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▶ シャンハイ エレクトリック パワー ジェネレーション エクィップメント カンパニー リミテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】鋼管及び鋳造品用耐熱鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240130BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20240130BHJP
   C21D 9/08 20060101ALI20240130BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/60
C21D9/08 E
C21D9/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022557133
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2021072875
(87)【国際公開番号】W WO2022021816
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】202010749897.3
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522371709
【氏名又は名称】シャンハイ エレクトリック パワー ジェネレーション エクィップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メイ,リンボ
(72)【発明者】
【氏名】スン,リンゲン
(72)【発明者】
【氏名】アン,チュンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユー
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-036038(JP,A)
【文献】特開2013-039602(JP,A)
【文献】特開2016-216815(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111139409(CN,A)
【文献】特開平04-371551(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104726779(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 9/08
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱鋼であって、以下の質量パーセントの元素で構成され、
C:0.08~0.14wt%、Si:0.20~0.40wt%、Mn:0.30~0.60wt%、P:≦0.020wt%、S:≦0.010wt%、Cr:9.00~10.00wt%、Co:2.80~3.30wt%、W:1.65~1.90wt%、Mo:0.55~0.80wt%、V:0.15~0.25wt%、Nb:0.03~0.08wt%、N:0.006~0.015wt%、B:0.009~0.015wt%、Ni:≦0.20wt%、Al:≦0.02wt%、Ti:≦0.02wt%、Zr:≦0.02wt%、Cu:≦0.15wt%、Sn:≦0.02wt%、As:≦0.02wt%、Sb:≦0.005wt%、残部はFeであり、
ここで、Cr当量はCr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づいて≦8.5%であるべきであり、前記B元素とN元素の質量の比は0.65~2.40:1である、ことを特徴とする耐熱鋼。
【請求項2】
前記耐熱鋼は以下の質量パーセントの元素で構成され、
C:0.08~0.13wt%、Si:0.20~0.30wt%、Mn:0.40~0.50wt%、P:≦0.020wt%、S:≦0.005wt%、Cr:9.00~9.60wt%、Co:2.90~3.20wt%、W:1.70~1.85wt%、Mo:0.60~0.75wt%、V:0.18~0.25wt%、Nb:0.04~0.07wt%、N:0.007~0.014wt%、B:0.010~0.015wt%、Ni:≦0.10wt%、Al:≦0.01wt%、Ti:≦0.01wt%、Zr:≦0.01wt%、Cu:≦0.10wt%、Sn:≦0.01wt%、As:≦0.01wt%、Sb:≦0.003wt%、残部はFeであり、
