(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】グリッパ及びワークの保持方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2022132972
(22)【出願日】2022-08-24
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 浩基
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-328140(JP,A)
【文献】特開平11-123674(JP,A)
【文献】国際公開第2018/201244(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともワークの曲げ加工に用いられる曲げロボットのアームの先端部に設けられた回転構造体に直接又は間接的に取り付けられるグリッパ本体と、
前記グリッパ本体の先端部に設けられ、ワークを吸着する吸着体と、
を備え、
前記吸着体は、前記回転構造体の回転軸と交差する方向に向く吸着面を含み、
前記吸着面は、
前記ワークの吸着状態において、前記回転構造体の回転軸
上に位置しており、
前記吸着体は、前記吸着面と直交する軸を中心として回転可能に構成されている
グリッパ。
【請求項2】
前記グリッパ本体は、前記回転構造体の前記回転軸の軸方向と平行に延びる第1軸部と、前記第1軸部の軸方向と交差する方向に延びる第2軸部と、を含み、
前記吸着体は、前記第2軸部の先端部に設けられている
請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記第1軸部は、前記回転構造体の回転中心部から外れた偏心位置に位置している
請求項2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記グリッパ本体と、前記回転構造体と、を連結するベース部材を更に備え、
前記グリッパ本体及び前記ベース部材は、前記吸着体を回転させる回転機構を内蔵する
請求項
2又は3に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記第1軸部は、前記吸着体がワークを吸着した状態において、前記吸着体の回転時にワークが前記ベース部材と干渉しない程度の長さを有する
請求項4に記載のグリッパ。
【請求項6】
請求項1~3に記載のグリッパによりワークを吸着保持した状態において、前記グリッパの前記吸着体を回転させて前記ワークを回転させることにより、前記ワークの向きを変更する
ワークの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパ及びワークの保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの曲げ加工の補助等を行う曲げロボットが知られている。例えば、特許文献1には、
図13に示すように、アーム101の先端部に設けられたロボットヘッド部102と、ロボットヘッド部102の垂直位置に設けられたクランプ部103と、を備えるロボットが記載されている。ロボットヘッド部102は、クランプ部103を水平軸回りに垂直面内及び垂直軸回りに水平面内でそれぞれ回動可能に構成されている。
【0003】
特許文献1に記載のロボットは、例えば、クランプ部103によりワークWをロボットヘッド部102の上方に位置するように保持した下アプローチ状態において、クランプ部103を水平面内で(ロボットヘッド部を)回転させる。これにより、プレスブレーキに対するワークWの向きを水平方向に180°回転させることができる。また、ロボットは、クランプ部103のストレッチ部材104を水平方向にスライドさせることにより、バキュームクランパ105に吸着されたワークWを水平方向にスライド可能に構成されている。
【0004】
そのため、特許文献1に記載のロボットでは、プレスブレーキにより、例えばワークの一辺を曲げた後に、ロボットの姿勢変更やワークの掴み換えを行うことなく、ワークの反対側の一辺を、最初に曲げた一辺と同じ向きに曲げることができる。これにより、ワークの加工時間を短縮できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のロボットにおいて、ワークの反対側の一辺を、最初に曲げた一辺とは曲げ方向を逆向きに曲げたい場合、
