(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ハロゲン系熱電気化学変換器
(51)【国際特許分類】
H02N 3/00 20060101AFI20240130BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240130BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240130BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240130BHJP
【FI】
H02N3/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/10 101
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2022571254
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 US2021033537
(87)【国際公開番号】W WO2021237013
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-12
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522453418
【氏名又は名称】ジェイテック エナジー,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ケテマ ジョンソン
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514175(JP,A)
【文献】特開2011-226483(JP,A)
【文献】特開平07-243718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00 - 1/12
H02N 3/00 -99/00
H01M 8/00
H01M 8/10
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学直接熱電変換器であって、
ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される作動流体と、
熱源及び放熱器であって、該熱源は該放熱器の温度以上の高温にある、熱源及び放熱器と、
前記作動流体が流通するように構成された第1の膜電極アセンブリを備える第1の電気化学電池であって、前記第1の膜電極アセンブリは第1の多孔質電極、第2の多孔質電極、及び該第1の多孔質電極と該第2の多孔質電極の間に挟まれた少なくとも1層のイオン伝導性膜を含む、前記熱源に結合された第1の電気化学電池と、
前記作動流体が流通するように構成された第2の膜電極アセンブリを備える第2の電気化学電池であって、前記第2の膜電極アセンブリは第1の多孔質電極、第2の多孔質電極、及び該第1の多孔質電極と該第2の多孔質電極の間に挟まれた少なくとも1層のイオン伝導性膜を含む、前記放熱器に結合された第2の電気化学電池と、
前記第1の電気化学電池に結合された蒸発器と、
前記第2の電気化学電池に結合された凝縮器と、
前記第1及び第2の電気化学電池に直列接続された外部負荷と、
を備え、
前記作動流体が、前記第1の膜電極アセンブリに液体として導入され、該第1の膜電極アセンブリが電圧を生成するように該第1の膜電極アセンブリを通じて膨張し、蒸発されて気相となり、
前記作動流体が、前記第2の膜電極アセンブリに気相で導入され、冷却及び凝縮されて液相に戻る、電気化学直接熱電変換器。
【請求項2】
前記作動流体は、臭素及びヨウ素の一方である、請求項1に記載の電気化学直接熱電変換器。
【請求項3】
前記作動流体は、臭素である、請求項2に記載の電気化学直接熱電変換器。
【請求項4】
ランキンサイクルにおいて作動するように構成された、請求項1に記載の電気化学直接熱電変換器。
【請求項5】
前記第1及び第2の膜電極アセンブリの各々は、ガラスを含むハウジング内に位置する、請求項1に記載の電気化学直接熱電変換器。
【請求項6】
電気化学直接熱電変換器を用いて電気エネルギーを生成する方法であって、
前記変換器が、
ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される作動流体と、
熱源及び放熱器であって、該熱源は該放熱器の温度以上の高温にある、熱源及び放熱器と、
前記作動流体が流通するように構成された第1の膜電極アセンブリを備える第1の電気化学電池であって、前記第1の膜電極アセンブリは第1の多孔質電極、第2の多孔質電極、及び該第1の多孔質電極と該第2の多孔質電極の間に挟まれた少なくとも1層のイオン伝導性膜を含む、前記熱源に結合された第1の電気化学電池と、
