(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】現像ローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240130BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/00 551
(21)【出願番号】P 2023162233
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2023-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】野崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】石田 瞭
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109745(JP,A)
【文献】特開2009-086217(JP,A)
【文献】特開2008-180890(JP,A)
【文献】特開2008-241996(JP,A)
【文献】特開2012-181226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された中間層と、最外に位置する表層と、を備える現像ローラであって、
前記中間層は、樹脂に、粒子で構成された凝集体Aが分散されてなり、
前記凝集体Aの平均径d
A
が、前記中間層の厚みよりも大きく、
前記凝集体Aを構成する粒子の平均一次粒子径が、1μm以下であり、
前記表層は、樹脂に、粒子及び粒子で構成された凝集体から選択される1つ以上である粒状体Bが分散されてなり、前記粒状体Bの平均径d
Bが1μm以上10μm以下である、
ことを特徴とする、現像ローラ。
【請求項2】
前記中間層における凝集体Aの平均径d
Aが、10μm以上35μm以下である、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記中間層における前記粒子の含有量が、前記樹脂100質量部に対して10質量部以上30質量部以下である、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記表層における前記粒子の含有量が、前記樹脂100質量部に対して15質量部以上35質量部以下である、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記粒状体Bの平均径d
Bが、前記表層の厚みよりも大きい、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記シャフト部材と前記中間層との間に、弾性層を更に備える、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記中間層と前記表層との間に、外側中間層を更に備える、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、潜像を保持した感光ドラムにトナーを供給し、感光ドラムの潜像にトナーを付着させて潜像を可視化する現像法が多く採用されている。具体的に、かかる現像法においては、例えば、感光ドラムを一定電位に帯電した後、露光機により感光ドラム上に静電潜像を形成し、更に、トナーを担持した現像ローラを、静電潜像を保持した感光ドラムに接触させて、トナーを感光ドラムの潜像に付着させることで現像を行う。
【0003】
上述した現像ローラは、一般的には、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材の外周に、ポリウレタン等のエラストマーに導電剤を分散させた半導電性の弾性体、又はこれらの材料を発泡させた発泡体からなる弾性層を形成した構造となっている。また、上述した現像ローラにおいては、トナーに対する帯電性及び付着性の制御、並びに、感光ドラムの汚染の防止等を目的として、弾性層の外側に、樹脂等からなる表層を形成する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
更に、現像ローラの半径方向外側に配置される層(上述した表層を含む。)には、微粒子を配合することによって凹凸を形成することがある。例えば特許文献2には、金属製パイプよりなるシャフト部材の半径方向外側に一層以上の樹脂層を設けるとともに、上記樹脂層の少なくとも一層に微粒子を分散させて表面粗さを形成することにより、トナー供給能力が高められることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-352072号公報
【文献】特開2011-065188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、現像ローラの表面粗さ(凹凸)について検討するに、表面の凸部高さがある程度高ければ、現像ローラに当接する部材(現像ブレード等)の損傷を抑制したり、画像形成装置の端部シール部材からのトナー漏れを抑制したりすることが可能となる。また、かかる表面の凸部高さは、比較的粒径が大きい微粒子を配合して層形成することで、高くすることができる。
