(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ふろ装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240131BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20240131BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20240131BHJP
【FI】
F24H15/196 301Z
F24H15/265
F24H15/246
(21)【出願番号】P 2020146149
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-311447(JP,A)
【文献】特開2018-089088(JP,A)
【文献】特開2019-158289(JP,A)
【文献】特開平06-241555(JP,A)
【文献】特開平06-288609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0089550(US,A1)
【文献】特開2015-223362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 1/00
F24H 15/246
F24H 15/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を含むふろ装置であって、
前記浴槽内の水位を検出する水位検出器と、
前記水位検出器による前記浴槽の水位検出値に基づいて、前記浴槽への入浴、及び、前記入浴の検知後における前記浴槽からの退浴を検知する制御部とを備え、
前記制御部は、退浴状態において、予め定められた時間間隔の前後での前記水位検出値の上昇量が予め定められた判定値以上になると前記入浴を検知するとともに、当該入浴の検知前における前記水位検出値に従って退浴判定水位を設定し、
前記制御部は、前記入浴検知後の入浴状態において、現在の前記水位検出値が前記退浴判定水位よりも低下すると、前記退浴を検知する、ふろ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記退浴状態において、前記予め定められた時間間隔の前後での前記水位検出値の前記上昇量が前記判定値以上となる状態が予め定められた第1の時間以上継続すると、前記入浴を検知する、請求項1記載のふろ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記退浴状態において、前記水位検出値が予め定められた上限値よりも大きい場合には、当該水位検出値による前記入浴の検知を禁止する、請求項1又は2に記載のふろ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記浴槽及び前記水位検出器の配置高さの差が予め定められた範囲内であるときに、前記入浴状態での前記水位検出値と前記退浴判定水位との比較による退浴判定を実行する、請求項1~3のいずれか1項に記載のふろ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記配置高さの差が前記予め定められた範囲外であるときには、前記入浴の検知後における安定した状態の前記水位検出値を用いて入浴後水位を確定するとともに、当該入浴後水位と、前記入浴の検知前における前記水位検出値である入浴前水位との減算から入浴時水位上昇量を算出し、更に、前記入浴状態中には、予め定められた時間間隔の前後での前記水位検出値の低下量が、前記入浴時水位上昇量と対応付けて設定された退浴判定低下量を超えると、前記退浴を検知する、請求項4記載のふろ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記入浴状態において、前記入浴後水位に対する現在の前記水位検出値の低下量が前記退浴判定低下量を超える状態が、予め定められた第2の時間以上継続すると、前記退浴を検知する、請求項5記載のふろ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記入浴状態において、現在の前記水位検出値が前記退浴判定水位よりも低下した状態が予め定められた第2の時間以上継続すると、前記退浴を検知する、請求項1~4のいずれか1項に記載のふろ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふろ装置に関し、より特定的には、水位センサを備えたふろ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の水位検出値に基づいて、入浴者の存在を検出すること、即ち、浴槽に対する入浴及び退浴を検知することが公知である。
【0003】
特開2019-203621号公報(特許文献1)には、入浴者の動作によらず浴槽内での入浴者の存否を判定することができる入退浴判定装置が記載されている。
【0004】
特許文献1の入退浴判定装置では、浴槽内の湯水量変更処理を実行し、当該処理時における、浴槽内での湯水の水位を検出する水位検出部の検出値を用いて、浴槽内での入浴者の存否を判定することが記載されている。
【0005】
又、特開2014-199168号公報(特許文献2)では、水位センサの出力特性として、浴槽への湯張り完了後における循環配管路内の湯水温度の変化に伴う比重の変化に起因して、浴槽水位の判断誤差が大きくなる可能性が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-203621号公報
