(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法、当該二次電池を含む装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20240130BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20240130BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20240130BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240130BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/1393
C01B32/21
C01G53/00 A
H01M4/36 D
H01M10/0525
(21)【出願番号】P 2022532138
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088299
(87)【国際公開番号】W WO2021217585
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼建▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】沈睿
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0062822(US,A1)
【文献】特表2019-508839(JP,A)
【文献】特開2012-033376(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018182(WO,A1)
【文献】特開2011-034909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108701816(CN,A)
【文献】特開2014-086221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層と、を含む負極シートを備え、
前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含み、
前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含み、且つ前記第1の負極活性材料は、0.60≦S1≦0.85を満たし、S1=W
2H/(W
3R+W
2H)であり、
前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含み、
W
3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であり、W
2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であることを特徴とする、二次電池。
【請求項2】
前記S1は、0.70≦S1≦0.80であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D
v50は、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D
v50よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D
v50は、15μm~19μmであり
、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D
v50は、14μm~18μmで
あることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、95%~98%であり
、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の黒鉛化度は、90%~95%で
あることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の負極活性材料の50000Nの圧力での粉体圧縮密度は、1.85g/cm
3~2.1g/cm
3であり
、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の50000Nの圧力での粉体圧縮密度は、1.7g/cm
3~1.9g/cm
3で
ある、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)は、1.6m
2/g~2.4m
2/gであり
、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の比表面積(SSA)は、0.7m
2/g~1.5m
2/gで
ある、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記天然黒鉛の形態は、球形及び類球形のうちの1種類又は複数種類であり、及び/又は、
前記人造黒鉛の形態は、ブロック状及びシート状のうちの1種類又は複数種類であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量比率は、≧50%であり
、及び/又は、
前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量比率は、≧80%で
あることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との厚さ比は、1:1.01~1:1.1で
あることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極フィルム層の面密度CWは、10mg/cm
2≦CW≦13mg/cm
2を満た
すことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記二次電池が、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ且つ正極活性材料を含む正極フィルム層とを含む正極シートを備え、
前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びこれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種類又は数種類を含
む、請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、
Li
a
Ni
b
Co
c
M
d
O
e
A
f
式1
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である、請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