前記作動流体が流通するように構成された第2の膜電極アセンブリを備える第2の電気化学電池であって、前記第2の膜電極アセンブリは第1の多孔質電極、第2の多孔質電極、及び該第1の多孔質電極と該第2の多孔質電極の間に挟まれた少なくとも1層のイオン伝導性膜を含む、前記放熱器に結合された第2の電気化学電池と、
前記第1の電気化学電池に結合された蒸発器と、
前記第2の電気化学電池に結合された凝縮器と、
前記第1及び第2の電気化学電池に直列接続された外部負荷と、
を備え、
前記方法は、
前記変換器の一方の側は液体である前記作動流体で完全に満たされるとともに、前記変換器の他方の側は液体である前記作動流体で部分的に満たされ、
前記作動流体を前記第1の膜電極アセンブリに液体として導入し、該第1の膜電極アセンブリが電圧を生成するように前記流体が前記第1の膜電極アセンブリを通じて膨張し、前記蒸発器によって蒸発されて気相となり、
前記作動流体を前記第2の膜電極アセンブリに蒸気として導入し、冷却及び凝縮して液相に戻すこと
によって前記変換器をランキンサイクルで作動させるステップを備える、方法。
【請求項7】
前記作動流体は、臭素及びヨウ素の一方である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記作動流体は、臭素である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月21日出願の米国仮特許出願第63/028125号の優先権を主張し、その内容全体が参照によりここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギー若しくは化学エネルギーから電気エネルギーへの変換又はその逆は、様々な態様で実現され得る。例えば、公知の電気化学電池又はバッテリは化学反応によるものであり、酸化されている反応物のイオン及び電子は、別個の経路を介して還元されている反応物に移送される。具体的には、電子はそれが仕事をする外部負荷を通じて配線を介して電気的に移送され、イオンは電解質セパレータを通じて導通される。
【0003】
一方、バッテリ型電気化学電池は、限られた量のエネルギーしか生成することができない。それは、そこに含まれ得る利用可能な反応物の量をバッテリ筐体の境界が制限してしまうためである。そのような電池は、逆極性の電流/電圧を電極間に印加することによって再充電されるように設計可能であるが、そのような再充電は別個の電源を必要とする。また、電池は、再充電過程では、通常は使用可能ではない。
【0004】
そのようなバッテリ型電気化学電池に関連する問題を克服すべく、燃料電池が開発された。従来の燃料電池では、化学反応物が電気化学電池に連続的に供給され、反応生成物が連続的に取り除かれる。バッテリと同様に、燃料電池は、電子及び非イオン化種の通過を一般に遮断する選択的電解質を通じてイオン化種を導通することによって作動するので、電子は電気的負荷を外部で通過して反応を完結しなければならない。
【0005】
最も一般的な種類の燃料電池は、一方の電極を通じて水素を通過させるとともに他方の電極を通じて酸素を通過させるプロトン交換膜(PEM)水素-酸素燃料電池である。水素イオンは、水素-酸素化学反応の電位の下で、プロトン伝導性電解質セパレータ又はPEMを通じて電池の酸素側に導通される。電解質セパレータ又はPEMの両側の多孔質電極は、化学反応に伴う電子を、外部回路を介して外部負荷を通じて結合するのに用いられる。電子及び水素イオンは、システムから排出される水の生成のために、電池の酸素側における酸素との反応において水素を再構成する。連続的な電流が、電池への水素及び酸素の連続的な供給によって維持される。
【0006】
機械的熱機関も、電力を生成するのに設計及び使用されてきた。機械的熱機関は熱力学サイクルで作動し、ピストン又はタービンを用いて作動流体を圧縮して軸仕事が行われる。圧縮行程は低温で行われ、圧縮後に、作動流体はより高い温度に昇温される。高温では、作動流体は、ピストン又はタービンなどの負荷に対して膨張可能とされ、それにより軸仕事を生成する。作動流体を採用する全てのエンジンの動作に重要なことは、高温で作動流体を膨張することによって生成されるものよりも少ない仕事量によって低温で作動流体を圧縮することである。これは、作動流体を採用する全ての熱力学機関に当てはまる。
【0007】
例えば、蒸気機関はランキン熱力学サイクルで作動し、水が高圧となるようにポンプされ、その後に蒸気へと加熱され、ピストン又はタービンを通じて膨張されて仕事を行う。内燃機関はオットーサイクルで作動し、低温周囲空気がピストンによって圧縮され、その後にシリンダ内の燃料燃焼を介して非常に高い温度に加熱される。サイクルが継続するにつれて、ピストンに対する加熱空気の膨張が、サイクルの低温圧縮期間中に消費されるものよりも多くの仕事を生成する。
【0008】