ここで、Cr当量はCr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づいて≦8.0%であるべきであり、前記B元素とN元素の質量の比は0.75~2.10:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱鋼。
【請求項3】
鋼管の製造方法であって、請求項1~2のいずれか一項に記載の耐熱鋼を元素調合比率に応じて原料を取って混合した後に製錬を行い、まず連続鋳造、ダイカスト鋳造、熱間圧延又は熱間鍛造のうちのいずれか1種類によって素管に製造され、その後、素管を、熱間圧延、熱間引き抜き、冷間延伸または冷間圧延のうちのいずれか1種類を用いて鋼管に製造し、更に鋼管に対する焼ならし又は焼入れを行った後に焼き戻しを行い、製品を得て、
ここで、前記焼ならし又は焼入れの温度は1070~1160℃であり、前記焼き戻しは少なくとも1回を含み、前記焼き戻しの温度は740~790℃である、ことを特徴とする鋼管の製造方法。
【請求項4】
鋳造品の製造方法であって、請求項1~2のいずれか一項に記載の耐熱鋼を元素調合比率に応じて原料を取って混合した後に製錬、注型を行った後に鋳造品を得て、更に鋳造品に対する焼ならし又は焼入れを行った後に焼き戻しを行い、製品を得て、
ここで、前記焼ならし又は焼入れの温度は1070~1160℃であり、前記焼き戻しは少なくとも1回を含み、前記焼き戻しの温度は730~780℃である、ことを特徴とする鋳造品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか一項に記載の耐熱鋼、又は請求項3に記載の鋼管の製造方法で製造された鋼管を含む、圧力容器。
【請求項6】
請求項1~2のいずれか一項に記載の耐熱鋼、又は請求項4記載の鋳造品の製造方法で製造された鋳造品を含む、動力機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の技術分野に属し、鋼管及び鋳造品用耐熱鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力容器におけるボイラーは、エネルギー変換機器であり、ボイラーに供給されたエネルギーは燃料による化学エネルギー、電気エネルギーを有し、ボイラーは一定の熱エネルギーを有する蒸気、高温水又は有機熱媒体を取り出す。動力機械における蒸気タービンは、スチームタービンとも称され、回転式蒸気動力装置であり、高温高圧蒸気は固定ノズルを通過して加速された気流となった後、ブレードに噴射され、ブレード列が取り付けられる回転子を回転させると共に、外に仕事をする。ボイラーと蒸気タービンは現代火力発電所の主な装置である。
【0003】
火力発電の石炭燃焼ユニットの蒸気温度というパラメータを向上させることでユニットの効率を向上でき、化石燃料の消費を減少させ、省エネルギーや排出削減を実現することができる。ボイラーと蒸気タービンの動作温度は鋼管、例えば、ボイラー配管や、鋳造品、例えば、蒸気タービンにおけるシリンダーとバルブなどの重要な部品材料の最高使用温度により制限されている。
【0004】
ボイラー配管、蒸気タービンにおけるシリンダーとバルブなどの部品用高温材料はCr-Mo鋼から様々な9%~12%Crフェライト鋼に発展してきた。ここで、従来の鋼管、例えば、ボイラー配管の高温材料において、現在選択可能なものはT92/P92などを有し、従来の鋳造品、例えば、蒸気タービンにおけるシリンダーとバルブの高温材料において、現在選択可能なものはZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBなどを有する。しかし、これらの鋼種の最高動作温度は630℃以下であり、現在、動作温度が650℃に達した鋼管及び鋳造品用耐熱鋼はない。
【発明の概要】
【0005】
上記従来技術の欠点に鑑み、本発明の目的は鋼管及び鋳造品用耐熱鋼を提供することであり、ボイラー配管と蒸気タービン鋳造品を製造することができ、650℃及び650℃以下の圧力容器又は動力機械部品の使用における要求を満たすことができる。
【0006】
上記目的及び他の関連する目的を達成するために、本発明の第1の態様は、鋼管及び鋳造品用耐熱鋼を提供し、以下の質量パーセントの元素で構成される。
【0007】
C(炭素):0.08~0.14wt%、Si(シリコン):0.20~0.40wt%、Mn(マンガン):0.30~0.60wt%、P(リン):≦0.020wt%、S(硫黄):≦0.010wt%、Cr(クロム):9.00~10.00wt%、Co(コバルト):2.80~3.30wt%、W(タングステン):1.65~1.90wt%、Mo(モリブデン):0.55~0.80wt%、V(バナジウム):0.15~0.25wt%、Nb(ニオブ):0.03~0.08wt%、N(窒素):0.006~0.015wt%、B(ホウ素):0.009~0.015wt%、Ni(ニッケル):≦0.20wt%、Al(アルミニウム):≦0.02wt%、Ti(チタン):≦0.02wt%、Zr(ジルコニウム):≦0.02wt%、Cu(銅):≦0.15wt%、Sn(スズ):≦0.02wt%、As(ひ素):≦0.02wt%、Sb(アンチモン):≦0.005wt%、残部はFe(鉄)である