以下の1)~2)により二次電池の負極シートを製造する二次電池の製造方法。
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、天然黒鉛を含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成し、且つ、前記第1の負極活性材料は、0.60≦S1≦0.85を満たし、S1=W
2H/(W
3R+W
2H)であり、
W
3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であり、W
2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積である。
2)前記第1の負極フィルム層に、人造黒鉛を含む第2の負極活性材料を備える第2の負極フィルム層を形成する。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の二次電池又は請求項
14に記載の方法により製造された二次電池を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学技術分野に属し、より具体的には、二次電池及びその製造方法、当該二次電池を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、軽量、汚染がなく、記憶効果がない等の際立った特徴を持つため、各種消費系電子製品や電動車両に広く応用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、二次電池に対してより高いエネルギー密度を求めている。しかしながら、二次電池の性能に対してより高い使用要求が課せられている。したがって、如何に高いエネルギー密度を前提として、二次電池に他の電気化学的性能を両立させるかということは、電池設計分野における重要な課題となっている。
【0004】
そこで、上記課題を解決することができる二次電池を提供することが必要となる。
【発明の概要】
【0005】
本願は、背景技術における課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いエネルギー密度を有する前提で、優れた低温倍率性能と長い高温サイクル寿命を兼ね備える二次電池及びその製造方法、当該二次電池を含む装置を提供することである。
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池であって、負極集電体と、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層とを含む負極シートを備え、
前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含み、
前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、0.60≦S1≦0.85を満たし、ここで、S1=W2H/(W3R+W2H)であり、
前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含み、
ここで、W3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であり、W2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積である、二次電池を提供する。
【0007】
本願の第2の態様は、前記二次電池の負極シートを製造する二次電池の製造方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、天然黒鉛を含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成し、前記第1の負極活性材料は、0.60≦S1≦0.85の材料を満たし、ここで、S1=W2H/(W3R+W2H)である工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に、人造黒鉛を含む第2の負極活性材料を備える第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
ここで、W3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であり、W2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積である、二次電池の製造方法を提供する。
【0008】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に係る二次電池又は本願の第2の態様に係る方法に従って製造された二次電池を含む装置を提供する。
【0009】
本願は、従来技術と比較して、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本願に係る二次電池の負極シートは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層とを含み、且つ第1の負極フィルム層に対して特定の組成を有する第1の負極活性材料を選択することにより、本願に係る二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、優れた低温倍率性能と長い高温サイクル寿命とを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願に係る二次電池の一実施形態の模式図である。
【
図2】本願に係る二次電池における負極シートの一実施形態の模式図である。
【
図3】本願に係る二次電池における負極シートの他の実施形態の模式図である。
【
図4】本願に係る二次電池の一実施形態の分解模式図である。
【
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図8】本願に係る二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
【符号の説明】
【0011】
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53カバープレート
10負極シート
101負極集電体
102第2の負極フィルム層
103第1の負極フィルム層
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態を参照し、本願を更に説明する。なお、これらの具体的な実施形態は、単に本願を説明するためのものであるが、本願に係る範囲を限定するものではない。
【0013】
