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特許7428824凹状斜面及び除毛装置を有する切断ブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】凹状斜面及び除毛装置を有する切断ブレード
(51)【国際特許分類】
   B26B 21/56 20060101AFI20240130BHJP
   B26B 21/58 20060101ALI20240130BHJP
   B26B 21/60 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B26B21/56
B26B21/58
B26B21/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022561444
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021059198
(87)【国際公開番号】W WO2021209314
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】20169930.3
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500552700
【氏名又は名称】ゲーエフデー-ゲゼルシャフト フュア ディアマントプロドゥクテ エムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】316015877
【氏名又は名称】ザ ジレット カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE GILLETTE COMPANY LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター グルチェ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ グレッツシェル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル メルテンス
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-000269(JP,B1)
【文献】特表2002-533186(JP,A)
【文献】特表2005-509462(JP,A)
【文献】特表2014-522696(JP,A)
【文献】米国特許第03606682(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 21/56
B26B 21/58
B26B 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料(18)と、前記第1の材料(18)と接合された第2の材料(19)とを備えるか又はそれらからなるブレード本体(15)を有する切断ブレード(1)であって、前記切断ブレード(1)は第1の面(2)と、前記第1の面(2)に対向する第2の面(3)と、刃先(4)とを有し、
・前記第1の面(2)は、第1の表面(9)を含み、
・前記第2の面(3)は、凸状又は直線状の断面形状を有する一次斜面(5)と、二次斜面(6)であって、
・前記一次斜面(5)と前記二次斜面(6)とを接続する第1の線(10)と、
・前記刃先(4)から前記第1の線(10)まで延在する前記一次斜面(5)と、
・前記第2の材料(19)内で成形されている前記刃先(4)及び前記一次斜面(5)と、
・前記第1の表面(9)と前記一次斜面(5)、又は前記刃先(4)を通る前記一次斜面(5)の接線との間の第1のくさび角度θ1と、
・前記第1の表面(9)と前記二次斜面(6)の接線との間の第2のくさび角度θ2と、
を有する凹状断面形状を有する、二次斜面(6)とを有し、
式中、θ1>θ2である、切断ブレード。
【請求項2】
前記第1のくさび角度θ1は10°~90°、好ましくは12°~75°、より好ましくは15°~46°、更により好ましくは20°~45°の範囲であり、及び/又は前記第2のくさび角度θ2は-5°~40°、好ましくは0°~30°、より好ましくは5°~25°の範囲であり、及び/又は前記第2のくさび角度θ2は-5°~30°、好ましくは0°~20°、より好ましくは5°~15°、更により好ましくは8°~12°の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の切断ブレード。
【請求項3】
前記一次斜面(5)は、0.1~7μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~3μmの、前記刃先(4)から前記第1の線(10)まで取られた前記第1の表面(9)上に投影された寸法である長さd1を有することを特徴とする、請求項1又は2項に記載の切断ブレード。
【請求項4】
前記第1の表面(9)に投影された寸法、及び/又は前記刃先(4)から第2の線(11)まで取られた前記第1の表面(9’)の仮想延長部は、1~150μm、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~75μm、特に15~50μmの範囲の長さd2を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項5】
前記第1の材料(18)は、