図13に示すように、ロボットヘッド部102により、クランプ部103を垂直面内及び水平面内でそれぞれ回転させる。そして、ロボットヘッド部102がクランプ部103の上方に位置するような上アプローチ状態で、パンチPとダイDの間に、反対側の一辺を挿入してワークWの曲げ加工を行うことが考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットでは、ワークWを吸着するクランプ部103がロボットヘッド部102の垂直位置に位置する構造のため、上記上アプローチ状態でのワークWの曲げ加工時において、ロボットのアーム101がワークWの曲げ加工時の動きに従って上方斜め前方側に動作すると、ロボットヘッド部102がプレスブレーキのパンチPやプレスブレーキそのものに干渉するおそれがある。
【0008】
そのため、特許文献1に記載のロボットでは、補助把持装置を介して、ロボットヘッド部102がクランプ部103の下側に位置するようにワークWの掴み換えをする動作を行う必要がある。その他のロボットにおいては、ロボットヘッド部102がクランプ部103の下側に位置するようにロボットの姿勢そのものを変更する動作が必要となる場合がある。いずれの場合にも、ワークWの加工時間を要するという問題がある。
【0009】
本発明の一態様は、ワークの加工時間をより一層短縮することが可能なグリッパ及びワークの保持方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るグリッパは、少なくともワークの曲げ加工に用いられる曲げロボットのアームの先端部に設けられた回転構造体に直接又は間接的に取り付けられるグリッパ本体と、前記グリッパ本体の先端部に設けられ、ワークを吸着する吸着体と、を備え、前記吸着体は、前記回転構造体の回転軸と交差する方向に向く吸着面を含み、前記吸着面は、前記回転構造体の回転軸に沿う方向において、前記回転構造体の回転中心部の投影面積の範囲内に位置しており、前記吸着体は、前記吸着面と直交する軸を中心として回転可能に構成されている。
【0011】
本発明の一態様に係るワークの保持方法は、上記のグリッパによりワークを吸着保持した状態において、前記グリッパの前記吸着体を回転させて前記ワークを回転させることにより、前記ワークの向きを変更する。
【0012】
本発明の一態様に係るグリッパ及びワークの保持方法によれば、グリッパ本体の先端部に設けられた吸着体が、回転構造体の回転軸と交差する方向に向き、且つ回転構造体の回転軸に沿う方向において、回転構造体の回転中心部の投影面積の範囲内に位置する吸着面を含んでおり、この吸着面と直交する軸を中心として回転することにより、ワークの曲げ加工時のロボットの姿勢変更動作やワークの掴み換え動作を行う必要がなくなるので、ワークの加工時間をより一層短縮することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るグリッパ及びワークの保持方法によれば、ワークの加工時間をより一層短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットを示す概略図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るグリッパを示す側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るグリッパの一部透過側面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るグリッパの回転動作の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係るグリッパのワーク未保持状態を示す正面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係るグリッパのワーク保持状態を示す正面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
【
図13】従来の曲げロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態に係るグリッパ及びワークの保持方法を詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施の形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて示されている場合、並びに一部の構成要素の記載が省略されている場合がある。
