IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-センサー装置 図1
  • 特許-センサー装置 図2
  • 特許-センサー装置 図3
  • 特許-センサー装置 図4
  • 特許-センサー装置 図5
  • 特許-センサー装置 図6
  • 特許-センサー装置 図7
  • 特許-センサー装置 図8
  • 特許-センサー装置 図9
  • 特許-センサー装置 図10
  • 特許-センサー装置 図11
  • 特許-センサー装置 図12
  • 特許-センサー装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】センサー装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240131BHJP
   G01S 13/62 20060101ALI20240131BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01S7/02 210
G01S13/62
G06F3/01 570
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019236193
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105536
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 祐吾
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-236660(JP,A)
【文献】特開2010-204079(JP,A)
【文献】特開2007-130245(JP,A)
【文献】特開2010-025737(JP,A)
【文献】特表2016-540960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイング運動をする検出対象に向けて搬送波を送信する送信アンテナと、
それぞれ異なる位置に配置され、検出対象からの前記搬送波の反射波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナで受信した前記反射波の相関関係を解析することで、少なくとも検出対象のスイング運動の方向を推定する解析部と、
を備え
前記解析部は、それぞれの前記受信アンテナに到達した前記反射波の周波数について、各受信アンテナ間の相関関係を解析することで、前記方向を推定する、
センサー装置。
【請求項2】
スイング運動をする検出対象に向けて搬送波を送信する送信アンテナと、
それぞれ異なる位置に配置され、検出対象からの前記搬送波の反射波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナで受信した前記反射波の相関関係を解析することで、少なくとも検出対象のスイング運動の方向を推定する解析部と、
を備え、
前記受信アンテナは、4つ以上であり、全てが同一平面上には並ばないように配置されている、
ンサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象のスイング運動の方向を検出可能なセンサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人物などの検出対象の動きを検出するモーションセンサー装置がある。モーションセンサー装置のタイプは、検出対象に加速度センサーやジャイロセンサーを設置するタイプや、カメラで取得される動画像を処理するタイプが主流である。
【0003】
また、モーションセンサー装置のタイプとして、検出対象に無線信号を送信し、検出対象による反射信号を受信し、受信信号を解析することで検出対象の動きを検出するタイプのものがある。この種のタイプは、例えば特許文献1などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-517885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検出対象に加速度センサーやジャイロセンサーを設置するタイプのセンサー装置は、検出対象自体に装置を設置しなければならないので、適用範囲が限定される欠点がある。例えば、検出対象が指などの場合には不向きである。
【0006】
また、動画像を処理するタイプのセンサー装置は、フレームレートの観点から、高速な検出対象を検出する用途に不向きである欠点がある。因みに、フレームレートが高いハイスピードカメラを用いれば高速な検出対象にも対応できるが、ハイスピードカメラは高価なので、何時でも用意できるとは限らない。加えて、ハイスピードカメラで撮影された高レートの画像データから検出対象を抽出し、そのモーションを推定する信号処理も複雑で高度な処理となり、リアルタイム性を持たせることが困難である。