・金属、好ましくはチタン、ニッケル、クロム、ニオブ、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、白金、ゲルマニウム、鉄、及びそれらの合金、特に鋼と、
・炭素、窒素、ホウ素、酸素及びそれらの組み合わせを含有するセラミック、好ましくは炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化タンタル、TiAlN、TiCN及び/又はTiB2と、
・ガラスセラミックと、好ましくは、アルミニウム含有ガラスセラミックと、
・金属マトリックス(サーメット)のセラミック材料から作製された複合材料と、
・硬質金属、好ましくはコバルト又はニッケルと結合した炭化タングステン又は炭化チタンなどの焼結した炭化物硬質金属と、
・好ましくは前記第2の面()に平行な結晶面、ウェハ配向<100>、<110>、<111>又は<211>を有するシリコン又はゲルマニウムと、
・単結晶材料と、
・ガラス又はサファイアと、
・多結晶又はアモルファスシリコン又はゲルマニウムと、
・単結晶又は多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アダマンチンカーボンと、
・これらの組み合わせ
からなる群から選択された材料を含む、又はそれからなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項6】
前記第2の材料(19)は、
・酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、好ましくは窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタン炭素、窒化チタンアルミニウム、立方晶窒化ホウ素と、
・ホウ素アルミニウムマグネシウムと、
・炭素、好ましくはダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ナノ結晶ダイヤモンド、テトラヘドラルアモルファスカーボンのようなダイヤモンドライクカーボン(DLC)と、
・これらの組み合わせ
からなる群から選択された材料を含む、又はそれからなることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項7】
前記第2の材料(19)は、
・0.15~20μm、好ましくは2~15μm、より好ましくは3~12の厚さと、 ・1200GPa未満、好ましくは900GPa未満、より好ましくは750GPa未満の弾性率と、
・少なくとも1GPa、好ましくは少なくとも2.5GPa、より好ましくは少なくとも5GPaの抗折応力σ0と、
・少なくとも20GPaの硬度、
のうちの少なくとも1つの特性を満たすことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項8】
前記第2の材料(19)は、ナノ結晶ダイヤモンドを含むか、又はナノ結晶ダイヤモンドからなり、
・100nm未満、50nm未満、より好ましくは20nm未満の平均表面粗さRRMSと、
・1~100nm、好ましくは5~90nm、より好ましくは~30nm、更により好ましくは10~20nmの微結晶ダイヤモンドの平均粒径d50と、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項9】
前記第1の材料(18)及び/又は前記第2の材料(19)は、好ましくはフルオロポリマー、パリレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される低摩擦材料で少なくとも一部の領域がコーティングされていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項10】
前記刃先(4)は、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満の先端半径を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項11】
前記第2の面(3)は、
・前記二次斜面(6)と三次斜面(7)とを接続する第2の線(11)と、
・前記第2の線(11)から後方に延在する前記三次斜面(7)と、
・前記第1の表面(9)と前記三次斜面(7)又はその接線との間の第3のくさび角度θ3であって、前記第3のくさび角度θ3は、好ましくは1°~60°、より好ましくは10°~55°、更により好ましくは19°~46°の範囲であり、最も好ましくは45°である、第3のくさび角度3と、
を有する直線又は凹状の前記三次斜面(7)を更に含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項12】
前記第2の線(11)は、前記第1の材料(18)と前記第2の材料(19)との境界面(20)に配置されていることを特徴とする、請求項4または請求項11に記載の切断ブレード。
【請求項13】
前記第1の面(2)は、平面状である第1の表面(9)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【請求項14】
前記第1の面(2)は、
・四次斜面(8)と前記第1の表面(9)とを接続する第3の線(12)と、
・前記刃先(4)から前記第3の線(12)まで延在する前記四次斜面(8)と、