【0007】
しかし、大粒径の微粒子を用いる場合、当該微粒子を層中に均一に分散させることが困難となり、現像の際にトナーの搬送ムラ、ひいては画像のかぶりが発生する虞がある。
【0008】
これに対し、比較的粒径が小さい微粒子を用いれば、均一に分散させることはできる。しかしこの場合、高さ(凸部高さ)が不十分となって、現像ローラ表面と現像ブレード等の当接部材との間に適度な空間が設けられず、トナー漏れ等の不具合が発生し得る。即ち、トナー漏れとかぶりとは、実質的に二律背反の関係にある。
【0009】
更に、用いる微粒子が硬いと、画像形成装置の継続的な又は長期に亘る稼働に伴って当該微粒子がそのままの形状で脱落し易く、この場合、大幅な粗さ変化により画像濃度が変動してしまう懸念がある。
【0010】
そこで、本発明は、トナー漏れ及びかぶりを抑制でき、画像濃度の安定性にも優れる現像ローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、上記課題を解決する本発明の現像ローラの要旨構成は、以下の通りである。
【0012】
[1] シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された中間層と、最外に位置する表層と、を備える現像ローラであって、
前記中間層は、樹脂に、粒子で構成された凝集体Aが分散されてなり、
前記表層は、樹脂に、粒子及び粒子で構成された凝集体から選択される1つ以上である粒状体Bが分散されてなり、前記粒状体Bの平均径dBが1μm以上10μm以下である、
ことを特徴とする、現像ローラ。
【0013】
[2] 前記中間層における凝集体Aの平均径dAが、10μm以上35μm以下である、[1]に記載の現像ローラ。
【0014】
[3] 前記中間層における前記粒子の含有量が、前記樹脂100質量部に対して10質量部以上30質量部以下である、[1]又は[2]に記載の現像ローラ。
【0015】
[4] 前記表層における前記粒子の含有量が、前記樹脂100質量部に対して15質量部以上35質量部以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の現像ローラ。
【0016】
[5] 前記凝集体Aの平均径dAが、前記中間層の厚みよりも大きい、[1]~[4]のいずれかに記載の現像ローラ。
【0017】
[6] 前記粒状体Bの平均径dBが、前記表層の厚みよりも大きい、[1]~[5]のいずれかに記載の現像ローラ。
【0018】
[7] 前記シャフト部材と前記中間層との間に、弾性層を更に備える、[1]~[6]のいずれかに記載の現像ローラ。
【0019】
[8] 前記中間層と前記表層との間に、外側中間層を更に備える、[1]~[7]のいずれかに記載の現像ローラ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トナー漏れ及びかぶりを抑制でき、画像濃度の安定性にも優れる現像ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る現像ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(現像ローラ)
以下に、本発明の現像ローラを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る現像ローラ(以下、「本実施形態の現像ローラ」と称することがある。)の断面図である。
図1に示す現像ローラ1は、シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設された弾性層3と、該弾性層3の半径方向外側に配設された中間層4と、該中間層4の半径方向外側に配設された表層5と、を備える。なお、弾性層3は、本発明の現像ローラに必須の構成ではない。また、
図1に示す現像ローラ1は、弾性層3を一層のみ備えるが、本発明の現像ローラは、弾性層を二層以上備えていてもよい。
【0024】
そして、本実施形態の現像ローラ1において、中間層4は、樹脂に、粒子で構成された凝集体Aが分散されてなり、表層5は、樹脂に、粒子及び粒子で構成された凝集体から選択される1つ以上である粒状体Bが分散されてなり、前記粒状体Bの平均径d
Bが1μm以上10μm以下である、ことを特徴とする。なお、
図1では、粒子及び凝集体の図示を省略している。
【0025】
本実施形態の現像ローラ1の中間層4は、上述の通り、凝集体Aが分散されている。ここで、凝集体は通常、ある程度の大きさを有する。そのため、中間層4における凝集体Aが、現像ローラ1の外周面に適度な凹凸(適度に高い凸部)をもたらし、これにより、トナー漏れを抑制することに加え、現像ローラに当接する部材(現像ブレード等)の損傷を抑制することができる。