【0016】
[グリッパを有するワーク供給ロボットの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットを示す概略図である。
図1に示すように、一実施形態に係るワーク供給ロボット1は、概略的には、ワーク載置台9上に櫛歯状に載置されたワークW群から端のワークWeを搬送可能に構成されている。なお、ワークW群は、ワーク載置台9上に、所謂平積みに積載されていてもよい。ワーク供給ロボット1は、端部のワークWeを保持するロボットハンドとしてのグリッパ10を含んでいる。
【0017】
ここで、グリッパ10は、少なくともワークWの曲げ加工に用いられるワーク供給ロボット(曲げロボット)1のアーム部(アーム)2の先端部に設けられた回転部(回転構造体)3に直接又は間接的に取り付けられるグリッパ本体11を備える。また、グリッパ10は、グリッパ本体11の先端部に設けられ、ワークを吸着する吸着部(吸着体)12を備える。吸着部(吸着体)12は、回転部(回転構造体)3の回転軸P1(
図4等参照)と交差(本実施形態では直交)する方向に向く吸着面12a(
図2等参照)を含む。吸着面12aは、回転部(回転構造体)3の回転軸P1に沿う方向において、回転部(回転構造体)3の回転中心部の投影面積の範囲H(
図2、
図5参照)内に位置している。吸着部(吸着体)12は、吸着面12aと直交する軸P2(
図5等参照)を中心として回転可能に構成されている。
【0018】
なお、一実施形態に係るワーク供給ロボット1は、曲げ加工機等の加工機(図示せず、以下同じ。)と、この加工機及びワーク供給ロボット1を制御する制御装置(図示せず、以下同じ。)と、を備えて構成され、加工機と共にワークWの自動加工を行う加工システムに含まれてもよい。
【0019】
[ワーク供給ロボットの詳細構成]
ワーク供給ロボット1は、ワーク載置台9と、ワークWの搬送先(例えば、加工機等)との間に配置されている。ワーク供給ロボット1は、ワーク載置台9上でワークWを保持し、保持したワークWを加工機等の搬送先に向けて搬送するように構成されている。
【0020】
具体的には、ワーク供給ロボット1は、移動機構60と、グリッパ10と、アーム部2と、を含んでいる。また、ワーク供給ロボット1は、これら各部を制御する制御部(図示せず)を含んでいる。移動機構60は、ワーク供給ロボット1を移動させる。グリッパ10は、ワークWを保持可能に構成される。アーム部2は、グリッパ10をワークWに対して接近又は離隔させる。
【0021】
移動機構60は、レール部60aと、ベース台60bと、ベース台駆動手段(図示せず)と、を有する。レール部60aは、床面8上に敷設される。ベース台60bは、レール部60a上に沿って移動可能に構成される。ベース台駆動手段は、ベース台60bを駆動させる。移動機構60は、例えば、所謂直動機構として構成される。移動機構60は、制御装置に含まれるロボット制御部(図示せず)からの制御信号に基づく制御部による制御によって、床面8上においてワーク供給ロボット1を移動させる。なお、移動機構60は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0022】
アーム部2は、一端部が移動機構60のベース台60bに連結されると共に、他端部(先端部)の回転部3がグリッパ10に連結されている。アーム部2は、ロボット制御部からの制御信号に基づく制御部による制御によって、グリッパ10をワークWに対して接近又は離隔させるよう構成されている。一実施形態において、アーム部2は、6軸の制御軸を有する多関節アームである。
【0023】
アーム部2は、ワーク載置台9からのワークWの搬送だけではなく、加工機等へのワークWの搬送(搬入)、ワークWの加工(曲げ加工)の補助、及び、加工機等からの製品(曲げ加工品)の搬送(搬出)等を実行可能に構成されている。なお、アーム部2を含むワーク供給ロボット1は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、アーム部2は、上述した6軸の制御軸を有する多関節アームの構成に限定されず、種々の公知の構成を任意に採用することが可能である。
