(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】抗う蝕活性を有する口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20240130BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20240130BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240130BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20240130BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240130BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20240130BHJP
A61K 33/16 20060101ALI20240130BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240130BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240130BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20240130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240130BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240130BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K31/122
A61P1/02
A61K33/30
A61K33/24
A61K31/197
A61K33/16
A61K33/42
A61K31/047
A61K31/155
A61K8/27
A61K8/19
A61Q11/00
A61K33/10
A61P31/04
A61K8/20
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/9789
(21)【出願番号】P 2022519096
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020070600
(87)【国際公開番号】W WO2021067996
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-24
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル、ジェームズ、セント、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アリフ、アリ、ベーグ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン、リード、ビースブロック
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06136298(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306015(US,A1)
【文献】特表2003-506392(JP,A)
【文献】特表2012-528172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/047
A61K 31/122
A61K 31/155
A61K 31/197
A61K 33/10
A61K 33/16
A61K 33/24
A61K 33/30
A61K 33/42
A61P 1/02
A61P 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア組成物であって、
(a)塩化第一スズである第1の治療量以下の抗う蝕剤と、
(b)ホップベータ酸である第2の治療量以下の抗う蝕剤と、
を含み、
前記口腔ケア組成物がフッ化物を含まず、前記第1及び第2の治療量以下の抗う蝕剤が、共同で、治療量の虫歯予防効果を有する、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記口腔ケア組成物が、アミノ酸を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、シトルリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記治療量の虫歯予防効果が、少なくとも650ppmの遊離フッ化物イオンを含む対照組成物のラットう蝕スコア以上のラットう蝕スコアを含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記治療量の虫歯予防効果が、ラットう蝕試験において、25%
超の虫歯の低減を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗う蝕活性を有する組成物を目的とする。本発明はまた、個々には治療量以下であるが、全体として治療量の抗う蝕活性を有する、2つ以上の抗う蝕剤を含む組成物を目的とする。本発明はまた、治療量のフッ化物イオンを含む組成物と同等以上の抗う蝕効果を有する、フッ化物を含まない組成物を目的とする。本発明はまた、治療量のフッ化物イオンを唯一の抗う蝕剤として含む組成物よりも大きな抗う蝕効果を有する、治療量のフッ化物及び別の抗う蝕剤を含む組成物を目的とする。
【背景技術】
【0002】
現在の消費財市場は、製品の有効性を実証するために使用される様々な成分の供給源、包装、及び研究方法を含む、製品のライフサイクル全体に関する意識の高まりを反映している。消費者は、石油化学由来の成分を拒絶し、信頼できる源の天然に由来する原材料、再生利用可能な包装、及び最低限しか加工されていない材料に市場をシフトさせている。この傾向と相まって、飲料水、練り歯磨き、又はその両方におけるフッ化物の毒性についての実際の又は想像による懸念からフッ化物は拒絶されている。虫歯を予防するための店頭販売の口腔ケア製品におけるフッ化物に対する実現可能な代替物は存在しないので、この傾向により、フッ化物を拒絶する消費者で虫歯が証明可能に増加した。結果として、現在の市場は、消費者がクリーンであること(フッ化物を放棄すること)を有効性(抗う蝕練り歯磨き)と引き換えにすることを必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当該技術分野では、飲料水及び/又は練り歯磨きにおけるフッ化物を拒絶する消費者のための、フッ化物を含まない虫歯予防練り歯磨きが必要とされている。更に、当該技術分野では、飲料水中のフッ化物は拒絶するが、虫歯予防練り歯磨きでは治療的に有効なレベルのフッ化物を依然として使用している消費者のために、フッ化物含有練り歯磨きにおけるフッ化物の有効性を強化することが必要とされている。また、当該技術分野では、フッ化物の全体的な曝露を低減する(これは、虫歯予防練り歯磨きを使用する幼児にとって望ましい状況である)ために、フッ化物が治療量レベル以下で配合される状況においてフッ化物の活性を強化することも必要とされている。また、当該技術分野では、従来、従来の治療量レベルのフッ化物(すなわち、シリカ系練り歯磨き中NaFとして1100ppmのF)に比べて効力が著しく劣る天然由来成分を使用して、上記の組成物を送達することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この概要は、詳細な説明において以下に更に記載される簡略化された形態の概念の選択を導入するために提供される。この概要は、特許請求された主題の必須の又は本質的な特徴を特定することを意図するものではない。また、この概要は、特許請求された主題の範囲を制限するために使用されることを意図したものでもない。
【0005】
1100ppmのフッ化ナトリウムを含む陽性対照口腔ケア組成物のラットう蝕スコアの約60%以上のラットう蝕スコアを有する、虫歯予防用のフッ化物を含まない口腔ケア組成物が本明細書に開示される。
【0006】
また、(a)第1の治療量以下の抗う蝕剤と、(b)第2の治療量以下の抗う蝕剤と、を含む口腔ケア組成物であって、当該口腔ケア組成物が、フッ化物源を含まず、当該第1及び第2の治療量以下の抗う蝕剤が、共同で、治療量の虫歯予防効果を有する、口腔ケア組成物が本明細書に開示される。
【0007】
また、(a)フッ化物を含む抗う蝕薬組成物と、(b)治療量以下の抗う蝕剤と、を含む口腔ケア組成物であって、当該治療量以下の抗う蝕剤が、フッ化物を含まず、当該口腔ケア組成物が、当該抗う蝕薬組成物よりも大きな治療効果を有する、口腔ケア組成物が本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】フッ化物対照製品に対する本発明のラットう蝕結果を示す。
【
図2】新規組成物のiPGRM性能と共に、クロルヘキシジンのiPGRM用量応答(Crest Cavity Protectionに対する酸低減%)を示す。
【
図3】新規組成物のiPUM性能と共に、異なるカルシウム源のiPUM挙動(Crest Cavity Protectionによる処理後のバイオフィルムカルシウム含有量に対する処理後のバイオフィルムカルシウム含有量の比)を示す。
【
図4】典型的なSn/シリカ練り歯磨き組成物のFフリーHAP溶解度低下と共に、Sn含有量に対するFフリーHAP溶解度低下を示す。
【
図5】プラセボに対する実測対予測されたラットう蝕率の低下(左)及び残差のプロット(右)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
う蝕は、プラーク酸への曝露によって歯の損傷が生じ、その後、歯の正味の脱灰が生じるプロセスである。プラーク中の細菌は、ヒトが食べたときに利用する発酵性炭水化物の代謝から有機酸を生成する。結果として、う蝕における介入のための手段は、一般に、酸形成の抑制及び/又は歯表面の安定化を伴う。本発明では、これが生じる可能性がある4つの機序、すなわち、i)抗菌作用を介した酸形成の抑制、ii)カルシウム共イオン効果を介したエナメル質溶解度の低下、iii)フッ化物共イオン効果を介したエナメル質溶解度の低下、及びiv)表面吸着安定剤を介したエナメル質溶解度の低下について検討した。これらの機序は、ヒトの虫歯の減少に不可欠であると考えられる。現在まで、市場に出回っているほぼ全ての虫歯予防製品に支持されているのは、もっぱらフッ化物共イオン効果を介したエナメル質溶解度の低下である。
【0010】
したがって、本発明は、抗菌剤、表面吸着エナメル質安定化剤、カルシウムイオン源、及び/又はフッ化物イオン源などの2つ以上の治療量以下の抗う蝕剤を含む、う蝕を治療し、虫歯を予防することができる組成物を目的とする。更に、本発明は、治療量のフッ化物イオンと、抗菌剤、表面吸着エナメル質安定化剤、又はカルシウムイオン源などの1つ以上の治療量以下の抗う蝕剤とを含む、改善された抗う蝕活性を有する組成物を目的とする。
【0011】
更に、本発明は、フッ化物共イオン効果、カルシウム共イオン効果、Snフリー抗菌効力、及び表面吸着を介したFフリーヒドロキシアパタイト溶解度低下のベクトルに沿って、一般的にラットう蝕における口腔ケア組成物の性能についてのモデルを使用して、2つ以上の治療量以下の組成物の組み合わせである治療用口腔ケア組成物を作製することを目的とする。そのようなモデルは、フッ化物を含まない及びフッ化物が強化された組成物を創出するための新規治療用抗う蝕口腔ケア組成物についての動物試験を最小限に抑えるか又は実質的に排除した、成分の迅速、倫理的、かつ信頼できる同定を可能にする。
【0012】
フッ化物が発見されてから、フッ化物の代替物又は強化物を見出すために、当該技術分野において多くの試みがなされている。これらの試みは、一般に、上に列挙した4つの機序のうちの1つ、最も特にはプラーク酸抑制に重点を置いていた。本出願の開示される方法及び組成物は、当該技術分野で提示されたものとは根本的に異なる。理論に束縛されることを望むものではないが、同時に供給される治療量以下の量の組成物は、全体として、虫歯を低減することができる組成物を実現すると考えられている。したがって、本発明は、上記の機序に従って少なくとも2つの治療量以下の組成物を含む組成物を目的とし、更に、開示される組成物は、
図1に示すように、フッ化物が含まれていた場合、フッ化ナトリウムとしての1100ppmのFと少なくとも同等であり、1100ppmのF対照よりも優れた、ラットう蝕モデルで測定されるう蝕の低減を実現する。更に、開示される組成物は、フッ化物の有効性を超えてラットの溝及び隣接歯間の空間においてう蝕を低減させた。この予想外の結果は、このアプローチが、治療量以下の組成物の組み合わせが虫歯の予防に有効であり得ることを教示したものとして当該技術分野において存在しない新規なものであることを実証した。
【0013】
図1に提示するラットのう蝕の結果は、実施例1bが、プラセボ対照研究において、フッ化ナトリウム/シリカ及びモノフルオロリン酸/シリカ組成物に比べてう蝕を低減させたことを示した。フッ化物を有さない実施例1bは、フッ化ナトリウム/シリカ対照製品と同等の全う蝕低減を有していたが、対照に比べて溝のう蝕においての予想外に大きな低減を有していた。開示される組成物は、治療量以下の組成物の群と共に歯上及びバイオフィルム中で機能するように設計された。これにより、対照組成物に対して溝及び隣接歯間のう蝕が顕著に低減された。実施例1dのように、開示される組成物にフッ化物を添加した場合、う蝕の低減が強化され、平滑面う蝕が顕著に低減される。
【0014】
そのようなアプローチは当該技術分野で開示されていないことに鑑みて、非フッ化物機序がう蝕の低減に大きく寄与し得ることは予想外に見出されたものである。この結果をより深く理解するために、ラットで試験した組成物への各治療量以下の組成物の寄与を測定するために、一連の実験室試験を実施した。上記の介入ベクトルに沿って組成物の効力を測定するために、個々の方法が開発されている。これらの方法は、i)Snフリーインビトロ歯垢解糖及び再成長法(SnフリーiPGRM)、ii)カルシウムについてのインビトロ歯垢取り込み法(iPUM-Ca)、iii)Fフリーヒドロキシアパタイト溶解度低下法(FフリーHAP)、及びiv)ADA1分間フッ化物放出(ADA)である。当業者は、Snなどのいくつかの成分が抗菌効果及びHAP表面安定化効果の両方を有することを認識するであろう。そのような挙動は、組成物の性能の分析を複雑にするので、そのような成分の全体的な寄与は、単一の機序のみを介して検討される。したがって、本発明の目的のために、組成物の抗菌効力は、そのSnプラセボに対して、又はiPGRM中のSnの寄与についての単一変数を正しく考慮に入れる他の実験的設計アプローチによって決定しなければならない。同様に、本発明の目的のために、ヒドロキシアパタイト溶解度を低下させる組成物の能力は、組成物のフッ化物を含まないバージョンを用いて(組成物がフッ化物を含有する場合)、又はフッ化物の寄与を正しく制御する他のいくつかの実験設計によって決定しなければならない。表2は、実施例のセクションに開示されるように、上に示した4つの異なる方法を使用した表1に示す新規組成物及び対照練り歯磨きの特性評価の結果を、それに対応するラットう蝕スコアと共に示した。
【0015】
フッ化物の発見中、いくつかのラットう蝕試験を実行して、フッ化物及び代替物の両方の有効性について調べた。前述の介入ベクトルの単一変数挙動を示すために、ラットう蝕実験のカタログをメタ分析した。後述するように、これによって、治療量レベルのフッ化物と比べた異なるベクターの効力を評価する。
【0016】
表3は、ADA法によって決定された、可溶性フッ化物含有量に対する抗う蝕効力の変動を示す。この実施例及びメタ分析を使用して、フッ化ナトリウムとしての650ppmのフッ化物は、ラットう蝕実験においてプラセボ又は水対照に対して約29%、又は約25%、又は約30%う蝕を低減すると推定された。
【0017】
表4は、周知の抗菌剤であるクロルヘキシジンからのラットう蝕の用量応答性低減を使用して、SnフリーiPGRMによって測定されたSnフリー抗菌活性に関する抗う蝕効力の変動を示す。次いで、これらの組成物をiPGRMを使用して分析して、その抗菌効力に対するラットう蝕有効性の変動を定義した。iPGRMは、pHの変化を通して抗菌効力の低減を測定するので、抗菌剤の効力を決定するときに、重炭酸ナトリウムなどのpHを緩衝する非抗菌剤を補正することができる。これは、Snフリー抗菌寄与を分離するために必要に応じてプラセボ対照を使用して行うことができる。Snの寄与は、溶解度の低下を通じて測定され、この試験から除外される。クロルヘキシジンのiPGRM用量応答を
図2に示す。
【0018】
表5は、iPUMによって測定されたカルシウム共イオン効果に対する抗う蝕効力の変動を示す。この方法は、可溶性及び不溶性源の両方の全カルシウム取り込みを測定する。不溶性源を使用した場合、プラーク酸に曝露されたときに優先的に溶解するように、ヒドロキシアパタイトよりも実質的に可溶性が高いカルシウム源が好ましい。例えば、リン酸二カルシウム二水和物又は炭酸カルシウムは、酸への曝露時に容易に溶解するが、ピロリン酸カルシウムは、本明細書の目的のためのカルシウム供給源として不十分である。不溶性源は、歯垢内での滞留時間が増加するという利点を有し、したがって、プラーク酸の生成に時間的に対応するようにカルシウムのブルームを提供することができる。カルシウム含有組成物のiPUM用量応答を
図3に示す。
【0019】
表6は、FフリーHAPによって測定されたHAP溶解度におけるFフリーの低減に対する抗う蝕効力の変動を示す。フッ化物共イオン効果の寄与は、ADA法を介して測定され、この試験から除外される。Sn/シリカ練り歯磨き中の異なるレベルのSnに対するFフリーHAP応答の例を
図4に示す。
【0020】
最後に、治療量以下の組成物の組み合わせによって治療用組成物が得られる閾値を定義することができる。平均して、治療用組成物は、NaF/シリカ練り歯磨きとしての650ppmの利用可能なFと少なくともほぼ同等にう蝕を低減する、及び/又は少なくとも約24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、若しくは34%う蝕を低減するものとして定義され得る。う蝕の低減及び/又は虫歯予防活性は、実際のラットう蝕性能試験を使用して実証され得る。この閾値は、プラセボ又は水対照に対してNaF/シリカ練り歯磨きとしての650ppmの利用可能なFの効果とほぼ同様の治療量レベルの低減を達成するとき、新規組成物の開発中の目安となり得る。
【0021】
これらの方法では、重要な虫歯予防介入法に沿って様々な組成物についての効力を定量することができる。フッ化物含有虫歯予防組成物の元々の開発中に行われたラットう蝕実験の長い履歴に、同じ分析を遡及的に適用することができる。2つの異なるが類似するラットう蝕モデルにおけるう蝕の低減についての800回を超える個々の処理を含む約170回のラットう蝕実験を分析した。これらの実験は、1959年~2019年に行われた。ラットう蝕は、ヒトう蝕の好ましい動物モデルであり、フッ化物含有製品の効力を確保するために米国抗う蝕モノグラフ(21CFRパート355)に含まれている。それは、更に、非フッ化物抗う蝕機序及び組成物に対して感受性が高い。最後に、う蝕の動物モデルは、一般に、適切に開発される限り交換可能とみなされる。
