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特許7428862推定装置、推定方法、学習装置、学習方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、学習装置、学習方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/24 20120101AFI20240131BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240131BHJP
【FI】
G06Q20/24
G06N20/00 130
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021188583
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075592
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】LINEヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 義裕
(72)【発明者】
【氏名】小出 明弘
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-149658(JP,A)
【文献】特開2018-077757(JP,A)
【文献】特開2003-272047(JP,A)
【文献】特開2021-114113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習された学習済みモデルに、前記後払い決済サービスの対象ユーザの決済金額の履歴を入力することで前記確率値を取得し、前記確率値が第1閾値以上である場合に、前記対象ユーザが前記設定を変更する推定する推定部を備え、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
推定装置。
【請求項2】
前記決済金額の履歴は、前記所定期間にわたる前記決済金額の推移を示す情報である、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記決済金額の履歴は、前記所定期間にわたる前記決済金額の変化量の推移を示す情報である、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記学習済みモデルは、前記決済金額の履歴と、前記ユーザの年齢および性別の少なくとも一方と、を少なくとも含む組み合わせに対して前記ラベルが付与された教師データに基づいて学習されたものである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記学習済みモデルは、前記決済金額の履歴と、前記推定を行う対象となる月と、を少なくとも含む組み合わせに対して前記ラベルが付与された教師データに基づいて学習されたものである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、社会の経済状況を表す指標値であるGDP成長率、インフレ率、失業率の少なくとも一つの大きさに応じて、前記第1閾値を調整する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記所定期間について生成された学習済みモデルに複数の前記対象ユーザの決済金額の履歴を入力することによって出力された複数の確率値の分布の平均値と標準偏差とに基づく値として、前記第1閾値を決定する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記所定期間について生成された学習済みモデルに複数の前記対象ユーザの決済金額の履歴を入力することによって出力された複数の確率値の平均値を、前記複数の確率値の各々から減算し、減算によって得られた値を前記複数の確率値の標準偏差で除算した値が第1閾値以上である場合に、前記値が前記第1閾値以上である対象ユーザが前記設定を変更すると推定する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記推定部によって前記設定を変更すると推定された対象ユーザの端末装置に対して、前記設定を変更することを提案する提案情報を送信する提案部を更に備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項10】
前記提案部から送信された前記提案情報を受信した前記端末装置の対象ユーザのうち、前記設定を変更した対象ユーザの割合を算出し、
前記割合が第2閾値未満である場合には、前記所定期間を変更して前記学習を再度行うことにより前記学習済みモデルを更新する更新部をさらに備える、
請求項9に記載の推定装置。
【請求項11】
コンピュータが、
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習された学習済みモデルに、前記後払い決済サービスの対象ユーザの決済金額の履歴を入力することで前記確率値を取得し、前記確率値が第1閾値以上である場合に、前記対象ユーザが前記設定を変更する推定し、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
推定方法。
【請求項12】
コンピュータに、
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習された学習済みモデルに、前記後払い決済サービスの対象ユーザの決済金額の履歴を入力することで前記確率値を取得し、前記確率値が第1閾値以上である場合に、前記対象ユーザが前記設定を変更する推定させ、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
プログラム。
【請求項13】
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習し、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