【0007】
また、特許文献1に記載されているような無線を用いたセンサー装置は、加速度センサーやジャイロセンサーを設置するタイプのセンサー装置や、動画像を処理するタイプのセンサー装置における上記欠点を克服できると考えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のセンサー装置は、検出対象の複数個所の速度を検出し、各速度の差を積分することで、各箇所の運動軌道を求めるように構成されており、演算量が多くなる欠点がある。また、特許文献1のセンサー装置は、実際上、レーダー信号を用いることが前提となっているので、変調器などが必要となり、その分構成が複雑となる。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、検出対象のスイング運動の方向を簡易な構成で検出可能なセンサー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のセンサー装置の一つの態様は、
スイング運動をする検出対象に向けて搬送波を送信する送信アンテナと、
それぞれ異なる位置に配置され、検出対象からの前記搬送波の反射波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナで受信した前記反射波の相関関係を解析することで、少なくとも検出対象のスイング運動の方向を推定する解析部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出対象のスイング運動の方向を簡易な構成で検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態によるセンサー装置の外観構成図
図2】センサー装置の内部構成を示すブロック図
図3】スイング動作解析部の処理手順を示すフローチャート
図4図4Aは検出対象(指)を比較的速くスイング運動させた場合に得られた時間-周波数解析の一例を示す図、図4Bは検出対象(指)を比較的遅くスイング運動させた場合に得られた時間-周波数解析の一例を示す図
図5図5Aは受信アンテナの配置例を示す図、図5Bは検出対象のスイング運動方向φを示す図
図6】検出対象が振り上げられるようにスイングした場合の説明に供する図
図7図7A及び図7Bは検出対象が振り上げられるようにスイングした場合の説明に供する図
図8】検出対象が振り下げられるようにスイングした場合の説明に供する図
図9図9A及び図9Bは検出対象が振り下げられるようにスイングした場合の説明に供する図
図10】センサー装置の他の構成例1を示すブロック図
図11】センサー装置の他の構成例2を示すブロック図
図12】センサー装置の他の構成例3を示すブロック図
図13】センサー装置の他の構成例4を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
<1>基本構成
図1は、実施の形態によるセンサー装置100の外観構成図である。センサー装置100は、例えばモーションセンサーと呼ばれるものである。センサー装置100は例えば表示装置(図示せず)に接続され、表示装置はセンサー装置100によって検出された指の移動方向に応じて表示画像をスイープさせる。ただし、センサー装置100の適用範囲はこれに限らず、検出対象の動きを検出する装置として広く適用可能である。
【0015】
センサー装置100の同一面には、送信アンテナTx1、受信アンテナRx1~Rx3が配設されている。センサー装置100は、送信アンテナTx1及び受信アンテナRx1~3に対向する位置に存在する検出対象の動きを検出する。
【0016】
送信アンテナTx1は、スイング運動する検出対象(本実施の形態の場合は指)に向けて搬送波を放射する。受信アンテナRx1~Rx3は、検出対象からの反射波を受信する。
【0017】
なお、本実施の形態では、検出対象が指であるが、検出対象は指に限らない。また、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1~Rx3は、必ずしも同一面に配設される必要はない。ただし、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1~Rx3は、検出対象に対して対向する位置に配設されることが好ましい。また、送信アンテナは2つ以上でもよく、受信アンテナは4つ以上であってもよい。
【0018】
図2は、センサー装置100の内部構成を示すブロック図である。
【0019】
送信アンテナTx1には、オシレーター101によって生成された24GHzの搬送波がパワーアンプ102を介して入力される。これにより、送信アンテナTx1は、検出対象に向けて24GHzの搬送波を連続的に放射する。