スターリングエンジンは、高効率でかつ熱源の選択においてより高い汎用性を与えるエンジンを提供すべく、スターリングサイクルで作動するように開発された。理想的なスターリング熱力学サイクルは、理想的なカルノーサイクルと同等の効率のものであり、それは高温時の入熱及び低温時の熱遮断で作動するエンジンの理論的な最大効率を規定する。しかしながら、全ての機械的機関のように、スターリングエンジンでは、信頼性の問題及びその機械的可動部品に関連する効率損失が問題となる。
【0009】
機械的熱機関に特有の問題を回避するために、アルカリ金属熱電気化学変換(AMTEC)電池が、熱電気化学熱機関として設計された。AMTEC熱機関は、ナトリウムなどのイオン性作動流体を高温で電気化学電池を通じて強制的に流すことによって、圧力を利用して電位及び電流を生成する。電極は、電流を外部負荷に結合する。電解質セパレータにわたる圧力差が電解質を通じて溶融ナトリウム原子を強制的に流すにつれて、電気的仕事が行われる。ナトリウムが電解質に入るとイオン化され、それにより電子を外部回路に放出する。電解質の他方側では、バッテリ及び燃料電池型電気化学電池において起こる過程とほぼ同様に、ナトリウムイオンが電解質を離れると電子と再結合してナトリウムを再構成する。低圧かつ高温の再構成されたナトリウムは、膨張ガスとして電気化学電池を離れる。そして、そのガスは、冷却及び凝縮されて液体状態に戻る。そして、結果として得られる低温の液体は、再加圧される。AMTEC機関の動作は、ランキン熱力学サイクルに近似する。
【0010】
AMTEC技術については、多数の刊行物が入手可能である。例えば、非特許文献1が参照される。他の代表的な刊行物は、非特許文献2である。また、非特許文献3も参照される。
【0011】
低圧において電極を離れた高温膨張ガスの冷却及び再凝縮中に遮断された熱は、大きなエントロピー損失源となり、したがってAMTEC熱機関は非効率性となる。AMTEC機関でも、アルカリ金属作動流体の高い腐食性に起因して信頼性の問題が課題となる。また、それらには非常に限定的な利用性しかない。具体的には、AMTEC機関は、非常に高い温度でしか作動可能でない。これは、イオン伝導性固体電解質が高温でしか実用的な伝導性レベルを達成しないためである。実際に、低温加圧過程であっても、比較的高い温度で起こらなければならない。これは、アルカリ金属作動流体は、それがサイクルを通じて移動するに際に常時その融点以上でなければならないためである。機械ポンプ、ウィック及びさらには磁気流体ポンプが、低温作動流体を加圧するのに使用されてきた。
【0012】
従来の機械的熱機関及び熱電気化学熱機関の上記欠点を克服するため、2003年4月28日出願の特許文献1、2015年8月10日出願の特許文献2(国際出願番号PCT/US2015/044435)及び2016年3月9日出願の特許文献3(国際出願番号PCT/US2016/21508)に開示されるように、Johnson Thermo-Electrochemical Converter(JTEC)システムが開発された。これらの3文献の全ての内容全体は、参照によりここに取り込まれている。
【0013】
JTECの、より最近の開発は、変換器内で一定の処方圧力比を維持するように作動する膜電極アセンブリ及び制御回路を有する電気化学直接JTECに関する。より具体的には、余剰の水素が変換器の高圧側にポンプ供給され、追加のポンプ供給水素が、膜電極アセンブリ積層体の膜を通じた分子水素拡散に起因する正常圧力損失を補償する。セパレータ膜を通じた分子水素の拡散は、経時的な電力密度の大幅な低下となる。これは、拡散が膜電極アセンブリの電極間の圧力差を低減し、それにより出力電圧を低下させるためである。分子水素の拡散はまた、効率の低下をもたらす。これは、この高圧から低圧への拡散が、拡散水素分子が電気化学反応を受けて電力を生成することなく、起こるためである。したがって、膜電極アセンブリ及び制御回路は、変換器内で一定の処方圧力を維持するように作動する。
【0014】
JTECの共通課題は、大きな膜電極アセンブリ表面積の必要性である。これは、有用なレベルの電力を実現しようとすると、各膜電極アセンブリあたりで利用可能な低い電圧レベルを補完するのに高いレベルの電流が必要となるためである。結果として、従来のJTECシステムは、製造困難となり得る。したがって、より高い膜電極アセンブリペアあたりの電圧(電位)を与えるJTECの必要性が残されている。
【0015】
化石燃料は、エネルギー需要が増加し続けている中で、未だにエネルギー資源において支配的な役割を担っている。特に、エネルギー損失を最小化する低品位廃熱の使用に関して、そのような研究に対する強い要望があり、それは燃料消費を低減し、究極的にはより高い変換効率を達成することになる。そのために、周知のシステムの最適化は、発電のための方向性を与え得る。有機ランキンサイクル、カリーナサイクル及び超臨界サイクルなどの今日で利用可能な技術の中でも、有機ランキンサイクルは、同じ熱に対して15~50%多くの電力出力を生成可能な唯一のものであり、低メンテナンスで発電する低温熱回収に主に適していることがよく分かっている。非特許文献4が参照される。