【文献】特開2014-199168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浴槽の水位検出値に基づく入退浴の検知では、水位検出値の変動時に、入浴又は退浴を誤検知することが問題となる。一例として、入浴者が浴槽内で体勢を変えたのみであるのに、この際の水位検出値の低下に応じて、退浴を誤検知することが懸念される。
【0008】
特許文献1の入退浴判定装置によれば、入浴者の体勢変更による水位検出値の低下が生じても、上述した、強制的な湯水変更処理の際の水位検出値に基づいて、入浴が継続していることを正しく検知することが期待できる。
【0009】
しかしながら、特許文献1では、入浴者の存否を確認するために強制的な注湯又は排水を行うことが想定されるので、これに伴う無駄なコストが発生することが懸念される。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、強制的な浴槽水の増減を伴うことなく、浴槽の水位センサを用いて入浴後の退浴を正確に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面では、浴槽を含むふろ装置であって、浴槽内の水位を検出する水位検出器と、制御部とを備える。制御部は、水位検出器による浴槽の水位検出値に基づき、浴槽への入浴、及び、入浴の検知後における浴槽からの退浴を検知する。制御部は、退浴状態において、予め定められた時間間隔の前後での水位検出値の上昇量が予め定められた判定値以上になると入浴を検知するとともに、当該入浴の検知前における水位検出値に従って退浴判定水位を設定する。制御部は、入浴検知後の入浴状態において、現在の水位検出
値が退浴判定水位よりも低下すると、退浴を検知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強制的な浴槽水の増減を伴うことなく、浴槽の水位センサを用いて入浴後の退浴を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【
図2】水位センサの検出値を用いた入退浴検知を説明する概念図である。
【
図3】実施の形態1に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図である。
【
図4】実施の形態1に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】実施の形態2に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図である。
【
図7】実施の形態2に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】浴槽の配置高さの分類を説明する概念図である。
【
図10】浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念図である。
【
図11】浴槽の配置高さに応じた入退浴判定の選択処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に係るふろ装置を含む給湯システムの概略構成図である。
【0016】
図1を参照して、給湯システム300は、給湯装置100を備える。給湯装置100は、給湯回路5、追焚回路7、循環路8、及び、コントローラ12を備える。給湯装置100は、図示しない給湯栓等に加えて、浴室200に設置された浴槽20を給湯先に含む。
【0017】
給湯回路5は、導入された低温水を加熱するための加熱機構(図示せず)を含むように構成される。加熱機構は、例えば、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱、及び、発電時の排熱又はヒートポンプによる加熱の何れを利用する構成であってもよい。又、給湯回路5は、加熱された高温水がそのまま出湯される構成の他、加熱された高温水を貯留する貯湯式の構成であってもよい。
【0018】
給湯回路5は、加熱機構の作動により、ユーザによる設定温度に従う温水を出力することができる。一方で、当該加熱機構の停止時には、低温水が加熱されることなく給湯回路5から出力される。
【0019】
給湯回路5の出湯経路(図示せず)は、浴槽20へ至る注湯配管13aと接続される。注湯配管13aには、ふろ注湯弁13が介挿接続される。ふろ注湯弁13は、例えば、開閉制御可能な電磁弁によって構成することができる。ふろ注湯弁13を開放することにより、給湯回路5から注湯配管13aへ湯水が出力される経路を形成することができる。これにより、給湯装置100は、給湯栓等に加えて、給湯先に浴槽20を含むことができる。以下では、給湯回路5からの出力温度に関わらず、ふろ注湯弁13の開放により、湯又は水が、注湯配管13aを経由して浴槽20へ供給される動作を「注湯」と称する。注湯配管13aには、図示しない流量センサが設けられており、当該流量センサによって注湯
流量を検出することができる。
【0020】
循環路8は、浴槽20の湯水21(以下、浴槽水21とも称する)を給湯装置100内で循環するためのものであり、戻り配管8a及び往き配管8bと、循環ポンプ10とを有する。戻り配管8aの一方端は、浴槽20内の循環アダプタ25と接続され、他端は、追焚回路7の入力側と接続される。往き配管8bの一端は、追焚回路7の出力側と接続され、他端は循環アダプタ25と接続される。
【0021】