学習装置。
【請求項14】
コンピュータが、
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習し、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
学習方法。
【請求項15】
コンピュータに、
後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習させ、
前記決済金額の履歴における前記過去の所定期間は、前記支払い方法の設定が変更されなかった期間であり、前記ラベルは、前記過去の所定期間の直後に前記支払い方法の設定が初めて変更されたことを示すラベルを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法、学習装置、学習方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
後払い決済サービスにおいて、口座残高の引き落とし処理を円滑に実行するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、複数の口座の残高に応じて、引き落とし処理にかかる口座の残高が不足していた場合に、ユーザに支払い方法の変更を可能にさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-106892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ユーザの複数の口座残高を参照することによって、残高の不足を検知するものである。しかしながら、一般的に、クレジットカードなどの後払い決済サービスにおいては、サービスの管理者は、必ずしもユーザの口座残高を参照することができるとは限らない。その結果、ユーザに支払い方法の変更を好適に提案できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ユーザの口座残高を参照することなく、支払い方法の変更を好適に提案することができる、推定装置、推定方法、学習装置、学習方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、後払い決済サービスにおける少なくとも過去の所定期間にわたる決済金額の履歴に対して、前記後払い決済サービスにおける決済後に支払い方法の設定を変更したか否かを示すラベルが付与された教師データに基づいて、前記決済金額の履歴が入力されるとユーザが前記設定を変更する確率値を出力するように学習された学習済みモデルに、前記後払い決済サービスの対象ユーザの決済金額の履歴を入力することで、前記対象ユーザが前記設定を変更するか否かを推定する推定部を備える、推定装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ユーザの口座残高を参照することなく、支払い方法の変更を好適に提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ユーザ端末装置10、決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50によって構成されるシステム1の一例を示す図である。
図2】ユーザ端末装置10に表示させるクレジットカード利用情報の一例を示す図である。
図3】クレジットカードの利用に係るタイムラインの一例を示す図である。
図4】ユーザ端末装置10に通知される支払い方法の変更の提案の一例を示す図である。
図5】学習用決済履歴データ24Aおよび推定用決済履歴データ24Bの構成の一例を示す図である。
図6】教師データ38Aの構成の一例を示す図である。
図7】モデル構築/運用アプリ100の機能構成の一例を示す図である。
図8】インターフェース提供部110によって提供されるインターフェース画面の一例を示す図である。
図9】インターフェース提供部110によって提供される、モデリング担当者モードにおけるインターフェース画面の一例を示す図である。
図10】インターフェース提供部110によって提供される、運用担当者モードにおけるインターフェース画面の一例を示す図である。
図11】支払い方法変更推定部140によって推定された推定結果の一例を示す図である。
図12】学習済みモデル更新部160による学習済みモデル130の更新タイミングの一例を説明するための図である。
図13】学習済みモデル130が出力する確率値の分布に基づいて閾値Th1を設定するための方法の一例を示す図である。
図14】決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50によって実行される処理の流れの一例を示す図である。
図15】変形例に係る教師データ38Bの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、図面を参照し、本発明の推定装置、推定方法、学習装置、学習方法、およびプログラムの実施形態について説明する。図1は、ユーザ端末装置10、決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50によって構成されるシステム1の一例を示す図である。ユーザ端末装置10、決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50は、互いに協働して以下で説明する処理を行う。
【0010】
[ユーザ端末装置]
ユーザ端末装置10は、クレジットカード決済サービス(「後払い決済サービス」の一例である)を利用するユーザによって使用される端末装置であり、例えば、通信部12と、入出力部14と、制御部16と、記憶部18と、を含む。記憶部18には、例えば、クレジットカード情報アプリ18Aが記憶されている。
【0011】