簡略化するために、本明細書にはいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、単独に開示された各点又は単一の数値自体は下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて若しくは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0014】
なお、本明細書の記載において、特に説明がない限り、「以上」及び「以下」は、その数も含む。「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味する。
【0015】
特に説明しない限り、本願に使用される用語は、当業者が一般的に理解する公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願において言及された各パラメータの数値は、本技術分野の通常の様々な測定方法で測定することができる(例えば、本願に係る実施例に記載された方法に従って測定することができる)。
二次電池
【0016】
本願の第1の態様は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シートと、負極シートと、電解質とを備える。電池の充放電時において、正極シートと負極シートとの間で活性イオンが往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0017】
本願に係る負極シートは負極集電体と第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む負極フィルム層とを備え、前記第1の負極フィルム層は負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ且つ第1の負極活性材料を含み、前記第2の負極フィルム層は第1の負極フィルム層に設けられ且つ第2の負極活性材料を含む。前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含み、且つ0.60≦S1≦0.85を満たし、ここで、S1=W2H/(W3R+W2H)であり、前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含む。ここで、W3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である時の101結晶面のピーク面積であり、W2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積である。
【0018】
本願は、特定の二層構造の負極フィルム層を用い、且つ上下層に特定の負極活性材料を用いるので、高いエネルギー密度を前提として、電池に優れた低温倍率性能を兼ね備えさせることができる。本発明者らの検討によれば、本願に係る第1の負極活性材料が天然黒鉛を含み、第2の負極活性材料が人造黒鉛を含み、第1の負極活性材料のS1を所定の範囲内に制御する場合、負極シートの上下層の活性点は合理的に整合され、電池の倍率性能の向上に有利であり、同時に上下層の孔隙率も合理的に最適化され、電解液の浸潤に有利であり、電池のサイクル寿命を向上させることを見出した。
【0019】
S1が0.6未満であると、活性材料中に欠陥が多すぎて表面活性が高くなり、電池の高温サイクル性能が悪化する。同時に、多すぎる欠陥による副反応生成物が負極シートに堆積するため、電池セルの膨張力が増加しやすくなり、それにより電解液が押し出され、電池のサイクル寿命に影響を与える。S1が0.85よりも大きい場合、活性材料の表面活性は低く、電池の低温倍率性能を悪化させる。
【0020】
好ましい実施形態では、第1の負極活性材料は、0.70≦S1≦0.80を満たす。
【0021】
本発明者らが鋭意検討した結果から、本願に係る負極シートは、上記の設計を満たした上で、以下のパラメータのいずれか1つ又は複数を選択可能に満たすと、電池の性能をさらに向上させることができることを見出した。
【0022】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、95%~98%であり、好ましくは96%~97%である。
【0023】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の黒鉛化度は、90%~95%であり、好ましくは91%~93%である。
【0024】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料が、50000Nの作用力での粉体圧縮密度は、1.85g/cm3~2.1g/cm3であり、好ましくは1.9g/cm3~2.0g/cm3である。
【0025】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料が、50000Nの作用力での粉体圧縮密度が1.7g/cm3~1.9g/cm3であり、好ましくは1.8g/cm3~1.9g/cm3である。
【0026】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の比表面積(SSA)は、1.6m2/g~2.4m2/gであり、好ましくは1.8m2/g~2.2m2/gである。
【0027】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の比表面積(SSA)は、0.7m2/g~1.5m2/gであり、好ましくは0.9m2/g~1.3m2/gである。
【0028】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50よりも大きい。
【0029】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、15μm~19μmであり、好ましくは16μm~18μmである。
【0030】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、14μm~18μmであり、好ましくは15μm~17μmである。
【0031】
本発明者らの検討によれば、第1の負極活性材料及び/又は第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50が所定の範囲内にあると、電池の動力学性能のさらなる向上に寄与し、且つ、粒径が所定の範囲内にあると、上下層の活性材料の容量差を減少させ、サイクル中に電池のリチウム析出リスクを低下させ、電池のサイクル性能をさらに向上させることを発見した。
【0032】
本願に係る好ましい実施形態において、前記天然黒鉛の形態は、球状及び略球状のうちの1つ又は複数である。
【0033】
本願に係る好ましい実施形態において、前記人造黒鉛の形態は、ブロック状及びシート状のうちの1つ又は複数である。
【0034】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量比率は、≧50%であり、より好ましくは80%~100%である。