【0024】
[グリッパの構成]
図2は、一実施形態に係るグリッパを示す側面図である。
図3は、一実施形態に係るグリッパの一部透過側面図である。
図4は、一実施形態に係るグリッパの回転動作の一例を示す概略図である。
図5は、一実施形態に係るグリッパのワーク未保持状態を示す正面図である。
図6は、一実施形態に係るグリッパのワーク保持状態を示す正面図である。
【0025】
グリッパ10は、
図2及び
図3に示すように、アーム部2の先端部の回転部3に、例えばベース部材15を介して着脱可能に装着されるグリッパ本体11と、グリッパ本体11に取り付けられ、ワークWを保持可能に構成された一つの吸着部12と、を有している。このように構成されたグリッパ10(及びベース部材15)は、
図4に示すように、回転部3の回転によって、回転軸P1を回転中心として図中矢印で示す方向に360°回動可能に装着される。また、吸着部12は、
図5に示すように、後述する回転機構の回転駆動により、軸P2を回転中心として360°回動自在に設けられている。
【0026】
グリッパ本体11は、例えば、回転部(回転構造体)3の回転軸P1の軸方向と平行に延びる第1シャフト部(第1軸部)13と、第1シャフト部(第1軸部)13の軸方向と交差する方向に延びる第2シャフト部(第2軸部)14と、を含む。吸着部(吸着体)12は、第2シャフト部(第2軸部)14の先端部に設けられている。なお、グリッパ本体11は、
図2に示す側面視で、棒状の第1シャフト部13及び第2シャフト部14が、例えばL字形状となるように回転部3に装着されている。すなわち、本実施形態では、回転軸P1の軸方向に沿って直線状に延びる長い第1シャフト部13の先端部に、回転軸P1と交差する軸P2の軸方向に沿って直線状に延びる第1シャフト部13よりも短い第2シャフト部14が設けられている。このような形状により、回転部3と吸着部12との間の距離を十分に確保することができると共に、ワークWを、その面が常に回転部3の回転軸P1に沿った状態で保持することができる。
【0027】
吸着部12は、第2シャフト部14の先端において、エアを吸引するエア吸引源(図示せず)に配管を介して接続されている。配管は、例えばグリッパ本体11に沿って内部又は外部に配設されている。吸着部12は、その上端部がワークWの表面に吸着可能(接触可能)な吸着面12aを構成する平型(側方台形形状)の吸着パッドにより構成され得る。従って、吸着部12は、エア吸引源による配管を通したエアの吸引力によって、ワーク載置台9に櫛歯状に載置されたワークW群から端のワークWeの表面に吸着するよう構成されている。吸着面12aは、既述のとおり、回転部3の回転軸P1に沿う方向において、回転部3の回転中心部の投影面積の範囲H内に位置している(
図2及び
図5参照)。ここで、「回転中心部の投影面積の範囲H」とは、以下のように定義され得る。すなわち、
図2に示すように、回転部3の回転軸P1を金型であるダイDの上面Uと水平方向に一致させたときに、ダイDの垂直方向中心を通る曲げ線Vと第2シャフト部14の前面14bとの間の水平方向の距離をL2、この距離L2からマージンαを引いた距離をL2-αとする。また、マージンαの垂線VαとダイDの上面Uとの交点を原点として、グリッパ10側の斜め上方及び斜め下方にそれぞれ上面Uとのなす角度θで延びる線を、グリッパ10がプレスブレーキに干渉するプレスブレーキ干渉ラインPLとする。更に、上記投影面積の範囲Hから第1シャフト部13の外側面13bまでの径方向の距離をL3としたときに、投影面積の範囲Hは、H/2+L3<(L2-α)tanθゆえにH<|2{(L2-α)tanθ-L3}|となる。なお、角度θは、ワークWを90°曲げる場合は例えば45°であり、例えば15°~45°の範囲を取り得る。
【0028】
また、グリッパ本体11の第1シャフト部(第1軸部)13は、回転部(回転構造体)3の回転中心部から外れた偏心位置に位置している。第1シャフト部13を、回転軸P1を回転中心とした径方向における所定範囲の回転中心部の外側(偏心位置)に位置させることで、例えば
図4に示すように、グリッパ10が回転部3により回転されたときの、吸着部12の吸着面12aの位置が回転中心(回転軸P1)から変化しないようにすることが可能となる。
【0029】
具体的には、グリッパ10がワークWを未保持の状態においては、