また、中間層4に分散させる媒体が凝集体であることで、現像ローラ1を備える画像形成装置を継続的に又は長期に亘って稼働した場合でも、一体的な脱落ではなく、凝集体Aの部分的な削剥だけで済むことができる。そのため、表面粗さの大幅な変化が抑えられ、画像濃度の安定性を保つことができる。
更に、本実施形態の現像ローラ1の表層5は、比較的粒径が小さい粒状体、具体的には、上述の通り平均径dBが10μm以下である粒状体Bが分散されている。このように、比較的粒径が小さい粒状体であれば、分散の一層の均一化を図ることができるので、上記粒状体Bを含む層を表層として設けることで、現像の際の画像のかぶりを抑制することができる。
従って、本実施形態の現像ローラ1は、トナー漏れ及びかぶりを抑制でき、画像濃度の安定性にも優れる。
【0026】
<シャフト部材>
本実施形態の現像ローラ1は、上述の通り、シャフト部材2を備える。該シャフト部材2としては、良好な導電性を有するものが好ましい。具体的に、シャフト部材2の材質としては、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム及びこれらを含む合金等の金属、並びに良導電性のプラスチック、等が挙げられる。また、シャフト部材2は、中実材であってもよく、中空材(パイプ)であってもよい。また、シャフト部材2は、画像形成装置のローラ支持部に軸支されるよう、シャフト部材2の長さ方向両端部を構成する軸部を備えてもよい。
【0027】
<中間層>
本実施形態の現像ローラ1は、上述の通り、シャフト部材2の半径方向外側に配設された中間層4を備える。また、該中間層4は、樹脂に、粒子で構成された凝集体Aが分散されてなる。
【0028】
中間層4を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。上記樹脂として、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、中間層4を構成する樹脂としては、紫外線硬化性樹脂が好ましく、ウレタン樹脂(紫外線硬化性ウレタン樹脂)がより好ましい。なお、ウレタン樹脂は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応させてなり、熱により硬化する性質を有する。
【0029】
中間層4は、粒子で構成された凝集体Aが分散されていることを要する。分散媒体が非凝集体であると、現像ローラ1を備える画像形成装置を継続的に又は長期に亘って稼働した場合に、当該非凝集体が一体的に脱落してしまい、画像濃度の安定性が不良となる。
【0030】
中間層4に分散される凝集体Aを構成する粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合体、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)、ウレタンエラストマー、ウレタンアクリレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の有機材料の粒子が挙げられる。これら粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、凝集体Aを構成する粒子としては、凝集性及び入手容易性の観点から、フッ素樹脂が好ましい。
【0031】
中間層4に分散される凝集体Aを構成する粒子の変形強度(σ10%)は、1MPa以下であることが好ましい。粒子の変形強度(σ10%)が1MPa以下であれば、感光ドラムへの損傷が抑えられて、かぶりをより効果的に抑制することができる。
なお、粒子の変形強度(σ10%)は、粒子径の10%の圧縮変位に対する変形強度であり、実施例に記載の手順により測定することができる。
【0032】
中間層4に分散される凝集体Aの平均径dAは、10μm以上35μm以下であることが好ましい。平均径dAが10μm以上であれば、トナー漏れの抑制効果をより高めるとともに、画像濃度の安定性をより長期に亘って保つことができる。また、平均径dAが35μm以下であれば、画像濃度ムラを抑制するとともに、かぶりの抑制効果をより高めることができる。同様の観点から、凝集体Aの平均径dAは、15μm以上であることがより好ましく、また、30μm以下であることがより好ましい。
なお、凝集体Aの平均径dAは、実施例に記載の手順により測定することができる。
【0033】
中間層4に分散される凝集体Aの平均径dAは、当該中間層4の厚み(樹脂厚み)よりも大きいことが好ましい。即ち、樹脂及び凝集体Aを含有する樹脂組成物を塗布して中間層4を形成するに当たっては、凝集体Aが部分的に突出するような厚みで樹脂組成物を塗布することが好ましい。これにより、現像ローラ1の外周面における凹凸がより顕著となって、トナー漏れをより効果的に抑制することができる。なお、中間層4の厚み(樹脂厚み)は、実際には、例えば2μm以上10μm以下とすることができる。
【0034】