【0020】
送信アンテナTx1より放射された搬送波はスイング運動中の検出対象(指)に到達し、検出対象に到達した搬送波の一部が反射波として検出対象からセンサー装置100側に反射される。このとき、反射波の周波数は、検出対象の運動速度に従い、元の搬送波の周波数からシフトする。
【0021】
受信アンテナRx1~Rx3から出力される受信信号は、それぞれローノイズアンプ(LNA)111~113で増幅された後、ミキサー121~123に入力される。ミキサー121~123は、受信信号に搬送波信号を乗算することにより、受信信号を0Hzにダウンコンバートする。
【0022】
ダウンコンバートされた受信信号は、帯域通過フィルター(BPF)131~133によって、検出対象の想定速度(例えば10~40km/h)に由来するドップラー周波数以外の周波数成分が除去された後、アナログデジタル変換器(ADC)141~143を介してスイング動作解析部150に入力される。帯域通過フィルター(BPF)131~133の通過帯域は、例えば500Hz~2kHzとされている。
【0023】
スイング動作解析部150は、アナログデジタル変換器(ADC)141~143から出力された受信信号データを解析することにより、検出対象のスイング方向とスイング速度を推定する。
【0024】
<2>スイング動作解析部150の処理
図3は、スイング動作解析部150の処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
スイング動作解析部150は、ステップS1において、受信信号の振幅値が所定の閾値よりも大きいか否か判定する。具体的には、時々刻々と連続的に取得され続ける受信信号データを特定期間ごとに切出し、切出された受信信号データの値が所定の閾値を超えているか否か行う。ここで、ステップS1において肯定結果が得られる(ステップS1;YES)ということは、検出対象がスイング動作している可能性があること意味する。スイング動作解析部150は、ステップS1において肯定結果を得た場合、ステップS2に移る。ステップS1の処理は、各アナログデジタル変換器(ADC)141~143の出力である各受信信号データそれぞれに対して行われる。
【0026】
スイング動作解析部150は、ステップS2において、ステップS1で肯定結果が得られた受信信号データに対して(つまりスイング動作が検出された可能性がある受信信号データに対して)、時間-周波数解析を実行する。本実施の形態の場合、スイング動作解析部150は、連続ウェーブレット変換を行うことで、時間-周波数解析を実行する。また、本実施の形態の場合、連続ウェーブレット変換に使用するマザーウェーブレット関数として、検出対象のスイング動作に最適化された複素モルレー関数を用いる。なお、時間-周波数解析の方法は、必ずしもこれに限らない。
【0027】
図4Aは検出対象(指)を比較的速くスイング運動させた場合に得られた受信信号データに対して、連続ウェーブレット変換による時間-周波数解析を行ったときの解析結果をヒートマップ(スペクトログラム)で示した図である。一方、図4Bは検出対象(指)を比較的遅くスイング運動させた場合に得られた受信信号データに対して、連続ウェーブレット変換による時間-周波数解析を行ったときの解析結果をヒートマップ(スペクトログラム)で示した図である。なお、図4において、縦軸は速度(m/s)となっているが、縦軸は周波数(つまりドップラー周波数)と考えてよい。
【0028】
実施の形態の場合には、3つの受信アンテナRx1~Rx3を用いて3つの受信信号を取得するので、スイング動作解析部150は、各受信信号について図4に示したスペクトルグラムを得る。このスペクトルグラム中の最大スペクトルの発生時刻(換言すれば、周波数が最大を示す時刻)がスイングに起因する反射波の受信時刻に相当する。
【0029】
スイング動作解析部150は、続くステップS3において、受信信号ごとの解析結果より最大スペクトルを検出するとともに、最大スペクトルの発生時刻、周波数及び又は振幅をそれぞれ抽出する。具体的には、スイング動作解析部150は、図4のように時間-周波数次元上に展開されたスペクトルの中から、振幅が最大を示すポイントを検出し、検出された最大スペクトルの発生時刻、周波数及び又は振幅を抽出する。
【0030】
スイング動作解析部150は、続くステップS4において、ステップS3で抽出した最大スペクトルの時刻、周波数及び又は振幅が、所定の範囲内にあるか否か判定する。具体的には、ステップS3の処理は、時間的に前後して切出された特定期間の受信信号データを対して行われ、ステップS4では、時間的に前後する期間についての最大スペクトルの発生時刻、周波数及び又は振幅が所定の範囲内にあるか否か判定する。
【0031】