循環ポンプ10の作動により、循環アダプタ25から吸入された浴槽水21が、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して、循環アダプタ25から吐出される経路(追焚循環経路)が形成される。追焚回路7は、ガスや石油等の燃料の燃焼熱を用いる加熱機構(図示せず)を含むように構成することができる。追焚回路7は、追焚循環経路の形成時に作動して、戻り配管8aから導入された浴槽水21を加熱して、往き配管8bに出力する。加熱後の浴槽水21が往き配管8bによって浴槽20へ供給されることにより、浴槽水21の温度を上昇する追焚運転を行うことができる。
【0022】
戻り配管8aには、温度センサ9及び水位センサ11が接続されている。温度センサ9により、浴槽水21の温度を検出することができる。温度センサ9は、例えば、サーミスタによって構成することができる。
【0023】
水位センサ11は、例えば、圧力センサによって構成されて、浴槽水21の水圧に基づいて、浴槽20内での浴槽水21の水位(以下、単に「浴槽水位」とも称する)を検知する。温度センサ9及び水位センサ11は、循環ポンプ10の停止時においても、戻り配管8a内で浴槽水21が浸入する領域に配置される。水位センサ11は、「水位検出器」の一実施例に対応する。
【0024】
戻り配管8aは、更に、接続点8cにおいて、注湯配管13aと接続される。この結果、循環ポンプ10の停止時に給湯装置100から注湯すると、注湯配管13aから、接続点8c及び戻り配管8aを経由して浴槽20へ至る第1の注湯経路と、注湯配管13aから、接続点8c、戻り配管8a、追焚回路7、及び、往き配管8bを経由して浴槽20へ至る第2の注湯経路とを形成することができる。これにより、給湯装置100からの注湯によるふろ湯張り運転を行うことができる。
【0025】
この様に、給湯装置100(注湯回路)からの湯水は、循環路8を含む第1及び第2の注湯経路を介して、浴槽20へ供給される。浴槽20には、排水栓26が設けられる。
【0026】
コントローラ12は、例えば、マイクロコンピュータを含んで構成することができる。コントローラ12は、給湯回路5、追焚回路7、温度センサ9、循環ポンプ10、水位センサ11、及び、ふろ注湯弁13等と電気的に接続されている。コントローラ12は、図示しない電気配線を介して電源と接続されて、電力供給を受ける。コントローラ12は「制御回路」の一実施例に対応する。コントローラ12には、温度センサ9及び水位センサ11による検出値が入力される。
【0027】
更に、コントローラ12は、リモコン30及びリモコン50と通信可能に接続されている。尚、これらの機器間の通信は、公知のいかなる規格に従ったものであってもよく、又、有線であっても無線であってもよい。
【0028】
リモコン30は、浴室200の壁面に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン30は、情報を表示するための表示部31と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部32とを含む。表示部31は、代表的には、液晶パネル
によって構成されており、浴槽水位及び温度を表示可能に構成されている。操作部32は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、少なくとも、浴槽水位及び温度に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0029】
リモコン50は、浴室200の外部に設置されており、給湯装置100を操作するためのものである。リモコン50は、代表的には台所の壁面に設置されている。リモコン50は、情報を表示するための表示部51と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部52とを含む。
【0030】
表示部51は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、給湯設定温度、及び、ふろ設定温度等を表示可能に構成されている。操作部52は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯装置100の運転に関する設定操作を受け付け可能に構成されている。
【0031】
コントローラ12は、リモコン30,50からのユーザ等の入力設定操作に基づき、給湯システム300がユーザ指示に従って運転されるように、給湯装置100の動作を制御する。
【0032】
当該制御の一例として、コントローラ12は、リモコン30,50の操作により、ふろ自動運転が指示されると、浴槽20への湯張り運転を実行する。当該湯張り運転は、給湯装置100からの注湯により、浴槽20において、浴槽水位が設定水位に達し、かつ、温度センサ9によって検出される浴槽水温度がふろ設定温度に達すると終了される。
【0033】
給湯システム300では、浴槽20への湯張り運転の終了後、給湯装置100によって浴槽水21の温度及び水位を維持する自動モードを設定することが可能である。当該自動モードの選択時には、温度センサ9によって検出された浴槽水温度が、ふろ設定温度に対応されて設定された基準温度(例えば、ふろ設定温度よりも2~3℃低く設定)よりも低下すると、保温制御のために追焚運転が自動的に起動される。更に、水位センサ11によって検出された浴槽水位が設定水位よりも低下すると、給湯装置100から浴槽20へ追加的に注湯する足し湯運転が起動される。
【0034】
本実施の形態に係る給湯システムでは、浴槽20の水位センサ11の検出値を用いて、浴槽20への入退浴が検知される。
【0035】
図2には、水位センサの検出値を用いた入退浴の検知を説明する概念図が示される。
【0036】
図2を参照して、浴槽20への湯張り運転の終了時には、水位センサ11によって検出される浴槽水位は、設定水位に達している。この状態が「退浴状態」として初期設定される。
【0037】