【0008】
ましくは、前記鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Cr(クロム)当量はCr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づいて≦8.5%であるべきであり、前記B元素とN元素の質量の比は0.65~2.40:1である。
【0009】
好ましくは、前記鋼管及び鋳造品用耐熱鋼は、以下の質量パーセントの元素で構成される。
【0010】
C:0.08~0.13wt%、Si:0.20~0.30wt%、Mn:0.40~0.50wt%、P(リン):≦0.020wt%、S(硫黄):≦0.005wt%、Cr:9.00~9.60wt%、Co:2.90~3.20wt%、W:1.70~1.85wt%、Mo:0.60~0.75wt%、V:0.18~0.25wt%、Nb:0.04~0.07wt%、N:0.007~0.014wt%、B:0.010~0.015wt%、Ni:≦0.10wt%、Al(アルミニウム):≦0.01wt%、Ti:(チタン)≦0.01wt%、Zr(ジルコニウム):≦0.01wt%、Cu(銅):≦0.10wt%、Sn(スズ):≦0.01wt%、As:(ひ素)≦0.01wt%、Sb(アンチモン):≦0.003wt%、残部はFeである
【0011】
に好ましくは、前記鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Cr(クロム)当量はCr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づいて≦8.0%であるべきであり、前記B元素とN元素の質量の比は0.75~2.10:1である。
【0012】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、C元素は焼入れ性を確保する。焼き戻し過程に、Cは他の元素に結合され、結晶境界とマルテンサイトラス境界にM23C6炭化物を形成し、マルテンサイトラスの内部にMX型炭窒化物を形成し、高温強度を向上させることができる。強度と靭性を確保する以外、Cは有害相δ-フェライトとBNの生成を抑制するための欠かせない元素でもある。しかし、過剰に添加する場合、逆に靭性と強度を低減させ、長時間クリープ破断強度を損なう。そのため、Cの含有量は0.08~0.14%に限定されるべきである。更に、C元素の最適な含有量は0.08~0.13%に限定されるべきである。
【0013】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Siは溶鋼脱酸素剤として、Crと協同作用することで、更に、鋼の耐酸化性を向上させることができる。しかし、Siの添加量が多すぎる場合、鋼において脱酸素生成物SiO2を残留し、溶鋼の純度と靭性を低下させる。また、Siは更に、金属間化合物Laves相の析出を促進し、クリープ塑性を低下させる。高温に使用する時、Siは焼戻し脆性を向上させる。そのため、Siの含有量は0.20~0.40%に限定されるべきである。更に、Si元素の最適な含有量は0.20~0.30%に限定されるべきである。
【0014】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Mn元素は溶鋼における酸素と硫黄元素を除去し、鋼の焼入れ性と強度を向上させ、δ-フェライトとBNの生成を抑制し、M23C6炭化物の析出を促進することができる。しかし、Mn元素の含有量を増加させる場合、クリープ破断強度を低減させる。そのため、Mn元素の含有量は0.30~0.60%に限定されるべきである。更に、Mn元素の最適な含有量は0.40~0.50%に限定されるべきである。
【0015】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Ni元素は鋼の焼入れ性を向上させ、δ-フェライトとBNの生成を抑制し、室温強度と靭性を向上させることができる。しかし、Ni元素を添加することで鋼の高温クリープ特性に有益でなく、鋼の焼戻し脆性を向上させる。本発明の耐熱鋼が必要な高温クリープ強度を得ることを保証するために、Ni元素の添加量を可能な限り低くするべきであり、好ましくは、0.20%以下であり、最も好ましくは、0.10%である。
