(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】家具用金具
(51)【国際特許分類】
E05D 15/40 20060101AFI20240130BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20240130BHJP
E05F 1/14 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E05D15/40
E05F1/12
E05F1/14 A
(21)【出願番号】P 2022567340
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 AT2021060136
(87)【国際公開番号】W WO2021222957
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ベッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート フィオラント
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-032174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0362612(US,A1)
【文献】特開2013-144924(JP,A)
【文献】特開平06-081534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0104340(US,A1)
【文献】特開2000-046039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/08
3/14
3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具キャビネット(2)において少なくとも1つの家具部分(3)を可動に支持するための家具用金具(4)であって、前記家具用金具(4)は、少なくとも1つの第1の構成部分(5a)と少なくとも1つの第2の構成部分(5b)とを有しており、前記両構成部分(5a,5b)は、ベアリング軸(23)を備えた少なくとも1つの旋回ベアリング(21)を介して互いに接続されており、前記少なくとも1つの第1の構成部分(5a)は、少なくとも1つの第1の壁(26a,26b)を有している家具用金具(4)において、
前記少なくとも1つの旋回ベアリング(21)は、少なくとも1つの第2の壁(27a,27b)を備えた少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)を有しており、前記第2の壁(27a,27b)はギャップ幅(ΔX)
のギャップ(28a,28b)によって、前記第1の構成部分(5a)の前記第1の壁(26a,26b)から離隔されており、前記ギャップ幅(ΔX)は、半径方向で前記ベアリング軸(23)に向かう方向に少なくとも所定の区分で縮小しており、これにより前記ギャップ(28a,28b)内に充填される潤滑剤(30)は、毛管力によって半径方向で前記ベアリング軸(23)に向かう方向でかつ/または前記ベアリング軸(23)に沿って供給可能である
ことを特徴とする、家具用金具(4)。
【請求項2】
前記ギャップ(28a,28b)は、リング状のギャップである、請求項1記載の家具用金具(4)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)の前記第2の壁(27a,27b)は、前記第1の構成部分(5a)の第1の壁(26a,26b)に対して、第1のギャップ区分において傾斜してかつ第2のギャップ区分において平行に延在し
ている、請求項1
または2記載の家具用金具(4)。
【請求項4】
前記両壁(26a,26b,27a,27b)は前記第1のギャップ区分において、15°~45°の角度を互いになしている、請求項3記載の家具用金具(4)。
【請求項5】
前記両壁(26a,26b,27a,27b)は前記第1のギャップ区分において、30°の角度を互いになしている、請求項3記載の家具用金具(4)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)は、横断面で少なくとも所定の領域で円錐台形状に形成されている、請求項1
から5までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の構成部分(5a)は、前記ベアリング軸(23)の方向で互いに離隔された少なくとも2つの部分区分(29a,29b)を有しており、前記第2の構成部分(5b)は少なくとも所定の領域で、前記第1の構成部分(5a)の前記両部分区分(29a,29b)の間に配置されている、請求項1から
6までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項8】
前記第1の構成部分(5a)の前記少なくとも1つの第1の壁(26a,26b)は
、材料厚さによって別の壁(33a,33b)から離隔されており、前記別の壁(33a,33b)は前記第2の構成部分(5b)に面している、請求項1から
7までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項9】
前記第1の構成部分(5a)の前記少なくとも1つの第1の壁(26a,26b)は、前記ベアリング軸(23)の方向で材料厚さによって前記別の壁(33a,33b)から離隔されている、請求項8記載の家具用金具(4)。
【請求項10】
前記ベアリング軸(23)は、リベットとして形成されており、少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)が、前記リベット
の端部領域(25a,25b)と、前記第1の構成部分(5a)の前記第1の壁(26a)との間に収容されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項11】
前記端部領域(25a,25b)は、拡大している端部領域である、請求項10記載の家具用金具(4)。
【請求項12】
少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)が、少なくとも所定の区分で、前記両構成部分(5a,5b)の間に配置されている、請求項1から
11までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項13】
前記家具用金具(4)は、ケーシング(9)と、前記ケーシング(9)に対して相対的に旋回可能な、少なくとも2つの作動アーム(31a,31b,31c)を備えた少なくとも1つの作動アームアセンブリ(5)とを有しており、前記両作動アーム(31a,31b,31c)は、前記少なくとも1つの旋回ベアリング(21)によって互いに接続されている、請求項1から
12までのいずれか1項記載の家具用金具(4)。
【請求項14】
家具(1)であって、家具キャビネット(2)と、前記家具キャビネット(2)に対して相対的に可動に支持された少なくとも1つの家具部分(3
)とを有しており、前記家具(1)は、請求項1から
13までのいずれか1項記載の少なくとも1つの家具用金具(4)を有し
ている、家具(1)。
【請求項15】
前記家具部分(3)は、水平方向の軸を中心として前記家具キャビネット(2)に対して相対的に旋回可能な家具フラップ(3a)である、請求項14記載の家具(1)。
【請求項16】
前記家具キャビネット(2)は少なくとも1つの家具板(6)を有しており、前記家具用金具(4)のケーシング(9)は、前記家具キャビネット(2)の前記家具板(6)の内側に実質的に完全に収容されている、請求項14または15記載の家具(1)。
【請求項17】
請求項1から
13までのいずれか1項記載の家具用金具(4)を製造するための方法であって、
-前記家具用金具(4)の両構成部分(5a,5b)を、少なくとも1つの旋回ベアリング(21)のベアリング軸(23)によって互いに接続し、この場合、少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)を、両壁(26a,26b,27a,27b)の間にギャップ(28a,28b)を形成しながら前記ベアリング軸(23)に配置する、ステップと、
-前記ギャップ(28a,28b)内に潤滑剤を充填するステップと、
-前記潤滑剤(30)を、毛管力によって半径方向で前記ベアリング軸(23)に向かう方向でかつ/または前記ベアリング軸(23)に沿って供給するステップと、
を有していることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ベアリング軸(23)は、リベットとして形成されていて、この場合、前記リベットの少なくとも1つの端部領域(25a,25b)を、さらなる方法ステップにおいて変形さ
せる、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの毛管ディスク(24a,24b)が、前記第1の壁(26a,26b)と、前記リベットの変形された前記端部領域(25a,25b)との間に収容される、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具キャビネットにおいて少なくとも1つの家具部分を可動に支持するための家具用金具であって、この家具用金具は、少なくとも1つの第1の構成部分と少なくとも1つの第2の構成部分とを有しており、両構成部分は、ベアリング軸を備えた少なくとも1つの旋回ベアリングを介して互いに接続されており、少なくとも1つの第1の構成部分は、少なくとも1つの第1の壁を有している家具用金具に関する。
