(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】無線タグシステム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240131BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20240131BHJP
H04B 7/12 20060101ALI20240131BHJP
H04B 7/022 20170101ALI20240131BHJP
H04B 5/48 20240101ALI20240131BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20240131BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240131BHJP
【FI】
G06K7/10 160
G06K7/10 240
G06K7/10 288
G06K19/07 090
G06K19/07 230
H04B7/12
G06K7/10 128
H04B7/022
H04B5/02
H02J50/20
H02J50/40
(21)【出願番号】P 2019194512
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018210438
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】岡山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 光司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 健太郎
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-141041(JP,A)
【文献】特開2008-017307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0103533(US,A1)
【文献】特開2009-146399(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139290(WO,A1)
【文献】特開2007-303972(JP,A)
【文献】特開2018-120367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06K 19/07
H04B 7/12
H04B 7/022
H04B 5/02
H02J 50/20
H02J 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信エリア内の無線タグを無線通信対象とする2以上の無線通信装置を備える無線タグシステムであって、
前記2以上の無線通信装置は、前記無線タグと無線通信するための無線通信処理を行う際に、互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信し、
開口部を除いて電波が通過不能に形成される外箱と、
電波が通過可能であって前記開口部を介して前記外箱内に収容される内箱と、
を備え、
前記所定の通信エリアは、前記外箱に収容された前記内箱の内部空間によって構成され、
前記無線通信装置のアンテナは、前記外箱の内面と前記内箱の外面との間に配置され、
前記無線通信装置は、前記内部空間に収容された収容状態時の前記無線タグに対して前記送信波を送信することを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
前記2以上の無線通信装置のうち少なくとも一部は、前記送信波として前記無線タグに対して電力を供給するための無変調波を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線タグシステム。
【請求項3】
前記2以上の無線通信装置のうちいずれか1つは、自ら前記送信波を送信する送信タイミングごとに残りの無線通信装置に対して前記送信波の送信に関する送信指示を行い、
前記残りの無線通信装置は、受信した前記送信指示に応じて前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項4】
前記2以上の無線通信装置のうちいずれか1つは、残りの無線通信装置に対して少なくとも前記送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信し、
前記残りの無線通信装置は、受信した前記制御テーブルに応じて前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項5】
前記2以上の無線通信装置のうち少なくとも一部は、他の無線通信装置における前記送信波の送信状況を検知する検知部を備え、前記無線通信処理を行う際に、前記検知部による検知結果に応じて、前記他の無線通信装置と互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に前記送信波を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項6】
前記2以上の無線通信装置のそれぞれに対して、前記送信波の送信に関する送信指示を行う制御装置を備え、
前記2以上の無線通信装置は、前記制御装置から受信した前記送信指示に応じて前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項7】
前記2以上の無線通信装置のそれぞれに対して、少なくとも前記送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信する制御装置を備え、
前記2以上の無線通信装置は、前記制御装置から受信した前記制御テーブルに応じて前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグシステム。
【請求項8】
前記2以上の無線通信装置は、第1無線通信装置と第2無線通信装置とからなり、
前記第1無線通信装置のアンテナと第2無線通信装置のアンテナとは、前記外箱の内面と前記内箱の外面との間に配置されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項9】
前記外箱は、前記内面として、前記開口部に対向する方形状の内底面と、前記内底面の
四辺にそれぞれ連なる4つの内側面とを備え、
前記第1無線通信装置のアンテナは、前記内底面と前記内箱の外面との間に配置され、前記第2無線通信装置のアンテナは、前記4つの内側面のいずれか1つと前記内箱の外面との間に配置されることを特徴とする請求項8に記載の無線タグシステム。
【請求項10】
前記第2無線通信装置のアンテナは、前記内側面に対して、前記送信波の出力方向が前記開口部から離れる方向に傾斜するように配置されることを特徴とする請求項9に記載の無線タグシステム。
【請求項11】
前記外箱は、前記内面として、前記開口部に対向する方形状の内底面と、前記内底面の四辺にそれぞれ連なる4つの内側面とを備え、
前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置は、それぞれ2つのアンテナを備え、
前記第1無線通信装置の一方のアンテナと前記第2無線通信装置の一方のアンテナとが対向し、前記第1無線通信装置の他方のアンテナと前記第2無線通信装置の他方のアンテナとが対向するように、4つのアンテナが前記外箱の内面と前記内箱の外面との間に配置され、