・前記第1の表面(9’)の仮想延長部と前記四次斜面(8)との間の第4のくさび角度θ4であって、θ4は、好ましくは5°~75°、より好ましくは10°~60°、更により好ましくは15°~46°、最も好ましくは45°である、第4のくさび角度4と、 を有する前記四次斜面(8)を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の切断ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の材料と、第1の材料に接合された第2の材料とを含むか又はそれらからなるブレード本体を有する切断ブレードに関し、切断ブレードは、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、刃先とを有し、第1の面は、第1の表面を含み、第2の面は、凸状又は直線状の断面形状を有する一次斜面と、凹状の断面形状を有する二次斜面とを含む。更に、本発明は、この切断ブレードを含む除毛装置に関する。
【0002】
本出願において以下の定義が使用される:
・ すくい面は、切断工程で除去された切断された毛が摺動する切断ブレードの表面であり、
・ クリアランス面は、皮膚上を通過する切断ツールの表面であり、クリアランス面と皮膚への接触面との間の角度は、クリアランス角度αであり、
・ 切断ブレードの切断斜面は、すくい面及びクリアランス面によって囲まれ、斜面角度θによって示される。
・ 刃先は、すくい面とクリアランス面との交線である。
【背景技術】
【0003】
切断ブレード、特にカミソリ刃は、典型的には、対称的なくさび形の刃先が形成されたステンレス鋼などの適切な基材材料から作製される。
【0004】
カミソリ刃に関して、ブレードの鋭さと機械的強度、したがって刃先の耐久性との間の最良の妥協点を見出すために、切断ブレードの設計を最適化しなければならない。従来のステンレス鋼カミソリ刃の製造は、通常硬化鋼基材を研削することによって対称的な刃先を形成するために、ブレードが両側から鋭利にされる前に鋼基材の硬化処理を含む。
【0005】
ブレードの機械的特性を最適化するために、鋭利にした後に鋼ブレードに更なるコーティングを施してもよい。刃先の機械的強度を向上させるには、ダイヤモンド、アモルファスダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒化物、炭化物、酸化物などの硬質コーティング材料が適している。
【0006】
したがって、刃先材料が硬いほど、先端部保持特性が長くなり、その結果、摩耗が少なくなると予想される。耐食性を高めるために、又はブレード摩擦を低減するために、他のコーティングが適用されてもよい。
【0007】
従来技術におけるほとんどのブレードは、対称的なブレード本体を有するブレードに焦点が当てられている。しかしながら、非対称ブレードを有するブレードが教示されるいくつかの手法が存在する。
【0008】
米国特許第3,606,682号には、切断の容易さ及び剃り心地が改善されたカミソリ刃が記載されている。ブレードは、刃先に隣接する凹部を有し、これにより、剃り心地を向上させることができる。この効果は、対称及び非対称のブレード本体について示されている。
【0009】
米国特許第3,292,478号は、ナイフが両側に適切に傾斜した表面を有し、その結果、刃先が側面間の中央に配置されず、ナイフが非対称形状を有する、織物、皮革及び同様のシート材料用のカッティングダイナイフを記載している。
【0010】
物体を切断するのに必要な力を低減したいという継続的な要望があるが、これは、必要なエネルギーが少なく、刃先の摩耗が少ないためである。剃毛の状況では、毛髪をより低い力で切断すると、毛髪への引っ張りが少なくなり、したがって不快感が少なくなる。
【0011】
切断力の低減は、くさび形切断ツールの角度を小さくすることによって達成される。しかしながら、先端部をより鋭利にすると、先端部はより脆くなり、硬質コーティングの適用にもかかわらず、従来の鋼カミソリ刃の耐久性は、今日でも依然として限度がある。
【0012】
更に、切削力への大きな寄与は、ツールと切断対象物体との間の摩擦から生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3,606,682号
【文献】米国特許第3,292,478号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、従来技術における上述の欠点に対処し、切断プロセス中の高い快適性、すなわち低い切断力、及び高い耐久性、すなわちブレードの低い脆弱性を同時に可能にする設計を有する切断ブレードを提供する。
【0015】
この問題は、請求項1の特徴を有する切断ブレード及び請求項15の特徴を有する除毛装置によって解決される。更なる従属請求項は、そのようなブレードの好ましい実施形態を定義する。
【0016】
特許請求の範囲及び本出願の説明における「備える(comprising)」という用語は、更なる構成要素が除外されないという意味を有する。本発明の範囲内で、「からなる(consisting of)」という用語は、「備える(comprising)」という用語の好ましい実施形態として理解されるべきである。群が少なくとも特定の数の成分を「備える(comprise)」と定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの構成要素から「なる」群が開示されるように理解されるべきである。
【0017】