【0002】
さらに本発明は、家具キャビネットと、家具キャビネットに対して相対的に可動に支持された少なくとも1つの家具部分、特に水平方向の軸を中心として家具キャビネットに対して相対的に旋回可能な家具フラップとを備えた家具であって、記載する形式の少なくとも1つの家具用金具を備えた家具に関する。
【0003】
最後に本発明は、記載する形式の家具用金具を製造するための方法に関する。
【0004】
家具用金具の2つの構成部分の枢動可能な接続は、変形加工法、いわゆるネック成形またはカラー成形によって実現されることが多い。第1のステップで、家具用金具の第1の構成部分に切欠き、例えば円筒状の孔を設ける。次いで、ネック成形工具を、第1の構成部分の切欠き内に第1の運動方向で導入する。ネック成形工具を切欠きに導入した後、ネック成形工具を回転させ、ネック成形工具の成形ポンチを走出させる。次いで、最終的に、特徴的なネックまたはカラーが生じるまで、回転する成形ポンチによって切欠きの周縁部をゆっくりと、第1の運動方向とは逆の第2の運動方向で引っ張る。このネックまたはカラーは、家具用金具の第2の構成部分を旋回可能に支持することができる拡大された支持面積を備えた回転ベアリングを形成する。しかしながら、ネックまたはカラーの形成により、家具用金具の構成高さが高くなるという欠点も生じる。
【0005】
近年は、家具用金具(特に、家具フラップのための作動駆動装置)を家具キャビネットの家具板内に完全にまたは部分的にでも組み込むように移行されてきている。これにより、家具用金具は、もはや殆ど視界には入らなくなっている。したがって、優先的な目標は、家具用金具の組付け状態で、家具用金具のケーシングの両側面上に家具板のカバー層が留まるように、家具用金具をできるだけコンパクトに(すなわち薄く)形成することである。
【0006】
本発明の課題は、コンパクトに形成可能で、長い耐用期間を有することができる冒頭で述べた形式の家具用金具を提案することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、特許請求項1の特徴により解決される。本発明の別の有利な構成は、従属請求項に規定されている。
【0008】
本発明によれば、少なくとも1つの旋回ベアリングは、少なくとも1つの第2の壁を備えた少なくとも1つの毛管ディスクを有しており、第2の壁は、所定のギャップ幅の、好ましくはリング状のギャップによって、第1の構成部分の第1の壁から離隔されており、このギャップ幅は、半径方向でベアリング軸に向かう方向に少なくとも所定の区分で縮小されおり、これによりギャップ内に充填される潤滑剤は、毛管力によって半径方向でベアリング軸に向かう方向でかつ/またはベアリング軸沿って供給可能であることが想定されている。
【0009】
トライボロジ(すなわち、摩擦、摩耗、潤滑および互いに運動する摩擦要素の最適化を扱う摩擦教示)によれば、ベアリング個所への潤滑剤の供給が、旋回ベアリングの耐用期間に関する重要なファクタの1つである。
【0010】
本発明の根底を成す思想は、家具用金具の旋回ベアリングの狭いギャップ内への潤滑剤の流れを毛管ディスクによって改善し、すなわち、潤滑剤を毛管作用によってギャップ内に引き込み、旋回ベアリングの領域への潤滑剤の分配を改善することができるというものである。このようにして、旋回ベアリングに十分に潤滑剤を供給することができ、家具用金具の耐用期間は向上させられる。さらに、ベアリング個所の領域におけるネックまたはカラーの製造を省くことができる。このことは、家具用金具をコンパクトに(すなわち、厚いレバーパッケージの存在なしに)形成することができるという利点を有している。
【0011】
1つの実施例によれば、少なくとも1つの毛管ディスクの第2の壁は、第1の構成部分の第1の壁に対して、第1のギャップ区分において傾斜してかつ第2のギャップ区分において平行に延在しており、好ましくは、両壁は第1のギャップ区分において、15°~45°の角度を、特に好ましくは30°の角度を互いになしている。
【0012】
したがって、傾斜して延在する第1のギャップ区分は、潤滑剤の貯蔵部を形成し、この貯蔵部から潤滑剤が半径方向でベアリング軸に向かう方向でベアリング軸に沿って分配可能である。
【0013】
少なくとも1つの毛管ディスクは、横断面で少なくとも所定の領域で円錐台形状に形成されていてよい。この場合、円錐台形の両底面のうちの小さい方の底面が第1の構成部分に面していることが想定されていてよい。
【0014】
少なくとも1つの第1の構成部分は、ベアリング軸の方向で互いに離隔された少なくとも2つの部分区分を有していてよく、第2の構成部分は少なくとも所定の領域で、第1の構成部分の両部分区分の間に配置されている。