図5に示すように、吸着部12の吸着面12aが、軸P2と直交し回転軸P1に沿って形成された面Hpより僅かに上方に位置するように、面Hpとずれた位置に配置されるようグリッパ本体11及び吸着部12が設置されている。この状態からグリッパ10がワークWを吸着保持すると、
図6に示すように、吸着部12が吸着により僅かに変形するので、吸着部12の吸着面12aと、ワークWの下面及び面Hpとが、回転軸P1と同じ面レベルの位置にくることとなる。これにより、グリッパ10に保持されたワークWの回転軸P1と重なる平面位置は、回転部3による回転で変わることはない。
【0030】
なお、本実施形態に係るグリッパ10は、上記のように、グリッパ本体11と、回転部(回転構造体)3と、を連結するベース部材15を更に備える。そして、グリッパ本体11及びベース部材15は、吸着部(吸着体)12を回転させる回転機構16を内蔵する。グリッパ本体11と回転部3との間にベース部材15を備えることで、グリッパ本体11を間接的に回転部3に取り付けることができ、取り付けのバリエーションを増やすことが可能となる。なお、グリッパ本体11は、ベース部材15を介さずに回転部3に直接に取り付けることも可能である。
【0031】
グリッパ本体11及びベース部材15に内蔵される回転機構16は、
図3に示すように、回転シャフト12bと、ラック部13aと、ピニオン部14aと、駆動部15aと、を含んでいる。駆動部15aは、例えば、ベース部材15及び第1シャフト部13の内部に設けられた電動シリンダにより構成される。駆動部15aは、その他、ラック部13aの代わりにベルト駆動等が可能な電動モータ等も採用し得る。ラック部13aは、ベース部材15及び第1シャフト部13の内部に収容された駆動部15aの先端側に設けられている。ピニオン部14aは、第2シャフト部14の内部に収容された回転シャフト12bの一端側に設けられ、ラック部13aと噛合している。なお、回転シャフト12bの他端側には、吸着部12が取り付けられている。
【0032】
このように構成された回転機構16では、駆動部15aによりラック部13aを回転軸P1に沿った方向に動かすと、ピニオン部14aと共に回転シャフト12bが軸P2回りに回動するので、吸着部12を面Hpの面内で、例えば360°自在に回転させることができる。なお、回転機構16は、グリッパ本体11及びベース部材15に内蔵されているので、外観上の美観が損なわれることはない。
【0033】
なお、グリッパ本体11の第1シャフト部(第1軸部)13は、吸着部(吸着体)12がワークWを吸着した状態において、吸着部(吸着体)12の回転時にワークWがベース部材15と干渉しない程度の長さを有する。すなわち、最大長がLのワークWの中心部を吸着部12が吸着すると仮定した場合、
図2に示すように、第1シャフト部13の長さL1は、L/2よりも長い長さに設定される。ここで、ワークWの最大長Lとは、ワークWの外縁の一点からこれと対向する他点までの直線距離が最大となる部分における該直線距離のことをいい、例えばワークWが矩形状である場合には、対角線の長さを意味する。
【0034】
一方、仮に、最大長LのワークWの端部を吸着部12が吸着する場合は、第1シャフト部13の長さL1は、Lよりも長い長さに設定される([L/2,L]<L1)。より具体的には、第1シャフト部13の長さL1は、例えば5cm程度に設定されている。第1シャフト部13の長さL1がこのように設定されることにより、ワークWがいずれの向きに吸着部12により回転されたとしても、ベース部材15に干渉することはないので、干渉による曲げ加工時の不具合を防止することができる。
【0035】
[ワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作]
図7は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
図8は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
図9は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
図10は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
図11は、一実施形態に係るグリッパの曲げ加工時の動作を示す側面図である。