凝集体Aを構成する粒子の径(平均一次粒子径)は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。上記平均一次粒子径が0.1μm以上であれば、現像ローラ1を備える画像形成装置を継続的に又は長期に亘って稼働した場合に、凝集体Aが漸次的に削剥し易くなり、画像濃度の安定性をより良好に保つことができる。また、上記平均一次粒子径が1μm以下であれば、所望の凝集体Aを形成し易い。
【0035】
中間層4における上記粒子の含有量は、上記樹脂100質量部に対して10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記含有量が10質量部以上であれば、凝集体Aの密度が十分に高くなり、トナー漏れの抑制効果をより高めることができる。また、上記含有量が30質量部以下であれば、中間層4を作製する際の塗布ムラを抑制することができる。同様の観点から、中間層4における上記粒子の含有量は、上記樹脂100質量部に対して15質量部以上であることがより好ましく、また、25質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
中間層4は、樹脂及び粒子で構成された凝集体A以外に、導電剤等の他の成分を含有してもよい。
【0037】
<表層>
本実施形態の現像ローラ1は、上述の通り、最外に位置する表層5を備える。また、該表層5は、樹脂に、粒子及び粒子で構成された凝集体から選択される1つ以上である粒状体Bが分散されてなる。
【0038】
表層5を構成する樹脂としては、特に限定されないが、中間層4を構成する樹脂として上述したものが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、表層5を構成する樹脂としては、紫外線硬化性樹脂が好ましく、ウレタン樹脂(紫外線硬化性ウレタン樹脂)がより好ましい。なお、表層5を構成する樹脂と、中間層4を構成する樹脂とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。但し、製造効率の観点から、表層5を構成する樹脂と中間層4を構成する樹脂とは、同じであることが好ましい。
【0039】
表層5に分散される粒状体Bは、粒子単体のまま(非凝集体)であってもよく、粒子で構成された凝集体であってもよく、また、これらの両方であってもよい。
【0040】
表層5に分散される粒状体Bを構成する粒子としては、特に限定されないが、中間層4に分散される凝集体Aを構成する粒子として上述したものが挙げられる。これら粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、粒状体Bを構成する粒子としては、凝集性及び入手容易性の観点から、フッ素樹脂が好ましい。なお、粒状体Bを構成する粒子と、凝集体Aを構成する粒子とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。但し、製造効率の観点から、粒状体Bを構成する粒子と凝集体Aを構成する粒子とは、同じであることが好ましい。
【0041】
表層5に分散される粒状体Bの平均径dBは、1μm以上10μm以下であることを要する。なお、上記粒状体Bの平均径dBは、粒状体Bが非凝集体である場合には、平均一次粒子径を指し、粒状体Bが凝集体である場合には、平均二次粒子径又は凝集径を指す。粒状体Bの平均径dBが1μm未満であると、小さすぎて粒状体を配合することによる所望の効果を得ることができない虞がある。また、粒状体Bの平均径dBが10μm超であると、かぶりを抑制することができない虞がある。また、粒状体Bの平均径dBは、所望の効果をより確実に得る観点から、3μm以上であることが好ましく、また、かぶりをより効果的に抑制する観点から、8μm以下であることが好ましい。
なお、粒状体Bの平均径dBは、実施例に記載の手順により測定することができる。
【0042】
粒状体Bの平均径dBは、中間層4に分散される凝集体Aの平均径dAよりも小さいことが好ましい。即ち、凝集体Aの平均径dAに対する粒状体Bの平均径dBの比(平均径dB/平均径dA)は、1.0未満であることが好ましい。この点、粒状体Bを構成する粒子と凝集体Aを構成する粒子とを同じものとする場合には、分散剤などを用いて凝集体Aを微細化することで、容易に粒状体Bを得ることができる。また、上記比(平均径dB/平均径dA)は、0.7以下がより好ましく、0.4以下が更に好ましい。
【0043】
表層5に分散される粒状体Bの平均径dBは、当該表層5の厚み(樹脂厚み)よりも大きいことが好ましい。即ち、樹脂及び粒状体Bを含有する樹脂組成物を塗布して表層5を形成するに当たっては、粒状体Bが部分的に突出するような厚みで樹脂組成物を塗布することが好ましい。これにより、現像ローラ1の外周面における凹凸がより顕著となって、トナー漏れをより効果的に抑制することができる。なお、表層5の厚み(樹脂厚み)は、実際には、例えば1μm以上5μm以下とすることができる。また、表層5の厚み(樹脂厚み)は、中間層4の厚み(樹脂厚み)より小さくてもよい。