前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置は、前記第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と前記第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時であって、前記第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と前記第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に、前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の無線タグシステム。
【請求項12】
前記外箱は、前記内面として、前記開口部に対向する方形状の内底面と、前記内底面の四辺にそれぞれ連なる4つの内側面とを備え、
前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置は、それぞれ2つのアンテナを備え、
前記第1無線通信装置の一方のアンテナと他方のアンテナとが対向し、前記第2無線通信装置の一方のアンテナと他方のアンテナとが対向するように、4つのアンテナが前記外箱の内面と前記内箱の外面との間に配置され、
前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置は、前記第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と前記第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時であって、前記第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と前記第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に、前記無線通信処理を行うことを特徴とする請求項8に記載の無線タグシステム。
【請求項13】
前記2以上の無線通信装置は、前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置に加えて、第3無線通信装置を有し、
前記第1無線通信装置、前記第2無線通信装置及び前記第3無線通信装置の無線通信結果を利用して、前記内箱の内部空間内となる前記所定の通信エリア内の前記無線タグから情報を読み取る読取部を備え、
前記第3無線通信装置のアンテナは、前記外箱の外側に配置されることを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項14】
前記第3無線通信装置のアンテナは、前記外箱の外側であって前記開口部の周りに配置されることを特徴とする請求項13に記載の無線タグシステム。
【請求項15】
前記第3無線通信装置のアンテナは、送信波の出力方向が前記開口部から離れる方向となるように、前記開口部の開口面に沿う平面に対して傾斜して配置されることを特徴とする請求項14に記載の無線タグシステム。
【請求項16】
前記読取部は、前記第1無線通信装置、前記第2無線通信装置及び前記第3無線通信装置の無線通信結果として受信信号強度を利用して、前記内箱の内部空間内となる前記所定の通信エリア内の前記無線タグから情報を読み取ることを特徴とする請求項13~15のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項17】
前記第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置による無線通信と前記第3無線通信装置による無線通信とを排他的に行うことを特徴とする請求項16に記載の無線タグシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の通信エリア内の無線タグを無線通信対象とする無線通信装置を備える無線タグシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の通信エリア内の無線タグを無線通信にて読み取る際、周囲環境による電波の反射等により電波が受信できないヌル状態となる範囲(ヌル範囲)が生じる場合があり、このヌル範囲に無線タグが配置されていると、その無線タグと安定して通信できない場合がある。ヌル範囲に存在する無線タグでは、無線通信装置からの送信波を十分に受信できないために、無線タグとしての動作に必要な電力を得ることができないからである。
【0003】
この問題を解決するための技術として、例えば、下記特許文献1に開示されるタグ通信装置が知られている。このタグ通信装置は、2つのアンテナを備え、それぞれのアンテナから送信される電波の位相を所定の周期で変えることにより、通信不能領域の位置(ヌル範囲)が固定されないようにすることで、通信できないRFIDタグが発生することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように2つのアンテナから送信される電波の位相を所定の周期で変える構成では、専用の送信回路等が必要となることから製造コストが増大するだけでなく、アンテナの配置場所が制約を受けてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、無線通信対象の無線タグに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことで安定した無線通信を実現し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
所定の通信エリア(S)内の無線タグ(T,T1~T3)を無線通信対象とする2以上の無線通信装置(30,40)を備える無線タグシステム(10)であって、
前記2以上の無線通信装置は、前記無線タグと無線通信するための無線通信処理を行う際に、互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信し、
開口部を除いて電波が通過不能に形成される外箱と、
電波が通過可能であって前記開口部を介して前記外箱内に収容される内箱と、
を備え、
前記所定の通信エリアは、前記外箱に収容された前記内箱の内部空間によって構成され、
前記無線通信装置のアンテナは、前記外箱の内面と前記内箱の外面との間に配置され、
前記無線通信装置は、前記内部空間に収容された収容状態時の前記無線タグに対して前記送信波を送信することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示
すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、2以上の無線通信装置は、所定の通信エリア内の無線タグと無線通信するための無線通信処理を行う際に、互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信する。これにより、1つの無線タグにて複数の無線通信装置からの送信波が受信されることとなり、その無線タグの動作に必要な電力が得られやすくなる。このため、無線通信対象の無線タグに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができ、その結果、安定した無線通信を実現することができる。
【0009】
請求項2の発明では、2以上の無線通信装置のうち少なくとも一部は、送信波として無線タグに対して電力を供給するための無変調波を送信する。無変調波は、信号波をのせるために変調した変調波よりも電力密度が高くなるので、無線通信対象の無線タグに対して送信波(無変調波)に応じた電力供給をより確実に行うことができ、より一層安定した無線通信を実現することができる。
【0010】
請求項3の発明では、2以上の無線通信装置のうちいずれか1つは、自ら送信波を送信する送信タイミングごとに残りの無線通信装置に対して送信波の送信に関する送信指示を行い、残りの無線通信装置は、受信した上記送信指示に応じて無線通信処理を行う。これにより、各無線通信装置のチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、各無線通信装置のそれぞれを制御するような上位機器が不要となるだけでなく、特定のチャネルが使用できない状況に変化した場合でも、そのチャネルを避けるように各無線通信装置を制御することができる。