【0022】
この遡及的分析は、本発明の範囲を定義するのに役立ち得る。本明細書に記載されるように、本発明は、まとめて試験したときに治療用組成物をもたらし得る治療量以下の組成物の組み合わせを目的とする。実施例により、指定の性能試験によって定義されるように、各機序における治療量以下から治療量への移行についての性能閾値を設定することが可能になる。しかしながら、それらの結果は、単独では、ラットう蝕実験における組成物の複合性能を予測しない可能性がある。分析により、本明細書に記載される治療量以下の組成物の組み合わせについてラットう蝕の低減を予測することができるモデルが得られた。組み合わせると、実施例、性能閾値、及び数学的モデルは、本発明を定義するのに役立ち得る。
【0023】
実験記録で頻繁に記録されたF含有量、Sn含有量、及びpHの追加の測定値を伴う処理/成分の詳細な説明により、ラットう蝕実験の遡及的分析が可能であった。処理の詳細な説明及び類似の今日の組成物との比較を使用して成分を入手又は推定することができるとき、上記の様々な抗う蝕機序方法における効力尺度を直接測定した。上記で命名した4つの方法を使用したラットう蝕効力の推定によって、~0.76のモデル相関係数r2が得られた。相関係数は、ラットう蝕効力における変動の76%がこれらの方法によって捕捉されることを示唆している。残りの24%の変動は、典型的には、生物学的方法で一般的に観察される変動に起因する。本発明者らは、これは、ラットう蝕における様々な組成物の性能についての良好なモデルを表すと考えていると言えば十分である。水又はシリカベースの研磨剤、プラセボ練り歯磨き陰性対照に対するラットう蝕低減%についての予測式を以下に示す。
【0024】
【0025】
ラットう蝕データの遡及的分析についての予測値対実測値を
図5aに示し、
図5bに残差のプロットを示す。モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)練り歯磨きを使用した場合、式を使用して計算した低減%から16を差し引く。MFPはラットう蝕モデルにおいて有効性が低いため、これを行う。
【0026】
このアプローチは新規であり、多くの理由から当業者には明らかではない。
【0027】
第1に、市場にはそのような製品が明らかに存在していないことによって証明されるように、フッ化物を含まない虫歯予防練り歯磨きは長年にわたって必要とされている。治療量レベルのフッ化物なしで米国で合法的に販売されている虫歯予防製品は存在しない。これは、安全性及び有効性の厳密なFDA標準を満たす新薬承認申請を首尾よく完了したものが存在しないことを意味する。そのため、そのような代替物が長年にわたって必要とされている。
【0028】
第2に、本明細書に記載の適用方法及びモデルは、治療用組成物を作製するのに単独では十分ではない。治療量以下の組成物のいくつかの組み合わせは、互いに容易には適合しない。例えば、可溶性フッ化物源は、特別なケアを行わない限り、カルシウムによって高頻度で失活する。カチオン性抗菌剤は、アニオン性界面活性剤によって失活し得る。第一スズイオン源の使用は、喪失及び/又は酸化を防止するために安定剤及び包装を慎重に選択することを必要とする場合がある。ピロリン酸カルシウムは、プラーク酸への曝露時に容易には溶解せず、共イオン効果を介してプラーク酸から歯を保護する目的のためのカルシウム源としては不十分である。克服するために当技術分野における専門知識を必要とするこのような更に多くの例が存在する。
【0029】
第3に、当該技術分野における虫歯予防組成物のほぼ全ての以前の例は、治療効果を提供するために単一の組成物がどの程度必要であったかに焦点を当てていた。当技術分野における例のいずれも、治療量以下の組成物の組み合わせから治療効果を実現するためにどの程度量を少なくできるかについては教示していない。これは、毒性、審美性、又はコスト上の懸念から、いくつかの成分の曝露を制限しなければならない場合に重要である。一例は、溶解度低下組成物と抗菌組成物との組み合わせ(米国特許出願公開第2018/0028417(A1)号)を示すことによってあと一歩のところまできているが、治療効果を実現するための治療量以下の組成物の組み合わせについては教示していなかった。更に、溶解度低下組成物は、既に治療量レベルで含まれており、第2の組成物がその効果を強化していた。
【0030】
第4に、治療量以下の組成物の組み合わせを通して治療量レベルの活性を実現するためのモデル、方法、戦略、又はアプローチを教示している例は1つもない。更に、これらの当該技術分野の例のいずれにも、単独でも一緒でも、教示される治療量以下の組成物の組み合わせを通して治療量レベルの活性を実現するための方法、モデル、又は戦略は存在しない。開示されている特許のいくつかでは、共通の治療量以下の剤が開示されているが、体系的分析によってその影響及び相互作用を明らかにして、治療量以下の組成物の合理的な設計につなげることができるような程度ではない。治療量以下の組成物、賦形剤、及びこれらの組み合わせの性能は、高頻度で低下したり、実験的に制御されたり、又は単に研究されないまま残されていたりする。明確に最適化されている例はなく、知っている限り、これが体系的に行われたことはない。当該技術分野で公開されているラットう蝕研究の履歴が限定されていることを考慮すると、公開された技術分野における既存の研究を単に評価することによって当業者がそのような分析を実施できる可能性は非常に低い。
【0031】
可能な抗う蝕剤については、本明細書に更に記載する。
【0032】
定義
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。別途記載のない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。ある用語が本開示で使用されているが本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が、本明細書に適用される任意の他の開示又は定義と矛盾しない限り、又はその定義が適用される任意の請求項を不明確に又は不可能にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd Ed(1997)からの定義を適用することができる。
【0033】
用語「口腔ケア組成物」は、本発明で使用する場合、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、歯の表面又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって口腔内に保持される製品を包含する。口腔ケア組成物の例としては、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、口腔表面に直接塗布又は装着するためにストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「歯磨剤組成物」は、特に指示がない限り、歯用又は歯肉縁下用のペースト、ゲル、又は液体製剤を含む。歯磨剤組成物は、単相組成物であってもよく、又は2つ以上の別個の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深い縞状、表面的な縞状、多層状、ペーストがゲルで包囲されている、又はこれらのいずれかの組み合わせなど、任意の所望の形態であってよい。2つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤における各歯磨剤組成物は、ディスペンサの物理的に分離された区画内に収容され、隣り合って分注され得る。
【0035】
本明細書で有用な「有効物質及び他の成分」は、美容的及び/若しくは治療効果、又はそれらが要求される作用形態若しくは機能により、本明細書において分類又は記載されてよい。しかしながら、本明細書において有用な有効物質及び他の成分は、場合によっては、2つ以上の美容的及び/又は治療効果をもたらす、あるいは2つ以上の作用形態で機能又は作用してもよいと理解すべきである。したがって、本明細書における分類は便宜上実施されるものであり、成分を、列挙される具体的に規定した機能又は作用に制限しようとするものではない。
【0036】
用語「経口的に許容し得る担体」とは、局所口腔投与に好適な1種以上の相溶性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。用語「相溶性」は、本明細書で使用する場合、組成物の構成成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に低下させるような方式で相互作用することなく、混合され得ることを意味する。本発明のキャリア又は賦形剤は、以下により完全に記載されるように、マウスウォッシュ又はマウスリンスの通常の及び従来の成分を含み得る。マウスウォッシュ又はマウスリンスのキャリア材料は、典型的には、これらに限定されるものではないが、水、アルコール、保湿剤、界面活性剤、並びに着香剤、甘味剤、着色剤及び/又は冷感剤などの許容改善剤のうちの1つ以上を含む。
【0037】
本発明で使用する場合、用語「~を実質的に含まない(substantially free)」は、組成物中に、かかる組成物の総重量の0.05%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001%以下の指示物質が存在することを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「~を本質的に含まない(essentially free)」は、指示物質が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。すなわち、指示物質が、意図的に添加されたその他の物質のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「治療量の抗う蝕活性」という用語は、治療用量の抗う蝕薬及び/又は1つ以上の抗う蝕剤を含む組成物によって提供される抗う蝕活性である。フッ化物イオンの治療用量は、米国食品医薬品局(FDA)モノグラフ(21CFRパート355)において定義されている。例えば、ペースト剤形(すなわち、ペースト歯磨剤)中のフッ化ナトリウムの治療量は850~1,150ppmであり、少なくとも650ppmの利用可能なフッ化物イオン濃度を有する。他の抗う蝕薬は、参照により本明細書に組み込まれる21CFRパート355に開示されている。他の治療用量は、それぞれの管轄で入手可能である。したがって、本明細書で使用する場合、1つ以上の抗う蝕剤を含む組成物についての治療量の抗う蝕活性は、少なくとも650ppmの利用可能なフッ化物イオンを含むフッ化ナトリウムを含む組成物によって提供される抗う蝕効果と同等以上の抗う蝕効果である。
【0040】
本明細書で使用する場合、「治療量以下の抗う蝕活性」という用語は、「治療量の抗う蝕薬物組成物」において定義したように、少なくとも650ppmの利用可能なフッ化物イオンを含むフッ化ナトリウムを含む組成物によって提供される抗う蝕効果に比べてより低い抗う蝕効果を有する組成物の抗う蝕活性である。「治療量以下の抗う蝕活性」という用語はまた、追加の抗う蝕剤と組み合わせて、ヒトの口腔内での使用に好適な口腔ケア組成物で利用したときに、少なくとも650ppmの利用可能なフッ化物イオンを含むフッ化ナトリウムを含む組成物によって提供される抗う蝕効果と比べて治療効果をもたらすことができるが、単独では、口腔ケア組成物での使用に好適な濃度で治療効果を提供することが示されていない抗う蝕剤について説明することもできる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「抗う蝕薬」という用語は、歯腔(虫歯、う蝕)の予防及び予防的処置に役立つ薬物である。これは、本明細書に記載されるように、例えば21CFRパート355におけるフッ化物イオン源及び抗う蝕剤を含み得る。
【0042】
組成物及び方法は、本明細書において、様々な構成要素又は工程を「含む」という観点で記載されているが、組成物及び方法はまた、別途記載のない限り、様々な構成要素又は工程「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、2つ以上の要素の接続詞として使用される場合に、要素を個々に、及び組み合わせで含むことを意味し、例えば、X又はYは、X若しくはY、又はこれら両方を意味する。
【0044】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」及び「an」は、特許請求される又は記載される材料、例えば、「口腔ケア組成物」又は「漂白剤」の1つ以上を意味するものと理解される。
【0045】
特に明記しない限り、本明細書で言及される測定は全て約23℃(すなわち、室温)で行われる。
【0046】
一般に、元素群は、Chemical and Engineering News,63(5),27,1985に掲載されている元素周期表のバージョンで示される番号付けスキームを使用して示される。いくつかの例では、族に割り当てられた共通の名前を使用して、要素の群を示すことができ、例えば、第1族元素のアルカリ金属、第2族元素のアルカリ土類金属などが挙げられる。
【0047】
いくつかの種類の範囲が本発明に開示される。任意の種類の範囲が開示又は特許請求される場合、範囲の端点並びにその中に包含される任意の部分範囲及び任意の部分範囲の組み合わせを含む、そのような範囲が合理的に包含し得る各可能な数を個々に開示又は特許請求することを意図している。
【0048】
用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の数量及び特性が正確ではなく、正確である必要はないが、所望に応じて、許容誤差、変換係数、丸め、測定誤差など、並びに当業者に既知の他の要因を反映して、近似的及び/又はより大きいかより小さい場合があることを意味する。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の数量若しくは特性は、そのようであると明示的に記載されているか否かに関わらず、「約」又は「近似的」である。用語「約」はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡状態に起因して異なる量も包含する。用語「約」によって修飾されているか否かに関わらず、特許請求の範囲は、その量に対する均等物を含む。用語「約」は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%以内を意味し得る。
【0049】
歯磨剤組成物は、固体、液体、粉末、ペースト、又はこれらの組み合わせなどの任意の好適な形態であり得る。口腔ケア組成物は、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、泡、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、又は義歯用ケア若しくは付着性製品であり得る。歯磨剤組成物の構成成分は、フィルム、ストリップ、泡、又は繊維ベースの歯磨剤組成物に組み込まれることができる。
【0050】
セクション見出しは、編成及び便宜上の目的のためだけに以下に提供される。セクション見出しは、化合物が1つを超えるセクション内に存在し得ないことを示唆するものではない。実際、化合物は、1つを超えるセクションに含まれる場合がある。例えば、いくつかのカテゴリ及び/又はセクションに適合することができる多くの他の化合物の中でも、塩化第一スズは、スズイオン源及び表面吸着安定剤の両方であり得、フッ化第一スズは、スズイオン源及びフッ化物イオン源の両方であり得、グリシンは、アミノ酸、緩衝剤、及び/又は表面吸着安定剤であり得る。
【0051】
抗う蝕活性
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、1つ以上の抗う蝕剤を含んでいてよく、これらは共同で治療量の抗う蝕活性を示す。本明細書に記載されるように、治療量の抗う蝕活性は、米国における米国FDAなどの対象となる管轄の関連規制当局によって定義される。FDAでは、ペースト剤形(すなわち、ペースト歯磨剤)中のフッ化ナトリウムの治療量は850~1,150ppmであり、少なくとも650ppmの利用可能なフッ化物イオン濃度を有する。したがって、本発明の口腔ケア組成物は、治療量の抗う蝕活性に対応し得る、少なくとも、少なくとも約650ppm、800ppm、850ppm、1100ppm、1150ppm、1450ppm、及び/若しくは2800ppm、又はこれらよりも多くの遊離フッ化物イオンを含む組成物の抗う蝕効果と少なくともほぼ同等の抗う蝕効果を有することができる。
【0052】
本明細書に記載の口腔ケア組成物の抗う蝕活性はまた、ラットう蝕スコアによって説明することもできる。口腔ケア組成物は、約35以下、約30以下、約25以下、及び/又は約20以下のラットう蝕スコアを有し得る。本明細書に記載の口腔ケア組成物の抗う蝕活性はまた、プラセボ練り歯磨きに対するラットう蝕スコアの低減%で説明することもできる。口腔ケア組成物は、プラセボ練り歯磨き(すなわち、陰性対照)に対して少なくとも約25%、少なくとも約29%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、及び/又は少なくとも約40%のう蝕低減率を有し得る。
【0053】
本明細書に記載される口腔ケア組成物の抗う蝕活性はまた、治療用量の抗う蝕剤を含む口腔ケア組成物(すなわち、USP NaFなどの陽性対照)に対するラットう蝕スコアの低減率によって説明することもできる。口腔ケア組成物は、USP NaFなどの陽性対照に対して、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約125%以上、及び/又は約150%以上のう蝕低減率を有し得る。
【0054】
抗う蝕剤
本明細書に記載される口腔ケア組成物は、1つ以上の抗う蝕組成物を含み、当該1つ以上の抗う蝕組成物は1つ以上の抗う蝕剤を含み、これらは個々には治療用量であっても治療量以下の用量であってもよい。
【0055】
口腔ケア組成物は、第1の治療量以下の抗う蝕剤及び第2の治療量以下の抗う蝕剤を含み得、これらは共同で治療量の抗う蝕効果をもたらす。第1及び第2の治療量以下の抗う蝕剤は、本明細書に記載されるようにフッ化物を含んでいなくてもよく、又は治療量以下の剤のうちの1つは、治療量以下の量のフッ化物イオンを含んでいてもよい。
【0056】
口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を含む治療量の抗う蝕剤と、フッ化物イオン源を含まない治療量以下の抗う蝕剤とを含み得、全体としての口腔ケア組成物は、治療量の抗う蝕組成物単独に関連する抗う蝕効果よりも高い抗う蝕効果を有する。治療量の抗う蝕剤及び治療量以下の抗う蝕剤を含む組成物の抗う蝕活性は、通常、処方用量濃度のフッ化物イオンで入手可能な抗う蝕活性を可能にし得る。
【0057】
抗う蝕剤は、これら4つの機序のうちの1つを介してう蝕に対して活性であり得る:i)抗菌作用を介した酸形成の抑制、ii)カルシウム共イオン効果を介したエナメル質溶解度の低下、iii)フッ化物共イオン効果を介したエナメル質溶解度の低下、及びiv)表面吸着安定剤を介したエナメル質溶解度の低下。したがって、抗う蝕剤は、抗菌剤、カルシウムイオン源、フッ化物イオン源、表面吸着安定剤であってよい。しかしながら、化合物は、例えば、抗菌剤及び表面吸着安定剤であり得る塩化第一スズ、又は抗菌剤、フッ化物イオン源、及び表面吸着安定剤であり得るフッ化第一スズなど、これらのカテゴリのうちの1つ超に入る場合がある。