【0044】
表層5における上記粒子の含有量は、上記樹脂100質量部に対して15質量部以上35質量部以下であることが好ましい。上記含有量が15質量部以上であれば、粒状体Bの密度が十分に高くなり、トナー供給能力の向上などの効果が得られる。また、上記含有量が35質量部以下であれば、表層5を作製する際の塗布ムラを抑制し、かぶりの抑制効果をより高めることができる。同様の観点から、表層5における上記粒子の含有量は、上記樹脂100質量部に対して20質量部以上であることがより好ましく、また、30質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
表層5は、樹脂及び粒状体B以外に、導電剤等の他の成分を含有してもよい。
【0046】
<弾性層>
本実施形態の現像ローラ1は、
図1に示す通り、シャフト部材2と中間層4との間に、弾性層3を更に備えることが好ましい。これにより、現像ローラ1に弾性が付与されて、現像ローラ1の表層5が感光ドラムや現像ブレードに押し当てられる際に表層5にかかる応力を緩和することができ、表層5の耐久性を良好に保持することができる。
【0047】
上記弾性層3は、エラストマーで構成されていることが好ましく、エラストマーの発泡体で構成されていることがより好ましい。上記エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ポリノルボルネンゴム、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。これらエラストマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。特に、これらエラストマーの中でも、弾性層3には、ポリウレタンを用いることが好ましい。
【0048】
上記エラストマーの発泡体は、上記エラストマーを発泡剤を用いて化学的に発泡させたり、ポリウレタンフォームのように空気を機械的に巻き込んで発泡させたりすることにより、作製できる。また、弾性層3をエラストマーの発泡体から形成する場合、当該発泡体は、発泡倍率が1.5~50倍の範囲であることが好ましく、また、密度が0.05~0.9g/cm3の範囲であることが好ましい。
【0049】
また、上記発泡体中の気泡は、独立気泡であることが好ましい。この場合、前記弾性層3の圧縮永久歪性能を向上させることができる。ここで、発泡体の気泡を独立気泡とする手法としては、上記エラストマーの原料を機械的撹拌により発泡させて発泡体とする手法が好適に採用される。
【0050】
上記弾性層3は、導電剤を含有することが好ましい。これにより、弾性層3の導電性を調整することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤等が挙げられる。導電剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、導電剤として、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
前記電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、酸化処理等を施したカラー用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープ酸化スズ、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウィスカー、黒鉛ウィスカー、炭化チタンウィスカー、導電性チタン酸カリウムウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー、導電性酸化チタンウィスカー、導電性酸化亜鉛ウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
【0052】
前記イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0053】
<その他の層>
本実施形態の現像ローラ1は、上述した中間層4及び表層5、並びに弾性層3のほか、更なる層を備えることができる。
【0054】
例えば、本実施形態の現像ローラ1は、中間層4の半径方向外側、より具体的には、中間層4と表層5との間に、外側中間層(図示せず)を更に備えてもよい。かかる外側中間層は、一層のみであってもよく二層以上であってもよい。かかる外側中間層は、接着層としての機能を有することができ、当該外側中間層を備えることにより、中間層4と表層5との接着性を高めて、現像ローラ1の耐久性を高めることができる。
【0055】
前記外側中間層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、中間層4を構成する樹脂として上述したものが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、前記外側中間層の厚み(一層当たり)は、例えば1μm以上5μm以下とすることができる。