通信部12は、無線通信機やネットワークカード等の通信インターフェースを含む。通信部12は、決済情報サーバ20とネットワークNW1を介して互いに通信する。ネットワークNW1は、インターネットやLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、セルラー網などを含む。入出力部14は、ユーザ端末装置10がスマートフォンやタブレット端末である場合、例えば、表示部と操作部とが一体化されたタッチパネルを含む。ユーザ端末装置10がパーソナルコンピュータである場合、入出力部14は、例えば、操作ボタンやキーボードなどの入力部と、画像を表示する表示部とを含む。本実施形態において、ユーザ端末装置10は、例えば、スマートフォンであるものとして説明する。
【0012】
制御部16は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがクレジットカード情報アプリ18Aを実行することで実現される。制御部16は、決済情報サーバ20から、ユーザ端末装置10のユーザがクレジットカードを利用した履歴情報を取得し、クレジットカード利用情報としてユーザ端末装置10に表示させる。本実施形態において、クレジットカード情報アプリ18Aは、ユーザがクレジットカード利用情報を閲覧するためのネイティブアプリであるものとするが、Webブラウザであっても良い。
【0013】
図2は、ユーザ端末装置10に表示させるクレジットカード利用情報の一例を示す図である。図2において、符号A1は、クレジットカードの請求金額確定日の日付と、ユーザがクレジットカード情報アプリ18Aを起動させた日付を表す領域を表す。ここで、クレジットカードの請求金額確定日とは、当月の支払日(例えば、27日)における支払い金額(口座からの引き落とし金額)の確定日を意味する。ユーザは、支払い当月の請求金額確定日までに支払い方法を変更することにより、当月分の支払い金額を変更(主には減額)することができる。
【0014】
ここで、支払い方法は、例えば、一括払い、分割払い、リボルビング払い(リボ払い)などを含む。一括払いとは、前月の基準日(例えば、1日)から締め日(例えば、31日)までの期間に利用されたクレジットカードの合計決済金額を、翌月の支払日に一括で支払う方法である。分割払いとは、前月の基準日から締め日までの間に利用されたクレジットカードの合計決済金額を、返済回数(例えば、3回や6回)を決めて、当該返済回数にわたって分割して返済する方法である。リボ払いとは、前月の基準日から締め日までの間に利用されたクレジットカードの合計決済金額を、一定の返済金額を決めて、複数回(=合計決済金額/返済金額に相当する回数)にわたって分割して返済する方法である。ユーザは、例えば、ある月にクレジットカードを用いて一括払いで商品を購入した後に、次月の請求金額確定日までに支払い方法を一括払いからリボ払いに変更することによって、次月の支払い金額を減額することができる。
【0015】
符号A2は、クレジットカードの利用に伴う当月分の請求金額を表す領域を表す。ユーザが、請求金額確定日までに、支払い方法を、例えば、一括払いからリボ払いに変更した場合、当該変更に伴う当月分の支払い金額の減額分は請求金額から減算され、領域A2の表示に反映される。符号A3は、前月のクレジットカードの利用明細を表す情報であり、換言すると、当月分の支払い金額の内訳を表す情報である。図2では、一例として、利用明細は、月日と決済金額に関する情報を含むが、利用明細は、さらに、例えば、利用店舗や購入商品の名称などの情報を含んでもよい。符号B1は、当月分の請求金額の支払い方法を一括払いからリボ払いに変更するためのボタンを表す。ユーザは、請求金額確定日までにボタンB1を押下して、毎月の返済金額を指定することによって、支払い方法を変更することができる。
【0016】
図3は、クレジットカードの利用に係るタイムラインの一例を示す図である。図3に示す通り、ユーザは、まず前月の基準日(例えば、1日)から締め日(例えば、31日)までの期間にクレジットカードを利用する。この期間に利用されたクレジットカードの合計決済金額は、当月の1日時点において、当月分の請求金額として仮決定され、図2の領域A2に表示される。ユーザは、クレジットカード情報アプリ18Aを用いて、領域A2に表示される当月分の請求金額を確認し、例えば、20日までに、支払い方法を一括払いからリボ払いに変更するか否かを決定する。20日までに支払い方法を一括払いからリボ払いに変更した場合、仮決定された当月分の請求金額から、リボ払いへの変更に伴う支払い金額の減額分が減算され、当月分の請求金額として確定される。確定された請求金額は、例えば、27日に、クレジットカードに紐づくユーザの銀行口座から引き落とされる。
【0017】
このように、ユーザは、例えば、1日から20日までの支払い方法変更可能期間において、自身が保有する銀行口座の残高状況に応じて、支払い方法を変更するものである。しかしながら、ユーザは、必ずしも、銀行口座の残高状況や当月分の請求金額を正確に把握しているとは限らない。その結果、銀行口座の残高が当月の引き落とし金額を下回ることによって、引き落とし処理が失敗することがあり得る。
【0018】
上記の事情を背景にして、後述する運用担当者端末装置50で実行されるモデル構築/運用アプリ100は、ユーザの推定用決済履歴データ24Bに基づいて、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出し、決済情報サーバ20は、例えば、支払い方法変更可能期間における所定日(例えば、15日)に、抽出されたユーザに対して、支払い方法の変更を提案する通知を送信する。これにより、ユーザは、支払い方法変更可能期間において、自身が保有する銀行口座の残高状況に応じて、支払い方法をより確実に変更することができる。
【0019】
図4は、ユーザ端末装置10に通知される支払い方法の変更の提案の一例を示す図である。図4に示す通り、例えば、ユーザがクレジットカード情報アプリ18Aを起動させると、決済情報サーバ20は、起動直後に、支払い方法の変更を提案するメッセージボックスA4をユーザ端末装置10に表示させる。また、例えば、決済情報サーバ20は、ユーザ端末装置10にプッシュ通知を送信することによって支払い方法の変更を提案してもよいし、クレジットカード情報アプリ18Aに登録されたメールアドレスに支払い方法の変更を提案するメールを送信してもよい。