退浴状態において、水位上昇に関する予め定められた入浴判定条件が成立すると、退浴状態から入浴状態への遷移、即ち、入浴が検知される。これに対して、入浴状態において、水位低下に関する予め定められた退浴判定条件の成立が検知されると、入浴状態から退浴状態への遷移、即ち、退浴が検知される。
【0038】
図3には、実施の形態1に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図が示される。
【0039】
図3を参照して、浴槽20の水位検出値Xは、水位センサ11による各時点での出力値をそのまま用いてもよく、或いは、ローパスフィルタ等によって当該出力値からノイズ(
高周波成分)を除去したものであってもよい。
【0040】
図3の例では、水位検出値Xは、時刻taでの入浴に応じて上昇した後、時刻tbにおいて、入浴者が体勢を変更したことによって低下する。例えば、時刻tbでは、段差付の浴槽20において、入浴者が半身浴のために段差部に腰掛けた動作を想定している。その後、時刻tbにおいて、入浴者が退浴することで、水位検出値Xは、さらに低下する。
【0041】
ここで、比較例として、一定時間間隔での水位変化量ΔXtnが、判定値Xth以上上昇した場合に、入浴判定条件が成立し、反対に、当該水位変化量ΔXtnが当該判定値Xthを超えて低下した場合に、退浴判定条件が成立するような入退浴判定を考える。
【0042】
当該比較例では、時刻taでの入浴に対応して、時刻t1又はそれ以降のタイミングで、入浴を検知することができる。一方で、時刻tbでの体勢変更に対応して、時刻t3において、ΔXtn<-Xthの成立に応じて、退浴を誤検知する虞がある。この場合には、時刻t3以降では退浴状態の判定が維持されることになり、正確な入浴時間(時刻ta~tc)を計測できないことが懸念される。一方で、入浴者の体格(体積)に依存して入浴の際に生じる水位上昇量も異なるため、退浴判定条件用の判定値をどの様に設定するかが問題となる。
【0043】
このような懸念点に対応するために、本実施の形態では、以下に説明するような入退浴判定を実行する。
【0044】
図4は、実施の形態1に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートであり、
図5は、実施の形態1に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。例えば、
図4及び
図5に示された各ステップの制御処理は、コントローラ12が予め格納されたプログラムを実行することで実現することができる。即ち、本実施の形態では、コントローラ12が「制御部」の一実施例に対応する。コントローラ12は、退浴状態では、
図4に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0045】
図4を参照して、コントローラ12は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110では、現在の水位検出値Xtnを取得して記憶する。これにより、各時点での水位検出値Xを、
図4の制御処理が実行される毎に周期的に蓄積することができる。尚、S110では、取得された現在の水位検出値Xtnが上限値Xmaxと比較されて、Xtn≧Xmaxである場合には、センサ或いはマイクロコンピュータの誤動作、又は、配管でのエア抜け等による瞬間的な圧力変動によって、検出異常が発生したと判定される。この場合には、以降の処理において、入浴の検知が強制的に禁止される。
【0046】
コントローラ12は、S120では、現在から所定のTx(秒)前の水位検出値Xtxを読み出す。この際に、既に蓄積されている水位検出値の一部を消去することで、入退浴判定に使用するメモリ容量を抑制することができる。
【0047】
コントローラ12は、S130では、S110で記憶した水位検出値XtnからS120で読み出した水位検出値Xtxを減算することにより、Tx(秒)前からの水位変化量ΔXtnを算出する。そして、S140では、S130で算出された水位変化量ΔXtnが上記判定値Xthと比較される。
【0048】
尚、判定値Xthは、所定体積(例えば、20[l]程度)の体積増減に対応する水位変化量として予め定めて、コントローラ12に記憶することができる。但し、判定値Xthは、浴槽20の断面積によって変わってくる。例えば、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時において、浴槽20の機種番号又はサイズ(上記断面積を特定できる
データ)を施工者が入力することで、コントローラ12が、当該入力値を用いて、判定値Xthを算出し、かつ、記憶することが可能である。
【0049】
或いは、上記給湯システム300の施工時におけるふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転における水位検出値Xの挙動から、自動的に求めることも可能である。具体的には、
図1の注湯配管13aに設けられた流量センサ(図示せず)の検出値の積算によって算出される浴槽20への注湯水量と、水位検出値Xの変化量とを用いて、当該ふろ試運転時は、コントローラ12が予め定められた演算処理を実行することによって浴槽20の断面積を算出するとともに、算出された断面積から判定値Xthを自動的に設定することが可能である。
【0050】
又、判定値Xthに対して、マニュアル調整値βを設定することも可能である。例えば、当該調整値βは、リモコン30,50の操作部32,52によって入力可能な正値(β>0)又は負値(β<0)とすることができる。調整値βが設定された場合には、S140では、ΔXtn≧Xtn+βであるか否かが判定されることになる。