以下では、断面図という用語は、(刃先が直線状である場合)刃先に垂直な、又は(刃先が湾曲している場合)刃先の接線に垂直な、かつ切断要素の基材の表面に垂直な、切削要素を通る断片の図を指す。
【0018】
線という用語は、(図1のように)斜視図に関して(図3のような断面図による)異なる斜面間の接続点の直線状延長として理解されなければならない。一例として、凹状斜面が凸状斜面に隣接している場合、断面図の転換点は斜視図における線に延長される。
【0019】
本発明によれば、第1の材料と、第1の材料と接合された第2の材料とを備えるか又はそれらからなるブレード本体を有する切断ブレードが提供され、切断ブレードは第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、刃先とを有し、
・ 第1の面は、第1の表面を含み、
・ 第2の面は、凸状又は直線状の断面形状を有する一次斜面と、二次斜面であって、
・ 一次斜面と二次斜面とを接続する第1の線と、
・ 刃先から第1の線まで延在する一次斜面と、
・ 第2の材料内で成形されている刃先及び一次斜面と、
・ 第1の表面と一次斜面、又はその接線との間の第1のくさび角度θと、
・ 第1の表面と二次斜面の接線との間の第2のくさび角度θと、
を有する凹状断面形状を有する、二次斜面とを有する。
【0020】
驚くべきことに、くさび角度が以下の条件を満たすときに非常に良好な切断性能と共に非常に安定した刃先を有する切断ブレードが提供され得ることが見出された:
θ>θ
【0021】
本発明による切断ブレードは、低いくさび角度θを有する薄い二次斜面に起因して、低い切断力を有する。これは、貫通斜面の機能を有する二次斜面の領域における切断ブレードと切断される物体との間の接触面積の減少によって実現される。本発明によれば、すくい面の凹状断面形状は、切断力の著しい低減をもたらす。
【0022】
第2のくさび角度θは、切断される物体を貫通するブレードの貫通角度を表す。貫通角度θが小さいほど、切断対象物体を貫通する力が低くなる。
【0023】
本発明による切断ブレードは、第2のくさび角度θよりも大きい第1のくさび角度θを有する一次斜面を追加することによって強化される。したがって、第1のくさび角度θを有する一次斜面は、切断動作からの損傷に対して機械的に刃先を安定化させる機能を有し、これにより、ブレードの切断性能に影響を与えることなく、二次斜面のエリア内のスリムなブレード本体を可能にする。結果として、くさび角度θを有する一次斜面を使用することによって、第2のくさび角度θを低減することができる。換言すれば、くさび角度θは刃先を安定させる機能を有し、ブレードの切断性能に影響を与えることなく二次斜面のエリアでスリムなブレード本体を可能にする。
【0024】
好ましい実施形態によれば、切断ブレードは非対称断面形状を有する。非対称断面形状とは、一次くさび角度θの二等分線であり、刃先に固定された軸に対する対称性を指す。
【0025】
更に好ましい実施形態によれば、第1のくさび角度θは、10°~90°、好ましくは12°~75°、より好ましくは15°~46°、更により好ましくは20°~45°の範囲であり、及び/又は第2のくさび角度θは、-5°~40°、好ましくは0°~30°、より好ましくは5°~25°、更により好ましくは10°~15°の範囲であり、及び/又は第2のくさび角度θは、-5°~30°、好ましくは0°~20°、より好ましくは-5°~30°、好ましくは0°~20°、より好ましくは5°~15°、更により好ましくは8°~12°の範囲である。
【0026】
更に好ましい実施形態によれば、一次斜面は、0.1~7μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~3μmの、刃先から第1の線まで取られた第1の表面上に投影された寸法である長さdを有することを特徴とする。0.1μm未満の長さdは、そのような長さの刃先が脆くなりすぎ、切断ブレードの安定した使用を可能にしないため、製造が困難である。一次斜面は、低い切断力を提供する二次斜面のエリアでのスリムなブレードを可能にする二次斜面によってブレード本体を安定させる。驚くべきことに、長さdが7μm以下であれば、一次斜面は切断性能に影響を及ぼさないことが分かった。
【0027】
好ましくは、第1の表面(9)に投影された寸法、及び/又は刃先(4)から第2の線(11)まで取られた第1の表面(9’)の仮想延長部は、1~75μm、より好ましくは5~50μm、更により好ましくは10~35μmの範囲の長さdを有する。第2の線は、二次斜面の最終線、又は任意選択的に、三次斜面との二次斜面の交差線であってもよい。長さdは、切断対象物体における切断ブレードの貫通深さに相当する。一般に、dは、切断対象物体の直径の少なくとも30%に対応し、すなわち、物体が典型的には約100μmの直径を有する人毛である場合、長さdは約30μmである。
【0028】
切断ブレードは、好ましくは、第1の材料と、第1の材料と接合された第2の材料とを含むか又はそれらからなるブレード本体によって画定される。第2の材料は、少なくとも第1の材料の領域にコーティングとして堆積することができ、すなわち、第2の材料は、第1の材料の包囲コーティング又は第1の面上の第1の材料上に堆積されたコーティングとすることができる。
【0029】
第1の材料の材料は、一般に、この材料を傾斜させることが可能である限り、いかなる特定の材料にも限定されない。
【0030】