【0020】
なお、上記の図2から図4において説明したクレジットカードに係る期日(クレジット利用期間、支払い方法変更可能期間、当月分の請求金額の仮決定日、支払い方法の変更提案日、リボ払い変更可能期限日、当月分の請求金額の確定日、当月分の請求金額の支払い日)の決め方はクレジットカード会社によって如何様にも変更可能であり、本発明の適用上、リボ払い変更可能期間が存在すればよく、その他に特段の制限は存在しない。
【0021】
[決済情報サーバ]
決済情報サーバ20は、ユーザによるクレジットカードの決済情報を管理するサーバ装置であり、例えば、通信部22と、記憶部24とを含む。通信部22は、無線通信機やネットワークカード等の通信インターフェースを含む。通信部22は、ユーザ端末装置10とネットワークNW1を介して互いに通信するとともに、モデリング担当者端末装置30および運用担当者端末装置50とネットワークNW2を介して通信する。ネットワークNW2は、有線又は無線の内部ネットワークである。
【0022】
記憶部24は、学習用決済履歴データ24Aおよび推定用決済履歴データ24Bを記憶する。図5は、学習用決済履歴データ24Aおよび推定用決済履歴データ24Bの構成の一例を示す図である。学習用決済履歴データ24Aは、クレジットカードのユーザごとに生成および記憶されるデータであり、例えば、年月に対して、合計決済金額などの情報が対応付けられるものである。合計決済金額は、対応する年月においてクレジットカードが利用された決済金額の合計を示す情報である。本実施形態において、学習用決済履歴データ24Aは、支払い方法の変更有無が確定している最終月(すなわち、図5では2021年9月)以前の月において、一括払いからリボ払いに支払い方法を変更しなかったユーザについて生成されるものとする。決済情報サーバ20は、モデリング担当者端末装置30の要求に応じて、学習用決済履歴データ24Aをモデリング担当者端末装置30にネットワークNW2を介して送信する。
【0023】
推定用決済履歴データ24Bは、クレジットカードのユーザごとに生成および記憶されるデータであり、例えば、年月に対して、合計決済金額などの情報が対応付けられるものである。学習用決済履歴データ24Aとは異なり、推定用決済履歴データ24Bは、支払い方法の変更が可能である最終月(すなわち、図9では2021年10月)の決済履歴データを含むものである。推定用決済履歴データ24Bが、最終月以前の月において、一括払いからリボ払いに支払い方法を変更しなかったユーザについて生成される点は、学習用決済履歴データ24Aと同様である。決済情報サーバ20は、運用担当者端末装置50の要求に応じて、推定用決済履歴データ24Bをモデリング担当者端末装置30にネットワークNW2を介して送信する。
【0024】
なお、図5においては、一例として、学習用決済履歴データ24Aおよび推定用決済履歴データ24Bは、合計決済金額に関する情報を6ヶ月分、記録しているが、本発明はそのような構成に限定されず、少なくとも2ヶ月分以上の年月に相当する学習用決済履歴データ24Aおよび推定用決済履歴データ24Bが記録されればよい。
【0025】
[モデリング担当者端末装置]
モデリング担当者端末装置30は、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出するためのモデルを作成するモデリング担当者(モデル作成者)によって使用される端末装置であり、例えば、通信部32と、入出力部34と、制御部36と、記憶部38と、を含む。記憶部38には、例えば、教師データ38Aとモデル構築/運用アプリ100が記憶されている。
【0026】
通信部32は、無線通信機やネットワークカード等の通信インターフェースを含む。通信部32は、決済情報サーバ20又はファイルサーバ40とネットワークNW2を介して互いに通信する。入出力部14は、モデリング担当者端末装置30がスマートフォンやタブレット端末である場合、例えば、表示部と操作部とが一体化されたタッチパネルを含む。モデリング担当者端末装置30がパーソナルコンピュータである場合、入出力部14は、例えば、操作ボタンやキーボードなどの入力部と、画像を表示する表示部とを含む。本実施形態において、モデリング担当者端末装置30は、例えば、パーソナルコンピュータであるものとして説明する。
【0027】
制御部36は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがモデル構築/運用アプリ100を実行することで実現される。制御部36は、決済情報サーバ20から、各ユーザの学習用決済履歴データ24Aを取得するとともに、当該ユーザが、学習用決済履歴データ24Aの記録対象の最終月(すなわち、図5では2021年9月)の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報を取得する。この場合の「初めて」とは、学習用決済履歴データ24Aが記録対象とする合計決済金額の支払いについて、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更することを意味する。制御部36は、取得した学習用決済履歴データ24Aとラベル情報とに基づいて、教師データ38Aを生成する。
【0028】
図6は、教師データ38Aの構成の一例を示す図である。図6に示す通り、教師データ38Aは、例えば、ユーザごとの学習用決済履歴データ24Aと、当該ユーザが学習用決済履歴データ24Aの記録対象の最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報とが対応付けられたものである。ユーザが学習用決済履歴データ24Aの記録対象の最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更した場合、学習用決済履歴データ24Aには1がラベル付けされる一方、ユーザが学習用決済履歴データ24Aの記録対象の最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更しなかった場合、学習用決済履歴データ24Aには0がラベル付けされる。