【0015】
ベアリング軸は、例えばリベットとして形成されていてよく、この場合、少なくとも1つの毛管ディスクは、リベットの、好ましくは拡大している端部領域と、第1の構成部分の第1の壁との間に収容されている。
【0016】
さらなる実施例によれば、少なくとも1つの毛管ディスクは、少なくとも所定の区分で両構成部分の間に配置されていてよい。
【0017】
好ましい実施形態によれば、家具用金具は、ケーシングと、ケーシングに対して相対的に旋回可能な、少なくとも2つの作動アームを備えた少なくとも1つの作動アームアセンブリとを有しており、両作動アームは、少なくとも1つの旋回ベアリングによって互いに接続されている。
【0018】
本発明による家具は、家具キャビネットと、家具キャビネットに対して相対的に可動に支持された少なくとも1つの家具部分、特に水平方向の軸を中心として家具キャビネットに対して相対的に旋回可能な家具フラップとを有しており、この家具は、上述した形式の少なくとも1つの家具用金具を有している。
【0019】
好ましくは、家具キャビネットは、少なくとも1つの家具板を有していて、家具用金具のケーシングは、組み付けられた状態で、家具キャビネットの家具板の内側に実質的に完全に収容されていることが想定されている。
【0020】
家具用金具を製造するための本発明による方法は、以下のステップ、すなわち、
-家具用金具の両構成部分を、少なくとも1つの旋回ベアリングのベアリング軸によって互いに接続し、この場合、少なくとも1つの毛管ディスクを、両壁の間にギャップを形成しながらベアリング軸に配置するステップ、
-ギャップ内に潤滑剤を充填するステップ、および
-潤滑剤を、毛管力によって半径方向でベアリング軸に向かう方向でかつ/またはベアリング軸に沿って供給するステップ
を有していることを特徴としている。
【0021】
1つの実施例によれば、ベアリング軸は、リベットとして形成されていて、この場合、リベットの少なくとも1つの端部領域を、さらなる方法ステップにおいて変形させ、好ましくはこの場合、少なくとも1つの毛管ディスクを第1の壁と、リベットの変形された端部領域との間に収容することが想定されていてよい。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの毛管ディスクは、両構成部分とは別個の構成要素として形成されていることが想定されている。少なくとも1つの毛管ディスクが、両構成部分のうちの一方と一体に形成されていることも考えられる。
【0023】
本発明のその他の詳細および利点は、以下の図面の説明につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】可動の家具部分を有した家具を示す斜視図である。
【
図1b】可動の家具部分を有した家具を示す分解図である。
【
図2】家具板内に配置すべき家具用金具を示す斜視図である。
【
図3a】家具駆動装置の形態の家具用金具を示す斜視図である。
【
図4a】互いに枢動可能に接続された2つの構成部分を有した旋回ベアリングを1つの視点から示す図である。
【
図4b】互いに枢動可能に接続された2つの構成部分を有した旋回ベアリングを別の視点から示す図である。
【
図4c】互いに枢動可能に接続された2つの構成部分を有した旋回ベアリングをさらに別の視点から示す図である。
【
図4d】互いに枢動可能に接続された2つの構成部分を有した旋回ベアリングをさらに別の視点から示す図である。
【
図5b】
図5aに示された領域Cを示す拡大図である。
【0025】
図1aは、家具1の斜視図を示し、この家具は、家具キャビネット2と、家具キャビネット2に対して相対的に可動に支持された家具部分3と、可動の家具部分3を動かすための、例えば家具駆動装置4aの形態の少なくとも1つの家具用金具4とを有している。家具1は、側壁の形態の家具板6と、上面7と、下面8とを有している。可動の家具部分3は、例えば、水平方向の軸を中心として家具キャビネット2に対して相対的に旋回可能な家具フラップ3aとして形成されていてよい。
【0026】
図示した実施例では、家具用金具4のケーシング9は、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に、家具板6として形成された側壁内に収容されている。可動の家具部分3は、家具キャビネット2を隠す閉鎖位置と、家具キャビネット2に対して相対的に持ち上げられた開放位置との間で可動に支持されている。
【0027】
勿論、家具用金具4を、水平に延在する家具板内に、すなわち、例えば上面7内に、下面8内に、かつ/または上面7と下面8との間に配置された棚板内に、組み込むこともできる。このような場合、可動の家具部分3は、組付け位置で垂直に延在する軸を中心として、家具キャビネット2に対して相対的に旋回可能に支持されている。