【0016】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Cr元素は耐酸化性と耐食性を向上させることができ、M23C6炭化物が析出することにより高温強度を向上させる。上記効果を得るために、本発明の耐熱鋼のCr元素の含有量は低くとも9.00%である。しかし、10.00%を超える場合、δ-フェライトが生成しやすく、高強度温度と靭性を低下させる。そのため、Cr元素の含有量は9.00~10.00%に限定されるべきである。更に、Cr元素の最適な含有量は9.00~9.60%に限定されるべきである。同時、本発明の耐熱鋼のCr当量(Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30N)は8.5%以下に限定され、更に好ましくは8.0%以下に限定され、δ-フェライトが析出することを回避することができる。
【0017】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Mo元素は焼入れ性を向上させ、焼戻し脆性を抑制し、M23C6炭化物の分散析出を促進し、鋼の引張強度とクリープ破断強度を向上させることができる。しかし、Mo元素が過剰である場合、δ-フェライトと金属間化合物Laves相の析出を促進し、靭性を顕著に低減させる。そのため、Mo元素の含有量は0.55~0.80%に限定される。更に、Mo元素の最適な含有量は0.60~0.75%に限定されるべきである。
【0018】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、W元素はM23C6炭化物の粗大化を効果的に抑制でき、その役割はMo元素を超え、クリープ破断強度を顕著に向上させることができる。W元素を添加して一部のMo元素を置換し、Mo元素当量(Mo+1/2W)は1.5%前後であるように保証し、強化効果が最も顕著であり、δ-フェライトと金属間化合物Laves相を過剰に形成することがない。W元素の添加量が1.90%を超える場合、塑性、靭性とクリープ破断強度を損ない、鋼において偏析が発生しやすい。そのため、W元素の含有量は1.65~1.90%に限定されるべきである。更に、W元素の最適な含有量は1.70~1.85%に限定されるべきである。
【0019】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Co元素により固溶強化できると共に、δ-フェライトの析出を抑制することができる。Co元素はMo元素とW元素との相互作用下で、高温強度を顕著に改善し、鋼の靭性を向上させる。同時、コストを抑制するために、Co元素の含有量が高すぎることは好ましくない。Co元素の含有量は2.80~3.30%に限定されるべきである。更に、Co元素の最適な含有量は2.90~3.20%に限定されるべきである。
【0020】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、V元素は引張強度を向上させることができる。且つ、マルテンサイトラスの内部にV元素の細かい炭窒化物を生成することで、クリープ破断強度を向上させる。一定の量のV元素を添加し、結晶粒を微細化し、靭性を向上させることができる。しかし、添加量が多すぎる場合、靭性を低下させ、炭素が過剰に固定されることによってM23C6炭化物の析出量が減少することを引き起こす。そのため、その含有量は0.15~0.25%である。期待値は0.18~0.25%であるべきである。
【0021】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、Nb元素はV元素と同様に、引張強度とクリープ破断強度を向上させることができる。Nb元素とC元素は微細なNbCを生成し、結晶粒を微細化し、靭性を向上させることができる。且つ、Nb元素とV元素で形成したMX炭窒化物は、高温強度を向上させる役割を有し、その最も低い含有量は0.03%であるべきである。しかし、その含有量は0.08%以上になる時、V元素と同様に、炭素が過剰に固定されることによってM23C6炭化物の析出量を減少させ、高温強度が低下することを引き起こす。そのため、0.03~0.08%に限定される必要がある。期待値は0.04~0.07%であるべきである。
【0022】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、N元素とV元素はVN窒化物が析出することができ、固溶状態でMo元素とW元素と組み合わせ、高温強度を向上させ、含有量は低くとも0.005%であるべきである。しかし、0.015%以上を添加する場合、塑性を損なう。且つ元素と共存する時、共晶Fe2BとBNが生成しやすく、鋼のクリープ特性と靭性を損なう。そのため、N元素の含有量は0.006~0.015%に限定される。更に、N元素の最適な含有量は0.007~0.014%に限定されるべきである。