【0056】
また、本実施形態の現像ローラ1は、中間層4の半径方向内側、より具体的には、中間層4とシャフト部材2又は弾性層3との間に、内側中間層(図示せず)を更に備えることもできる。かかる内側中間層は、一層のみであってもよく二層以上であってもよい。かかる内側中間層は、接着層としての機能を有することができ、当該内側中間層を備えることにより、中間層4とシャフト部材2又は弾性層3との接着性を高めて、現像ローラ1の耐久性を高めることができる。
【0057】
前記内側中間層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、中間層4を構成する樹脂として上述したものが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、前記内側中間層の厚み(一層当たり)は、例えば1μm以上5μm以下とすることができる。
【0058】
<現像ローラの製造方法>
本実施形態の現像ローラは、製造方法については特に限定されず、常法に従って製造することができる。例えば、中間層4、表層5等の各層については、樹脂、粒子及び/又は凝集体、並びに適宜その他の成分を含有する樹脂組成物(塗工液)を調製し、次いで、かかる塗工液を表面に塗布し、次いで、任意に紫外線又は電子線を照射して硬化して、形成することができる。
【0059】
樹脂組成物(塗工液)の塗布の方法としては、特に限定されず、ディップ法、ロールコート法、スプレーコート法などが挙げられ、状況に応じてこれらから適宜選択することができる。
【0060】
<現像ローラの用途>
本発明の現像ローラは、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の種々の画像形成装置に利用することができる。該画像形成装置は、通常、静電潜像を保持した感光ドラムと、感光ドラムの近傍に位置し感光ドラムを帯電させるための帯電部材と、トナーを供給するためのトナー供給ローラと、感光ドラムの近傍に位置する転写部材と、感光ドラムに隣接して配置されたクリーニング部材とを備え、更に、トナー供給ローラと感光ドラムとの間に現像ローラを備える。また、現像ローラの近傍には、通常、現像ブレード(「成層ブレード」とも呼ぶ。)が設けられる。
【0061】
画像形成装置においては、感光ドラムと帯電部材との間に電圧を印加して、感光ドラムを一定電位に帯電させた後、露光機により静電潜像を感光ドラム上に形成する。次に、トナー供給ローラからトナーが現像ローラを経て感光ドラムに送られる。この際、現像ローラ上のトナーは、現像ブレードにより均一な薄層に整えられ、現像ローラと感光ドラムとが接触しながら回転することにより、トナーが現像ローラから感光ドラムの静電潜像に付着し、潜像が可視化する。潜像に付着したトナーは、転写部材で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム上に残留するトナーは、クリーニング部材によって除去される。
【0062】
そして、画像形成装置に、上述した本発明の現像ローラを用いることで、トナー漏れ及びかぶりを抑制することができる。また、かかる画像形成装置を継続的に又は長期に亘って稼働した場合でも、画像濃度の安定性を保つことができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0064】
(実施例1)
アルミニウムのパイプよりなるシャフト部材上に、弾性層、中間層、外側中間層(接着層)及び表層をこの順に形成し、現像ローラを作製した。なお、中間層は、ウレタン樹脂にポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集体を配合した樹脂組成物を、ロールコートにより弾性層上に塗布し、形成した(中間層の主な条件は、表1に示す通りである)。また、接着層は、樹脂組成物(塗工液、購入品)を、ロールコートにより中間層上に塗布し、形成した。また、表層は、ウレタン樹脂を含む溶剤にポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集体を配合した樹脂組成物(分散液)を、スプレーにより接着層上に噴霧し、形成した(表層の主な条件は、表1に示す通りである)。
【0065】
なお、実施例1では、中間層の凝集体を構成する粒子と、表層の凝集体を構成する粒子とは、同じものを用いており、表層の凝集体としては、分散剤などを用い、中間層の凝集体よりも更に微細化したものを用いた。
【0066】
また、中間層に分散される凝集体A(又は粒子)の平均径dAは、以下の手順で測定した。
即ち、中間層を形成した後、レーザー顕微鏡装置(キーエンス社製、「VK-X3000」)を用いて、当該中間層の長手方向中央部の表面画像を取得した。次いで、かかる表面画像中から100個の凝集体A(又は粒子)をカウントし、これらの外径データを取得した。そして、かかる外径データ用い、D50を、平均径dAとして算出した。