【0011】
請求項4の発明では、2以上の無線通信装置のうちいずれか1つは、残りの無線通信装置に対して少なくとも送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信し、残りの無線通信装置は、受信した制御テーブルに応じて無線通信処理を行う。これにより、各無線通信装置のチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、各無線通信装置のそれぞれを制御するような上位機器が不要となるだけでなく、送信波の送信ごとに他の無線通信装置と通信する必要もないので、装置間の通信頻度を低減することができる。
【0012】
請求項5の発明では、2以上の無線通信装置のうち少なくとも一部は、他の無線通信装置における送信波の送信状況を検知する検知部を備え、無線通信処理を行う際に、検知部による検知結果に応じて、他の無線通信装置と互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信する。これにより、各無線通信装置のチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、各無線通信装置のそれぞれを制御するような上位機器が不要となるだけでなく、他の無線通信装置を制御するためのマスター機となる無線通信装置も不要となる。このため、各無線通信装置の1台が送信波を送信不能に故障等した場合であっても、安定した無線通信を継続することができる。
【0013】
請求項6の発明では、2以上の無線通信装置のそれぞれに対して、送信波の送信に関する送信指示を行う制御装置を備え、2以上の無線通信装置は、制御装置から受信した送信指示に応じて無線通信処理を行う。これにより、全ての無線通信装置での送信波の送信に関する制御を制御装置にて一括して行うことができる。特に、特定のチャネルが使用できない状況に変化した場合でも、そのチャネルを避けるように各無線通信装置を制御することができる。
【0014】
請求項7の発明では、2以上の無線通信装置のそれぞれに対して、少なくとも送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信する制御装置を備え、2以上の無線通信装置は、制御装置から受信した制御テーブルに応じて無線通信処理を行う。これにより、全ての無線通信装置での送信波の送信に関する制御を制御装置にて一括して行うことができる。特に、送信波の送信ごとに制御装置と通信する必要もないので、制御装置との通信頻度を低減することができる。
【0015】
請求項8の発明では、開口部を除いて電波が通過不能に形成される外箱と、電波が通過可能であって開口部を介して外箱内に収容される内箱とが設けられ、所定の通信エリアは、外箱に収容された内箱の内部空間によって構成される。そして、第1無線通信装置のアンテナと第2無線通信装置のアンテナとは、外箱の内面と内箱の外面との間に配置される。
【0016】
これにより、外箱から外方への送信波の漏れが抑制されるので、所定の通信エリア内として内箱の内部空間に配置される無線タグに対して電力供給を確実に行うことができる。特に、外箱の内面近傍では内面での電波の反射に起因してヌル範囲が生じやすくなるが、外箱内に収容される内箱の内部空間が所定の通信エリアとなるため、ヌル範囲が生じやすい外箱の内面近傍から内箱の内部空間(所定の通信エリア)の無線タグを離すことができる。このため、内箱の内部空間に配置される無線タグに対して電力供給を確実に行うことができる。
【0017】
請求項9の発明では、第1無線通信装置のアンテナは、外箱の内底面と内箱の外面との間に配置され、第2無線通信装置のアンテナは、4つの内側面のいずれか1つと内箱の外面との間に配置される。これにより、第1無線通信装置のアンテナから送信される送信波の出力方向と第2無線通信装置のアンテナから送信される送信波の出力方向とがほぼ直交する状態となるため、内箱の内部空間に配置される無線タグの向きによらずその無線タグに対して電力供給を確実に行うことができる。
【0018】
請求項10の発明では、第2無線通信装置のアンテナは、内側面に対して、送信波の出力方向が開口部から離れる方向に傾斜するように配置される。これにより、第2無線通信装置のアンテナが内側面に対して送信波の出力方向が開口部に近づく方向に傾斜する場合と比較して、アンテナから送信された送信波が開口部から漏れ難くなり、所定の通信エリア外に位置する無線タグの誤読を抑制することができる。
【0019】
請求項11の発明では、第1無線通信装置の一方のアンテナと第2無線通信装置の一方のアンテナとが対向し、第1無線通信装置の他方のアンテナと第2無線通信装置の他方のアンテナとが対向するように、4つのアンテナが外箱の内面と内箱の外面との間に配置される。そして、第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置では、第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時であって、第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に、無線通信処理が行われる。
【0020】
これにより、内箱の内部空間(所定の通信エリア内)の無線タグに対して、第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間と、第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間とを設けることができる。特に、向かい合う両アンテナから一定時間以上同時に送信波が送信されるため、電波が強め合いやすくなり、無線タグへの供給電力の増大を図ることができる。このため、所定の通信エリア外に位置する無線タグの誤読を抑制する目的で、各送信波の電波強度を下げたとしても、無線通信対象の無線タグに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができる。
【0021】
請求項12の発明では、第1無線通信装置の一方のアンテナと他方のアンテナとが対向し、第2無線通信装置の一方のアンテナと他方のアンテナとが対向するように、4つのアンテナが外箱の内面と内箱の外面との間に配置される。そして、第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置では、第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時であって、第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に、無線通信処理が行われる。
【0022】
これにより、内箱の内部空間(所定の通信エリア内)の無線タグに対して、第1無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の一方のアンテナから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間と、第1無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波と第2無線通信装置の他方のアンテナから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間とを設けることができる。このため、所定の通信エリア外に位置する無線タグの誤読を抑制する目的で、各送信波の電波強度を下げたとしても、無線通信対象の無線タグに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができる。
【0023】