スイング動作解析部150は、ステップS4では、時間的に前後する期間についての最大スペクトルの発生時刻、周波数及び又は振幅が所定の範囲内にあるか否か判定し、否定結果を得た場合(ステップS4;NO)にはステップS5に移り、肯定結果を得た場合(ステップS4;YES)にはステップS1に戻る。因みに、ステップS4の判定は、検出された最大スペクトルが検出対象の運動により発生したスペクトルか否かを判定していると言うこともできる。
【0032】
実際上、ステップS4では、最大スペクトルの発生時刻、周波数及び振幅のうちのいずれか一つ又は2つ以上を組み合わせて用いた判定を行うことができる。例えば、最大スペクトルの発生時刻を用い、時間的に前後する期間についての最大スペクトルの発生時刻の差が所定の範囲内にないとき(つまり発生時刻の差が所定値よりも大きいとき)、このことは検出対象が動いた可能性が高いことを意味するので、ステップS5に移って、検出対象が動いた速度及び方向の推定処理を行う。同様に、例えば、最大スペクトルの周波数を用い、時間的に前後する期間についての最大スペクトルの周波数の差が所定の範囲内にないとき(つまり周波数の差が所定値よりも大きいとき)、このことは検出対象が動いた可能性が高いことを意味するので、ステップS5に移って、検出対象が動いた速度及び方向の推定処理を行うことができる。同様に、例えば、最大スペクトルの振幅を用い、時間的に前後する期間についての最大スペクトルの振幅の差が所定の範囲内にないとき(つまり振幅の差が所定値よりも大きいとき)、このことは検出対象が動いた可能性が高いことを意味するので、ステップS5に移って、検出対象が動いた速度及び方向の推定処理を行うことができる。
【0033】
ここで、図4の処理例では、ステップS1で検出対象が動いた可能性があるかを大まかに判定し、ステップS4で検出対象が動いた可能性があるかをより厳密に判定してから、ステップS5の推定処理に移るようになっている。このようにすることで、全ての受信信号データに対してステップS5の推定処理を行う場合よりも演算量を削減できるようになる。なお、場合によってはステップS1やステップS4の判定処理を省略してもよい。ただし、このようにすると、演算量が増加する可能性が高い。因みに、ステップS1の判定を行うことでそれに続くステップS2及びS3の処理量を削減でき、ステップS4の判定を行うことでそれに続くステップS5の処理量を削減できる。
【0034】
スイング動作解析部150は、ステップS5において、受信信号ごとの最大スペクトルの周波数に基づいて解析対象のスイング速度を推定するとともに、最大スペクトルの発生時刻と受信アンテナの配置の関係とに基づいてスイング方向を推定する。
【0035】
具体的には、スイング動作解析部150は、検出対象の速度の導出する際には、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3ごとに受信された受信信号の最大スペクトル周波数がそれぞれf,f,fであるとすると、次式に従い、3つの周波数の平均値を代表値として求め、搬送波の波長λ(本実施の形態の場合、搬送波周波数が24GHzなのでλ≒1.25cm)を用いてスペクトル周波数を速度vに換算する。
【0036】
【数1】
【0037】
また、スイング動作解析部150は、スイング方向の推定する際には、最大スペクトルの発生時刻に加えて、受信アンテナの物理的な配置位置も考慮に入れてスイング方向を推定する。仮に受信アンテナRx1、Rx2、Rx3の配置関係が図5Aのような関係にあるとすると、検出対象のスイング運動方向φ(図5B)は、受信アンテナRx1、Rx2、Rx3ごとに受信された受信信号の最大スペクトラム時刻t,t,tより、次式を用いて導出することができる。
【0038】
【数2】
【0039】
<3>スイング運動方向の検出原理
次に、スイング動作解析部150で行うスイング運動方向の検出の原理について説明する。ここでは、説明を簡単化するために、図6に示したように、送信アンテナが1つであり、受信アンテナが2つの場合を例にとって説明する。
【0040】
まず、図6に示すように、検出対象が振り上げられるようにスイングした場合に、受信アンテナRx1、Rx2で受信される反射波の電力が、どのように変化していくか考えてみる。
【0041】
スイング運動により時々刻々と変化していく検出対象の角度に伴い、各受信アンテナRx1、Rx2で受信される反射波の電力も変化していく。そして、検出対象の反射に特殊な指向性が存在しない限り、まず、図7Aに示したように、検出対象から伸びる垂線が、送信アンテナTx1-検出対象-受信アンテナRx2がなす角を二等分する位置関係となった時点で、受信アンテナR2側の受信電力がピークとなる。
【0042】
その後、スイング動作が、さらに進んでいくと、図7Bに示したように、検出対象から伸びる垂線が、送信アンテナTx1-検出対象-受信アンテナRx1がなす角を2等分する位置関係となり、この時点で、受信アンテナR1側の受信電力も受信アンテナRx2側から遅れる形でピークとなる。
