材は、MoCである。また、キャッピング層の素材は、MoSiである。
【0143】
支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmの場合、コア層は、0~20nm、キャッピング層は、0~10nmに厚さを変更しつつ、第6~第10実験例によるペリクルの350Wの極紫外線出力環境での透過率と反射率をシミュレーションした。
【0144】
第6~第10実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(Xnm)」で表示した。「SiN(Xnm)」は、支持層を示し、Xnmは、支持層の厚さが0nm、3nm、5nm、7nmおよび10nmであることを示す。「Mo2C」は、コア層を示す。「MoSi2」は、キャッピング層を示す。
【0145】
第11実験例
図25および図26は、本発明の第11実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図25は、透過率を示し、図26は、反射率を示す。
【0146】
図25および図26を参照すると、第11実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(0nm)」で表示した。
【0147】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0148】
また、コア層の厚さが11~17nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0149】
第12実験例
図27および図28は、本発明の第12実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図27は、透過率を示し、図28は、反射率を示す。
【0150】
図27および図28を参照すると、第12実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(3nm)」で表示した。
【0151】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0152】
また、コア層の厚さが12~20nmである場合、キャッピング層の厚さが10nm以下で不連続的に反射率が0.04%以下であることを確認できる。コア層の厚さが12~15nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0153】
第13実験例
図29および図30は、本発明の第13実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図29は、透過率を示し、図30は、反射率を示す。
【0154】
図29および図30を参照すると、第13実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(5nm)」で表示した。
【0155】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm未満である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0156】
また、コア層の厚さが8~20nmである場合、キャッピング層の厚さが10nm以下で不連続的に反射率が0.04%以下であることを確認できる。コア層の厚さが約15nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0157】
第14実験例
図31および図32は、本発明の第14実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図31は、透過率を示し、図32は、反射率を示す。
【0158】
図31および図32を参照すると、第14実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(7nm)」で表示した。
【0159】
コア層の厚さが20nm以下であり、キャッピング層の厚さが8nm以下である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0160】
また、コア層の厚さが11~18nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0161】
また、コア層の厚さが11~18nmの場合、キャッピング層の厚さが10nm以下で不連続的に反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0162】
第15実験例
図33および図34は、本発明の第15実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。図33は、透過率を示し、図34は、反射率を示す。
【0163】
図33および図34を参照すると、第15実験例によるペリクルは、「MoSi2_Mo2C_SiN(10nm)」で表示した。
【0164】
コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが6nm未満である場合、透過率が90%以上であることを確認できる。
【0165】
また、コア層の厚さが8~20nmの場合、キャッピング層の厚さが10nm以下で不連続的に反射率が0.04%以下であることを確認できる。コア層の厚さが13~15nmであり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率が0.04%以下であることを確認できる。
【0166】
このように第11~第15実験例によれば、キャッピング層がMoSi層であり、コア層がMoC層である場合、コア層の厚さを約15nmに形成する場合、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0167】
なお、本明細書と図面に開示された実施形態は、理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施形態以外にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。
【符号の説明】
【0168】
10 基板
13 開放部
20 支持層
30、130、230 ペリクル層
31 コア層
33、35 バッファー層
33 第1バッファー層
35 第2バッファー層
37 キャッピング層
100 極紫外線露光用ペリクル
図1
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