【0028】
家具用金具4は、図示した実施例では、可動の家具部分3を動かすための作動アームアセンブリ5と、作動アームアセンブリ5に力を負荷するための少なくとも1つのばね装置10(
図1b)とを有している。
【0029】
図1bは、家具1を分解状態で示しており、可動の家具部分3を動かすための家具駆動装置4aの形態の、好適には同一に形成された2つの家具用金具4が設けられている。家具用金具4は、家具キャビネット2に取り付けるべきそれぞれ1つのケーシング9を有している。1つの実施例によれば、家具用金具4のケーシング9は、組付け状態で、少なくとも所定の領域で、好ましくは実質的に完全に、家具板6として形成された側壁の凹部11の内側に収容されている。ケーシング9は、組み付けられた状態で、家具板6の端面6aと実質的に同一平面をなしていてよい。
【0030】
凹部11は、例えば、袋孔として形成されており、組付けの際に、家具用金具4のケーシング9を前方から(すなわち、家具板6の細い端面6aを起点として)、家具板6のポケット状の凹部11内に挿入することができる。家具用金具4のケーシング9は、組み付けられた状態で、家具板6所定の壁厚の内側に実質的に完全に収容されている。
【0031】
ケーシング9内にはまたはケーシング9上には、作動アームアセンブリ5に力を負荷するための少なくとも1つのばね装置10が配置されている。ケーシング9の前方の端部領域にはカバー12が設けられており、作動アームアセンブリ5の、可動に支持された少なくとも1つの構成部分5a,5b,5c(
図3a)は、相対位置で、カバー12を通してガイド可能である。
【0032】
図2は、家具板6内に配置すべき家具用金具4の斜視図を示しており、家具用金具4のケーシング9は、組み付けられた状態で、実質的に完全に家具板6の内側に配置されている。家具板6は、家具用金具4を収容するための、例えば袋孔状の凹部11を含む。
【0033】
家具用金具4のケーシング9は、実質的に直方体状に形成されていてよく、図示した実施例では平坦に形成された互いに平行に離隔された2つのケーシング壁9a,9bを含んでおり、これらのケーシング壁の間には、可動の家具部分3を動かすための作動アームアセンブリ5と、作動アームアセンブリ5に力を負荷するためのばね装置10とが収容可能である。
【0034】
図3aは、家具駆動装置4aの形態の家具用金具4を斜視図で示している。作動アームアセンブリ5に力を負荷するためのばね装置10は、複数のコイルばね、特に圧縮ばねを有していてよい。ばね装置10は、第1の端部領域で支持部分14に支持されていて、この支持部分は、回転軸15を中心として旋回可能に支持されている。ばね装置10の第2の端部領域は、ねじ山付きナット16を押圧しており、ねじ山付きナットは、調節装置17によって、ねじ山付きスピンドル20に沿って可動に支持されている。
【0035】
ねじ山付きスピンドル20は、図示した実施例では、回転軸19を中心として旋回可能な中間レバー18に配置されている。調節装置17の、回転可能に支持された操作エレメント17aの操作により、ねじ山付きナット16はねじ山付きスピンドル20に沿って可動であり、この場合、ねじ山付きナット16と中間レバー18の回転軸19との間の間隔が、ひいては、作動アームアセンブリ5に加えられるばね装置10のトルクが調節可能である。作動アームアセンブリ5は、公知のように、可動の家具部分3に取り付けるべき金具部材22に、取外し可能にロック可能である。
【0036】
家具用金具4は、第1の構成部分5aと、少なくとも1つの第2の構成部分5bとを有しており、これらの構成部分は、ベアリング軸23を備えた少なくとも1つの旋回ベアリング21を介して互いに枢動可能に接続されている。作動アームアセンブリ5は、構成部分5a,5b,5cによって形成される複数の作動アーム31a,31b,31cを含む。
【0037】
図3bは、旋回ベアリング21の概略図を示しており、この旋回ベアリングによって、作動アーム31a,31bの形態の構成部分5a,5bが互いに枢動可能に接続されている。第1の構成部分5aには孔32が設けられていて、この孔内にベアリング軸23が配置されている。さらに、第1の構成部分5aは第1の壁26aを有している。
【0038】
旋回ベアリング21は、ベアリング軸23に配置された、少なくとも1つの第2の壁27aを有した少なくとも1つの毛管ディスク24aを含み、この場合、毛管ディスク24aの第2の壁27aは、ギャップ幅(ΔX)のギャップ28aによって、第1の構成部分5aの第1の壁26aから離隔されている。ギャップ幅(ΔX)は、半径方向でベアリング軸23に向かう方向で縮小しているので、ギャップ28a内に充填される潤滑剤30は、毛管力によって半径方向でベアリング軸23に向かう方向でかつ/またはベアリング軸23に沿って供給可能である。
【0039】