しかしながら、代替的な実施形態によれば、ブレード本体は、第1の材料、すなわちコーティングされていない第1の材料のみからなる。この場合、第1の材料は、等方性構造を有する、すなわち全方向において同一の特性値を有する材料であることが好ましい。そのような等方性材料は、多くの場合、成形技術とは無関係に、成形により適している。
【0031】
第1の材料は、好ましくは、
・ 金属、好ましくはチタン、ニッケル、クロム、ニオブ、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、白金、ゲルマニウム、鉄、及びそれらの合金、特に鋼と、
・ 炭素及び/又は窒素、ホウ素、酸素又はそれらの組み合わせ、好ましくは炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化タンタル、TiAlN、TiCN及び/又はTiBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むセラミックと、
・ ガラスセラミックと、好ましくは、アルミニウム含有ガラスセラミックと、
・ 金属マトリックス(サーメット)のセラミック材料から作製された複合材料と、
・ 硬質金属、好ましくはコバルト又はニッケルと結合した炭化タングステン又は炭化チタンなどの焼結した炭化物硬質金属と、
・ 好ましくは第2の面に平行な結晶面、ウエハ配向<100>、<110>、<111>又は<211>を有するシリコン又はゲルマニウムと、
・ 単結晶材料と、
・ ガラス又はサファイアと、
・ 多結晶又はアモルファスシリコン又はゲルマニウムと、
・ 単結晶又は多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アダマンチンカーボンと、
・ これらの組み合わせ
からなる群から選択された材料を含む、又はそれからなる。
【0032】
第1の材料に使用される鋼は、好ましくは、1095、12C27、14C28N、154CM、3Cr13MoV、4034、40X10C2M、4116、420、440A、440B、440C、5160、5Cr15MoV、8Cr13MoV、95X18、9Cr18MoV、Acuto+、ATS-34、AUS-4、AUS-6(=6A)、AUS-8(=8A)、C75、CPM-10V、CPM-3V、CPM-D2、CPM-M4、CPM-S-30V、CPM-S-35VN、CPM-S-60V、CPM-154、Cronidur-30、CTS204P、CTS20CP、CTS40CP、CTSB52、CTSB75P、CTSBD-1、CTSBD-30P、CTSXHP、D2、Elmax、GIN-1、H1、N690、N695、Niolox(1.4153)、Nitro-B、S70、SGPS、SK-5、Sleipner、T6MoV、VG-10、VG-2、X-15T.N.、X50CrMoV15、ZDP-189からなる群から選択される。
【0033】
第2の材料は、好ましくは、
・ 酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、好ましくは窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタン炭素、窒化チタンアルミニウム、立方晶窒化ホウ素と、
・ ホウ素アルミニウムマグネシウムと、
・ 炭素、好ましくはダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ナノ結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と、
・ これらの組み合わせ
からなる群から選択された材料を含む、又はそれからなる。
【0034】
第2の材料は、好ましくは、TiB、AlTiN、TiAlN、TiAlSiN、TiSiN、CrAl、CrAlN、AlCrN、CrN、TiN、TiCN及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0035】
更に、VDIガイドライン2840に引用されているすべての材料を選択することができる。
【0036】
第2の材料として、ナノ結晶ダイヤモンド及び/又はナノ結晶ダイヤモンド及び多結晶ダイヤモンドの多層の第2の材料を使用することが特に好ましい。単結晶ダイヤモンドの生成と比較して、ナノ結晶ダイヤモンドの生成は、実質的により容易かつ経済的に達成できることが示されている。したがって、より長くより大きな面積の切断ブレードも製造することができる。更に、それらの粒径分布に関して、ナノ結晶ダイヤモンド層は多結晶ダイヤモンド層よりも均質であり、材料はまた内部応力が小さい。これにより、刃先の巨視的な歪みが生じにくくなる。
【0037】
第2の材料は、0.15~20μm、好ましくは2~15μm、より好ましくは5~10μmの厚さを有することが好ましい。
【0038】
第2の材料は、1200GPa未満、好ましくは900GPa未満、より好ましくは750GPa未満のヤング率を有することが好ましい。ヤング率が低いため、第2の材料はより柔軟で剛性が低くなり、基材のヤング率によりよく適合して、刃先の機械的安定性を高めることができる。
【0039】
第2の材料は、好ましくは少なくとも1GPa、より好ましくは少なくとも2.5GPa、更により好ましくは少なくとも5GPaの抗折応力σを有する。
【0040】
抗折応力σの定義に関しては、以下の文献を参照されたい:
・ R.Morrellら、Int.Journal of Refractory Metals & Hard Materials、28(2010)、p.508-515;