【0029】
モデル構築/運用アプリ100は、教師データ38Aを、例えば、再帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)を用いて学習することによって、合計決済金額の履歴が入力されると、ユーザが一括払いからリボ払いに支払い方法を初めて変更する確率値を出力するような学習済みモデルを生成する。すなわち、1がラベル付けされた教師データ38Aのレコードは学習の正例として機能し、0がラベル付けされた教師データ38Aのレコードは、学習の負例として機能する。
【0030】
図7は、モデル構築/運用アプリ100の機能構成の一例を示す図である。モデル構築/運用アプリ100は、例えば、プログラムの機能構成として、インターフェース提供部110と、モデル生成部120と、学習済みモデル130と、支払い方法変更推定部140と、支払い方法変更提案部150と、学習済みモデル更新部160と、を含む。
【0031】
インターフェース提供部110は、モデリング担当者端末装置30又は運用担当者端末装置50に、モデル構築/運用アプリ100を利用するためのインターフェース画面を提供する。図8は、インターフェース提供部110によって提供されるインターフェース画面の一例を示す図である。
【0032】
図8において、符号A4は、モデル構築/運用アプリ100にログインするためのログインIDおよびパスワードを入力するための領域を表す。符号A5は、モデル構築/運用アプリ100の実行モードを指定するための領域を表す。モデル構築/運用アプリ100の実行モードは、例えば、モデリング担当者モードと運用担当者モードとを含む。モデリング担当者モードは、モデリング担当者端末装置30の使用者であるモデリング担当者が、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出するためのモデルを作成するためのモードである。運用担当者モードは、運用担当者端末装置50の使用者である運用担当者が、作成されたモデルに、推定用決済履歴データ24Bを入力することによって、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出するためのモードである。符号B1は、モデリング担当者モード又は運用担当者モードのいずれかのモードにおいてモデル構築/運用アプリ100にログインするためのログインボタンを表す。
【0033】
図9は、インターフェース提供部110によって提供される、モデリング担当者モードにおけるインターフェース画面の一例を示す図である。図9のインターフェース画面は、例えば、モデル構築/運用アプリ100の利用者が、図8のインターフェース画面上でモデリング担当者モードを指定してログインすることによって表示されるものである。
【0034】
図9において、符号A6は、モデル構築/運用アプリ100の利用者がモデリング担当者モードでモデル構築/運用アプリ100にログインしたことを示す情報を表す。符号A7は、モデルを学習するための期間を指定するための領域を表す。図9では、一例として、6ヶ月分の合計決済金額が記録されている教師データ38Aに合わせて、学習期間が6ヶ月に指定されている例を表しているが、本発明はそのような構成に限定されず、教師データ38Aが記録する合計決済金額の期間に合わせて、任意の期間が学習期間として指定されてもよい。
【0035】
符号B2は、領域A7で指定された学習期間に基づいて学習を実行するためのボタンを表す。より具体的には、ボタンB2が押下されると、モデル生成部120は、指定された学習期間に相当する教師データ38Aに基づいて、合計決済金額の履歴が入力されると、ユーザが一括払いからリボ払いに支払い方法を初めて変更する確率値を出力するような学習済みモデル130を生成する。生成された学習済みモデル130は、モデル構築/運用アプリ100に同梱され、モデリング担当者によって手動で、又はスクリプト処理によって自動でファイルサーバ40の記憶部44にアップロードされる。
【0036】
[ファイルサーバ]
ファイルサーバ40は、モデリング担当者によって作成された学習済みモデル130を同梱するモデル構築/運用アプリ100を管理するサーバ装置であり、例えば、通信部42と、記憶部44とを含む。通信部42は、無線通信機やネットワークカード等の通信インターフェースを含む。通信部42は、モデリング担当者端末装置30および運用担当者端末装置50とネットワークNW2を介して通信する。
【0037】
記憶部44は、モデリング担当者によってアップロードされたモデル構築/運用アプリ100を格納し、ファイルサーバ40は、運用担当者端末装置50のダウンロード要求に応じて、記憶部44に格納されたモデル構築/運用アプリ100を運用担当者端末装置50に送信する。
【0038】
[運用担当者端末装置]
運用担当者端末装置50は、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出し、抽出したユーザに対してリボ払いへの変更を提案する運用担当者によって使用される端末装置であり、例えば、通信部52と、入出力部54と、制御部56と、記憶部58と、を含む。記憶部58には、例えば、モデル構築/運用アプリ100が記憶されている。
【0039】
通信部52は、無線通信機やネットワークカード等の通信インターフェースを含む。通信部52は、決済情報サーバ20又はファイルサーバ40とネットワークNW2を介して互いに通信する。入出力部54は、運用担当者端末装置50がスマートフォンやタブレット端末である場合、例えば、表示部と操作部とが一体化されたタッチパネルを含む。運用担当者端末装置50がパーソナルコンピュータである場合、入出力部54は、例えば、操作ボタンやキーボードなどの入力部と、画像を表示する表示部とを含む。本実施形態において、運用担当者端末装置50は、例えば、パーソナルコンピュータであるものとして説明する。