請求項13の発明では、2以上の無線通信装置は、第1無線通信装置及び第2無線通信装置に加えて、第3無線通信装置を有している。そして、本無線タグシステムは、第1無線通信装置、第2無線通信装置及び第3無線通信装置の無線通信結果を利用して、内箱の内部空間内となる所定の通信エリア内の無線タグから情報を読み取る読取部を備える。そして、第3無線通信装置のアンテナは、外箱の外側に配置される。
【0024】
これにより、第1無線通信装置及び第2無線通信装置だけでなく第3無線通信装置でも読み取られた無線タグを、所定の通信エリア外に位置している可能性が高い無線タグと判断できるので、所定の通信エリア外に位置する無線タグの誤読を抑制することができる。
【0025】
請求項14の発明では、第3無線通信装置のアンテナは、外箱の外側であって開口部の周りに配置されるため、所定の通信エリア外となる開口部の周りの面上に位置するような無線タグに関して、第3無線通信装置が第1無線通信装置及び第2無線通信装置よりも読み取りやすくなる。これにより、開口部の周りの面上に位置する無線タグが第1無線通信装置又は第2無線通信装置に読み取られたことに起因する誤読を抑制することができる。
【0026】
請求項15の発明では、第3無線通信装置のアンテナは、送信波の出力方向が開口部から離れる方向となるように、開口部の開口面に沿う平面に対して傾斜して配置される。これにより、第3無線通信装置は、所定の通信エリア内に位置する無線タグをより読み取り難くなるので、第3無線通信装置の読取結果に起因する誤読を抑制することができる。
【0027】
請求項16の発明では、読取部は、第1無線通信装置、第2無線通信装置及び第3無線通信装置の無線通信結果として受信信号強度(RSSI)を利用して、内箱の内部空間内となる所定の通信エリア内の無線タグから情報を読み取る。第1無線通信装置又は第2無線通信装置では、所定の通信エリア内の無線タグを読み取った際の受信信号強度が所定の通信エリア外の無線タグを読み取った際の受信信号強度よりも高くなり、第3無線通信装置では、所定の通信エリア外の無線タグを読み取った際の受信信号強度が所定の通信エリア内の無線タグを読み取った際の受信信号強度よりも高くなる。このため、全ての無線通信装置にて読み取られた無線タグであっても、第1無線通信装置又は第2無線通信装置にて受信信号強度がより高くなる無線タグを所定の通信エリア内の無線タグと判定し、第3無線通信装置にて受信信号強度がより高くなる無線タグを所定の通信エリア外の無線タグと判定することで、読み取った無線タグが所定の通信エリア内であるか否かを精度良く判定することができる。
【0028】
請求項17の発明では、第1無線通信装置及び第2無線通信装置による無線通信と第3無線通信装置による無線通信とが排他的に行われる。これにより、第1無線通信装置又は第2無線通信装置からの送信波に応じて無線タグにて得られた電力が第3無線通信装置との無線通信時に利用されることもないため、第3無線通信装置の無線通信時に得られる受信信号強度の測定精度が高まるので、読み取った無線タグが所定の通信エリア内であるか否かをより精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図2】
図1の収容箱の部分を断面にて示す説明図である。
【
図3】
図1の収容箱の部分を
図2の断面に対して直交する断面にて示す説明図である。
【
図4】異なるチャネルにてほぼ同時に送信された送信波を無線タグが受信した際に得られる電力を説明する説明図である。
【
図5】第2実施形態において、無変調波と変調された送信波とを無線タグが受信した際に得られる電力を説明する説明図である。
【
図6】第3実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図7】第5実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図8】第6実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図9】
図8の収容箱の部分を開口部側から見た平面図である。
【
図10】第6実施形態の変形例に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図12】第7実施形態に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【
図13】
図12の収容箱の部分を開口部側から見た平面図である。
【
図14】第7実施形態の変形例に係る無線タグシステムの概略構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグシステムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る無線タグシステム10は、所定の通信エリアS内に配置される1又は2以上の無線タグを無線通信対象とする2以上の無線通信装置を備えるシステムとして構成されている。具体的には、
図1に示すように、無線タグシステム10は、所定の通信エリアSを区画するための収容箱20と、2つの無線通信装置(以下、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40ともいう)と、両無線通信装置を管理する制御装置50とを備えている。
【0031】
この無線タグシステム10は、商品販売用のPOSレジシタの近傍に配置されて、収容箱20内の無線タグ(RFIDタグ)Tを無線通信対象とし、無線通信にて無線タグTから読み取った商品関連情報等をPOSレジシタ等に送信するように機能する。このため、POSレジシタ等は、
図2及び
図3からわかるように、無線タグTを付した商品が1又は2以上入れられた買い物かごBを収容箱20に収容することで、商品関連情報等を無線タグシステム10から取得することができる。なお、
図2及び
図3では、無線タグT1を付した商品G1と、無線タグT2を付した商品G2と、無線タグT3を付した商品G3とが買い物かごBに入れられている状態を例示している。
【0032】
まず、収容箱20について、図面を参照して詳述する。
収容箱20は、外箱21及び内箱22と天板23とを備えている。外箱21は、電波が遮断されることで電波が通過不能となる材質、例えば、金属板で構成されている。この外箱21は、上方に開口部21aが形成され、内面として、この開口部21aに対向する方形状の内底面21bと、この内底面21bの四辺にそれぞれ連なる4つの内側面21c~21fとを備えている。各内側面21c~21fは、内側面21cと内側面21eとが対向し内側面21dと内側面21fとが対向した状態で、それぞれの上縁にて開口部21aを構成している。
【0033】
内箱22は、上方から挿入された買い物かごBを収容するために上方が開口した箱であって、買い物かごBを収容するための内部空間が上述した所定の通信エリアSを構成する。この内箱22は、電波が通過可能となる材質、例えば、合成樹脂で構成されている。内箱22は、上方に買い物かごBが挿通可能な開口部22aが形成され、外面として、方形状の外底面22bと、この外底面22bの四辺にそれぞれ連なる4つの外側面22c~22fとを備えるように構成されている。各外側面22c~22fは、それぞれの上縁にて開口部22aを構成している。このように構成される内箱22は、所定の隙間を介して外箱21内に収容され、その収容時に、開口部22aと開口部21aとが略同一平面上に位置し、外底面22bと内底面21bとが対向し、各外側面22c~22fと各内側面21c~21fとがそれぞれ対向するように形成されている。
【0034】
天板23は、電波が遮断されることで電波が通過不能となる材質、例えば、金属板で構成されている。この天板23は、方形状の外縁が外箱21の開口部21aよりも広く、中央近傍に設けられる開口部23aが内箱22の開口部22aとほぼ同じ方形状であって、外箱21とこの外箱21に収容された内箱22との隙間(上方から見た内箱22の周りの四角環状の隙間)を閉塞するように外箱21及び内箱22に組み付けられている。
【0035】