・ R.Danzer他、「Technische keramische Werkstoffe」、J.Kriegesmann発行、HvB Press、Ellerau、ISBN 978-3-938595-00-8、6.2.3.1章「Der 4-Kugelversuch zur Ermittlung der biaxialen Biegefestigkeit sproder Werkstoffe」。
【0041】
それによって、抗折応力σは、例えば上記の文献の詳細によるB3B負荷試験における破壊試験の統計的評価によって決定される。それにより、63%の破損確率が存在する破断応力として定義される。
【0042】
第2の材料の非常に高い抗折応力により、第2の材料からの、特に刃先からの個々の結晶子の分離は、ほぼ完全に抑制される。したがって、長期間使用しても、切断ブレードは元の鋭さを維持する。
【0043】
第2の材料は、好ましくは少なくとも20GPaの硬度を有する。硬度は、ナノインデンテーション(Yeon-Gil Jungら、等J.Mater、Res.、Vol.19、No.10、p.3076)によって決定される。
【0044】
第2の材料は、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、更により好ましくは20nm未満の表面粗さRRMSを有し、これは以下に従って計算される:
【0045】
【数1】
A=評価エリア
Z(x,y)=局所粗さ分布
【0046】
表面粗さRRMSは、DIN EN ISO 25178に従って決定される。上述の表面粗さは、第2の材料の表面の追加の機械的研磨を不要にする。
【0047】
好ましい実施形態では、第2の材料は、1~100nm、好ましくは5~90nm、より好ましくは5~30nmのナノ結晶ダイヤモンドの平均粒径d50を有する。平均粒径d50は、X線回折又は透過型電子顕微鏡及び粒子の計数を使用して決定することができる。
【0048】
第1の材料及び/又は第2の材料は、好ましくはフルオロポリマー(例えば、PTFE)、パリレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される低摩擦材料で少なくとも一部の領域がコーティングされている。
【0049】
刃先は、例えば図8に示す方法を用いた断面SEMによって決定される、好ましくは200nm未満、より好ましくは100nm未満、更により好ましくは50nm未満の先端半径を有する。
【0050】
刃先の先端半径rは、第2の材料の平均粒径d50と相関することが好ましい。刃先における第2の材料の先端半径rとナノ結晶ダイヤモンドハードコーティングの平均粒径d50との比r/d50が0.03~20、好ましくは0.05~15、特に好ましくは0.5~10であると有利である。
【0051】
好ましい実施形態では、第2の面は、二次斜面と三次斜面とを接続する第2の線を有する直線状又は凹状の三次斜面を更に含む。三次斜面は、第2の線から後方に延在する。更に、第3のくさび角度θは、第1の表面と三次斜面又はその接線との間に位置し、第3のくさび角度θは、好ましくは1°~60°、より好ましくは10°~55°、更により好ましくは30°~46°の範囲であり、最も好ましくは45°である。
【0052】
本発明によれば、二次くさび角度よりも大きい三次くさび角度を有する厚くて強い三次斜面を追加することによって、そしてこの三次斜面を使用して切断対象物体を分割することにより、したがって薄い二次斜面に作用する力が低減され、切断ブレードが更に強化される。この機能のために、第3のくさび角度θは、第θのくさび角度2よりも大きくなければならない。したがって、第3のくさび角度θを有する三次斜面は、切断対象物体を分割する機能を有する。
【0053】
一次斜面と二次斜面とを接続するエッジは、第2の材料内で成形されることが好ましい。
【0054】
二次斜面と三次斜面との間のエッジは、第1の材料と第2の材料との境界面に配置されることが更に好ましく、これにより、製造プロセスの取り扱いがより容易になり、したがってより経済的になり、例えば、ブレードを図8a及び図8bのプロセスに従って製造することができる。
【0055】
第1の面は、好ましくは、刃先から第1の表面まで延在する四次斜面を更に含む。第1の面が逃げ面に対応する場合、この四次斜面は、切断の快適さ、すなわち剃毛の快適さを改善する。
【0056】
好ましい実施形態では、第1の面はクリアランス面に対応し、第2の面は切断ブレードのすくい面に対応する。しかしながら、第1の面をすくい面とし、第2の面をクリアランス面とすることも可能である。
【0057】
したがって、本発明によれば、上述のようなカミソリ刃を備える除毛装置も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明は、本発明による特定の実施形態を示す以下の図によって更に説明される。しかしながら、これらの特定の実施形態は、本明細書の一般的な部分の特許請求の範囲に記載されているように、本発明に関していかなる限定的な方法でも解釈されるべきではない。
図1】本発明による第1の切断ブレードの斜視図である。
図2】凸状の一次斜面を有する本発明による切断ブレードの断面図である。
図3】直線状の一次斜面を有する本発明による切断ブレードの断面図である。
図4】第2の材料を用いた本発明による更なる切断ブレードの断面図である。
図5】第1の面上に凸状の一次斜面及び追加の斜面を有する本発明による更なる切断ブレードの断面図である。