【0051】
コントローラ12は、S130で算出した水位変化量ΔXtnが判定値Xth未満のとき(S140のNO判定時)には、S150により、タイマ値をクリア(Cnt=0)するとともに、S160により、退浴状態の判定を維持する。その後、周期的に設けられる次の起動タイミングが到来すると、再び、S110以降の処理が起動される。上述の様に、S110においてXtn≧Xmaxが成立した場合にも、S140はNO判定とされる。
【0052】
コントローラ12は、S130で算出した水位変化量ΔXtnが判定値Xth以上のとき(S140のYES判定時)には、S170により、タイマ値Cntをカウントアップするとともに、S180により、カウントアップ後のタイマ値Cntを判定値C(Tj1)と比較する。判定値C(Tj1)は、予め定められたTj1(秒)の経過に対応するタイマ値で定義される。
【0053】
コントローラ12は、S170のタイマ値Cntが判定値C(Tj1)より小さいときには(S180のNO判定時)、S150のスキップによりタイマ値Cntを維持した上で、S160により、退浴状態の判定を維持する。その後、次の起動タイミングが到来すると、再び、S110以降の処理が起動される。
【0054】
これに対して、コントローラ12は、S170のタイマ値Cntが判定値C(Tj1)以上であると(S180のYES判定時)、S190により、退浴状態から入浴状態への遷移が生じたと判定して、入浴を検知する。即ち、退浴状態では、Tx(秒)前からの水位上昇量が判定値Xthを超えた状態がTj1(秒)継続したときに、入浴が検知される。
【0055】
更に、コントローラ12は、S190による入浴の検知に連動して、S200により、退浴判定値Xoutを設定する。退浴判定値Xoutは、入浴前のタイミングでの水位検出値と、予め定められたマージン値α(例えば、α=Xth)との加算によって算出される。例えば、入浴検知時点からTx(秒)前における水位検出値Xtx(即ち、S120での読み出し値)とαとの加算によって、退浴判定値Xoutを設定することができる。退浴判定値Xoutは、入浴前の水位検出値をベースに設定されるので、水位検出値の変化量と比較される相対値的な判定値ではなく、水位検出値と直接比較される、絶対値的な判定値として取り扱うことができる。
【0056】
尚、退浴判定値Xoutに対しても、上記マニュアル調整値βを共通に適用することが
できる。例えば、判定値Xthに対してマニュアル調整値β(β>0、又は、β<0)が設定されている場合には、S200において、α=Xth+βとして、退浴判定値Xout=Xtx+Xth+βに設定することができる。
【0057】
再び
図3を参照して、時刻t1において、ΔXtn≧Xthが検知された後、ΔXtn≧Xthの状態がTj1(秒)継続すると、時刻t2において、入浴が検知される。即ち、時刻t2において、退浴状態から入浴状態への遷移が判定される。
【0058】
Tj1(秒)に亘る継続判定により、瞬間的な水位変化によって入浴を誤検知することが防止できる。尚、上述の様に、S120での読み出し値を入浴前のタイミングでの水位検出として用いる場合には、当該継続判定のためのTj1(秒)と、入浴判定の際のTx(秒)との間には、Tx>Tj1の関係が設定される。
【0059】
コントローラ12は、入浴検知後の入浴状態では、
図5に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0060】
図5を参照して、コントローラ12は、S210により、現在の水位検出値Xtnを記憶すると、S220により、現在の水位検出値Xtnを入浴検知時に設定された退浴判定値Xoutと比較する。
【0061】
コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xout以上のとき(S220のNO判定時)には、S230により、タイマ値をクリア(Cnt=0)とするとともに、S240により、入浴状態の判定を維持する。その後、周期的に設けられる次の起動タイミングが到来すると、再び、S210以降の処理が起動される。
【0062】
コントローラ12は、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutよりも小さいとき(S220のYES判定時)には、S250によりタイマ値Cntをカウントアップするとともに、S260により、カウントアップ後のタイマ値Cntを判定値C(Tj2)と比較する。判定値C(Tj2)は、予め定められたTj2(秒)が経過する間に増加するタイマ値Cntで定義される。Tj2は、入浴判定時のTj1と共通の値でもよく、個別に設定してもよい。
【0063】
コントローラ12は、S250のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)より小さいときには(S260のNO判定時)、S230のスキップによりタイマ値Cntを維持した上で、S240により、入浴状態の判定を維持する。その後、起動タイミングが到来すると、再び、S210以降の処理が起動される。
【0064】
これに対して、コントローラ12は、S250のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)以上であると(S260のYES判定時)、S270により、入浴状態から退浴状態への遷移が生じたと判定して、退浴を検知する。即ち、入浴状態において、現在の水位検出値Xtnが退浴判定値Xoutよりも低い状態がTj2(秒)継続したときに、退浴が検知される。Tj2(秒)に亘る継続判定により、瞬間的な水位変化によって退浴を誤検知することが防止できる。
【0065】
再び