【0023】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼において、B元素は結晶境界の強化効果を有し、M23C6炭化物の粗大化を抑制する役割を有し、高温強度を向上させる。しかし、0.015%以上である場合、鍛造性能と溶接性能に対して有益ではない。そのため、B元素の含有量は0.009~0.015%に限定される。更に、B元素の最適な含有量は0.010~0.015%に限定されるべきである。B元素とN元素が結合されてBNを生成することを防止するために、B元素とN元素の質量の比を0.65~2.40:1に制御するべきであり、更に好ましくは、0.75~2.10:1に制御されるべきである。
【0024】
上記不可避な不純物は鉄鋼の製錬過程に避けられずに汚染された介在物元素である。これらの元素の含有量は可能な限り低くするべきである。製鋼原料を厳格にスクリーニングする場合、コストが上昇することを引き起こす。そのため、Pの含有量を0.020%以下、、Sの含有量を0.010%以下、、Cuの含有量を0.15%以下に抑制するべきである。同時、他の介在物元素はAl、Ti、Zr、Sn、As、Sbなどがあり、本耐熱鋼の力学的性能に対する悪影響を有し、可能な限りその含有量を低減させるべきである。
【0025】
本発明の第2の態様は、鋼管の製造方法を提供し、前記耐熱鋼を元素調合比率に応じて原料を取って混合した後に製錬を行い、まず連続鋳造、ダイカスト鋳造、熱間圧延又は熱間鍛造のうちのいずれか1種類によって素管に製造され、その後、素管を、熱間圧延、熱間引き抜き、熱膨張、冷間延伸、冷間圧延又は鍛造中ぐりのうちのいずれか1種類を用いて鋼管に製造し、更に鋼管に対する焼ならし又は焼入れを行った後に焼き戻しを行い、製品を得る。
【0026】
好ましくは、前記焼ならし又は焼入れの温度は1070~1160℃である。
【0027】
好ましくは、前記焼き戻しは少なくとも1回を含み、前記焼き戻しの温度は740~790℃である。
【0028】
上記連続鋳造、ダイカスト鋳造、熱間圧延、熱間鍛造、熱間引き抜き、熱膨張、冷間延伸、冷間圧延又は鍛造中ぐりはいずれも鉄鋼製造分野において周知の技術工程である。
【0029】
上記鋼管の技術工程は国家標準GB5310の規定を満たす。
【0030】
本発明の第3の態様は、鋳造品の製造方法を提供し、前記耐熱鋼を元素調合比率に応じて原料を取って混合した後に製錬、注型を行った後に鋳造品を得て、更に鋳造品に対する焼ならし又は焼入れを行った後に焼き戻しを行い、製品を得る。
【0031】
好ましくは、前記焼ならし又は焼入れの温度は1070~1160℃である。
【0032】
好ましくは、前記焼き戻しは少なくとも1回を含み、前記焼き戻しの温度は730~780℃である。
【0033】
上記注型は鉄鋼製造分野において周知の技術工程である。
【0034】
本発明の第4の態様は、上記耐熱鋼、又は鋼管の圧力容器における用途を提供する。
【0035】
好ましくは、前記圧力容器はボイラー配管である。
【0036】
本発明の第5の態様は、上記耐熱鋼、又は鋳造品の動力機械における用途を提供する。
【0037】
好ましくは、前記動力機械は蒸気タービンである。
【0038】
上記鋼管及び/又は鋳造品の製造方法において、前記製錬は合金製錬及び精錬工程を含む。上記製錬における合金製錬、精錬工程はいずれも鉄鋼製造分野において周知の技術工程である。
【0039】
前記のように、本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼、好ましい元素成分及びその製造ステップにより、性能に優れた鋼管及び鋳造品を製造することができる。それは従来のボイラー配管材料T/P92に比べて、Co元素を添加し、BとNの割合を調整し、Cr、Mo、B元素の含有量を向上させ、Nb、NとNi元素の含有量を低減させ、Si、W元素の含有量をより厳格に制限し、不純物元素Cu、Sn、As、Sbに対しても制限し、従来の鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBに比べて、W元素を添加し、BとNの割合を調整し、CoとB元素の含有量を向上させ、Mn、Mo、NとNi元素の含有量を低減させ、不純物元素Ti、Zr、Cu、Sn、As、Sbに対しても制限する。
【0040】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼は、高温クリープ破断強度と抗酸化性を向上させることによって、使用温度を向上させ、よって、発電装置の熱効率を向上させ、石炭消費と二酸化炭素の排出を低減させる。当該新型耐熱鋼は鋼管材料として使用される時に材質グレードはTB4(小口径管)/PB4(大口径管)と略称し、鋳造品材料に用いられる時に材質グレードはCB4と略称する。