【0035】
本願に係る好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量比率は、≧80%であり、より好ましくは90%~100%である。
【0036】
本願において、W2H及びW3Rの意味は、本技術分野において公知であり、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、X線回折計(例えば、Bruker D8 Discover)を用いて測定することができる。S1の値は、本願に係る式によって算出される。
【0037】
本願において、材料の黒鉛化度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、X線回折計(Bruker D8 Discover)を使用して測定することができる。測定については、JIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照してd002のサイズを測定することができる。次に、黒鉛化度は、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に従って算出される。ここで、d002は、ナノメートル(nm)で表される材料の結晶構造における層間隔である。
【0038】
本願において、材料のDv50は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、レーザ回折粒度分布測定器(例えば、Mastersizer 3000)を使用して粒度分布レーザ回折法(具体的に、GB/T19077-2016を参照)に従って測定して得られることができる。ここで、Dv50とは、材料の累積体積百分率が50%に達した時に対応する粒径を意味する。
【0039】
本願において、材料の粉体圧縮密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T24533-2009を参照し、電子圧力測定機(例えば、UTM7305)を使用して測定することができる。一定量の粉末を圧密専用金型に置き、異なる圧力を設定し、装置で異なる圧力での粉末の厚さを読み取り、異なる圧力での圧縮密度を算出することができる。本願では、圧力は、50000Nに設定される。
【0040】
本願において、材料の比表面積(Specific surface area、SSA)は本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法(例えば、窒素ガス吸着比表面積分析測定方法)を用いて測定してBET(Brunauer Emmett Teller)法で算出されることができる。ここで、窒素ガス吸着比表面積分析測定は、米国Quantachrome Instrument companyのNOVA2000e型である比表面積と孔径分析装置によって測定することができる。
【0041】
本願において、負極活性材料の形態は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、負極活性材料を導電性粘着剤に粘着させ、走査型電子顕微鏡(例えば、sigma300型)で粒子の形態を測定する。測定はJY/T010-1996を参照することができる。
【0042】
なお、上記負極活性材料に対する各パラメータの測定は、塗布前にサンプリングして行ってもよいし、冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリングして行ってもよい。
【0043】
上記測定試料が冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリングされて測定した場合、例えば、以下の工程でサンプリングすることができる。
【0044】
(1)まず、冷間プレス後の負極フィルム層を任意に選択し、第2の負極活性材料をサンプリング(ブレードで粉末を擦り取ることによりサンプリングすることができる)し、粉末の擦り深さは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界領域を超えない。
【0045】
(2)次に、第1の負極活性材料をサンプリングし、負極フィルム層の冷間プレスの過程で、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との間の境界領域には融合層が存在する(即ち、融合層に第1の活性材料と第2の活性材料とが同時に存在する)可能性がある。測定の正確性のために、第1の負極活性材料をサンプリングする際に、融合層を削り落とした後、第1の負極活性材料から粉末を擦り取ることによりサンプリングすることができる。
【0046】
(3)上記収集された第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料をそれぞれ脱イオン水中に置き、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料を吸引濾過し、乾燥した。また、乾燥後の各負極活性材料を一定の温度及び時間(例えば、400℃、2時間)で焼成し、接着剤及び導電性カーボンを除去し、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の測定試料を得る。
【0047】
上記サンプリング過程において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界領域の位置を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて補助的に判断することができる。
【0048】
本願で使用される天然黒鉛及び人造黒鉛は、いずれも市販されている。
【0049】
本願に係る好ましい実施形態において、負極フィルム層の厚さは、≧60μmであることが好ましく、65μm~80μmであることがより好ましい。なお、前記負極フィルム層の厚さとは、負極フィルム層の合計厚さ(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との厚さの合計)を意味する。
【0050】
本願に係る好ましい実施形態において、前記負極フィルム層の面密度は、10mg/cm2≦CW≦13mg/cm2であり、好ましくは10.5mg/cm2≦CW≦11.5mg/cm2である。なお、前記負極フィルム層の面密度とは、負極フィルム層全体の面密度(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度の合計)を意味する。
【0051】
本願に係る好ましい実施形態においては、前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との厚さ比は、1:1.01~1:1.1であり、好ましくは1:1.02~1:1.06である。
【0052】