【0016】
実際に、ランキンサイクルは、詳細な作動流体特性に性能が日常的に関係する太陽光エネルギー、バイオマスエネルギー及び地熱などの種々の低品位熱エネルギーを再利用することが広く知られている。一方で、一部の研究者は、作動流体はサイクルの効率にはほとんど関係ないという前提に立っており、これはハイブリッドシステムへの方向性につながる。非特許文献5が参照される。一方、燃料電池及びランキンサイクルを伴うハイブリッドシステムは、未だ基本的技術に具体化されていない。実際に、リン酸系燃料電池には低い電力密度及び高い製造コストの問題があるものの、リン酸系燃料電池はナフィオン系燃料電池と比較して、その高い耐久性、構造及び広い温度作動範囲に起因して、最も商業化されたものと広く考えられている。非特許文献6及び非特許文献7が参照される。ランキンサイクルと組み合わされる場合に、これらの性能は、実用的な動作及び設計に対する限界を示唆する熱力学第1法則を用いてのみ評価されてきた。非特許文献8が参照される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第7160639号明細書
【文献】国際公開第2016/025372号
【文献】国際公開第2016/145043号
【非特許文献】
【0018】
【文献】Conceptual design of AMTEC demonstrative system for 100t/d garbage disposal power generating facility、Qiuya Ni他(Chinese Academy of Sciences、Inst.of Electrical Engineering、北京、中国)
【文献】Intersociety Energy Conversion Engineering Conference and Exhibit(IECEC)、35th、Las Vegas、NV(July 24-28、2000)、Collection of Technical Papers.Vol.2(A00-37701 10-44)
【文献】American Institute of Aeronautics and Astronautics、190、p.1295-1299.REPORT NUMBER(S)- AIAA Paper 2000-3032
【文献】D.Huijuan Chen、Yogi Goswami、Elias K.Stefanakos「A review of thermodynamic cycles and working fluids for the conversion of low-grade heat」、Renew Sustain Energy Rev.、vol.14、pp.3059-3067(2010)
【文献】A.Perna、M.Minutillo、E.Jannelli「Investigations on an advanced power system based on a high temperature polymer electrolyte membrane fuel cell and an organic Rankine cycle for heating and power production」、Energy、vol.88、pp.874-884(2015)
【文献】H.Ito「Economic and environmental assessment of phosphoric acid fuel cell-based combined heat and power system for an apartment complex」、Int’l.J Hydrogen Energy、vol.42、pp.15449-15463(2017)
【文献】S.Wang、S.P.Jiang「Prospects of fuel cell technologies」、National Science Review、vol.4、pp.163-166(2017)
【文献】「Doosan fuel cell to verify using ORC with PAFC」、Fuel Cell Bulletin、p.1(2019)
【発明の概要】
【0019】
本発明の変換器は、上記問題を回避する。
本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むことによってより良く理解されることになる。本発明を説明する目的のため、現在好適な実施形態を図面に示す。ただし、本発明は、図示する厳密な配置構成及び手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱電気化学変換器の図である。
【
図2】
図1に示す熱電気化学変換器の作動構成の模式図である。
【
図3】