【0041】
本発明により提供される鋼管及び鋳造品用耐熱鋼は、圧力容器と動力機械、特にボイラー配管と蒸気タービン鋳造品を製造するために用いられてよく、製造により取得されたボイラー配管と蒸気タービン鋳造品は650℃及び650℃以下、おける高温環境において良好な高温クリープ破断強度と抗酸化性を有し、動作温度が650℃及び650℃以下であるボイラーと蒸気タービンに対する使用における要求を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、具体的な実施例に合わせて本発明を詳細に説明し、理解すべきことは、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではないことである。
【0043】
以下、特定の実施例により本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容により本発明の別の利点と効果を容易に理解することができる。本発明は、更に、また異なる実施形態により実施又は応用されてもよく、本明細書における各詳細は異なる観点に基づいて応用されてもよく、本発明の趣旨を逸脱することなく、様々な修正又は変化を行うことができる。
【0044】
実施例1
調合比率に応じて各元素成分を取り、表1に示すように、各成分は以下の質量パーセントの元素で構成される。
【0045】
C:0.10wt%、Si:0.30wt%、Mn:0.50wt%、P:0.008wt%、S:0.003wt%、Cr:9.30wt%、Co:3.00wt%、W:1.80wt%、Mo:0.65wt%、V:0.23wt%、Nb:0.05wt%、N:0.012wt%、B:0.012wt%、Ni:0.05wt%、Al:0.01wt%、Ti:0.003wt%、Zr:0.001wt%、Cu:0.05wt%、Sn:0.001wt%、As:0.001wt%、Sb:0.001wt%、残部はFeである
【0046】
こで、Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づき、Cr当量はは7.62%である。B元素とN元素の質量の比は1:1である。
【0047】
上記各元素調合比率に応じて原料を取って混合した後、製錬を行い、すなわち、合金製錬、精錬を順に行い、更に素管にダイカスト鋳造し、素管に対する熱間引き抜きを行った後に鋼管を得て、更に鋼管に対する焼ならしを行った後に焼き戻しを行い、鋼管サンプル1#を得る。ここで、焼ならしの温度は1100℃であり、焼き戻しは1回を含み、焼き戻しの温度は780℃である。鋼管サンプル1#はボイラー配管である。
【0048】
実施例2
調合比率に応じて各元素成分を取り、表1に示すように、各成分は以下の質量パーセントの元素で構成される。
【0049】
C:0.12wt%、Si:0.25wt%、Mn:0.45wt%、P:0.012wt%、S:0.005wt%、Cr:9.60wt%、Co:3.20wt%、W:1.75wt%、Mo:0.70wt%、V:0.20wt%、Nb:0.07wt%、N:0.009wt%、B:0.013wt%、Ni:0.10wt%、Al:0.01wt%、Ti:0.005wt%、Zr:0.001wt%、Cu:0.06wt%、Sn:0.001wt%、As:0.002wt%、Sb:0.0015wt%、残部はFe(鉄)である
【0050】
こで、Cr+6Si+4Mo+1.5W+11V+5Nb-40C-2Mn-4Ni-2Co-30Nに基づき、Cr当量はは6.7%である。B元素とN元素の質量の比は1.4:1である。上記各元素調合比率に応じて原料を取って混合した後、製錬を行い、すなわち、合金製錬、精錬を順に行い、更に鋳造品に注型し、鋳造品に対する焼ならしを行った後に焼き戻しを行い、鋳造品サンプル1*を得る。ここで、焼ならしの温度は1140℃であり、焼き戻しは2回を含み、焼き戻しの温度は755℃である。鋳造品サンプル1*は蒸気タービンの弁ハウジングの鋳造品である。
【0051】
【表1】
【0052】
比較例1
従来の鋼管材料T92/P92及び鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBを選択し、従来の鋼管材料T92/P92及び鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBは本発明の耐熱鋼に含まれる元素構成は表に示すとおりである。
【0053】
【表2】
【0054】
テスト例1