次に、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40について、図面を参照して詳述する。
第1無線通信装置30は、第1制御部31とアンテナ32とを備えている。第1制御部31は、制御装置50からの指示等に応じて、公知の電波方式で伝送を行う回路等を備えるように構成されており、発振器、変調器、増幅器、復調器などを有し、ケーブル33を介してアンテナ32に接続されている。この第1制御部31は、例えば発振器で生成された発振信号を変調器によって変調し、その変調波をアンテナ32を介して送信波(送信電波)として出力し、無線タグTからの電波をアンテナ32を介して受信すると復調器にて復調等することで無線タグTに記録された商品情報等を取得するように構成されている。
【0036】
第2無線通信装置40は、上述した第1制御部31及びアンテナ32と同等の機能を有する第2制御部41及びアンテナ42と両者を接続するケーブル43とを備え、制御装置50からの指示等に応じて、第1無線通信装置30と同等の機能を有する無線通信装置として構成されている。
【0037】
このように構成される第1無線通信装置30のアンテナ32は、内底面21bの中央近傍上にて、送信波の送信方向(
図2の矢印F1参照)が外底面22bに対して直交するように、内底面21bと外底面22bとの間に配置されている。また、第2無線通信装置40のアンテナ42は、内側面21cの中央近傍上にて、送信波の送信方向(
図2の矢印F2参照)が外側面22cに対して直交するように、内側面21cと外側面22cとの間に配置されている。すなわち、第1無線通信装置30のアンテナ32と第2無線通信装置40のアンテナ42とは、送信波の送信方向が互いに直交するように配置されている。
【0038】
このような配置構成等により、内箱22の内部空間にて構成される所定の通信エリアS内の無線タグTに対して安定した無線通信を実現でき、無線タグTの読取成功率を高めることができる。外箱21の内面近傍ではその内面での電波の反射に起因してヌル範囲が生じやすくなるが、外箱21内に収容される内箱22内が所定の通信エリアSとなるため、ヌル範囲が生じやすい外箱21の内面近傍から内箱22内(所定の通信エリアS内)の無線タグTを離すことができるからである。また、天板23により、外箱21の開口部21aを介した外方への送信波の漏れが抑制できるからである。
【0039】
次に、収容箱20に収容された買い物かごB内の無線タグTを読み取る際に制御装置50と第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40とにおいてなされる処理について、図面を参照して説明する。
制御装置50は、買い物かごBが収容箱20に収容された状態になると、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれに対して、無線通信処理を開始するための指示(送信波の送信に関する送信指示)を所定の間隔にて所定時間繰り返し行う。
【0040】
具体的には、制御装置50は、23チャネル(23CH:920.4MHz)にて送信波を一定時間以上送信するための送信指示を第1無線通信装置30に対して出力し、この23チャネルに干渉しない32チャネル(32CH:922MHz)にて送信波を一定時間以上送信するための送信指示を第2無線通信装置40に対して出力する。特に、制御装置50は、第1無線通信装置30に対する送信指示と第2無線通信装置40に対する送信指示とを同時に行う。
【0041】
なお、制御装置50は、収容箱20に設けられるセンサ等を利用して買い物かごBが収容箱20に収容された状態を検知することで自動的に上記送信指示を行ってもよいし、買い物かごBが収容箱20に収容された後の所定の操作等に応じて上記送信指示を行ってもよい。
【0042】
第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、制御装置50からの送信指示に応じて所定の通信エリアS内の無線タグTと無線通信するための無線通信処理をほぼ同時に行う。このため、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、互いに一定以上離れた異なるチャネルにてほぼ同時であって一定時間以上同時に送信波を送信する。
【0043】
このように、異なるチャネルにてほぼ同時に送信波を送信する理由について、
図4を参照して説明する。
図4は、異なるチャネルにてほぼ同時に送信された送信波を無線タグTが受信した際に得られる電力を説明する説明図であり、縦軸は無線タグTが得られる電力を示し、横軸は送信波の周波数を示す。
【0044】
無線タグTは、無線通信装置から送信波を受信することで、無線タグとしての動作に必要な電力を得る。このため、第1無線通信装置30から送信波が単に送信されただけでは、ヌル範囲の影響や電波の干渉等のために、無線通信対象の無線タグTが送信波から必要な電力を得ることができない場合がある。同様に、第2無線通信装置40から送信波が単に送信されただけでも、無線通信対象の無線タグTが送信波から必要な電力を得ることができない場合がある。
【0045】
一方、第1無線通信装置30からの送信波と第2無線通信装置40からの送信波とを異なるチャネルにてほぼ同時に送信すると、無線タグTの周波数帯域幅は広範囲であるため、無線タグTは、両送信波をほぼ同時に受信可能となる。すなわち、
図4に示すように、第1無線通信装置30からの送信波を受信したことによる電力供給(
図4の符号P1参照)と第2無線通信装置40からの送信波を受信したことによる電力供給(
図4の符号P2参照)とがほぼ同時になされるため、無線タグTは、無線タグとしての動作に必要な電力を確実に得ることができる。この場合、無線タグTは、受信した送信波が強い無線通信装置に対して、必要なデータ等を送信するように返信する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る無線タグシステム10では、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、所定の通信エリアS内の無線タグTと無線通信するための無線通信処理を行う際に、互いに一定以上離れた異なるチャネルにてほぼ同時に(一定時間以上同時に)送信波を送信する。
【0047】
これにより、1つの無線タグTにて第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40からの送信波が受信されることとなり、その無線タグの動作に必要な電力が得られやすくなる。このため、無線通信対象の無線タグTに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができ、その結果、安定した無線通信を実現することができる。
【0048】
特に、無線タグシステム10は、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれに対して、送信波の送信に関する送信指示を行う制御装置50を備え、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、制御装置50から受信した送信指示に応じて無線通信処理を行う。これにより、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40での送信波の送信に関する制御を制御装置50にて一括して行うことができる。特に、特定のチャネルが使用できない状況に変化した場合でも、その状況を制御装置50が把握することで、そのチャネルを避けるように第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40を制御することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る無線タグシステム10では、開口部21aを除いて電波が通過不能に形成される外箱21と、電波が通過可能であって開口部21aを介して外箱21内に収容される内箱22とが設けられ、所定の通信エリアSは、外箱21に収容された内箱22の内部空間によって構成される。そして、第1無線通信装置30のアンテナ32と第2無線通信装置40のアンテナ42とは、外箱21の内面と内箱22の外面との間に配置される。