【0040】
制御部56は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがモデル構築/運用アプリ100を実行することで実現される。制御部56は、ファイルサーバ40から、モデリング担当者によって作成された最新の学習済みモデル130を同梱するモデル構築/運用アプリ100をダウンロードし、記憶部58に格納する。制御部56は、さらに、決済情報サーバ20から、推定用決済履歴データ24Bをダウンロードし、学習済みモデル130に入力することによって、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出する。
【0041】
図10は、インターフェース提供部110によって提供される、運用担当者モードにおけるインターフェース画面の一例を示す図である。図10のインターフェース画面は、例えば、モデル構築/運用アプリ100の利用者が、図8のインターフェース画面上で運用担当者モードを指定してログインすることによって表示されるものである。
【0042】
符号A8は、モデル構築/運用アプリ100の利用者が運用担当者モードでモデル構築/運用アプリ100にログインしたことを示す情報を表す。符号A9は、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更するユーザを推定する対象年月を指定するための領域を表す。符号A10は、クレジットカード決済サービスのユーザのうち、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと想定されるユーザを抽出する閾値Th1を調整するためのパラメータを指定するための領域を表す。すなわち、あるユーザの合計決済金額の履歴の入力に対して、学習済みモデル130によって出力された確率値が閾値Th1以上であるとき、当該ユーザは、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率が高いと推定される。閾値Th1は、「第1閾値」の一例である。
【0043】
閾値Th1の調整パラメータは、例えば、GDP成長率、インフレ率、失業率などのパラメータを含む。モデル構築/運用アプリ100は、例えば、GDP成長率が高ければ高いほど、Th1が高くなる傾向で設定し、インフレ率が高ければ高いほど、Th1が低くなる傾向で設定し、失業率が高ければ高いほど、Th1が低くなる傾向で設定する。図10では、一例として、GDP成長率、インフレ率、失業率などのパラメータを設定する例を表しているが、本発明はそのような構成に限定されず、一般的に、クレジットカードのユーザの経済状況に関係する任意の指標が設定されればよい。これにより、社会の経済状況に応じて、支払い方法を変更するユーザを柔軟に推定することができる。
【0044】
符号B3は、領域A9で指定された対象年月に基づいて推定を実行するためのボタンを表す。より具体的には、ボタンB3が押下されると、支払い方法変更推定部140は、決済情報サーバ20からダウンロードした推定用決済履歴データ24Bを学習済みモデル130に入力し、出力された確率値がTh1以上であるユーザを、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更するユーザとして推定する。インターフェース提供部110は、推定結果を運用担当者端末装置50に表示させる。
【0045】
図11は、支払い方法変更推定部140によって推定された推定結果の一例を示す図である。図11に示す通り、インターフェース提供部110は、運用担当者端末装置50の画面に、支払い方法変更推定部140によって支払い方法を変更すると推定されたユーザIDの件数を出力する。インターフェース提供部110は、さらに、例えば、支払い方法を変更すると推定されたユーザIDのリストを出力するためのボタンB4や、支払い方法を変更すると推定されたユーザIDのユーザに対して支払い方法の変更を提案するためのボタンB5を表示させてもよい。ボタンB5が押下された場合、支払い方法変更提案部150は、支払い方法の変更を提案するメッセージをユーザ端末装置10に決済情報サーバ20を介して送信させてもよい。その場合、図4に示す通り、クレジットカード情報アプリ18A上に、支払い方法の変更を提案するメッセージボックスA4を表示させてもよい。
【0046】
[学習済みモデルの更新]
モデリング担当者によって作成された学習済みモデル130は、例えば、毎月、最新の教師データ38Aに基づいて定期的に更新されてもよいし、学習済みモデル130による推定精度の劣化に応じて、不定期に更新されてもよい。例えば、決済情報サーバ20は、支払い方法変更提案部150によって支払い方法の変更が提案されたユーザのうち、実際に支払い方法を変更したユーザの割合(コンバージョン率:CVR)を計測し、学習済みモデル更新部160は、決済情報サーバ20によって計測されたCVRが閾値Th2未満になった場合に、モデル生成部120に、最新の教師データ38Aに基づいて、学習済みモデル130を再生成させてもよい。閾値Th2は、「第2閾値」の一例である。
【0047】
図12は、学習済みモデル更新部160による学習済みモデル130の更新タイミングの一例を説明するための図である。図12は、図6に示される2021年9月までの範囲の教師データ38Aに基づいて生成された学習済みモデル130の精度を表す。図12に示す通り、2021年9月までの範囲の教師データ38Aに基づいて生成された学習済みモデル130のCVRは、一般的に、時間が経過するにつれて、低下していくことが想定される。そのため、学習済みモデル更新部160は、CVRが閾値Th2未満であると判断した場合、モデル生成部120に、最新の教師データ38Aに基づいて、学習済みモデル130を再生成させる。例えば、図12の場合、2022年2月において学習済みモデル130のCVRが閾値Th2未満であると判断された場合、学習済みモデル更新部160は、モデル生成部120に、2022年1月までの範囲の教師データ38Aに基づいて学習済みモデル130を再生成させ、2022年3月の予測に用いる。