1つの実施例によれば、少なくとも1つの毛管ディスク24aの第2の壁27aは、第1の構成部分5aの第1の壁26aに対して、第1のギャップ区分において傾斜してかつ第2のギャップ区分において平行に延在していることが想定されていてよい。好ましくは、両壁26a,27aは、第1のギャップ区分において、15°~45°の角度を、特に好ましくは30°の角度を互いになしていることが想定されている。
【0040】
少なくとも1つの毛管ディスク24aは、横断面で少なくとも所定の領域で円錐台形状に形成されていてよい。
【0041】
図4a~
図4dは、互いに枢動可能に接続された2つの構成部分5a,5bを有した旋回ベアリング21を、様々な視点で示している。両構成部分5a,5bは、ベアリング軸23を介して互いに接続されており、毛管ディスク24aはベアリング軸23に支持されていて、第1の構成部分5aの第1の壁26aに対向している。
【0042】
図示した実施例では、第1の構成部分5aは、ベアリング軸23の方向で互いに離隔された少なくとも2つの部分区分29a,29bを有している。第2の構成部分5bは少なくとも所定の領域で、第1の構成部分5aの両部分区分29a,29bの間に配置されている。
【0043】
図4bは、
図4aによる構造を前方から見た図で示している。図示した実施例では、2つの毛管ディスク24a,24bがベアリング軸23に配置されている。両部分区分29a,29bには、それぞれ第1の壁26a,26bが形成されており、毛管ディスク24a,24bの第2の壁27a,27bは、ギャップ28a,28bによって第1の壁26a,26bから離隔されている。ギャップ幅(ΔX)は、半径方向でベアリング軸23に向かう方向に少なくとも所定の区分で縮小しているので、ギャップ28a,28b内に充填される潤滑剤30は、毛管力によって半径方向でベアリング軸23に向かう方向でかつ/またはベアリング軸23に沿って供給可能である。
【0044】
ベアリング軸23は、リベットとして形成されていてよく、この場合、少なくとも1つの毛管ディスク24a,24bは、リベットの、好ましくは拡大している端部領域25a,25bと、第1の構成部分5aの第1の壁26aとの間に収容されている。
【0045】
第1の構成部分5aの第1の壁26a,26bは、好ましくはベアリング軸23の方向で材料厚さによって別の壁33a,33bから離隔されており、この別の壁33a,33bは第2の構成部分5bに面している。
【0046】
図4cは、
図4bに示された平面A-Aに沿った断面図を示している。ベアリング軸23の両端部領域25a,25bは、両毛管ディスク24a,24bが紛失不能にベアリング軸23に配置されているように、変形されている(例えば、揺動加締めされている)。
【0047】
図4dは、
図4cの円で取り囲んだ領域「B」を拡大して示している。第1の構成部分5aの第1の壁26bに対して、第1のギャップ区分において傾斜してかつ第2のギャップ区分において平行に延在しているギャップ28bを見ることができる。第1のギャップ区分では、壁26b,27bは、15°~45°の角度を、特に好ましくは30°の角度を互いになしていてよい。
【0048】
図5aは、家具駆動装置4aの形態の家具用金具4を斜視図で示している。家具用金具4のケーシング9内には、作動アームアセンブリ5に力を負荷するためのばね装置10が配置されている。作動アームアセンブリ5は、作動アームアセンブリ5の作動アーム31a,31b,31cを形成する、互いに枢動可能に接続された少なくとも2つの構成部分5a,5b,5cを含む。
【0049】
図5bは、
図5aにおいて円で囲んだ領域「C」を拡大図で示しており、この図には旋回ベアリング21がより詳しく示されている。第1の構成部分5aは、ベアリング軸23に沿って平行に互いに離隔された少なくとも2つの部分区分29a,29bを有していてよく、これらの部分区分の間に、構成部分5bが所定の領域で収容されている。
【0050】
第2の構成部分5bも同様に、2つの部分区分34a,34bを含んでいてよく、これらの部分区分は、図示した実施例では、互いに面状に接触している。2つの毛管ディスク24a,24bを見ることができ、この場合、第1の毛管ディスク24aは、第2の構成部分5bの第1の部分区分34aと、第1の構成部分5aの第1の部分区分29aとの間に配置されている。第2の毛管ディスク24bは、第2の構成部分5bの第2の部分区分34bと、第1の構成部分5aの第2の部分区分29bとの間に配置されている。
【0051】
2つの構成部分5a,5bを枢動可能に接続するための旋回ベアリング21を、家具駆動装置4aの形態の図示した家具用金具4につき説明した。しかしながら、図示されかつ説明された手段が、別の家具用金具4、例えば家具ヒンジまたは引出し用引出しガイドとの組み合わせにおいても使用することができることは明白である。