【0058】
抗菌剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の抗う蝕剤を含み得、当該1つ以上の抗う蝕剤は、1つ以上の抗菌剤を含み得る。抗菌剤は、歯科う蝕の細菌による酸形成を抑制する任意の剤であり得る。好適な抗菌剤としては、Crest(登録商標)Cavity Protectionに対してΔpHを少なくとも約80%、又は約30%、60%、65%、75%、85%、90%、若しくは95%低減させ、それによって、ラットう蝕実験においてプラセボ又は水対照に対して少なくとも約9%、又は約1%、6%、7%、8%、10%、11%、若しくは12%う蝕を低減することができる剤が挙げられる。
【0059】
好適な抗菌剤としては、ホップアルファ酸、ホップベータ酸、水素化ホップ酸、及び/又はこれらの組み合わせなどのホップ酸が挙げられる。他の好適な抗菌剤としては、スズイオン源、亜鉛イオン源、銅イオン源、及び/又はこれらの組み合わせなどの金属イオン源が挙げられる。他の好適な抗菌剤としては、トリクロサン、モクレン属(Magnolia)の任意の種からの抽出物、カラハナソウ属(Humulus)の任意の種からの抽出物が挙げられる。他の好適な抗菌剤としては、ホップ酸、スズイオン源、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、酢酸メンチルグリシル、乳酸メンチル、L-メントール、o-ネオメントール、クロロフィリン銅錯体、フェノール、オキシキノリン、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の好適な抗菌剤としては、塩基性アミノ酸などの1つ以上のアミノ酸が挙げられる。
【0060】
口腔ケア組成物は、約0.01%~約10%、約1%~約5%、又は約0.5%~約15%の抗菌剤を含み得る。全てではないがいくつかの好適な抗菌剤について別々に論じる。
【0061】
表面吸着安定剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の抗う蝕剤を含み得、当該1つ以上の抗う蝕剤は、1つ以上の表面吸着安定剤を含み得る。表面吸着安定剤は、エナメル質表面上に吸着することができる任意の剤であり得る。好適な表面吸着安定剤は、FフリーHAP溶解法において水に対して少なくとも17%、少なくとも5%、又は少なくとも20%、少なくとも30%、及び/又は少なくとも15%溶解度を低下させ、それによって、ラットう蝕実験においてプラセボ又は水対照に対して少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、及び/又は18%う蝕を低減することができる任意の化合物であり得る。
【0062】
好適な表面吸着安定剤としては、スズイオン源、亜鉛イオン源、銅イオン源、アルミニウムイオン源、チタンイオン源、及び/又はこれらの組み合わせなどの金属イオン源が挙げられる。他の好適な表面吸着安定剤としては、生物活性材料、アミノ酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。全てではないがいくつかの好適な表面吸着安定剤について別々に論じる。
【0063】
ホップ
本発明の口腔ケア組成物は、式I及び/又は式IVからの少なくとも1つのホップ化合物を含み得る。式I及び/又は式IVの化合物は、Humulus lupulus、すなわちホップからの抽出物、ホップ自体、合成的に誘導される化合物、及び/又はこれらの塩、プロドラッグ、若しくは他の類似体などの任意の好適な源によって提供され得る。ホップ抽出物は、1つ以上のホップアルファ酸、1つ以上のホップイソ-アルファ酸、1つ以上のホップベータ酸、1つ以上のホップ油、1つ以上のフラボノイド、1つ以上の溶媒、及び/又は水を含み得る。好適なホップアルファ酸(一般的に式Iに示される)は、フムロン(式II)、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロン、及び/又はこれらの混合物を含み得る。好適なホップイソ-アルファ酸は、シス-イソフムロン及び/又はトランス-イソフムロンを含み得る。フムロンのシス-イソフムロン及びトランス-イソフムロンへの異性化は、式IIIによって表すことができる。
【0064】
【0065】
【0066】
好適なホップベータ酸は、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、及び/又はこれらの混合物を含み得る。好適なホップベータ酸は、式IV、V、VI、及び/又はVIIに記載の化合物を含み得る。
【0067】
【0068】
【0069】
ホップアルファ酸は、多少の抗菌活性を示すことができるが、ホップアルファ酸は苦味も有する。ホップアルファ酸によって提供される苦さは、ビールには適している場合があるが、口腔ケア組成物における使用には適していない。対照的に、ホップベータ酸は、より高い抗菌及び/又は抗う蝕活性に関連し得るが、苦味を有さない。したがって、アルファ酸に対するベータ酸の比率が自然界に通常みられるよりも高いホップ抽出物は、抗菌及び/又は抗う蝕剤として使用するための口腔ケア組成物において使用するのに好適であり得る。
【0070】
天然ホップ源は、ホップの品種に応じてホップ源の約2重量%~約12重量%のホップベータ酸を含み得る。ビールの醸造などの他の状況で使用されるホップ抽出物は、当該抽出物の約15重量%~約35重量%のホップベータ酸を含み得る。本明細書において望ましいホップ抽出物は、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、約35%~約95%、約40%~約90%、又は約45%~約99%のホップベータ酸を含み得る。ホップベータ酸は、酸性形態であってもよく(すなわち、ヒドロキシ官能基(複数可)に水素原子(複数可)が結合している)、又は塩形態であってもよい。
【0071】
好適なホップ抽出物は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第7,910,140号に詳細に記載されている。所望のホップベータ酸は、水素化されていなくても、天然には存在しない化学反応によって部分的に水素化されていても、又は天然には存在しない化学反応によって水素化されていてもよい。ホップベータ酸は、水素化ホップ酸及び/又はホップ酸を本質的に含んでいなくてもよく、又は実質的に含んでいなくてもよい。天然には存在しない化学反応は、ホップではみられない化学化合物を用いて行われた化学反応であり、例えば、野生においては通常ホップが経験しない高熱及び/又は金属触媒を用いて行われる化学水素化反応である。
【0072】
天然ホップ源は、当該ホップ源の約2重量%~約12重量%のホップアルファ酸を含み得る。ビールの醸造などの他の状況で使用されるホップ抽出物は、当該抽出物の約15重量%~約35重量%のホップアルファ酸を含み得る。本明細書において望ましいホップ抽出物は、当該ホップ抽出物の約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満のホップアルファ酸を含み得る。
【0073】
ホップ油は、ミルセン、フムレン、カリオフィレン、及び/又はこれらの混合物などのテルペン炭化水素を含み得る。本明細書において望ましいホップ抽出物は、当該抽出物の5重量%未満、2.5重量%未満、又は2重量%未満の1つ以上のホップ油を含み得る。
【0074】
ホップ抽出物中に存在するフラボノイドは、キサントフモール、8-プレニルナリンゲニン、イソキサントフモール、及び/又はこれらの混合物を含み得る。ホップ抽出物は、1つ以上のフラボノイドを実質的に含んでいなくてもよく、本質的に含んでいなくてもよく、含んでいなくてもよく、又は250ppm未満、150ppm未満、及び/若しくは100ppm未満有していてもよい。
【0075】
米国特許第5,370,863号に記載されているように、ホップ酸は、既に口腔ケア組成物に添加されている。しかしながら、米国特許第5,370,863号によって教示されている口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の0.01重量%以下しか含まれていなかった。理論に束縛されることを望むものではないが、米国特許第5,370,863号は、ホップアルファ酸の苦さが原因で、少量のホップ酸しか組み込むことができなかった。低濃度のホップアルファ酸を有するホップ抽出物は、この懸念を有さないであろう。
【0076】
ホップ化合物は、モクレン属(Magnolia)の種などの別の植物からの抽出物と組み合わせてもよく、当該抽出物を含んでいなくてもよい。ホップ化合物は、トリクロサンと組み合わせてもよく、トリクロサンを含んでいなくてもよい。
【0077】
口腔ケア組成物は、本明細書に記載されるように、約0.01%~約10%、0.01%超~約10%、約0.05%~約10%、約0.1%~約10%、約0.2%~約10%、約0.2%~約10%、約0.2%~約5%、約0.25%~約2%、約0.05%~約2%、又は0.25%超~約2%のホップベータ酸を含み得る。ホップベータ酸は、好適なホップ抽出物、ホップ植物自体、又は合成的に誘導される化合物によって提供され得る。ホップベータ酸は、中性、酸性の化合物、及び/又はナトリウム、カリウム、アンモニア、又は任意の他の好適な対イオンなどの好適な対イオンとの塩として提供され得る。
【0078】
ホップベータ酸は、抽出物の少なくとも35重量%のホップベータ酸及びホップ抽出物の1重量%未満のホップアルファ酸を含む、ホップからの抽出物などのホップ抽出物によって提供され得る。口腔ケア組成物は、本明細書に記載されるように、0.01%~約10%、0.01%超~約10%、約0.05%~約10%、約0.1%~約10%、約0.2%~約10%、約0.2%~約10%、約0.2%~約5%、約0.25%~約2%、約0.05%~約2%、又は0.25%超~約2%のホップ抽出物を含み得る。
【0079】
フッ化物イオン源
口腔ケア組成物は、フッ化物を含み得る。フッ化物は、フッ化物イオン源によって提供され得る。フッ化物イオン源は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のフッ化物含有化合物を含むことができる。
【0080】
フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化第一スズなどの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン源が塩化第一スズであり、フッ化物イオン源がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである場合など、別個の化合物であり得る。
【0081】
フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化亜鉛などの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン源がリン酸亜鉛であり、フッ化物イオン源がフッ化第一スズである場合など、別個の化合物であり得る。
【0082】
フッ化物イオン源は、フッ化第一スズを本質的に含んでいなくてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、又は含んでいなくてもよい。したがって、口腔ケア組成物は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物を含み得る。
【0083】
口腔ケア組成物は、約50ppm~約5000ppm、好ましくは約500ppm~約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができるフッ化物イオン源を含み得る。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、口腔ケア組成物中に、当該口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。あるいは、口腔ケア組成物は、フッ化物イオン源を0.1%未満、0.01%未満含んでいてもよく、本質的に含んでいなくてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、又は含んでいなくてもよい。
【0084】
抗う蝕活性の目的のためのフッ化物イオン源の治療量以下の量は、1100ppm未満、800ppm未満、650ppm未満、500ppm未満、500ppm以下、250ppm未満、250ppm以下、及び/又はこれらの組み合わせを含む口腔ケア組成物を含み得る。治療量以下の量のフッ化物イオン源は、本明細書に更に記載されるように、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、及び/又はこれらの組み合わせなどの測定可能な抗う蝕効果を有するが、対象となる任意の管轄における規制当局によって必要とされる治療量の抗う蝕効果は有しない。
【0085】
スズイオン源
本発明の口腔ケア組成物は、スズイオン源などからのスズを含み得る。スズイオン源は、口腔ケア組成物中にスズイオンを提供することができ、及び/又は歯磨剤組成物が口腔に適用されるときに、口腔にスズイオンを供給することができる任意の好適な化合物であり得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、酸化第一スズ、シュウ酸第一スズ、硫酸第一スズ、硫化第一スズ、フッ化第二スズ、塩化第二スズ、臭化第二スズ、ヨウ化第二スズ、硫化第二スズ、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のスズ含有化合物を含み得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及び/又はこれらの混合物を含み得る。スズイオン源はまた、塩化第一スズなどのフッ化物フリーのスズイオン源であってもよい。
【0086】
口腔ケア組成物は、当該口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%のスズイオン源を含み得る。
【0087】
Caイオン源
本発明の口腔ケア組成物は、カルシウムイオン源などからのカルシウムを含み得る。カルシウムイオン源は、口腔ケア組成物中にカルシウムイオンを提供することができる、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されたときに、口腔にカルシウムイオンを送達することができる任意の好適な化合物又は分子であり得る。カルシウムイオン源は、カルシウム塩、カルシウム研磨剤、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。場合によっては、カルシウム塩をカルシウム研磨剤とみなすこともあり、又はカルシウム研磨剤をカルシウム塩とみなすこともある。
【0088】
カルシウムイオン源は、カルシウム研磨剤を含み得る。カルシウム研磨剤は、口腔ケア組成物中にカルシウムイオンを提供することができ、及び/又は口腔ケア組成物が口腔に適用されるときに、口腔にカルシウムイオンを供給することができる任意の好適な研磨剤化合物であり得る。カルシウム研磨剤は、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(PCC)、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、チョーク、リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のカルシウム研磨剤化合物を含み得る。
【0089】
カルシウムイオン源は、カルシウム塩、又は口腔ケア組成物中にカルシウムイオンを提供することができる、及び/若しくは研磨剤として作用することができない口腔ケア組成物が口腔に適用されたときに、口腔にカルシウムイオンを送達することができる化合物を含み得る。カルシウム塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酸化カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、及び/又はこれらの組み合わせなどの1つ以上のカルシウム化合物を含み得る。
【0090】
カルシウムイオン源は、本明細書に記載される未処理バイオフィルムのiPUM-Caの少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍のiPUM-Caを有し得る。
【0091】
口腔ケア組成物は、約5重量%~約70重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%のカルシウムイオン源を含み得る。
【0092】
緩衝剤
口腔ケア組成物は、緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、口腔内の選択された部位で特定のpHを維持することができる弱酸又は塩基であり得る。例えば、緩衝剤は、細菌によって生成されるプラーク酸の影響を軽減するために、歯の表面におけるpHを維持することができる。緩衝剤は、口腔ケア組成物中にも存在するイオンの共役酸を含み得る。例えば、カルシウムイオン源が炭酸カルシウムを含む場合、緩衝剤は、重炭酸アニオン(-HCO3
-)を含み得る。緩衝剤は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムなどの共役酸/塩基対を含み得る。
【0093】
好適な緩衝系は、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩/重炭酸塩、トリス緩衝液、イミダゾール、尿素、ホウ酸塩、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。好適な緩衝剤としては、重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩、グリシン、オルトホスフェート、アルギニン、尿素、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
口腔ケア組成物は、約0.5%~約30%、約5%~約25%、又は約10%~約20%の1つ以上の緩衝剤を含み得る。
【0095】
バイオフィルム変性剤
口腔ケア組成物は、1つ以上のバイオフィルム変性剤を含み得る。バイオフィルム変性剤は、ポリオール、アンモニア生成化合物、及び/又はグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤を含み得る。
【0096】
ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル官能基を有する有機化合物である。ポリオールは、口腔ケア組成物が使用前に保存されている間、スズイオンに弱く会合、相互作用、又は結合することができる任意の好適な化合物であり得る。ポリオールは、式(CHOH)nH2を有する糖化合物の水素化を通して得ることができるポリオールの部類である、糖アルコールであり得る。ポリオールは、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、及び/又はこれらの組み合わせであり得る。口腔ケア組成物は、当該口腔ケア組成物の約0.01重量%~約70重量%、約5重量%~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約25重量%、又は約20重量%~約80重量%のポリオールを含み得る。