図6】第1の面上に直線状の一次斜面及び追加の斜面を有する本発明による更なる切断ブレードの断面図である。
図7】湾曲セグメントを含む非直線刃先を有する、本発明による更なる切断ブレードの斜視図である。
図8a】切断ブレードの製造プロセスのフローチャートである。
図8b】切断ブレードの製造プロセスのフローチャートである。
図9】先端半径の決定を示す丸い先端の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の参照符号は、本出願の図で使用される。
【0060】
参照符号リスト
1 ブレード
2 第1の面
3 第2の面
4 刃先
5 一次斜面
6 二次斜面
7 三次斜面
9 第1の表面
9’ 第1の表面の仮想延長部
10 第1の線
11 第2の線
15 ブレード本体
18 第1の材料
19 第2の材料
20 境界面
60 二等分線
61 垂線
62 円
65 構築点
66 構築点
67 構築点
260 二等分線
【0061】
図1は、本発明による切断ブレードの斜視図である。この切断ブレード1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3とを備えるブレード本体15を有する。第1の面2と第2の面3との交差部には、刃先4が位置している。刃先4は、直線状又は実質的に直線状に形成されている。第1の面2は、平坦な第1の表面9を備え、第2の表面3は、異なる斜面にセグメント化されている。第2の面3は、凸状の一次斜面5と、凹状の二次斜面6と、直線状の三次斜面7とを備える。一次斜面5は、第1の線10を介して二次斜面6に接続され、二次斜面6は、他端で第2の線11を介して三次斜面7に接続される。
【0062】
図2に、本発明による切断ブレードの断面図を示す。この切断ブレード1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3とを有する。第1の面2と第2の面3との交差部には、刃先4が位置している。第1の面2は、平坦な第1の表面9を備え、第2の面3は、異なる斜面にセグメント化されている。切断ブレード1の第2の面3は、第1の表面9と一次斜面5の接線との間に第1のくさび角度θを有する凸状の一次斜面5を有する。二次斜面6は凹状であり、第1の表面9と二次斜面6の接線との間に第2のくさび角度θを有し、二次くさび角度θの二等分線260は刃先4に固定されている。θは、θより小さい。直線状の三次斜面7は、θよりも大きい第3のくさび角度θを有する。一次斜面5は、0.1~7μmの範囲内にある第1の表面9上に投影された寸法である長さdを有する。一次斜面5及び二次斜面6は共に、1~150μm、好ましくは5~100μmの範囲の第1の表面9に投影された寸法である長さdを有する。
【0063】
図3に、本発明に係る切断ブレードの断面図を示す。この切断ブレード1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3とを有する。第1の面2と第2の面3との交差部には、刃先4が位置している。第1の面2は、平坦な第1の表面9を備え、第2の面3は、異なる斜面にセグメント化されている。切断ブレード1の第2の面3は、第1の表面9と一次斜面5との間に第1のくさび角度θを有する直線状の一次斜面5を有する。二次斜面6は凹状であり、第1の表面9と二次斜面6の接線との間にθより小さい第2のくさび角度θを有する。直線状の三次斜面7は、θよりも大きい第3のくさび角度θを有する。一次斜面5は、0.1~7μmの範囲内にある第1の表面9上に投影された寸法である長さdを有する。一次斜面5及び二次斜面6は共に、1~150μm、好ましくは5~100μmの範囲の第1の表面9に投影された寸法である長さdを有する。
【0064】
図4には、本発明の切断ブレードの更なる断面図が示されており、ブレード本体15を含む切断ブレード1は、第1の材料18と、第2の材料19、例えば第1の面2の第1の材料18上のダイヤモンド層とを含む。直線状の一次斜面5(刃先4から第1の線10まで延びる)及び凹状の二次斜面6(第1の線10から第2の線11まで延びる)は、第2の材料19内に位置し、三次斜面7は、第1の材料18内に位置する。第1の材料18と第2の材料19とは、境界面20によって隔てられている。図2に示すように、第1の斜面は、代替的に凸状であってもよい。
【0065】
図5は、第1の面2及び第2の面3を有する切断ブレード1の本発明による実施形態を示す。第2の面3は、凸状の一次斜面5、凹状の二次斜面6、及び直線状の三次斜面7を有する。表面9と刃先4との間の第1の面2には、更なる四次斜面8が配置されている。四次斜面8と表面9’の仮想延長部との間の角度はθである。凸状の一次斜面5の接線と表面9との間のくさび角度θは、凹状の二次斜面6の接線と表面9との間のくさび角度θよりも大きい。更に、直線三次斜面7と表面9との間のくさび角度θは、θよりも大きい。
【0066】
図6は、第1の面2及び第2の面3を有する切断ブレード1の本発明による更なる実施形態を示す。第2の面3は、直線状の一次斜面5、凹状の二次斜面6、及び直線状の三次斜面7を有する。表面9と刃先4との間の第1の面2には、更なる四次斜面8が配置されている。四次斜面8と表面9’の仮想延長部との間の角度はθである。直線状の一次斜面5と表面9との間のくさび角度θは、凹状の二次斜面6の接線と表面9との間のくさび角度θよりも大きい。更に、直線状の三次斜面7と表面9との間のくさび角度θは、θよりも大きい。
【0067】