上下層の厚さが所定の範囲内にあると、上下層が勾配分布の孔隙を形成することに有利であり、正極から脱離した活性イオンの負極フィルム層表面での液相伝導抵抗を減少させ、表層へのイオンの堆積によるリチウム析出の問題を引き起こさない。同時に、活性イオンのフィルム層中への均一な拡散が分極の減少に有利であり、電池の動力学性能とサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0053】
本願において、負極フィルム層の厚さは、テントウサンドマイクロメータ(tenthousandth micrometer)で測定することができる。例えば、Mitutoyo293-100型、精度が0.1μmであるテントウサンドマイクロメータで測定することができる。
【0054】
本願において、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さは、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて測定することができる。試料の調製は以下のとおりである。まず、負極シートを一定の大きさの測定試料(例えば、2cm×2cm)に裁断し、パラフィンワックスにより負極シートを試料台に固定する。次に、試料台を試料ホルダーに固定し、アルゴンイオン断面バフ研磨機(例えば、IB-19500CP)の電源を投入し、真空(例えば、10-4Pa)を引き、アルゴンガス流量(例えば、0.15MPa)、電圧(例えば、8KV)及びバフ研磨時間(例えば、2時間)を設定し、試料台を揺動モードに調整してバフ研磨する。試料の測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するため、測定試料の中からランダムに複数(例えば、10個)の異なる区域を選んで走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、500倍)で、標尺から測定領域において第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さを読み取り、複数の測定領域の測定結果の平均値を第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層の厚さの平均値とする。
【0055】
本願において、負極フィルム層の面密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の方法を用いて測定することができる。例えば、片面コーティングされ冷間プレスされた負極シート(両面コーティングされた負極シートであれば、その片面の負極フィルム層を先に拭き取ることができる)を取り、面積S1の小さな円形シートに切断し、その重さを秤量してM1と記録する。次に、上記秤量後の負極シートの負極フィルム層を拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、M0と記録し、負極フィルム層の面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1。測定結果の正確性を確保するために、複数組(例えば、10組)の測定試料を測定し、その平均値を測定結果として算出することができる。
【0056】
負極フィルム層の圧縮密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。まず、負極フィルム層の面密度及び厚さが例えば上記測定方法に従って求められ、負極フィルム層の圧縮密度=負極フィルム層の面密度/負極フィルム層の厚さ。
【0057】
本願に係る二次電池において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。例として、負極集電体は銅箔を用いることができる。
【0058】
本願に係る二次電池において、前記第1の負極フィルム層及び/又は前記第2の負極フィルム層は、通常負極活性材料と、選択可能な接着剤と、選択可能な導電剤と、他の選択可能な助剤とを含み、通常負極フィルム層のスラリーを塗布、乾燥して得られるものである。負極フィルム層のスラリーは、通常負極活性材料と、選択可能な導電剤及び接着剤等とを溶媒に分散させ、均一に攪拌することにより形成される。溶媒として、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。他の選択可能な助剤は、例えば、増粘剤及び分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等であってもよい。
【0059】
一例として、導電剤は、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0060】
一例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0061】
本願に係る二次電池において、前記第1の負極活性材料及び/又は前記第2の負極活性材料は、本願に記載の負極活性材料以外、一定量の他の通常の負極活性材料を選択的に含むことができる。例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの1種類又は複数種類である。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素の酸化物、ケイ素炭素複合体、ケイ素合金から選択される1種類又は複数種類であってもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、スズの酸化物、スズ合金から選択される1種類又は複数種類であってもよい。これらの材料は、調製方法が公知であり、また市販されている。当業者であれば、実際の使用状況に応じて適宜的に選択することができる。
【0062】
本願に係る二次電池において、前記負極フィルム層は、負極集電体の一方の表面に設けられてもよいし、負極集電体の両面に同時に設けられてもよい。
【0063】
図2は、本願に係る負極シート10の一実施形態の模式図を示している。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の両面にそれぞれ設けられる第1負極フィルム層103と、第1負極フィルム層103に設けられる第2負極フィルム層102とから構成される。
【0064】
図3は、本願に係る負極シート10の他の実施形態の模式図を示している。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の一方の表面に設けられる第1負極フィルム層103と、第1負極フィルム層103に設けられる第2負極フィルム層102とから構成される。
【0065】