【0097】
アンモニア生成化合物は、口腔への送達時にアンモニアを生成することができる任意の好適な化合物であり得る。好適なアンモニア生成化合物としては、アルギニン、尿素、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。口腔ケア組成物は、約0.01%~約10%、約1%~約5%、又は約1%~約25%の1つ以上のアンモニア生成化合物を含み得る。
【0098】
グルコシルトランスフェラーゼ阻害剤は、グルコシルトランスフェラーゼを阻害することができる任意の好適な化合物であり得る。グルコシルトランスフェラーゼは、天然のグリコシド結合を確立することができる酵素である。特に、これらの酵素は、う蝕に関連する細菌のために、多糖又はオリゴ糖部分を単糖に分解する。したがって、このプロセスを阻害することができる任意の化合物は、う蝕を予防するのに役立ち得る。好適なグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤としては、オレイン酸、エピカテキン、タンニン、タンニン酸、モエノマイシン、カスポファンギン、エタンブトール、ルフェヌロン、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。口腔ケア組成物は、約0.001%~約5%、約0.01%~約2%、又は約1%の1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ阻害剤を含み得る。
【0099】
金属イオン源
口腔ケア組成物は、1つ以上の金属イオンを含む金属イオン源などからの金属を含み得る。金属イオン源は、本明細書に記載されているように、スズイオン源及び/又は亜鉛イオン源を含んでいてもよく、又はそれに加えてもよい。好適な金属イオン源としては、Sn、Zn、Cu、Mn、Mg、Sr、Ti、Fe、Mo、B、Ba、Ce、Al、In及び/又はこれらの混合物などであるがこれらに限定されない金属イオンを有する化合物が挙げられる。微量金属源は、好適な金属並びに任意の付随するリガンド及び/又はアニオンを含む任意の化合物であり得る。
【0100】
金属イオン源と対をなすことができる好適なリガンド及び/又はアニオンとしては、酢酸、硫酸アンモニウム、安息香酸、臭化物、ホウ酸、炭酸、塩化物、クエン酸、グルコン酸、グリセロリン酸、水酸化物、ヨウ化物、酸化物、プロピオン酸、D-乳酸、DL-乳酸、オルトリン酸、ピロリン酸、硫酸、硝酸、酒石酸、及び/又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
口腔ケア組成物は、約0.01重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、又は約0.5重量%~約15重量%の金属イオン源を含み得る。
【0102】
生体活性物質
口腔ケア組成物はまた、歯の再石灰化に好適な生体活性物質も含むことができる。好適な生体活性物質としては、生体活性ガラス、Novamin(商標)、Recaldent(商標)、ヒドロキシアパタイト、1つ以上のアミノ酸、例えば、アルギニン、シトルリン、グリシン、リジン、若しくはヒスチジンなど、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アルギニンを含む組成物の好適な例は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される米国特許第4,154,813号及び同第5,762,911号にみられる。他の好適な生体活性物質としては、任意のリン酸カルシウム化合物が挙げられる。他の好適な生体活性物質としては、カルシウム源及びホスフェート源を含む化合物が挙げられる。
【0103】
アミノ酸は、アミン官能基、カルボキシル官能基、及び各アミノ酸に特異的な側鎖を含有する有機化合物である。好適なアミノ酸としては、例えば、正又は負の側鎖を有するアミノ酸、酸性又は塩基性の側鎖を有するアミノ酸、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖を有するアミノ酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なアミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせも挙げられる。
【0104】
生体活性ガラスは、ヒドロキシアパタイトと同様の割合で存在し得るカルシウム及び/又はホスフェートを含んでいる。これらのガラスは、組織に結合でき、生体適合性である。生体活性ガラスとしては、ホスホペプチド、カルシウム源、ホスフェート源、シリカ源、ナトリウム源、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0105】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約10重量%の生体活性物質を含んでもよい。
【0106】
研磨剤
口腔ケア組成物は、本明細書に記載のカルシウム研磨剤、及び/又は非カルシウム研磨剤、例えば、ベントナイト、シリカゲル(それ自体、及び任意の構造のもの)、沈降シリカ、非晶質沈降シリカ(それ自体、及び更に任意の構造のもの)、水和シリカ、パーライト、二酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、焼成アルミナ、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、不溶性炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、粒子状熱硬化性樹脂、及び他の好適な研磨材料を含み得る。このような材料を口腔ケア組成物に導入して、標的歯磨剤製剤の研磨特性を調整することができる。口腔ケア組成物は、当該口腔ケア組成物の約5重量%~約70重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約25重量%~約40重量%、又は約1重量%~約50重量%の非カルシウム研磨剤を含み得る。
【0107】
あるいは、口腔ケア組成物は、シリカ、アルミナ、又は任意の他の非カルシウム研磨剤を実質的に含まない、本質的に含まない、又は含まない場合がある。口腔ケア組成物は、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、又は0%の非カルシウム研磨剤、例えば、シリカ及び/又はアルミナを含み得る。
【0108】
水
本発明の口腔ケア組成物は、無水、低含水製剤、又は高含水製剤であり得る。合計で、口腔ケア組成物は、当該組成物の0重量%~約99重量%、約5重量%~約75重量%、約20重量%以上、約30重量%以上、又は約50重量%以上の水を含み得る。好ましくは、水は、USP水である。
【0109】
高含水口腔ケア組成物及び/又は練り歯磨き製剤では、口腔ケア組成物は、当該組成物の約45重量%~約75重量%の水を含む。高含水口腔ケア組成物及び/又は練り歯磨き製剤は、当該組成物の約45重量%~約65重量%、約45重量%~約55重量%、又は約46重量%~約54重量%の水を含み得る。水は、高含水製剤に添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に組み込まれてもよい。
【0110】
低含水口腔ケア組成物及び/又は練り歯磨き製剤では、口腔ケア組成物は、当該組成物の約5重量%~約45重量%の水を含む。低含水口腔ケア組成物は、当該組成物の約5重量%~約35重量%、約10重量%~約25重量%、又は約20重量%~約25重量%の水を含み得る。水は、低含水製剤に添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に組み込まれてもよい。
【0111】
無水口腔ケア組成物及び/又は練り歯磨き製剤では、口腔ケア組成物は、当該組成物の約10重量%未満の水を含む。無水組成物は、当該組成物の約5重量%未満、約1重量%未満、又は0重量%の水を含む。水は、無水製剤に添加されてもよく、及び/又は他の成分を含めることによって組成物に組み込まれてもよい。
【0112】
マウスリンス製剤は、約75%~約99%、約75%~約95%、又は約80%~約95%の水を含む。
【0113】
組成物はまた、アルコール、保湿剤、ポリマー、界面活性剤、及び許容性改善剤、例えば着香剤、甘味剤、着色剤及び/又は冷感剤などの、他の経口的に許容し得る担体材料を含み得る。
【0114】
pH
開示される組成物のpHは、約4~約10、約7~約10、7超~約10、8超~約10、7超、7.5超、8超、9超、又は約8.5~約10であり得る。
【0115】
亜鉛イオン源
口腔ケア組成物は、亜鉛イオン源などからの亜鉛を含み得る。亜鉛イオン源は、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ヘキサフルオロジルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及び/又は炭酸亜鉛などの1つ以上の亜鉛含有化合物を含み得る。亜鉛イオン源は、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び/又はクエン酸亜鉛などのフッ化物フリーの亜鉛イオン源であり得る。
【0116】
亜鉛イオン源は、全口腔ケア組成物中に、歯磨剤組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在し得る。
【0117】
ポリホスフェート
口腔ケア組成物は、ポリホスフェート源などからのポリホスフェートを含み得る。ポリホスフェート源は、1つ以上のポリホスフェート分子を含み得る。ポリホスフェートは、オルトホスフェートの脱水及び縮合によって様々な鎖長の直鎖及び環状ポリホスフェートをもたらすことにより、得られる物質の部類である。したがって、ポリホスフェート分子は、一般に、以下に記載されるように、ポリホスフェート分子の平均数(n)で同定される。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、いくつかの環状誘導体が存在する場合もある。
【0118】
好ましいポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、平均して2つ以上のホスフェート基を有するものである。本発明において好ましいものは、式:XO(XPO3)nX(式中、Xは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、又は任意の他のアルカリ金属カチオンであり、nは、平均約2~約21である)を有する直鎖状ポリホスフェートである。カルシウムなどのアルカリ土類金属カチオンは、フッ化物イオン及びアルカリ土類金属カチオンを含む水溶液から不溶性フッ化物塩を形成する傾向があるため、好ましくない。したがって、本明細書に開示される口腔ケア組成物は、ピロリン酸カルシウムを含んでいなくてもよく、本質的に含んでいなくてもよく、又は実質的に含んでいなくてもよい。
【0119】
好適なポリホスフェート分子のいくつかの例としては、例えば、ピロホスフェート(n=2)、トリポリホスフェート(n=3)、テトラポリホスフェート(n=4)、ソーダフォス(sodaphos)ポリホスフェート(n=6)、ヘキサフォス(hexaphos)ポリホスフェート(n=13)、ベネフォス(benephos)ポリホスフェート(n=14)、ヘキサメタホスフェート(n=21)(Glass Hとしても知られる)を挙げることができる。ポリホスフェートとしては、FMC Corporation、ICL Performance Products、及び/又はAstarisによって製造されるポリホスフェート化合物を挙げることができる。
【0120】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1~約20重量%、又は約10重量%以下のポリホスフェート源を含み得る。
【0121】
保湿剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の保湿剤を含んでいてもよく、低濃度の保湿剤を含んでいてもよく、保湿剤を実質的に含んでいなくてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、又は含んでいなくてもよい。湿潤剤は、口腔ケア組成物又は歯磨剤に濃度(body)又は「口当たり」を加えるだけでなく、歯磨剤が乾燥するのを防止する役割を果たす。好適な保湿剤としては、ポリエチレングリコール(様々な異なる分子量で)、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ブチレングリコール、ラクチトール、加水分解水添デンプン、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。口腔ケア組成物は、各々当該口腔ケア組成物の0~約70重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約80重量%の濃度で1つ以上の保湿剤を含み得る。
【0122】
界面活性剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、組成物をより美容的に許容可能にするために使用することができる。界面活性剤は、好ましくは、組成物に洗浄性及び起泡性を付与する洗浄性材料である。好適な界面活性剤は、安全かつ有効な量のアニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、両性、及びベタイン界面活性剤である。
【0123】
好適なアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル基中に8~20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩、及び8~20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのサルコシネートが挙げられる。アニオン性界面活性剤の組み合わせも使用することができる。
【0124】
別の好適な部類のアニオン性界面活性剤は、アルキルホスフェートである。界面活性有機リン酸剤は、エナメル質表面に対して強い親和性を有し、かつペリクルタンパク質を脱着して、エナメル表面に付着したまま留まる十分な表面結合性を有し得る。有機リン酸化合物の好適な例としては、以下の一般構造によって表され、式中、Z1、Z2、又はZ3は同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つが有機部分である、モノ-、ジ-又はトリエステルが挙げられる。Z1、Z2、又はZ3は、任意に1個以上のリン酸基により置換される、直鎖状若しくは分枝状の、1~22個の炭素原子のアルキル又はアルケニル基、アルコキシル化アルキル若しくはアルケニル、(ポリ)サッカライド、ポリオール又はポリエーテル基から選択され得る。
【0125】
【化5】
いくつかの他の剤としては、以下の構造によって表されるアルキル又はアルケニルリン酸エステルが挙げられ、
【0126】
【化6】
式中、R
1は、任意に1個以上のリン酸基により置換される、直鎖状若しくは分枝状の、6~22個の炭素原子のアルキル又はアルケニル基を表し、n及びmは、独立してかつ別個に、2~4であり、a及びbは、独立してかつ別個に、0~20であり、Z及びZは、同一であっても又は異なってもよく、それぞれ、水素、アルカリ金属、アンモニウム、アルカノールアミンなどのプロトン化したアルキルアミン若しくはプロトン化した官能性アルキルアミン、又はR-(OCH2)(OCH)-基を表す。好適な剤の例としては、アルキル及びアルキル(ポリ)アルコキシホスフェート、例えば、ラウリルホスフェート、PPGSセテアレス-10ホスフェート、ラウレス-1ホスフェート、ラウレス-3ホスフェート、ラウレス-9ホスフェート、トリラウレス-4ホスフェート、C
12~18PEG9リン酸塩:及びジラウレス-10リン酸ナトリウムが挙げられる。アルキルホスフェートは、ポリマーであり得る。ポリマーアルキルホスフェートの例としては、高分子部分としての反復アルコキシ基、具体的には、3つ以上のエトキシ、プロポキシイソプロポキシ、又はブトキシ基を含有するものが挙げられる。
【0127】
他の好適なアニオン性界面活性剤は、サルコシネート、イセチオネート、及びタウレート、特にそれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩である。例としては、ラウロイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、パルミトイルサルコシネート、ステアロイルサルコシネート、オレオイルサルコシネート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0128】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム若しくはカリウム、アシルイセチオネート、アシルメチルイセチオネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルアラニネート、アシルグルタム、アシルグリシネート、アシルサルコシネート、メチルアシルタウリン酸ナトリウム、ラウレススルホコハク酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホネート、アルキルベンズスルホネート、ラウロイル乳酸ナトリウム、ラウリルグルコシドヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、及び/又は組み合わせが挙げられる。
【0129】
本明細書において有用な双極性又は両性界面活性剤としては、脂肪族ラジカルが直鎖又は分枝鎖であってよく、脂肪族置換基のうちの1つが8~18個の炭素原子を含有し、1つが例えばカルボキシ、スルホン酸、硫酸、リン酸、又はホスホン酸などのアニオン性水可溶化基を含有する、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられる。好適なベタイン界面活性剤は、米国特許第5,180,577号に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタインとしては、デシルベタイン、すなわち2-(N-デシル-N,N-ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン、すなわち2-(N-ココ-N,N-ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインなどが挙げられる。アミドベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン(CADB)、及びラウラミドプロピルベタインによって例示され得る。他の好適な両性界面活性剤としては、ベタイン、スルタイン、ラウリルアンホ酢酸ナトリウム、アルキルアンホジアセテート、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0130】