図3を参照して、時刻tbでの入浴者の体勢変更によって、時刻t3では、判定値Xthを超えた水位検出値の低下が生じる。このため、上述した比較例の退浴判定では、時刻t3において、点線で表記するような退浴の誤検出が発生する虞がある。
【0066】
しかしながら、時刻tbでの体勢変更によって生じる浴槽水位の変化では、水位検出値Xtnは、入浴前での水位検出値をベースに設定された退浴判定値Xoutまでは低下し
ない。従って、
図5に示した退浴判定では、入浴者が浴槽内で体勢を変更した際に生じる浴槽水位の変化によって、退浴が誤検出されることを防止できる。
【0067】
以上説明したように、実施の形態1に係る入退浴判定によれば、入浴検知時に、入浴前の水位に基づいて設定された退浴判定値と、入浴検知後の各時点での水位検出値との比較によって、退浴判定を行うことができる。これにより、入浴者の体格(体積)に左右されずに、正確な退浴判定が可能となる。特に、入浴者が全身浴から半身浴に体勢を変更した場合にも、特許文献1の様な強制的な注湯又は排水による浴槽水量の変更処理を伴うことなく、簡易かつ正確に入浴者の退浴の検知することができる。尚、実施の形態1での説明において、Tx(秒)は「予め定められた時間間隔」に対応し、退浴判定値Xoutは「退浴判定水位」に対応する。又、Tj1(秒)及びTj2(秒)は、予め定められた「第1の時間」及び「第2の時間」にそれぞれ対応する。
【0068】
[実施の形態2]
実施の形態2では、入浴検知時に検出された水位上昇量を用いた退浴判定について説明する。
【0069】
図6は、実施の形態2に係る入退浴判定を説明するための概念的な波形図が示される。
図6においても、
図3と同様に、時刻taでの入浴、時刻tbでの入浴者の体勢変更、及び、時刻tcでの退浴に応じて、水位検出値Xが変化する。即ち、
図6に示された水位検出値Xの挙動は、
図3と同じである。
【0070】
図7は、実施の形態2に係る入浴判定処理を説明するためのフローチャートであり、
図8は、実施の形態2に係る退浴判定処理を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図7及び
図8に示された各ステップの制御処理についても、コントローラ12が予め格納されたプログラムを実行することで実現することができる。コントローラ12は、退浴状態では、
図7に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0072】
図7を参照して、コントローラ12は、
図4と同様のS110~S140により、退浴状態では、Tx(秒)前及び現在の間の水位変化量ΔXtnを判定値Xthと比較する。S140において、ΔXtn<Xthであるとき(NO判定時)の処理は、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
【0073】
コントローラ12は、ΔXtn≧Xthが検知されたときには(S140のYES判定時)、タイマ値Cnt=0のとき、即ち、
図6の時刻t1時点でのTx(秒)前の水位検出値Xtxを、入浴前水位Xbfrとして記憶する。更に、S170及びS180により、実施の形態1と同様の入浴判定が行われる。即ち、ΔXtn≧XthがTj1(秒)継続するまでは、退浴状態が維持される(S160)。
【0074】
コントローラ12は、ΔXtn≧XthがTj1(秒)継続して、S180がYES判定とされると、
図4と同様のS190により入浴を検知するとともに、S202~S208によって、退浴判定値ΔXoutを設定する。
【0075】
コントローラ12は、S202では、水位検出値Xtnが安定しているかを判定する。予め定められた周期間での水位検出値Xtnの変化量がほぼゼロとみなせると、S202はYES判定とされる。例えば、前回の周期と今回の周期との間での水位検出値Xtn(S110)の差分と判定値εとの比較によってS202の判定を実行することができる。
【0076】
コントローラ12は、入浴検知後に水位検出値Xtnが安定すると(S202のYES
判定時)、S204により、現在の水位検出値Xtnを入浴後水位Xinとして記憶する。そして、S206により、入浴後水位Xinから入浴前水位Xbfr(S145)を減算することによって、入浴時水位上昇量ΔXinが算出される。
【0077】
更に、コントローラ12は、S208により、入浴時水位上昇量ΔXinに従って、退浴判定値ΔXoutを設定する。例えば、退浴判定値ΔXoutは、下記の式(1)によって設定することができる。式(1)中の係数kは、正の定数であり、例えば、k>1に設定される。
【0078】
ΔXout=ΔXin/k …(1)
尚、退浴判定値ΔXoutに対しても、リモコン30,50の操作部32,52等によって入力可能なマニュアル調整値を設定することが可能である。当該マニュアル調整値は、係数kを増加又は減少させるように設定されてもよく、式(1)による計算値に対して加算される正値、又は、負値として設定されてもよい。
【0079】
一方で、入浴検知後(S190)に水位検出値Xtnが安定していない間は(S202のNO判定時)、S203によって、周期的に水位検出値Xtnを記憶するとともに、S202による前回の水位検出値Xtnとの比較処理が実行される。即ち、入浴検知後には、水位検出値Xtnが安定するまでの間S202~S208の処理が待機される。
【0080】
再び
図6を参照して、実施の形態1と同様に、時刻t1において、ΔXtn≧Xthがされた後、ΔXtn≧Xthの状態がTj1(秒)継続すると、入浴を検知することができる。更に、入浴検知後に水位検出値が安定した時刻t2xにおいて、入浴後水位Xin及び入浴時水位上昇量ΔXinを確定するとともに、退浴判定値ΔXoutが設定される。尚、実施の形態2では、入浴検知の条件にS202の判定を組み合わせることで、