【0050】
これにより、外箱21から外方への送信波の漏れが抑制されるので、所定の通信エリアS内として内箱22の内部空間に配置される無線タグTに対して電力供給を確実に行うことができる。特に、外箱21の内面近傍では内面での電波の反射に起因してヌル範囲が生じやすくなるが、外箱21内に収容される内箱22の内部空間が所定の通信エリアSとなるため、ヌル範囲が生じやすい外箱の内面近傍から内箱22の内部空間(所定の通信エリア内)の無線タグTを離すことができる。このため、内箱22の内部空間に配置される無線タグTに対して電力供給を確実に行うことができる。
【0051】
特に、第1無線通信装置30のアンテナ32は、外箱21の内底面21bと内箱22の外底面22bとの間に配置され、第2無線通信装置40のアンテナ42は、外箱21の内側面21cと内箱22の外側面22cとの間に配置される。これにより、第1無線通信装置30のアンテナ32から送信される送信波の出力方向と第2無線通信装置40のアンテナ42から送信される送信波の出力方向とがほぼ直交する状態となるため、内箱22の内部空間に配置される無線タグTの向きによらずその無線タグTに対して電力供給を確実に行うことができる。
【0052】
なお、第2無線通信装置40のアンテナ42は、外箱21の内側面21cと内箱22の外側面22cとの間に配置されることに限らず、外箱21の内側面21dと内箱22の外側面22dとの間、外箱21の内側面21eと内箱22の外側面22eとの間、外箱21の内側面21fと内箱22の外側面22fとの間のいずれかに配置されてもよい。また、第1無線通信装置30のアンテナ32は、外箱21の内底面21bと内箱22の外底面22bとの間に配置されることに限らず、アンテナ42に対して対向するように外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置されてもよいし、送信波の出力方向がアンテナ42に対して直交するように外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置されてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、1つの無線通信装置から送信波として無変調波を送信する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
無線タグTと無線通信するために送信される送信波は、信号波をのせるために変調されており、電力供給の面からすると無変調波に対して供給効率が悪くなる。そこで、本実施形態では、電力供給効率を高めやすくするため、一方の無線通信装置は、無線通信用に変調された送信波を送信し、他方の無線通信装置は、無線タグTに対して電力を供給するための無変調波を送信波として送信する。
【0055】
無変調波は、信号波をのせるために変調した変調波よりも電力密度が高くなるので、無線通信対象の無線タグTに対して無変調波に応じた電力供給をより確実に行うことができ、より一層安定した無線通信を実現することができるからである。
【0056】
本実施形態では、第2無線通信装置40が無変調波を送信するように構成されている。このため、無線タグTは、
図5からわかるように、第1無線通信装置30からの変調された送信波を受信したことによる電力供給(
図5の符号P1参照)と第2無線通信装置40からの無変調波を受信したことによる電力供給(
図5の符号P2参照)とをうけることができる。
【0057】
なお、無変調波を送信する無線通信装置は、上述したように第2無線通信装置40であることに限らず、第1無線通信装置30であってもよい。
【0058】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第3実施形態では、第1無線通信装置30をマスター機、第2無線通信装置40をスレーブ機として構成する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、
図6に示すように、第1無線通信装置30がマスター機、第2無線通信装置40がスレーブ機として構成されて、第1無線通信装置30から第2無線通信装置40に対して上記送信指示がなされる。すなわち、第1無線通信装置30は、自ら送信波を送信する送信タイミングごとに第2無線通信装置40に対して上記送信指示を行い、第2無線通信装置40は、受信した上記送信指示に応じて無線通信処理を行う。なお、本実施形態では、制御装置50は、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40での無線通信処理にて得られたデータ等を第1無線通信装置30からまとめて受信するように構成されている。
【0060】
このようにしても、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40におけるチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれを制御するような上位機器が不要となるだけでなく、特定のチャネルが使用できない状況に変化した場合でも、その状況を第1無線通信装置30が把握することで、そのチャネルを避けるように第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40を制御することができる。
【0061】
本第3実施形態の第1変形例として、第1無線通信装置30が第2無線通信装置40に対して少なくとも送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信し、第2無線通信装置40が受信した制御テーブルに応じて無線通信処理を行うように構成されてもよい。このようにしても、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれを制御するような上位機器が不要となるだけでなく、送信波の送信ごとに第1無線通信装置30と第2無線通信装置40とが通信する必要もないので、装置間の通信頻度を低減することができる。
【0062】
なお、上記第3実施形態の第1変形例に係る特徴的構成を第1実施形態に適用してもよい。すなわち、上記第1実施形態の第1変形例として、制御装置50は、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれに対して、少なくとも送信波のチャネル及び送信時間をタイムスケジュール化した制御テーブルを送信し、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、制御装置50から受信した制御テーブルに応じて無線通信処理を行うように構成されてもよい。これにより、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、送信波の送信ごとに制御装置50と通信する必要もないので、制御装置50との通信頻度を低減することができる。
【0063】
なお、第2無線通信装置40がマスター機、第1無線通信装置30がスレーブ機とされてもよく、各無線通信装置の1つをマスター機、残りをスレーブ機とする本実施形態及び変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0064】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第4実施形態では、第1無線通信装置30が第2無線通信装置40における送信波の送信状況等を検知してその検知結果に応じて無線通信処理を行う点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、第1無線通信装置30の第1制御部31は、第2無線通信装置40における送信波のチャネル等の送信状況を、検知部による検知結果に応じて検知可能に構成されている。この検知部は、第2無線通信装置40から送信される送信波を受信して解析等することで、上記送信状況を検知する。そして、第1無線通信装置30は、無線通信処理を行う際に、検知部による検知結果に応じて、第2無線通信装置40と互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信する。