図12は、一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットによる曲げ加工の動作を示す概略図である。
【0036】
ワーク供給ロボット1によるワークWの曲げ加工の動作においては、上記のグリッパ10によりワークWを吸着保持した状態において、グリッパ10の吸着部(吸着体)12を回転させてワークWを回転させることにより、ワークWの向きを変更することが行われる。
【0037】
まず、ワーク供給ロボット1は、
図1に示すように、グリッパ10の吸着部12の吸着面12aを横向きにするように姿勢を変える。そして、ワークW群の端のワークWeをグリッパ10で吸着保持する。その後、吸着保持したワークWをプレスブレーキに搬送(搬入・搬出)する。なお、ワークWは、例えばその寸法が比較的小さい所謂小物の被加工物である。
【0038】
一実施形態に係るワーク供給ロボット1では、例えば
図7に示すように、グリッパ10がワークWを吸着保持した状態で、回転部3の回転軸P1の軸方向が、プレスブレーキ90にほぼ正対して向かう方向となる正面姿勢で、ワークWをプレスブレーキ90にアプローチさせることができる。このため、グリッパ10をプレスブレーキ90のパンチP及びダイDに十分近づけて曲げ加工を行うことが可能となる。
【0039】
例えば、プレスブレーキ90によってワークWの最初に曲げた一辺側を、続けて曲げ方向を逆向きに曲げる場合、グリッパ10がワークWの下方に位置する下アプローチ姿勢から、回転部3の回転によりベース部材15と共にグリッパ本体11及び吸着部12を回転軸P1を回転中心に180°回転させる。これにより、ワークWの最初に曲げた一辺の曲げ方向が上方向から下方向に方向転換され、
図7に示すようなグリッパ10がワークWの上方に位置する上アプローチ姿勢がとられる。この状態から、グリッパ10が吸着保持したワークWの最初に曲げた一辺側を、パンチPとダイDの間に正面姿勢のまま挿入し、プレスブレーキ90のバックゲージ(図示せず)に当接させて位置決めを行う。
【0040】
その後、
図8に示すように、2回目の曲げ加工を行う際にアーム部2を、曲げ順ごとのワーク供給ロボット1のフォローイングの軌跡に応じてプレスブレーキ90に向かって斜め上方に移動させワークWのはね上げに追従させるフォローイングを行う。これにより、ワークWの最初に曲げた一辺側を、続けてクランク状に折り曲げることができる。最初に曲げた一辺側をクランク状に折り曲げたら、
図9に示すように、グリッパ10を正面姿勢に戻した上で、ワークW及びグリッパ10を、図中矢印Bで示すようなプレスブレーキ90から離隔する方向に引き戻す。なお、グリッパ10を正面姿勢に戻すのは、折り曲げた後にそのままワークW及びグリッパ10を図中矢印Bで示す離隔する方向に引き戻した上で、行われてもよい。そして、例えばワークWの最初に曲げた一辺と反対側の一辺を、2回目に曲げた曲げ方向(クランク状の折曲部)とは逆向きに曲げる場合、
図10に示すように、ワークWの反対側の一辺がプレスブレーキ90側に向くように、回転機構16により吸着部12を図中矢印で示すように180°回転させる。
【0041】
更に、グリッパ10がワークWの上方に位置する上アプローチ姿勢から、
図11に示すように、回転部3の回転によりベース部材15と共にグリッパ本体11及び吸着部12を、回転軸P1を回転中心に図中矢印で示すように180°回転させる。これにより、ワークWの最初に曲げた一辺と反対側の一辺の曲げ方向を逆方向とすることが可能な、グリッパ10がワークWの下方に位置する下アプローチ姿勢がとられる。この状態から、ワークW及びグリッパ10を、図中矢印Fで示すようなプレスブレーキ90に接近する方向に押し出す。こうして、グリッパ10が吸着保持したワークWの反対側の一辺を、
図12に示すように、パンチPとダイDの間に正面姿勢のまま挿入し、プレスブレーキ90のバックゲージ(図示せず)に当接させて位置決めを行う。そして、3回目の曲げ加工を行う際にアーム部2を、曲げ順ごとのワーク供給ロボット1のフォローイングの軌跡に応じてプレスブレーキ90に向かって斜め上方に移動させワークWのはね上げに追従させるフォローイングを行う。
【0042】
このように、一実施形態に係るグリッパ10を有するワーク供給ロボット1は、ワークWの掴み換え動作が不要で、且つアーム部2の先端部側の姿勢を変更する動作も不要となるので、曲げ加工作業の加工時間を大きく中断させることなく、次工程の曲げ加工を行うことができるため、加工時間を短縮して生産性を大幅に向上させることが可能となる。