【0043】
図8に示したように、逆に検出対象が振り下げられるようにスイングした場合についても同様に考えることができる。つまり、図9A及び図9Bから明らかなように、検出対象が振り上げられた場合とは逆に、受信アンテナRx1側の受信信号の方が、受信アンテナRx2側の受信信号よりも先にピークを迎える。
【0044】
以上の考察から、受信アンテナRx1を有する受信系と、受信アンテナRx2を有する受信系のどちらの受信信号が先にピークを示したかを検出することにより、検出対象のスイング運動が振り上げ動作であるのか、または、振り下げ動作であるのかを判定することができる。本実施の形態は、これを利用して、検出対象のスイング運動の方向を推定する。
【0045】
なお、詳細には説明はしないが、同様に上述の実施の形態のような3つの受信アンテナRx1~Rx3を、全ての受信アンテナが同一の直線上には並ばないように配置すれば、検出対象の縦方向と横方向でのスイング方向を推定できる(換言すれば、検出対象のスイング方向を2次元的に推定できる)。つまり、3つの受信アンテナRx1~Rx3を同一の直線上に並ばないように配置すれば、縦方向及び横方向のそれぞれについて関係性が現れることは明らかであり、縦方向及び横方向のそれぞれについての各受信アンテナRx1~Rx3の受信信号のピーク時刻の相対関係に基づいて、スイング運動の方向を2次元的に推定できる。
【0046】
さらに、ドップラー周波数の変動に基づいて検出対象の速度も推定できる。よって、実施の形態では、スイング方向と速度を合わせて合計で3次元的に検出対象の動きを推定していると言える。
【0047】
さらに、4つの受信アンテナを、全ての受信アンテナが同一平面上には並ばないように配置すれば、縦方向と横方向と奥行き方向、つまり検出対象のスイング方向を3次元的に推定できる。さらに、ドップラー周波数の変動に基づいて検出対象の速度も推定できる。よって、4つ以上の受信アンテナを用いれば、スイング方向と速度を合わせて合計で4次元的に検出対象の動きを推定することもできる。
【0048】
<4>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、スイング運動をする検出対象に向けて搬送波を送信する送信アンテナTx1と、それぞれ異なる位置に配置され検出対象からの搬送波の反射波を受信する複数の受信アンテナRx1~Rx3と、複数の受信アンテナRx1~Rx3で受信した反射波の相関関係を解析することで少なくとも検出対象のスイング運動の方向を推定するスイング動作解析部150と、を有することにより、検出対象のスイング運動の方向を簡易な構成で検出可能なセンサー装置100を実現できる。
【0049】
<5>他の実施の形態
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0050】
上述の実施の形態では、スイング動作解析部150が、検出対象のスイング運動の方向に加えて、複数の受信アンテナRx1~Rx3で受信した反射波の周波数に基づいて検出対象のスイング運動の速度を推定する場合について述べたが、スイング運動の方向のみを推定してもよい。
【0051】
また、上述の実施の形態では、主に、スイング動作解析部150が、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3に到達した反射波の受信時刻(具体的には、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3における周波数が最大を示す時刻)について、各受信アンテナRx1~Rx3間の相関関係を解析することで、検出対象のスイング運動の方向を推定する場合について述べたが、これに限らない。
【0052】
上述した実施の形態では、送信アンテナTx1から送信される搬送波が24GHzの電波である場合について述べたが、搬送波の周波数はこれに限らず、搬送波は例えば音波であってもよい。
【0053】
スイング動作解析部150は、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3に到達した反射波の受信時刻に代えて、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3に到達した反射波の電力、位相、又は、周波数の各受信アンテナRx1~Rx3間の相関関係を解析することで、検出対象のスイング運動の方向を推定してもよい。
【0054】
<5-1>他の構成例1
上述の実施の形態では、スイング動作解析部150が、時間-周波数解析を実行し、スペクトルグラムを得、このスペクトルグラム中の最大スペクトルの発生時刻を反射波に現れるピークの時刻として得る場合について述べたが、これに限らず、各受信アンテナRx1~Rx3の受信電力を算出し、スイング動作解析部によって受信電力が最大振幅を示す時刻を反射波に現れるピーク時刻に相当する時刻として得るようにしてもよい。