本発明において有用なカチオン性界面活性剤としては、例えば、8~18個の炭素原子を含有する1本の長いアルキル鎖を有する四級アンモニウム化合物の誘導体、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0131】
本発明の組成物中で使用できる非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキレンオキシド基(性質上は親水性)と、性質上は脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、ポロキサマーであるPluronics(登録商標)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、並びにこのような材料の組み合わせを挙げることができる。他の好適な非イオン性界面活性剤としては、アルキルグルカミド、アルキルグルコシド、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0132】
1つ以上の界面活性剤はまた、1つ以上の天然及び/又は天然由来の界面活性剤を含んでいてもよい。天然界面活性剤としては、天然物由来の界面活性剤、及び/又は最低限の加工がされた、若しくは未加工の界面活性剤を挙げることができる。天然界面活性剤としては、水素添加、非水素添加、又は部分水素添加植物油、野菜油、チャボトケイソウ油、キャンデリラろう、ココ-カプリレート、カプレート、ジカプリリルエーテル、ラウリルアルコール、ミリスチルミリステート、ジカプリリルエーテル、カプリル酸、カプリルエステル、オクチルデカノエート、オクチルオクタノエート、ウンデカン、トリデカン、デシルオレエート、オレイン酸デシルエステル、セチルパルミテート、ステアリン酸、パルミチン酸、グリセリルステアレート、水素添加、非水素添加、又は部分水素添加植物グリセリド、ポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート、セテアリルアルコール、スクロースポリステアレート、グリセリン、オクタドデカノール、水素添加、部分水素添加、又は非水素添加植物タンパク質、水素添加、部分水素添加、又は非水素添加小麦タンパク質加水分解物、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、グリセリルオレエート、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ナトリウムセテアリルサルフェート、セテアリルアルコール、グリセリルラウレート、カプリントリグリセリド、ココ-グリセリド、レシチン(lectithin)、ジカプリリルエーテル、キサンタンガム、ナトリウムココ-サルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムココイルサルフェート、ナトリウムココイルグルタメート、ポリアルキルグルコシド、例えば、デシルグルコシド、セテアリルグルコシド、セチルステアリルポリグルコシド、ココ-グルコシド、及びラウリルグルコシド、並びに/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。天然界面活性剤としては、例えば、CegeSoft(登録商標)、Cetiol(登録商標)、Cutina(登録商標)、Dehymuls(登録商標)、Emulgade(登録商標)、Emulgin(登録商標)、Eutanol(登録商標)、Gluadin(登録商標)、Lameform(登録商標)、LameSoft(登録商標)、Lanette(登録商標)、Monomuls(登録商標)、Myritol(登録商標)、Plantacare(登録商標)、Plantaquat(登録商標)、Platasil(登録商標)、Rheocare(登録商標)、Sulfopon(登録商標)、Texapon(登録商標)、及び/又はこれらの組み合わせなどのBASFから販売される天然成分のうち任意のものを挙げることができる。
【0133】
界面活性剤の他の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルイセチオン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸及びオレオイルサルコシン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、モノステアリン酸、イソステアリン酸及びラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、N-ラウロイル、N-ミリストイル、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム及びエタノールアミン塩、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、パルミチルベタイン、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどが挙げられる。望ましい追加の界面活性剤としては、グルタミン酸の脂肪酸塩、アルキルグルコシド、タウリン酸の塩、ベタイン、カプリレート、及び/又はこれらの混合物が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、サルフェートフリーであってもよい。
【0134】
口腔ケア組成物は、1つ以上の界面活性剤を各々が口腔ケア組成物の約0.01重量%~約15重量%、約0.3重量%~約10重量%、又は約0.3重量%~約2.5重量%の濃度で含み得る。
【0135】
増粘剤
口腔ケア組成物は、1つ以上の増粘剤を含み得る。増粘剤は、口腔ケア組成物において、歯磨剤及び/又は練り歯磨きを相分離に対して安定化させるゼラチン構造を提供するのに有用であり得る。好適な増粘剤としては、多糖類、ポリマー、及び/又はシリカ増粘剤が挙げられる。
【0136】
増粘剤は、1つ以上の多糖類を含み得る。多糖類のいくつかの非限定例としては、デンプン;デンプンのグリセライト;ガム、例えばカラヤガム(ステルクリアガム)、トラガカントガム、アラビアガム、ガティガム、アカシアガム、キサンタンガム、グアーガム及びセルロースガム;ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum);カラギーナン;アルギン酸ナトリウム;寒天;ペクチン;ゼラチン;セルロース化合物、例えばセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルカルボキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及び硫酸化セルロース;天然及び合成粘土、例えばヘクトライト粘土;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0137】
本明細書において使用するのに好適な他の多糖類としては、カラギーナン、ジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボマー、ポロキサマー、変性セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。カラギーナンは海藻由来の多糖類である。その海藻源によって区別され得る、及び/又は硫酸化の程度及び位置によって区別され得る複数種類のカラギーナンが存在する。増粘剤は、カッパカラギーナン、変性カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、修飾イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、及びこれらの混合物を含むことができる。本明細書での使用に好適なカラギーナンとしては、FMC Companyからシリーズ名「Viscarin」で市販されているものが挙げられ、限定するものではないが、Viscarin TP 329、Viscarin TP 388、及びViscarin TP 389が挙げられる。
【0138】
増粘剤は、1つ以上のポリマーを含み得る。ポリマーは、口腔ケア組成物の様々な重量パーセントの、及び様々な範囲の平均分子範囲の、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、少なくとも1つのアクリル酸モノマーから誘導されたポリマー、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマーであり得る。あるいは、口腔ケア組成物は、無水マレイン酸及びメチルビニルエーテルのコポリマーを含んでいなくてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、又は本質的に含んでいなくてもよい。
【0139】
増粘剤は、1つ以上の無機増粘剤を含み得る。好適な無機増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ増粘剤が挙げられる。有用なシリカ増粘剤としては、例えば、非限定的な例として、ZEODENT(登録商標)165シリカなどの非晶質沈降シリカが挙げられる。他の非限定的なシリカ増粘剤としては、ZEODENT(登録商標)153、163及び167、並びにZEOFREE(登録商標)177及び265シリカ製品(全てEvonik Corporationから入手可能)、並びにAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカが挙げられる。
【0140】
口腔ケア組成物は、0.01%~約15%、0.1%~約10%、約0.2%~約5%、又は約0.5%~約2%の1つ以上の増粘剤を含むことができる。
【0141】
プレニル化フラボノイド
本発明の口腔ケア組成物は、プレニル化フラボノイドを含み得る。フラボノイドは、広範囲の果物、野菜、穀物、樹皮、根、茎、花、茶、及びワインにみられる天然物質の群である。フラボノイドは、抗酸化、抗炎症、抗変異原性、抗癌、及び抗菌の効果などの健康に対する様々な有益な効果を有し得る。プレニル化フラボノイドは、細胞膜への結合を促進するために既に同定されている、少なくとも1つのプレニル官能基(式VIIIに示されるような3-メチルブタ-2-エン-1-イル)を含むフラボノイドである。したがって、理論に束縛されることを望むものではないが、フラボノイドへのプレニル基の付加、すなわちプレニル化は、親分子の親油性を高め、プレニル化分子の細菌細胞膜への浸透を改善することによって、元のフラボノイドの活性を増加させることができると考えられる。親油性を高めて細胞膜への浸透を増加させることは、プレニル化フラボノイドが高LogP値(高親油性)では不溶性に向かう傾向があるため、両刃の剣であり得る。LogPは、抗菌有効性の重要な指標であり得る。
【0142】
したがって、プレニル化フラボノイドという用語は、1つ以上のプレニル官能基を有する天然にみられるフラボノイド、合成的に付加されたプレニル官能基を有するフラボノイド、及び/又は合成的に付加された追加のプレニル官能基を有するプレニル化フラボノイドを含み得る。
【0143】
【0144】
プレニル化分子の構造-活性関係(例えば、構造-MIC関係)を改善する親分子の他の好適な官能基は、親フラボノイドの芳香環のうちの1つ以上の置換された窒素若しくは酸素、アルキルアミノ鎖、又はアルキル鎖を含有する追加の複素環を含む。
【0145】
フラボノイドは、少なくとも2つのフェニル環及び少なくとも1つの複素環式環を有する15炭素骨格を有し得る。いくつかの好適なフラボノイド骨格は、式IX(フラボン骨格)、式X(イソフラバン骨格)、及び/又は式XI(ネオフラボノイド骨格)に示され得る。
【0146】
【0147】
【0148】
フラボノイドの他の好適な下位群としては、アントシアニジン、アントキサンチン、フラバノン、フラバノノール、フラバン、イソフラボノイド、カルコン、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0149】
プレニル化フラボノイドは、合成有機化学の当業者に知られている様々な合成プロセスを通して、1つ以上のプレニル官能基を付加するために合成的に改変された天然に単離されたプレニル化フラボノイド又は天然に単離されたフラボノイドを含み得る。
【0150】
他の好適なプレニル化フラボノイドとしては、ババカルコン、ババチン、ババチニン、コリリホールA、エピメジンA、エピメジンA1、エピメジンB、エピメジンC、イカリイン、イカリシドI、イカリシドII、イカリチン、イソババカルコン、イソキサントフモール、ネオババイソフラボン、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニン、ソフォラフラバノンG、(-)-ソフォラノン、キサントフモール、ケルセチン、マセリグナン、クラリジン、クラリノン、クワノンG、クワノンC、パンデュラチンA、6-ゲラニルナリンゲニン、アウストラロンA、6,8-ジプレニルエリオジクチオール、ドルスマニンC、ドルスマニンF、8-プレニルケンフェロール、7-O-メチルテオン、ルテオン、6-プレニルゲニステイン、イソウィテオン、ルピウィテオン、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。他の好適なプレニル化フラボノイドとしては、カンフラビンA、カンフラビンB、及び/又はカンフラビンCなどのカンナフラビンが挙げられる。
【0151】
好ましくは、プレニル化フラボノイドは、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(S. aureus)については、恐らく約25ppm未満のMICを有する。好適なプレニル化フラボノイドとしては、ババチン、ババチニン、コリリホールA、イカリチン、イソキサントフモール、ネオババイソフラボン、6-プレニルナリンゲニン、8-プレニルナリンゲニン、ソフォラフラバノンG、(-)-ソフォラノン、クラリノン、クワノンC、パンデュラチンA、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0152】
好ましくは、プレニル化フラボノイドは、グラム陰性菌である大腸菌(E. coli)については、恐らく約25ppm未満のMICを有する。好適なプレニル化フラボノイドとしては、ババチニン、イソキサントフモール、8-プレニルナリンゲニン、ソフォラフラバノンG、クラリノン、パンデュラチンA、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0153】
約1000種のプレニル化フラボノイドが植物から同定されている。これまでに報告されているプレニル化フラボノイドの数によれば、プレニル化フラボノンが最も一般的なサブクラスであり、プレニル化フラバノールが最も稀なサブクラスである。天然のプレニル化フラボノイドは、多様な構造的特徴を有することが検出されているにもかかわらず、植物において狭い分布を有し、これらは、ほぼ全ての植物に存在するので親フラボノイドとは異なる。プレニル化フラボノイドのほとんどは、アサ科(Cannabaceae)、オトギリソウ科(Guttiferae)、マメ科(Leguminosae)、クワ科(Moraceae)、ミカン科(Rutaceae)、及びセリ科(Umbelliferae)を含む科にみられる。マメ科及びクワ科は、果物及び野菜として消費されるので、最も頻繁に調査されている科であり、多くの新規のプレニル化フラボノイドが探索されている。アサ科のホップは、ビールの健康効果において重要な役割を果たす8-プレニルナリンゲニン及びキサントフモールを含む。
【0154】
プレニル化フラボノイドは、ホップ抽出物を通して組み込まれてもよく、別々に添加される抽出物に組み込まれてもよく、又は本明細書に開示される口腔ケア組成物の別個の成分として添加されてもよい。
【0155】
他の成分
口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、着香剤、甘味料、着色剤、防腐剤、緩衝剤、又は口腔ケア組成物での使用に好適な他の成分などの様々な他の成分を含み得る。
【0156】
着香剤を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な着香剤としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、メチルサリチレート、ユーカリプトール、カッシア、1-メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α-イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-パラ-tert-ブチルフェニルアセテート、及びこれらの混合物が挙げられる。清涼剤も風味剤系の一部であってもよい。本組成物に好ましい清涼剤は、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(商業的に「WS-3」として知られている)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤、又はN-(エトキシカルボニルメチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(商業的に「WS-5」として知られている)、及びこれらの混合物である。風味剤系は、一般に組成物中で、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%の濃度で用いられる。これらの着香剤は、一般に、アルデヒド、ケトン、エステル、フェノール、酸、並びに脂肪族、芳香族、及び他のアルコールの混合物を含む。
【0157】
製品に快い味を付与するために、甘味料を口腔ケア組成物に添加してもよい。好適な甘味料としては、サッカリン(ナトリウム、カリウム又はカルシウムサッカリンとして)、シクラメート(ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩として)、アセスルファムK、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、スクラロース、ステビア、及びグルコースが挙げられる。
【0158】
製品の審美的外観を改善するために、着色剤を添加してもよい。好適な着色剤としては、限定するものではないが、FDAなどの適切な規制機関によって承認された着色剤、及び欧州食品医薬品指令(European Food and Pharmaceutical Directives)に列挙されている着色剤が挙げられ、TiO2などの顔料、並びにFD&C及びD&C染料などの色素を含む。
【0159】
細菌増殖を防止するために、防腐剤もまた、口腔ケア組成物に添加されてもよい。メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、及び安息香酸ナトリウムなどの、口腔用組成物中での使用が承認された適切な防腐剤を、安全かつ有効な量で添加することができる。
【0160】
二酸化チタンもまた本発明の組成物に加えられてもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、口腔ケア組成物の約0.25重量%~約5重量%を含む。