図6中の時刻t2ではなく時刻t2xにおいて入浴を検知することも可能である。
【0081】
コントローラ12は、入浴検知後の入浴状態では、
図8に示される制御処理を繰り返し実行する。
【0082】
図8を参照して、コントローラ12は、S210により、現在の水位検出値Xtnを記憶すると、S280により、Tx(秒)前からの水位低下量ΔXdcを算出する。即ち、水位低下量ΔXdcは、S210で記憶された現在の水位検出値Xtnと、現在からTx(秒)前での水位検出値Xtxとの差分(ΔXdc=Xtx-Xtn)として算出される。そして、コントローラ12は、S290により、S280で算出された水位低下量ΔXdcを、入浴検知に連動して設定された退浴判定値ΔXoutと比較する。
【0083】
コントローラ12は、水位低下量ΔXdcが退浴判定値ΔXout以下のとき(S290のNO判定時)には、
図5と同様のS230により、タイマ値をクリア(Cnt=0)とするとともに、
図5と同様のS240により、入浴状態の判定を維持する。その後、周期的に設定される次の起動タイミングが到来すると、再び、S210以降の処理が起動される。
【0084】
コントローラ12は、水位低下量ΔXdcが退浴判定値ΔXoutよりも大きいとき(S290のNO判定時)には、
図5と同様のS250によりタイマ値Cntをカウントアップするとともに、
図5と同様のS260により、カウントアップ後のタイマ値Cntを判定値C(Tj2)と比較する。
【0085】
コントローラ12は、
図5と同様に、S250のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)より小さいときには(S260のNO判定時)、S230のスキップによりタイマ値Cn
tを維持した上で、S240により、入浴状態の判定を維持する。その後、次の起動タイミングが到来すると、再び、S210以降の処理が起動される。
【0086】
これに対して、コントローラ12は、S250のタイマ値Cntが判定値C(Tj2)以上であると(S260のYES判定時)、
図5と同様のS270により、入浴状態から退浴状態への遷移が生じたと判定して、退浴を検知する。即ち、入浴状態において、入浴時水位Xinからの水位低下量ΔXdcが退浴判定値ΔXoutよりも低い状態がTj2(秒)継続したときに、退浴が検知される。退浴判定においても、継続判定のためのTj2(秒)と、ΔXdcを求める際の時間間隔に相当するTx(秒)との間には、Tx>Tj2の関係が設定される。尚、時間間隔Tx(秒)については、入浴検知及び退浴検知の間で共通の値としてもよく、異なる値としてもよい。
【0087】
再び
図6を参照して、時刻tbでの入浴者の体勢変更によって、時刻t3では、判定値Xthを超えた水位検出値の低下が生じる。しかしながら、時刻tbでの体勢変更に応じて算出される水位低下量ΔXdcは、入浴時水位上昇量ΔXinと対応付けて設定された退浴判定値ΔXoutには達しない。一方で、時刻tcでの退浴に応じて算出される水位低下量ΔXdcは、上記退浴判定値ΔXoutを超えるので、例えば、時刻t5において退浴を検知できる。
図8に示した退浴判定によれば、入浴者が浴槽内で体勢を変更した際に生じる浴槽水位の変化によって、退浴が誤検出されることを防止できる。
【0088】
このように、実施の形態2に係る入退浴判定によれば、入浴検知時に、入浴時の水位上昇量ΔXinと対応付けて退浴判定値ΔXoutを設定するとともに、予め定められた時間間隔での水位低下量ΔXdcと当該退浴判定値ΔXoutとの比較によって、退浴判定を実行する。入浴時の水位上昇量ΔXinを退浴判定に用いることで、入浴者の体格(体積)に左右されずに、正確な退浴判定が可能となる。これにより、実施の形態1と同様に、入浴者が全身浴から半身浴に体勢を変更した場合にも、特許文献1の様な強制的な注湯又は排水による浴槽水量の変更処理を伴うことなく、簡易かつ正確に入浴者の退浴を検知することができる。尚、実施の形態2での退浴判定値ΔXoutは「退浴判定低下量」に対応する。
【0089】
尚、実施の形態1の退浴判定では、退浴判定値Xoutが、入浴状態の各時点での水位検出値Xtnと直接比較されるので、水位センサ11による水位検出値Xtnの精度が必要とされる。一方で、特許文献2に記載される様に、浴槽20の及び水位センサ11の間で配置高さの差が大きいと、浴槽20及び水位センサ11間の湯水の温度変化によって水位センサ11による水位検出値が変化する。
【0090】
図9には、浴槽の配置高さの分類を説明する概念図が示される。
【0091】
図9を参照して、給湯装置100内での水位センサ11の配置高さを基準高さ(H=0)とすると、浴槽20の配置高さは、当該基準高さに対する
図1に示された循環アダプタ25の配置高さの差である高さ差ΔHで定義することができる。
【0092】
例えば、
図9に示す様に、高さ差ΔHと、予め定められた境界値H1,-H2との比較により、屋外で地上配置される給湯装置100(水位センサ11)に対する浴槽20の配置高さを、2階以上への配置に対応する「階上配置」、1階への配置に対応する「平地配置」、及び、地階への配置に対応する「階下配置」に層別することができる。
【0093】
図10には、浴槽の配置高さに依存した水位検出値の変化を説明する概念図が示される。
図10には、ふろ湯張り運転の完了後、時間経過に応じて、浴槽20(循環アダプタ25)及び水位センサ11の間に滞留する湯水の温度が徐々に低下する際の、圧力センサで
構成された水位センサ11の出力電圧(即ち、水位検出値)の推移が示される。
【0094】