【0066】
このようしても、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のチャネルや送信時間を容易に制御することができる。特に、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40のそれぞれを制御するような上位機器が不要とすることができるだけでなく、他の無線通信装置を制御するためのマスター機となる無線通信装置も不要とすることができる。なお、後述するように、3つ以上の無線通信装置を採用する場合には、少なくとも一部の無線通信装置が上記検知部を備えることで、各無線通信装置の1台が送信波を送信不能に故障等した場合であっても、安定した無線通信を継続することができる。
【0067】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第5実施形態では、外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置されるアンテナを傾斜配置する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
収容箱20には、買い物かごBを収容するために開口部23aが形成されるため、この開口部23aから電波(送信波)が漏れる場合がある。特に、送信波が天板23に沿うように開口部23aから漏れてしまうと、例えば、隣のPOSレジシタで処理している商品に付された無線タグ(無線通信対象でない無線タグ)を誤読してしまう可能性がある。
【0069】
そこで、本実施形態では、第2無線通信装置40のアンテナ42は、内側面に対して、送信波の出力方向が開口部23aから離れる方向に傾斜するように配置される。具体的には、
図7に示すように、アンテナ42は、内側面21cに対して、送信波の出力方向(
図7の矢印F2参照)が開口部23aから離れる下方向に傾斜するように配置される。
【0070】
これにより、第2無線通信装置40のアンテナ42が内側面に対して送信波の出力方向が開口部23aに近づく方向に傾斜する場合と比較して、アンテナ42から送信された送信波が開口部23aから天板23に沿うように漏れ難くなり、所定の通信エリアS外に位置する無線タグの誤読を抑制することができる。
【0071】
なお、外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置されるアンテナを傾斜配置する本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0072】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第6実施形態では、所定の通信エリアSの四方のそれぞれにアンテナが配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、
図8及び
図9に示すように、第1無線通信装置30は、2つのアンテナ32a,32bを備え、第2無線通信装置40は、2つのアンテナ42a,42bを備えるように構成されている。
【0074】
具体的には、アンテナ32aは、内側面21eの中央近傍上にて、送信波の送信方向が外側面22eに直交するように、内側面21eと外側面22eとの間に配置されている。また、アンテナ32bは、内側面21dの中央近傍上にて、送信波の送信方向が外側面22dに直交するように、内側面21dと外側面22dとの間に配置されている。また、アンテナ42aは、内側面21cの中央近傍上にて、送信波の送信方向が外側面22cに直交するように、内側面21cと外側面22cとの間に配置されている。また、アンテナ42bは、内側面21fの中央近傍上にて、送信波の送信方向が外側面22fに直交するように、内側面21fと外側面22fとの間に配置されている。すなわち、アンテナ32aとアンテナ42aとが対向し、アンテナ32bとアンテナ42bとが対向するように、4つのアンテナが外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置される。なお、アンテナ32aは、「第1無線通信装置の一方のアンテナ」の一例に相当し、アンテナ32bは、「第1無線通信装置の他方のアンテナ」の一例に相当し得る。また、アンテナ42aは、「第2無線通信装置の一方のアンテナ」の一例に相当し、アンテナ42bは、「第2無線通信装置の他方のアンテナ」の一例に相当し得る。
【0075】
そして、制御装置50は、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40に対して、アンテナ32aを利用した送信指示とアンテナ42aを利用した送信指示とを同時に行う処理と、アンテナ32bを利用した送信指示とアンテナ42bを利用した送信指示とを同時に行う処理とを所定間隔にて交互に繰り返す。
【0076】
第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40は、アンテナ32aから送信される送信波とアンテナ42aから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時であって、アンテナ32bから送信される送信波とアンテナ42bから送信される送信波とが互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に、無線通信処理を行う。
【0077】
これにより、内箱22の内部空間にて構成される所定の通信エリアS内の無線タグTに対して、アンテナ32aから送信される送信波とアンテナ42aから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間と、アンテナ32bから送信される送信波とアンテナ42bから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間とを繰り返し設けることができる。特に、向かい合う両アンテナから一定時間以上同時に送信波が送信されるため、電波が強め合いやすくなり、無線タグTへの供給電力の増大を図ることができる。このため、所定の通信エリアS外に位置する無線タグTの誤読を抑制する目的で、各送信波の電波強度を下げたとしても、無線通信対象の無線タグTに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができる。
【0078】
本実施形態の変形例として、
図10に示すように、アンテナ32aとアンテナ32bとが対向し、アンテナ42aとアンテナ42bとが対向するように、4つのアンテナが外箱21の内側面と内箱22の外側面との間に配置されてもよい。このようにしても、内箱22の内部空間にて構成される所定の通信エリアS内の無線タグTに対して、アンテナ32aから送信される送信波とアンテナ42aから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間と、アンテナ32bから送信される送信波とアンテナ42bから送信される送信波とによって電力供給が行われる期間とを繰り返し設けることができる。このため、所定の通信エリアS外に位置する無線タグTの誤読を抑制する目的で、各送信波の電波強度を下げたとしても、無線通信対象の無線タグTに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができる。
【0079】