【0161】
減感剤、治癒剤、他のう蝕予防剤、キレート剤/金属イオン封鎖剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、他の抗歯垢/抗歯石剤、乳白剤、抗生物質、抗酵素類、酵素類、pH調整剤、酸化剤、酸化防止剤などの他の成分を、口腔ケア組成物中で使用することができる。
【実施例】
【0162】
本発明は、以下の実施例によって更に例示され、これは、いかなる意味においても本発明の範囲に限定を課すものとして解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨又は添付の特許請求の範囲の範疇から逸脱することなく、それらの様々な他の態様、修正、及び均等物が、当業者に想到され得る。
【0163】
ADA1分間放出によるスラリー中のF含有量
ラットう蝕処理スラリー中のフッ化物含有量は、ADA1分間放出法を使用して推定することができる。正確な方法論は、そのシール承認プログラムの一部としてADAによって維持され、協会から入手可能である。本明細書で使用される方法の概要を以下に説明する。ADAはまた、口腔ケア製品中のイオン性フッ化物含有量を求めるための例示的なイオン選択的電極法のためのANSI/ADA標準116番の口腔すすぎ又はISO16408の歯科医-口腔衛生製品-口腔すすぎも参照する。
【0164】
フッ化物原液(0.5mg/mL、500ppm、Ricca、RC3172-16(Arlington,TX))を脱イオン水を用いて希釈して、5ppm、25ppm、50ppm、及び250ppmの溶液を作製した。各標準をTISAB II(Ricca(Arlington,TX))緩衝液と1:1の比で希釈して、較正溶液を作製する(フッ化第一スズサンプルについての較正溶液を意図する場合TISAB IV(Ricca(Arlington,TX))。
【0165】
較正溶液を使用して較正曲線を作成した。200μLの25ppm較正溶液をマイクロサンプルカップに入れた。フッ化物電極(VWR(Radnor、PA))を溶液に入れ、電極メータ(VWR(Radnor、PA))を読み取ることによって各サンプルのmVを記録する。各調製された較正溶液について、この手順を繰り返した。mV対Log[F-]をプロットすることによって較正曲線を構築した。
【0166】
70mLの高速ミキサーカップ内で、約4gの各ペーストサンプルを秤量することによって、ペースト歯磨剤サンプルを調製した。次に、12mLの脱イオンをサンプルカップに添加した。高速ミキサーカップを、Speedmixer Program#7(800rpmで5秒間の後、2200rpmで55秒間)を使用して60秒間混合した(FlackTek Speedmixer(Landrum,SC))。スラリーサンプルを遠心管に移した後、11,000rpmで10分間遠心分離した。
【0167】
1mLの上清と、1mLの、フッ化ナトリウムサンプルについては新鮮TISAB II及びフッ化第一スズサンプルについてはTISAB IVと合わせることにより、分析用にサンプルを調製した。サンプルをボルテックスミキサーを用いて素早く混合した。200μLの溶液をマイクロサンプルカップに移した。フッ化物電極をキャップに入れた。値(mV)を記録した。
【0168】
以下に提供する式1を用いて、放出されたフッ化物の値を計算した:
【0169】
【数2】
[F]=サンプル上清のフッ化物濃度(ppm)
希釈係数:
NaF及びSnF
2=4-(不溶性原材料の処方中%/100)
*不溶性原材料(IRM)としては、シリカ、二酸化チタン、雲母、及び顆粒が挙げられる。
【0170】
スラリーフッ化物含有量が記録されなかった過去のサンプルについて、記録された配合されたフッ化物含有量、フッ化物源、及び研磨剤の組み合わせに基づいて、ADA1分間フッ化物放出を推定した。場合によっては、ADA1分間フッ化物放出の結果に密接に対応することが知られているとき、すなわちCrest(登録商標)Cavity Protectionについては、配合されたフッ化物含有量を使用した。
【0171】
MFP含有練り歯磨きの場合、イオン選択性電極によって測定することができるように、フッ化物イオンを遊離させるために追加の工程が必要であった。この工程は、上清の単離まで同じであった。上清の単離に続いて、きつく蓋を閉めた気密チューブ内でMFP含有上清のアリコート1.5mLを2N塩酸(VWR(Radnor,PA))2.5mLと合わせ、30秒間激しく混合した。チューブのヘッドスペースは可能な限り最小化した。次いで、それを20分間で50℃に加熱し、周囲のベンチトップ条件で室温まで冷却した。それを冷却したら、2.575mLの2N NaOH(VWR(Radnor,PA))を気密チューブに添加し、蓋をし、30秒間激しく混合した。得られた溶液を再度室温まで冷却した。このアリコートを、TISAB IIで上記したように緩衝し、フッ化物イオン選択性電極を使用して上記のように測定した。ADAフッ化物の放出された値を求めるとき、希釈の適切な補正を行った。
【0172】
USP NaF/シリカ練り歯磨きについては約95%~100%、又はUSP SnF2/シリカ練り歯磨きについては約70%~約85%のADAフッ化物の放出を実現することによって、方法を実行する分析者の能力を首尾よく実証することができる。イオン選択電極におけるF較正曲線の相関係数は、0.995以上でなければならない。サンプル読み取り前後で結果を階層区分するチェック標準を実行することによって、精度を確認する。
【0173】
Snフリーインビトロ歯垢解糖及び再成長モデル
インビトロ歯垢解糖モデル(iPGRM)は、歯垢をヒト唾液から成長させ、様々な剤で処理して治療の抗解糖活性を求める技術である。酵素の助けを借りて細菌が糖をエネルギーに変換すると、酸が形成される。これらの酸は、歯のエナメル質を脱灰し、損傷させる。この技術の目的は、処理化合物が、歯垢微生物が酸若しくは毒素を生成するために利用する代謝経路に対する阻害効果を有する及び/又はその成長を阻害するかどうかを判定するための簡便な方法を提供することである。ここでの研究の目的のために、試験治療用組成物がSnを含有する場合、Snプラセボを試験するか又は正確に制御しなければならない。更に、抗菌組成物は、抗菌組成物のみのiPGRM値を求めるために、そのプラセボに関して試験するべきである。これは、抗菌組成物に加えてバッファ、例えば、重炭酸塩、オルトリン酸塩、炭酸カルシウムが組成物中に存在する場合に重要である。
【0174】
ロッドが吊るされており、インキュベーションオーブンの内側で往復運動によって移動するラックを用いてガラスロッドを往復運動で培地に浸したり出したりすることによって、37℃で2日間にわたって、新鮮なプールされたヒト唾液及びトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)から歯垢バイオフィルムをガラスロッド上で成長させた。水(1:5)中の又は水で希釈処理された(1:5)歯磨剤スラリーで2分間処理した。処理後、pH指示試薬が色の変化を示すまで(~6時間)、バイオフィルムをTSB及びスクロースと共にインキュベートした。次いで、培地溶液のpHを測定して、陰性対照に対する解糖阻害の量を求めた。
【0175】
1日目の前であるが1日目の1週間以内に、240、320、400、及び600グリットの炭化ケイ素ペーパーを連続して使用して旋盤上で非テーパ状の端部からおよそ25mmだけ新たなガラスロッド(5mm×90mm)を研磨する。最初の研磨後、各試験前にロッドを600グリットのペーパーで研磨しなければならない。研磨後、試験準備が整うまでロッドを保管した。1ラック分処理するのに十分なロッドを研磨しなければならない。ラックは12個の組成物を処理することができ、各組成物が4つの複製物を有するので、ラックは48本のロッドを有する。
【0176】
1日目に、パラフィン刺激によって5~10人のパネルから試験中に唾液を毎日回収し、必要になるまで終日4℃で冷蔵しておいた。唾液を慎重にプールし(ワックス/粘液に注がない)、使用前に十分に混合する。任意の抗菌薬又は唾液流を調節する医薬を服用しておらず、かつCrest Cavity Protectionを用いて定期的にブラッシングしている、疾患を有しないパネリストから唾液を収集しなければならない。ロッドを保管から取り出し、脱イオン水ですすいで任意の研磨残渣を除去し、70%エタノール/水溶液で消毒し、滅菌表面上で乾燥させた。続いて、成長培地を含む培地バイアルにロッドを連続的に浸漬するために使用したホルダーの吊り下げラックにロッドを取り付けた。ロッドの高さを調整し、ゴムOリングを使用して各ロッドを所定の位置に固定した。午後の早い時間に、7mLの成長培地(3%スクロース(VWR(Radnor,PA))を含む3%TSB(VWR(Radnor,PA))の溶液160gを、プールされたヒト唾液240gと混合した。このTSB/スクロース溶液は、プールされたヒト唾液と組み合わせる前にオートクレーブによって滅菌しなければならない)を培地バイアルに入れた。インキュベーションオーブン内のラックに吊り下げられているロッドの下に、培地バイアルを配置した。インキュベーターは、ロッドが培地バイアルの壁に接触することなく、1分あたり1回浸漬する頻度で、ロッドの1.5cmが成長培地に浸かるように、浸漬モータがロッドを培地バイアルに浸漬することができるように、予め改造されている。このようにしてロッドを一晩浸漬した。
【0177】
2日目に、濃縮成長培地を調製した(3%TSB及び10%スクロースの溶液500gを、プールされたヒト唾液33gと混合した。このTSB/スクロース溶液は、プールされたヒト唾液と組み合わせる前にオートクレーブによって滅菌しなければならない)。この濃縮成長培地を、培地バイアルの新しいセットにピペットで移し(バイアル1本あたり7mL)、1日目からの一晩成長培地と交換した。ロッドを、インキュベーションオーブン内において37℃で5時間、この濃縮成長培地中に終日浸漬した。1日の終わりに、新たな一晩成長培地を調製し(3%TSB溶液40gを、プールされたヒト唾液360g及びスクロース0.5gと混合した)、培地バイアルの新しいセットにピペットで移し、濃縮成長培地と交換した。ロッドを、最初の日と同様に一晩浸漬した。
【0178】
3日目に、0.15gのTSB、25gのスクロース、及び500mLの脱イオン水を組み合わせることによって解糖培地を調製し、水中0.03%TSB及び0.5%スクロースの溶液を得た。この溶液を混合し、次いで、オートクレーブ内で滅菌した。次いで、0.1M HClを使用してpHを6.5に調整し、新たな培地バイアルにピペットで移した(7mL)。pHブランクとしてロッドのラックに必要な数よりも2本余計にバイアルを入れた。陰性対照処理群(Crest Cavity Protectionスラリー)については、2滴のクロロフェノール赤色溶液を、解糖培地を含有する4本のチューブの各々に添加した。陽性対照処理群(1%クロルヘキシジン溶液)については、3滴のブロモクレゾール紫色溶液を、解糖培地を含有する2本のチューブに添加した。処理が完了するまで、ラックを取り出しておく。12mLの脱イオン水を含有する2セットのバイアルを調製して、処理液をすすぐ。ホモジナイズされた処理及び水の処理スラリー/溶液(7mL)を含有するバイアルを調製した。ロッドを処理バイアルに2分間浸漬し、第1のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、第2のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、第3のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、インキュベーターラックに戻した。ロッド上のバイオフィルムは、培地、処理、又はバイオフィルムを除去するすすぎバイアルのいずれの壁にも接触しないことが非常に重要である。バイオフィルム全体を処理し、すすいだ。全ての処理が完了したら、ロッド上のバイオフィルムを、インキュベーションオーブン内の解糖培地中に完全に浸したが、2時間浸漬しなかった。2時間後、浸漬装置を起動させた。合計インキュベーション時間は、3~7時間であった。陰性対照の解糖培地中のpH値が4.8~5.6、より理想的には4.9~5.2になったとき、そして、陽性対照の解糖培地中のpH値が陰性対照を超えたときに、インキュベーションを終了させる。陽性対照中の指示色素が黄色になった場合、すなわち、pHが5.2未満に低下した場合、インキュベーションが長過ぎたので、試験を繰り返す必要がある。
【0179】
3日目のインキュベーション終了後、ロッドを解糖培地から取り出し、オーブン内で乾燥させた。解糖培地をインキュベーションオーブンから除去し、室温に戻し、各バイアル及びブランクバイアルにおいてpHを測定して、処理後の培地の平均pH変化を求めた。ブランクバイアルに対するpHの変化を求める。ブランクの最終pHが6.6未満である場合、試験を繰り返す必要がある。陽性対照と陰性対照との間の差がスチューデントのt検定において有意でない場合、試験を繰り返す必要がある。ブランクに対する陰性対照のpHの変化が1未満である場合、試験を繰り返す必要がある。
【0180】
全てのバイアルのpH値を測定した後、ブランクの平均pHからそのpHを差し引くことによってバイアル1本あたりのΔpHを求めた。以下の式から解糖阻害有効性を求める。1処理あたり4本の複製バイアルからの結果を平均することによって、処理の平均ΔpHを求めた。
【0181】
【数3】
陽性対照(1%クロルヘキシジン溶液)の効力が陰性対照(Crest Cavity Protection(Procter&Gamble(Cincinnati,OH))に対して約65%~約85%ではない場合、試験を繰り返す必要がある。
【0182】
カルシウムのインビトロ歯垢取り込み法
インビトロ歯垢取り込みモデル(iPUM)は、解凍した形態の凍結ヒト唾液から歯垢を成長させ、様々な剤で処理して、エナメル質成分の歯垢への取り込みを求める技術である。ガラスロッドを往復運動で培地に浸したり出したりすることによって、37℃で3日間にわたって、冷凍したプールされたヒト唾液及びトリプチカーゼ大豆ブロス(TSB)から歯垢バイオフィルムをガラスロッド上で成長させた。滅菌水中歯磨剤スラリー(1:5)で2分間処理した。処理後、バイオフィルムを乾燥させ、計量し、消化し、ISE(フッ化物)又はICP-OES(Ca、Sn、Znなど)のいずれかによって分析する。
【0183】
1日目の前であるが1日目の1週間以内に、240、320、400、及び600グリットの炭化ケイ素ペーパーを連続して使用して旋盤上で非テーパ状の端部からおよそ25mmだけ新たなガラスロッド(5mm×90mm)を研磨する。最初の研磨後、各試験前にロッドを600グリットのペーパーで研磨しなければならない。研磨後、試験準備が整うまでロッドを保管した。1ラック分処理するのに十分なロッドを研磨しなければならない。ラックは12個の組成物を処理することができ、各組成物が4つの複製物を有するので、ラックは48本のロッドを有する。パラフィン刺激によって5~10人のパネルから唾液を毎日回収し、一晩凍結させた。唾液を慎重にプールし(ワックス/粘液に注がない)、使用前に十分に混合する。試験全体にわたって持ちこたえるように研究の開始前に十分な唾液を凍結させなければならない。任意の抗菌薬、又は唾液流を調節する医薬を服用しておらず、かつCrest Cavity Protectionを用いて定期的にブラッシングしている、疾患を有しないパネリストから唾液を収集しなければならない。
【0184】
1日目に、ロッドを保管から取り出し、脱イオン水ですすいで任意の研磨残渣を除去し、70%エタノール/水溶液で消毒し、滅菌表面上で乾燥させた。続いて、成長培地を含む培地バイアルにロッドを連続的に浸漬するために使用したホルダーの吊り下げラックにロッドを取り付けた。ロッドの高さを調整し、ゴムOリングを使用して各ロッドを所定の位置に固定した。午後の早い時間に、7mLの成長培地(3%スクロース(VWR(Radnor,PA))を含む3%TSB(VWR(Radnor,PA))溶液160gを、解凍したプールされたヒト唾液240gと混合した。このTSB/スクロース溶液は、プールされたヒト唾液と組み合わせる前にオートクレーブによって滅菌しなければならない。凍結させた唾液は、冷蔵庫で、又は温かいが熱くはない水のバケツ内で解凍することができる)を培地バイアルに入れた。インキュベーションオーブン内のラックに吊り下げられているロッドの下に、培地バイアルを配置した。インキュベーターは、ロッドが培地バイアルの壁に接触することなく、1分あたり1回浸漬する頻度で、ロッドの1.5cmが成長培地に浸かるように、浸漬モータがロッドを培地バイアルに浸漬することができるように、予め改造されている。このようにしてロッドを一晩浸漬した。
【0185】
2日目及び3日目に、濃縮成長培地を調製した(3%TSB及び10%スクロースの溶液500gを、解凍したプールされたヒト唾液33gと混合した。このTSB/スクロース溶液は、プールされたヒト唾液と組み合わせる前にオートクレーブによって滅菌しなければならない)。この濃縮成長培地を、培地バイアルの新しいセットにピペットで移し(バイアル1本あたり7mL)、一晩成長培地と交換した。ロッドを、インキュベーションオーブン内において37℃で5時間、この濃縮成長培地中に終日浸漬した。1日の終わりに、新たな一晩成長培地を調製し(3%TSB溶液40gを、プールされたヒト唾液360g及びスクロース0.5gと混合した)、培地バイアルの新しいセットにピペットで移し、濃縮成長培地と交換した。ロッドを、最初の日と同様に一晩浸漬した。
【0186】
4日目に、脱イオン水20gを用いて処理組成物4gをホモジナイズすることによって、処理スラリーを調製し、ロッドをそれに浸漬することができるように処理バイアル(7mL)にピペットで移した。スラリーを定刻前に調製した場合、カルシウムの固体源を確実に十分懸濁させるために、処理の直前にピペットを介して撹拌しなければならない。12mLの脱イオン水を含有する2セットのバイアルを調製して、処理液をすすぐ。ロッドを処理バイアルに2分間浸漬し、第1のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、第2のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、第3のセットのすすぎバイアルに10回浸漬してすすぎ、インキュベーターラックに戻した。バイオフィルム全体を処理し、すすいだ。全ての処理が完了したら、ロッド上のバイオフィルムをインキュベーターオーブンに戻して乾燥させた。ロッド上のバイオフィルムは、培地、処理、又はバイオフィルムを除去するすすぎバイアルのいずれの壁にも接触しないことが非常に重要である。
【0187】
ロッドを計量して、バイオフィルムを含むその重量を求めた後にカルシウムの最終分析を行い、50mLのコニカルチューブ内において濃硝酸(BDH(Radnor,PA)、微量金属分析用のAristar Plus)中90℃でロッドを消化し、消化物からロッドを取り外し、消化物を冷却し、脱イオン水で50mLに希釈し、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)又は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)(Agilent(Santa Clara,CA))を介してCaの消化物を分析する。すすいで乾燥させたロッドを計量し、バイオフィルムを含むロッド質量からバイオフィルムを含まないロッド質量を差し引くことによってバイオフィルムの質量を計算した。