なお、本願において記載されている各負極フィルム層のパラメータ(例えば、フィルム層の厚さ、面密度等)とは、いずれも片面のフィルム層のパラメータ範囲を意味する。負極集電体の両面に負極フィルム層が設けられる場合、いずれか一方の表面のフィルム層のパラメータが本願を満たすと、本願に係る保護範囲内にあると考えられる。なお、本願に記載のフィルム層厚、面密度等の範囲とは、いずれも電池を組み立てるために用いられる冷間プレス後のフィルム層のパラメータを意味する。
【0066】
また、本願に係る二次電池において、負極シートは、負極フィルム層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施形態では、本願に係る負極シートは、集電体と第1のフィルム層との間に挟まれ、集電体の表面に設けられた導電性コーティング(例えば、導電剤及び接着剤からなる)をさらに含むことができる。他の実施形態において、本願に係る負極シートは、第2のフィルム層の表面に被覆された被覆保護層をさらに含むことができる。
[正極シート]
【0067】
本願に係る二次電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ且つ正極活性材料を含む正極フィルム層とを含む。
【0068】
理解できることとして、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有する。正極フィルム層は、正極集電体の2つの対向する表面のいずれか一方又は両方に積層される。
【0069】
本願に係る二次電池において、前記正極集電体は、従来の金属箔シート又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。例として、正極集電体はアルミニウム箔を用いることができる。
【0070】
本願に係る二次電池において、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、及びこれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されるものではなく、二次電池の正極活性材料として用いられる従来公知の他の材料を用いることもできる。
【0071】
いくつかの好ましい実施形態では、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含んでいてもよい。
【0072】
LiaNibCocMdOeAf 式1
【0073】
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である。
【0074】
本願において、上記各材料の改質化合物は、材料に対しドープ改質及び/又は表面被覆の改質を行ったものであってもよい。
【0075】
本願に係る二次電池において、前記正極フィルム層には、接着剤と導電剤がさらに選択的に含まれていてもよい。
【0076】
一例として、正極フィルム層に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0077】
一例として、正極フィルム層に用いられる導電剤は、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
[電解質]
【0078】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願において、電解質の種類は、特に限定されず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち、電解液)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、電解質は、電解液を使用する。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、電解液には、添加剤がさらに選択的に含まれてもよい。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよく、正極成膜用添加剤を含んでもよく、電池の特定の性能を改善できる添加剤(例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等)を含んでもよい。
[セパレータ]
【0083】
電解液を用いた二次電池及びいくつかの固体電解質を用いた二次電池には、セパレータが更に含まれている。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、隔離の作用を果たす。本願において、セパレータの種類は特に限定されず、化学的安定性及び機械的安定性に優れた公知の多孔質構造のセパレータを任意に選択することができる。いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種類又は複数種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、正極シート、負極シート、及びセパレータは、巻回工程又は積層工程によって電極アセンブリを作製することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、鋼シェル等のような硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、袋状のソフトパック等のようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0087】
本願において、前記二次電池の形状は特に限定されず、円筒形、方形、又は他の任意の形状であってよい。
図1には、一例としての方形構造の二次電池5が示される。
【0088】
いくつかの実施形態では、
図4を参照すると、外装は、ケース51とカバープレート53とを含むことができる。ここで、ケース51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板及び側板の嵌合で収容室を形成する。ケース51は、収容室と連通する開口を有する。カバープレート53は、前記収容室を密閉するように前記開口を覆っているために用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層工程を経て電極アセンブリ52に形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室内に封止される。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1個又は数個であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよい。電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0090】
図5は、一例としての電池モジュール4である。
図5を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並んで設けられてもよい。もちろん、他の任意の方法で配列することも可能である。さらに、この複数の二次電池5を締結具により固定することができる。