【0048】
[学習済みモデル130ごとの乖離の調整]
上記で説明した通り、学習済みモデル130は、例えば、6ヶ月などの所定期間にわたる教師データ38Aに基づいて生成されるものであり、教師データ38Aの範囲を異なる期間に更新することによって、異なる学習済みモデル130が生成されるものである。その場合、学習済みモデル130ごとのスケールに乖離が発生することがあり得る。例えば、推定用決済履歴データ24Bの入力に対して、ある学習済みモデル130が出力した最大の確率値が0.9である一方、別の学習済みモデル130が出力した最大の確率値が0.8である場合、前者の学習済みモデル130は、後者の学習済みモデル130に比して、過大な値を出力する傾向があり得る。そのため、支払い方法の変更を推定するための閾値Th1を一定の値に設定した場合、モデルによっては、閾値Th1の値が過大(または過少)であることがあり得る。
【0049】
上記の事情を背景にして、閾値Th1は、学習済みモデル130が出力する確率値の分布に基づいて設定されてもよい。図13は、学習済みモデル130が出力する確率値の分布に基づいて閾値Th1を設定するための方法の一例を示す図である。図13は、推定用決済履歴データ24Bの入力に対して、ある学習済みモデル130が出力した確率値の分布を表す。図13に示す通り、閾値Th1は、例えば、確率値の分布の平均ave+標準偏差σなどの値に設定されてもよい。これにより、学習済みモデル130ごとのスケールの乖離を吸収して、支払い方法を変更するユーザを推定することができる。
【0050】
また、代替的に、閾値Th1の値ではなく、確率値そのものを調整することによって、学習済みモデル130ごとのスケールの乖離を調整してもよい。より具体的には、学習済みモデル130によって出力された複数の確率値の平均値を、当該複数の確率値の各々から減算し、減算によって得られた値を標準偏差で除算した値と、一定値である閾値Th1とを比較してもよい。このようにしても、学習済みモデル130ごとのスケールの乖離を吸収して、支払い方法を変更するユーザを推定することができる。
【0051】
[処理の流れ]
次に、図14を参照して、決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50によって実行される処理の流れについて説明する。図14は、決済情報サーバ20、モデリング担当者端末装置30、ファイルサーバ40、および運用担当者端末装置50によって実行される処理の流れの一例を示すタイミングチャートである。
【0052】
まず、決済情報サーバ20は、学習用決済履歴データ24Aと、ユーザが学習用決済履歴データ24Aの記録対象の最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報と、をモデリング担当者端末装置30に送信する(ステップS10)。モデリング担当者端末装置30は、受信した学習用決済履歴データ24Aとラベル情報とに基づいて、教師データ38Aを生成する(ステップS20)。
【0053】
次に、モデリング担当者端末装置30は、モデル構築/運用アプリ100を用いて、教師データ38Aを学習することにより学習済みモデル130を生成する。モデリング担当者端末装置30は、生成された学習済みモデル130をモデル構築/運用アプリ100に同梱し、ファイルサーバ40にアップロードする(ステップS40)。次に、ファイルサーバ40は、モデリング担当者端末装置30によってアップロードされた学習済みモデル130を記憶部44に保存する(ステップS50)。
【0054】
次に、運用担当者端末装置50は、ファイルサーバ40から、モデル構築/運用アプリ100をダウンロードするとともに(ステップS60)、決済情報サーバ20から、推定用決済履歴データ24Bをダウンロードする(ステップS70)。運用担当者端末装置50は、モデル構築/運用アプリ100に同梱された学習済みモデル130に推定用決済履歴データ24Bを入力することによって、当月に一括払いからリボ払いに支払い方法を初めて変更すると推定されるユーザを抽出する(ステップS80)。
【0055】
次に、運用担当者端末装置50は、運用担当者によるモデル構築/運用アプリ100の操作に応じて、支払い方法の変更を提案するメッセージをユーザ端末装置10に送信するよう決済情報サーバ20に依頼する(ステップS90)。次に、決済情報サーバ20は、ユーザ端末装置10に、一括払いからリボ払いへの支払い方法の変更を提案し、提案に応じて支払い方法が変更されたか否かのCVRを計測する(ステップS100)。
【0056】
次に、決済情報サーバ20は、計測したCVRを運用担当者端末装置50に通知する(ステップS110)。運用担当者端末装置50は、計測されたCVRが閾値Th2未満であると判定した場合、モデリング担当者端末装置30にモデルの更新を依頼する(ステップS120)。このときの依頼は、運用担当者端末装置50の使用者である運用担当者によって手動で実行されてもよいし、スクリプト処理などによって自動で実行されてもよい。さらに、モデルの更新は、モデリング担当者端末装置30の使用者であるモデリング担当者によって手動で実行されてもよいし、スクリプト処理などによって自動で実行されてもよい。これにより、本タイミングチャートの処理が終了する。
【0057】
なお、上記の実施形態では、教師データ38Aは、過去の所定期間にわたる決済履歴データに対して、当該決済履歴データの最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報を対応付けた情報として、設定されている。しかし、本発明は、そのような構成に限定されず、教師データ38Aは、決済履歴データと、当該決済履歴データに係るユーザの年齢および性別の少なくとも一方と、を少なくとも含む組み合わせに対して上記ラベル情報を対応付けた情報として、設定されてもよい。これにより、より多くのパラメータを考慮した学習済みモデルを生成することができる。
【0058】