【0188】
消化物の分析から各ロッドについてバイオフィルム中の総カルシウム質量を求め、そのロッドのバイオフィルム質量で除して、質量で正規化されたカルシウム取り込みを求め、次いで、複製間で平均した。複製間で平均した実験処理についての質量で正規化されたカルシウム取り込みを、複製間で平均したCrest Cavity Protection処理についての質量で正規化されたカルシウム取り込みで除することによって、実験処理とCrest Cavity Protectionとの間のカルシウム取り込みの比を求めた。
【0189】
Crest Cavity Protection群についての質量で正規化されたカルシウム取り込みは、約0.5~3マイクロgCa/mgバイオフィルムになるはずである。そうでない場合、試験を繰り返さなければならない。Tom’s of Maine Rapid Relief Sensitive(Tom’s of Maine(Kennebunk,ME))についての質量で正規化されたカルシウム取り込みは、Crest Cavity Protectionの約2~3.5倍になるはずである。そうでない場合、試験を繰り返さなければならない。
【0190】
FフリーHAP溶解
選択した試験歯磨剤の酸保護を試験するために、HAP溶解方法を設計した。ヒドロキシアパタイト粉末(HAP)を試験歯磨剤スラリーで処理した後、このHAPを酸性媒体に添加し、pHの変化を表面吸着度の指標とする。pH上昇が小さいほど、表面保護がより良好になる。
【0191】
具体的には、10gの歯磨剤ペーストを、撹拌子を用いて、50mLの容器内で30gの脱イオン水と混合した。容器を撹拌プレート上に置き、2つの成分が混合されるまで混合した。ペーストスラリーを15,000rpmで15分間遠心分離して、上清を単離した。
【0192】
水対照を含む各処理については、0.300gのヒドロキシアパタイト粉末(HAP)を50mLの丸底遠心管に入れた。歯磨剤ペーストを用いる処理では、調製した歯磨剤上清24mLをHAPに添加した。各処理されたHAPサンプルを、直ちに2500rpmで2分間ボルテックス混合(DVX-2500マルチチューブボルテックス(VWR(Radnor,PA))した。次いで、全てのサンプルを15,000rpmで15分間遠心分離した。液相を遠心管からデカントして、HAPペレットを残した。残ったHAPペレットを脱イオン水を添加することによって3回すすぎ、2500rpmで1分間ボルテックス混合し、15,000rpmで15分間遠心分離し、液相を遠心管からデカントした。処理したHAPペレットを55℃のオーブンで一晩乾燥させた。
【0193】
HAPのサンプルをΔpHについて分析した。25mLの10mMクエン酸(1Lの脱イオン水中1.9212gのクエン酸)を、撹拌子と共に50mLビーカーに添加した。ビーカーを撹拌プレート(Metrohm(Herisau,Switerland)、モデル番号728)上に置き、起動させた。Titrano pH電極(Metrohm(Herisau,Switerland)、モデル番号719 S)をクエン酸を含む撹拌ビーカーに入れた。クエン酸溶液を平衡化した後(pHが30秒以内にpH2.5±0.001の最小変化を有するまで)、50mgの乾燥したHAP粉末をクエン酸溶液に添加した。10分でpHを記録した。以下の式Iによって効力%を求めた。
【0194】
【0195】
フッ化物を含有する組成物の場合、フッ化物フリーHAP溶解効力を求め、pH及び対イオン含有量(Na、Snなど)が適切に制御されていることを保証するために、フッ化物を含まない組成物を作製しなければならない。以前のサンプルの場合、既に存在する関係を使用して、サンプルの報告又は配合されたSn含有量に基づいて、HAP溶解効力を推定した。この関係を
図4に示す。
【0196】
水で処理した対照サンプルのpH変化が10分で約1.3~1.5pH単位である場合、方法は正しく実行されている。この結果が得られるまで、方法を実施し、繰り返さなければならない。指針の場合、NaFで処理した対照サンプルとしての1100ppmのFのpH変化は、約0.9~1.1でなければならない。
【0197】
ラットう蝕による虫歯予防性能、以前の方法
抗う蝕性能を確立するために、過去60年にわたって本発明者らの実験室では、2つのラットう蝕方法を使用してきた。本明細書で最初に説明するのは、以前の方法である。後述する第2の方法が、最新の方法である。活性物質の相対的性能は、2つの方法で同様であり、同じ傾向が観察されるが、プラセボに対するう蝕の低減率の計算値は、わずかな調整を必要とする。この変換は、以前の方法のスコアから5.6%を差し引いて最新の方法の等価な値を得ることによって達成される。
【0198】
口腔ケア組成物の虫歯予防性能は、いくつかの方法を使用してラットで実証することができる(Stookey,et al.Adv.Dent.Res.9(3):198-207,1995)。本明細書で提示されるデータは全て、抗う蝕モノグラフにおけるFDA方法37の一部として開示されている方法を使用する。本明細書で提供される例は、本発明者らが過去のデータを収集した方法である。この方法は、以下の論文に更に記載されている:Francis,MD,Arch.Oral Biol.11:141-1489,1966;Briner,WW and Francis,MD,Caries Res.5:180-187,1971;Donaldson,JD,White,WE,Briner,WW,and Cooley,WE,J.Dent.Res.53:648-652,1974。
【0199】
ウィスターラットは、Harlan Industries、Inc.(Cumberland,Ind.)から入手した。それらは、トラックを介して出荷され、0日目に22~23日齢で到着した。同腹仔1セットあたり10匹のランダムな性別の動物の20セットの同腹仔を受け取り、それによって、標準的なラットう蝕試験で使用される200匹の動物が提供された。次いで、各同腹仔からの1匹の動物を、処理群のうちの1つにランダムに割り付け、番号を付けたステンレス鋼製の底部がワイヤのケート(cate)に入れた(同腹仔達は各群において同じ位置を占める;例えば、同腹仔#1の全ての動物を、各処理群の第1のケージに割り付けた)。次いで、動物を計量し、体重をラボブックに記録した。動物に、う蝕誘発食餌#469を自由に与え、脱イオン水を自由に与えた。
【0200】
処理には、柄の長い綿棒の使用が必要であった。脱イオン水で1:1希釈した練り歯磨きを用いて調製したスラリーに綿棒を浸漬する。この希釈物を、処理を適用する前に撹拌プレート上で5分間混合した。ステンレス鋼製保持クランプによってラットの口を開いた状態で把持しながら、前後の動きを6回繰り返して浸漬した綿棒で上顎臼歯をブラッシングした。下顎骨では、綿棒を処理スラリーに浸漬し、次いで、頬に向かって回転させ、それによって、下顎臼歯に到達するように舌の周りを移動させた。この場合も、下顎骨あたり6回転が必要であった。新たな量の練り歯磨きスラリーを用いて、口の反対側でもこの手順を繰り返す。到着後1日目から始めて3日目まで、処理を1日2回適用した。(通常土曜日である4日目及び通常日曜日である5日目は、処理日ではなかった。)6日目~10日目に処理を再開し、週末(11日目及び12日目)は休み、13日目~17日目に再度再開し、18日目及び19日目は休んだ。翌週、動物を20日目及び21日目に処理し、最終体重を得た。
【0201】
最終処理日の翌日である22日目に、動物を断頭によって屠殺した。舌を摘出し、頬を顎の角度に切開した。動物の番号(ケージ番号)が記載されたタグを、8インチの紐で動物の鼻に取り付けた。Tygonチューブの短い片を用いて口を開いた状態で支えた。試験全体から動物を屠殺したら、2%硝酸銀染色溶液のバットに頭部を降ろし、1時間入れておいた。染色から取り出したら、水道水を少なくとも3回交換して頭部をすすいだ。次いで、頭部をアルミホイル箔のベーキングパンに入れ、パンの底部を水道水で覆い、パンをヘビーゲージアルミニウム箔で緩く覆った。
【0202】
染色後、頭部を含有するアルミニウムベーキングパンを約120℃及び10lbs.の圧力で35分間オートクレーブし、その後、蒸気をオフにし、パンを更に15分間放置した後、頭部を取り出した。この手順の後、各ラットの上及び下の臼歯の両方を含有する骨は、周囲の組織から容易に取り外して、将来の同定のために動物の予め番号を付けたプラスチックバイアルに入れることができた。これらのバイアルを24~36時間開けたまま放置して室温で乾燥させ、次いで、切片化するまで閉じておいた。
【0203】
次に、試験用の全てのバイアルを数値的に並べ、対応する動物番号(ラットあたり1つ)及び研究番号を添付した顕微鏡用スライドを作製した。一度に1匹の動物であることを考慮して、各象限を長手方向に半分切片化し、各切片を顕微鏡スライドに恒久的に載せた。各象限は、スライド上において動物の口と同じ位置を占めていた(例えば、右上象限は、スライドの右上隅に載せられた)。
【0204】
30倍の倍率の顕微鏡を使用して、22個の裂溝及び24個の平滑面をスライド/動物ごとに等級付けした。各裂溝をその底部の中央を通る仮想線で分割した後、裂溝の各側に重症度等級を割り当てた。各象限を長手方向に切片化したので、各象限の半分の両方を等級付けし、半裂溝の各対応する平滑面ごとに最も重度の等級を記録する。合計で、スライド/動物あたり68の等級が存在していた。スコア病変重症度の方法は、以下の通りである:
0-部位でエナメル質も象牙質も染色されていない。
1-エナメル質のみ暗褐色で染色されている。
2-象牙質/エナメル接合部に延在するエナメル質は暗褐色で染色されているが、それ以上は染色されていない。
3-エナメル質を通って象牙質まで染色されている。
【0205】
研究の開始時に、1群のラットを屠殺して、動物あたりの平均ゼロ時間重症度スコアを得た。研究の終了時に、全ての処理群を屠殺し、等級付けして、動物あたりの平均重症度スコアを得た。このようにして、各特定の群におけるう蝕の重症度のコンピュータによる計算において、群内の各動物について68の平滑面及び半裂溝の等級を合計した。次いで、この数をその群の動物の数で除して、低石灰化領域の平均数として表される平均重症度を得た
【0206】
【0207】
表にした全ての
【0208】
【数6】
スコアを用いて、各処理群についての低減率を計算する。これは、水又はプラセボ対照群のスコアから試験群のスコアを差し引き、次いで、水又はプラセボ対照群スコアによって除することによって行われる。この数は、100を乗じることによって百分率として表される。存在する場合、群間の有意差を判定するために、更なる統計分析を行った。標準的な分散分析を使用した。Newman-Keuls分析によって処理をランク付けした。全ての以前の方法のスコアは、ラットう蝕メタ分析の確立の一部として、最新の方法の等価なスコアに変換されている。
【0209】
ラットう蝕による虫歯予防性能、最新の方法
ここで使用される試験設計は、Fluoride Anti-Caries OTC MonographのFDA法#37にみられるものと同様である。主な変更は、使用した食餌(#469ではなくMIT200)、う蝕スコア方法(HMAではなくKeyes法)、及び処理頻度である。実験手順は、FDA規制パート58に従って行った。
【0210】
共変数として同腹仔を使用して、1処理群当たり50~58匹の動物(フッ化物の種類に応じて)を使用すると、ADAの歯科治療審議会(Council on Dental Therapeutics)の最も厳しいパワー要件である80%のパワーで20%の治療間臨床差異が満たされる。しかしながら、発明者らは通常1処理群あたり40匹の動物を使用しており、ADAのCDT及びFDAの両方がこれらの試験を一貫して承認している。これは、1群あたり40匹の動物で研究を開始する必要がある。23匹の同腹仔がこれらの動物を提供した。研究がそのようなサイズである場合、時折およそ16%の処理差異が有意であることが見出されているので、一般に臨床的有意性の尖点(cusp)とみなされる。
【0211】
のプロトコルは、動物を受け入れる前に、施設内動物管理及び使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって審査及び承認される。
【0212】
動物は、離乳した雌雄混合のSprague Dawleyラット、体重29~53グラムであった。供給者の出荷スケジュールにより、出生した同腹仔全てと共に雌親を受け取った。仔が6日齢になったとき同腹仔を受け取り、産仔数を8日齢で同腹仔あたり10匹の仔に減少させた。25匹の同腹仔を購入した。5匹の余分の同腹仔は、層別化の前のいずれかの死亡を考慮したものであった。研究層別化後に、任意の未使用の動物を安楽死させた。
【0213】
仔が18日齢に離乳するまで、雌親と共に大きな穴なし底(ボックス型)ケージで同腹仔を維持した。仔が9日齢のときから始めて、仔が18日齢で離乳するまで、雌親に同腹仔の間を毎日循環させた。21日齢まで、仔をボックスケージ内で維持した。その時点で、仔を層別化し、使用前に洗浄及び滅菌された吊りワイヤ底ケージ内に2匹一組で収容した。寝床と直接接触することによりう蝕速度が人為的に増加するのを防ぐために、ケージの交換が必要であった。個々の群の全ての動物が一緒になるようにケージを配置し、群の呼称及び動物に施される処理(処理コード)のラベルをケージに付けた。
【0214】
仔が21日齢になったとき、耳パンチによって固有の番号を与え、同腹仔の記録を保持した。同腹仔、体重、及び性別につい群内でバランスがとれるように、動物を群に割り当てた。動物は1群あたり40匹であった。
【0215】
受け取ったら、仔が8日齢になるまで雌親及び同腹仔にげっ歯類用ラブダイエットを提供した。8日目(仔の日齢)に、雌親及び同腹仔にDiet MIT 305を提供した。18日目(仔に日齢)及び試験期間全体にわたって、仔にDiet MIT 200を自由に提供した。全ての動物に脱イオン水を自由に提供した。
【0216】
仔が13日齢のとき、そして、18日齢のときに再度、ボックスケージを交換した。接種材料の投与後、滅菌前にオートクレーブすることによってボックスケージ及び寝床を除染した。新鮮な食餌及び水を与えた時点で週3回(月曜日、水曜日、及び金曜日)、ケージボードを交換した。清浄な滅菌水の瓶及び食品のジャーを毎週提供した。吊りケージ及びバンクを隔週滅菌した。健康上の問題のいかなる徴候についても、スタッフメンバーは毎日、そして、担当獣医師は毎週動物を観察した。動物をAAALAC公認施設に収容した。室温は72°F(±6°F)で維持し、1時間当たり10~15回換気を行い、12時間の光サイクルであった。
【0217】
15日目(仔の日齢)に、動物にストレプトマイシン耐性ストレプトコッカス・ソブリナス(S.sobrinus)6715(ATCC株#27352)培養物を経口接種した。これは、0.2mLの培養物/動物を口に入れることを含んでいた。18日目(仔の日齢)に、動物にストレプトコッカス・ソブリナスを連続3日間(18、19、及び20日齢)接種した。これは、ストレプトコッカス・ソブリナス培養物0.1mLを下顎臼歯象限の各々の咬合面に置き、この濃度を調整した培養物10ccを各滅菌され、水が充填された瓶に入れ、10cc以下の残りの培養物を寝床に軽く噴霧することを含んでいた。接種材料を添加した24時間後に全ての水の瓶を取り出し、滅菌した。200マイクロピペットを用いて、接種材料を動物に投与した。
【0218】
仔が22日齢のときに処理段階を開始した。各処理は、その処理だけのために指定された、ラベルの付いたプラスチックビーカーを有していた。新鮮な材料(すなわち、ストック供給から入手)を各処理に使用した。歯磨剤を、脱イオン水と1:1の比(重量)で混合した。具体的には、10グラムの歯磨剤を30mLのビーカーに量り入れ、次いで、10グラムの脱イオン水を歯磨剤に添加した。次いで、滑らかな混合物を作製する目的のために、清潔なマイクロスパチュラを用いて混合物を手で撹拌した(30秒間)。スラリー及び小さな磁気撹拌棒を含有するビーカーを磁気撹拌機上に置き、これを最低速度に設定し、処理前に4分間撹拌した。各処理の直前にスラリーを調製した。
【0219】
綿棒をスラリーに浸漬し(2秒間)、綿棒の側面が口の片側の下顎及び上顎の臼歯の両方と接触するようにラットの口の半分に塗布した。下顎及び上顎の臼歯全体に綿棒の側面を15秒間転がすことによって、処理を達成した。綿棒を2回目(同様に2秒間)スラリーに浸漬し、ラットの口のもう片側を同様に15秒間処理した。各動物ごとに新しい綿棒を使用した。
【0220】
5日間は1日2回、そして、週末には1日1回、処理を施した。各日の最初の処理は毎日ほぼ同じ時間に開始し、2回目の処理は最初の処理の6時間以上後に開始した。週末には24時間間隔で1回処理を施した。処理材料は室温で保管した。全ての処理製品は、試験完了時に後援者に返却した。
【0221】
接種レジメンの開始の1週間後及び試験終了時、滅菌綿スワブ(6インチ、シングルチップ綿棒)を使用して、各ラットから口腔スワブを採取した。口の片側で15秒間スワブを転がし、舌上を転がし、口のもう片側の臼歯上で更に15秒間転がすことによって、下顎及び上顎の臼歯上の微生物をサンプリングした。綿棒を動物の口から取り出した直後に、200単位/mLのストレプトマイシン硫酸塩が添加されたMitis Salivarius寒天を含有する100mmのペトリ皿の半分にそれを画線した。プレートを37℃で48時間、10%CO2でインキュベートした。48時間インキュベーションした後に採取したコロニー数を、logbookに記録した。
【0222】
ラットのう蝕試験の実験期間は3週間である。終了の直前に、全ての動物を、体調不良又は病態のいかなる視覚的徴候についても観察し、個々に計量し、口腔スワブを採取してストレプトコッカス・ソブリナスの定着を確認した。動物を二酸化炭素吸入によって安楽死させた。コード番号を各動物に割り当て、次いで、頭部を取り外し、コード番号と共に個々のジャーに入れ、圧力下で加熱した(10PSI、12分間)。次いで、半顎を取り外し、全ての軟組織を取り除いた。
【0223】
洗浄された半顎(四象限)を、コード番号がバイアルにテープで貼付されたプラスチックバイアルに入れた。ムレキシド溶液(0.3gのムレキシド、300mLのDI H2O、及び700mLのエタノール)を各バイアルに添加し、顎を一晩染色した。次いで、顎をすすぎ、空気乾燥させた。
【0224】
半顎を、平滑面う蝕について顕微鏡検査し、切片化し、次いで、Keyes法を使用して溝及び隣接歯間のう蝕について顕微鏡検査した。スコアリング方法は、Navia,JN,Animal Models in Dental Research,pp 287-290,1977;及びKeyes,PH,J.Dent.Res.37:1088-1099,1958に詳述されている。SAS統計ソフトウェア、バージョン9.4を使用して、全ての解析を行った。分散分析(ANOVA)を使用して群を比較し、群については固定効果、同腹仔についてはランダム効果を用いた。測定値のばらつきに影響を与える既知の要因を低減するために、モデルに同腹効果を含めた。チューキーの多重比較手順を使用して群間の対比較を行って、比較の全体的な有意性レベル(α=0.05)を制御した。
【0225】
表にし、統計的に解析した特定の種類のデータは、以下を含み得る:
1)死亡率データ実験段階
a.動物の初期数
b.動物の最終数
c.死亡率
2)成長データ実験段階
a.初期体重(平均±S.E.M.)