【0043】
[一実施形態に係るグリッパを有するワーク供給ロボットの効果]
以上説明したように、一実施形態に係るグリッパ10は、アーム部2の先端部の回転部3に直接吸着部12が設けられる態様とは異なり、回転部3から回転軸P1の軸方向に沿って延びるグリッパ本体11を備え、このグリッパ本体11の先端側に吸着部12を設けている。また、吸着部12の吸着面12aが回転部3の回転軸P1と交差する方向に向いている。このため、回転部3と吸着部12との間の距離を大きくとることが可能で、グリッパ10を正面姿勢でプレスブレーキ90にアプローチさせることができるため、アーム部2の先端部がプレスブレーキ90等に干渉することはなく、小さなワークWでも確実に曲げ加工を行うことができる。
【0044】
また、一実施形態に係るグリッパ10は、回転部3の回転軸P1を回転中心として垂直面内で360°回転し、吸着部12が軸P2を回転中心として水平面内で360°回転することができる構造を有するので、ワークWの向きを自在に変更することができ、全ての辺を上記のような姿勢変更動作及び掴み換え動作をすることなく曲げ加工することができる。
【0045】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、一実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上述した一実施形態では、吸着部12の吸着面12aが回転部3の回転軸P1と一致するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、吸着面12aは、ある程度の範囲で回転軸P1に対して斜めになっていてもよい。また、吸着面12aは、回転部3の回転中心部の投影面積の範囲H内にあれば、回転軸P1から離れた位置にあってもよい。従って、グリッパ本体11の第1シャフト部13及び第2シャフト部14の位置も、吸着部12の吸着面12aが上記投影面積の範囲H内にあるような偏心位置での配置であれば、上述したものに限定されない。
【0047】
上述した一実施形態では、グリッパ本体11が、第1シャフト部13及び第2シャフト部14が直線状で側面視L字形状に形成されたものとして説明したが、これに限定されない。例えば、第1シャフト部13に相当する部分が、ワークWの折曲部の形状に干渉しないように、クランク状に曲がっていても、第4,第5,…,第nシャフト部を構成するように凸凹状に折れ曲がっていてもよい。この場合、第2シャフト部14は、第1シャフト部13の先端のみならず、第nシャフト部の先端に設けられていてもよい。
【0048】
また、上述した一実施形態では、回転機構16が、ベース部材15及びグリッパ本体11に内蔵されたものとして説明したが、これに限定されない。回転機構16は、ベース部材15及びグリッパ本体11の外部に設けられていてもよい。また、グリッパ本体11の回転軸P1に沿った方向の長さ(第1シャフト部13の長さL1)及び軸P2に沿った方向の長さ(第2シャフト部14の長さ)は、吸着部12に吸着保持されたワークWが吸着部12の回転によりベース部材15(ベース部材15がない場合は回転部3)に干渉しない長さであれば、上述したものに限定されない。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ワーク供給ロボット
2 アーム部
3 回転部
8 床面
9 ワーク載置台
10 グリッパ
11 グリッパ本体
12 吸着部
12a 吸着面
12b 回転シャフト
13 第1シャフト部
13a ラック部
14 第2シャフト部
14a ピニオン部
15 ベース部材
15a 駆動部
16 回転機構
90 プレスブレーキ
【要約】
【課題】ワークの加工時間をより一層短縮する。
【解決手段】グリッパは、少なくともワークの曲げ加工に用いられる曲げロボットのアームの先端部に設けられた回転構造体に直接又は間接的に取り付けられるグリッパ本体と、前記グリッパ本体の先端部に設けられ、ワークを吸着する吸着体と、を備え、前記吸着体は、前記回転構造体の回転軸と交差する方向に向く吸着面を含み、前記吸着面は、前記回転構造体の回転軸に沿う方向において、前記回転構造体の回転中心部の投影面積の範囲内に位置しており、前記吸着体は、前記吸着面と直交する軸を中心として回転可能に構成されている。
【選択図】
図2