図1に示す熱電気化学変換器の膜電極アセンブリ及びハウジングの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の用語が、説明の便宜のみのために以下の説明において使用され、限定的なものではない。文言「近位」、「遠位」、「上方」、「下方」、「底部」及び「上部」は、参照がなされる図面内の方向を指定するものである。文言「内向きに」及び「外向きに」は、本発明によるデバイス及びその指定部分の幾何中心に向かう方向及びそこから離れる方向をそれぞれいう。特にここに断りがない限り、用語「a」、「an」及び「the」は1つの要素に限定されずに「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。用語は、上記の文言、その派生語及び類義語を含む。
【0022】
「第1の」、「第2の」などの用語は明確性の目的のみのために与えられることも理解されるはずである。これらの用語によって特定される要素又は構成要素及びそれらの動作は、容易に入替可能である。また、MEA電池アレイ及びMEA電池スタックも、互換可能に使用され得る。
【0023】
図1を参照すると、本発明の実施形態による電気化学直接熱電変換器10が示されている。電気化学直接熱電変換器10は、第1の温度で作動する第1の電気化学電池100、第1の温度よりも高い第2の温度で作動する第2の電気化学電池110、第1の電気化学電池100を第2の電気化学電池110に結合するコンジットシステム112、及びコンジットシステム112内に含まれてそこを通じて移動する作動流体の供給源を備える。各電気化学電池100、110は、1以上の膜電極アセンブリを含む。一実施形態では、変換器10は、低温電気化学電池100及び高温電気化学電池110を相互に結合する熱交換器(不図示)をさらに含む。
【0024】
一実施形態では、作動流体は、ハロゲン及び硫黄からなる群から選択される。例えば、一実施形態では、作動流体は、好ましくは臭素又はヨウ素などのハロゲンである。他の実施形態では、作動流体は、好ましくは硫黄である。
【0025】
より具体的には、
図1を参照すると、第1の電気化学電池100は、低温放熱器Q
L(すなわち、冷熱源)に結合された第1の膜電極アセンブリ(MEA)116を含む。このように、第1のMEA116は低温MEAであり、第1の電気化学電池100は変換器10の低温側となる。第2の電気化学電池110は、高温熱源Q
Hに結合された第2のMEA118を含む。このように、第2のMEA118は高温MEAであり、第2の電気化学電池110は変換器10の高温側となる。作動中、冷却がMEA116に与えられ、加熱が第2のMEA118に与えられる。
【0026】
変換器の低温側100及び高温側110の双方に、MEA116、118の配列又は積層体が存在し得る。MEA116、118は、例えば、より高い総出力電圧を実現するために直列接続されてもよいし、より高い総出力電流を実現するために並列接続されてもよい。一実施形態では、第1及び第2のMEA116、118は、
図2に示すように、外部負荷115に電気的に直列に配置される。また、第1及び第2のMEA116、118は、好ましくは閉ループ内で直列に設置される。
【0027】
各MEA116、118は、作動流体のイオンを伝導可能な非多孔質膜120及び非多孔質膜120の反対側に位置する電子を伝導可能な多孔質電極122を含む。
【0028】
膜120は、好ましくは、イオン伝導性膜又はプロトン伝導性膜である。膜120は、好ましくは、約0.1μm~500μmのオーダー、より好ましくは約1μm~500μmの厚さを有する。より具体的には、膜120は、好ましくはプロトン伝導性材料、より好ましくはポリマープロトン伝導性材料又はセラミックプロトン伝導性材料からなる。MEA116、118の膜120は、必ずしも同じ材料からなるわけではない。所与のMEA116、118について選択される材料は、その意図される作動温度に応じることになる。一実施形態では、膜120は、好ましくは、参照によりここに取り込まれる米国特許第4927793号、Hori他に開示されるような一般式NaxAlyTi3+
x-yTi4+
8-xO16によって表される化合物を含む材料で形成される。これは、この材料が広い温度範囲にわたって高いプロトン伝導性を示すためである。一方、所望の温度範囲にわたって適切なプロトン伝導性を示す任意の材料、好ましくは任意のポリマー又はセラミック材料が膜120を形成するのに使用され得ることは、当業者には理解されるはずである。例えば、代替の実施形態では、膜120は、ヒドロニウムベータ″アルミナで形成される。
【0029】