さらに、上記の実施形態では、教師データ38Aは、一例として、支払い方法の変更有無が確定している最終月を含む直近6ヶ月の決済履歴データを含むものであり、推定の対象となる月ごとの傾向を考慮していない。しかし、本発明は、そのような構成に限定されず、例えば、直近12ヶ月や24ヵ月の決済履歴データに対して、ユーザが一括払いからリボ払いに支払い方法を変更したか否かを示すラベル情報を対応付けた情報を教師データ38Aとして設定してもよい。また、例えば、教師データ38Aは、特徴量として、推定の対象となる月を含んでもよい。これにより、月ごとの傾向を考慮した学習済みモデルを生成することができる。
【0059】
さらに、上記の実施形態では、一例として、クレジットカードの一括払いからリボ払いに支払い方法を初めて変更するユーザを推定する場合について説明した。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、例えば、一括払いから分割払いに支払い方法を変更するユーザを推定するなど、他の変更形式についても、同様に適用することができる。さらに、本発明はクレジットカードの支払い方法の変更に限定されず、例えば、電子決済アプリの支払い方法の変更にも同様に適用することができる。本発明を電子決済アプリに適用する場合、例えば、商品をあと払いで決済したユーザが、あと払い金額の清算(電子決済アプリのチャージ残高からの引き落とし)を、一括清算から分割清算に変更することを予測することなどが考えられる。
【0060】
上記の実施形態によれば、過去の所定期間にわたる決済履歴データと、当該決済履歴データの最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報とを対応付けた教師データを学習することによって学習済みモデルを生成し、生成した学習済みモデルに、当月の支払い方法の変更に係る決済履歴データを入力することによって、当月に支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更するユーザを推定する。これにより、ユーザの口座残高を参照することなく、支払い方法の変更を好適に提案することができる。
【0061】
さらに、上記の実施形態によれば、モデル構築/運用アプリ100が、直接、決済情報サーバ20にアクセスし、推定用決済履歴データ24Bを取得するため、推定用決済履歴データ24Bを提供する専用のWebサーバを導入する必要がなく、運用の手間を軽減することができる。さらに、上記の実施形態によれば、モデル構築/運用アプリ100自体が、学習用決済履歴データ24Aと推定用決済履歴データ24Bの取得機能を有するため、モデリング担当者にとって、モデルの更新に係る作業負荷を軽減することができる。
【0062】
[変形例]
上記の実施形態では、教師データ38Aとして、合計決済金額の月ごとの推移が記録されている。しかし、本発明は、そのような構成に限定されず、教師データ38Aとして、合計決済金額の変化量(より具体的には、前月の合計決済金額と当月の合計決済金額との間の差分)の推移が記録されてもよい。これは、一般的に、あるユーザの合計決済金額の変化量の推移と、当該ユーザが支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更する確率との間には相関関係があるとする本発明者らの知見に基づくものである。例えば、あるユーザの合計決済金額の前月からの変化量が、過去の所定期間(例えば、6ヶ月)にわたる変化量の移動平均から著しく(例えば、2σ以上)増加している場合、当該ユーザが、支払い方法を一括払いからリボ払いに変更する確率が高くなる事象が観察されている。このような相関関係は、上記の実施形態のように、合計決済金額の推移を教師データとして用いても学習済みモデルに反映させることができるが、合計決済金額の変化量の推移を教師データとして用いることによって、より直接的に学習済みモデルに反映させることができる。
【0063】
図15は、変形例に係る教師データ38Bの構成の一例を示す図である。図15に示す通り、教師データ38Bは、例えば、あるユーザの前月を基準とする合計決済金額の変化量の推移に対して、当該ユーザが教師データ38Bの記録対象の最終月の合計決済金額について、支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更したか否かを示すラベル情報が対応付けられたものである。ユーザが支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更した場合、教師データ38Bには1がラベル付けされる一方、ユーザが支払い方法を一括払いからリボ払いに初めて変更しなかった場合、教師データ38Bには0がラベル付けされる。
【0064】
モデル構築/運用アプリ100は、教師データ38Bを、例えば、再帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)を用いて学習することによって、合計決済金額の変化量の推移が入力されると、ユーザが一括払いからリボ払いに支払い方法を初めて変更する確率値を出力するような学習済みモデルを生成する。その他の構成については、上記の実施形態と同様である。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ユーザ端末装置
12、22、32、42、52 通信部
14、34、54 入出力部
16、36、56 制御部
18、24、38、44、58 記憶部
18A クレジットカード情報アプリ
20 決済情報サーバ
24A 学習用決済履歴データ
24B 推定用決済履歴データ
30 モデリング担当者端末装置
38A 教師データ
40 ファイルサーバ
50 運用担当者端末装置
100 モデル構築/運用アプリ
110 インターフェース提供部
120 モデル生成部
130 学習済みモデル
140 支払い方法変更推定部
150 支払い方法変更提案部
160 学習済みモデル更新部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15