【0055】
図2との対応部分に同一符号を付して示す図10は、他の構成例1として、このような処理を実現するセンサー装置の構成を示したものである。
【0056】
図10のセンサー装置200は、図2のセンサー装置100と比較して、各受信アンテナRx1~Rx3の受信系が、受信信号の同相成分(I)及び直交成分(Q)の二乗和を連続的に算出し続けることにより、受信信号の振幅レベルの変化を示す包絡線を常時導出し続ける構成となっている。具体的には、各受信アンテナRx1~Rx3の受信信号に対して、ミキサー121a、122a、123aによって搬送波を乗じることでダウンコンバートされたI成分を得るとともにミキサー121b、122b、123bによって位相シフター201で90°位相シフトされた搬送波を乗じることでダウンコンバートされたQ成分を得る。ミキサー121a、122a、123aから出力された受信信号のI成分は、帯域通過フィルター(BPF)131a、132a、133a及びアナログデジタル変換器(ADC)141a、142a、143aを介して二乗和処理部211、212、213に入力される。一方、ミキサー121b、122b、123bから出力された受信信号のQ成分は、帯域通過フィルター(BPF)131b、132b、133b及びアナログデジタル変換器(ADC)141b、142b、143bを介して二乗和処理部211、212、213に入力される。
【0057】
二乗和処理部211、212、213は、それぞれ、I成分及びQ成分の二乗和を算出することで、受信信号の包絡線(受信電力)を得る。続く、ピーク時刻検出部221、222、223は、包絡線のピーク時刻(つまり受信電力のピーク時刻)を検出し、検出した時刻をスイング動作解析部230に出力する。
【0058】
スイング動作解析部230は、スイング動作解析部150が最大スペクトルの発生時刻に基づいてスイング方向を推定したのに対して、ピーク時刻検出部221、222、223から入力した受信電力のピーク時刻に基づいてスイング動作解析部150と同様の方法でスイング方向を推定する。
【0059】
なお、図10の構成には示されていないが、スイング運動の発生の検出は、別途アナログデジタル変換器(ADC)141a、141b、142a、142b、143a、143bの出力データ等を用いて常時行い、スイング動作解析部230は、スイング運動の発生が検出されたタイミングの前後に検出されたピーク時刻の検出結果を基にスイング方向を推定すればよい。
【0060】
<5-2>他の構成例2
上述の実施の形態及び他の構成例1では、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3の受信信号のピーク発生時刻の相関関係に基づいてスイング方向を推定する場合について述べたが、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3の受信信号の位相の相関関係に基づいてスイング方向を推定してもよい。
【0061】
図10との対応部分に同一符号を付して示す図11は、他の構成例2として、このような処理を実現するセンサー装置の構成を示したものである。
【0062】
図11のセンサー装置300は、図10のセンサー装置200と比較して、二乗和処理部211、212、213及びピーク時刻検出部221、222、223に代えて、位相計算部311、312、313を有する。位相計算部311、312、313は、それぞれ、アナログデジタル変換器(ADC)141a、141b、142a、142b、143a、143bから出力された受信信号(I/Q信号)の比より、各受信信号の位相を算出し、スイング動作解析部320に出力する。
【0063】
スイング動作解析部320は、位相計算部311、312、313から入力した位相に基づいてスイング方向を推定する。ここで、反射波に現れるピークの時刻の変化と反射波の位相の変化は対応する関係にあるので、受信アンテナRx1~Rx3の受信信号のピーク発生時刻の相関関係に基づいてスイング方向を推定する考え方と同様の考え方を用いて、受信アンテナRx1~Rx3の受信信号の位相の相関関係(位相差(若しくは、位相差の変動))に基づいてスイング方向を推定することができる。
【0064】
なお、図11の構成には示されていないが、スイング運動の発生の検出は、別途アナログデジタル変換器(ADC)141a、141b、142a、142b、143a、143bの出力データ等を用いて常時行い、スイング動作解析部320は、スイング運動の発生が検出されたタイミングの前後の各受信信号間の位相差(若しくは、位相差の変動)を基にスイング方向を推定すればよい。
【0065】