図10を参照して、時間経過に応じて上記滞留湯水の温度Tbtが低下するのに応じて、当該滞留湯水の比重が徐々に増加する。水位センサよりも高い位置に浴槽20が配置されたケース(階上配置)では、比重の増加が水圧上昇として水位センサ11に作用する。従って、特性線L1に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に上昇する。
【0095】
これに対して、水位センサよりも低い位置に浴槽20が配置されたケース(階下位置)では、比重の増加が水圧低下として水位センサ11に作用する。従って、特性線L2に示される様に、温度低下に応じて、水位センサ11の水位検出値が徐々に低下する。一方で、水位センサ11と浴槽20との高さ差が小さいケース(平地配置)では、滞留湯水の温度に依存して、水位センサ11の水位検出値上昇又は低下する現象は生じない。
【0096】
この様に、階上配置及び階下配置の場合には、水位センサ11による水位検出値には、湯水の温度変化に起因する誤差が含まれる虞があるので、実施の形態1で説明した、水位検出値Xtnそのものが退浴判定値Xoutと比較される退浴判定では、退浴の誤検知の可能性が生じる。一方で、実施の形態2に係る退浴判定は、Tx(秒)間隔での水位検出値の差分である水位低下量ΔXdcを用いるので、上述した温度変化に依存した誤差の影響を無視できることが期待される。
【0097】
従って、実施の形態1に係る入退浴判定と、実施の形態2に係る入退浴判定とは、水位センサ11及び浴槽20の配置高さの差に対応させて選択的に適用することが好ましい。
【0098】
図11には、浴槽20の配置高さに応じた入退浴判定の選択処理を説明するフローチャートが示される。
図11に示される制御処理は、例えば、上述した、浴槽20の配設を含む給湯システム300の施工時におけるふろ試運転時に実行することができる。
【0099】
図11を参照して、コントローラ12は、S410により、浴槽20の配置高さが、
図9で説明した、平地配置、階上配置、及び、階下配置のいずれであるかを示す情報を取得する。例えば、当該情報は、施工者によるコード入力等によって取得することができる。或いは、特許文献2に開示される様に、浴槽20への湯張り動作時における水位センサ11のオフセット電圧の調整に伴って、水位センサ11に対する浴槽20の配置高さを自動的に検知することも可能である。即ち、上記ふろ試運転時に試験的に実行されるふろ湯張り運転の際に、浴槽20の配置高さを示す情報を自動的に取得することも可能である。この様に、S410での情報の取得は任意の手法で行うことができる。
【0100】
コントローラ12は、S420では、S410で取得した情報に基づき、浴槽20が平地配置されているか否かを判定する。コントローラ12は、平地配置の場合(S420のYES判定時)には、S430により、当該試運転以降では実施の形態1に係る入退浴判定を用いて、浴槽20への入退浴を判定するように初期設定を行う。
【0101】
これに対して、コントローラ12は、階上配置又は階下配置であり、平地配置でない場合(S420のNO判定時)には、S440により、当該試運転以降では実施の形態2に係る入退浴判定を用いて、浴槽20への入退浴を判定するように初期設定を行う。
【0102】
これにより、浴槽20及び水位センサ11の配置高さ差に起因して、退浴判定の精度が低下することを防止できる。尚、本実施の形態では、実施の形態2に係る入退浴判定を、階上配置又は階下配置のときに適用する例を説明したが(
図11)、平地配置の浴槽20に対して、
図7及び
図8で説明した実施の形態2に係る入退浴検知を適用することも可能
である。従って、平地配置、階上配置、及び、階下配置に共通して、言い換えると、浴槽20の配置高さ(具体的には、浴槽20及び水位センサ11の配置高さ差)に依存せず、実施の形態2に係る入退浴判定を行うことも、原理上可能である。
【0103】
又、水位センサ11が圧力センサによって構成される場合には、循環ポンプ10の作動によって循環経路内の浴槽水が加圧されるので、水位センサ11による水位検出値に誤差が発生する。従って、
図4、
図5、
図7、及び、
図8で説明した入退浴判定については、循環ポンプ10の作動期間では、停止することが好ましい。この場合には、循環ポンプ10の作動開始時点で記憶されていた、Tx(秒)前の水位検出値Xtx(
図4,
図7)、入浴前水位Xbfr、及び、入浴時水位Xin(
図7)等は、当該停止期間中には保持されるとともに、停止期間の終了後において、水位検出値Xtnの取得が再開されるのに応じて適宜更新される態様で運用することが可能である。
【0104】
又、
図4、
図5、
図7、
図8、及び、
図11に示した制御処理については、コントローラ12で実行される例を説明したが、当該制御処理を実行する主体はこれに限定されるものではない。例えば、リモコン30又は50に格納されたマイクロコンピュータ(図示せず)によって、当該制御処理を実行することも可能であり「制御部」に対応する機器は特定されるものではない。「制御部」の機能は、給湯システム300の外部機器によって実現することも可能である。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
5 給湯回路、7 追焚回路、8 循環路、8a 戻り配管、8b 往き配管、8c 接続点、9 温度センサ、10 循環ポンプ、11 水位センサ、12 コントローラ、13 注湯弁、13a 注湯配管、20 浴槽、21 浴槽水、25 循環アダプタ、26 排水栓、30,50 リモコン、31,51 表示部、32,52 操作部、100
給湯装置、200 浴室、300 給湯システム、Xth 判定値、Xbfr 入浴前水位、Xout,ΔXout 退浴判定値、ΔXdc 水位低下量、ΔXin 入浴時水位上昇量。