図7は、本発明による更なる切断ブレードの斜視図を示す。この切断ブレード1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3とを備えるブレード本体15を有する。刃先4は、第1の面2と第2の面3との交差部に位置する。この実施形態では、刃先4は、直線状ではなく、湾曲したセグメントからなる形状である。第1の面2は、平坦な第1の表面9を備え、第2の表面3は、凸状の一次斜面5、凹状の二次斜面6、及び直線状の三次斜面7にセグメント化されている。一次斜面5は、エッジ10を介して二次斜面6に接続され、二次斜面6は、他端でエッジ11を介して三次斜面7に接続される。縁部10及び11は、刃先4の形状に追従し、したがって直線状ではなく、湾曲したセグメントからなる形状である。
【0068】
図8a~図8bに、本発明の方法のフローチャートを示す。第1のステップ1において、シリコンウエハ101は、シリコンの保護層として窒化ケイ素(Si)層102でPE-CVD又は熱処理(低圧CVD)によってコーティングされる。層の厚さ及び堆積手順は、以下のエッチングステップに耐えるのに十分な化学的安定性を可能にするように慎重に選択しなければならない。ステップ2において、フォトレジスト103がSiでコーティングされた基板上に堆積され、続いてフォトリソグラフィによってパターニングされる。次いで、(Si)層は、例えば、パターニングされたフォトレジストをマスクとして使用してCFプラズマ反応性イオンエッチング(RIE)によって構造化される。パターニング後、ステップ3でフォトレジスト103を有機溶媒で剥離する。残りのパターニングされたSi層102は、例えばKOH中の異方性湿式化学エッチングによるシリコンウエハ101の以下の予備構造化ステップ4のマスクとして機能する。エッチングプロセスは、第2の面3上の構造が所定の深さに達し、連続したシリコンの第1の面2が残ると終了する。他の湿式及び乾式化学プロセス、例えばHF/HNO溶液中の等方性湿式化学エッチング又はフッ素含有プラズマの適用が適し得る。次のステップ5では、例えばフッ化水素酸(HF)又はフッ素プラズマ処理によって、残りのSiを除去する。ステップ6において、予め構造化されたSi基板は、約10μmの薄いダイヤモンド層104、例えばナノ結晶ダイヤモンドでコーティングされる。ダイヤモンド層104は、(ステップ6に示すように)Siウエハ101の予め構造化された第2の表面3及び連続した第1の表面2上に、又はSiウエハの連続した第1の表面2上にのみ堆積することができる(ここでは図示せず)。両面コーティングの場合、構造化された第2の表面3上のダイヤモンド層104は、切断ブレードの以下のエッジ形成ステップ9a~9dの前に、更なるステップ7で除去されなければならない。ダイヤモンド層104の選択的除去は、例えば、シリコン基板に対して高い選択性を示すAr/Oプラズマ(例えば、RIE又はICPモード)を使用することによって行われる。ステップ8では、シリコンウエハ101を薄くして、ダイヤモンド層104が基板材料なしで部分的に自立し、残りの領域で所望の基板厚さが達成されるようにする。このステップは、KOH又はHF/HNOエッチング液中の湿式化学エッチングによって、又は好ましくはRIE又はICPモードのプラズマを含むCF、SF、又はCHF中のプラズマエッチングによって実施することができる。
【0069】
次のステップ9(図8b)では、RIEシステムにおいて、刃先を形成するために、Ar/Oプラズマによってダイヤモンド層を異方性エッチングする。シリコン及びダイヤモンドのエッチング速度の一定の比率を利用することにより、くさび角度を有する直線斜面θが形成される。しかしながら、プロセスパラメータはまた、時間的に変化させることもでき、例えば、反応性成分酸素(酸素流量/分圧の変動)を経時的に減少させることにより、時間の経過と共にダイヤモンドエッチング速度が低下し、図2に示すように湾曲した凸状の一次斜面5が得られる。ステップ9aは、エッチングステップ9の前の構造化Siウエハ101及びダイヤモンド層104をより大きな倍率で示し、ステップ9bは、エッチング後に得られた第1の斜面5を示す。最後に、ステップ9c及び9dは、二次斜面6の形成を示している。このステップはまた、例えばRIEシステム内のAr/Oプラズマによって行われるダイヤモンド層及びシリコンの同時異方性エッチングを含む。シリコンはダイヤモンド層104のマスクとして機能する。しかしながら、ステップ9bと同様に、シリコンとダイヤモンドとの間のエッチング速度比は時間的に変化してもよい。ステップ9dに示される凹状の二次斜面6を形成するために、ダイヤモンドについては経時的に増加するエッチング速度及びシリコンについては一定のエッチング速度が使用される。あるいは、シリコンエッチング速度は経時的に減少し、ダイヤモンドのエッチング速度は一定であり得る。プロセスの詳細は、例えば独国特許出願公開第19859905(A1)号に開示されている。
【0070】
図9では、先端半径をどのように決定できるかが示されている。先端半径は、まず、刃先1の第1の斜面の断面画像を半分に二等分する線60を引くことによって決定される。線60は、第1の斜面点65を二等分する。第2の線61は、点65から100nmの距離で線60に垂直に描かれている。線61が第1の斜面を二等分し、2つの追加の点66及び67が描かれる。次に、点65、66、及び67から円62が構築される。円62の半径は、刃先4の先端半径である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9