なお、所定の通信エリアSの四方のそれぞれにアンテナを配置する本実施形態及び変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0080】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る無線タグシステムについて、図面を参照して説明する。
本第7実施形態では、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40に加えて第3無線通信装置60が採用される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、
図12に示すように、無線タグシステム10は、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40に加えて新たに第3無線通信装置60を備えるように構成されている。第3無線通信装置60は、上述した第1制御部31及びアンテナ32と同等の機能を有する第3制御部61及びアンテナ62a~62cと両者を接続するケーブル63とを備え、制御装置50からの指示等に応じて、第1無線通信装置30と同等の機能を有する無線通信装置として構成されている。
【0082】
各アンテナ62a~62cは、所定の通信エリアS外に位置する無線タグTを読み取るため、
図13に示すように、外箱21の外側であって開口部21aの周りとなる位置に配置されている。具体的には、アンテナ62aは、無線タグTが付された商品を内箱22内に入れるユーザが立つ位置側の天板23の下面に設けられて、送信波の送信方向が上向きとなるように配置されている。また、アンテナ62b,62cは、開口部21aを介して対向するように天板23の下面に設けられて、送信波の送信方向がそれぞれ上向きとなるように配置されている。
【0083】
このように各アンテナ62a~62cが配置されることで、所定の通信エリアS外となる開口部21aの周りの面上に位置するような無線タグ(
図12の符号Ta参照)に関して、第3無線通信装置60が第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40よりも読み取りやすくなる。これにより、開口部21aの周りの面上に位置する無線タグT(Ta)が第1無線通信装置30又は第2無線通信装置40に読み取られたことに起因する誤読を抑制することができる。
【0084】
そして、本実施形態では、制御装置50は、第1無線通信装置30、第2無線通信装置40及び第3無線通信装置60の無線通信結果として受信信号強度(RSSI)を利用して、内箱22の内部空間内となる所定の通信エリアS内の無線タグTから情報を読み取る読取部として機能する。上述のように各アンテナが配置されているため、第1無線通信装置30又は第2無線通信装置40では、所定の通信エリアS内の無線タグT(T1~T3)を読み取った際の受信信号強度が所定の通信エリアS外の無線タグT(Ta)を読み取った際の受信信号強度よりも高くなり、第3無線通信装置60では、所定の通信エリアS外の無線タグT(Ta)を読み取った際の受信信号強度が所定の通信エリアS内の無線タグT(T1~T3)を読み取った際の受信信号強度よりも高くなる。
【0085】
このため、全ての無線通信装置にて読み取られた無線タグTであっても、第1無線通信装置30又は第2無線通信装置40にて受信信号強度がより高くなる無線タグTを所定の通信エリアS内の無線タグTと判定し、第3無線通信装置60にて受信信号強度がより高くなる無線タグTを所定の通信エリアS外の無線タグTと判定することで、読み取った無線タグTが所定の通信エリアS内であるか否かを精度良く判定することができる。
【0086】
特に、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40による無線通信が実施される時間帯と第3無線通信装置60による無線通信が実施される時間帯とを交互に繰り返すことで、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40による無線通信と第3無線通信装置60による無線通信とを排他的に行うことができる。これにより、第1無線通信装置30又は第2無線通信装置40からの送信波に応じて無線タグTにて得られた電力が第3無線通信装置60との無線通信時に利用されることもないため、第3無線通信装置60の無線通信時に得られる受信信号強度の測定精度が高まるので、読み取った無線タグTが所定の通信エリアS内であるか否かをより精度良く判定することができる。
【0087】
なお、第3無線通信装置60は、上述したアンテナ62a~62cを有するように構成されることに限らず、1又は2以上のアンテナが所定の通信エリアS内に位置する無線タグTをより読み取り難くなるように、外箱21の外側に配置されて構成されてもよい。このようにしても、第1無線通信装置30及び第2無線通信装置40だけでなく第3無線通信装置60でも読み取られた無線タグTを、所定の通信エリアS外に位置している可能性が高い無線タグTと判断できるので、所定の通信エリアS外に位置する無線タグTの誤読を抑制することができる。
【0088】
具体的には、例えば、
図14に例示する本実施形態の変形例のように、第3無線通信装置60のアンテナ62は、送信波の出力方向が開口部21aから離れる方向となるように、開口部21aの開口面に沿う平面に対して傾斜して配置されてもよい。これにより、第3無線通信装置60は、所定の通信エリアS内に位置する無線タグTをより読み取り難くなるので、第3無線通信装置60の読取結果に起因する誤読を抑制することができる。
【0089】
なお、新たに第3無線通信装置60を採用する本実施形態及び変形例の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0090】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)所定の通信エリアSは、開口部23aにて上方が開口する収容箱20によって構成されることに限らず、他の面の少なくとも一部が開口する収容箱によって構成されてもよい。例えば、
図11に例示するように、上方から側面にかけて開口部24として開口する収容箱20aによって構成されてもよい。また、収容箱は底面が方形状に形成されることに限らず、例えば、多角形状や円形状等に形成されてもよい。また、所定の通信エリアSは、収容箱20,20aなど、壁面等で明確に区画された内部空間によって構成されることに限らず、壁面等で明確に区画されない空間の一部によって構成されてもよい。
【0091】
(2)本発明は、2つの無線通信装置30,40を有する無線タグシステム10に適用されることに限らず、3つ以上の無線通信装置を有する無線タグシステムに適用されてもよい。このような構成では、各無線通信装置は、所定の通信エリアS内の無線タグTと無線通信するための無線通信処理を行う際に、互いに一定以上離れた異なるチャネルにて一定時間以上同時に送信波を送信する。このようにしても、1つの無線タグTにて複数の無線通信装置からの送信波が受信されることとなり、その無線タグの動作に必要な電力が得られやすくなる。このため、無線通信対象の無線タグTに対して送信波に応じた電力供給を確実に行うことができ、その結果、安定した無線通信を実現することができる。
【0092】
(3)また、本発明は、商品販売用の無線タグシステムに適用されることに限らず、比較的狭い範囲に設定された所定の通信エリア内の無線タグを無線通信対象とする無線タグシステムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…無線タグシステム
20,20a…収容箱
21…外箱
22…内箱
30…第1無線通信装置
32,32a,32b…アンテナ
40…第2無線通信装置
42,42a,42b…アンテナ
50…制御装置
60…第3無線通信装置
62,62a~62c…アンテナ
B…買い物かご
S…所定の通信エリア
T,T1~T3…無線タグ