b.最終体重(平均±S.E.M.)
3)う蝕経験
a.平滑面(頬側、舌側)病変のエナメル質及び象牙質の併発(平均±S.E.M.)
b.隣接歯間病変のエナメル質及び象牙質の併発(平均±S.E.M.)
c.全平滑面(頬側、舌側、及び隣接歯間)病変のエナメル質及び象牙質の併発(平均±S.E.M.)
d.溝病変のエナメル質及び象牙質の併発(平均±S.E.M.)
e.平滑面、隣接歯間、及び溝のう蝕をスコアリングするKeyes法から得られたスコアを組み合わせる全う蝕併発(平均±S.E.M.)
【0226】
口腔ケア組成物の調製
1つ以上の保湿剤、水、甘味料(複数可)、スズイオン源、グルコン酸ナトリウム、及び/又は風味剤(複数可)を組み合わせて液体混合物を作製することによって、表1Aの口腔ケア組成物を調製した。液体混合物を25℃で2分間ホモジナイズした。次に、水酸化ナトリウム(50%溶液)を液体混合物に添加し、液体混合物を25℃で2分間ホモジナイズした。カルシウムイオン源の一部と、キサンタンガム及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの任意の増粘剤とを組み合わせることによって、別個の粉末混合物を調製した。次いで、粉末混合物を液体混合物と組み合わせた。次に、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を混合物に添加した。内容物を25℃で2分間ホモジナイズした。次いで、ホップ抽出物を混合物と組み合わせ、25℃で2分間ホモジナイズした。最後に、カルシウムイオン源の残りの部分及び緩衝剤を混合物と組み合わせ、25℃で2分間ホモジナイズした。
【0227】
ホップベータ酸を用いた市販の口腔ケア組成物の調製
市販の口腔ケア組成物の一部を量り分け、適切な量のホップベータ抽出物に混合することによって、市販の口腔ケア組成物をホップベータ酸と組み合わせた。組み合わせた口腔ケア組成物を25℃で少なくとも2分間ホモジナイズした。
【0228】
実施例1a、1b、1c、及び1dは、表1Aに示すように、上記の実験方法に従って調製した。ホップベータ酸は、Hopsteiner(登録商標)によってホップからの抽出物として供給された。Hopsteiner(登録商標)抽出物は、抽出物の約45重量%がホップベータ酸であり、抽出物の1重量%未満がホップアルファ酸であった。実施例1a及び1cは、13%の水を有するが、実施例1b及び1dは、任意の別個に添加された水を有さない。実施例1a及び実施例1bは、フッ化物を含まないが、実施例1c及び1dは、モノフルオロリン酸ナトリウムを有する。
【0229】
【表1】
*Hopsteiner(登録商標)によって供給されるホップベータ酸抽出物、45%ホップベータ酸及び1%未満のホップアルファ酸を含む
【0230】
【0231】
表1Bは、Hopsteiner(登録商標)によって提供されるホップベータ酸抽出物について記載する。ホップベータ酸は抽出物として提供されるため、特定の成分の量に多少のばらつきがある場合がある。しかし、抽出物は、抽出物の約45重量%のホップベータ酸及び抽出物の約0.4重量%のホップアルファ酸を含む。これは、典型的にはホップベータ酸よりも多いホップアルファ酸を有する以前のホップ抽出物とは劇的に異なる。他の微量成分が、ホップベータ酸抽出物中に存在する場合もある。
【0232】
【表3】
*シリカプラセボと有意に異なる、多重比較のためにチューキーの調整によって求めたとき、p<0.05
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
図1/表1に示すラットのう蝕の結果は、実施例1bが、プラセボ対照研究において、フッ化ナトリウム/シリカ及びモノフルオロリン酸/シリカ組成物に対してう蝕を低減させたことを示した。フッ化物を有さなかった実施例1bは、フッ化ナトリウム/シリカ対照製品と同等の全う蝕低減を有していたが、対照に比べて溝のう蝕においての予想外に大きな低減を有していた。開示される組成物は、治療量以下の組成物の群と共に歯上及びバイオフィルム中で機能するように設計された。これにより、対照組成物に対して溝及び隣接歯間のう蝕が予想外に低減された。実施例1dのように、開示される組成物にフッ化物を添加した場合、う蝕の低減が強化され、平滑面う蝕が顕著に低減される。
【0239】
そのようなアプローチは当該技術分野で開示されていないことに鑑みて、非フッ化物機序がう蝕の低減に大きく寄与し得ることは予想外に見出されたものである。この結果をより深く理解するために、ラットで試験した組成物への各治療量以下の組成物の寄与を測定するために、一連の実験室試験を実施した。上記の介入ベクトルに沿って組成物の効力を測定するために、個々の方法が開発されている。これらの方法は、i)Snフリーインビトロ歯垢解糖及び再成長法(SnフリーiPGRM)、ii)カルシウムについてのインビトロ歯垢取り込み法(iPUM-Ca)、iii)Fフリーヒドロキシアパタイト溶解度低下法(FフリーHAP)、及びiv)ADA1分間フッ化物放出(ADA)である。当業者は、Snなどのいくつかの成分が抗菌効果及びHAP表面安定化効果の両方を有することを認識するであろう。そのような挙動は、組成物の性能の分析を複雑にするので、そのような成分の全体的な寄与は、単一の機序のみを介して検討される。したがって、本発明の目的のために、組成物の抗菌効力は、そのSnプラセボに対して決定されなければならない。同様に、本発明の目的のために、ヒドロキシアパタイト溶解度を低下させる組成物の能力は、組成物のフッ化物を含まないバージョン(フッ化物を含有する場合)を用いて決定されなければならない。表2は、実施例のセクションに開示されるように、上に示した4つの異なる方法を使用した新規組成物及び対照練り歯磨きの特性評価の結果を、それに対応するラットう蝕スコアと共に示した。
【0240】
フッ化物の発見中、いくつかのラットう蝕試験を実行して、フッ化物及び代替物の両方の有効性について調べた。ラットう蝕実験のカタログを分析して、単一の抗う蝕剤の使用が抗う蝕効果に寄与した実施例を見出した。
【0241】
表3は、ADA法によって決定された、可溶性フッ化物含有量に対する抗う蝕効力の変動を示す。この実施例及びメタ分析を使用して、フッ化ナトリウムとしての650ppmのフッ化物は、ラットう蝕実験においてプラセボ又は水対照に対して約29%、又は約25%、又は約30%う蝕を低減すると推定された。表は、フッ化ナトリウムとして送達されるフッ化物の治療量以下から治療量レベルへの移行についてのラットモデルにおける予測されるう蝕低減を示す。
【0242】
表4は、SnフリーiPGRMによって測定された、Snフリー抗菌活性に対する抗う蝕効力の変動を示す。iPGRMは、pHの変化を通して抗菌効力の低減を測定するので、抗菌剤の効力を決定するときに、重炭酸ナトリウムなどのpHを改変する非抗菌剤を補正することができる。これは、必要に応じてプラセボ対照を使用して行うことができる。Snの寄与は、溶解度の低下を通じて測定され、この試験から除外される。クロルヘキシジンのiPGRM用量応答を
図2に示す。
【0243】
表5は、iPUMによって測定されたカルシウム共イオン効果に対する抗う蝕効力の変動を示す。この方法は、可溶性源及び不溶性源の両方の全カルシウム取り込みを測定する。不溶性源を使用した場合、プラーク酸に曝露されたときに優先的に溶解するように、ヒドロキシアパタイトよりも実質的に可溶性が高いカルシウム源が好ましかった。例えば、リン酸二カルシウム又は炭酸カルシウムは、酸への曝露時に容易に溶解するが、ピロリン酸カルシウムは、本明細書の目的のためにカルシウム源としては不十分である。ピロリン酸カルシウムは、酸への曝露時に容易には溶解せず、共イオン効果を介してプラーク酸から歯を保護する目的のためのカルシウムの源としては不十分である。それにもかかわらず、不溶性源は、歯垢内での滞留時間が増加するという利点を有し、したがって、プラーク酸の生成に時間的に対応するようにカルシウムのブルームを提供することができる。カルシウム含有組成物のiPUM用量応答を
図3に示す。
【0244】
表6は、FフリーHAPによって測定されたHAP溶解度におけるFフリーの低減に対する抗う蝕効力の変動を示す。フッ化物共イオン効果の寄与は、ADA法を介して測定され、この試験から除外される。Sn/シリカ練り歯磨き中の異なるレベルのSnに対するFフリーHAP応答の例を
図4に示す。
【0245】
最後に、治療量以下の組成物の組み合わせによって治療用組成物が得られる閾値を定義することができる。平均して、この移行は、水又はF-プラセボ/シリカ練り歯磨き陰性対照に対してう蝕が統計的に有意に低減される約29%のラットう蝕の低減を提供する組成物について定義することができる。無論、性能は、実際のラットう蝕性能試験を使用して実証され得る。
【0246】
これらの方法では、重要な虫歯予防介入法に沿って様々な組成物についての効力を定量することができる。フッ化物含有虫歯予防組成物の元々の開発中に行われたラットう蝕実験の長い履歴に、同じ分析を遡及的に適用することができる。分析した2つの異なるが類似するラットう蝕モデルにおけるう蝕の低減についての800回を超える個々の処理を含む約170回のラットう蝕実験を分析した。これらの実験は、1959年~2019年に行われた。ラットう蝕は、ヒトう蝕の好ましい動物モデルであり、フッ化物含有製品の効力を確保するために米国抗う蝕モノグラフ(21CFRパート355)に含まれている。それは、更に、非フッ化物抗う蝕機序及び組成物に対して感受性が高い。最後に、う蝕の動物モデルは、一般に、適切に開発される限り交換可能とみなされる。
【0247】
この遡及的分析は、本発明の範囲を定義するのに役立ち得る。本明細書に記載されるように、本発明は、まとめて試験したときに治療用組成物をもたらし得る治療量以下の組成物の組み合わせを目的とする。実施例により、指定の性能試験によって定義されるように、各機序における治療量以下から治療量への移行についての性能閾値を設定することが可能になる。しかしながら、それらの結果は、単独では、ラットう蝕実験における組成物の複合性能を予測しない可能性がある。したがって、各機序についての治療量以下の用量から治療量の用量への移行の閾値を、以前のラットう蝕データを用いてモデル化した。分析により、本明細書に記載される治療量以下の組成物の組み合わせについてラットう蝕の低減を予測することができるモデルが得られた。組み合わせると、実施例、性能閾値、及び数学的モデルは、本発明の範囲を定義するのに役立ち得る。
【0248】
実験記録で頻繁に記録されたF含有量、Sn含有量、及びpHの追加の測定値を伴う処理/成分の詳細な説明により、ラットう蝕実験の遡及的分析が可能であった。処理の詳細な説明及び類似の今日の組成物との比較を使用して成分を入手又は推定することができるとき、上記の様々な抗う蝕機序方法における効力尺度を直接測定した。上記で命名した4つの方法を使用したラットう蝕効力の推定によって、~0.76のモデル相関係数r2が得られた。相関係数は、ラットう蝕効力における変動の76%がこれらの方法によって捕捉されることを示唆している。残りの24%の変動は、典型的には、生物学的方法において典型的な生物学的変動に起因する。本発明者らは、これは、ラットう蝕における様々な組成物の性能についての良好なモデルを表すと考えていると言えば十分である。
【0249】
水又はシリカベースの研磨剤、プラセボ練り歯磨き陰性対照に対するラットう蝕低減%について、以下の予測式が再現される。
【0250】
【0251】
ラットう蝕データの遡及的分析についての予測値対実測値を
図5aに示し、
図5bに残差のプロットを示す。更に、MFPフッ化物源を使用した場合、式1を使用して計算された低減%から16を差し引く。MFPはラットう蝕モデルにおいて効果が低いため、これを行った。
【0252】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0253】
相互参照される又は関連する任意の特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0254】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。