【0067】
また、表層に分散される粒状体Bの平均径dBは、以下の手順で測定した。
即ち、表層を形成した後、レーザー顕微鏡装置(キーエンス社製、「VK-X3000」)を用いて、当該表層の長手方向中央部の表面画像を取得した。次いで、かかる表面画像中から100個の粒状体Bをカウントし、これらの外径データを取得した。そして、かかる外径データ用い、D50を、平均径dBとして算出した。
【0068】
また、粒子の変形強度(σ10%)は、以下の手順で測定した。
即ち、微小粒子圧壊力測定装置(ナノシーズ社製、「NS-A100」)を用い、下式により求めた。
σ10%=F10%/A
σ10%:粒子径の10%の圧縮変位に対する変形強度(Pa)
F10%:粒子径の10%の圧縮変位に対する試験力(N)
A:代表面積(圧縮前に計測した粒子の粒子径によって求めた相当円の面積)(m2)
【0069】
(その他の実施例及び比較例)
中間層及び/又は表層の条件を、表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。
【0070】
上述のようにして作製した各例の現像ローラについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(1)初期画像濃度
作製した現像ローラを、ブラザー社製モノクロレーザープリンター「HL-L6400DW」に組み、黒ベタ画像を印字した。得られた画像について、紙面5箇所の画像濃度を、エックスライト社製分光濃度計「eXact Basic」を用いて測定した。かかる5カ所の濃度について、平均値(平均濃度)、及び、最大値と最小値との差(濃度差)を算出し、以下の基準で評価した。
A(極めて良好):平均濃度が1.2以上、かつ濃度差が0.2以下
B(良好):平均濃度が1.2以上、かつ濃度差が0.2未満
C(不良):平均濃度が1.2未満
【0072】
(2)耐久後画像濃度(画像濃度の安定性)
上記の通り初期画像濃度を測定した後、耐久印字(約2万枚の黒ベタ画像の印字)を行った。最終的に得られた画像について、紙面5箇所の画像濃度を、エックスライト社製分光濃度計「eXact Basic」を用いて測定した。かかる5カ所の濃度について、平均値(平均濃度)、及び、最大値と最小値との差(濃度差)を算出し、以下の基準で評価した。
A(極めて良好):平均濃度が1.2以上、かつ濃度差が0.2以下
B(良好):平均濃度が1.2以上、かつ濃度差が0.2未満
C(不良):平均濃度が1.2未満
【0073】
(3)かぶり
作製した現像ローラを、ブラザー社製モノクロレーザープリンター「HL-L6400DW」に組み、LL環境下(10℃、15%RH)で、耐久試験を行った。その後に得られた画像について、以下の基準で評価した。
A(極めて良好):画像中の本来トナーが載るべきでない箇所に、トナー定着が観察できない
B(良好):画像中の本来トナーが載るべきでない箇所に、若干のトナー定着が観察できる
C(不良):画像中の本来トナーが載るべきでない箇所に、トナー定着が広範囲にわたって観察できる
【0074】
(4)トナー漏れ
作製した現像ローラを、ブラザー社製モノクロレーザープリンター「HL-L6400DW」に組み、LL環境下(10℃、15%RH)、及び、HH環境下(30℃、80%RH)で、耐久試験を行った。その後の現像ローラ周辺のトナー状態について、以下の基準で評価した。
A(極めて良好):現像ローラ端部からのトナー噴き出し及びシール部の汚れともに、観察できない
B(良好):現像ローラ端部からのトナー噴き出しは観察できないが、シール部の汚れが観察できる
C(不良):現像ローラ端部からのトナー噴き出し及びシール部の汚れともに、観察できる
【0075】
【0076】
表1より、本発明に従う実施例の現像ローラは、トナー漏れ及びかぶりを抑制でき、画像濃度の安定性にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の現像ローラは、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の種々の画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:現像ローラ、 2:シャフト部材、 3:弾性層、 4:中間層、 5:表層
【要約】
【課題】トナー漏れ及びかぶりを抑制でき、画像濃度の安定性にも優れる現像ローラを提供する。
【解決手段】シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された中間層と、最外に位置する表層と、を備える現像ローラであって、前記中間層は、樹脂に、粒子で構成された凝集体Aが分散されてなり、前記表層は、樹脂に、粒子及び粒子で構成された凝集体から選択される1つ以上である粒状体Bが分散されてなり、前記粒状体Bの平均径d
Bが1μm以上10μm以下である、ことを特徴とする、現像ローラ。
【選択図】
図1