標準ASTM A213/A335とJB/T 14047に基づき、従来の鋼管材料T92/P92及び鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBの力学的性能指標をリストし、具体的なデータは表3に示すとおりである。表3においてRp0.2は降伏強度であり、Rmは引張強度であり、Aは延伸率であり、Zは断面収縮率であり、KV2は衝撃吸収エネルギーである。同時、実施例1で取得された鋼管サンプル1#と実施例2で取得された鋳造品サンプル1*に対して、国家標準GB/T228.1に応じて室温で引張試験を行い、国家標準GB/T229に応じて室温で衝撃試験を行い、試験の結果は表3に示すとおりである。
【0055】
に示すように、従来の鋼管材料T92/P92と実施例1で取得された鋼管サンプル1#を比較することにより、鋼管サンプル1#で取得された室温力学的性能はT92/P92の指標要求を満たす。
【0056】
に示すように、従来の鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBと実施例2で取得された鋳造品サンプル1*を比較することにより、鋳造品サンプル1*で取得された室温力学的性能はZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBの指標要求を満たす。
【0057】
テスト例2
実施例1で取得された鋼管サンプル1#と実施例2で取得された鋳造品サンプル1*に対して、国家標準GB/T 2039標準に応じてクリープ破断強度試験を行い、その後、国家標準GB/T 2039に規定される外挿法に応じて650℃/10万時間という条件下でクリープ破断強度限界Ru100000h/650℃を導出し、それぞれT92/P92及びZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBの650℃/10万時間という条件下におけるクリープ破断強度と比較し、結果は表4に示すとおりである。
【0058】
から分かるように、実施例1で取得された鋼管サンプル1#のクリープ破断強度外挿値は、従来の鋼管材料T92/P92に比べて50%以上向上し、強化効果が顕著であり、650℃下でのボイラー配管の使用における要求を満たすことができる。
【0059】
から分かるように、実施例2で取得された鋳造品サンプル1*のクリープ破断強度外挿値は、従来の鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBに比べて40%以上向上し、強化効果が顕著であり、650℃下の蒸気タービン鋳造品の使用における要求を満たすことができる。
【0060】
【表3】
【0061】
テスト例3
実施例1で取得された鋼管サンプル1#と実施例2で取得された鋳造品サンプル1*、及び従来の鋼管材料T92/P92及び鋳造品材料ZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBに対して、620℃と650℃下の酸化増量試験をそれぞれ行う。試料を620℃/650℃と27MPa流動の水蒸気環境に載置し、時間は長くとも2000hとなり、この時間帯内において各試料の増量の変化をテストし、酸化増量が小さくなるほど材料の耐酸化性が良くなることを説明する。
【0062】
試験結果によれば、同じ温度下で、鋼管サンプル1#の耐酸化性はT92/P92により顕著に好ましく、鋳造品サンプル1*の耐酸化性はZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNBにより顕著に好ましくなる。
【0063】
異なる温度で、例えば、650℃下、鋼管サンプル1#の酸化増量はT92/P92620℃下における酸化増量に類似し、鋳造品サンプル1*の酸化増量はZG13Cr9Mo2Co1NiVNbNB620℃下における酸化増量に類似する。本発明の耐熱鋼で製造した鋼管及び鋳造品を示し、表面防護コーティング層により耐酸化を行わないという前提で、基本的には650℃動作条件下で長期間に使用されるニーズを満たすことができる。
【0064】
そのため、本発明は、従来技術における様々な欠点を効果的に解決して高い産業利用価値を備える。
【0065】
上記実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者は、いずれも本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、上記実施例に対する修正又は変化を行うことができる。そのため、当業者は、本発明により開示される趣旨と技術的思想を逸脱することなく、なされた一切の等価な修正又は変化は、依然として本発明の請求の範囲に含まれるべきである。