各MEA116、118の電極122は、好ましくは、約0.1μm~1cmのオーダー、より好ましくは約10μmの厚さを有する薄電極である。各MEA116、118の種々の構成要素(すなわち、電極122及び膜120)に対する異なる材料の使用は、材料間の熱膨張係数の差に起因して非常に高い熱応力をもたらし得る。したがって、MEA116、118の電極122は、好ましくは膜120と同じ材料で構成又は形成される。ただし、電極122は好ましくは多孔質構造体である一方で、膜120は好ましくは非多孔質構造体である。また、電極122及び膜120は、同等の熱膨張係数を有する異なる材料で形成されてもよいことが理解されるはずである。
【0030】
一実施形態では、多孔質電極122は、作動流体の酸化及び還元反応を促進するために、電子伝導性及び触媒性のある材料を与えるように追加の材料でドーピング又は注入されてもよい。
【0031】
一実施形態では、各MEAは、以下のように形成される。作動流体、好ましくは臭素のイオンを伝導可能な固体電解質材料が、ディスク内に形成される。イオン性伝導性ディスクは、気体及び液体に対して透過性ではない。固体電解質ディスクの各面は、固体電解質ディスクの表面における電気化学反応を促進するように設計された電極材料及び集電装置でコーティングされ、それによりMEA116、118を作成する。
【0032】
図3を参照すると、各MEA116、118は、好ましくは、
図3に示すように、ハウジング140内に位置する。各ハウジング140は、好ましくは、内部ガラス内層が設けられたガラス又は金属(例えば、ステンレス鋼)などの他の材料で構成される。ただし、ハロゲン又は硫黄と接触すると安定することが知られ又は発見されている他の材料がハウジング140を形成するのに利用され得ることが、当業者には理解されるはずである。
【0033】
変換器10は、好ましくは、蒸発器142及び凝縮器144をさらに備える。より具体的には、変換器10の、高温MEA118に対応する高温側は蒸発器142を含み又はそれに結合される一方で、低温MEA116に対応する低温側は凝縮器144を含み又はそれに結合される。
【0034】
本発明の変換器10は、作動流体が蒸発及び凝縮される気相サイクルで作動する。より具体的には、変換器10は、ランキンサイクルで作動する。当技術分野では、限られた数の流体のみが、ランキンサイクルにおけるそれらの実行可能な利用に必要な化学特性、環境特性、熱力学特性及び安全特性の組合せを有することは、充分に許容されている。例えば、McLinden他、Nat.Commun.、8(2017)、Article 14476が参照される。これは、一部の作動流体は冷却サイクルにおいて優れた熱力学性能を与える一方で、それらの環境特性又は安全特性がそれらの使用を妨げ、発電サイクルに対してより低い性能の他の流体を利用せざるを得ないためである。特に、臭素には高いオゾン層破壊の可能性があるため、臭素はランキンサイクルにおける利用について一般に検討されてこなかった。一方、本発明の変換器においては、変換器が閉システムとして作動するので、臭素の高いオゾン層破壊の可能性に関係するリスクは無視できることがここで発見された。
【0035】
作動中、変換器10の一方の側は液体である作動流体で完全に満たされる一方で、変換器10の他方の側は液体である作動流体で部分的にしか満たされない。高温MEA118において、液相作動流体は、当初は高温高圧状態である。電力は、作動流体が高温MEA118にわたって膨張して高温高圧状態から高温低圧状態となるにつれて生成される。熱QHは、薄膜120に供給されて略一定の温度膨張過程を実現する。変換器10の高温側において、液相作動流体はまた、蒸発器142によって蒸発されて気相となる。そして、作動流体は、低温MEA116へポンプ供給され、又は蒸気として移送される。低温MEA116において、電気エネルギーが供給されて気相作動流体をポンプ供給して低温低圧状態から低温高圧状態とする。作動流体の温度は、圧縮過程中にプロトン伝導性膜120から熱QLを除去することによって降温される。変換器10の低温側において、気相作動流体は凝縮器144によって凝縮されて液体に、より具体的には高圧の液体に戻される。高圧の液相作動流体は、サイクルが継続するにつれてポンプ供給されて高温MEA118に戻される。したがって、本発明の変換器10は、閉ループ機関であり、ランキンサイクルを用いて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0036】
液体をポンプ供給することは気体を圧縮することと比較して非常に小さな仕事しか必要としないため、ランキンサイクルについての逆仕事比は、より高い総デバイス電圧を可能とするので好適なものと考えられる。また、作動流体の比較的低い沸点のために、デバイス電圧は、廃熱温度(すなわち、100℃~200℃)においても、より高いものとなり得る。
【0037】
本発明の広範なコンセプトから逸脱することなく変更が上記実施形態になされ得ることが当業者には分かるはずである。したがって、本発明は、記載した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲内の変形例を包含するものであることが理解される。