【0091】
あるいは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに備えていてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックに組み込まれてもよい。電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0093】
図6及び
図7は、一例としての電池パック1である。
図6及び
図7を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池バックスは、上部筐体2と下部筐体3とを備える。上部筐体2は下部筐体3を覆うことができ、また電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ボックス内に配列することができる。
二次電池の製造方法
【0094】
本願の第2の態様は、二次電池の負極シートを製造する二次電池の製造方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一方の表面に、天然黒鉛を含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成し、且つ、前記第1の負極活性材料が、0.60≦S1≦0.85を満たし、ここで、S1=W2H/(W3R+W2H)である工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に、人造黒鉛を含む第2の負極活性材料を備える第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
ここで、W3Rは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が43.3±0.05°である場合の101結晶面のピーク面積であり、W2Hは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトル図における回折角が44.5±0.05°である時の101結晶面のピーク面積である、二次電池の製造方法を提供する。
【0095】
二次電池の製造過程において、負極シートの第1の負極活性材料、第2の負極活性材料のそれぞれの組成を制御、調整することにより、本願に係る二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、優れた低温倍率性能と長いサイクル寿命とを兼ね備えることができる。
【0096】
本願に係る二次電池の製造方法において、第1の負極活性材料のスラリー及び第2の負極活性材料のスラリーは、一回で同時に塗布されてもよいし、二回に分けて塗布されてもよい。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料のスラリー及び第2の負極活性材料のスラリーは、一回で同時に塗布される。一回で同時に塗布されると、上下の負極フィルム層の間の接着性が良くなり、電池のサイクル性能をさらに改善することにも役立つ。
【0098】
本願に係る負極シートの製造方法以外、本願に係る二次電池の他の構成及び製造方法自体は公知である。例えば、本願に係る正極シートは、以下の製造方法に従って製造することができる。正極活性材料及び選択可能な導電剤(例えば、カーボンブラック等の炭素材料)、接着剤(例えば、PVDF)等を混合して溶媒(例えば、NMP)に分散させ、均一に攪拌した後、正極集電体に塗布し、乾燥した後に正極シートを得る。正極集電体としては、アルミニウム箔等の金属箔や多孔質金属板等の材料を用いることができる。正極シートを作製する際、正極集電体の非コーティング領域に、打ち抜きやレーザーダイカット等の方法により正極タブを得ることができる。
【0099】
最後に、セパレータが正/負極シート間で隔離の作用を果たすように正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層する。その後、巻回(又は積層)工程を採用して電極アセンブリを形成する。電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形等の工程を経て、二次電池を得る。
装置
【0100】
本願の第3の態様は、装置を提供する。当該装置は、本願の第1の態様に係る二次電池、又は本願の第2の態様に係る方法によって製造された二次電池を含む。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。本願に係る装置は、本願に係る二次電池を採用するので、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【0101】
前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0102】
前記装置は、その使用要求に応じて、二次電池、電池モジュール、又は電池パックを選択することができる。
【0103】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該装置の二次電池に対する高倍率及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0104】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、通常薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
【0105】
以下、実施例に基づいて本願の有益な効果をさらに説明する。
実施例
【0106】
本願に係る発明の目的、技術的手段及び有益な技術効果をより明確にするために、以下、実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、理解すべきものとして、本願に係る実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するものではなく、且つ明細書の実施例に限定されるものではない。具体的な実験条件や操作条件が実施例に明記されていない場合、通常の条件に従って作製したり、材料供給者が推奨する条件に従って作製したりする。
一 二次電池の製造
実施例1
1)正極シートの製造
【0107】
リチウムニッケルコバルトマンガン三元活物質LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、導電性カーボンブラックSuper-P、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を94:3:3の重量比でN-メチルピロリドンの溶媒に十分に攪拌し、均一に混合した後、スラリーをアルミニウム箔基材に塗布する。乾燥、冷間プレス、分割、切断等の工程により、正極シートを得る。ここで、正極フィルム層の面密度は、17.5mg/cm2であり、圧縮密度は、3.4g/cm3である。