また、図11の構成例では、アナログデジタル変換器(ADC)141a、141b、142a、142b、143a、143bから出力されるI/Qデータから各受信信号の位相を直接求める構成を採っているが、高速フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理等の周波数次元への変換を施し、周波数次元上で各受信信号間の位相差(若しくは、位相差の変動)を算出してもよい。
【0066】
<5-3>他の構成例3
上述の実施の形態及び他の構成例1では、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3の受信信号のピーク発生時刻の相関関係に基づいてスイング方向を推定する場合について述べたが、それぞれの受信アンテナRx1~Rx3の受信信号の周波数の相関関係に基づいてスイング方向を推定してもよい。
【0067】
図2との対応部分に同一符号を付して示す図12は、他の構成例3として、このような処理を実現するセンサー装置の構成を示したものである。
【0068】
図12のセンサー装置400は、図2のセンサー装置100と比較して、周波数解析部411、412、413を有する。なお、センサー装置400は、帯域通過フィルター(BPF)131、132、133が省略されている。周波数解析部411、412、413は、それぞれ、アナログデジタル変換器(ADC)141、141、142、142、143、143から出力された受信信号データに対して、逐次、高速フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理の周波数解析処理を施すことにより、検出対象のスイング動作に起因して発生した受信信号成分の周波数を出力する。
【0069】
スイング動作解析部420は、周波数解析部411、412、413から入力した周波数に基づいてスイング方向を推定する。ここで、反射波に現れるピークの時刻の変化と反射波の周波数の変化は対応する関係にあるので、受信アンテナRx1~Rx3の受信信号のピーク発生時刻の相関関係に基づいてスイング方向を推定する考え方と同様の考え方を用いて、受信アンテナRx1~Rx3の受信信号の周波数の相関関係(比又は差)に基づいてスイング方向を推定することができる。
【0070】
なお、図12の構成には示されていないが、スイング運動の発生の検出は、別途アナログデジタル変換器(ADC)141、142、143の出力データ等を用いて常時行い、スイング動作解析部320は、スイング運動の発生が検出されたタイミングの前後の各受信信号間の周波数の比又は差を基にスイング方向を推定すればよい。
【0071】
また、図12の構成例では、アナログデジタル変換器(ADC)141、142、143からの出力信号に対して周波数解析を実行する構成を採っているが、図11に示した構成により導出される受信信号位相の変動速度(すなわち角速度)の関係からスイング方向を推定してもよい。
【0072】
<5-4>他の構成例4
図10に示したセンサー装置200においては、スイング動作解析部230がピーク時刻検出部221、222、223から入力した受信電力のピーク時刻に基づいてスイング方向を推定する場合について述べたが、受信電力のピーク時刻の代わりに、受信電力の比又は差に基づいてスイング方向を推定してもよい。
【0073】
図10との対応部分に同一符号を付して示す図13は、他の構成例4として、このような処理を実現するセンサー装置の構成を示したものである。
【0074】
図13のセンサー装置500は、図10のセンサー装置200と比較して、ピーク時刻検出部221、222、223が省略され、スイング動作解析部510に二乗和処理部211、212、213の出力をそのまま入力する。
【0075】
スイング動作解析部510は、二乗和処理部211、212、213から入力された各受信アンテナRx1~Rx3の受信電力換算値の相関関係(比又は差)に基づいてスイング方向を推定する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えばモーションセンサーに好適である。
【符号の説明】
【0077】
100、200、300、400、500 センサー装置
101 オシレーター
102 パワーアンプ
111~113 ローノイズアンプ
121~123 ミキサー
131~133 帯域通過フィルター(BPF)
141 ~143 アナログデジタル変換器(ADC)
150、230、320、420、510 スイング動作解析部
201 位相シフター
211~213 二乗和処理部
221~223 ピーク時刻検出部
311~313 位相計算部
411~413 周波数解析部
Tx1 送信アンテナ
Rx1~Rx3 受信アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13