2)負極シートの製造
【0108】
第1の段階において、負極スラリー1を調製する。第1の負極活性材料である天然黒鉛、接着剤SBR、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super P)を秤量して96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で脱イオン水と一定の順序で攪拌タンクに入れて混合し、負極スラリー1を調製する。
【0109】
第2の段階において、負極スラリー2を調製する。第2の負極活性材料である人造黒鉛、接着剤SBR、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super P)を秤量して96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で脱イオン水と一定の順序で攪拌タンクに入れて混合し、負極スラリー2を調製する。
【0110】
第3の段階において、負極スラリー1と負極スラリー2とをダブルキャビティ塗布装置により同時に押し出す。負極スラリー1を集電体に塗布して第1の負極フィルム層を形成し、負極スラリー2を第1の負極フィルム層に塗布して第2の負極フィルム層を形成する。第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との質量比は、1:1である。負極フィルム層の面密度は、11.5mg/cm2であり、負極フィルム層の圧縮密度は、1.65g/cm3である。
【0111】
第4の段階において、塗布された湿膜をオーブンによって異なる温度範囲内で乾燥させて乾燥のシートを得て、さらに冷間プレスを経て必要な負極フィルム層を得る。また、分割、切断等の工程を経て、負極シートを得る。
3)セパレータ
【0112】
セパレータとしてPEフィルムを選択する。
4)電解液の調製
【0113】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合する。次いで、十分に乾燥したリチウム塩LiPF6を混合有機溶媒に1mol/Lの割合で溶解して電解液を調製する。
5)電池の製造
【0114】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回後に電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池を得る。
【0115】
実施例2~17及び比較例1~2に係る二次電池は、実施例1に係る二次電池に対してその製造方法は類似しているが、電池のシートの組成及び製品パラメータを調整したものである。異なる製品パラメータの詳細は表1~表2を参照する。
二 性能パラメータの測定方法
1)低温リチウム析出性能の測定
【0116】
各実施例及び比較例に係る電池に対し、25℃の環境下で充放電測定を行い、1.0C(即ち、1時間で理論容量を完全に放電した電流値)の放電電流でカットオフ電圧が2.8Vになるまで定電流放電を行う。その後、充電カットオフ電圧が4.2Vとなるまで1.0Cの充電電流で定電流充電し、電流が0.05Cとなるまで定電圧充電を継続し、このとき、電池は満充電状態である。満充電の電池を5分間静置した後、1.0Cの放電電流で放電カットオフ電圧まで定電流放電し、この場合の放電容量は電池の1.0Cでの実際容量であり、C0とする。その後、電池を-10℃の環境に放置し、30分間静置し、さらにxC0でカットオフ電圧の上限まで定電流充電し、さらに電流が0.05C0になるまで定電圧充電し、5分間静置し、電池を解体して界面のリチウム析出を観察する。負極の表面にリチウムが析出しない場合、負極表面のリチウム析出まで充電倍率を上げて再度測定する。電池の低温リチウム析出性能を評価するために、負極表面のリチウム析出の最大充電倍率を記録する。
2)電池の高温サイクル性能の測定
【0117】
60℃の環境で、1回目の充電と放電を行い、1.0C(即ち、1時間で理論容量を完全に放電する電流値)の充電電流で充電カットオフ電圧が4.2Vになるまで定電流と定電圧充電を行い、その後放電カットオフ電圧が2.8Vとなるまで1.0Cの放電電流で定電流放電を行い、これを一つの充放電サイクルとし、今回の放電容量が1回目のサイクルの放電容量とする。その後、連続的な充放電サイクルを行い、毎回サイクルの放電容量値を記録する。N回目のサイクルの容量維持率=(N回目のサイクルの放電容量/1回目のサイクルの放電容量)×100%に基づいて、毎回のサイクルの容量維持率を算出する。サイクルの容量維持率が80%まで低下した時、電池のサイクル回数を記録する。
三 各実施例、比較例の測定結果
【0118】
以上の方法で、各実施例及び比較例に係る電池をそれぞれ製造し、下記表1~表2に各性能のパラメータの測定結果を示す。
【0119】
まず、表1における実施例1~5及び比較例1~2のデータから分かるように、第1の負極活性材料が0.60≦S1≦0.85を満たす場合に限り、二次電池は、優れた低温倍率性能と長いサイクル寿命とを同時に有することができる。S1が小さすぎると、サイクル性能が劣り、S1が大きすぎると、低温倍率性能が劣る。特に、0.70≦S1≦0.80の場合に、二次電池の総合性能が最適となる。
【0120】
また、表2における実施例6~17の比較から分かるように、天然黒鉛と人造黒鉛の体積平均粒径Dv50は電池の性能に大きく影響する。0.60≦S1≦0.85を満たすことを前提として、優れた低温倍率性能と長いサイクル寿命を同時に有するために、天然黒鉛の体積平均粒径Dv50は、15μm~19μmの範囲内にあることが好ましく、16μm~18μmの範囲内にあることがより好ましく、且つ、人造黒鉛の体積平均粒径Dv50は14μm~18μmの範囲内にあることが好ましく、15μm~17μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0121】
表1、表2のデータから分かるように、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で優れた低温倍率性能と長いサイクル寿命とを兼ね備えるために、二次電池は、0.60≦S1≦0.85を満たす必要がある。
【0122】
なお、上記明細書の開示及び教示によれば、当業者は、上記実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は、上記開示及び説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願に対するいくつかの修正及び変更は、本願の特許請求の範囲内に含まれる。また、本明細書においていくつかの特定の用語が使用されるが、これらの用語は、単に説明を容易にするためのものであり、本願を限定するものではない。
【0123】
【0124】